JP5337965B2 - 銅被覆アルミニウム線の評価方法および銅被覆アルミニウム線の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、アルミニウム線(以下、Al線)からなる芯材に銅テープ(以下、Cuテープ)が被覆された銅被覆アルミニウム線(以下、CA線)のCuテープとAl線との密着性の評価方法およびそれを用いたCA線の製造方法に関する。
CA線は、Al線にCu被覆が施されたものであるため、軽くて成形性に優れ、またはんだ付性が良い。このため、電子機器やケーブの導体、編組線、ハードディスクドライブのピックアップコイルやヘッドホン等の各種モータ用の巻線コイル等に使用される。さらに、高周波領域において使用されるケーブルは、表皮効果により電流がCu被覆層を流れるので実効抵抗はCu導体と同じになるために、高周波同軸ケーブル用の導体としても使用されている。
このようなCA線は、通常以下のような工程を経て製造されている。すなわち、ワイヤブラッシングなどによって表面を清浄にした銅テープを所定の幅にスリットし、同様に表面を清浄にしたAl線を包み込むように丸く成形し、その突合せ部分を連続的にTIG溶接等によって接合した後、ロール加工等によって一定の径まで縮径してCuテープをAl線上に密着させた銅被覆Al母材(以下、CA母材)を製造し、この母材を伸線機等により伸線加工を行って目的とする径に縮径することによって製造されている。(例えば、特許文献1)しかしながら、前記縮経したCA母材においてCu被覆とAl線とが確実に密着されていないと、その後の伸線加工によってCu被覆の剥離、Al線がCu被覆から露出、さらに伸線加工時に断線する問題がある。このような状態が生じるのは、Cu被覆とAl線が完全に密着していないため伸線加工段階でCu被覆に過大な応力が掛かると、特に断線が生じるものと考えられる。そして、Al線が露出すると異種金属接触腐食によりAlが急速に腐食して断線する等の問題が生じるため、Cu被覆とAl線を強固に密着させる必要がある。このためCA母材の製造時に、Cu被覆となるCuテープをステンレス製のブラシ等により研磨することが行われている。しかしこの方法は、Cuテープが研磨されると共にブラシも研磨されて短くなり、研磨能力に経時劣化の問題があった。そこで、ブラシの押込みレベルを数値化して管理する方法が試みられたが、数値にバラツキが大きく定量評価することができなかった。このため、伸線加工時にCu被覆とAl線の密着不良によるCu被覆の剥離や伸線加工中の断線が避けられなかった。
このため、Cu被覆とAl線の密着性を評価する方法として、図3の概念図に示すような引張試験片の先端絞り部分の値先端絞値を測定してその良否を判断していた。すなわち、引張試験を行い、引張前の線径をD、引張破断後の先端径をdとした時、絞り=1−(d/D)2の値が大きいほど密着性が良好なものと判断していた。しかしながら、この方法による計算結果は、バラツキが大きく確実な評価ができなかった。そこで、正確でかつ比較的迅速な評価方法が望まれていた。
このようなCA線は、通常以下のような工程を経て製造されている。すなわち、ワイヤブラッシングなどによって表面を清浄にした銅テープを所定の幅にスリットし、同様に表面を清浄にしたAl線を包み込むように丸く成形し、その突合せ部分を連続的にTIG溶接等によって接合した後、ロール加工等によって一定の径まで縮径してCuテープをAl線上に密着させた銅被覆Al母材(以下、CA母材)を製造し、この母材を伸線機等により伸線加工を行って目的とする径に縮径することによって製造されている。(例えば、特許文献1)しかしながら、前記縮経したCA母材においてCu被覆とAl線とが確実に密着されていないと、その後の伸線加工によってCu被覆の剥離、Al線がCu被覆から露出、さらに伸線加工時に断線する問題がある。このような状態が生じるのは、Cu被覆とAl線が完全に密着していないため伸線加工段階でCu被覆に過大な応力が掛かると、特に断線が生じるものと考えられる。そして、Al線が露出すると異種金属接触腐食によりAlが急速に腐食して断線する等の問題が生じるため、Cu被覆とAl線を強固に密着させる必要がある。このためCA母材の製造時に、Cu被覆となるCuテープをステンレス製のブラシ等により研磨することが行われている。しかしこの方法は、Cuテープが研磨されると共にブラシも研磨されて短くなり、研磨能力に経時劣化の問題があった。そこで、ブラシの押込みレベルを数値化して管理する方法が試みられたが、数値にバラツキが大きく定量評価することができなかった。このため、伸線加工時にCu被覆とAl線の密着不良によるCu被覆の剥離や伸線加工中の断線が避けられなかった。
このため、Cu被覆とAl線の密着性を評価する方法として、図3の概念図に示すような引張試験片の先端絞り部分の値先端絞値を測定してその良否を判断していた。すなわち、引張試験を行い、引張前の線径をD、引張破断後の先端径をdとした時、絞り=1−(d/D)2の値が大きいほど密着性が良好なものと判断していた。しかしながら、この方法による計算結果は、バラツキが大きく確実な評価ができなかった。そこで、正確でかつ比較的迅速な評価方法が望まれていた。
よって、本発明が解決しようとする課題は、CA線の製造工程におけるCu被覆とAl線の密着性を正確に予測できる比較的簡単な評価方法を提供し、伸線加工によって目的とするCA線を製造する際のCu被覆の剥離やAl線の露出、さらには断線の可能性等を事前に推測できるようにすることにある。
また、前記の評価方法を適用して、目的とするCA線を得るための指標とし、伸線工程でのCA線がCu被覆の剥離、Al線の露出をしたり、断線が生じないようにしたCA線の製造方法を提供することにある。
また、前記の評価方法を適用して、目的とするCA線を得るための指標とし、伸線工程でのCA線がCu被覆の剥離、Al線の露出をしたり、断線が生じないようにしたCA線の製造方法を提供することにある。
前記解決しようとする課題は、請求項1に記載するように、Al線上にCuテープをフォーミングし、ついで前記Cuテープの突合せ部分を溶接した後、縮径することによってAl線とCuテープ被覆を密着させてCA母材とし、ついで前記CA母材を伸線加工するCA線の製造方法において、前記伸線加工工程における特定の段階のCu被覆剥離面(変色面)の新生面比率を測定することによって、AL線とCu被覆の密着性を評価するCA線の評価方法とすることによって、解決される。
具体的には、前記新生面比率は、CA線から剥離したCu被覆剥離面(変色面)のAlの面積比を、X線マイクロアナライザーによって測定して算出する請求項1に記載のCA線の評価方法とすることによって、解決される。
そして請求項3に記載する、Al線上にCuテープをフォーミングし、ついで前記Cuテープの突合せ部分を溶接した後、縮径することによってAl線とCuテープを密着させてCA母材とし、ついで、前記CA母材を伸線加工処理するCA線の製造方法において、前記伸線加工工程におけるCA線の加工度[2ln(D/d)]が、2.02〜2.7の段階のCu被覆剥離面(変色面)における新生面比率を確認した後、さらに目的とする線径まで伸線加工を行うCA線の製造方法とすることによって、解決される。
以上の本発明によれば、CA線の伸線加工工程における特定の段階で、Cu被覆剥離面(変色面)としての新生面比率を測定するので、CA線のCu被覆とAl線の密着性を比較的簡単に、かつかなり正確に予測できるため、その後の伸線加工おけるCA線のCu被覆の剥離やAl線の露出、さらにはCA線の断線をなくすことができ実用的な評価方法である。さらに、具体的な新生面比率の測定方法も、CA線から剥離したCu被覆剥離面の一定面積のAlの面積比をX線マイクロアナライザーによって測定して算出する方法としたので、従来方法に比較して簡単に行うことができる評価方法である。
またCA線の製造方法も、伸線加工工程におけるCA線の加工度[2ln(D/d)]が、2.02〜2.7の段階のCu被覆剥離面(変色面)における新生面比率を確認した後、さらに目的とする線径まで伸線加工を行うCA線の製造方法としたので、目的とするCA線を得るための指標となり、伸線加工工程でのCA線がCu被覆の剥離、Al線の露出、さらには断線が生じることのないCA線の製造方法を提供することができる。
以下に本発明を詳細に説明する。本願発明におけるCA線の密着性の評価方法は、Al線(例えばAl荒引き線)上にCuテープをフォーミングし、ついで前記Cuテープの突合せ部分を溶接した後、縮径することによってAl線とCuテープ被覆を密着させてCA母材とし、ついで前記CA母材を伸線加工するCA線の製造方法において、CA線の伸線加工工程における特定の段階で、Cu被覆剥離面(変色面)の新生面比率を測定することによって、Al線とCu被覆の密着性を評価するCA線の評価方法である。このような評価方法とすることによって、CA線の伸線工程におけるCu被覆とAl線の密着性を比較的簡単にかつ正確に予測できるので、その後の伸線加工におけるCA線のCu被覆の剥離やAl線の露出、さらには、伸線加工によるCA線の断線をなくすことができる実用的な評価方法である。
これに対して従来のCA線の密着性の評価方法は、先に説明した図3に示すような引張り試験片の先端絞り値(先端絞り部分)を測定してその良否を判断していたので、計算結果はバラツキが大きく確実な評価ができなかった。本発明によればこのような問題点が解消されて確実な評価方法となる。
これに対して従来のCA線の密着性の評価方法は、先に説明した図3に示すような引張り試験片の先端絞り値(先端絞り部分)を測定してその良否を判断していたので、計算結果はバラツキが大きく確実な評価ができなかった。本発明によればこのような問題点が解消されて確実な評価方法となる。
図4により具体的に説明する。Al線1をAl線供給装置2から送り出し、ストレーナー3で伸直にし、表面洗浄装置4で洗浄し、研磨装置5によって研磨する。また、Cuテープ供給装置6から送り出されたCuテープ7は、成形装置8に導入してAl線1上に縦添え被覆しながら、その突合せ部分をTIG溶接装置9によって溶接し、さらにロール等による縮径加工によってAl線1上にCuテープ7を密着させてCA母材10とし、ドラム等の巻取装置11に巻き取られる。そして、このCA母材10は、通常Cu被覆占積率が3〜20%となるようにダイス等の伸線機によって伸線加工を施して、通常線径が1mm〜50μmのCA線(図示せず)とされる。これは、Cu被覆占積率が3%未満であると、Cu被覆が破れ易く、断線や接続不良を生じ易くなる。また、Cu被覆占積率が20%を超えると、伸線加工時に芯材のAl線が断線を生じることがあるためである。
本発明は、このようなCA線の製造方法において、Cu被覆とAl線が強固に密着するためには、Cu被覆が極めて清浄かつ活性な面(以下、新生面)が必要であることに着目し、CA線のそれぞれの伸線加工段階における新生面の比率を調べることによって密着性を確認した。前記のようにAl線とCu被覆が完全に密着している部分が清浄で活性な面(新生面)と考えることができるので、伸線加工段階におけるCA線のCu被覆を剥離し、剥離面の新生面の比率を測定することによって評価した。すなわちCu被覆の剥離面における新生面比率は、Cu剥離面の一定部分をX線マイクロアナライザー(以下、EPMA)による面分析により、Al量を測定することによって行える。具体的な新生面の比率は、伸線加工におけるある加工度[2ln(D/d)]の段階のCA線を取出して、引抜きしニッパ等によりCu被覆を螺旋状に剥離したものの一定面積(通常50mm2程度)の新生面比率を測定すれば良いことになる。例えば、後述するように加工度が2.02あたりの段階で測定すれば良い。なお、加工度の式[2ln(D/d)]における、Dは伸線加工開始前のCA線の線径(mm)、dは伸線加工終了時のCA線の線径(mm)、lnは自然対数を示す。
図面を用いて詳細に説明する。図1のグラフは、CA線の加工度と新生面比率の関係を示す実験結果である。グラフから明らかなように、Cu剥離面をEPMAの面分析によってAlが検出される面積比を測定した結果、加工度に比例して新生面比率が大きくなり、Al線とCu被覆の密着性が高くなることを示している。
すなわち、CA母材(銅の占積率が15%の場合で9.75mm程度)を伸線加工して行くと、CA線の加工度が0.94(線径6.1mm)では、新生面比率は21%程度、さらに伸線加工を続けて加工度を上げて行くと、加工度が1.18(線径5.4mm)で、新生面比率は38%程度、加工度が2.02(線径3.55mm)では新生面比率が35%となり、加工度が2.19(線径3.2mm)あたりで新生面比率が45%、加工度が2.45(線径2.87mm)では新生面比率が62%であった。そして、加工度が2.70(線径2.53mm)あたりでは新生面比率が70%、そして加工度が3.61(線径1.6mm)では新生面比率が95%と略完全に密着していることが確認された。さらに、グラフから判るように加工度と新生面比率が直線関係にあることも判った。このため、ある加工度での新生面比率を測定すればCA線の伸線性の判断に利用できることが判る。具体的には、加工度が2.02(線径3.55mm、新生面比率が35%程度)の段階での新生面比率を測定すれば、その後の伸線での密着性を推測できることになる。
なお前記の実験において、加工度が2.19(線径3.20mm)以上のCA線については、引抜き後ニッパによりCu被覆を螺旋状に剥離できないので、それほど鋭利ではないバイスを万力に挟さんだ上でCA線を挟んで90°に曲げ、つぎに反対側に180°曲げ、さらに反対方向に90°曲げた後に、Cu被覆を剥離して新生面比率を測定した値である。
また、図1のグラフにおける点(〇印)を具体的な数値として表1に記載した。
すなわち、CA母材(銅の占積率が15%の場合で9.75mm程度)を伸線加工して行くと、CA線の加工度が0.94(線径6.1mm)では、新生面比率は21%程度、さらに伸線加工を続けて加工度を上げて行くと、加工度が1.18(線径5.4mm)で、新生面比率は38%程度、加工度が2.02(線径3.55mm)では新生面比率が35%となり、加工度が2.19(線径3.2mm)あたりで新生面比率が45%、加工度が2.45(線径2.87mm)では新生面比率が62%であった。そして、加工度が2.70(線径2.53mm)あたりでは新生面比率が70%、そして加工度が3.61(線径1.6mm)では新生面比率が95%と略完全に密着していることが確認された。さらに、グラフから判るように加工度と新生面比率が直線関係にあることも判った。このため、ある加工度での新生面比率を測定すればCA線の伸線性の判断に利用できることが判る。具体的には、加工度が2.02(線径3.55mm、新生面比率が35%程度)の段階での新生面比率を測定すれば、その後の伸線での密着性を推測できることになる。
なお前記の実験において、加工度が2.19(線径3.20mm)以上のCA線については、引抜き後ニッパによりCu被覆を螺旋状に剥離できないので、それほど鋭利ではないバイスを万力に挟さんだ上でCA線を挟んで90°に曲げ、つぎに反対側に180°曲げ、さらに反対方向に90°曲げた後に、Cu被覆を剥離して新生面比率を測定した値である。
また、図1のグラフにおける点(〇印)を具体的な数値として表1に記載した。
そして、前記新生面比率の測定の具体的方法としては、CA線から剥離した一定面積のCu被覆剥離面のAlの面積比を、EPMAによって測定して算出することによって行えば良い。例えば、図2bに示したCu被覆の剥離面(CA線の伸線加工工程の加工度が2.02の例の写真で、黒く見える部分がAlが付着した部分である。本発明ではこの部分を新生面とした。)におけるCu被覆剥離面のAlの面積比を、EPMAによって測定して新生面比率を算出することができる。このように、伸線加工を施したCA線のある段階の一定面積のCu剥離面のAl量をEPMAによって測定して、Al量とCu量の関係から新生面比率を測定すれば、Cu被覆とAl線の密着性を推測することができることになる。このような評価方法によれば、その後の伸線加工においても断線等を生じることがないことが確実に推測でき、目的とするCA線の線径まで伸線加工を行うことができることになる。また、その測定方法も、CA線から剥離したCu被覆剥離面の一定面積をEPMAによって測定して新生面比率を計算するだけであるから、比較的簡単なCA線の密着性を評価できる方法である。
また、前記新生面比率は、CA線から剥離したCu被覆剥離面と、同様に予め用意した標準試料とを目視によって比較して行うこともできる。この場合、従来方法に比較して簡単に行うことができる評価方法である。
すなわち、図1のグラフの各加工度における一定面積のCu被覆剥離面の状態を写真等として用意しておき、実際のCA線のCu剥離面と比較することができることになる。これを拡大鏡等を用いて目視で比較すれば良く、作業が最も簡単である。
例えば、図2aが加工度0.94(線径6.1mm)で新生面比率が21%の場合の写真であるが、前述した図2bの写真と比較すると黒く見える部分(Alが付着した部分で新生面である)に明らかに違いが見られる。このように、目視によっても新生面比率が確認でき簡単なCA線の評価方法となることが判る。
すなわち、図1のグラフの各加工度における一定面積のCu被覆剥離面の状態を写真等として用意しておき、実際のCA線のCu剥離面と比較することができることになる。これを拡大鏡等を用いて目視で比較すれば良く、作業が最も簡単である。
例えば、図2aが加工度0.94(線径6.1mm)で新生面比率が21%の場合の写真であるが、前述した図2bの写真と比較すると黒く見える部分(Alが付着した部分で新生面である)に明らかに違いが見られる。このように、目視によっても新生面比率が確認でき簡単なCA線の評価方法となることが判る。
つぎに、前述した評価方法を取り入れた実際のCA線の製造方法について説明する。前述したようなCA線の密着性の評価方法に関する知見が得られたので、これに基づいてCA線の製造方法を確立した。すなわち、Al線上にCuテープをフォーミングし、ついで前記Cuテープの突合せ部分を溶接した後、縮径することによってAl線とCuテープを密着させてCA母材とし、このCA母材を伸線加工処理するCA線の製造方法であって、前記伸線加工工程におけるCA線の加工度[2ln(D/d)]が、2.02〜2.7の段階のCu被覆剥離面(変色面)における新生面比率を測定した後、さらに目的とする線径まで伸線加工を行うCA線の製造方法である。このCA線の製造方法によれば、伸線加工の比較的早い段階でCA線の密着常態を確認でき、その後目的とするCA線を製造しても伸線工程でのCA線がCu被覆の剥離、Al線の露出、さらには目的の線径まで伸線加工を施しても断線が生じることがないCA線の製造方法である。
図4を参照して詳細に説明する。すなわち、表面を洗浄し研磨されたAl線1(通常線径が9.5mm程度)上に、研磨されたCuテープ7(通常厚さが0.073〜0.56mm程度)が縦添え被覆され、その突合せ部分をTIG溶接装置9によって溶接し、さらにロール加工等により縮径してAl線1上にCuテープ7を密着させたCA母材10(銅の占積率が15%の場合で線径が9.75mm程度)とし、ドラム等の巻取装置11に巻き取られる。
このようにして得られたCA母材10は、通常Cu被覆の占積率が3〜20%となるようにダイス等の伸線機によって伸線加工を施して、通常線径が1mm〜50μmのCA線(銅被覆アルミニウム線)とする。そしてこの伸線工程時の加工度[2ln(D/d)]が、2.02〜2.7の間の段階で伸線加工を一度中止し、この段階でのCA線を0.5m程度の長さ切断して取出しその一定部分(50mm2程度)を引抜きし、ニッパによりCu被覆を螺旋状に剥離して新生面比率を測定する。その結果、加工度が2.02(新生面比率が35%程度)から加工度が、2.7(新生面比率が70%程度)であればその後の伸線加工に問題を生じないものと判断して、目的とする線径のCA線を伸線加工するものである。この新生面比率の測定には、前述したCA線から剥離した一定面積のCu被覆剥離面のAlの面積比をEPMAによって測定すれば良い。
なお、本発明のCA線に用いるAl線は、純Al線のほかMgを0.05〜2.0質量%含有するAl合金線やCuを2〜4質量%含有するAl合金線にも適用が可能である。そして、このようにして得られたCu被覆Al複合線は、種々の用途に使用できる。例えば、高周波同軸ケーブル用の導体、ハードディスクドライブのピックアップコイルやヘッドホン用の巻線等に有用である。
Al線(線径9.5mm)並びにCuテープ(厚さ0.4mm)を用意し、ブラッシングによりその表面を処理した。ついで、このAl線上に前記Cuテープの表面処理した側を被せた後、ロール加工による縮径処理を行って線径が9.75mm(銅の占積率が15%)のCA母材として巻き取った。ついで、このCA母材を伸線機によって伸線加工して、加工度がおよそ2.45(線径2.87mm)の段階で、0.5m長さを切断して試料とした。この試料についてニッパによりCu被覆を螺旋状に剥離し、EPMAによって剥離面(50mm2)を測定した。測定されたAl量とCu量から新生面比率を計算したところ68%であったので、引き続き伸線加工を行い最終的に線径50μmのCA線を1543km作製した。この間に断線は生じなかった。このように実際のCA線の製造ラインにおいて、本発明の評価方法を適用したCA線の製造方法が有用であることを確認した。
前記と同様のCA母材を用い、加工度が2.45(線径2.87mm)の段階での新生面比率が47%であったものについて、同様の伸線加工処理を行った場合には線径50μmのCA線は27kmの段階で断線を生じた。このCA線について、加工度2.45(線径2.87mm)の段階でのAl線とCu被覆の結合の状態を詳細に調べたところ、両者の間には金属結合が十分に行われていない部分が見られた。
前記と同様のCA母材を用い、加工度が2.45(線径2.87mm)の段階での新生面比率が47%であったものについて、同様の伸線加工処理を行った場合には線径50μmのCA線は27kmの段階で断線を生じた。このCA線について、加工度2.45(線径2.87mm)の段階でのAl線とCu被覆の結合の状態を詳細に調べたところ、両者の間には金属結合が十分に行われていない部分が見られた。
本発明のCA線の評価方法を適用したCA線の製造方法によれば、比較的簡単な評価方法によってよって伸線加工を施しても断線することがなくCA線を得ることができ実用的な方法である。また、得られたCA線は、Al線とCu被覆の間にボイドや剥離がないので、例えば、高周波同軸ケーブル用の導体、ハードディスクドライブのピックアップコイルやヘッドホン用の巻線等として有用である。
1 Al線
2 Al線供給装置
3 ストレーナー
4 表面洗浄装置
5 研磨装置
6 Cuテープ供給装置
7 Cuテープ
8 成形装置
9 TIG溶接装置
10 CA母材
11 巻取装置
CA線 (Cu被覆Al線)
2 Al線供給装置
3 ストレーナー
4 表面洗浄装置
5 研磨装置
6 Cuテープ供給装置
7 Cuテープ
8 成形装置
9 TIG溶接装置
10 CA母材
11 巻取装置
CA線 (Cu被覆Al線)
Claims (3)
- アルミニウム線上に銅テープをフォーミングし、ついで前記銅テープの突合せ部分を溶接した後、縮径することによってアルミニウム線と銅テープ被覆を密着させて銅被覆アルミニウム母材とし、ついで前記銅被覆アルミニウム母材を伸線加工する銅被覆アルミニウム線の製造方法において、前記伸線加工工程における特定の段階の銅被覆剥離面(変色面)の新生面比率を測定することによって、アルミニウム線と銅被覆の密着性を評価することを特徴とする銅被覆アルミニウム線の評価方法。
- 前記新生面比率は、銅被覆アルミニウム線から剥離した銅被覆剥離面(変色面)のアルミニウムの面積比を、X線マイクロアナライザーによって測定して算出することを特徴とする請求項1に記載の銅被覆アルミニウム線の評価方法。
- アルミニウム線上に銅テープをフォーミングし、ついで前記銅テープの突合せ部分を溶接した後、縮径することによってアルミニウム線と銅テープを密着させて銅被覆アルミニウム母材とし、ついで、前記銅被覆アルミニウム母材を伸線加工処理する銅被覆アルミニウム線の製造方法において、前記伸線加工工程における銅被覆アルミニウム線の加工度[2ln(D/d)]が、2.02〜2.7の段階の銅被覆剥離面(変色面)における新生面比率を確認した後、さらに目的とする線径まで伸線加工を行うことを特徴とする銅被覆アルミニウム線の製造方法。
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