以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施の形態における金属板の加工用保持装置1の上面図である。また、図2は、図1のII−II線における金属板の加工用保持装置1の断面図である。図1及び図2を参照して、金属板の加工用保持装置1の概略構成について説明する。
図1に示すように、金属板の加工用保持装置1は、金属板Wにレーザ加工を行う加工ヘッド(図示せず)に対して平面移動可能に構成されるXYステージ30と、そのXYステージ30に固定され金属板Wの一端を保持する保持部材40と、その保持部材40に固定される板厚検出センサ150a及び板長検出センサ160aと、XYステージ30に水平移動可能に配設され金属板Wの他端を保持する可動部材50と、その可動部材50を付勢して金属板Wに引張力を付与するシリンダ70と、そのシリンダ70の作動状態を制御する制御装置100(図3参照)と、可動部材50と短枠部材30dとを連結する連結部材80とを主に備えて構成される。
図1に示すように、XYステージ30は、所定間隔を隔てて対向する2本の長枠部材30a,30bの端部同士を、2本の短枠部材30c,30dで連結して、上面視額縁状に形成されている。なお、XYステージ30は、長枠部材30a,30b及び短枠部材30c,30dに複数本の補強部材(図示せず)が連結され、それら各補強部材により箱状に形成されることで、全体としての剛性を向上させている。
XYステージ30には、金属板Wを保持する保持部材40及び可動部材50が短枠部材30c,30dに平行に配設されている。保持部材40は、短枠部材30cの内側に沿って長枠部材30a,30b間に架設され、それら長枠部材30a,30bに対して締結ボルト40aにより締結固定される。なお、長枠部材30a,30bにはその長手方向(図1左右方向)に沿って所定間隔毎に締結孔(図示せず)が形成されており、保持部材40の取付位置を変更することで、保持部材40は金属板Wの大きさに応じた位置に固定される。
図1に示すように、板厚検出センサ150a及び板長検出センサ160aが保持部材40に固定される。板厚検出センサ150aは、金属板Wの上面から金属板Wに光を当て反射する光により金属板Wの板厚(図1紙面垂直方向の長さ)を測定する反射型の非接触センサであり、後述する金属板Wを挟持する狭持部材91の幅方向(図1上下方向)の一端上側であって金属板Wの板厚方向(図1紙面垂直方向)で金属板Wと重なる位置に配設される。よって、金属板Wの板厚が変わると、金属板Wの下面と板厚検出センサ150aとの間の距離は変化しないが、金属板Wの上面と板厚検出センサ150aとの間の距離が変化するので、金属板Wの板厚を検出できる。
板長検出センサ160aは、金属板Wの金属板Wの板長(後述する可動部材50と保持部材40とで保持される金属板が引っ張られる引張方向に対して直交する方向における長さ、図1上下方向の長さ)を測定する透過型の非接触センサである。板長検出センサ160aは、金属板Wの板厚方向で金属板Wと重なる部分と重ならない部分とを有すると共に、狭持部材91の幅方向の両端それぞれに、金属板Wを板厚方向に挟むように一対配設される。
よって、一対の板長検出センサ160aのうち、例えば、上側の板長検出センサ160aから下側の板長検出センサ160aに向かって光が放射されると、金属板Wの板厚方向で金属板Wと重ならない部分は光が透過する一方、金属板Wの板厚方向で金属板Wと重なる部分は光が透過しない。これにより、板長検出センサ160aによって光が透過する長さを検出できるので、金属板Wの板厚方向で金属板Wと板長検出センサ160aとが重なる長さ(以下「検出長さ」と称す)が測定される。
また、狭持部材91の幅方向における一方の端部に配設される板長検出センサ160aと、狭持部材91の幅方向における他方の端部に配設される板長検出センサ160aとの間の離間距離(以下「板長検出センサ160aの離間距離」と称す)が後述するRAM103に入力されている。この板長検出センサ160aの離間距離は、金属板Wの板長に関係なく一定値が入力されている。
よって、板長検出センサ160aの離間距離に、狭持部材91の幅方向における一方の検出長さと、狭持部材91の幅方向における他方の検出長さとを加えることにより、板長検出センサ装置160(図3参照)によって、金属板Wの板長が測定される。従って、レーザ加工の工程において金属板Wの板厚および板長をオペレータが入力する工程を省略でき、レーザ加工の加工工程を簡易化できる。
図1に示すように、可動部材50は、短枠部材30dの内側に沿って設けられ、その長手方向両端部(図1上下方向端部)がガイド部材60の案内面(図示せず)に摺動可能に保持されている。即ち、ガイド部材60は、長枠部材30a,30bにそれぞれ締結固定され、可動部材50は、ガイド部材60の案内板(図示せず)を長手方向両端部の被案内部で上下(図1紙面垂直方向)から挟み込む。これにより、ガイド部材60に対して可動部材50が前後左右方向(図1左右および上下方向)へ摺動可能に案内される。
図1に示すように、保持部材40及び可動部材50の上面には、金属板Wの両端を狭持する板状の狭持部材91と、その狭持部材91に押圧力を付与する押圧部材92とがそれぞれ配設されている。狭持部材91は、保持部材40及び可動部材50の縁部に沿って配設される細長い板状体であり、2枚が重ねられている。押圧部材92は、保持部材40及び可動部材50にそれぞれ4個がXYステージ30の幅方向(図1上下方向)中央を通る仮想線(図示せず)に対して対称となる位置に配設されている。
図1に示すように、可動部材50の側面には、短枠部材30dに取着されたシリンダ70がリンクLを介して連結されている。更に、可動部材50と短枠部材30dとは、連結部材80により連結されている。また、シリンダ70は、押圧部材92よりもXYステージ30の幅方向外側であって、XYステージ30の幅方向(図1上下方向)中央を通る仮想線に対して対称となる位置に1個ずつが配設されている。さらに、連結部材80は、シリンダ70よりもXYステージ30の幅方向内側であってXYステージ30の幅方向(図1上下方向)中央を通る仮想線に対して対称となる位置に1個ずつが配設されている。
図1及び図2に示すように、シリンダ70は、ロッド71の伸長駆動および収縮駆動の両方向を空気圧により動作させる復動型シリンダとして構成され、ロッド71を可動部材50側へ向けた状態で短枠部材30dに取着されている。このロッド71の先端には、リンクLの一端側が揺動可能にピン結合されている一方、リンクLの他端側には、可動部材50の側面に締結固定されたステー部材51が揺動可能にピン結合されている。
シリンダ70のロッド71が伸縮駆動されるのに伴い、ロッド71と連結される可動部材50がロッド71の伸縮方向(図2左右方向)に移動される。従って、ロッド71を収縮駆動した場合には、その収縮力により可動部材50がリンクLを介してシリンダ70側(図2右側)へ引っ張られ、金属板Wにテンションが付与される。これにより、金属板Wを緊張させた状態でXYステージ30に保持できる。
また、この場合、可動部材50の長手方向両端部がガイド部材60の案内面に前後左右方向へ摺動可能に保持されると共に、2本のリンクLを介して、可動部材50がシリンダ70に連結されているので、金属板Wが若干弛んだ状態で固定されていたとしても、可動部材50を水平方向に傾けて、金属板Wを均一に緊張させることができる。
また、シリンダ70は、XYステージ30(図1参照)の幅方向(図1上下方向)中央を通る仮想線に対して対称となる位置に1個ずつが配設されている。よって、金属板Wの可動部材50側端部を短枠部材30dの両端側から2個のシリンダ70により引っ張って緊張させることができる(図1参照)。従って、金属板Wの全体を均一に緊張させた状態でXYステージ30(図1参照)に保持できる。よって、寸法精度の悪化を回避して、レーザ加工の精度を向上することができる。
図2に示すように、連結部材80は、可動部材50と短枠部材30dとを連結する部材であり、可動部材50の側面に締結ボルト52により締結固定され短枠部材30dへ向けて突出される平板状のストッパ部材81と、短枠部材30dの上面に締結ボルト30d1により締結固定されストッパ部材81の底面が当接される平板状の基体部材82と、それらストッパ部材81及び基体部材82を連結する締結軸部材83とを備える。
ストッパ部材81及び基体部材82は、上面および底面が互いに平行な平坦面として形成され、それら上面および底面がシリンダ70の伸縮方向と平行となるように配設されている。ストッパ部材81には、上面視長円状の長穴81aが板厚方向(図2上下方向)に貫通形成され、この長穴81aの長手方向は、シリンダ70におけるロッド71の伸縮方向と一致させている。
基体部材82には、ストッパ部材81の長穴81aに対応する位置に上面視円形の貫通孔82aが板厚方向に貫通形成されている。また、短枠部材30dには、基体部材82の貫通孔82aに対応する位置に上面視円形の貫通孔30d2が板厚方向に貫通形成されている。締結軸部材83は、これら長穴81a及び貫通孔82a,30d2にそれぞれ挿通され、下端にダブルナット機能を有する締結ナット部83aが回動不能に螺着されると共に、上端にハンドル部83bが螺着されている。
よって、ハンドル部83bの回転により、かかるハンドル部83bを締結軸部材83に対して螺進させることで、ストッパ部材81及び基体部材82を締結ナット部83a(短枠部材30d)とハンドル部83bとの間で挟圧保持することができ、可動部材50と短枠部材30dとを連結部材80により連結することができる。
これにより、金属板Wにレーザ加工(例えば、金属板Wのパターン部におけるスリット状の孔等が加工)が施される過程で、断面積の減少により金属板Wの引張応力が増大することを抑制できる。従って、加工ヘッド(図示せず)による金属板Wのレーザ加工中においても、金属板Wの引張力による伸び量を均一に保つことができる。このように金属板Wの伸び量を均一に保つことで、金属板Wの伸び量を基準にスケーリング処理(引張力による金属板Wの伸び率に応じて、金属板Wの加工寸法を規定寸法より拡大して金属板Wの加工データを作成する処理)により取得される加工データに基づいて加工ヘッドが行うレーザの加工寸法(例えば、スリット状の孔等の寸法)を目標の寸法により近づけることができる。よって、レーザ加工の加工精度を向上できる。
また、可動部材50と短枠部材30dとを連結部材80により連結することができるので、可動部材50のXYステージ30に対する相対移動を前後左右方向に規制できる。よって、XYステージ30が平面移動する際に、加工ヘッド20と加工台との間で摺動された金属板Wが摺動方向へ引っ張られて変位することを抑制することができる。これによっても、レーザ加工の精度を向上することができる。
さらに、シリンダ70よりもXYステージ30(図1参照)の幅方向(図1上下方向)中央を通る仮想線に対して対称となる位置に、連結部材80が1個ずつ配設されているので、金属板Wを緊張保持する可動部材50は、シリンダ70によって金属板Wが引っ張られる部分から等しい間隔を空けて、XYステージ30に固定される。従って、金属板Wの全体を均一に緊張させた状態でXYステージ30に固定できるので、寸法精度の悪化を回避して、レーザ加工の精度を向上することができる。
次いで、図3を参照して、制御装置100の詳細構成について説明する。図3は、制御装置100の電気的構成を示したブロック図である。制御装置100は、図3に示すように、CPU101、ROM102及びRAM103を備え、それらがバスライン104を介して入出力ポート105に接続されている。また、入出力ポート105には、レーザ加工部110、XY駆動部120、シリンダ駆動部130、板厚検出センサ装置150、板長検出センサ装置160等の装置が接続されている。
CPU101は、バスライン104により接続された各部を制御する演算装置であり、ROM102は、CPU101により実行される制御プログラム(例えば、図4に図示されるフローチャートのプログラム)や固定値データ等を記憶する書き換え不能な不揮発性のメモリである。RAM103は、制御プログラムの実行時に各種のデータ(例えば、板厚検出センサ装置150(板長検出センサ装置160)により取得された板厚(板長)、オペレータにより適宜入力された引張応力)を書き換え可能に記憶するためのメモリである。
レーザ加工部110は、金属板Wへレーザを照射するための装置であり、レーザ発信器と、そのレーザ発信器の出力をCPU101からの指示に基づいて制御する制御回路とを主に備えている(いずれも図示せず)。
XY駆動部120は、XYステージ30をXY方向へ移動させるための装置であり、X方向移動のための駆動力をXYステージ30に付与するX軸駆動装置と、Y方向移動のための駆動力をXYステージ30に付与するY軸駆動装置と、XYステージ30のXY方向への移動量をそれぞれ独立に検出する移動量検出装置と、その移動量検出装置の検出結果をCPU101へ出力すると共にX軸駆動装置およびY軸駆動装置をCPU101からの指示に基づいて駆動制御する制御回路とを主に備えている(いずれも図示せず)。
シリンダ駆動部130は、可動部材50へ付与する引張駆動力を調整するための装置であり、シリンダ70と、そのシリンダ70に供給する圧縮空気を貯留するエアタンク(図示せず)と、そのエアタンクをシリンダ70に接続するエア配管の経路中に配設されるバルブ(図示せず)と、それら複数のバルブの開度をCPU101からの指示に基づいて制御する制御回路(図示せず)とを主に備えている。即ち、シリンダ70は、上述したように、復動型シリンダとして構成され、バルブの開度を調整制御することで、シリンダ70の駆動力が調整される。即ち、バルブの開度が調整されることにより、シリンダ70の駆動力が、金属板Wの板厚および板長とオペレータにより適宜入力された引張応力とに基づき算出された引張力になるように、シリンダ70内のエア圧が調整される。
板厚検出センサ装置150は、板厚を検出する板厚検出センサ150aとその検出結果を処理してCPU101に出力する制御回路(図示せず)とを備えている。また、板長検出センサ装置160は、板長を検出する板長検出センサ160aとその検出結果を処理してCPU101に出力する制御回路(図示せず)とを備えている。板厚検出センサ装置150の制御回路と板長検出センサ装置160の制御回路とが入出力ポート105を介してCPU101に接続されている。よって、CPU101は金属板Wの板厚および板長を取得できる。
その他の入出力部170としては、例えば、接続された記録媒体から加工データを読み取るデータ読取部、または、操作パネルの操作者による操作状態を検出してCPU101へ出力する操作状態検出装置などが例示される。
次いで、図4を参照して、引張力調整処理について説明する。図4は、引張力調整処理を示すフローチャートである。この処理は、金属板Wの板厚および板長に基づいて、金属板Wに作用する引張応力が所定値となるための引張力が金属板Wに付与されるように、シリンダ70の駆動力を調整する処理である。かかる引張力調整処理が行われることにより、金属板の加工用保持装置1で保持される金属板Wは、その板厚または板長が異なっても、同一素材で構成される場合には金属板Wの引張力による伸び量の均一化が図られる。
引張力調整処理を行う前に、まず金属板Wが金属板の加工用保持装置1で保持される。具体的には、金属板Wの両端を狭持部材91で狭持させることにより、金属板Wの一端が保持部材40で保持されると共に金属板Wの他端が可動部材50に保持される。かかる金属板の加工用保持装置1で保持される金属板Wに対して、引張力調整処理が行われる。
引張力調整処理において、CPU101は、まず、そのXYステージ30に保持された金属板Wの板厚および板長を、板厚検出センサ装置150及び板長検出センサ装置160により取得する(S1)。その後、CPU101は、その取得された金属板Wの板厚および板長とオペレータにより適宜入力された引張応力とに基づいて金属板Wの引張力を算出する(S2)。
即ち、RAM103には、予めオペレータにより適宜入力された引張応力のデータが書き込まれているので、CPU101は、かかる引張応力のデータをRAM103から読み出し、その読み出された引張応力と、板厚検出センサ装置150及び板長検出センサ装置160により取得された金属板Wの板厚および板長とにより、金属板Wの引張力を算出する。
引張力(F)は、F=σ×S=σ×(D×t)で表される式(式1)により算出される。ここで、Dは金属板Wの板長、tは金属板Wの板厚、Fは引張力、Sは引張力の引張方向と直交する面の断面積、σは引張応力を表している。引張応力は、金属板Wが塑性変形を開始する弾性限界より小さな弾性範囲内であって、金属板Wの素材ごとに予め所定値に設定されており、その設定された値がオペレータにより適宜入力される。
CPU101は、算出された引張力(F)となるようにシリンダ70の駆動力を調整する。このシリンダ70の駆動力の調整はシリンダ70内のエア圧を調整することにより行われる。
引張力(F)は、F=n×P×Aで表される式(式2)により与えられる。よって、P(シリンダ70内のエア圧)は、(式1)及び(式2)から、P=σ×D×t/(n×A)で表される式により算出される。ここで、nは使用されるシリンダ70の数、Pはシリンダ70内のエア圧、Aはシリンダ70の断面積を表している。
そして、CPU101は、シリンダ70内の圧力が算出されたエア圧となるようにバルブの開度を調整する(S3)。バルブが調整され、エア配管を通してエアタンクとシリンダ70とを連通させることにより、エアタンク内の圧縮空気がシリンダ70内に供給される。これにより、算出された引張力となるようにシリンダ70の駆動力が調整される。シリンダ70の駆動力が調整されると、引張力調整処理は終了する。
従来の金属板の加工用保持装置1においては、シリンダ70によって、金属板Wを引っ張る引張力が一定に設定されていた。よって、金属板Wが同一素材で構成されていても、金属板Wの板厚または板長のいずれかが異なれば、金属板Wの伸び量も相違する。金属板Wの伸び量が相違すると、金属板Wの伸び率が相違するので、同一素材であっても、実際にレーザ加工を行う寸法が相違する。従って、同一素材について前回スケーリング処理を行って加工データを作成した場合であっても、板厚または板長のいずれかが異なれば、再度スケーリング処理を行うことにより新たに加工データを作成しなければならなかった。
これに対し、本発明の第1実施の形態における金属板の加工用保持装置1によれば、金属板Wの板厚および板長の値が取得され、その取得された板厚および板長と、予め設定された金属板Wの引張応力とに基づいて金属板Wの引張力が算出され、その引張力が金属板Wに付与されるようにシリンダ70のエアが調整されるので、金属板Wの板厚および板長が異なる場合であっても、金属板Wに対する引張応力が所定値になるようにシリンダ70の引張力が調整される。よって、金属板Wの板厚および板長が異なる場合であっても、金属板Wの引張力による伸び量の均一化が図られる。
これにより、金属板Wの引張力による伸び量を一回測定してスケーリング処理を行えば、金属板Wの材質が同一の場合は、次にレーザ加工される金属板Wの板厚および板長が前回の金属板Wと異なっても、そのスケーリング処理によって作成された前回の金属板Wの加工データを流用できる。よって、同一素材で構成される金属板Wのスケーリング処理を一回で済ませることができる。従って、金属板Wの板厚および板長が異なる場合ごとにスケーリング処理を行う必要がないので、その分、データ作成のための作業コストの削減を図ることができる。
引張力調整処理が終了した後、ハンドル部83b(図2参照)を回転させ、かかるハンドル部83bを締結軸部材83に対して螺進させる。これにより、ストッパ部材81及び基体部材82が締結ナット部83a(短枠部材30d)とハンドル部83bとの間で挟圧保持されるので、可動部材50と短枠部材30dとが連結部材80により連結される。よって、金属板Wにレーザ加工が施される過程で、断面積の減少により金属板Wの引張応力が増大することを抑制できる。従って、加工ヘッド(図示せず)による金属板Wのレーザ加工中においても、金属板Wの引張力による伸び量を均一に保つことができる。
次に、図5を参照して、本発明の第2実施の形態における制御装置の引張力調整処理について説明する。図5は、本発明の第2実施の形態における制御装置の引張力調整処理を示すフローチャートである。なお、上述した第1実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。
第1実施の形態における引張力調整処理では、レーザ加工の進行に伴って断面積が減少した場合であっても、連結部材80により可動部材50と短枠部材30dとを連結することにより、シリンダ70が金属板Wを引張すぎることを抑制して金属板Wの伸び量を均一化させていた。これに対して、第2実施の形態における引張力調整処理では、レーザ加工の進行に伴って金属板Wの断面積が減少した場合であっても、断面積の減少量に応じて引張力を再算出し、その再算出された引張力となるようにシリンダ70の駆動力を再調整することにより、シリンダ70が金属板Wを引張すぎることを抑制して金属板Wの伸び量を均一化させている。
S3の処理において、CPU101は、シリンダ70内の圧力が算出されたエア圧となるようにバルブの開度を調整した後、レーザ加工開始指令を出力する(S4)。これにより、加工ヘッドは加工データに基づいてレーザ加工を開始する。
レーザ加工が開始されると、金属板Wは加工データに基づいて切断されていく。その結果、金属板Wの断面積(引張力が作用する方向に対して直交する方向における金属板Wの断面積)は次第に減少していく。これに対し、CPU101は、加工データを取得し、その取得した加工データから金属板Wの断面積の減少量を算出し、現在における金属板Wの断面積を算出する(S5)。この算出された金属板Wの断面積と、RAM103から読み出された引張応力とに基づいて、CPU101は引張力を再算出する(S6)。
この再算出された引張力となるように、CPU101はバルブの開度を再調整する(S7)。これにより、金属板Wの断面積の減少量に応じてシリンダ70内のエア圧が減少し、シリンダ70の駆動力が減少する。よって、再算出された引張力となるようにシリンダ70の駆動力が再調整される。
CPU101は、シリンダ70の駆動力が再調整された後、レーザ加工が終了したかどうかを判断する(S8)。S8の処理の結果、レーザ加工が終了したと判断される場合には(S8:Yes)、引張力調整処理を終了し、レーザ加工が終了していないと判断される場合には(S8:No)、S5に戻りS5からS7の処理をレーザ加工が終了するまで繰り返し行う。よって、レーザ加工中、引張力が調整されるので、引張応力を所定値に保つことができる。従って、レーザ加工の加工精度を向上させることができる。
本発明の第2実施の形態における金属板の加工用保持装置1によれば、断面積の減少量に応じて引張力を再算出し、その再算出された引張力となるようにシリンダ70の駆動力が再調整されるので、金属板Wにレーザ加工が施される過程で、断面積の減少により金属板Wの引張応力が増大することを抑制できる。従って、加工ヘッド(図示せず)による金属板Wのレーザ加工中においても、金属板Wの引張力による伸び量を均一に保つことができる。従って、金属板Wの加工データが金属板Wの伸び量を基準にスケーリング処理により取得されるので、金属板Wの伸び量を均一に保つことで、その加工データに基づいて加工ヘッドが行うレーザ加工の加工精度を向上できる。
また、金属板Wの引張力を調整することにより、金属板Wの引張応力を所定値に保つことができるので、可動部材50と短枠部材30dとを連結する連結部材80を不要とすることができる。よって、金属板の加工用保持装置1の部品点数を削減することができ、コストの削減を図ることができる。
なお、図4に示すフローチャート(引張力調整処理)において、請求項1の板厚等取得手段としてはS1の処理が、引張力算出手段としてはS2の処理が、調整手段としてはS3の処理がそれぞれ該当する。また、図5に示すフローチャート(引張力調整処理)において、請求項4の再算出手段としてはS6の処理が、再調整手段としてはS7の処理が、それぞれ該当する。
以上、各実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した各実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、本発明の各実施の形態においては、金属板Wをレーザ加工する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、金属板Wをウォータジェット加工する場合であってもよい。金属板Wをウォータジェット加工する場合は、ウォータジェットによる水圧が金属板Wに負荷されるので、引張応力を所定値に保つことにより、加工の精度を向上できる。
また、本発明の各実施の形態においては、可動部材50側のみを移動する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、可動部材50と保持部材40との両方を移動させる場合であってもよい。これにより、金属板Wの長手方向の両端を引っ張ることができ、金属板W全体に均一にテンションをかけることができる。
また、本発明の各実施の形態においては、金属板Wの引っ張られすぎを防止するために、可動部材50と短枠部材30dとを連結部材80により連結する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、ねじで伸縮可能に構成されるストッパを短枠部材30dに取付け、金属板Wを緊張保持した後にストッパを可動部材50に当接させる構成であってもよい。ストッパの長さをねじで調整してストッパを可動部材50に当接させることにより、可動部材50は短枠部材30d側に移動できないので、ストッパによっても、金属板Wの引っ張りすぎを防止できる。
本発明の各実施の形態においては、板厚検出センサ150a及び板長検出センサ160aが保持部材40に固定される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、板厚検出センサ150a及び板長検出センサ160aを省略してもよい。この場合は、オペレータが金属板Wの板長や板厚を測定して、その測定値を制御装置100に入力すればよい。この入力された測定値はRAM103に記憶される。よって、引張力を算出し調整する処理(S2からS8)は上述した各実施の形態と同様に行われる。このように板厚検出センサ150a及び板長検出センサ160aを省略することにより、部品点数の削減により金属板の加工用保持装置のコスト削減を図れる。また、例えば、板厚検出センサ150a及び板長検出センサ160aを省略しても、金属板Wの板長や板厚が同一のものを連続してレーザ加工する場合には、測定値を一度入力すれば良いだけであるので、レーザ加工の加工工程を複雑化することなく、コスト削減を図れる。
本発明の各実施の形態においては、シリンダ70が空圧式の場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、油圧式でも電動式でもよい。電動式シリンダの場合は、空圧式および油圧式のシリンダと比べて、シリンダ70の駆動力を精密に制御することができるので、引張力の調整を精密に行うことができる。