JP5337216B2 - マグロ属魚類用人工配合飼料 - Google Patents

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Description

本発明は魚由来リン脂質を配合したマグロ属魚類用人工配合飼料に関する。
近年世界中でマグロ消費量が高まる一方で、世界的なマグロ資源の減少が危惧され、漁獲規制が年々強まっている。日本は世界で最大のマグロ消費国であり、国外からの輸入量も多い。しかし規制強化により、今後日本への供給量の減少とマグロ価格の上昇が懸念されている。
そこで、親マグロより採卵し、人工ふ化させた稚魚を成魚まで育て、再び産卵させるサイクルを繰り返す完全養殖技術に対してマグロ資源の回復と、安定供給の期待が集まっている。
マグロ魚類の種苗生産における給餌は、ふ化3日後からワムシを与え、10日後からマダイやイシダイの卵やふ化稚魚を与え、稚魚に変態した3週間後からは徐々に細断したマイワシ、イカナゴ、マアジなどの生餌に切り替える方法が採られている。生餌の給餌では、飼育海水の汚染、疾病の経口感染など様々な問題を生じ、また供給・品質が不安定であるため、常に一定の栄養価を与えることが難しく栄養の過不足を生じる。また、飼料の保存・細断にも多大な手間とコストを要するといった問題がある。
よって、常に安定した品質の飼料を与えることが可能な人工配合飼料での稚魚の飼育が進められている。人工飼料の脂質源としては通常魚油が用いられているが、マグロ類に関してはトリアシルグリセロールを主成分とする魚油等の中性油だけでは十分な飼育ができなかった。次に植物性のリン脂質である大豆リン脂質が試みられたが、生残率向上効果や成長性が不十分であった。現時点ではマグロ稚魚期の人工配合飼料に魚由来リン脂質が必要と考えられ、すじこ油が使用されている(特許文献1)。
しかしながら、その原料となるサケ科魚類の卵巣はいわゆるイクラとして食用にされることが多く、常に食用との競合が起こり供給に不安があること、すじこ油を飼料用として利用するにはあまりにも高価であることなどから、完全養殖の継続性及び拡大化の障壁になることが予想される。また、マグロ類稚魚の生残率は改善されたとはいえ、他魚種の養殖に比べ依然として致死率は高いものであり、成長性や生残率の点で完全養殖技術における稚魚期の人工配合飼料はまだ十分に満足のいくものではない。
また、特許文献2では植物性極性脂質の使用が提案されているが、生残率向上効果や成長性はすじこ油に近づいたもののいまだ劣るものであり、現時点ではすじこ油が現実的なリン脂質源となっている。
特開2008−148652号公報 特開2008−220180号公報
本発明の課題は、稚魚期の生残率を向上させ、成長率および肥満度においても十分満足でき、しかも、すじこ油に比べ安価な脂質源を配合したマグロ属魚類用人工配合飼料を提供することである。
本発明者らは、鋭意研究を行なった結果、魚頭部を主原料として採油された魚原油から調製された魚由来リン脂質画分を脂質源として配合した人工配合飼料をマグロ属魚類稚魚に給餌すると稚魚期の生残率を向上させ、成長率および肥満度も良好であることを見出して本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、
(1)魚頭部を主原料として採油された魚原油から調製された魚由来リン脂質画分を配合してなるマグロ属魚類稚魚用人工配合飼料、
(2)魚由来リン脂質画分がグリセロリン脂質及びスフィンゴミエリンを含有し、リン脂質の構成脂肪酸として炭素数20以上の多価不飽和脂肪酸を含有する(1)の人工配合飼料、
(3)グリセロリン脂質が実質的にホスファチジルコリンとリゾホスファチジルコリンである、(2)の人工配合飼料、
(4)魚由来リン脂質画分を1〜50質量%配合して、飼料中のリン脂質を3質量%以上とした(1)〜(3)いずれかの人工配合飼料、
(5)脂質成分が魚由来の油のみからなる、(1)〜(4)いずれかの人工配合飼料、
(6)魚由来リン脂質画分が、カツオ及び/又はマグロの頭部を主原料とした魚原油に水を添加して撹拌し、分離した中間層を回収することを含む工程により調製される、(1)〜(5)いずれかの人工配合飼料、
を提供するものである。
本発明の魚由来リン脂質画分を配合したマグロ属魚類用人工配合飼料は、稚魚期の生残率を高め、十分な成長率および肥満度の稚魚の飼育を可能にする。
本発明のマグロ属魚類用人工配合飼料は、脂質源として魚由来リン脂質画分が配合されたものである。本発明における魚由来リン脂質画分は、魚頭部を主原料として採油された魚原油から調製されたものである。魚原油は、カツオやマグロの頭部を主原料として採油された魚原油が好ましい。なお、採油する頭部に他の部位、例えば尾部等が少量混入していてもかまわない。例えばカツオの場合、鰹節等の製造工程において、可食部以外の頭部を主原料とする残滓から大規模な採油が行われている。マグロ頭部についても同様に採油されている。カツオ・マグロなどの魚原油にはイワシ油やサンマ油など全魚体から採油する魚原油に比べ、リン脂質が主体の極性脂質が多く含まれているので望ましい。
このような魚原油は通常は不純物を除くため、アルカリ脱酸及び活性白土による脱色と呼ばれる油脂の精製が施され、養殖魚用人工配合飼料の脂質源として用いられる。この精製の過程において、魚原油に含まれるリン脂質は油脂から除去されてしまうため、このような精製油を本発明における脂質源として用いるのは適当ではない。また、その精製で発生する残渣からリン脂質を再び回収することは非常に手間がかかる上、収率が低く、コストも高くなるので好ましくない。
本発明における魚由来リン脂質を得るためには、魚原油を精製する前に処理を行い、リン脂質を多く含む画分を分離し、回収することが望ましい。具体的な方法の例を下記に示すが、必ずしもこの方法に限定されるものではない。
まず遠心分離またはろ過等の処理により、魚原油に含まれる重合物や微量の蛋白等の夾雑物を除くことが望ましい。次に魚原油を油脂結晶が析出しない程度の低い温度に保ち、水を添加する。この温度として30〜60℃が望ましく、さらに望ましくは30〜40℃である。水の添加量は予想されるリン脂質の含有量により調整でき、魚原油に対して1〜5%、望ましくは2〜4%が好ましい。添加水の温度は油温と同じか、近い温度が好ましい。この際、水の替わりにクエン酸・リン酸などを添加した水溶液を用いることも可能である。水添加後、激しく攪拌することでリン脂質の油からの遊離と凝集を促進する。さらに、添加する水粒子をできるだけ小さくして油中に供給すると、さらに遊離と凝集が促進され好ましい。撹拌の後、静置すると上部に油層、中間部にリン脂質層、下部に水層となる3層に分離するので中間層を回収する。この時に遠心分離機を使用することができる。
回収した中間部のリン脂質層(含水魚由来リン脂質画分)には、リン脂質以外に中性脂質と水分がまだ多く混入しているが、飼料製造過程で水分乾燥を行う場合には、含水物をそのまま利用することも出来る。保存性の向上のためにクエン酸やリン酸などの酸を添加してもよい。その際はpHを4.2以下に調整することが望ましい。また、公知の方法で水分を除去してもよい。
また、リン脂質含量を高めるために公知の方法で残存する水分と中性油を除去することができる。具体的な例として、更なる遠心分離やアセトン分配等により除去する方法がある。さらにヘキサンやエタノールなどの有機溶剤を併用することもできる。
このようにして得られた魚由来リン脂質画分は、5%以上のリン脂質が含まれていることが望ましく、さらに望ましくは10%以上である。アセトンなどの溶剤処理により中性油と水を除去した場合には、リン脂質含量を20〜80%とすることができる。好ましいリン脂質含量の例は、10〜80%、20〜70%、30〜60%、30〜50%、35〜45%等である。魚由来リン脂質画分の組成は、50〜80%、好ましくは60〜80%がグリセロリン脂質、20〜50%、好ましくは20〜40%がスフィンゴミエリンである。グリセロリン脂質は実質的にホスファチジルコリンおよびリゾホスファチジルコリンである。また、グリセロリン脂質の構成脂肪酸にはDHAを代表とする炭素数20以上の多価不飽和脂肪酸を含有するという特徴を有する。
「実質的に」とは、それ以外の成分が含まれないか、含まれていてもわずかか痕跡程度である状態をいう。具体的には、対象となる成分が90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上である状態をいう。より具体的に説明すると、ホスファチジルコリン及びリゾホスファチジルコリン以外の、ホスファチジルエタノールアミン等が含まれないか、含まれていてもわずかか痕跡程度であり、グリセロリン脂質中のホスファチジルコリン及びリゾホスファチジルコリンの合計が90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上である状態をいう。
魚由来リン脂質画分は、その含有するリン脂質量に応じて、適宜配合することができるが、他の栄養成分を考慮すると1〜50質量%配合することが好ましい。魚由来リン脂質画分に含まれている水分は飼料を調製する際に乾燥させることにより除くことが可能であるので、残存するリン脂質を考慮すればよい。魚粉など他の原料に含まれる脂質と合わせて、飼料中の脂質含量は5〜30質量%が好ましく、望ましくは15〜25質量%である。飼料中のリン脂質として3質量%以上となるように魚由来リン脂質画分を配合することが好ましい。また、DHAを代表とする炭素数20以上の多価不飽和脂肪酸を飼料中に0.3質量%以上とすることもできる。また、魚由来リン脂質画分に含まれる中性油をそのまま利用してもよいし、中性油としての魚油をさらに配合してもよい。
本発明の人工配合飼料には、魚由来リン脂質画分の他に、飼料に通常配合される他の成分を配合してもよい。具体的には魚粉、カゼイン、糖類、タンパク質、グルテン類、デンプン類、ガム類、ミネラル混合物、ビタミン混合物、セルロース等が挙げられ、魚粉としては蛋白質の消化性を向上させた酵素処理魚粉を配合することが望ましい。また摂餌促進物質として、アラニン、リジン、グルタミン酸、ヒスチジンのうち1種以上のアミノ酸と、イノシン酸を配合することも望ましい。これらのアミノ酸およびイノシン酸は、アルカリ金属塩や塩酸塩でも使用できる。
本発明の人工配合飼料の形態については特に限定されるものではなく、魚類に給餌可能であれば、いかなる形態であってもよい。具体的にはモイストペレットやドライペレットが例示できる。
なお、本明細書において、「マグロ属魚類」とは、分類学的に、サバ科魚類のなかのマグロ属(Thunnus)に含まれる魚類を意味する。上記マグロ属魚類の例として、太平洋クロマグロ(Thunnus orientalis)、大西洋クロマグロ(Thunnus thynnus)、キハダマグロ(Thunnus albacares)、メバチマグロ(Thunnus obesus)、ビンナガマグロ(Thunnus alalunga)、ミナミマグロ(Thunnus maccoyii)、コシナガマグロ(Thunnus tonggol)、およびタイセイヨウマグロ(Thunnus atlanticus)等を挙げることができる。なお、本明細書では「太平洋クロマグロ」および「大西洋クロマグロ」を総称して単に「クロマグロ」と称する。上記マグロ属魚類の中でも、本発明にかかる人工配合飼料は、クロマグロの飼育に好適に用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。本発明の実施例における分析方法は下記の通りである。
脂質含量およびリン脂質含量の測定
各飼料原料からの脂質の抽出はFolch法により行い、抽出した脂質は、Bartlettの方法(Bartlett,G.R.,J.Biol.Chem.,234,466(1959))によりリン量を定量し、リン脂質量に換算した。
脂質含有飼料原料をクロロホルム/メタノール混合液(1/1)に溶解し、試料を10mg/mlの濃度に調整した。調製した試料を100μl試験管に取り溶媒を留去した後、10Nの硫酸を1ml加え、230℃で3時間加熱処理を行った。次いで30%過酸化水素水を2滴加え、150℃で1.5時間加熱処理を行った。このものを放冷した後0.22%モリブデン酸アンモニウム溶液9.2mlとFiske Subbarow試薬0.4mlを加え、沸騰水中で7分間加熱した。次にろ紙濾過を行い蒸留水で25mlにメスアップしたのち、U−2000ダブルビーム分光光度計(日立製作所製)で波長830nmの吸光度を測定した。得られた吸光度からリン含量を算出し、さらにステアロイル−オレイル−ホスファチジルコリン(分子量790)に相当するものとして、リン脂質含量に換算して総リン脂質含量とした。なお、リン濃度と吸光度の関係、吸光度からのリン脂質含量の算出式は下記に示した。
リン濃度と吸光度の関係
10μg/ml濃度のKHPO標準液を調製し、0、0.5、1.0、2.0、3.0mlずつ試験管に取り上記と同様の分析を行い、リン濃度と吸光度の検量線を作成した。リン濃度と吸光度の関係は下記の通りであった。
検量線 y=26.9x+0.0158
y:[リン濃度(μg/ml)]
x:[吸光度]
総リン脂質含量の算出
リン脂質としてリン含量からリン脂質への質量換算は定法に従い係数25を用いた。また、純度既知の大豆リン脂質で同様の分析操作を行い、回収率の補正を加えた。
[リン脂質含量]=(26.9×[吸光度]+0.0158)×25/[回収率]/1000×100
グリセロリン脂質の各組成含量及びスフィンゴミエリン含量の測定方法
薄層クロマトグラフィーで各リン脂質成分を分離させた後、FID検出器による定量をイアトロスキャンMk−6(三菱化学ヤトロン社)を用いて行なった。分離された各リン脂質成分のホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンの総計をリゾ体も含めてグリセロリン脂質とした。
具体的にはリン脂質画分をクロロホルム/メタノール混合液(1/1)に溶解し、試料を10mg/mlの濃度に調整した。続いて試料を5μlクロマロッド(登録商標)にスポットし、クロロホルム/メタノール/水/アンモニア水(47/20/2.5/0.25)の混合溶媒で15分間展開した後、クロマロッドを乾燥させ、その後同様の混合溶媒で50分間の展開を行った。リン脂質各スポットは、市販品の各リン脂質標準品を同様に分離展開し、そのRf値から判別した。前記の総リン脂質含量にイアトロスキャンで得られた各リン脂質成分の組成百分率を掛けてグリセロリン脂質の各組成含量及びスフィンゴミエリン含量とした。
なお、リン脂質各スポットのRf値の判別に使用した標準品は以下の通りである。
ホスファチジルコリン(大豆由来・フナコシ社製)、リゾホスファチジルコリン(卵黄由来・和光純薬工業社製)、スフィンゴミエリン(牛脳由来・シグマアルドリッチ社製)、ホスファチジルエタノールアミン(卵由来・和光純薬工業社製)、リゾホスファチジルエタノールアミン(卵由来・フナコシ社製)、ホスファチジン酸(卵由来・フナコシ社製)、ホスファチジルセリン(牛脳由来・フナコシ社製)、ホスファチジルイノシトール(ブタ肝臓由来・フナコシ社製)。
リン脂質中のDHA含量の測定方法
リン脂質画分のアセトン可溶成分、即ち中性脂質や脂肪酸をアセトン洗浄により除去し、得られたアセトン処理リン脂質について、内部標準物質(トリコサン酸)を加えた後、三フッ化ホウ素−メタール法により脂肪酸のメチルエステルを調製した。得られた脂肪酸のメチルエステルを常法のガスクロマトグラフィー法により分析した。用いた装置はGC−17A(島津製作所社製)、カラムはBPX−70(SGE社製)、昇温条件は、140℃で2分保持後、240℃まで5℃/分で昇温し、240℃で20分保持とした。
スフィンゴミエリンの確認
リン脂質画分のアセトン可溶成分をアセトン洗浄により除去し、得られたアセトン処理リン脂質画分からスフィンゴミエリンを単離した。アセトン処理して得られたリン脂質画分を0.4N KOH−メタノール溶液で処理しグリセロリン脂質の加水分解を行った後、シリカゲルカラム精製によりスフィンゴミエリン画分を回収した。
得られたスフィンゴミエリン画分についてスフィンゴミエリンであることを確認するため、LC/MS Finnigan LCQDECA(Thermo Quest社製)により構造確認を行った。上記精製スフィンゴミエリンをクロロホルム/メタノール(1/1)混合液に溶解し、LC/MS分析サンプルとした。カラムは5SL−II(4.0mm×150mm)(ナカライテスク社製)を用い、ポジティブモードで分析を行った(m/zの値はNa付加体:分子量+23)。スフィンゴミエリンの構成脂肪酸としてパルミチン酸(C16:0、分子量239.4)が結合したm/z=725.6のピークが確認できた。同様にベヘン酸(C22:0、分子量340.6)、リグノセリン酸(C24:0、分子量368.6)、ネルボン酸(C24:1、分子量366.6)が結合したスフィンゴミエリンに相当するm/z=809.6、m/z=837.6、m/z=835.6のピークをそれぞれ確認した。また上記精製スフィンゴミエリン酸分解物にて、下記(I)のR=Hである化合物に相当するm/z=487.2のピークを確認した。これらのことから、シリカゲル精製により得られたリン脂質が、下記に示す構造のスフィンゴミエリンを含むことが確認できた。
Figure 0005337216
実施例1:カツオリン脂質画分の調製
カツオ原油(カツオ頭部を主体とする鰹節製造時の残渣から採油された魚原油、酸価9.0)100kgを40℃に加温し、水温35℃の水3kgを少しずつ加えながら30分間攪拌した。18時間の静置により上層・中間層・下層の3層に分離させた後、中間層(リン脂質層)2kgを回収した。この中間層に5℃に冷やしたアセトン6000mlを混合し、−20℃で一晩静置し、沈澱したアセトン不溶性画分を回収した。アセトンを真空下で留去し、魚由来リン脂質画分340gを得た。
得られたリン脂質画分の、総リン脂質含量は40%であった。このリン脂質の構成脂肪酸のうち、炭素数20以上の多価不飽和脂肪酸は脂肪酸組成中17.4%であり、飼料重量に対して0.3質量%であった。DHAは脂肪酸組成中9.5%であった。リン脂質画分の構成脂肪酸組成(%)を表1に示した。
またグリセロリン脂質が27.4%、スフィンゴミエリンが12.6%であった。また、グリセロリン脂質の組成はホスファチジルコリンが19.8%、リゾホスファチジルコリンが7.2%、ホスファチジルエタノールアミンが0.4%であり、その他のグリセロリン脂質は検出されなかった。
Figure 0005337216
実施例2:カツオリン脂質画分配合飼料の調製
実施例1で得られたカツオリン脂質画分を配合したマグロ稚魚用人工配合飼料を調製した。原料と配合量は表2に示した。酵素処理魚粉はProfish S.A.社製を用いた。まず実施例1で得られたリン脂質画分125gを細かく切断し、300mlの水を加え撹拌した。このリン脂質溶液に酵素処理魚粉450g、カゼイン200g、コーングルテン100g、ハルバー処方ビタミン混合物70g、ハルバー処方ミネラル混合物50g、タウリン5g、摂餌促進物質6.78gを加え、固まりが出来ないようによく混合した。この混合物を手でよく捏ね合わせた後、−80℃冷凍庫で凍結させた。凍結乾燥機により凍結した飼料の水分を取り除いた後、ステンレスのふるいにかけ直径1mm程度の粒型に造粒したものを試験用飼料とした。
この飼料に含まれるリン脂質含量を表3に示した。原料に用いた酵素処理魚粉にもリン脂質が含まれていることを考慮し、リン脂質含量は、カツオリン脂質画分由来リン脂質と酵素処理魚粉由来リン脂質の合算値とした。
比較例1:すじこ油配合飼料の調製
実施例2においてカツオリン脂質画分の代りにすじこ乳化油(日清マリンテック社製)を配合した以外は同様にしてマグロ稚魚用人工配合飼料を調製した。すじこ油の総リン脂質含量は37.1%であった。この飼料に含まれるリン脂質含量を表3に示した。これらの値は、実施例2と同様にすじこ油由来リン脂質と魚粉由来リン脂質の合算値として示した。
比較例2:カツオ中性油配合飼料の調製
実施例2においてカツオリン脂質画分の代りにカツオ中性油(植田製油製)を配合した以外は同様にしてマグロ稚魚用人工配合飼料を調製した。カツオ中性油にはリン脂質が含まれていなかった。そのため、カツオ中性油飼料に含まれるリン脂質は、全て酵素処理魚粉由来のリン脂質である。このカツオ中性油飼料中のリン脂質含量を表3に示した。
Figure 0005337216
(*グルタミン酸0.13g、ヒスチジン塩酸塩3.57g、イノシン5’−リン酸2ナトリウム塩3.08g)
Figure 0005337216
実施例3および比較例3、4
実施例3として、実施例2で調製したカツオリン脂質画分配合飼料によるマグロ稚魚の飼育テストを下記の要領で実施し、生残率と成長性を評価した。比較例3、4として比較例1および2で調製した飼料をそれぞれ給与した。結果は表4および表5に示した。
<供試魚および飼育方法>
近畿大学水産研究所大島試験場にて人工種苗生産した26日齢のクロマグロ稚魚を、500L容透明円形水槽に150尾ずつ収容して各試験区を設けた。試験区は各試験飼料につき三反復区を設けた。給餌には自動給餌機を用い、6:30〜18:00の間、適宜飽食給与を行い14日間飼育した。試験期間中の水温は25.0〜27.4℃、溶存酸素飽和度は106〜128%であった。
<生残率>
14日間の飼育試験終了時の生残率を表4に示した。14日間の飼育は水槽でのクロマグロ稚魚の飼育期間としては長く、衝突などによる死亡数が増え、全ての試験区において生残率が低くなった。しかしその中でもカツオ由来リン脂質の試験区の生残率は32.6%であり、他の試験区に比べて有意に高い生残率であった。すじこ油、カツオ中性油の生残率は、それぞれ21.7%、21.4%となった。
<成長>
また体重および全長の増加量を表5に示した。カツオ由来リン脂質画分試験区では、体重・全長共に最も大きく成長し、すじこ油試験区よりも良好な結果が得られた。脂質源にリン脂質を含まない中性油試験区では、体重・全長共に成長が劣る結果となった。このことから本発明のリン脂質画分を含む人工配合飼料は生残率の向上に効果を発揮し、また成長促進においても優れた効果が得られることが明らかとなった。
Figure 0005337216
Figure 0005337216
本発明の飼料により、マグロ属魚類の養殖において、従来使用されていた高価なすじこ油を使用せずに、すじこ油よりも優れた成長率および肥満度を得ることが可能となる。

Claims (6)

  1. 魚頭部を主原料として採油された魚原油から調製された魚由来リン脂質画分を配合してなるマグロ属魚類稚魚用人工配合飼料。
  2. 魚由来リン脂質画分がグリセロリン脂質及びスフィンゴミエリンを含有し、リン脂質の構成脂肪酸として炭素数20以上の多価不飽和脂肪酸を含有する請求項1記載の人工配合飼料。
  3. グリセロリン脂質が実質的にホスファチジルコリンとリゾホスファチジルコリンである、請求項2に記載の人工配合飼料。
  4. 魚由来リン脂質画分を1〜50質量%配合して、飼料中のリン脂質を3質量%以上とした請求項1〜3いずれか1項に記載の人工配合飼料。
  5. 脂質成分が魚由来の油のみからなる、請求項1〜4いずれか1項に記載の人工配合飼料。
  6. 魚由来リン脂質画分が、カツオ及び/又はマグロの頭部を主原料とした魚原油に水を添加して撹拌し、分離した中間層を回収することを含む工程により調製される、請求項1〜5いずれか1項に記載の人工配合飼料。
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