以下に、本発明の各実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
[第1実施形態]
以下、図1乃至6を参照して、本発明の第1実施形態に係る撮像装置について説明する。なお、本実施形態の撮像装置は、CCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子により被写体像を光電変換して画像情報を生成し、メモリ等の電子的記録媒体に画像情報を記録するデジタル撮像装置である。本装置はフォーカスレンズの移動とともに撮像素子を移動させながら複数回の撮像が可能である。本実施形態では、連続した複数回の撮像を行う際に、複数回に亘って撮像素子の電荷蓄積と読出しを連続して行える撮像装置について説明する。これは一般的には撮像素子の電子シャッタ機能による動作である。
図1は撮像装置の構成例を示すブロック図であり、撮像装置はカメラ本体1と、これに着脱可能な撮影レンズ2を備える。撮影レンズ2はフォーカスレンズ3と、フォーカスレンズ駆動部4を有する。フォーカスレンズ3は後述の撮像素子8の撮像面に被写体からの光束を結像させる。フォーカスレンズ駆動部4はフォーカスレンズ3を光軸方向に沿って移動可能に支持する支持機構と、駆動用のアクチュエータと、該アクチュエータの駆動回路を含む。
カメラ本体1に取り付けられた測光部5には、撮影レンズ2を通過した光束を計測することにより被写体の輝度を計測するセンサが使用される。シャッタ駆動回路6は後述のシステム制御部14の指示に従ってシャッタ7の遮光部材を駆動してシャッタ7を開放する時間及び遮光する時間を制御する。シャッタ7はカメラ本体1に固定され、後述の撮像素子8の電荷蓄積に先立ってシャッタ駆動回路6により遮光部材であるシャッタ羽根を開放する。これにより撮像素子8への露光が可能となり、電荷蓄積の終了後にシャッタ7が閉じて撮像素子8が遮光され、撮影時以外の撮像素子8へのゴミの付着が防止される。
撮像素子8にはフォーカスレンズ3を経て被写体からの光が結像し、該素子は撮像面に投影された画像を電気信号に変換する。また撮像素子8は、いわゆる電子シャッタ機能を有しており、画像信号の取り込み開始時点における電子シャッタとしての電子先幕の機能、及び画像信号の取り込み中止を行う電子後幕の機能を有する。すなわち、電子先幕の動作により画像信号の電荷蓄積が開始し、電子後幕の動作により所定の時間後に蓄積が終了する。その後、蓄積された画像信号の読出動作が行われ、後述する信号処理回路11に画像信号が送出される。
撮像素子8の移動機構9は、撮像素子8を撮影光軸に沿って前後に移動させることでフォーカスブラケット撮影を可能にする。その詳細については後述する。位置検出部10は撮像素子8の光軸方向における位置を検出し、検出信号を後述のシステム制御部14に送出する。
信号処理回路11は、撮像素子8の出力する画像信号を処理して、不図示の表示部に画像を表示させ、また記録媒体12に画像データを保存するための回路である。信号処理回路11は、撮像素子8からのアナログ画像信号をデジタル画像データに変換するA/D変換部、タイミング発生回路、画像処理部、メモリ制御部等を備える。
記録媒体12は撮影した画像データを格納するための記憶手段であり、所定枚数分の画像データを格納するのに十分な記憶容量を有する。また、記録媒体12はカメラ本体1に対して着脱可能であり、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリによって構成されている。
メモリ13は、後述するシステム制御部14の動作用の定数、変数、プログラム等を記憶する。またメモリ13には、後述する撮影条件により異なる情報や数値データが記憶されている。その他、撮像処理用プログラム、画像処理用プログラム、作成した画像ファイルデータを記録媒体12に記録するためのプログラム、画像ファイルデータを記録媒体12から読み出すためのプログラム等がメモリ13に記憶されている。また、メモリ13には上記プログラムをマルチタスク処理にて実行するOS(オペレーティングシステム)等の各種プログラムも記憶されている。
システム制御部14はカメラ本体1及び撮影レンズ2の制御手段であり、AF制御に係る位相差検出機能やコントラスト検出機能、露光制御機能、撮像素子8の移動速度変更機能等を有する。システム制御部14は、例えばCPU(中央演算処理装置)を含むマイクロコンピュータユニットから構成されており、測光部5や位置検出部10、不図示の位相差検出部等からの信号をプログラムに従って処理することで上記の機能を実現する。例えばシステム制御部14は撮像素子8の電子シャッタ機能に係る制御のために、被写体の条件に応じた電荷蓄積時間を演算し、蓄積開始、終了、読出しのタイミングを制御する。すなわち、第1実施形態にて撮像素子8の電荷蓄積時間と露光時間は同義である。
カメラ本体1に取り付けられたレリーズボタン15は2段式スイッチSW1及びSW2をもつ構造とされ、これらのスイッチによる信号はシステム制御部14に送られる。レリーズボタン15を1段目まで押し込んだ状態を半押しといい(SW1がオン状態)、この状態では測光及び焦点状態検出が行われる。半押し状態からさらに2段目まで押すことを全押しといい(SW2がオン状態)、全押しによって撮影が行われる。
システム制御部14はレリーズボタン15の信号を受けて、装置全体のシーケンスの開始や終了を制御する。またシステム制御部14は、不図示の焦点検出センサからの信号に基づいて位相差検出方式での測定を行い、またフォーカスレンズ駆動部4に対してフォーカスレンズ3の移動量等を指示する。システム制御部14は撮像素子8の移動機構9を構成する駆動部への通電量を制御して撮像素子8の移動及び停止を行う。そしてシステム制御部14は位置検出部10からの検出信号を受けて、撮像素子8がその移動範囲内のどこに位置するかを把握する。なお本実施形態にてシステム制御部14は、被写体の条件に応じて撮像素子8の露光時間を制御する露光制御手段であるとともに、撮像素子8の移動機構9を制御して撮像素子8の移動速度を変更する制御手段でもある。
次に撮像素子8の移動機構9について説明する。図2は要部の構成を示すために光軸方向に切断した概略的な断面図であり、撮像素子8及び保持板8aが予定結像面に対応する位置に移動した状態を示している。図3は移動機構9を光軸方向から見た正面図である。
図2に示すように、撮像素子8の撮像面の位置としては、少なくとも位置A、位置B、位置Cの3箇所を、撮像素子9の可動範囲が含むものとする。すなわち位置Aは後ピント位置であり、位置Bに示す予定結像面から光軸方向に沿って、撮影レンズ2の側へ所定量(これをdと記す)だけ移動した位置である。位置Bは予定結像面の位置を示し、位置Cは前ピント位置であり、位置Bに示す予定結像面から光軸方向に沿って、撮影レンズ2とは反対側へ所定量dだけ移動した位置である。
撮像素子8はその背面にて保持板8aに取り付けられている。保持板8aは背面側から複数(本例では3つ)のスプリング16により、常に前方(撮影レンズ2側)に付勢されている。保持板8aは、カメラ本体に固定された複数(本例では2本)のガイド軸17に沿って移動可能な状態で支持されている。従って撮像素子8は、その受光面が保持板8aの取付面に対して平行に固定された状態で、ガイド軸17に沿って光軸方向(図2の左右方向)に進退し、フォーカスレンズ3による被写体の撮像面への結像状態が調節可能である。
保持板8aに固定された撮像素子8を移動させる駆動部は、保持板8aに固定された複数のマグネット9aと、カメラ本体1に固定された複数のコイル9bを備え、コイル9bへの通電によって電磁力が発生する。マグネット9aは厚み方向に2極に着磁された永久磁石である。本例では撮像素子8を中心として120度の角度間隔でマグネット9aが3箇所に配置されており、それぞれN極を撮影レンズ2の側に向けて撮像素子8の保持板8aに固定されている。コイル9bは被覆導線を用いた巻き線コイルであり、本例ではカメラ本体1の不図示の支持部に3個のコイル9bがそれぞれ取り付けられおり、各コイルはマグネット9aと所定の間隔をもって対向するように配置されている。コイル9bの通電時における電流の向きに応じて発生する電磁力の向きが変化し、通電量により電磁力の大きさが変化する。以上のように、保持板8a、マグネット9a、コイル9bは撮像素子8の移動手段を構成している。
位置検出部10にはホール素子が用いられ、該素子は、保持板8aに固定されたマグネット9aに対向する位置にてカメラ本体1に固定されている。本例では各コイル9bの内径部にホール素子が配置されている。ホール素子はマグネット9aの磁力を検出し、両者の遠近に応じた出力信号の変化をシステム制御部14が演算によって求め、撮像素子8及び保持板8aの光軸方向における位置を検出することができる。
付勢手段であるスプリング16は、その一端部が保持板8aに固定され、他端部がカメラ本体1の支持部に固定されており、本例では、光軸を中心に120度の角度間隔をもって3箇所に配置されている。スプリング16は、保持板8aの背面8dを常に撮影レンズ2の側に押圧する圧縮スプリングである。すなわち、スプリング16の弾性力は撮像素子8を前進させる力となっている。また、撮像素子8及び保持板8aがマグネット9aとコイル9bとの電磁的な反発力により後退する際には、スプリング16が押圧されて徐々に圧縮される。
互いに平行な2本のガイド軸17は、カメラ本体1の不図示の支持面に対して垂直に固定されている。図3に示すようにガイド軸17の一方は、保持板8aに形成した嵌合孔8bに挿通され、ガイド軸17の他方は長孔8cに遊挿されている。つまり、長孔8cを回転止めとして回転を防止しながら撮像素子8をガイド軸17に沿って円滑に移動させることができる。図2に示す複数のストッパ18はカメラ本体1に固定されており、コイル9bの非通電時に保持板8aがスプリング16の押圧力によりストッパ18に当接する。このとき、撮像素子8は位置Aに来ている。
フォーカスブラケット撮影では、フォーカスレンズ3の予定結像面での撮影に加え、撮像素子8を光軸方向に沿って所定量ずらした位置でも撮影が行われる。この所定量は、被写体への追従性を考慮した場合、例えば被写界深度を超えた量で決定される。あるいはカメラの焦点状態検出系の製造誤差による測定結果のズレを考慮した場合、レンズの製造誤差によるフォーカスレンズ3の駆動位置のズレを積み重ねた結果と設計値のズレ等から所定量が決定される。また、予定結像面の前後において何コマ撮影するかについても選択が可能である。本例では設計位置を予定結像面の位置とした場合、その後ピント位置と前ピント位置でそれぞれ1コマ撮影するとして、合計3コマの撮影が行われものとし、コマ数分の撮影画像データはメモリ13に格納される。
次に撮像素子8の移動に関して説明する。コイル9bへの通電時の電流量に応じて光軸方向に発生する電磁力が変化するので、コイル9bとこれに対向するマグネット9aの表面磁束との間に反発力を発生させた場合、スプリング16との間で力の均衡状態を変化させることが可能となる。撮像素子8及び保持板8aは、2本のガイド軸17によって光軸方向に移動可能に支持されているので、コイル9bに流れる電流の向き及び電流量を制御すれば、これらに応じて撮像素子8及び保持板8aの光軸方向における移動量を制御可能である。また、通電量を時間的に変化させることで、撮像素子8及び保持板8aの光軸方向における移動速度が変化する。ここでは説明を容易にする為、マグネット9aとコイル9bが互いに反発する方向の電磁力を発生させ、撮像素子8及び保持板8aが撮影レンズ2とは反対側に後退するように、コイル9bへの通電を行うことを正通電と称することにする。また、その逆の通電を行うこと、つまりマグネット9aとコイル9bが互いに引き付け合う電磁力を発生させ、撮像素子8及び保持板8aが撮影レンズ2の側へ前進するように、コイル9bへの通電を行うことを逆通電と称することにする。システム制御部14は、コイル9bへの通電の向き及び通電量を変化させることで撮像素子8の移動速度を制御することができる。これにより撮像素子8及び保持板8aを所望の位置へと前進又は後退させること、及びその移動速度を制御することができる。
次に撮影処理例について図4、図5のフローチャート及び図6のタイミングチャートを用いて説明する。図4は処理の前半部を示し、図5は処理の後半部を示しており、システム制御部14にて実行されるプログラムに従って処理が行われる。図6はフォーカスブラケット撮影中の第1コマから第3コマまでの連続した複数回の撮影動作において、撮像素子8の位置変化と撮像動作を例示したタイミングチャートである。(a)乃至(c)の各図において上側に示すグラフ線は、像面位置の時間的な変化を表す。つまり、このグラフ線は、時間経過に伴って撮像素子8が待機位置である位置Aから予定結像面である位置Bを経て、位置Cへと移動した場合の位置を表す。その傾きは移動速度を表し、電荷蓄積動作中の移動速度をVsと記し、読出動作中の移動速度をVrと記す。また下側のグラフ線は撮像素子8の動作状態、つまり電荷の蓄積と読出しの状態を表している。なお、蓄積時間をTsと記し、読出時間をTrと記す。撮像素子8の蓄積時間Tsは被写体の輝度に応じて変化するが、読出時間Trは画素数が一定であるため、一定時間としている。
図6(a)は露光時間が短い場合、例えばTsが1/60秒の場合の動作を示す。図6(b)は露光時間が中程度の場合、例えばTs=1/30秒の場合の動作を示し、図6(c)は露光時間が長い場合、例えば長秒時としてTs=1/15秒の場合の動作を示している。ここで本実施形態での露光時間とは、撮像素子8の蓄積時間であることに注意を要する。
以下、図4及び図5のフローチャートに従い、まず図6(a)を参照しながらTs=1/60秒の場合の動作を説明する。尚、基本的な処理の流れはTsの値が1/60秒より短い場合でも同様である。
S101で処理が開始し、電源のオン状態にてシステム制御部14はレリーズボタン15の状態を判定する(S102)。該ボタンの半押しによりSW1がオン状態となったと判定された場合、測光部5により被写体の測光が行われる。被写体の輝度に応じてシステム制御部14の露光制御により、不図示の絞り装置による光量制限量、及び撮像素子8の電子シャッタの露光時間としての蓄積時間が演算される。その後、蓄積時間Tsと所定の読出時間Tr、及び撮像素子8の像面位置の間隔dに基づいて、撮像素子8の移動速度Vsが計算される。すなわち、システム制御部14は「Vs=d/(Ts+Tr)」に基づき、撮像素子8の電荷蓄積中の移動速度Vsを算出する。この速度をもって3コマの撮像が行われる間、撮像素子8は停止することなく一定速度で移動する。また、演算と同時に、撮像素子8の待機位置である位置Aへのセット動作が行われる。セット動作とは、コイル9bが無通電の状態で保持板8aをスプリング16の付勢力により、ストッパ18に当接させることである。撮像素子8が確実に図2の位置Aに来るようにするために、コイル9bへの逆通電が行われ、これにより撮像素子8及び保持板8aが撮影レンズ2の側へ前進する(S103)。
撮像素子8が目標位置である位置Aに到達した否かの判定処理(S104)は、位置検出部10の検出出力と、システム制御部14が記憶している目標位置でのホール素子の出力とを比較することで行われる。両者が一致した場合、システム制御部14は撮像素子8が目標位置に到達したと判定する。位置Aへの到達判定が下された場合、S105に進むが、そうでない場合、S103に戻る。
待機位置(位置A)にてコイル9bへの通電が停止され、撮像素子8及び保持板8aの移動が停止する(S105)。次に不図示の焦点状態検出部及びシステム制御部14によって、AF制御に係る位相差検出方式での測定が行われ(S106)、システム制御部14は測定結果に基づいてフォーカスレンズ駆動部4に指令を送りフォーカスレンズ3を移動させる。つまり位置Bを予定結像面として、被写体の距離に応じたフォーカスレンズ位置へとフォーカスレンズ3が移動する(S107)。つまり、このフォーカスレンズ位置は撮像素子8の予定結像面を位置Bとして演算した場合の位置である。
次に撮影者による撮影続行の操作を確認すべく、システム制御部14はSW1の状態を判定する(S108)。その結果、SW1がオン状態であると判定された場合、S109に進むが、SW1がオフ状態であると判定された場合にはS103に戻る。
次にシステム制御部14はSW2の状態を判定する(S109)。レリーズボタン15の全押しによりSW2がオン状態であると判定された場合、S110に進むが、SW2がオフ状態であると判定された場合にはS108に戻る。
S110ではシャッタ駆動回路6の指示によりシャッタ7が開放される。これよりフォーカスブラケット撮影が開始し、システム制御部14はコイル9bに正通電を行い、徐々にその通電量を増加させて前述の移動速度Vsを維持して撮像素子8及び保持板8aの後退を開始させる(S111)。同時に撮像素子8の電子シャッタ動作により、第1コマ目の撮像について露光が開始し、つまり画像信号の蓄積が開始し、1/60秒の蓄積時間の経過後に露光が終了する(S112)。続いて第1コマ目の読出しが行われる(S113)。図6(a)の上側のグラフ線に示すように、露光時間1/60秒は所定の基準時間(本例では1/30秒とする)よりも短い。この時のフォーカスブラケット撮影では複数回の撮像にてVs=Vrであるので、蓄積中及び読出し中のいずれの期間でも移動速度がVsであって、撮像素子8が定速にて停止することなく後退を続ける(図5のS114)。撮像素子8の後退は継続され、徐々にコイル9bへの通電量が増加して前述の移動速度Vsを維持して撮像素子8は、第2コマ目の撮像位置である位置Bに向かう。システム制御部14は撮像素子8が位置Bに到達したか否かを判定する(S115)。位置検出部10の検出出力と、システム制御部14が記憶している位置Bにおけるホール素子の出力が比較され、両者の一致によって目標位置Bへの撮像素子8の到達が判定される。位置Bへの到達判定が下された場合、S116に進むが、未到達の場合、S114に戻る。
予定結像面である位置Bは、既に移動しているフォーカスレンズ3の予定結像面の位置である。被写体が前述の位相差検出時と同じ位置にあって、撮像装置1における製造誤差等を無視すれば、この位置において丁度ピントの合った撮影画像が得られることになる。
予定結像面における第2コマ目の撮影を行うため、撮像素子8の電子シャッタ動作により第2コマ目の撮像について露光が開始し、つまり電荷の蓄積が開始して、1/60秒の蓄積時間の経過後に露光が終了する(S116)。撮像素子8が適正露光に必要な時間分の蓄積を終えると、続いて第2コマ目の読出しが行われる(S117)。読出し中も前述の移動速度Vr(=Vs)でもって、撮像素子8は定速にて停止することなく後退を続ける(S118)。撮像素子8の後退は継続され、徐々にコイル9bへの通電量を増加させて前述の移動速度Vsを維持しつつ、撮像素子8は第3コマ目の撮影位置である位置Cに向かう。位置Cは既に移動しているフォーカスレンズ3の予定結像面の位置Bから所定量dだけ後退した位置であり、被写体の移動がなく、製造誤差等を無視すれば、前ピントとなる画像が得られる位置である。システム制御部14は、撮像素子8が位置Cに到達したか否かを判定する(S119)。位置検出部10の検出出力と、システム制御部14が記憶している位置Cでの位置検出部10の出力が比較され、両者の一致により目標位置Cへの到達が判定される。位置Cへの到達判定が下された場合、S120に進むが、未到達の場合にはS118に戻る。
位置Cにおける第3コマ目の撮影を行うため、撮像素子8の電子シャッタ動作により第3コマ目の撮像について露光が開始し、つまり電荷の蓄積が開始し、1/60秒の蓄積時間の経過後に露光が終了する(S120)。撮像素子8が適正露光に必要な時間分の蓄積を終えると、続いて第3コマ目の読出しが行われる(S121)。次にシステム制御部14はシャッタ駆動回路6に指令を送り、シャッタ7が閉じて、撮像素子8が遮光される(S122)。
撮像素子8及び保持板8aは第3コマ目の蓄積時間が経過するまでの間、前述の移動速度Vsを維持しながら移動する。その後、蓄積及び読出しが終了すると、次回のフォーカスブラケット撮影に備えて撮像素子8を位置Aに復帰させる必要がある。そのため、システム制御部14は徐々にコイル9bへの通電量を減らして撮像素子8の移動速度をVsから減速させる。スプリング16の押圧力がコイル9bの電磁力を上回ると、撮像素子8の移動方向は後退から前進に転じる(S123)。移動方向の反転は徐々に行われるため、撮像素子8の支持機構に対して過大な負荷がかかることはない。システム制御部14は撮像素子8が位置Aに到達したか否かを判定する(S124)。その結果、位置Aへの到達判定が下された場合、S125に進むが、未到達の場合にはS123に戻る。
S125にてコイル9bへの通電が停止し、撮像素子8の前進が停止する。その後、システム制御部14はSW1の状態を判定する(S126)。レリーズボタン15の状態が判定され、SW1がオフ状態の場合には上記一連の処理が終了する(S127)が、SW1がオン状態の場合、つまり、撮影者に連写撮影の意図があれば、図4のS102に戻って連続撮影が実行される。
上記した複数回の撮像動作により、メモリ13には、撮影時の撮像素子8の位置が異なる3枚の画像データが記憶される。これらの画像データの中で最も評価値の高い画像データが最もピントの合った画像のデータとして選択され、該データが記録媒体20に記録され、他の画像のデータはメモリ13から消去される。画像の評価方法としては公知のコントラスト検出等が用いられ、システム制御部14は、例えば位相差検出方式のAF時に選択した焦点検出エリアに相当する領域における画像のコントラストを画像毎に求める。このようにして毎回の撮影毎に最良のピント状態の画像データのみを記録媒体に記録して保存することができる。
次に図6(b)に示す、露光時間が中程度(Ts=1/30秒)の場合の動作について説明する。前記の式「Vs=d/(Ts+Tr)」にて、Ts=1/30秒であり、Tr、dの値は図6(a)の場合と同じであるため、Ts=1/30秒の場合、撮像素子8の蓄積中の移動速度Vsは、Ts=1/60秒の場合に比べて低下する。しかし、Vs=Vrであり、3コマの撮像が行われる間、撮像素子8は停止することなく一定速度で移動する。その他のシーケンスについては図6(a)にて説明した内容と同じであり、よって説明は省略する。
次に図6(c)に示す、露光時間が長秒時(Ts=1/15秒)の場合の動作について説明する。前記の式「Vs=d/(Ts+Tr)」にて、Ts=1/15秒であり、Tr、dの値は図6(a)の場合と同じであるため、Ts=1/15秒の場合、Vsの値は図6(a)、(b)の場合に比べて小さくなる。しかし、ここではVs≠Vrであり、読出し中の移動速度Vrについては、前述のTs=1/30秒の場合の値を採用する。すなわち蓄積後、徐々に加速してVs(<Vr)からVrに切換わるので、図6(c)のグラフ線のように3コマの撮像の間、蓄積と読出動作の切換えに同期して撮像素子8の移動速度も切換わることになる。その他のシーケンスについては図6(a)にて説明した内容と同じであり、よって説明は省略する。
以上のように、露光時間の判定に係る基準時間をTjと記すとき、露光時間が基準時間以下(Ts≦Tj)の場合、Vs=Vrとして、連続した複数回の撮像動作中、撮像素子8は一定速で移動する。すなわち、フォーカスブラケット撮影の際、所定の露光時間以下では露光時間の長さに応じた移動速度で撮像素子8が停止することなく移動しながら複数回の撮影が行われる。またTs>Tjの場合には、Vs<Vr、つまり蓄積動作中の移動速度が読出動作中の移動速度未満となるように設定され、連続した複数回の撮像動作中、撮像素子の移動速度がVsとVrとの間で切換わる。すなわち、所定の露光時間を越える長秒時撮影においては、露光中と露光後とで撮像素子8の移動速度が異なる。
本実施形態においては基準時間Tjの長さを1/30秒に規定している。この露光時間以下の露光時間での撮像においては蓄積中及び読出し中の撮像素子8の移動速度が等しく、複数回の撮像の間、撮像素子8は停止することなく一定速度で移動する。そのときの移動速度は露光時間が長くなるにつれて低下する。また、露光時間が基準時間以上の長秒時の場合、蓄積中及び読出し中の移動速度が異なり、撮像の際に移動速度が切換わる。長秒時の場合、撮像素子8の移動速度は低下しているので、移動速度を切換えても撮像素子8の支持機構に過度の負担は生じない。また、露光時間が長いので、支持機構への負荷を減らすように十分な加減速を行うことも可能である。
以上により、撮像素子8の高速移動が必要な場合(露光時間が短い場合)、撮像素子8の移動速度の変化や、急激な起動や停止動作が起きないので、撮像素子の支持機構にかかる負荷を軽減でき、撮像素子8の撮像面精度の低下を防止できる。また長秒時の撮影においては露光中の撮像素子8の移動速度に比べて、露光後の撮像素子の移動速度が速くなるように制御しているので、複数回に亘る撮影の時間間隔が必要以上に延びることがない。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態では撮像の際、メカニカルシャッタによる露光及び遮光が必要な撮像素子を用いた撮像装置について説明する。また、撮像装置には連続撮影コマ数として、例えば1秒間に10コマの撮影を行うといった仕様があり、これは撮像素子の所定の蓄積時間や、読出時間、メカニカルシャッタ機構等のチャージ動作に必要な時間によって決定される。従って、1秒間に10コマの撮影を行う場合、コマ毎の撮影間隔が約100ミリ秒を超える長さでは撮影できない。一方、被写体が暗い場合等のように、露光時間(蓄積時間)が数秒といった長秒時の場合にはそれに応じて撮影間隔は長くなる。よって、連続した複数回の撮像を行う際、露光時間が所定時間よりも短い場合には、上記の撮影間隔を考慮して撮像素子8の移動速度が計算される。また露光時間が所定時間よりも長い場合には、露光時間に応じて撮像素子8の移動速度が計算される。
第2実施形態では、電子シャッタ機能を有する撮像素子を用いた第1実施形態と異なり、メカニカルシャッタ方式の撮像を行う。第2実施形態に係る装置構成は、シャッタ以外は第1実施形態の場合と同じであり、よって以下では相違点を中心に説明する。なお第2実施形態に係る撮像装置は連続撮影速度として1秒間に10コマ撮影が可能な性能を有するものとする。
先ず、装置構成について説明する。図1に示すシャッタ駆動回路6はシステム制御部14の演算結果に従い、シャッタ7の遮光部材である先幕及び後幕を駆動してシャッタ7を開放する時間及び遮光する時間を制御する。シャッタ7はカメラ本体1に固定されたメカニカルシャッタであり、シャッタ駆動回路6により遮光部材である先幕と後幕を走行させることで撮像素子8の露光と遮光が行われ、電荷の蓄積量が制御される。第2実施形態においてはシャッタ駆動回路6とシャッタ7が露光制御手段である。
撮像素子8はフォーカスレンズ3によって被写体からの光が結像され、撮像面に投影された画像を電気信号に変換する。シャッタ7の開放に先立ち、一度、撮像素子8の電荷を捨て去り、電荷蓄積の準備処理が行われる。シャッタ7の先幕の走行後、撮像素子8への露光により撮像素子8が電荷蓄積を開始する。続いてシャッタ7の後幕の走行によって撮像素子8が遮光され、電荷蓄積が終了する。
システム制御部14は撮像素子8に対し、被写体条件に応じた蓄積時間の演算、電荷の蓄積及び読出しのタイミング制御を行い、シャッタ駆動回路6に指令を送ってシャッタ7の開放及び遮光の制御を行う。
次に第2実施形態に係る撮影動作例について図7のタイミングチャート及び図8、図9のフローチャートを用いて説明する。図7(a)は、露光時間が短い場合、例えばTs=1/60秒の場合の動作を示し、(b)は露光時間が中程度、例えばTs=1/30秒の場合の動作を示し、(c)は露光時間が長秒時、例えばTs=1/15秒の場合の動作を示している。図中のTiは撮影間隔を表す。また図8は処理の前半部を示し、図9は図8に続く処理の後半部を示す。
まず図7(a)を参照しながら、露光時間が1/60秒の場合の動作を説明する。尚、露光時間が1/60秒より短い場合も基本的な処理の流れは同様である。
図8のS201にて処理が開始し、S202でレリーズボタン15の半押しによりSW1がオン状態になると、測光部5により被写体の測光が行われる。被写体の輝度に応じてシステム制御部14は、不図示の絞り装置の絞り値及びシャッタ7の開放時間としての蓄積時間を演算する。すなわち、撮影待機状態では撮像素子は遮光され、撮影直前に一斉に画素の電荷が捨てられる。続いてシャッタ7の開放によって電荷蓄積が開始し、適正量の露光が終わるとシャッタ7が閉じて撮像素子8が遮光され、蓄積された電荷が電気信号に変換される。その後、システム制御部14は撮影間隔Ti、蓄積時間Ts、読出時間Tr、及び撮像素子8の像面位置の間隔dに基づいて、撮像素子8の移動速度Vsを計算する。すなわち、露光時間が所定の基準時間(例えば、1/30秒)よりも短い場合には、移動速度Vsが撮影間隔の長さによって規定される。蓄積中の撮像素子8の移動速度Vsと、読出し中の撮像素子8の移動速度Vrは等しく、「Vs=Vr=d/Ti」により移動速度が算定される。撮像素子8が移動速度Vsをもって3コマの撮像の間、停止することなく一定速で移動する。
S203乃至209の処理は図4のS103乃至109の処理と同様であり、説明を省略する。
S209でSW2がオン状態になると、フォーカスブラケット撮影が開始し、第1コマ目の撮像が始まる。その際、撮影間隔Tiの計時動作が不図示のタイマーによって開始する。
S210に進み、システム制御部14はコイル9bへの正通電を行い、徐々にその通電量を増加させて前述の移動速度Vsを維持しつつ撮像素子8及び保持板8aの後退を開始させる。同時にシャッタ駆動回路6によりシャッタ7の先幕が動作し、シャッタ7が開放する(S211)。撮像素子8は第1コマ目の撮像に係る画像信号の電荷蓄積を開始し(S212)、1/60秒後の経過後にシャッタ駆動回路6によりシャッタ7の後幕が動作して撮像素子8が遮光され(S213)、電荷蓄積が終了する。
続いて第1コマ目の読出しが行われ、読出された画像信号が後段の信号処理回路11に送られて処理される(図9のS214)。この露光時間1/60秒は所定の基準時間1/30秒よりも短い。よって図7(a)の上側に示す一直線のグラフ線のように、フォーカスブラケット撮影における複数回の撮像の間、「Vs=Vr」であり、蓄積中及び読出し中ともに撮像素子8は同じ移動速度で、停止することなく後退を続ける。
その後も撮像素子8の後退は継続し、徐々にコイル9bの通電量が増加して、撮像素子8は前述の移動速度Vsを維持しつつ撮影の第2コマ目の位置である位置Bに向かう(S215)。目標位置Bへの到達時点と撮影間隔Tiの経過時点(計時終了時点)は同時である。S216にて撮像素子8が位置Bに到達したと判定された場合、S217に進むが、未到達の場合にはS215に戻る。
撮像素子8が位置Bに達すると、シャッタ駆動回路6によりシャッタ7の先幕が動作してシャッタ7が開放され、撮影間隔Tiの計時動作が開始する(S217)。これと同時に撮像素子8が第2コマ目の撮像に係る画像信号の電荷蓄積を開始し(S218)、1/60秒の経過後にシャッタ駆動回路6によりシャッタ7の後幕が動作して撮像素子8が遮光され(S219)、電荷蓄積が終了する。
続いて第2コマ目の読出しが行われ、画像信号が後段の信号処理回路11に送られる(S220)。撮像素子8の後退は継続し、徐々にコイル9bの通電量が増加して、撮像素子8は前述の移動速度Vsを維持しつつ第3コマ目の撮影位置Cに向かう(S221)。目標位置Cへの到達時点と撮影間隔Tiの経過時点は同時である。S222で撮像素子8が位置Cに到達したか否かが判定され、撮像素子8が位置Cに到達した場合、S223に進むが、未到達の場合、S221に戻る。
撮像素子8が位置Cに到達すると同時にシャッタ駆動回路6によりシャッタ7の先幕が動作してシャッタ7が開放し、撮影間隔Tiの計時動作が開始する(S223)。これと同時に撮像素子8が第3コマ目の撮像に係る画像信号の電荷蓄積を開始し(S224)、1/60秒の経過後にシャッタ駆動回路6によりシャッタ7の後幕が動作して撮像素子8が遮光され(S225)、電荷蓄積が終了する。続いて第3コマ目の読出しが行われ、画像信号が信号処理回路11に送られる(S226)。
S227乃至231の処理は、図4のS123乃至127の処理と同様であり、よってそれらの説明は省略する。
次に図7(b)に示す、露光時間が中程度(1/30秒)の場合の動作について説明する。本実施形態において露光時間が1/30秒のとき、蓄積時間Tsと読出時間Trの合計と撮影間隔Tiとが同一になる。従って撮影間隔Tiは図7(a)の場合と同じ時間長あるから、この時の撮像素子8の移動速度も図7(a)の場合と同一であり、「Vs=Vr=d/Ti」となる。撮像素子8は移動速度Vsでもって3コマ分の撮像の間、停止することなく一定速度で移動する。その他のシーケンスについては図7(a)説明した内容と同じであり、よって説明は省略する。
次に図7(c)に示す、露光時間が長秒時(1/15秒)の場合の動作について説明する。本実施形態において露光時間が1/15秒のとき、撮影間隔Tiは前述した1/60秒、1/30秒の場合と異なり、延長されてTi2となる。すなわち、「Ts+Tr=Ti2>Ti」である。従って、撮像素子8の蓄積中の移動速度Vs及び読出し中の移動速度Vrは、「Vs=d/Ts, Vr=d/Tr」から求まる。Tsが1/15秒であり、Tr、dは前述の場合と同一であるため、Ts=1/15秒の場合の移動速度Vsは前述の場合に比べて遅い速度となる。しかし、ここでは「Vs≠Vr」であって、読出し中の移動速度Vrについては前述のTs=1/30秒の場合のVrを採用する。すなわち、蓄積後に徐々に加速してVsからVrへの切換えが行われる。つまり図7(c)の上側に示すグラフ線のように、3コマの撮像の間、蓄積動作と読出動作の切換えに同期して、撮像素子8の移動速度が切換えられる。その他のシーケンスについては図7(a)にて説明した内容と同じであり、よって説明を省略する。
第2実施形態は、撮像素子8を光軸方向に沿って移動させる移動機構9を備え、最短の撮影間隔(時間間隔)が設定されている撮像装置に好適である。つまり最短の撮影間隔に影響のない露光時間での撮像の場合、撮像素子8を一定速度で停止させずに移動させながら複数回の撮影を行える。また、最短の撮影間隔を延長するような長秒時の露光時間での撮像の場合、露光中と露光後とで撮像素子の移動速度を異なる速度に変更して、撮像が行われる。すなわち長秒時撮影では、露光中の撮像素子の移動速度に比べて、露光後の撮像素子の移動速度を速めることで、撮影間隔が必要以上に長くならないように回避できる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば本実施形態ではマグネット9aとコイル9bが光軸に直角な面内にそれぞれ配置されて、ビオサバール則に従い、互いの反発力により撮像素子8を移動させる。これに限らず、マグネット9aの着磁方向とコイル9bを光軸に平行な面内に配置し、磁場に関するガウスの法則に従い、互いにずれる力により撮像素子8を移動させるように構成してもよい。