JP5334388B2 - 食品廃棄物および汚泥からのエネルギー回収システム - Google Patents

食品廃棄物および汚泥からのエネルギー回収システム Download PDF

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Description

本発明は、食品の生産、流通および消費の各段階で廃棄される食品廃棄物と下水処理場、工業排水処理場等から排出される汚泥との双方からエネルギーを回収し、電力、熱、およびコンポストとして利用可能な乾燥汚泥として産出する、食品廃棄物および汚泥からのエネルギー回収システムに関する。
従来、食品の生産、流通および消費の各段階で廃棄される生ごみその他の食品廃棄物は、その大部分が焼却後、埋め立て処分されていた。しかし、平成13年5月には「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」(通称、食品リサイクル法)が施行され、事業系生ごみの一部はリサイクルが義務付けられることになり、資源循環型社会システム構築への取り組みが推進されてきた。
一方、下水道の普及とともに下水処理場から発生する汚泥も増加しているが、これらの下水汚泥等の汚泥もその多くは有効利用されず、焼却後に埋め立て処分されていた。しかしながら、汚泥は年々増加しており、各自治体ともその処理に多額の費用を費やしており、また、最終処分場における許容量が減少するとともにその立地条件が厳しく制限されるようになってきており、汚泥の処理はまさに逼迫した社会問題となっている。
そこで、食品廃棄物および汚泥から効果的にエネルギーを回収するとともに減量化を図り、資源循環型社会システム構築に貢献することを目的とし、食品廃棄物および汚泥のバイオガス化やコンポスト化の検討が行われてきた。
例えば、特開2002−326071号公報(特許文献1)は、食品廃棄物を粉砕スラリー化処理し、有機性汚泥を濃縮して上記スラリーとスラリータンクで混合して食品廃棄物等循環資源スラリーを調整し、得られた食品廃棄物等循環資源スラリーを粉砕機を介してバイオリアクターに導入し、バイオリアクター内でメタン発酵処理してバイオガスと残留汚泥を生成し、バイオガスを脱硫後ガスエンジン又はマイクロガスタービンで燃焼させて電力および熱を発生させるとともに、残留汚泥を有機物系廃液処理施設の脱水装置へ圧送して脱水ケーキを発生させ、この脱水ケーキをガスエンジン又はマイクロガスタービンからの排熱により乾燥・減量化処理する、食品廃棄物等循環資源のリサイクル方法およびそのための装置を開示している。
また、下水処理場等で脱水処理された後の含水率の低い固形状の塊の汚泥(以下、本明細書において、「濃縮汚泥」と表す。)をメタン発酵させてバイオガスを得る方法も検討されており、例えば、特開2003−103299号公報(特許文献2)は、含水率90%以下の濃縮汚泥を十分にメタン発酵させるために、濃縮汚泥に対して爆砕処理、すなわち濃縮汚泥を耐圧容器中で高温・高圧の水蒸気によって短時間蒸煮した後急激に大気圧下に放出して断熱膨張させる処理、または超臨界水(温度374.1℃以上、圧力22.04MPa以上の水)もしくは亜臨界水(温度150〜374℃、圧力2〜22MPaの水)といった高温高圧の領域内で処理する高温高圧処理を施した後にメタン発酵する、濃縮汚泥の処理方法およびそのための装置を開示している。
特開2002−326071号公報 特開2003−103299号公報
特許文献1に開示された方法によると、現在焼却埋め立て処分されている食品廃棄物と汚泥の両方からエネルギーを回収することができるため、最終処分場への負荷を低減することができ、資源循環型社会システム構築に貢献することができる。しかしながら、下水処理場等で脱水処理された後の含水率の低い固形状の塊濃縮汚泥は固形状の塊となっており、スラリータンクにおける食品廃棄物スラリーとの混合工程および得られた混合物の粉砕機での粉砕工程によっても、汚泥中の微生物細胞の細胞壁まで十分に破壊することができなかった。そのため、バイオリアクター内での汚泥のバイオガス転化率が低くなり、汚泥からのエネルギー回収率が十分でないという問題があった。
一方、特許文献2に開示された方法によると、濃縮汚泥が固形状の塊のままでも、爆砕処理または超臨界水もしくは亜臨界水といった高温高圧の領域内での処理によりメタン発酵させることが可能である。しかし、この文献は、生ごみ等の食品廃棄物からのエネルギー回収、および、装置全体としてのエネルギー収支に関して何ら記載していない。
そこで、本発明の課題は、食品廃棄物と汚泥の双方を原料としてメタン発酵させてバイオガスを得るエネルギー回収システムを基礎とし、固形状の塊となった濃縮汚泥を原料として使用した場合でも良好なバイオガス転化率を達成することができ、システム全体として良好なエネルギー収支を示す、効率的なエネルギー回収システムを提供することである。
上述の課題は、食品廃棄物を破砕して廃棄物スラリーとして排出する破砕機、汚泥を高温高圧水蒸気と接触させることにより可溶化して可溶化物として排出する可溶化装置、廃棄物スラリーと可溶化物とを混合して混合スラリーとして排出する混合槽、混合スラリーをメタン発酵してバイオガスと消化汚泥を生成して排出する、所定温度に保温されたメタン発酵槽、メタン発酵槽から排出されたバイオガスを燃料として電力および高温高圧水蒸気を発生するコ・ジェネレーション機関、メタン発酵槽から排出された消化汚泥を脱水して脱水汚泥として排出する脱水機、および、脱水汚泥を高温高圧水蒸気により乾燥する乾燥装置、メタン発酵槽から排出されたバイオガスの一部を燃料として高温高圧水蒸気を発生する蒸気ボイラー、コ・ジェネレーション機関から排出された水蒸気に前記蒸気ボイラーから排出された水蒸気を併せた後の水蒸気を昇温および/または昇圧する昇温昇圧機、を備えており、かつ、可溶化装置及び乾燥装置は、切り替えて併用される一台の装置としての可溶化・乾燥装置として構成されており、コ・ジェネレーション機関から排出された高温高圧水蒸気を、昇温昇圧機を通して前記可溶化・乾燥装置に供給し、及び前記昇温昇圧機に通す前にメタン発酵漕に供給することによって、それぞれ、可溶化物の生成、脱水汚泥の乾燥、およびメタン発酵槽の保温のために使用するようになっていることを特徴とする、食品廃棄物および汚泥からのエネルギー回収システムによって達成される。
上記構成では、コ・ジェネレーション機関から排出された高温高圧水蒸気が可溶化装置、乾燥装置およびメタン発酵槽に供給され、それぞれ、汚泥の可溶化物の生成、脱水汚泥の乾燥、およびメタン発酵槽の保温のために使用される。可溶化装置内における汚泥の高温高圧水蒸気との接触処理および処理物の大気圧下への開放により、固形状の塊の濃縮汚泥が可溶化装置に供給された場合でも、濃縮汚泥中の粘着性物質や微生物細胞の細胞壁が破壊され、細胞質が浸出するため、汚泥が可溶化するとともに低粘度化し、可溶化装置から粉末状の形態で排出される。そのため、この粉末状の可溶化物と廃棄物スラリーとを混合槽内で混合すると、汚泥が良好に分散した混合スラリーが得られ、メタン発酵槽内での汚泥のバイオガス転化率が向上する。また、コ・ジェネレーション機関から排出された高温高圧水蒸気が乾燥装置に供給されることにより、脱水汚泥が粉末状の乾燥汚泥として排出され、汚泥の量を大幅に減量することができ、また得られた乾燥汚泥はコンポストとして有効に利用することができる。本発明ではさらに、コ・ジェネレーション機関から排出された高温高圧水蒸気はメタン発酵槽の保温のためにも使用される。このことによりメタン発酵槽の温度をメタン発酵のために好適な温度に均一に維持することができるため、食品廃棄物および汚泥のバイオガス転化率が高くなる。
従って、本発明のエネルギー回収システムによると、固形状の塊となった濃縮汚泥を原料としてメタン発酵した場合でも、十分なバイオガス転化率を達成することができるため、食料廃棄物および汚泥の双方から効率的にエネルギーを回収することができ、全体として良好なエネルギー収支を示すエネルギー回収システムが構築される。本発明のエネルギー回収システムによると、システム全体に含まれる機器の動作を行ってもなお余剰の電力および熱量が発生するため、余剰の電力および熱量を他の目的のために使用することができる。また、脱水汚泥を乾燥させることにより汚泥の量を大幅に減量することができ、得られた乾燥汚泥はコンポストとして有効に利用することができる。
本発明のエネルギー回収システムに、さらに、前記メタン発酵槽から排出されたバイオガスの一部を燃料として高温高圧水蒸気を発生する蒸気ボイラーを付設し、バイオガスの残部をコ・ジェネレーション機関において燃料として使用し、蒸気ボイラーから排出された水蒸気とコ・ジェネレーション機関から排出された水蒸気とを併せて可溶化・乾燥装置に供給するようにしてもよい。この構成により、コ・ジェネレーション機関による電力発生量は若干減るものの、蒸気ボイラーにより熱効率よく高温高圧水蒸気を発生させることができるため、可溶化・乾燥装置への高温高圧水蒸気の供給を効率よく行うことができる。尚、メタン発酵槽にも得られた高温高圧水蒸気を供給す
尚、本発明において、「高温高圧水蒸気」とは、メタン燃料により駆動されうる一般的なコ・ジェネレーション機関、例えば、ガスエンジン、ガスタービン、マイクロガスタービン、メタンから水素への改質装置を備えた燃料電池から排出される水蒸気、および、一般的な蒸気ボイラーから排出されうる水蒸気と同等の温度および圧力を有する水蒸気を意味し、「高温高圧水蒸気」の温度は約130〜300℃であり、圧力は約0.2〜5MPaである。また、メタン発酵槽が保温される「所定温度」とは、内部のメタン菌が良好な活性を示す温度を意味し、中温メタン菌を使用する場合には約35〜37℃であり、高温メタン菌を使用する場合には約50〜60℃である。
本発明のエネルギー回収システムにおいて、可溶化・乾燥装置における処理は、160〜250℃の範囲の温度および1.5〜3MPaの範囲の圧力の条件下で行うのが好ましく、また、0.5〜1時間処理を継続するのが好ましい。これらの条件下で、粉末状の可溶化物および乾燥物が好適に形成される。
本発明のエネルギー回収システムにおいて、コ・ジェネレーション機関から排出された水蒸気に蒸気ボイラーから排出された水蒸気を併せた後の水蒸気を昇温および/または昇圧する昇温昇圧機を付設し、この昇温昇圧機から排出された水蒸気を可溶化・乾燥装置に供給するようにしてもよい。昇温昇圧機のために燃料が必要となるが、昇温昇圧機に導入される水蒸気が既に高い温度および圧力を有しているため、燃料の量を抑えることができる。この構成により、可溶化装置における固形状の塊となった汚泥の可溶化および低粘度化を好適な条件下で行うことができ、また、脱水汚泥の乾燥効率および速度をさらに促進することができ、粉末状のコンポストとして利用しやすい乾燥汚泥を得ることができる。
本発明のエネルギー回収システムの構成では、汚泥の可溶化処理をバッチ法により行うことにより、可溶化工程を終了した可溶化装置を、脱水汚泥を乾燥するための乾燥装置として使用される一台の可溶化・乾燥装置とすることができる。すなわち、一台の装置を切り替えて可溶化装置および乾燥装置として使用することもできる。この構成により、システム全体を安価に構築できる上に、一台の装置の稼働時間を増やすことができ、より効率的なエネルギー回収システムが構築できる。

本発明のエネルギー回収システムによると、固形状の塊となった汚泥を原料としてメタン発酵した場合にも十分なバイオガス転化率を達成することができ、食料廃棄物および汚泥の双方からのエネルギー回収率を高めることができる。その上、システム全体としても良好なエネルギー収支を示し、本発明のシステム全体の動作を行ってもなお余剰の電力および熱量を発生することが可能となる。
以下、図面を参照しながら本発明のエネルギー回収システムの実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されない。
図1は、本発明のエネルギー回収システムにおける基本的な実施の形態の構成を示した概略図である。
本実施の形態のシステムは、まず、食品の生産、流通および消費の各段階で廃棄される生ごみその他の食品廃棄物を破砕してスラリー化するための破砕機1を備えている。破砕機1としては、当業者に公知の慣用のものを使用することができ、例えば回転ブレード等による粉砕部と回転スクリーン等による選別部とを有する破砕分別機を好適に使用することができる。
一方、例えば下水処理場から排出された含水率80%程度の濃縮汚泥は、可溶化装置2において処理される。可溶化装置2は、汚泥導入口と水蒸気導入口と処理後の可溶化物排出口と使用後の水蒸気排出口を備えた耐圧容器を備えている。耐圧容器内に汚泥導入口を介して濃縮汚泥が導入され、後述するコ・ジェネレーション機関から供給される高温高圧水蒸気が水蒸気導入口を介して導入され、汚泥と水蒸気との接触により汚泥の可溶化が進行するようになっている。水蒸気との接触処理後の汚泥は可溶化物排出口から大気圧に開放され、可溶化物として排出されるようになっている。一方、処理後の水蒸気は水蒸気排出口から大気圧に開放され、凝縮水として排出されるようになっている。なお、可溶化装置は、上述のような回分式の装置に換えて、連続式の装置にしてもよい。連続式の装置は、汚泥を入り口から出口に所定滞留時間に応じて移動させるスクリューを内部に有する耐圧バレルを有しており、汚泥フィーダーにより濃縮汚泥を入り口から上記耐圧バレルに供給し、高温高圧水蒸気を供給して汚泥と接触させながら上記スクリューにより汚泥を出口まで移動させ、連続式の圧力開放取り出し口より処理後の汚泥を連続的に大気圧に開放するように構成される。
本実施の形態のエネルギー回収システムはさらに、破砕機1から排出された廃棄物のスラリーと、可溶化装置2から排出された可溶化物とを混合して混合スラリーとするための混合槽3を有する。混合槽3としては、撹拌器を備えた当業者に公知の慣用の槽を使用することができ、混合スラリーの粘度を調節するための希釈水供給口が備えられているのが好ましい。
混合槽で形成された混合スラリーは、メタン発酵槽4で所定期間処理される。メタン発酵槽4は、メタン菌と混合スラリーとを混合する醗酵室を備えており、発酵後のバイオガス(メタン:二酸化炭素=6:4)および消化汚泥が排出されるようになっている。メタン発酵により発生したバイオガスは、速やかにメタン発酵槽4から取り出され、脱硫器8で処理されて精製された後にガスホルダー9に貯蔵される。尚、発酵室には、高濃度の反応系を効率よく攪拌するための機能が備わっているのが好ましい。メタン醗酵室は、後述するコ・ジェネレーション機関から供給される高温高圧水蒸気により、メタン菌の活性が良好な温度に維持されるようになっている。中温域で活性の高い中温メタン菌は、高温域で活性に高い高温メタン菌に比較してアンモニア耐性が高く、食品廃棄物を余り希釈する必要がないという利点を有するが、このような中温メタン菌を使用する場合には、醗酵室は約35〜37℃に維持される。一方、高温メタン菌は、中温メタン菌に比較して活性が高く醗酵室を小型にできるという利点を有するが、このような高温メタン菌を使用する場合には、醗酵室は約50〜60℃に維持される。
本実施の形態では、ガスホルダーに貯蔵されたバイオガスを燃料として駆動し、電力および熱(高温高圧水蒸気)に変換するコ・ジェネレーション機関5を備えている。コ・ジェネレーション機関5としては、当業者に公知の慣用のものを使用することができ、例えば、一般的なガスエンジン、ガスタービン、マイクロガスタービン、メタンから水素への改質装置を備えた燃料電池式の機関を使用することができる。
一方、メタン発酵層4から排出された消化汚泥は、脱水機6によって脱水され、固形状の脱水汚泥および脱離液(水)として排出される。脱水機6としては、遠心分離式、ベルトプレス式、スクリュープレス式等の慣用の脱水機を使用することができる。さらに、本実施の形態のエネルギー回収システムは、固形状の脱水汚泥を粉末状の乾燥汚泥として産出するための乾燥装置7を有している。乾燥装置7の構成は、上述の可溶化装置2と基本的に同じである。
上述の構成を有する本実施の形態のエネルギー回収システムは、以下のように動作する。
含水率80%程度の生ごみ等の食品廃棄物は、破砕機1に投入されてスラリー化され、プラスチック、ビニール袋等の異物と分別され、廃棄物スラリーとして排出される。一方、下水処理場等の含水率80%程度の濃縮汚泥は、可溶化装置2に投入され、コ・ジェネレーション機関5から供給された高温高圧水蒸気(可溶化蒸気)と耐圧容器内で混合され、所定温度、好ましくは160〜250℃、および所定圧力、好ましくは1.5〜3MPaの条件下で、バッチ法の場合には所定時間、好ましくは0.5〜1時間処理され、または、連続法により処理される。この間、汚泥の可溶化が進行する。処理後の水蒸気は、大気圧に開放されて凝縮水として回収され、以下の混合槽3での混合スラリー調整用の希釈水として利用される。処理後の汚泥は、含水率55%程度の粉末の可溶化物として排出され、混合槽3に移送される。
混合槽3中で、可溶化装置2から移送された粉末状の可溶化物が粉砕機1から排出された廃棄物スラリーおよび希釈水と混合され、含水率90%程度の混合スラリーが形成される。このとき、希釈水として、上述の可溶化装置2、脱水機6、および乾燥装置7から回収された凝縮水または脱離液が使用される。
混合スラリーは、コ・ジェネレーション機関5から排出された高温高圧水蒸気(加熱蒸気)によって所定温度に維持されたメタン発酵槽4に移送され、醗酵室内でメタン菌の作用により所定期間、好ましくは5〜15日間発酵される。発生したバイオガスは速やかに回収され、脱硫器8介してガスホルダー9に一旦貯蔵され、コ・ジェネレーション機関5の燃料として供され、コ・ジェネレーション機関5から電力および高温高圧水蒸気の形態での熱が排出される。発生された高温高圧水蒸気の一部は、可溶化装置2、乾燥装置7、およびメタン発酵槽3に供給され、電力の一部は、本実施の形態のエネルギー回収システムに含まれる各機器の駆動のために供給される。
一方、メタン発酵槽4から排出された含水率96%程度の消化汚泥は、脱水機6に移送され、脱水され、固形状の含水率80%程度の脱水汚泥および脱離液(水)として排出される。脱離液の一部は混合スラリー調製用の希釈水として使用され、残部は下水道に放流される。脱水汚泥は、乾燥装置7に供給され、コ・ジェネレーション機関5から供給された高温高圧水蒸気(乾燥蒸気)と耐圧容器内で混合され、所定温度、好ましくは160〜250℃、および所定圧力、1.5〜3MPaの条件下で、バッチ法では所定時間、好ましくは0.5〜1時間処理され、または、連続法により処理される。この間、固形状の脱水汚泥は粉末状に形状を変え、含水率20%程度の乾燥汚泥として排出される。処理後の水蒸気は、大気圧に開放されて凝縮水として回収され、混合槽3での混合スラリー調製用希釈水として利用される。
本実施の形態のエネルギー回収システムによると、食料廃棄物および汚泥の双方からのエネルギー回収率を高めることができる上、システム全体としても良好なエネルギー収支が得られる。
図2は、上述の基本的な実施の形態に変形が加えられた形態の構成を示している。以下、異なる点のみ説明する。
図2に示す実施の形態のエネルギー回収システムは、メタン発酵槽4から回収され、脱硫器8を介してガスホルダー9に貯蔵されたバイオガスの一部を燃料として高温高圧水蒸気を発生する蒸気ボイラー10を有する。この実施の形態は、高温高圧水蒸気量が不足するような場合に使用される。例えば、蒸気ボイラー10は、コ・ジェネレーション機関5として使用されるガスエンジン式機関に比較すると、同量のバイオガスを燃料として約2倍の熱量の高温高圧水蒸気を発生するため、本発明の実施において特に有効に利用される。
本実施の形態では、蒸気ボイラー10から排出された高温高圧水蒸気は、コ・ジェネレーション機関5から排出された高温高圧水蒸気と併せられ、可溶化装置2および乾燥装置7に供給する前に、さらに水蒸気を昇温および/または昇圧するために昇温昇圧機11に供給される。昇温昇圧機11としては慣用のものを使用することができ、例えば貫流式ボイラーを使用することができる。昇温昇圧機11により、例えばコ・ジェネレーション機関5および蒸気ボイラー8からの0.5〜1.0MPaの水蒸気は、可溶化および乾燥のために好適な圧力、例えば1.8MPa程度の圧力に昇圧され、可溶化装置2または乾燥装置7に供給される。この構成により、可溶化工程および乾燥工程がさらに円滑に進められる。
図3は、図2に示した形態にさらに変更が加えられた実施の形態の構成を示している。以下、異なる点のみ説明する。
汚泥の可溶化処理をバッチ法により行うことにより、可溶化工程を終了した可溶化装置を、脱水汚泥を乾燥するための乾燥装置として使用することもできる。図3に示す実施の形態のエネルギー回収システムでは、一台の装置を切り替えることにより可溶化装置2または乾燥装置7として使用可能なように構成されている。可溶化装置2は、可溶化物を排出した後、乾燥装置7として使用される。この構成により、高価な装置を有効に稼動させることができる。
図4は、図1に示す基本的な実施の形態において異なるコ・ジェネレーション機関を使用した実施の形態の構成を示している。以下、異なる点のみ説明する。
図4に示す実施の形態では、メタン発酵槽4から回収され、脱硫器8を介してガスホルダー9に貯蔵されたバイオガスが、電力および高温高圧水蒸気に加えて温水も発生するコ・ジェネレーション機関5において燃料として使用される。そして、排出された高温高圧水蒸気が可溶化装置2および乾燥装置7に供給され、排出された温水がメタン発酵槽4に供給されてこの槽4の保温のために使用される。この構成により、コ・ジェネレーション機関5から発生する熱が効率よく使用される。
図5は、図1に示す基本的な実施の形態においてさらに別のコ・ジェネレーション機関を使用した実施の形態の構成を示している。以下、異なる点のみ説明する。
図5に示す実施の形態のエネルギー回収システムでは、メタン発酵槽4から回収され、脱硫器8を介してガスホルダー9に貯蔵されたバイオガスが、電力および温水を発生し、高温高圧水蒸気を発生しないコ・ジェネレーション機関5において燃料として使用される。そして、排出された温水の一部がメタン発酵槽4に供給され、この槽4の保温のために使用される。一方、この実施の形態のエネルギー回収システムは、コ・ジェネレーション機関5から排出された温水を加温して高温高圧水蒸気を発生する蒸発装置12を備えている。蒸発装置12としては温水を加熱して高温高圧水蒸気に変えることが可能なものであれば特に限定がなく、例えば貫流ボイラーを使用することができる。本実施の形態では、蒸発装置12から排出された高温高圧水蒸気が可溶化装置2および乾燥装置7に供給される。この構成により、コ・ジェネレーション機関5から発生する温水が効率よく利用される。
図6に、図3に示した構成であって、ただし、コ・ジェネレーション機関としてガスエンジン式機関5´を使用した実施例のエネルギー収支を示す。尚、本発明は以下の実施例に限定されず、食品廃棄物および下水汚泥の処理量、メタン発酵槽の容量等の数値もあくまで一例に過ぎない。
実施例では、含水率80%の生ごみを1日に付き17t(トン)の割合で破砕し、下水処理場の含水率80%の濃縮汚泥を1日に付き15tの割合で可溶化し、メタン発酵槽で10日間発酵させた。生ごみ(含水率80%)のCODcr(重クロム酸カリウムによるCOD測定値)は320kg/wet−t、生ごみ分解率は80%、下水汚泥のCODcrは240kg/wet−t、汚泥分解率は70%(有機分分解率80%)であった。濃縮汚泥の可溶化および脱水汚泥の乾燥は、210℃および1.8MPaの条件の水蒸気を供給して、一台の装置を切り替えて行った。バイオガスは、一日に付き2890m3Nの割合で得られ、一日に付き2.9tの乾燥汚泥が採集された。乾燥汚泥はコンポストとして有効利用された。
蒸気ボイラー8およびガスエンジン式機関5´から発生した熱量(高温高圧水蒸気)は1日に付き9.2×106kcalであり、可溶化、乾燥、およびメタン発酵槽のための熱量(高温高圧水蒸気)は7.8×106kcalであり、余剰の熱量が回収された。一方、ガスエンジン式機関5´から1日に付き150kWの電力が得られ、一部は本システムの駆動のために用いられ、残部は売電された。
尚、可溶化装置2を使用しないで下水汚泥を混合槽に直接投入し、混合スラリーを粉砕機を介してメタン発酵槽4に投入したところ、汚泥の有機分分解率は40〜50%であった。本発明により、汚泥からの効果的なエネルギー回収および消化汚泥の減量化が達成されたことがわかった。
本発明のエネルギー回収システムにおける基本的な実施の形態構成を示した概略図である。 本発明のエネルギー回収システムにおける別の実施形態の構成を示した概略図である。 本発明のエネルギー回収システムにおけるさらに別の形態の構成を示した概略図である。 本発明のエネルギー回収システムにおけるさらに別の実施形態の構成を示した概略図である。 本発明のエネルギー回収システムにおけるさらに別の形態の構成を示した概略図である。 本発明の実施例のエネルギー回収システムにおけるエネルギー収支を説明した図である。
符号の説明
1 破砕機
1´ 破砕分別機
2 可溶化装置
3 混合槽
4 メタン発酵槽
5 コ・ジェネレーション機関
5´ ガスエンジン式機関
6 脱水機
7 乾燥装置
8 脱硫器
9 ガスホルダー
10 蒸気ボイラー
11 昇温昇圧機
12 蒸発装置

Claims (3)

  1. 食品廃棄物を破砕して廃棄物スラリーとして排出する破砕機、
    汚泥を高温高圧水蒸気と接触させることにより可溶化して可溶化物として排出する可溶化装置、
    前記廃棄物スラリーと前記可溶化物とを混合して混合スラリーとして排出する混合槽、
    前記混合スラリーをメタン発酵してバイオガスと消化汚泥を生成して排出する、所定温度に保温されたメタン発酵槽、
    前記メタン発酵槽から排出されたバイオガスを燃料として電力および高温高圧水蒸気を発生するコ・ジェネレーション機関、
    前記メタン発酵槽から排出された消化汚泥を脱水して脱水汚泥として排出する脱水機、および、
    前記脱水汚泥を高温高圧水蒸気により乾燥する乾燥装置、
    前記メタン発酵槽から排出されたバイオガスの一部を燃料として高温高圧水蒸気を発生する蒸気ボイラー、
    コ・ジェネレーション機関から排出された水蒸気に前記蒸気ボイラーから排出された水蒸気を併せた後の水蒸気を昇温および/または昇圧する昇温昇圧機、
    を備えており、かつ、
    前記可溶化装置及び前記乾燥装置は、切り替えて併用される一台の装置としての可溶化・乾燥装置として構成されており、
    前記コ・ジェネレーション機関から排出された高温高圧水蒸気を、
    前記昇温昇圧機を通して前記可溶化・乾燥装置に供給し、及び前記昇温昇圧機に通す前にメタン発酵漕に供給することによって、それぞれ、可溶化物の生成、脱水汚泥の乾燥、およびメタン発酵槽の保温のために使用するようになっていることを特徴とする、食品廃棄物および汚泥からのエネルギー回収システム。
  2. 前記可溶化処理後の水蒸気が、大気圧に開放されて減縮水として回収され、混合漕へ供給され、該混合漕で混合スラリー調整用の希釈水として利用される請求項1に記載のエネルギー回収システム。
  3. 可溶化装置および/または乾燥装置における処理を、
    160〜250℃の範囲の温度および1.5〜3MPaの範囲の圧力の条件下で、0.5〜1時間行い、
    コ・ジェネレーション機関から排出された電力により、粉砕機、可溶化・乾燥装置、混合槽、メタン発酵槽、脱水機、蒸気ボイラー、及び昇温昇圧機が駆動されるようになっていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の食品廃棄物および汚泥からのエネルギー回収システム。
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