本発明に係る吸着シート、吸着素子および吸着素子の製造方法の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る吸着シートの一形態の構造を示す部分的な斜視図であり、図2は、本発明に係る吸着シートの他の形態の構造を示す部分的な斜視図である。図3は、本発明に係るプレートフィン型の吸着素子の一形態を示す斜視図であり、図4は、図3の吸着素子における吸着シートの配置間隔と吸着材層の厚さの関係を吸着シートの板面に直交する方向に破断して示す部分断面図である。図5は、本発明に係るコルゲートフィン型の吸着素子の他の形態を示す斜視図であり、図6は、図5の吸着素子における吸着シートの屈曲ピッチと吸着材層の厚さの関係を吸着シートの長手方向に沿って且つ板面に直交する方向に破断して示す部分断面図である。
更に、図7は、本発明に係る円筒状ハニカム構造のローター型の吸着素子の一形態を示す斜視図およびセルの形状を示す部分拡大図である。図8〜図11は、各々、基材としてのハニカムの骨格構造基体の製造方法を示す図であり、図8は、基材シートの積層体の作製における各シートの接合方法を示す部分的な斜視図である。図9は、基材シートの積層体の外形を示す部分的な斜視図である。図10は、基材シートの積層体を拡げた場合の基材シートの変形状態および形成されるセルの形状を示す積層体の部分的な側面図である。図11は、円筒状のハニカムの骨格構造基体の作製における積層体の展開方法を示す斜視図である。図12は、本発明に係る円筒状ハニカム構造のローター型の吸着素子の他の形態を示す斜視図およびセルの形状を示す部分拡大図である。図13は、本発明に係る円柱状のローター型の吸着素子の一形態を示す斜視図およびセルの形状を示す部分拡大図である。図14は、図13の吸着素子の基材としてのハニカムの骨格構造基体の製造方法を示す図であり、積層体の展開方法を示す斜視図である。図15は、本発明に係る円柱状のローター型の吸着素子の他の形態を示す斜視図およびセルの形状を示す部分拡大図である。
また、図16は、吸着シートの吸着特性を測定する際に行われる耐久性試験の方法を示す工程図であり、図17は、吸着シートの吸着特性を測定する際に使用される吸着量測定装置の構成を示すフロー図である。なお、以下の説明は本発明の実施態様の一例であり、これらの内容に本発明は限定されるものではない。
吸着素子(図3、図5、図7、図12、図13及び図15中にそれぞれ符号(2A)、(2B)、(2C)、(2D)、(2E)、(2F)で示す様な素子)は、吸着ヒートポンプにおいて吸着質の吸着・脱着操作を行う吸着装置、または、デシカントシステム(調湿システム)において水蒸気の吸着・脱着操作を行う吸着装置に適用される。そして、吸着シート(例えば図1及び図2中に符号(1)で示す様なシート)は、上記の様な吸着素子の構成要素である。
周知の通り、吸着ヒートポンプは、吸着材の吸着・脱着現象に付随して起こる水、アルコール類などの吸着質の相変化を利用して熱を汲み上げるシステムであり、補助動力を用いることなく、低質熱エネルギーを熱源として作動させ得るため、省エネルギー化が求められるコジェネレーションシステム等の各種のシステムに適用して冷熱または温熱を生成することが出来る。
また、デシカントシステムは、倉庫内などの冷却を目的としたデシカント冷却装置を始め、建物の設備として設置される大型のデシカント空調装置、室内に設置される小型の除湿器や加湿器を含む除湿空調装置、加湿空調装置などの調湿空調装置として構成され、吸着材の吸着・脱着作用を利用し、湿度調節すべき室内の空気または室内へ供給される空気から水分を除去してこれを屋外に排出したり、屋外の空気または屋外へ排出される空気から水分を吸着してこれを湿度調節すべき室内の空気または室内へ供給されるに供給するシステムであり、余剰の低質熱エネルギーを利用して湿度調節を行うことが出来る。
先ず、本発明の吸着シートについて説明する。図中に符号(1)で示す本発明の吸着シートは、吸着素子の構造に応じて種々の形状に形成できるが、例えば、図1に示す様な板状の吸着シート(1a)、図2に示す様な長手方向に沿ってジグザグに屈曲する帯状の吸着シート(1b)、図7、図12、図13及び図15に示す様な波板状または帯状の吸着シート(1c)として形成される。図1に示す吸着シート(1a)は、図3に示す様な所謂プレートフィン型の吸着素子(2A)の構成要素であり、図2に示す吸着シート(1b)は、図5に示す様な所謂コルゲートフィン型の吸着素子(2B)の構成要素である。また、図7、図12、図13及び図15に示す様に、吸着シート(1c)は、ハニカム構造の所謂ローター型の吸着素子(2C)〜(2F)の構成要素である。そして、上記の様な各吸着シート(1)は、基材シート(12)、(14)に吸着材をバインダーにより担持させて構成される。
図1及び図2に示す様な吸着シート(1a)、(1b)を構成する基材シート(12)は、プレートフィン型の吸着素子(2A)(図3参照)及びコルゲートフィン型の吸着素子(2B)(図5参照)において、各熱媒流路(3)、(4)を流れる熱媒体と吸着材との間で熱を伝達するための部材である。基材シート(12)は、吸着シート(1a)、(1b)の形状を保持するに足る剛性を備え且つ熱媒流路(3)、(4)との効率的な熱交換が可能な限り、各種の材料で構成できる。基材シート(12)の構成材料としては、金属、セラミックス、樹脂材料(ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアミド等)、炭素材料などが挙げられるが、通常は、剛性、熱伝導度、製作コストの観点から、基材シート(12)は、アルミニウム、銅、真鍮、鉄、クロム、ニッケル、スチール、これらの合金などの金属シートによって構成される。中でも、アルミニウム又はアルミニウム合金、銅または銅合金が好ましい。
図3に示すプレートフィン型の吸着素子(2A)に使用される吸着シート(1a)の場合、基材シート(12)の形状(板面形状)は、吸着装置の構造によって円形、楕円形、正方形など各種の形状に形成できるが、例えば図1に示す様に長方形に形成される。斯かる基材シート(12)の場合、通常、1辺の長さは1〜100cm程度とされる。そして、基材シート(12)には、吸着素子(2A)を製造する際に熱媒流路(3)としての配管を挿通するため、当該配管がきつく嵌合する直径の配管挿通孔(11)が設けられる。なお、基材シート(12)は、吸着シート(1a)を構成する場合、吸着材の保持量を大きくするため、波板に形成されてもよい。
また、図5に示すコルゲート型の吸着素子(2B)に使用される吸着シート(1b)の場合、基材シート(12)は、例えば図2に示す様に細幅の帯状に形成される。斯かる基材シート(12)の場合、通常、幅は1〜100cm程度、長さは1〜500cm程度とされる。
上記の各基材シート(12)の厚さは、特に制限は無いが、吸着材によって形成される表面の吸着材層(13)の厚さや強度の関係から、図1に示す吸着シート(1a)、図2に示す吸着シート(1b)の何れの場合も、通常は50〜300μm、好ましくは100〜200μmに設定される。また、基材シート(12)の表面は、腐食を防止し、吸着材を担時し易くするため、予め、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フッ素系樹脂などの薄い樹脂膜によってコーティングされてもよい。
他方、図7、図12、図13及び図15に示す様なローター型の吸着素子において、後述するハニカムの骨格構造基体を構成する吸着シート(1c)は、骨格構造基体の形状を保持するに足る剛性を備えた繊維質シートや樹脂(ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリアミド等)シートによって構成され、このうち繊維質シートが好ましい。本発明において、繊維質シートとは、無機あるいは有機の繊維状物質の集合体から成るシートを指し、繊維状物質は互いに絡み合っていてもよい。例えば、アスペクト比の大きなフィラーや、不織布なども「繊維状」の概念に包含される物質である。
具体的には、繊維質シートの材料としては、シリカ・アルミナを主成分としたセラミック繊維、ガラス繊維、PANやタールなど炭素を含む原料から製造された炭素繊維、繊維状の粘土物質などから成る鉱物系繊維、有機ケイ素ポリマーから製造された有機ケイ素系繊維、FeやCu、Al、Cr、Niなどの金属から製造された金属繊維などが挙げられる。化学繊維としては、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリクラール、ナイロン、レーヨン、ビニロン、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、アセテート、ポリエステル等の繊維が挙げられる。また、セルロース、絹、木綿等の天然系繊維を使用することも出来る。
特に、成形性、取扱性、製造コストを考慮すると、上記の繊維質シートの材料としては、不織布が好ましい。斯かる不織布としては、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル、ビニロン、キュプラ、芳香族ポリアミドなどの化学繊維系の不織布が挙げられる。そして、上記の様な化学繊維系の不織布は、単独の繊維から成るもの又は2種以上の繊維を積層したものの何れでもよい。周知の通り、不織布は、湿式法、乾式法、スパンボンド法、メルトブロー法、ケミカルボンド法、サーマルボンド法、ニードルパンチ法などの製法によって製造される。上記の繊維質シートの常態厚さは、通常は40〜600μm、好ましくは50〜400μmである。上記の様な繊維質シートを使用することにより、種々の大きさ、種々の形状のローター型の吸着素子を容易に製造でき、耐振動性も向上させることが出来る。
基材シートに吸着材を担持させるには、図1に示す吸着シート(1a)及び図3に示す吸着素子(2A)、あるいは、図2に示す吸着シート(1b)及び図5に示す吸着素子(2B)の場合、すなわち、金属シートから成る基材シート(12)の場合は、基材シート(12)の少なくとも片面にスラリーである水系分散液を塗布した後、基材シート(12)を加熱乾燥する。これにより、吸着材は、バインダーにより金属シートの少なくとも片面に積層状態で担持される。なお、図1、図2、図4及び図6中の符号(13)は、塗布形成された吸着材層を示す。
また、図7に示す吸着素子(2C)、図12に示す吸着素子(2D)、図13に示す吸着素子(2E)及び図15に示す吸着素子(2F)の場合、すなわち、繊維質シートから成る基材シート(14)の場合は、ハニカムの骨格構造基体を構成する基材シート(14)に上記の水系分散液を塗布した後、基材シート(14)(骨格構造基体)を加熱乾燥する。これにより、吸着材は、バインダーにより繊維質シートの表面および内部に繊維と絡み合う状態で担持される。
本発明においては、吸着シート(1)を製造する際、吸着シート(1)の基材シート(12)、(14)に吸着材を担持させるに当たり、吸着材同士の接着力、吸着材と基材シート(12)、(14)との接着力を高め、かつ、吸着能力を高めるため、上記の水系分散液として、以下の様な吸着材とバインダーとが水に分散されて成る特定の水系分散液が使用される。
上記の吸着材としては、活性炭、シリカ、メソポーラスシリカ、アルミナ、ゼオライトなどの多孔質材料が挙げられる。中でも、吸着質蒸気および水蒸気を容易に吸着し且つ低温域で容易に脱着し得るゼオライトが好ましい。特に、構造や吸着特性を制御し易いと言う観点からは、骨格構造に少なくともAlとPを含む結晶性アルミノフォスフェート類(ALPO系ゼオライト)が好ましく、代表的には、SAPO−34、FAPO−5が挙げられる。上記の様な吸着材は、1種または2種以上を組み合わせて使用することも出来る。なお、ALPO系ゼオライトは、例えば特公平1−57041、特開2003−183020、特開2004−136269等の公報に記載された公知の合成法を利用して製造することが出来る。
吸着材の粒子の大きさは、吸着材個々の粒子における吸着質蒸気や水蒸気の拡散を促進して吸着・脱着能力をより高める観点から、および、基材シート(12)、(14)に担持された吸着材を含む担体の接着強度を向上させる観点から、出来る限り小さくするのが望ましく、通常は平均粒径が0.1〜300ミクロン、好ましくは0.5〜250ミクロン、更に好ましくは1〜200ミクロン、最も好ましくは2〜20ミクロンとされる。そして、吸着シート(1)に十分な吸着・脱着能力を付与するため、吸着材の目付量は5〜400g/m2とされる。
また、上記のバインダーとしては、耐熱性の観点から、耐熱性のある有機バインダー、すなわち、そのガラス転移温度が35℃以上の樹脂、好ましくはガラス転移温度が45℃以上の樹脂が使用される。斯かる樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂などから選択できるが、特に、エポキシ樹脂が好適である。エポキシ樹脂は、赤外線吸収スペクトルで825cm−1にエポキシ構造特有のピークを示すものを言う。更に、吸着シートに可撓性を付与するため、上記のバインダーには、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、スチレン樹脂、シリコン樹脂などから選択されるその他の樹脂が加えられてもよい。
また、接着性の観点から、変性酢酸ビニル樹脂や変性アクリル樹脂も好適である。変性酢酸ビニル樹脂とは、酢酸ビニル樹脂単独ではないものを意味しており、共重合体や官能基部分が置換されたものも含まれる。具体的には、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂、酢酸ビニル・アクリル酸エステル共重合樹脂、酢酸ビニル・塩化ビニル樹脂共重合樹脂、(ウレタン)変性エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂などが挙げられる。変性アクリル樹脂とは、アクリル樹脂単独ではないものを意味しており、共重合体や官能基部分置換されたものも含まれる。具体的には、メタアクリル樹脂、アクリル・スチレン共重合樹脂、シリカ変性アクリル共重合樹脂、シリコーン変性アクリル共重合樹脂などが挙げられる。本発明の吸着シート(1)においては、上記の様なバインダーの選択により、より広い温度範囲において吸着材同士の強固な接着性および吸着材と基材シート(12)、(14)との強固な接着性を得ることが出来る。全バインダー中、可撓性を付与するためのバインダーの割合が40%を超えるとガラス転移点の低下や接着強度が低下する。また、15%よりも少ないと可撓性が得られなくなる。従って、上記のバインダーの含有率は3〜30%、好ましくは5〜25%の範囲がよい。
因に、有機バインダーのガラス転移温度の測定は、JIS規格「K7121(1987)」に準じて行うことが出来る。すなわち、ガラス転移温度の測定においては、熱流束示差走査熱量測定装置(熱流束DSC)を使用し、10mgの試料を毎分10℃で昇温し、得られたDSC曲線をJIS規格「K7121(1987)」,9.3項に記載の「ガラス転移温度の求め方」に従って解析する。
上記の有機バインダーは、有機溶媒に溶解して使用することも出来るが、有機溶媒に溶解した場合は、バインダーが吸着材の表面を覆い、吸着速度が低下すると言う問題、および、有機溶媒の揮発により環境汚染を惹起すると言う問題がある。そこで、本発明においては、吸着材の吸着性能の確保、吸着シート(1)の素材との接着性の観点からも、エマルジョンとして使用される。バインダーの配合比率は、吸着材100重量部に対し、乾燥重量で5〜40重量部が好ましい。バインダーが5重量部より少ない場合は、吸着材同士および基材シート(12)、(14)に対する吸着材の固着が不十分であり、40重量部よりも多い場合は、吸着シートにおいて保持し得る吸着材の量が減少し、吸着能力が低減し、また、吸着素子が大型化するので不利である。
また、上記の水系分散液においては、その安定性を高め、粘度調整を行うため、高吸水性ポリマーやカラギナン、キサンタンゴム、アラビアガム等の有機増粘剤、分散剤が添加されてもよい。また、熱伝導を向上させるため、熱伝導率の良い金属繊維、炭素繊維などの繊維状物質、アルミ、銅、銀などの金属粉体、あるいは、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、窒化アルミ、窒化ホウ素などが添加されてもよい。更には、塗膜強度を向上させるため、カオリン、針状珪酸カルシウム、針状酸化亜鉛、セピオライト、針状炭酸カルシウム、チタン酸カルシウム、ホウ酸アルミ、針状塩基性硫酸マグネシウム等が添加されてもよい。上記の様な機能付与添加物は、1種類によって粘度調整、熱伝導性向上、塗膜強度の向上などの複数の効果を同時に達成し得る場合もあるため、対象物品に応じて適宜選択される。
上記の水系分散液は、粒子沈降防止剤が添加された水に対し、吸着材粒子およびバインダーを添加して調製される。そして、本発明においては、後述する様に基材シート(12)、基材シート(14)に塗布する際の取扱い容易性、吸着シート(1)や吸着素子(2A)〜(2F)の製造効率を考慮し、通常は固形成分濃度を30〜50%、好ましくは40%前後に設定される。
吸着シート(1)を製造する方法としては、基材シート(12)に上記の水系分散液をディップコート、スプレーコート、ロールコート、スクリーン印刷、パッド印刷、オフセット印刷などの方法で塗布する方法が挙げられる。そして、得られた吸着シート(1a)、(1b)は、これを組み立てることにより、図3に示すプレートフィン型の吸着素子(2A)、あるいは、図5に示すコルゲートフィン型の吸着素子(2B)に構成される。また、図3及び図5に示す吸着素子(2A)、(2B)は、後述する様に、基材シート(12)によって作製された骨格構造基体に上記の水系分散液を塗布して製造することも出来る。
すなわち、図3及び図5に示す吸着素子(2A)、(2B)用の吸着シート(1a)、(1b)は、基材シート(12)が金属シートであり、吸着材はバインダーにより前記の金属シートの少なくとも片面に積層状態で担持される。換言すれば、基材シート(12)の少なくとも片面に吸着材層(13)が構成されている。なお、図3及び図5に示す吸着素子(2A)、(2B)の構成要素としての吸着シート(1a)、(1b)(素子の一部)は、その製造の際、より多くの上記の水系分散液を塗布し得る様に、基材シート(12)の表面に繊維状保持材が貼着されたり、植毛加工が施されてもよい。
一方、図7、図12、図13及び図15に示すローター型の吸着素子(2C)〜(2F)は、基材シート(14)によって作製されたハニカムの骨格構造基体に上記の水系分散液を塗布含浸させて製造される。すなわち、図7、図12、図13及び図15に示す吸着素子(2C)〜(2F)用の吸着シート(1c)は、基材シート(14)が繊維質シートであり、吸着材はバインダーにより前記の繊維質シートの表面および内部に繊維と絡み合う状態で担持される。
基材シート(12)、基材シート(14)(骨格構造基体)に水系分散液を塗布した後は、通常、120〜200℃の温度で20〜120分間の加熱乾燥を行うことにより、バインダーにより吸着材を担持させる。なお、上記の水系分散液の塗布は、複数回実施してもよいが、熱硬化樹脂バインダーを使用する場合は、吸着材の剥離、脱落を防止するため、塗布の都度、加熱硬化させる必要がある。
本発明の吸着シート(1)は、前述の通り、上記の水系分散液を使用して製造されることにより、吸着材同士がバインダーによって強固に接着され、基材シート(12)、(14)に吸着材がバインダーによって強固に接着された構造を備えている。そして、吸着材の強い接着構造により、本発明の吸着シート(1)は、120℃に加熱して常温の水中に浸漬した後に−15℃に冷却する操作を50回繰り返す耐久性試験を行った後の水蒸気吸着量が、初期の水蒸気吸着量に対して80%以上の吸着特性を有する。すなわち、初期の水蒸気吸着量に対する上記の耐久性試験後の吸着性維持率が80%以上であるのが好ましい。
上記の耐久性試験は次の様な方法によって行われる。すなわち、耐久性試験においては、図16に示す様に、先ず、試料である吸着シート(1)を120℃の恒温槽(61)に装填し、吸着シート(1)を2分間加熱して約120℃に昇温する(工程I)。次いで、恒温槽(61)から吸着シート(1)を取り出し、これを直ちに水槽(62)内の25℃の水に浸漬する(工程II)。浸漬時間は60秒とし、水によって吸着シート(1)を約25℃に冷却する。続いて、水切り後、庫内温度が−15℃の冷凍庫(63)に吸着シート(1)を120秒間収容して約−15℃に冷却する(工程III)。そして、上記の様な加熱、水冷、冷凍庫冷却の一連の操作(工程I〜III)を50回繰り返す。
上記の加熱操作(工程I)は、高温再生や急激な脱着に対する耐久性を評価するために行われ、水冷操作(工程II)は、急激な水蒸気吸着と吸水の際の結露に対する耐久性を評価するために行われ、そして、冷凍庫による冷却操作(工程III)は、付着水が氷に変化する際の膨張に対する耐久性および水蒸気吸着した吸着材の低温耐久性を評価するために行われる。換言すれば、耐久性試験においては、吸着素子(2A)〜(2F)の通常の使用温度範囲(40〜90℃)に比べて遥かに過酷な温度条件下に吸着シート(1)を晒すことにより、吸着材の脱落や劣化を惹起させる。そして、吸着シート(1)の耐久性能は、上記の様な耐久性試験の前後における吸着材の水蒸気吸着能力(吸脱着量)を比較することにより評価できる。
吸着材の水蒸気吸着能力は、蒸気圧の一定の変化の繰り返しの中での定常的な水蒸気吸着量を測定することより確認でき、定常的な水蒸気吸着量の測定には、図17に示す様な吸着量測定装置が使用される。図17に示す吸着量測定装置は、第1の恒温槽(71)に装入された金属製の試料容器(74)と、第2の恒温槽(72)に装入された水容器(75)と、第3の恒温槽(73)に装入された水捕捉容器(76)と、内部脱気された水容器(75)と試料容器(74)を連結し且つ中間に開閉弁(84)、(87)が介装された配管(81)と、試料容器(74)と水捕捉容器(76)を連結し且つ中間に開閉弁(85)が介装された配管(82)と、開閉弁(84)と開閉弁(87)の間の配管(81)から分岐し且つ開閉弁(86)を介して真空ポンプ(88)に接続された配管(83)とから主として構成される。
なお、上記の吸着量測定装置においては、例えば、試料容器(74)が直径130mmのアルミニウム製円盤形容器によって構成され、水容器(75)及び水捕捉容器(76)が内容積200mlのガラス製容器によって構成され、各容器間を連結する配管(81)、(82)及び脱気用の配管(83)が外径(呼び径)3/8インチ、肉厚0.5mmのステンレス管によって構成される。
上記の吸着量測定装置を使用した水蒸気吸着量の測定では、各恒温槽(71)〜(73)の温度設定により水容器(75)、試料容器(74)、水捕捉容器(76)の蒸気圧に差異を設けておき、各容器間の接続を順次切り替え、蒸気圧の違いによって水容器(75)から水捕捉容器(76)へ水分を順次移動させると共に、試料容器(74)に試料である吸着シート(1)を収容した場合と収容しない場合(ブランク状態)とで水捕捉容器(76)に最終的に溜まる水分量の差を測定する。斯かる水分量の差が、水容器(75)から水捕捉容器(76)への移動において吸着材に一旦吸着された後に脱着された水分の量であり、上記の定常的な水蒸気吸着量に相当する。
具体的には、予め、試料容器(74)が空の状態において水容器(75)から水捕捉容器(76)への水の移動量(ブランク排水量)を測定する。ブランク排水量の測定では、先ず、水容器(75)に例えば150mlの水を収容する。更に、真空ポンプ(88)に至る配管(83)の開閉弁(86)及び(87)を開き、真空ポンプ(88)により水容器(75)の内部を脱気した後、開閉弁(87)を閉じておく。次いで、開閉弁(84)及び(85)を開いて系内を真空にした後、開閉弁(84)〜(86)を閉じ、真空ポンプ(88)を停止する。そして、測定開始直前に開閉弁(87)を開く。
続いて、第1の恒温槽(71)を90℃、第2の恒温槽(72)を80℃、第3の恒温槽(73)を4℃にそれぞれ維持した状態において、水容器(75)から試料容器(74)へ至る配管(81)の開閉弁(84)だけを例えば37秒間開き、水容器(75)から試料容器(74)へ水蒸気を導入する。その後、開閉弁(84)を閉じ、次いで、試料容器(74)から水捕捉容器(76)へ至る配管(82)の開閉弁(85)だけを例えば37秒間開き、試料容器(74)から水捕捉容器(76)へ水蒸気を排出し、水捕捉容器(76)内に水を補足する。そして、上記の様な水容器(75)から試料容器(74)への水蒸気の移動および試料容器(74)から水捕捉容器(76)への水蒸気の移動の一連の操作を80回繰り返した後、最終的に水捕捉容器(76)内に溜った水の量(ブランク排水量)を測定する。なお、各開閉弁(84)、(85)の切り替え時間は例えば各2秒とし、1サイクルの合計時間を78秒間に設定する。
続いて、試料である吸着シート(1)を試料容器(74)に収容した状態において、水容器(75)から水捕捉容器(76)への水の移動量(吸着材による吸脱着を伴う水の移動量)を測定する。吸脱着を伴う水の移動量の測定では、ブランク排水量の測定の場合と同様に、水容器(75)に例えば150mlの水を収容し、真空ポンプ(88)により水容器(75)の内部を脱気した後、開閉弁(86)を閉じておく。また、試料容器(74)には、例えば0.5gの吸着材を担持させた吸着シート(1)を収容する。そして、ブランク排水量の測定におけるのと同様に、試料容器(74)への水蒸気の導入操作と水捕捉容器(76)への水蒸気の排出操作とから成る一連の操作を80回繰り返し、最終的に水捕捉容器(76)内に溜った水の量(排水量)を測定する。
水容器(75)から試料容器(74)へ水蒸気を導入する操作では、吸着材における水蒸気の吸着が進行し、また、試料容器(74)から水捕捉容器(76)へ水蒸気を排出する操作では、吸着材における水蒸気の脱着が進行する。その結果、試料容器(74)に吸着シート(1)を収容した状態での水の移動量(排水量)は、ブランク排水量に比べ、吸着材が吸脱着する分だけ多くなる。従って、試料を使用した場合の水捕捉容器(76)内に溜った水の量(排水量)とブランク排水量との差を演算することにより、吸着シート(1)の吸着性能としての定常的な水蒸気吸着量を求めることが出来る。そして、前述の耐久性試験を行う前の定常的な水蒸気吸着量(初期吸着量)と、耐久性試験を行った後の定常的な水蒸気吸着量(試験後吸着量)とについて、それぞれに上記の測定を行うことにより、吸着特性の劣化の程度を吸着性維持率として把握できる。初期吸着量、試験後吸着量および吸着性維持率は次式に基づいて算出できる。
なお、本発明において、初期の水蒸気吸着量とは、吸着シート(1)製造後の耐久性試験を行う前の水蒸気吸着量を言う。また、水蒸気吸着量の測定において、上記の様な一連の操作時間(1サイクルの時間)は、吸着材の性能劣化を評価し易い条件として設定したものであり、適宜に設定可能である。換言すれば、上記の様に1サイクルの時間を78秒間に設定した場合、1サイクルにおける吸脱着量は、各操作の時間が短いために理論吸着量よりも低くなるが、吸脱着速度の低下を伴う性能低下は、把握し易くなる。
耐久性試験後の吸着シート(1)の接着強度は、通常は0.04MPa以上、好ましくは0.1MPa以上である。吸着シート(1)の接着強度が0.04MPa以上の場合は、耐久性試験前後のシート形状に差が認められないが、0.04MPa未満の場合は、吸着材の脱離、剥離、落下などが起こり、吸着シートとしての形状を維持できない。従って、吸着シート(1)としては、吸着性能維持率が80%以上あり、耐久性試験後の接着強度が0.04MPa以上であるものが実用上好ましい。更に、耐久性試験後の接着強度が0.1MPa以上である吸着シート(1)がより実用上好ましい。
吸着シート(1)の接着強度は、ある程度の値を必要とする。120℃における急速な脱着、常温の水に浸漬させることによる急速な吸着、更に水を含んだ状態での−15℃凍結の繰り返し試験は、バインダーが膨張や収縮に耐え得るだけの耐久性を有するか否かを判別する加速度試験的な判定手段となる。接着耐久性が低い場合は、基材シート(12)、(14)から粒子が膜状で剥離したり、吸着材粒子がバラバラに剥離し、吸着材シート(1)としての形状を維持できない。従って、吸着シート(1)の接着強度は、耐久試験後に測定した値が重要となる。吸着シート(1)の接着強度は、JIS規格「K6850」の「接着剤−剛性被着材の引張せん断接着強さ試験方法」に準じて測定する。すなわち、接着強度は、前述の加熱、水冷、冷凍庫冷却を50回繰り返す耐久性試験に次いで行われる試験後吸着量を測定した後の吸着シート(1)に対して実施される引張試験で測定される。
吸着シート(1)上の吸着材は、通常は250g/m2程度であるが、5〜800g/m2の範囲内にあればよい。接着強度の測定では、0.4MPa以上のテープ強度を有するセロハン粘着テープを吸着シート(1)に接着面積1cm2(幅1cm×長さ1cm)で貼り付けた後、吸着シート(1)に対してセロハン粘着テープを180度の方向に10mm/minで引っ張り、塗膜が破断する強度を測定し、その3回の平均値を採用する。この試験は、23±2℃の環境下で行われる。なお、セロハン粘着テープ自体の接着強度を調べるために、50mm×40mm×0.1mm(厚さ)の銅板に直接テープを貼り付けて測定したところ、0.4MPa以上の強度を有することを確認した。強度測定値が0.3MPa以下となる様な測定は、本試験方法が有効であると判断できる。
上記の様に、本発明の吸着シート(1)においては、当該吸着シートの基材シート(12)、(14)に吸着材を担持させるためのバインダーとして、硬化後のガラス転移温度が所定の温度以上のバインダーを使用することにより、広い温度範囲において吸着材同士の接着力、吸着材と基材シート(12)、(14)との接着力を高め、しかも、例えば粒径が10μm以下と言ったより小さな粒径の吸着材を一層多量に担持させている。そして、初期の水蒸気吸着量に対して特定の耐久性試験を行った後の水蒸気吸着量が大きく、耐熱性能に優れ、吸着・脱着能力に優れている。従って、本発明の吸着シート(1)によれば、これを構成要素とする吸着素子(2A)〜(2F)において、より広い温度範囲で一層優れた吸着・脱着性能を発揮させることが出来る。
次に、本発明の吸着素子(2A)〜(2F)及びその製造方法について説明する。吸着素子(2A)〜(2F)は、前述の通り、吸着ヒートポンプや調湿システムの吸着装置に使用される。
本発明において例示する吸着素子(2A)〜(2F)のうち、図3に示す様なプレートフィン型の吸着素子(2A)及び図5に示す様なコルゲートフィン型の吸着素子(2B)は、金属の基材シート(12)から成る吸着シート(1)を構成要素とする素子であり、例えば、吸着ヒートポンプにおいて、吸着質蒸気の出入口を備えたケーシングに収容され、真空閉鎖系を構成する蒸発器と凝縮器の間に吸着装置(吸着器)として配置される。また、図7及び図12に示す様な円筒状ローター型の吸着素子、ならびに、図13及び図15に示す様な円柱状ローター型の吸着素子は、繊維質の基材シート(14)から成る吸着シート(1)を構成要素とする素子であり、例えば、調湿システムにおいて、開放型のケーシングに収容され、空気の流路に吸着装置(デシカント装置)として配置される。
先ず、図3に示すプレートフィン型の吸着素子(2A)について説明する。図3に示す吸着素子(2A)は、前述の図1に示す様な吸着シート(1a)を複数備えて成り且つ各吸着シート(1a)が板状に形成される。具体的には、吸着素子(2A)は、例えば、図示する様に平板状に形成された吸着シート(1a)と、熱媒体(温熱媒体および冷熱媒体)が流れる一筋の熱媒流路(3)とを備えている。
吸着素子(2A)において、吸着シート(1a)は、その形状、面積および吸着装置の能力にもよるが、通常は5〜50枚程度使用され、各吸着シート(1a)は、これらの各板面が平行かつ並列になる様に、一定の微小な通気空間(20)(図4参照)を介して配列される。そして、熱媒流路(3)は、各吸着シート(1a)を貫通した状態に配置される。しかも、熱媒流路(3)は、各吸着シート(1a)に接触した状態に配置される。
熱媒流路(3)は、断面が円形の管によって構成され、その構成材料としては、基材シート(12)と同様に、剛性、熱伝導度、製作コストの観点から、通常、アルミニウム、銅、真鍮、鉄、クロム、ニッケル、スチール、これらの合金などの金属が挙げられる。中でも、アルミニウム又はアルミニウム合金、銅または銅合金が好ましい。吸着装置の能力にもよるが、通常、熱媒流路(3)を構成する管の外径は6〜20mm程度、管の肉厚は0.2〜1mm程度とされる。
熱媒流路(3)は、1本の連続した管路として構成され、その一端を熱媒体の入口ポート(31)、他端を熱媒体の出口ポート(32)とされる。吸着シート(1a)に対する熱媒流路(3)の貫通形態、換言すれば、熱媒流路(3)の引回し形態は、吸着シート(1a)との熱交換効率を考慮して適宜に設計できるが、その引回しパターンとしては、例えば、吸着シート(1a)の板面側から視た場合の貫通部分の配列が上下左右に並列状態、上段と下段とでずれた千鳥状態などの各種のパターンを採用できる。すなわち、1本の連続した熱媒流路(3)は、吸着シート(1a)の配列体に対し、これら吸着シートの板面をジグザグに複数回貫通する様に配置される。
図3に示す吸着素子(2A)においては、吸着シート(1a)の配列体に複数の直管を貫通させ、熱媒体の入口ポート(31)及び出口ポート(32)としての開放端部を除き、各隣接する前記の直管の各端部をU字管で順次に接続することにより、一筋の熱媒流路(3)が構成されている。なお、隣接する直管部の間の距離は、熱伝導効率を高める観点から、通常は10〜50mmに設定される。
また、熱媒流路(3)は、効率的な熱交換を行うため、各吸着シート(1a)に接触した状態に配置される必要がある。好ましくは、熱媒流路(3)は、各吸着シート(1a)の基材シート(12)に接触した状態とされる。これにより、熱媒流路(3)に流れる熱媒体の温熱および冷熱を各吸着シート(1a)の吸着材層(13)に速やかに伝達することが出来る。
更に、吸着素子(2A)においては、図4に示す様に、各吸着シート(1a)の間に一定の通気空間(20)が設けられる。素子の小型化を図り且つ必要な通気性を確保するため、隣接する吸着シート(1a)の各基材シート(12)の間の距離(2L)は、吸着シート(1a)の吸着材層(13)の厚さ(t)の2倍よりも大きく且つ40倍以下に設定される。
基材シート(12)の間の距離(2L)を上記の範囲に設定する理由は次の通りである。すなわち、基材シート(12)の間の距離(2L)が吸着材層(13)の厚さ(t)の2倍以下の場合は、通気空間(20)を確保できず、吸着・脱着すべき吸着質蒸気や水蒸気を吸着シート(1a)の表面に流通させることが出来ない。一方、基材シート(12)の間の距離(2L)が吸着材層(13)の厚さ(t)の40倍を超えた場合は、通気空間(20)が必要以上に大きくなり、吸着素子(2A)が大型化するので好ましくない。
換言すれば、隣接する吸着シート(1a)の基材シート(12)の間の距離(2L)の1/2の距離(一つの基材シート(12)から基材シート(12)間の中心までの距離)(L)に対し、吸着材層(13)の厚さ(t)が5〜95%となる様に通気空間(20)の大きさが決定される。基材シートの間の距離(2L)に対する吸着材層(13)の厚さ(t)は、吸着素子(2A)の形状、吸着装置の用途などにより最適値は異なるが、吸着ヒートポンプに適用する場合は10〜95%が好ましく、15〜95%がより好ましい。また、調湿システムに適用する場合は10〜90%が好ましく、10〜85%がより好ましい。なお、実用上、吸着材層(13)の厚さ(t)は50〜1000μm、好ましくは100〜700μmである。
上記の吸着素子(2A)は、一定間隔で配置した吸着シート(1a)の集合体に対し、熱媒流路(3)構成用の直管を所定の数だけ配管挿通孔(11)に圧入することにより、直管に各吸着シート(1a)を固定する圧入法、または、一定間隔で配置した吸着シート(1a)の集合体に対し、熱媒流路(3)構成用の直管を所定の数だけ配管挿通孔(11)に挿通した後、直管を拡径することにより、直管に各吸着シート(1a)を固定する拡管法により製造することが出来る。なお、各直管の隣接する端部は、各吸着シート(1a)を固定した後、U字管によって接続される。
また、上記の吸着材素子(2A)の製造方法としては、上記の様に、予め作製された吸着シート(1a)を組み立てることによって製造する方法の他、基材シート(12)及び熱媒流路(3)構成用の管を使用し、素子の骨格を備えた構造体を予め組み立てた後、前述の水系分散液を塗布して製造することも出来る。すなわち、吸着材素子(2A)の製造方法においては、基材シート(12)を使用して当該吸着素子の骨格構造基体を作製し、次いで、吸着材とバインダーとが水に分散されて成る上記の水系分散液を前記の骨格構造基体の基材シート(12)に塗布した後、基材シート(12)を加熱乾燥することにより、基材シート(12)の表面に吸着材を付着させる。
骨格構造基体に対する水系分散液の塗布の方法としては、基材シート(12)を製造する際の前述の塗布方法の他、水系分散液に骨格構造基体全体を浸漬させる方法が挙げられ、斯かる浸漬塗布法によれば、簡便かつ一層効率的に水系分散液を塗布することが出来る。水系分散液を塗布した後は、前述の吸着シート(1)の製造におけるのと同様に、通常、120〜200℃の温度で20〜120分間の加熱乾燥を行い、骨格構造基体の基材シート(12)に吸着材を担持させる。また、骨格構造基体に対する上記の水系分散液の塗布および加熱乾燥は、複数回実施してもよい。
上記の様な本発明の吸着素子(2A)は、耐熱性能に優れ、吸着・脱着能力に優れた前述の吸着シート(1a)を構成要素として備えているため、耐熱性能、吸着・脱着能力に優れ、一層小型化を図ることが出来る。そして、特に、骨格構造基体を作製し、これに吸着材含有の水系分散液を塗布する本発明の吸着素子の製造方法によれば、耐熱性能および吸着・脱着能力に優れた上記の吸着素子(2A)を効率的に製造することが出来る。
次に、図5に示すコルゲートフィン型の吸着素子(2B)について説明する。図5に示す吸着素子(2B)は、前述の図2に示す様な吸着シート(1b)を複数備えて成り且つ各吸着シート(1b)がその長さ方向に沿ってジグザグに屈曲する帯状に形成される。具体的には、吸着素子(2B)は、熱媒体(温熱媒体および冷熱媒体)が供給される入口側ヘッダー(41)と、熱媒体を排出する出口側ヘッダー(42)と、これら各ヘッダーの間に平行かつ並列に架け渡され且つ熱媒体が流れる複数の直管状の熱媒流路(4)とを備えており、各吸着シート(1b)は、図示する様に細長の波板状に形成されて熱媒流路の間に挿入される。
吸着素子(2B)において、吸着シート(1b)は、吸着装置の能力にもよるが、通常は5〜50枚程度使用され、各吸着シート(1b)は、その長手方向を熱媒流路(4)に沿わせ且つ各隣接する熱媒流路(4)の間に挿入され、そして、各吸着シート(1b)の各凹部(屈曲部分における谷の部位)が通気空間(20)とされる。しかも、各熱媒流路(4)は、これに隣接する吸着シート(1b)の各凸部(屈曲部分における山の部位)に接触した状態に配置される。
各熱媒流路(4)は、円弧状の短辺を有する扁平な略長方形に断面が形成された扁平管によって構成され、その構成材料としては、吸着素子(2A)におけるのと同様に、通常、アルミニウム、銅、真鍮、鉄、クロム、ニッケル、スチール、これらの合金などの金属が使用され、特に、アルミニウム又はアルミニウム合金、銅または銅合金が好ましい。熱媒流路(4)を構成する扁平管の長手方向に直交する断面の外形寸法は、長辺部が10〜100mm程度、短辺部が0.5〜10mm程度であり、管の肉厚は0.2〜1mm程度とされる。
各熱媒流路(4)は、短辺部が吸着素子(2B)の外側に向く様に、一端を入口側ヘッダー(41)に接続され、他端を出口側ヘッダー(42)に接続される。入口側ヘッダー(41)は、入口ポート(43)から供給された熱媒体を各熱媒流路(4)に分配する箱状の部材であり、出口側ヘッダー(42)は、各熱媒流路(4)に流れた熱媒体を集約して出口ポート(44)から排出する箱状の部材である。各熱媒流路(4)の配列ピッチ、すなわち、各隣接する熱媒流路(4)の間の距離は、熱伝導効率を高める観点から、通常、5〜100mmに設定される。
また、熱媒流路(4)は、吸着素子(2A)におけるのと同様に、効率的な熱交換を行うため、各吸着シート(1b)に接触した状態に配置される必要がある。好ましくは、図示しないが、熱媒流路(4)は、各吸着シート(1b)の基材シート(12)に接触した状態とされる。すなわち、吸着シート(1b)の各凸部においては、外側の吸着材層(13)が除去されて基材シート(12)が露出することにより、基材シート(12)が熱媒流路(4)に接触した構造になされている。これにより、熱媒流路(4)に流れる熱媒体の温熱および冷熱を各吸着シート(1b)の吸着材層(13)に速やかに伝達することが出来る。
更に、吸着素子(2B)においては、図6に示す様に、各吸着シート(1a)の凹部と熱媒流路(4)とで囲まれた部位が通気空間(20)を構成しているが、素子の小型化を図り且つ必要な通気性を確保するため、1つの熱媒流路(4)側で隣接する吸着シート(1a)の凸部の各基材シート(12)の間の距離(2L)は、吸着シート(1a)の吸着材層(13)の厚さ(t)の2倍よりも大きく且つ40倍以下に設定される。
基材シート間の距離(2L)を上記の範囲に設定する理由は、前述の吸着素子(2A)におけるのと同様である。換言すれば、吸着シート(1a)の隣接する凸部の基材シート(12)間の距離(2L)の1/2の距離(一つの凸部の基材シート(12)から隣接する凸部の基材シート(12)間の中心までの距離)(L)に対する吸着材層(13)の厚さ(t)が5〜95%となる様に通気空間(20)の大きさが決定される。基材シート間の距離(2L)に対する吸着材層(13)の厚さ(t)は、吸着ヒートポンプに適用する場合は10〜95%が好ましく、15〜95%がより好ましい。また、調湿システムに適用する場合は10〜90%が好ましく、10〜85%がより好ましい。なお、実用上、吸着材層(13)の厚さ(t)は50〜1000μm、好ましくは100〜700μmである。
上記の吸着素子(2B)は、熱媒流路(4)構成用の扁平管で吸着シート(1b)を両側から挟み付ける様に各長手方向を揃えて配列した後、外側に位置する両方の扁平管を互いに接近する方向に加圧することにより、吸着シート(1b)をジグザグの屈曲を僅かに引き伸ばす方向に弾性変形させ、次いで、入口側ヘッダー(41)及び出口側ヘッダー(42)の内側面に予め設けられたスリットに各扁平管の端部を差し込むことにより、各扁平管を入口側ヘッダー(41)及び出口側ヘッダー(42)に固定し且つ各扁平管の間に吸着シート(1b)を固定する方法によって製造することが出来る。
また、上記の吸着材素子(2B)の製造方法としては、前述の吸着材素子の製造方法と同様に、基材シート(12)及び熱媒流路(4)構成用の管を使用し、素子の骨格を備えた構造体を予め組み立てた後、前述の水系分散液を塗布して製造することも出来る。すなわち、上記の各吸着材素子(2B)の製造方法においては、基材シート(12)を使用して当該吸着素子の骨格構造基体を作製し、次いで、吸着材とバインダーとが水に分散されて成る上記の水系分散液を前記の骨格構造基体の基材シート(12)に塗布した後、基材シート(12)を加熱乾燥することにより、基材シート(12)の表面に吸着材を付着させる。
骨格構造基体に対する水系分散液の塗布の方法としては、前述の吸着素子(2A)の場合と同様に、吸着シート(1b)を製造する際の塗布方法と同様の方法の他、水系分散液に骨格構造基体全体を浸漬させる方法が挙げられる。水系分散液を塗布した後は、前述の吸着素子(2A)の場合と同様に、120〜200℃の温度で20〜120分間の加熱乾燥を行い、骨格構造基体の基材シート(12)に吸着材を担持させる。また、上記の水系分散液の塗布および加熱乾燥は、複数回実施してもよい。
上記の様な本発明の吸着素子(2B)は、前述の吸着素子(2A)と同様に、耐熱性能、吸着・脱着能力に優れ、一層小型化を図ることが出来る。そして、前述の水系分散液を骨格構造基体に塗布する本発明の吸着素子の製造方法によれば、耐熱性能および吸着・脱着能力に優れた上記の吸着素子(2B)を効率的に製造することが出来る。
次に、図7に示す円筒状ローター型の吸着素子(2C)について説明する。図7に示す吸着素子(2C)は、外周面から内周面へ又は内周面から外周面へ通気可能に構成されることにより吸着質蒸気や水蒸気を吸脱着する円筒状の素子である。斯かる吸着素子(2C)は、基材シート(14)が繊維質シートから成る前述の吸着シート(1c)を多数備えて成り且つこれらの吸着シート(1c)により円筒状ハニカム構造体に構成される。そして、吸着シート(1c)が略波板状に形成され且つ円周方向に沿って積層状態に配列されることにより、略六角形の開口形状を有する通気用のセル(50)が周面に多数設けられる。
吸着素子(2C)は、帯状に形成され且つその長手方向に対してジグザグに屈曲した形状の略波板状の吸着シート(1c)がその長手方向を当該吸着素子(ハニカム構造体)の軸線と平行に揃える状態で円周方向に沿って多数積層された構造を備えている。周面に形成されたセル(50)は、隣接する略波板状の吸着シート(1c)の各凸部同士が所定の幅(後述する直線状接合部(51)の幅)で接合されることにより、その開口形状が略六角形に形成される。なお、吸着素子(2C)において、隣接する略波板状の吸着シート(1c)によって形成されるセル(50)の配列方向(X)は、シート(1c)の長手方向に沿った方向、すなわち、当該吸着素子(ハニカム構造体)の軸線に沿った方向である。
上記の吸着素子(2C)は、前述の繊維質の基材シート(14)(吸着シートの素材)から成るハニカムの骨格構造基体に吸着材を担持させて構成される。そして、ハニカムの骨格構造基体は、方形平板状(例えば帯状)に形成された多数の基材シート(53)(基材シート(14)の成形体)を積層すると共に、各基材シート(53)の表裏に当該基材シートの一辺と平行に一定ピッチで且つ表裏で1/2ピッチずれた状態で設定された多数の直線状接合部(51)(図8参照)において各隣接する基材シート(53)を互いに接合して成る積層体(5b)(図9参照)を使用し、これを拡げた場合にセル(50)が開口する側の平行な2つの積層面を湾曲させる状態に積層体(5b)を展開することによって構成される。
ハニカムの骨格構造基体および吸着素子(2C)の製造方法を図8〜図11に基づいて説明すると、ハニカムの骨格構造基体を製造するには、先ず、図8に示す様に、多数個の骨格構造基体を製造するに足る十分な大きさの平板状の基材シート(14)を準備し、これらを積層すると共に、例えば上下に各隣接する基材シート(14)を所定部位で接合する。基材シート(14)は、最終的に前述の略波板状の吸着シート(1c)の基材シート(53)に相当するものであり、斯かる平板状の基材シート(14)としては、前述の繊維質シートが使用される。
図8に示す平板状の基材シート(14)は、骨格構造基体の大きさ及びセル(50)の大きさに応じて、例えば100〜1000枚程度積層される。そして、各基材シート(14)は、積層する際、加熱溶着、超音波溶着または接着剤を使用した接着などの材料に応じた接合法により、各隣接する基材シート(14)に対して順次に所定部位において接合される。基材シート(14)においては、各隣接する基材シート(14)との接合部として、各基材シート(14)の表裏に当該基材シートの一辺と平行に一定ピッチで且つ表裏で1/2ピッチずれた状態で多数の直線状接合部(51)が設定される。基材シート(14)の一方の面における直線状接合部(51)の間隔は2〜15mm程度とされ、直線状接合部(51)を前記の間隔で設定した場合には、1つのセル(50)を最大対角線が2〜20mm程度のセルに形成できる。
基材シート(14)を積層した後は、図9に示す様に、積層方向側の各端面のシートが長さ(M)、幅(N)の例えば帯状となる様に、基材シート(14)の積層体を断裁して直方体の積層体(5b)を作製する。すなわち、積層体(5b)は、平板状の基材シート(14)から形成された所定寸法の帯状の基材シート(53)が多数積層され且つ各隣接する基材シート(53)同士が前記の直線状接合部(51)において互いに接合されたものである。積層体(5b)の長さ(M)はハニカムの骨格構造基体の軸長に相当し、幅(N)は骨格構造基体の外径と内径の差(円筒の厚さ)に相当する。吸着素子(2C)を適用する装置によっても相違するが、骨格構造基体の大きさ、すなわち、積層体(5b)の大きさは、通常、長さ(M)が60〜400mm程度、幅(N)が10〜60mm程度とされる。
上記の様にして得られた積層体(5b)は、これを積層方向(図9において上下の方向)に拡げた場合、図10に示す様に、各帯状の基材シート(53)が略波板状に変形すると共に、積層体(5b)の長さ(M)に沿った平行な2つの積層面に多数のセル(50)が開口する。なお、図9中の符号(Y)の矢印は、積層体(5b)を拡げた場合に形成されるセル(50)の連通方向を示しており、また、図10は、上記の積層面に形成されるセル(50)を示し、図10中の符号(X)の矢印は、各基材シート(53)の伸長方向および各隣接する基材シート(53)により形成されるセル(50)の配列方向を示す。
そこで、本発明においては、図11に示す様に、上記の積層体(5b)を使用し、これを拡げた場合に発現するセル(50)の開口が円筒状の骨格構造基体の周面に位置する状態に、すなわち、積層体(5b)を拡げた場合にセル(50)が開口する側の上記の平行な2つの積層面を湾曲させる状態に積層体(5b)を展開することにより、円筒状のハニカムの骨格構造基体を構成する。換言すれば、積層体(5b)を展開するにあたり、帯状の基材シート(53)の一方の長辺が内周に位置し、他方の長辺が外周に位置する様に、積層体(5b)を環状に曲げる。そして、積層体(5b)の積層方向の両端面に相当する基材シート(53)同士を接合する。
なお、ハニカムの骨格構造基体を製造する場合、積層体(5b)は、長さ(M)及び幅(N)に予め形成された多数の帯状のシート(53)を直接積層すると共に、積層する際にこれらを上記の様に設定された直線状接合部(51)において接合することにより作製してもよい。
上記の様にして得られた骨格構造基体は、略波板状の吸着シート(1c)のみを円周方向に沿って積層した構造を備え、各セル(50)の開口形状が略六角形に形成されている。そして、本発明の吸着素子(2C)は、前述の水系分散液を上記のハニカムの骨格構造基体に塗布した後、温風などによる乾燥処理を施すことにより製造される。すなわち、上記の吸着素子(2C)の製造方法においては、繊維質の基材シート(14)を使用して当該吸着素子の骨格構造基体を作製し、次いで、吸着材とバインダーとが水に分散されて成る上記の水系分散液を骨格構造基体の基材シート(14)に塗布含浸させた後、基材シート(14)を加熱乾燥することにより、基材シート(14)の表面および内部に吸着材を付着させる。
なお、前述の各吸着素子(2A)、(2B)の場合と同様に、基材シート(14)の加熱乾燥処理においては、通常、120〜200℃の温度で20〜120分間の加熱乾燥を行う。また、水系分散液の塗布および加熱乾燥は、複数回実施してもよい。上記の様にして製造された本発明の吸着素子(2C)は、基材であるハニカムの骨格構造基体の各基材シート(53)に吸着材がバインダーによって担持された構造を備えている。すなわち、吸着素子(2C)において、吸着材は、骨格構造基体を構成する基材シート(14)である繊維質シートの表面および内部に繊維と絡み合う状態でバインダーにより担持されている。
上記の様な本発明の吸着素子(2C)は、前述の各吸着素子(2A)、(2B)の場合と同様に、耐熱性能に優れ、吸着・脱着能力に優れた前述の吸着シート(1c)を構成要素として備えているため、耐熱性能、吸着・脱着能力に優れ、一層小型化を図ることが出来る。そして、ハニカムの骨格構造基体に吸着材含有の水系分散液を塗布する本発明の吸着素子の製造方法によれば、耐熱性能および吸着・脱着能力に優れた上記の吸着素子(2C)を効率的に製造することが出来る。
また、本発明の吸着素子(2C)によれば、略波板状の吸着シート(1c)のみの積層構造を備えており、方形平板状の多数の基材シート(53)の積層体(5b)(図9参照)を展開することによりハニカムの骨格構造基体を簡単に作製できるため、製造コストをより低減できる。そして、上記の積層構造により各セル(50)の開口形状が略六角形に形成されているため、通気効率を高め、吸着・脱着性能をより高めることが出来る。
次に、図12に示す円筒状のローター型の吸着素子(2D)について説明する。図12に示す吸着素子(2D)は、図7に示す吸着素子(2C)と同様に、外周面から内周面へ又は内周面から外周面へ通気可能に構成されることにより吸着質蒸気や水蒸気を吸脱着する円筒状の素子であり、基材シート(14)が繊維質シートから成る前述の吸着シート(1c)を多数備えて成り且つこれらの吸着シート(1c)により略円筒状のハニカム構造体に構成される。そして、略波板状に形成された吸着シート(1c)及び略平板状に形成された吸着シート(1c)が交互に軸線方向に沿って積層状態に配列されることにより、略三角形の開口形状を有する通気用のセル(50)が周面に多数設けられる。
吸着素子(2D)は、平板状の吸着シート(1c)に波板状の吸着シート(1c)を重ねることにより一列のセル(50)を形成したハニカムシートが当該吸着素子(ハニカム構造体)の軸線方向に沿って多数積層された構造を備えている。周面に形成されたセル(50)は、波板状の吸着シート(1c)の各凸部が隣接する平板状の吸着シート(1c)に接合されることにより、その開口形状が略三角形に形成される。なお、吸着素子(2D)において、平板状の吸着シート(1c)と波板状の吸着シート(1c)によって形成されるセル(50)の配列方向(X)は、吸着シート(1c)の長手方向に沿った方向、すなわち、当該吸着素子(ハニカム構造体)の円周に沿った方向である。
上記の吸着素子(2D)は、前述の繊維質の基材シート(14)から成るハニカムの骨格構造基体に吸着材を担持させて構成される。吸着素子(2D)の製造方法を説明すると、ハニカムの骨格構造基体は、平板状の基材シート(14)に波板状の基材シート(14)が重ねられた上記のハニカムシートを多数積層して成る積層体によって製造される。具体的には、多数のハニカムシートを積層し且つその積層方向側の両端面が略扇形となる様に成形することにより、柱状の積層体を作製した後、当該柱状の積層体を複数個使用し、その端面が骨格構造基体の端面に位置する様にこれら積層体(図12中では8個の積層体)を環状に連結して製造される。
上記の様な平板状の基材シート(14)と波板状の基材シート(14)とが積層された積層体は、長さの異なる2種類の基材シート(14)を交互に積層し且つ長い方の基材シート(14)を引き寄せながら一定間隔で接合する所謂ハニカム成形機によって作製することが出来る。その際、隣接する平板状の基材シート(14)と波板状の基材シート(14)は、加熱溶着、超音波溶着または接着剤を使用した接着などにより、セル(50)の開口幅に応じて一定ピッチで接合され、形成される1つのセル(50)においては、例えば、開口幅(三角形の底辺長さ)を2〜15mm程度、高さ(三角形の高さ)を0.5〜10mm程度に設定される。そして、平板状の基材シート(14)と波板状の基材シート(14)から成るハニカムシートは例えば100〜1000枚程度積層される。
上記の積層体は、両端面が略台形または略扇形となる様に成形される。積層体を製造した後は、積層体を複数個、例えば8〜12個使用し、これらを接着剤による接着などによって環状に連結することにより、略円筒状のハニカムの骨格構造基体を製造する。また、吸着装置に組み込んだ場合に素子の外周側のケーシングとの隙間を小さくして空気などのスルーパスを少なくするためには、上記の積層体をより多く使用し、骨格構造基体をより円筒状に近づけるのが好ましい。なお、上記のハニカムの骨格構造基体の製造方法は、公知であり、例えば特開2004−209420号公報に開示されている。
ハニカムの骨格構造基体を製造した後は、前述の水系分散液を骨格構造基体に塗布した後、温風などによる乾燥処理を施す。すなわち、上記の吸着素子(2D)の製造方法においては、繊維質の基材シート(14)を使用して当該吸着素子の骨格構造基体を作製し、次いで、吸着材とバインダーとが水に分散されて成る上記の水系分散液を骨格構造基体の基材シート(14)に塗布含浸させた後、基材シート(14)を加熱乾燥することにより、基材シート(14)の表面および内部に吸着材を付着させる。
前述の各吸着素子(2A)〜(2C)の場合と同様に、基材シート(14)の加熱乾燥処理においては、通常、120〜200℃の温度で20〜120分間の加熱乾燥を行う。また、水系分散液の塗布および加熱乾燥は、複数回実施してもよい。上記の様にして製造された本発明の吸着素子(2D)は、基材であるハニカムの骨格構造基体の各基材シート(14)に吸着材がバインダーによって担持された構造を備えている。すなわち、吸着素子(2D)において、吸着材は、骨格構造基体を構成する基材シート(14)である繊維質シートの表面および内部に繊維と絡み合う状態でバインダーにより担持されている。
上記の様な本発明の吸着素子(2D)は、前述の各吸着素子(2A)〜(2C)の場合と同様に、耐熱性能に優れ、吸着・脱着能力に優れた前述の吸着シート(1c)を構成要素として備えているため、耐熱性能、吸着・脱着能力に優れ、一層小型化を図ることが出来る。そして、ハニカムの骨格構造基体に吸着材含有の水系分散液を塗布する本発明の吸着素子の製造方法によれば、耐熱性能および吸着・脱着能力に優れた上記の吸着素子(2D)を効率的に製造することが出来る
次に、図13に示す円柱状のローター型の吸着素子(2E)について説明する。図13に示す吸着素子(2E)は、一方の端面から他方の端面へ通気可能に構成されることにより溶質蒸気や水蒸気を吸脱着する円柱状の素子である。斯かる吸着素子(2E)は、基材シート(14)が繊維質シートから成る前述の吸着シート(1c)を多数備えて成り且つこれらの吸着シート(1c)により円柱状(例えば短軸円柱状)のハニカム構造体に構成される。そして、吸着シート(1c)が略波板状に形成され且つ円周方向に沿って積層状態に配列されることにより、略六角形の開口形状を有する通気用のセル(50)が端面に多数設けられる。
吸着素子(2E)は、図13に示す様に、例えば短軸円柱状に形成され且つ中心に回転軸が装着される。吸着素子(2E)は、帯状に形成され且つその長手方向に対してジグザグに屈曲した形状の略波板状の吸着シート(1c)がその長手方向を当該当該吸着素子(ハニカム構造体)の半径に揃えられる状態で円周方向に沿って多数積層された構造を備えている。端面に形成されたセル(50)は、隣接する略波板状の吸着シート(1c)の各凸部同士が所定の幅(直線状接合部(51)の幅)で接合されることにより、その開口形状が略六角形に形成される。なお、吸着素子(2E)において、隣接する略波板状の吸着シート(1c)によって形成されるセル(50)の配列方向(X)は、吸着シート(1c)の長手方向に沿った方向、すなわち、当該吸着素子(ハニカム構造体)の半径に沿った方向である。
上記の吸着素子(2E)は、前述の繊維質の基材シート(14)(吸着シートの材料)から成るハニカムの骨格構造基体に吸着材を担持させて構成される。そして、ハニカムの骨格構造基体は、前述の図9に示す積層体(5b)、すなわち、方形平板状(例えば帯状)に形成された多数の方形平板状の基材シート(53)を積層すると共に、各基材シート(53)の表裏に当該基材シートの一辺と平行に一定ピッチで且つ表裏で1/2ピッチずれた状態で設定された多数の直線状接合部(51)において各隣接する基材シート(53)を互いに接合して成る積層体(5b)を使用し、これを拡げた場合にセル(50)が開口する側の積層面に隣接する他の平行な2つの積層面を湾曲させる状態に積層体(5b)を展開することによって構成される。
ハニカムの骨格構造基体および吸着素子(2E)の製造方法を図8〜図10及び図14に基づいて説明すると、最初にハニカムの骨格構造基体を製造するが、骨格構造基体の製造においては、前述の円筒状の吸着素子(2C)におけるのと同様の工程を経て積層体(5b)を作製する。すなわち、骨格構造基体は、略波板状に変形される基材シート(53)の材料として、前述と同様の材料から成る図8に示す平板状の基材シート(14)を使用し、前述と同様の方法により図9に示す様な積層体(5b)を作製した後、斯かる積層体(5b)を展開して製造される。
本発明において、短軸円柱状のハニカムの骨格構造基体を製造する場合は、図14に示す様に、上記の積層体(5b)を使用し、これを拡げた場合に発現するセル(50)の開口が骨格構造基体の端面に位置する状態に、すなわち、積層体(5b)を拡げた場合にセル(50)が開口する側の積層面に隣接する他の平行な2つの積層面(図9における積層体(5b)の幅(N)の側の積層面)を湾曲させる状態に積層体(5b)を展開することにより短軸円柱状の骨格構造基体を構成する。換言すれば、積層体(5b)を展開するにあたり、帯状の基材シート(53)の一方の短辺が内周に位置し、他方の短辺が外周に位置する様に、積層体(5b)を環状に曲げる。そして、積層体(5b)の積層方向の両端面に相当する基材シート(53)同士を接合する。
なお、上記のハニカムの骨格構造基体を製造する場合、前述の吸着素子(2C)の場合と同様に、積層体(5b)は、予め所定の寸法に形成された帯状の基材シート(53)を直接積層すると共に、積層する際にこれらを上記の直線状接合部(51)において接合することにより作製してもよい。
上記の様にして得られた骨格構造基体は、略波板状の吸着シート(1c)のみを円周方向に沿って積層した構造を備え、各セル(50)の開口形状が略六角形に形成されている。そして、本発明の吸着素子(2E)は、前述の吸着素子(2C)と同様に、前述の水系分散液を上記のハニカムの骨格構造基体に塗布した後、温風などによる乾燥処理を施すことにより製造される。すなわち、吸着素子(2E)の製造方法においては、繊維質の基材シート(14)を使用して当該吸着素子の骨格構造基体を作製し、次いで、吸着材とバインダーとが水に分散されて成る水系分散液を骨格構造基体の基材シート(14)に塗布含浸させた後、基材シート(14)を加熱乾燥することにより、基材シート(14)の表面および内部に吸着材を付着させる。
なお、前述の各吸着素子(2A)〜(2D)の場合と同様に、基材シート(14)の加熱乾燥処理においては、通常、120〜200℃の温度で20〜120分間の加熱乾燥を行う。また、水系分散液の塗布および加熱乾燥は、複数回実施してもよい。上記の様にして製造された本発明の吸着素子(2E)は、基材であるハニカムの骨格構造基体の各基材シート(53)に吸着材がバインダーによって担持された構造を備えている。すなわち、吸着素子(2C)において、吸着材は、骨格構造基体を構成する繊維質シートから成る基材シート(14)の表面および内部に繊維と絡み合う状態でバインダーにより担持されている。
上記の様な本発明の吸着素子(2E)は、前述の各吸着素子(2A)〜(2D)の場合と同様に、耐熱性能に優れ、吸着・脱着能力に優れた前述の吸着シート(1c)を構成要素として備えているため、耐熱性能、吸着・脱着能力に優れ、一層小型化を図ることが出来る。そして、ハニカムの骨格構造基体に吸着材含有の水系分散液を塗布する本発明の吸着素子の製造方法によれば、耐熱性能および吸着・脱着能力に優れた上記の吸着素子(2E)を効率的に製造することが出来る
また、本発明の吸着素子(2E)によれば、略波板状の吸着シート(1c)のみの積層構造を備えており、方形平板状の多数の基材シート(53)の積層体(5b)(図9参照)を展開することによりハニカムの骨格構造基体を簡単に作製できるため、製造コストをより低減できる。そして、上記の積層構造により各セル(50)の開口形状が略六角形に形成されているため、通気効率を高め、吸着・脱着性能をより高めることが出来る。
次に、図15に示す円柱状のローター型の吸着素子(2F)について説明する。図15に示す吸着素子(2F)は、図13に示す吸着素子(2E)と同様に、一方の端面から他方の端面へ通気可能に構成されることにより溶質蒸気や水蒸気を吸脱着する円柱状の素子であり、基材シート(14)が繊維質シートから成る前述の吸着シート(1c)を多数備えて成り且つこれらの吸着シート(1c)により円柱状(例えば短軸円柱状)のハニカム構造体に構成される。そして、略波板状に形成された吸着シート(1c)及び略平板状に形成された吸着シート(1c)が交互に直径方向に沿って積層状態に配列されることにより、略三角形の開口形状を有する通気用のセル(50)が端面に多数設けられる。
吸着素子(2F)は、平板状の吸着シート(1c)に波板状の吸着シート(1c)を重ねることにより一列のセル(50)を形成したハニカムシートが当該吸着素子(ハニカム構造体)の中心軸の周りに多数積層された構造を備えている。すなわち、ハニカムシートが吸着素子(ハニカム構造体)の半径方向に積層された構造を備えている。端面に形成されたセル(50)は、波板状の吸着シート(1c)の各凸部が隣接する平板状の吸着シート(1c)に接合されることにより、その開口形状が略三角形に形成される。なお、吸着素子(2F)において、平板状の吸着シート(1c)と波板状の吸着シート(1c)によって形成されるセル(50)の配列方向(X)は、吸着シート(1c)の長手方向に沿った方向、すなわち、当該吸着素子(ハニカム構造体)の円周に沿った方向である。
上記の吸着素子(2F)は、繊維質の基材シート(14)から成るハニカムの骨格構造基体に吸着材を担持させて構成される。吸着素子(2F)の製造方法を説明すると、ハニカムの骨格構造基体は、平板状の基材シート(14)に波板状の基材シート(14)が重ねられた長尺のハニカムシートを芯材(中心軸)に渦巻状に巻き付けるか、または、芯材(中心軸)の周りに順次に積層して製造される。具体的には、吸着素子(2F)の厚さ(軸線方向の長さ)に相当する幅の1枚の連続するハニカムシートを芯材に対して連続的に多数回巻き付ける。あるいは、上記と同様の幅の多数枚のハニカムシートを芯材に対して順次1周毎に巻き付ける。
なお、上記のハニカムシートは、前述の図12に示す吸着素子(2D)の場合と同様に、ハニカム成形機によって作製することが出来、1つのセルの大きさは、開口幅(三角形の底辺長さ)を2〜15mm程度、高さ(三角形の高さ)を0.5〜10mm程度に設定される。そして、骨格構造基体におけるハニカムシートの積層数は例えば100〜1000枚程度とされる。また、上記のハニカムの骨格構造基体の製造方法は、公知であり、例えば特開2004−209420号公報に開示されている。
ハニカムの骨格構造基体を製造した後は、図12に示す吸着素子(2D)の場合と同様に、前述の水系分散液を骨格構造基体に塗布した後、温風などによる乾燥処理を施す。すなわち、上記の吸着素子(2F)の製造方法においては、繊維質の基材シート(14)を使用して当該吸着素子の骨格構造基体を作製し、次いで、吸着材とバインダーとが水に分散されて成る上記の水系分散液を骨格構造基体の基材シート(14)に塗布含浸させた後、基材シート(14)を加熱乾燥することにより、基材シート(14)の表面および内部に吸着材を付着させる。
前述の各吸着素子(2A)〜(2E)の場合と同様に、基材シート(14)の加熱乾燥処理においては、通常、120〜200℃の温度で20〜120分間の加熱乾燥を行う。また、水系分散液の塗布および加熱乾燥は、複数回実施してもよい。上記の様にして製造された本発明の吸着素子(2F)は、基材であるハニカムの骨格構造基体の各基材シート(14)に吸着材がバインダーによって担持された構造を備えている。すなわち、吸着素子(2F)において、吸着材は、骨格構造基体を構成する繊維質シートから成る基材シート(14)の表面および内部に繊維と絡み合う状態でバインダーにより担持されている。
上記の様な本発明の吸着素子(2F)は、前述の各吸着素子(2A)〜(2E)の場合と同様に、耐熱性能に優れ、吸着・脱着能力に優れた前述の吸着シート(1c)を構成要素として備えているため、耐熱性能、吸着・脱着能力に優れ、一層小型化を図ることが出来る。そして、ハニカムの骨格構造基体に吸着材含有の水系分散液を塗布する本発明の吸着素子の製造方法によれば、耐熱性能および吸着・脱着能力に優れた上記の吸着素子(2F)を効率的に製造することが出来る。
また、上記の様に、吸着素子(2A)〜(2F)が耐熱性能、吸着・脱着能力に優れ且つより広い温度範囲で一層優れた吸着・脱着性能を発揮し得るため、吸着素子(2A)〜(2F)を備えた本発明の吸着ヒートポンプは、より小型化でき、省エネルギー化が求められるコジェネレーションシステム等に好適である。そして、吸着素子(2A)〜(2F)を備えた本発明の調湿空調装置は、余剰の低質熱エネルギーを利用して湿度調節を行う各種のシステムに好適である。
実施例1:
吸着材含有の水系分散液を調製し、これを基材シート(12)に塗布して吸着シート(1a)を製造した。そして、耐久性試験を行うと共に、耐久性試験の前後の水蒸気吸着量(F)、(U)を測定し、吸着シート(1a)の吸着性維持率(X)を確認した。更に、前述の接着強度試験(セロハン粘着テープとしては、ニチバン(株)社製「CT−18S」(商品名)を使用。)を行い、塗膜の接着強度を測定した。
水系分散液の調製においては、先ず、水12gに対し、平均粒径190μmのシリカゲル(ジーエルサイエンス社製;商品名「Unibeads 1S」)10gを加えて攪拌した。次いで、バインダーとして、エポキシエマルジョン1.7gと硬化剤(ジャパンエポキシレジン社製;商品名「エピキュアIBMI12」)0.09g、水3.8gの混合溶液を加えて撹拌することにより調製した。エポキシエマルジョンは、不揮発分(ジャパンエポキシレジン社製;商品名「エピレッツ3540WY55」)が53.5wt%であった。水系分散液の固形成分は40wt%であった。また、バインダーを個別に120℃30分で加熱乾燥し、DSCでガラス転移温度Tgを測定したところ、Tgは48℃であった。更に、フーリエ変換赤外分光法でピーク波長を測定したところ、次の様な構造に由来するピークが観察された。
吸着シート(1a)は、50mm×40mm×0.1mm(厚さ)の銅板から成る基材シート(12)に上記の水系分散液を塗布した後、120℃の温度で30分の加熱乾燥を行うことにより製造した。吸着シート(1a)に付着したシリカは0.5g、エポキシ樹脂は0.05gであった。そして、吸着シート(1a)の初期の水蒸気吸着量(吸着材1グラムに対する水の吸着重量)(F)を測定したところ、水蒸気吸着量(F)は0.063g/gであった。
次いで、耐久性試験として、吸着シート(1a)を恒温槽(61)において120℃で2分間加熱し、水槽(62)の常温の水に1分間浸漬した後、冷凍庫(63)において−15℃で2分間冷却する操作を50回繰り返した。そして、再度、吸着シート(1a)の試験後吸着量(耐久性試験後の吸着材1グラムに対する水の吸着重量)(U)を測定したところ、試験後吸着量(U)は0.062g/gであり、吸着性維持率(X)は99%と良好であった。また、耐久性試験における120℃の加熱操作では、吸着シート(1a)の表面に軟化は認められなかった。耐久性試験後の吸着シート(1a)については、接着強度試験を行い塗膜の接着強度を測定した。その結果、0.052MPaで破断した。
実施例2:
実施例1と同様の手順により、基材シート(12)に水系分散液を塗布して吸着シート(1a)を製造し、そして、耐久性試験を行うと共に、耐久性試験の前後の水蒸気吸着量(F)、(U)を測定し、吸着シート(1a)の吸着性維持率(X)を確認した。更に、接着強度試験を行い、塗膜の接着強度を測定した。
水系分散液は、水15.5gに対し、高吸水性ポリマー0.015gを加えて十分に撹拌した後、特開2004−136269号に記載の実施例1に従って合成し且つ乾式粉砕により細粒化して得られた平均粒径4μmのリン酸アルミ系ゼオライトであるFAPO−5を10g加えて撹拌し、更にバインダーとしてエポキシエマルジョン2.0gを加えて撹拌することにより調製した。エポキシエマルジョンは、ベース樹脂としてエポキシ等量約8000、ビスフェノールA型で分子量約50000(ジャパンエポキシレジン社製;商品名「エピコート1256」)のものを用いた。この樹脂に界面活性剤と水を加えて撹拌混合し、固形分50wt%のエポキシエマルジョンを得た。このエポキシエマルジョンは白色不透明であり、BM型粘度計のNo.1ローター、25℃、20rpmにおける粘度測定において、粘度は400mPa・sであった。水系分散液の固形成分は40wt%であった。また、バインダーを個別に120℃、30分で加熱乾燥し、DSCでガラス転移温度Tgを測定したところ、Tgは52℃であった。
吸着シート(1a)は、実施例1におけるのと同様の基材シート(12)に上記の水系分散液を塗布した後、実施例1と同様の条件で加熱乾燥を行うことにより製造した。吸着シート(1a)に付着したFAPO−5は0.5g、エポキシ樹脂は0.05gであった。そして、吸着シート(1a)の初期の水蒸気吸着量(F)を測定したところ、水蒸気吸着量(F)は0.111g/gであった。
次いで、実施例1と同様の耐久性試験を行った後、再度、吸着シート(1a)の試験後吸着量(U)を測定したところ、試験後吸着量(U)は0.101g/gであり、吸着性維持率(X)は91%と良好であった。また、耐久性試験における120℃の加熱操作では、吸着シート(1a)の表面に軟化は認められなかった。耐久性試験後の吸着シート(1a)については、接着強度試験を行い塗膜の接着強度を測定した。その結果、0.162MPaで破断した。
実施例3:
実施例1と同様の手順により、基材シート(12)に水系分散液を塗布して吸着シート(1a)を製造し、そして、耐久性試験を行うと共に、耐久性試験の前後の水蒸気吸着量(F)、(U)を測定し、吸着シートの吸着性維持率(X)を確認した。更に、接着強度試験を行い、塗膜の接着強度を測定した。
水系分散液は、水15.5gに対し、増粘剤としてカラギナン0.012gを加えて十分に撹拌した後、特開2004−136269号に記載の実施例1に従って合成して得られた平均粒径190μmのリン酸アルミ系ゼオライトであるFAPO−5を10g加えて撹拌し、更にバインダーとしてエポキシエマルジョン2.0gを加えて撹拌することにより調製した。エポキシエマルジョンは、実施例2と同じものを使用した。水系分散液の固形成分は40wt%であった。
吸着シート(1a)は、実施例1におけるのと同様の基材シート(12)に上記の水系分散液を塗布した後、実施例1と同様の条件で加熱乾燥を行うことにより製造した。吸着シート(1a)に付着したFAPO−5は0.5g、エポキシ樹脂は0.05gであった。そして、吸着シート(1a)の初期の水蒸気吸着量(F)を測定したところ、水蒸気吸着量(F)は0.100g/gであった。
次いで、実施例1と同様の耐久性試験を行った後、再度、吸着シート(1a)の試験後吸着量(U)を測定したところ、試験後吸着量(U)は0.085g/gであり、吸着性維持率(X)は85%と良好であった。また、耐久性試験における120℃の加熱操作では、吸着シート(1a)の表面に軟化は認められなかった。耐久性試験後の吸着シート(1a)については、接着強度試験を行い塗膜の接着強度を測定した。その結果、0.065MPaで破断した。
実施例4:
吸着シート(1a)を構成要素とする図3に示す構造のプレートフィン型の吸着素子(2A)を製造し、耐熱試験を行うと共に、耐熱試験の前後での水蒸気吸着量を測定することにより、吸着特性の劣化を確認した。
吸着素子(2A)の製造においては、130mm×40mm×0.1mm(厚さ)の銅板から成る基材シート(12)をフィンとして51枚準備し、これらに各々9.6φの配管挿通孔(11)を12個設けた後、これらの基材シート(12)を積層状態にして各配管挿通孔(11)に銅管を貫通させた。次いで、これらの基材シート(12)を2mmピッチで並べ、12本の銅管をそれぞれ拡管することにより各基材シート(12)を固定した。そして、各銅管の端部をU字管で順次に接続して熱媒流路(3)を構成し、素子の骨格構造基体を作製した。
続いて、実施例2と同様の方法により調製された水系分散液であって、吸着材としてFAPO−5を1kg含有する水系分散液を上記の骨格構造基体に塗布し、吸着材を付着させた。水系分散液の塗布では、骨格構造基体に水系分散液を散布することによる通液塗布を8回繰り返した。また、水系分散液の塗布においては、先に形成された吸着材層との接着性を高めるため、水系分散液を1回塗布する都度、120℃の温度で30分間加熱乾燥した後、固着した固形分と同量の水を含ませる様にした。そして、得られた吸着素子(2A)について、吸着材の付着量を確認したところ、素子全体でFAPO−5が83g付着していた。なお、上記の吸着素子(2A)においては、各吸着シート(1a)(フィン)の間の距離(2L)が2mm、吸着材層(13)の厚み(t)が0.2mmであり、2L/tの比率は10倍であった。
次に、上記の吸着素子(2A)の初期の吸着特性を確認するため、吸着素子(2A)を温度23℃、相対湿度70%RHの気流に20分間晒した後、水蒸気吸着量を測定したところ、水蒸気吸着は15.02gであった。続いて、吸着素子(2A)を120℃の温度で20分加熱し、吸着素子(2A)から水分を脱着させた。水分脱着後においては、各吸着シート(1a)(フィン)表面の軟化や吸着材の飛散は認められなかった。その後、再び、吸着素子(2A)を温度23℃、相対湿度70%RHの気流に20分間晒し、水蒸気吸着量を測定したところ、水蒸気吸着は15.02gであり、吸着材の吸着性能が劣化していないことが確認された。
実施例5:
実施例2と同様の手順により、基材シート(12)に水系分散液を塗布して吸着シート(1)を製造し、そして、耐久性試験を行うと共に、耐久性試験の前後の水蒸気吸着量F、Uを測定し、吸着シートの吸着性維持率Xを確認した。更に、接着強度試験を行い、塗膜の接着強度を測定した。
水系分散液は、水14.9gに対し、特開2004−136269号に記載の実施例1に従って合成し且つ乾式粉砕により細粒化して得られた平均粒径4μmのリン酸アルミ系ゼオライトであるFAPO−5を10g加えて撹拌した後、バインダーとして変性アクリルエマルジョン2.56gを加えて撹拌することにより調製した。変性アクリルエマルジョンの組成は、不揮発分(中央理化社製;商品名「ET−19N」)が39wt%であり、水系分散液の固形成分は40wt%であった。また、バインダーを個別に120℃30分で加熱乾燥し、DSCでガラス転移温度Tgを測定したところ、Tgは29℃であった。
吸着シート(1)は、実施例1におけるのと同様に基材シート(12)に上記の水系分散液を塗布した後、実施例1と同様の条件で加熱乾燥を行うことにより製造した。吸着シート(1)に付着したFAPO−5は0.5g、バインダー樹脂は0.05gであった。そして、吸着シート(1)の初期の水蒸気吸着量(F)を測定したところ、水蒸気吸着量(F)は0.087g/gであった。
次いで、実施例1と同様の耐久性試験を行った後、再度、吸着シートの試験後吸着量(U)を測定したところ、試験後吸着量(U)は0.068g/gであり、吸着性維持率(X)は78%であった。更に、耐久性試験後の吸着シート(1)については、接着強度試験を行い塗膜の接着強度を測定した。その結果、0.180MPaで破断した。
実施例6:
実施例2と同様の手順により、基材シート(12)に水系分散液を塗布して吸着シート(1)を製造し、そして、耐久性試験を行うと共に、耐久性試験の前後の水蒸気吸着量F、Uを測定し、吸着シートの吸着性維持率Xを確認した。更に、接着強度試験を行い、塗膜の接着強度を測定した。
水系分散液は、水15.7gに対し、平均粒径4μmのリン酸アルミ系ゼオライトであるFAPO−5を10g加えて撹拌した後、バインダーとして変性エチレン酢酸ビニル樹脂エマルジョン1.82gを加えて撹拌することにより調製した。変性エチレン酢酸ビニル樹脂エマルジョンの組成は、不揮発分(パワーエース社製;商品名「速乾アクリア」)が55wt%であり、水系分散液の固形成分は40wt%であった。また、バインダーを個別に120℃30分で加熱乾燥し、DSCでガラス転移温度Tgを測定したところ、Tgは6℃であった。
吸着シート(1)は、実施例1におけるのと同様に基材シート(12)に上記の水系分散液を塗布した後、実施例1と同様の条件で加熱乾燥を行うことにより製造した。吸着シート(1)に付着したFAPO−5は0.5g、バインダー樹脂は0.05gであった。そして、吸着シートの初期の水蒸気吸着量Fを測定したところ、水蒸気吸着量(F)は0.106g/gであった。
次いで、実施例1と同様の耐久性試験を行った後、再度、吸着シート(1)の試験後吸着量(U)を測定したところ、試験後吸着量(U)は0.099g/gであり、吸着性維持率(X)は93%であった。また、耐久性試験後の吸着シート(1)については、接着強度試験を行い塗膜の接着強度を測定した。その結果、0.182MPaで破断した。
実施例7:
実施例2と同様の手順により、基材シート(12)に水系分散液を塗布して吸着シートを製造し、そして、耐久性試験を行うと共に、耐久性試験の前後の水蒸気吸着量(F)、(U)を測定し、吸着シートの吸着性維持率(X)を確認した。更に、接着強度試験を行い、塗膜の接着強度を測定した。
水系分散液は、水14.9gに対し、平均粒径4μmのリン酸アルミ系ゼオライトであるFAPO−5を10g加えて撹拌した後、バインダーとしてアクリル・スチレン共重合エマルジョン2.56gを加えて撹拌することにより調製した。アクリル・スチレン共重合エマルジョンの組成は、不揮発分(中央理化社製;商品名「FK−480N」)が39wt%であり、水系分散液の固形成分は40wt%であった。また、バインダーを個別に120℃30分で加熱乾燥し、DSCでガラス転移温度Tgを測定したところ、Tgは8℃であった。
吸着シートは、実施例1におけるのと同様に基材シート(12)に上記の水系分散液を塗布した後、実施例1と同様の条件で加熱乾燥を行うことにより製造した。吸着シートに付着したFAPO−5は0.5g、バインダー樹脂は0.05gであった。そして、吸着シートの初期の水蒸気吸着量(F)を測定したところ、水蒸気吸着量(F)は0.087g/gであった。
次いで、実施例1と同様の耐久性試験を行った後、再度、吸着シートの試験後吸着量(U)を測定したところ、試験後吸着量(U)は0.068g/gであり、吸着性維持率(X)は78%であった。また、耐久性試験後の吸着シートの表面に多数のひび割れが認められた。耐久性試験後の吸着シートについては、接着強度試験を行い塗膜の接着強度を測定した。その結果、0.044MPaで破断した。
実施例8:
実施例1と同様の手順により、基材シート(12)に水系分散液を塗布して吸着シート(1a)を製造し、そして、耐久性試験を行うと共に、耐久性試験の前後の水蒸気吸着量(F)、(U)を測定し、吸着シート(1a)の吸着性維持率(X)を確認した。更に、接着強度試験を行い、塗膜の接着強度を測定した。
水系分散液は、水15.5gに、平均粒径4μmのリン酸アルミ系ゼオライトであるFAPO−5を10g加えて撹拌し、更にバインダーとして実施例2で用いたものと同様のエポキシエマルジョン1.6g、及びウレタン変性エチレン・酢酸ビニルエマルジョン0.3gを加えて撹拌することにより調製した。ウレタン変性エチレン・酢酸ビニルエマルジョンは、不揮発分(中央理化社製;商品名「BA−53」)が57wt%であり、乾燥状態のバインダー重量比率は、80:20であった。水系分散液の固形成分は40wt%であった。また、バインダー「BA−53」を個別に120℃30分で加熱乾燥し、DSCでガラス転移温度Tgを測定したところ、Tgは−3℃であった。両バインダーのガラス転移温度Tgから加重平均によるTgは41℃となった。
吸着シート(1a)は、実施例1におけるのと同様の基材シート(12)に上記の水系分散液を塗布した後、実施例1と同様の条件で加熱乾燥を行うことにより製造した。吸着シート(1a)に付着したFAPO−5は0.5g、バインダー樹脂は0.05gであった。そして、吸着シート(1a)の初期の水蒸気吸着量(F)を測定したところ、水蒸気吸着量(F)は0.107g/gであった。
次いで、実施例1と同様の耐久性試験を行った後、再度、吸着シート(1a)の試験後吸着量(U)を測定したところ、試験後吸着量(U)は0.098g/gであり、吸着性維持率(X)は92%と良好であった。また、耐久性試験における120℃の加熱操作では、吸着シート(1a)の表面に軟化は認められなかった。耐久性試験後の吸着シート(1a)については、接着強度試験を行い、塗膜の接着強度を測定した。その結果、0.171MPaで破断した。
実施例9:
基材シートが繊維質シートである第1の要旨に係る吸着シート(1c)を多数備えて成り且つこれらの吸着シート(1c)により円柱状ハニカム構造体に構成された図15に示す吸着素子(2F)を製造し、耐熱試験を行うと共に、耐熱試験の前後での水蒸気吸着量を測定することにより、吸着特性の劣化を確認した。
吸着素子(2F)は次のように製造した。平板状と波板状のシリカアルミナ繊維製ペーパーを交互に積層しながら捲回し、幅3mm、高さ1.6mmの略三角形のセル(50)を有するハニカム構造体を得た。これを裁断し、直径200mm、厚さ18mmの円柱状ハニカムを得た。続いて、実施例8と同様の方法により調製された水系分散液であって、吸着材としてFAPO−5を1kg含有する水系分散液に対し、上記の円柱状ハニカム構造体を浸漬した後に、液切りを行い、120℃で30分の加熱乾燥を行い、FAPO−5が担持された円柱状ハニカム吸着素子(2F)を得た。この円柱状ハニカム吸着素子(2F)は、島津製作所の蛍光X線分析装置EDX−700を使用したP元素含有量の測定により、FAPO−5の担持量が161g/Lであることが確認された。
次に、上記の円柱状ハニカム吸着素子(2F)の初期の吸着特性を確認するため、吸着素子(2F)に温度23℃、相対湿度70%RHの空気を3m/sで10分間流通させた後、水蒸気吸着量を測定したところ、水蒸気吸着量は30.6gであった。続いて、吸着素子(2F)を120℃の温度で20分加熱し、吸着素子(2F)から水分を脱着させた。水分脱着後においては、各吸着シート(1c)表面の軟化や吸着材の飛散はほとんど認められなかった。その後、再び、吸着素子(2F)を温度23℃、相対湿度70%RHの気流に20分間晒し、水蒸気吸着量を測定したところ、水蒸気吸着は30.6gであり、吸着材の吸着性能が劣化していないことが確認された。
比較例1:
実施例2と同様の手順により、基材シート(12)に分散液を塗布して吸着シートを製造し、そして、耐久性試験を行うと共に、耐久性試験の前後の水蒸気吸着量(F)、(U)を測定し、吸着シートの吸着性維持率(X)を確認した。更に、接着強度試験を行い、塗膜の接着強度を測定した。
水系分散液は、バインダーとして酢酸ビニル樹脂エマルジョンを加えて撹拌することにより調製した。酢酸ビニル樹脂エマルジョンの組成は、不揮発分(コニシ社製;商品名「ボンド木工用」)が41wt%であり、水系分散液の固形成分は40wt%であった。また、バインダーを個別に120℃30分で加熱乾燥し、DSCでガラス転移温度Tgを測定したところ、Tgは31℃であった。吸着シートの初期の水蒸気吸着量(F)を測定したところ、水蒸気吸着量(F)は0.093g/gであった。
次いで、比較例1と同様の耐久性試験を行った後、再度、吸着シートの試験後吸着量(U)を測定したところ、試験後吸着量(U)は0.080g/gであり、吸着性維持率(X)は86%であった。耐久性試験において15回目には剥離が始まった。また、耐久性試験後の吸着シートは、表面から約8割が面状に剥離し、粘着テープを1cm2で貼付けることが不可能であり、接着強度試験が出来なかった。このバインダーを用いた水系分散液は、吸着シートの製造に適していないことが確認された。
比較例2:
比較例1と同様の手順により、基材シート(12)に分散液を塗布して吸着シートを製造し、そして、耐久性試験を行うと共に、耐久性試験の前後の水蒸気吸着量(F)、(U)を測定し、吸着シートの吸着性維持率(X)を確認した。更に、接着強度試験を行い塗膜の接着強度を測定した。
分散液は、アセトン12.7gに対し、平均粒径4μmのリン酸アルミ系ゼオライトであるFAPO−5を10g加えて撹拌し、更にバインダーとして溶剤形接着剤(コクヨ社製;商品名「多用途接着剤」品番タ−650)4.76gを加えて撹拌することにより調製した。溶剤形接着剤は、不揮発分としてウレタン樹脂が21wt%含まれ、有機溶剤としてアセトンと酢酸ブチルが含まれている。アセトンを含む分散液中の固形成分は40wt%とした。バインダーを個別に120℃30分で加熱乾燥し、DSCでガラス転移温度Tgを測定がしたが、明確な転移温度は測定できなかった。
更に、耐久性試験においては、20回目で表面にヒビが入り、31回目には剥離が始まった。耐久性試験後の吸着シートは、表面の凸凹が激しく且つ剥離が多かった。そのため、耐久性試験を行うことが出来なかった。このバインダーを用いた有機溶媒系分散液は、吸着シートの製造に適していないことが確認された。また、耐久性試験後の接着強度試験についても、同様に行うことが出来なかった。