JP5333202B2 - 熱電変換素子及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、2電極間の温度差を起電力に変換する性能等を有する熱電変換素子及びその製造方法に関するものである。
熱電変換素子は、ゼーベック効果による発電機能と、その逆のペルチェ効果による熱電冷却機能とを有している。発電機能は、熱電変換素子の両端に温度差を生じさせることで得られ、冷却機能は、熱電変換素子に通電することで得られる。熱電変換素子の構造としては、例えば2枚の電極プレート間に複数の熱電変換材料(P型、N型)が交互に直列接続されたものが挙げられる。
このような熱電変換素子において、素子としての性能は、熱電変換の性能指数Zとして求めることができる。熱電変換の性能指数Zは、Z=S2σ/κで表わされる。Sは熱電変換材料のゼーベック係数、σは熱電変換材料の電気伝導率、κは熱電変換材料の熱伝導率である。つまり熱伝導率κの値が小さくなると、それに反比例して熱電変換の性能指数Zも大きくなる。
一方、熱電変換材料(母材)の中に、ナノサイズの絶縁体粒子(以下、ゲスト粒子と呼ぶ)を分散させ、ゲスト粒子間距離Lが母材のフォノンの平均自由行程よりも小さなスケールの構造を持つ複合材料(図1参照)にすることで、フォノンを散乱することができ、母材の熱伝導率κを小さくすることができることが分かっている。これにより、熱電変換の性能指数Zを高めることができる。
また、従来より、熱電変換素子の作製方法としては、i)母材を溶融させる方法、ii)母材を溶融させないで、混合によりゲスト粒子を均一に分散させる方法、の2つが知られている。
前記i)母材を溶融させる方法の例としては、例えば、ゲスト粒子にAl23のナノサイズ粒子(粒径:〜数十nm)を使用し、母材粒子としてBiの粒子(粒径:〜数十μm)を使用し、このAl23粒子とBi粒子との混合物を、不活性ガス雰囲気中において1000℃で加熱し、Biを溶融させる方法が挙げられる。
また、前記ii)母材を溶融させないで混合によりゲスト粒子を均一分散させる方法の例としては、例えば、ゲスト粒子にAl23のナノサイズ粒子(粒径:〜数十nm)を使用し、母材粒子としてBiの粒子(粒径:〜数十μm)を使用し、このAl23粒子とBi粒子との混合物を、不活性ガス雰囲気中において100時間グラインドした後、ペレット状に押し固め、250℃で焼結させるという方法が挙げられる。
更に、下記特許文献1では、別の半導体材料で形成されたシェルによって取り囲まれたある半導体材料で形成されたコア部分を有するナノサイズ粒子を複数個含むナノ複合材料の作製方法が開示されている。
特表2008−523579号公報
しかしながら、上述したような従来の製造方法では、実際には、熱電変換素子を構成する好適な複合材料、即ち母材中にゲスト粒子が均一に分散する複合材料を得ることは困難であった。
例えば、前記i)の製造方法では、ゲスト粒子(Al23)と母材のBiとの比重の差が大きく(Biの比重=9.8、Al23の比重=3.6)、実際には、ゲスト粒子がBi中に均一に分散しないという問題があった。
また、前記ii)の製造方法では、熱電変換材料である母材(例えばBi)は、延性が大きく、母材の微粒子化が困難であり、それを焼結させた材料はナノレベルまで構造が小さくならなかった。そのため、母材粒子の一つ一つの表面積が大きくなってしまい、酸化しやすくなる為、取り扱いが難しくなるという問題があった。
更に、前記特許文献1の製造方法では、電気伝導をコアシェル構造のナノサイズ粒子自体が担うため、ナノサイズ粒子の再外殻に電気伝導性があり、あるナノサイズ粒子の表面から隣接するナノサイズ粒子の表面までの間の距離がゼロになっている。つまり、ナノサイズ粒子の間隙において電気伝導を持たせるためには、粒子間隔を確保する必要があるが、前記特許文献1の技術では、それに対応できないという問題があった。
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、母材中にゲスト粒子が均一に分散した優れた性能を有する熱電変換素子及びその製造方法を提供することである。
優れた熱電変換性能を有する熱電変換素子を得るには、ゲスト粒子間距離Lがフォノンの平均自由行程より小さく、Lが素子全体で一定な値を持つナノ複合材料(即ちゲスト粒子が均一に分散しているナノ複合材料)、という条件を満たす必要がある(図1参照)。
しかしながら、以上述べてきたように、前記i)母材を溶融させる方法では、母材と同じ比重を持つゲスト粒子の材料が無い場合が多く、その時比重の相違のために均一分散しないという問題がある。また、前記ii)母材を溶融させないで混合によりゲスト粒子を均一分散させる方法では、母材の微粒子化が困難であり、それを焼結させた材料は ナノレベルまで構造が小さくならない、といった問題がある。
この中で、前記ii)の「熱電変換材料である母材(例えばBi)は延性がありナノサイズまで微粒子化することが困難である」という問題点は、材料元素のもつ本質的な課題であり、解決するのは困難である。また、「微粒子化した時点で酸化しやすくなる」という問題点を解決しようとすると、全製造プロセスを不活性ガス中で実施しなければならなくなり、このことは工業的な観点から見ても大きな問題である。
そこで、本発明者等は、前記i)の「母材とゲスト粒子との比重が異なる」という課題に注目し、本発明を完成した。以下、各請求項毎に説明する。
(1)請求項1の発明は、熱電変換材料からなる母材中に、前記母材とは異なる材料からなる複数のゲスト粒子が分散している熱電変換素子であって、前記各ゲスト粒子は、その比重が母材の比重と等しくなるように2種類以上の物質から構成されていることを特徴とする。
本発明では、ゲスト粒子の比重と母材との比重が同じであるので、母材中にゲスト粒子が均一に分散している。そのため熱電変換素子の性能を高めることができる。
具体的には、母材(例えばBi)より比重の小さい物質(例えばAl23)と母材(例えばBi)より比重の大きい物質(例えばW)を組み合わせて母材と同じ比重のゲスト粒子を人工的に作り、そのゲスト粒子を分散させることで、ゲスト粒子の均一分散を実現することができる。
なお、本発明では、母材の比重(d母材)とゲスト粒子の比重(dゲスト粒子)との比重比(dゲスト粒子/d母材)が、0.9<dゲスト粒子/d母材<1.1の範囲内にある等しさであれば、均一分散が実現すると考えられる。従って、「ゲスト粒子の比重と母材の比重とが等しい」とは、この範囲のものを示している。
(2)請求項2の発明では、前記母材中に分散しているゲスト粒子が、中心部とその表面を覆う外周層とを備えたコアシェル構造を有するとともに、前記外周層が前記中心部とは異なる1種類の物質からなることを特徴とする。
本発明は、ゲスト粒子の構成を例示したものである。
本発明では、ゲスト粒子の構成として、中心部と外周層との(構成物質が異なる)コアシェル構造を採用できる。
なお、ここで外周層としては、例えば、球状のWの表面にAl23粒子を隙間無く付着させるように、微粒子が連続的につながることによって「層」と同等の役割を果たしている場合も「層」として扱うこととする。
(3)請求項3の発明では、前記母材中に分散しているゲスト粒子が、中心部とその表面を覆う外周層とを備えたコアシェル構造を有するとともに、前記外周層は、最外表面層と該最外表面層より内側で該最外表面層とは異なる物質からなる内部表面層とを備えたことを特徴とする。
本発明は、ゲスト粒子の構成を例示したものである。
本発明では、外周層が最外表面層と内部表面層とを備えているので、例えば、(周囲の他の)ゲスト粒子と母材との双方と親和性の良い物質をゲスト粒子の最外殻(最外表面層)に適用することにより、母材と(他の)ゲスト粒子との親和性を良くし、それによって、ゲスト粒子の分散性を高めることができる。
(4)請求項4の発明では、前記母材中に分散しているゲスト粒子が、ベースとなる物質中に、該ベースとなる物質とは異なる1種類以上の内包物質を分散した構造であることを特徴とする。
本発明は、ゲスト粒子の構成を例示したものである。
本発明の構造のゲスト粒子を採用することにより、前記コアシェル構造のゲスト粒子を採用する場合に比べて、製造方法を簡易化することができる。
(5)請求項5の発明では、前記母材中に分散しているゲスト粒子の少なくとも最表面部位の材料が絶縁体であることを特徴とする。
ここで、ゲスト粒子の少なくとも最表面を絶縁体としたのは、ゲスト粒子を構成する物質が母材のキャリア濃度等に影響を与えないためである。
また、ゲスト粒子の最外層物質の電気的抵抗率ρ最外と、母材の電気抵抗率ρ母材との比(ρ最外/ρ母材)が1000(一般的な金属と半導体の電気抵抗比)以上であれば、ゲスト粒子の混入により熱電変換材料である母材の電子状態に影響を与える可能性は低いため、上記の電気抵抗比を満たす絶縁体材料で最外殻が被覆されたゲスト粒子であることが望ましい。
その具体的な構成例として、例えばBiとAl23の組み合わせが考えられる。Biは従来より室温付近で良い熱電性能を示す物質として知られている物質であり、Al23は工業的に良く使われる代表的な絶縁体物質である。
(6)請求項6の発明では、前記母材は、Bi単体又はBi化合物であることを特徴とする。
本発明は、母材の種類を例示したものである。
(7)請求項7の発明では、前記Bi化合物は、Te、Se、Sb、Pb、Sn、Geの中の一つ以上の元素とBiとの化合物であることを特徴とする。
なお、この化合物としては、例えばBi−Te系化合物、Bi−Sb系化合物などが挙げられる。
(8)請求項8の発明は、熱電変換材料からなる母材中に、前記母材とは異なる材料からなる複数のゲスト粒子を分散させて熱電変換素子を製造する熱電変換素子の製造方法であって、前記各ゲスト粒子の比重が母材の比重と等しくなるように、2種類以上の重さが異なる物質を用いてゲスト粒子を製造し、該ゲスト粒子を前記母材中に混合して分散させることを特徴とする。
本発明では、各ゲスト粒子の比重が母材の比重と等しくなるように、2種類以上の重さが異なる物質を用いてゲスト粒子を製造し、このゲスト粒子を母材中に混合して分散させる。つまり、等しい比重の物質同士を混合して分散させるので、ゲスト粒子を母材中に均一に分散させることができる。
(9)請求項9の発明では、前記ゲスト粒子として、中心部とその表面を覆う外周層とを備えたコアシェル構造を有するとともに、前記外周層が前記中心部とは異なる1種類の物質からなるゲスト粒子を用いることを特徴とする。
本発明は、母材に分散させるゲスト粒子の構成を例示したものである。
(10)請求項10の発明では、前記ゲスト粒子として、中心部とその表面を覆う外周層とを備えたコアシェル構造を有するとともに、前記外周層は最外表面層と該最外表面層より内側で該最外表面層とは異なる物質からなる内部表面層とを備えたゲスト粒子を用いることを特徴とする。
本発明は、母材に分散させるゲスト粒子の構成を例示したものである。
(11)請求項11の発明では、前記ゲスト粒子として、ベースとなる物質中に、該ベースとなる物質とは異なる1種類以上の内包物質を分散した構造のゲスト粒子を用いることを特徴とする。
本発明は、母材に分散させるゲスト粒子の構成を例示したものである。
熱電変換素子の構成を示す説明図である。 第1の実施形態に係わる、ナノ複合熱電変換材料の構造概念図である。 第1の実施形態に係わる、ゲスト粒子の構造概念図である。 第2の実施形態に係わる、ナノ複合熱電変換材料の構造概念図である。 第2の実施形態に係わる、ゲスト粒子の構造概念図である。 第3の実施形態に係わる、ナノ複合熱電変換材料の構造概念図である。
次に、本発明の熱電変換素子及び熱電変換素子の製造方法の実施形態について、いくつかの具体的な例を挙げて説明する。
[第1実施形態]
a)まず、本実施形態の熱電変換素子の構成について説明する。
図1に示す様に、本実施形態の熱電変換素子1は、熱電変換材料(母材)3の中に、ナノサイズ(例えば粒径10〜100nm)の絶縁体粒子(ゲスト粒子)5が均一に分散し、ゲスト粒子間距離Lが母材3のフォノンの平均自由行程よりも小さなスケールの構造を持つ複合材料(ナノ複合熱電変換材料)である。
特に本実施形態では、図2に示す様に、熱電変換材料(母材)3であるBi中に、SiO2とWからなるゲスト粒子5が均一に分散されている。
このゲスト粒子5は、その比重が母材の比重(Biの比重=9.8)と等しくなるように、比重の異なるSiO2(比重=2.2)とW(比重=19.24)との2種類の物質の量が調製されている。
詳しくは、ゲスト粒子5は、Wからなる中心部(核)7とその表面全体を覆う絶縁性を有するSiO2からなる外周層9とを備えたコアシェル構造を有しており、この異なる比重の物質からなるコアシェル構造によって、即ちコアシェル構造を構成する中心部7と外周層9との重量比によって、母材3の比重と同一の比重となるように設定されている。
つまり、本実施形態では、母材3とゲスト粒子5との比重が同じであるので、母材3中にゲスト粒子5が均一に分散している。これによって、フォノンを散乱することができ、母材3の熱伝導率κを小さくすることができるので、熱電変換の性能指数Zを高めることができる。
また、ゲスト粒子5の外周層9の電気抵抗率ρ最外(絶縁性)は、母材の電気抵抗率の1000倍以上である。
b)次に、本実施形態の熱電変換素子1の製造方法について説明する。
(1)まず、ゲスト粒子3の核となるWナノ粒子(中心部7となる粒子)を作製する。
具体的には、40.0mLのn−ヘプタン(99%Acros Organics)と0.849mLの脱イオン水との混合物に、6.0mLのBrij−30界面活性剤を添加し、次いで15分間超音波で混合して、逆マイクロエマルションを調製する。
次に、100mgのWイソプロポキシド(Chemat Techology,Inc.)のアリコートを25mLのn−ヘプタンに分散し、上で調製した逆マイクロエマルションに滴下する。
次に、前記滴下によって生成した反応混合物を、室温で4時間攪拌する。
次に、アセトンを添加して、反応混合物を一晩沈殿させる。
次に、沈殿物を遠心分離で回収し、アセトンとエタノールで繰り返し洗浄し、さらに脱イオン水に分散してから、液体N2を用いて凍結乾燥する。
次に、この粉末の一部をH2下で加熱する。この時、例えば600〜700℃で加熱すると、Wナノ粒子の粒径は5nm〜10nm程度の大きさになる。
(2)次に、前記(1)の工程で得られたWナノ粒子に、SiO2膜のコーティングを施し、所望のゲスト粒子5を得る。
具体的には、約10nm程度の粒子径を有するナノシリカを、前記(1)の工程で得られたWナノ粒子と混合する。
つまり、円筒形プラスチック容器に、Wナノ粒子及びナノシリカ粒子と共に、アルミナの10mmφ程度のボールを入れ、攪拌する。これにより、Wナノ粒子の表面にナノシリカの微粒子が均一に分散付着する。
次に、ナノシリカを付着させたWナノ粒子を石英製ボートに収容し、電気炉の100mmφの石英管チューブ中央にセットする。石英管チューブには、予め窒素ガスを流しておく。その後、電気炉の温度を上げる。焼結温度を800℃ とし、約60分放置する。この間、窒素ガスは流しつづける。
焼結アニール後、電気炉を切り、放置して室温まで降温するのを待つ。この間、窒素ガスは流しつづける。
これにより、前記図3に示す様に、Wナノ粒子の外周全体が(絶縁性を有する)SiO2にてコーティングされたゲスト粒子5、即ち中心部7の外周表面の全体が外周層9にて覆われたゲスト粒子5が得られる。
なお、図3の様に、ゲスト粒子5の半径をR、Wナノ粒子の半径をrとすると、ゲスト粒子5の比重とBiの比重が等しくなればよいので、下記式から外周層9の厚みを設定することができる。
ゲスト粒子=(wW+wSiO2)/(4πR3/3)
=(4πdW3/3+4πdSiO2(R−r)3/3)/(4πR3/3)
=dBi
ここで、dゲスト粒子、dW、dSiO2、dBiは、それぞれ、ゲスト粒子、W、SiO2、ビスマスの比重であり、wW、wSiO2は、それぞれ、W、SiO2の質量を示す。
従って、dBi=9.80dSiO2=2.2dW=19.24なので、r=0.76Rであればよいことになる。つまり、Wナノ粒子の半径の1/3程度の膜厚をもって、SiO2膜でコーティングできれば、得られたゲスト粒子3の比重はビスマスの比重とほぼ等しくなる。
(3)次に、ゲスト粒子5を母材であるビスマスの中に分散させる。
具体的には、ビスマス粒子に対しゲスト粒子5が体積分率で0.3vol%程度になるように秤量し、高周波加熱炉で溶融させ1時間加熱することで均一に分散させる。
これによって、前記図2に示した構造を有する熱電変換素子1が得られる。
c)この様に、本実施形態の熱電変換素子1は、熱電変換材料からなる母材3中に、この母材3とは異なる材料からなる絶縁性を有する複数のゲスト粒子5が均一に分散しているものであり、各ゲスト粒子5は、その比重が母材3の比重と等しくなるように2種類以上の物質から構成されるとともに、Wからなる中心部7とその表面を覆うSiO2からなる外周層9とを備えたコアシェル構造を有している。
つまり、本実施形態では、母材3とゲスト粒子5との比重が同じであるので、熱電変換素子1を製造する際に、母材3中にゲスト粒子5を容易に均一に分散させることができる。よって、従来技術の問題点を解決して、優れた性能を有する熱電変換素子1を容易に実現することができる。
なお、本実施形態の熱電変換材料の製造方法では、母材としてBiを用いたが、代わりに、Te、Se、Sb、Pb、Sn、Geの中の一つ以上の元素とBiとの化合物を母材として用いても良い。また、ゲスト粒子に関しても、Biより比重の大きい物質として、Wの代わりにTaやMoなど用いてもよく、Biより比重の小さい物質として、SiO2の代わりにAl23、TiO2、Bi23などを用いても良い。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明するが、第2実施形態は、第1の実施形態によるものと共通するところが多いので、以下、共通部分についての詳しい説明は省略し、異なる部分を重点的に説明する。
a)まず、本実施形態の熱電変換素子について説明する。
第1実施形態の熱電変換素子は、2種類の物質だけでゲスト粒子が構成されるものであるが、図4に示す様に、本実施形態の熱電変換素子11は、3種類の物質でゲスト粒子13が構成されるものである。
詳しくは、Biからなる母材15中に均一に分散しているゲスト粒子13は、Wからなる中心部17とその表面を覆う外周層19とを備えたコアシェル構造を有するとともに、外周層19は、CuOからなる最外表面層21とその最外表面層21より内側のSnからなる内部表面層23とから構成されている。
これは、前記第1実施形態のように2種類の物質だけでゲスト粒子を構成すると、隣接する物質同士の親和性(濡れ性)が悪い場合には、ゲスト粒子の分散性が悪くなってしまうためである。
つまり、本実施形態では、(隣接する他の)ゲスト粒子13と母材15との双方と親和性の良い物質を、ゲスト粒子13の最外殻(最外表面層21)に適用することにより、母材15と(他の)ゲスト粒子13との親和性を良くし、それによって分散性を高めるものである。
b)次に、本実施形態の熱電変換素子11の製造方法について説明する。
本実施形態の熱電変換素子11の製造方法は、基本的に前記第1実施形態とほぼ同様である。
(1)まず、ゲスト粒子の核となるWナノ粒子を作製する。
具体的には、40.0mLのn−ヘプタン(99%Acros Organics)と0.849mLの脱イオン水との混合物に、6.0mLのBrij−30界面活性剤を添加し、次いで15分間超音波で混合して、逆マイクロエマルションを調製する。
次に、100mgのWイソプロポキシド(Chemat Techology,Inc.)のアリコートを25mLのn−ヘプタンに分散し、上述の様にして調製した逆マイクロエマルションに滴下する。
次に、前記滴下によって生成した反応混合物を、室温で4時間攪拌する。
次に、アセトンを添加して、反応混合物を一晩沈殿させる。
次に、沈殿物を遠心分離で回収し、アセトンとエタノールで繰り返し洗浄し、さらに脱イオン水に分散してから、液体N2を用いて凍結乾燥する。
次に、この粉末の一部をH2下で加熱する。この時、例えば600〜700℃で加熱すると、Wナノ粒子の粒径は5nm〜10nm程度の大きさになる。
(2)次に、前記(1)の工程で得られたWナノ粒子に、Sn膜のコーティングを施し、更に、CuO膜を最外殻にコーティングすることで、所望のゲスト粒子13を得る。
具体的には、約10nm程度の粒子径を有するナノSn粒子を、前記(1)の工程で得られたWナノ粒子と混合する。
つまり、円筒形プラスチック容器に、Wナノ粒子及びナノSn粒子と共に、アルミナの10mmφ程度のボールを入れ、攪拌する。これにより、Wナノ粒子の表面にナノSn粒子の微粒子が均一に分散付着する。
次に、ナノSn粒子を付着させたWナノ粒子を石英製ボートに収容し、電気炉の100mmφの石英管チューブ中央にセットする。石英管チューブには予め窒素ガスを流しておく。その後、電気炉の温度を上げる。焼結温度を800℃とし、約60分放置する。この間、窒素ガスは流しつづける。
焼結アニール後、電気炉を切り、放置して室温まで降温するのを待つ。この間、窒素ガスは流しつづける。
更に、得られたナノ複合粒子に対して、ナノCuO粒子との攪拌を、上記と同様の手順で行い、CuO膜を最外殻にコーティングする。
なお、図5に示す様に、ゲスト粒子13の半径をR、Wナノ粒子の半径をr1、外周層19の内部表面層23の外周面までの半径をr2すると、ゲスト粒子13の比重とBiの比重が等しくなればよいので、前記第1実施形態で示した式を利用して、外周層9の最外表面層21や内部表面層23の厚みを設定することができる。
具体的には、各比重は、dBi=9.80、dCuO=6.45、dSn=7.30、dW=19.24であることから、11.94r1 3+0.85r2 3=4.1875×10-16となるようにコーティングすれば、母材15とゲスト粒子13との比重が等しくなる。
c)本実施形態においても前記第1実施形態と同様な効果を奏するとともに、本実施形態では、特に外周層14がCuOからなる最外表面層21とSnからなる内部表面層23とから構成されているので、他のゲスト粒子13や母材15との親和性が高く、よって、一層ゲスト粒子13の分散性が向上するという利点がある。
なお、本実施形態では、母材としてBiを用いたが、第1の実施形態と同様に、Biの代わりに、Te、Se、Sb、Pb、Sn、Geの中の一つ以上の元素とBiとの化合物を母材として用いても良い。また、ゲスト粒子に関しても、Biより比重の大きい物質として、Wの代わりにTaやMoを用いてもよく、Biより比重の小さい物質として、Snの代わりに、Al、Zn、Cuなどを用いてもよく、CuOの代わりに、ZnOやFe23を用いてもよい。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明するが、第3実施形態は、第1、2実施形態によるものと共通するところが多いので、以下、共通部分についての詳しい説明は省略し、異なる部分を重点的に説明する。
a)まず、本実施形態の熱電変換素子について説明する。
第1、2実施形態の熱電変換素子は、ゲスト粒子が2種類以上の物質から構成される同心球状の多殻構造を持つものであるが、図6に示す様に、本実施形態の熱電変換素子31は、ゲスト粒子33が2種類以上の物質から構成され、その内の一種類以上の物質が内包物質として他の物質の中で複数個分散した構造を持つものである。
詳しくは、本実施形態では、Biからなる母材35中に均一に分散しているゲスト粒子33は、ベース37となるBi23中に、内包物質(W)からなるWナノ粒子39が複数含まれたものである。
b)次に、本実施形態の熱電変換素子31の製造方法について簡単に説明する。
本実施形態の製造方法では、50nmのBi23粒子(ベース)37と、前記第1実施形態と同様の製法で作製したWナノ粒子39とを混合し、ボールミリングによりBi23粒子39中にWナノ粒子39を埋め込む。
これによって、母材35であるBiと同じ比重のゲスト粒子を作ることができるため、前記第1、2実施形態で使用する様な湿式製法の設備が無いときに利用できる。
c)本実施形態においても、前記第1実施形態と同様な効果を奏するとともに、その製造方法を簡易化できるという利点がある。
なお、本実施形態では、母材としてBiを用いたが、第1、2実施形態と同様に、Biの代わりに、Te、Se、Sb、Pb、Sn、Geの中の一つ以上の元素とBiとの化合物を母材として用いても良い。また、ゲスト粒子に関しても、Biより比重の大きい物質として、Wの代わりにTaやMoを用いてもよく、Biより比重の小さい物質として、Bi23の代わりに、Al23、TiO2、SiO2を用いても良い。
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の具体的な一実施形態に限定されず、この他にも種々の形態で実施することができる。
1、11、31…熱電変換素子
3、15、35…母材
5、13、33…ゲスト粒子
7、17…中心部
9、19…外周層
21…最外表面層
23…内部表面層
37…ベース(Bi23粒子)
39…Wナノ粒子

Claims (11)

  1. 熱電変換材料からなる母材中に、前記母材とは異なる材料からなる複数のゲスト粒子が分散している熱電変換素子であって、
    前記各ゲスト粒子は、その比重が母材の比重と等しくなるように2種類以上の物質から構成されていることを特徴とする熱電変換素子。
  2. 前記母材中に分散しているゲスト粒子が、中心部とその表面を覆う外周層とを備えたコアシェル構造を有するとともに、前記外周層が前記中心部とは異なる1種類の物質からなることを特徴とする請求項1に記載の熱電変換素子。
  3. 前記母材中に分散しているゲスト粒子が、中心部とその表面を覆う外周層とを備えたコアシェル構造を有するとともに、前記外周層は、最外表面層と該最外表面層より内側で該最外表面層とは異なる物質からなる内部表面層とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の熱電変換素子。
  4. 前記母材中に分散しているゲスト粒子が、ベースとなる物質中に、該ベースとなる物質とは異なる1種類以上の内包物質を分散した構造であることを特徴とする請求項1に記載の熱電変換素子。
  5. 前記母材中に分散しているゲスト粒子の少なくとも最表面部位の材料が絶縁体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱電変換素子。
  6. 前記母材は、Bi単体又はBi化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱電変換素子。
  7. 前記Bi化合物は、Te、Se、Sb、Pb、Sn、Geの中の一つ以上の元素とBiとの化合物であることを特徴とする請求項6に記載の熱電変換素子。
  8. 熱電変換材料からなる母材中に、前記母材とは異なる材料からなる複数のゲスト粒子を分散させて熱電変換素子を製造する熱電変換素子の製造方法であって、
    前記各ゲスト粒子の比重が母材の比重と等しくなるように、2種類以上の重さが異なる物質を用いてゲスト粒子を製造し、該ゲスト粒子を前記母材中に混合して分散させることを特徴とする熱電変換素子の製造方法。
  9. 前記ゲスト粒子として、中心部とその表面を覆う外周層とを備えたコアシェル構造を有するとともに、前記外周層が前記中心部とは異なる1種類の物質からなるゲスト粒子を用いることを特徴とする請求項8に記載の熱電変換素子の製造方法。
  10. 前記ゲスト粒子として、中心部とその表面を覆う外周層とを備えたコアシェル構造を有するとともに、前記外周層は最外表面層と該最外表面層より内側で該最外表面層とは異なる物質からなる内部表面層とを備えたゲスト粒子を用いることを特徴とする請求項8に記載の熱電変換素子の製造方法。
  11. 前記ゲスト粒子として、ベースとなる物質中に、該ベースとなる物質とは異なる1種類以上の内包物質を分散した構造のゲスト粒子を用いることを特徴とする請求項8に記載の熱電変換素子の製造方法。
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