JP6265323B2 - 熱電変換材料 - Google Patents

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本発明は、熱電変換材料に関する。
近年、身の周りの未利用のエネルギーを回収して利用する、エナジーハーベスティング技術に注目が集まっている。このような技術の中でも、熱を回収して電気エネルギーに変換する熱電変換技術への期待が大きい。これは、身の回りで利用されているエネルギー全体量の約70%が活用されることなく排熱となっているからである。排熱から電気エネルギーを生み出し、例えば分散型の自立電源として利用することができれば、スマートビルディングなどで用いるセンサーネットワーク、ウェアラブルエレクトロニクスなどの電源として用いることが可能となる。
一般に、熱電変換材料の性能は、パワーファクターP(=α2σ)及び無次元性能指数ZT(=α2σT/κ)で評価される。ここで、αはゼーベック係数、σは導電率、κは熱伝導率、Tは絶対温度である。パワーファクターPは、熱電変換材料から得られる電力に対応し、無次元性能指数ZTは、エネルギー変換効率に対応しており、共に値が大きい方が熱電変換材料としての性能が良い。
従来、ビスマス・テルル系、鉛・テルル系、シリコン・ゲルマニウム系など、多くの熱電変換材料が提案されている。しかしながら、排熱の大部分は、薄く広がっており、熱流密度が小さい。例えば、排熱の約42%は、150℃以下の低い温度であり、熱流密度が低い熱源である。従って、柔軟性の低い従来の熱電変換材料では、種々の形状を有する幅広い範囲の排熱を効率的に回収することは困難である。
その他の熱電変換材料として、例えば、非特許文献1には、カーボンナノチューブと絶縁性ポリマーとのコンポジットを熱電変換材料として用いることが提案されている。このようなコンポジットは、大量に添加されたカーボンナノチューブによって導電性を有し、かつ様々な形状の表面に対応できる柔軟性をもつと考えられる。しかしながら、カーボンナノチューブは、ゼーベック係数が小さく、熱伝導率が高いため、パワーファクターP及び無次元性能指数ZTが小さく、熱電変換材料として優れているとは言い難い。
また、カーボンナノチューブを利用した熱電変換材料としては、非特許文献2のように、金ナノ粒子によるキャリアドーピング効果によってカーボンナノチューブの導電率を高める方法や、非特許文献3のように、導電性ポリマーの導電率を向上させるためにカーボンナノチューブを混在させる方法などが開示されている。しかしながら、これらの方法によっても、熱電変換効率が高く、大面積に利用でき、様々な形状の表面に対応できる柔軟性を持った熱電変換材料とすることは困難である。
山本龍登、末森浩司、鎌田俊英、第59回応用物理学関係連合講演会(東京)16p−E7−6 K.Choi, C.Yu, PLOS ONE, 9, e44977(2012) K. Zhang, M.Davis, J.Qiu, L.Hope−Weeks and S.Wang, Nanotechnology, 23, 385701(2012)
本発明は、熱電変換効率が高く、大面積に利用でき、様々な形状の表面に対応できる柔軟性を持った熱電変換材料を提供することを主な課題とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、複数の導電性材料と、導電性のコア部及び絶縁性のシェル部を有するコアシェル粒子とを有し、複数の導電性材料間の少なくとも一部が当該コアシェル粒子を介して接合されている熱電変換材料とすることにより、熱電変換効率が高く、大面積に利用でき、様々な形状の表面に対応できる柔軟性を有する熱電変換材料とし得ることを見出した。
本発明は以上の知見に基づいて更に研究を重ねた結果完成されたものである。即ち、本発明は以下に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 複数の導電性材料と、導電性のコア部及び絶縁性のシェル部を有するコアシェル粒子とを有し、
前記複数の導電性材料間の少なくとも一部が前記コアシェル粒子を介して接合されている、熱電変換材料。
項2. 前記コアシェル粒子における前記シェル部の厚みが5nm以下である、項1に記載の熱電変換材料。
項3. 前記コアシェル粒子における前記コア部の直径が0.1〜100nmである、項1または2に記載の熱電変換材料。
項4. 前記コアシェル粒子の粒子径が1〜110nmであり、前記コアシェル粒子の熱伝導率が前記導電性材料の熱伝導率よりも相対的に小さい、項1〜3のいずれかに記載の熱電変換材料。
項5. 前記導電性材料が繊維状である、項1〜4のいずれかに記載の熱電変換材料。
項6. 前記導電性材料が、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノファイバー、金属ウィスカー繊維、及び金属酸化物ウィスカー繊維からなる群から選択された少なくとも1種である、項1〜5のいずれかに記載の熱電変換材料。
項7. 前記コアシェル粒子は、前記シェル部がポリペプチドにより構成されており、前記コア部が無機半導体により構成されている、項1〜6のいずれかに記載の熱電変換材料。
項8. 前記ポリペプチドが、球殻状タンパク質タンパク質である、項7に記載の熱電変換材料。
項9.
前記無機半導体が、金属酸化物または化合物半導体である、項7または8に記載の熱電変換材料。
項10. 前記ポリペプチドの表面のペプチドが前記導電性材料と結合している、項7〜9のいずれかに記載の熱電変換材料。
項11. 前記コアシェル粒子がデンドリマーであり、前記デンドリマーにおける前記シェル部が絶縁性の側鎖部分により構成されており、前記コア部が導電性のπ共役系コアにより構成されている、項1〜6のいずれかに記載の熱電変換材料。
項12. 前記複数の導電性材料がp型半導体特性を有し、前記導電性のコア部がp型半導体である、項1〜11のいずれかに記載の熱電変換材料。
項13. 前記複数の導電性材料がn型半導体特性を有し、前記導電性のコア部がn型半導体である、項1〜11のいずれかに記載の熱電変換材料。
本発明によれば、熱電変換効率が高く、大面積に利用でき、様々な形状の表面に対応できる柔軟性を持った熱電変換材料を提供することができる。
実施例1で得られたCNT/C−Dps(Co)のX線回折(XRD)パターンと、Co34のパウダーのXRDパターンとの比較を示すグラフである。 実施例1におけるCNT/C−Dps(Co)の透過電子顕微鏡(TEM)写真である。 図3(a)は、実施例1におけるCNT/C−Dps(Co)の電流−電圧測定結果を示すグラフであり、図3(b)は、実施例1における2電極間の温度差と熱起電力との関係を示すグラフである。 実施例2で得られたCNT/C−Dps(Fe)のX線回折(XRD)パターンと、Fe23・nH2OのパウダーのXRDパターンとの比較を示すグラフである。 図5(a)は、実施例2におけるCNT/C−Dps(Fe)の電流−電圧測定結果を示すグラフであり、図5(b)は、実施例2における2電極間の温度差と熱起電力との関係を示すグラフである。 図6(a)は、比較例1におけるCNT(pristine)の電流−電圧測定結果を示すグラフであり、図6(b)は、比較例1における2電極間の温度差と熱起電力との関係を示すグラフである。 図7(a)は、参考例1におけるCNT/C−Dps(apo)の電流−電圧測定結果を示すグラフであり、図7(b)は、参考例1における2電極間の温度差と熱起電力との関係を示すグラフである。 図8(a)は、参考例2におけるCNT/C−Dps(CdS)の電流−電圧測定結果を示すグラフであり、図8(b)は、参考例2における2電極間の温度差と熱起電力との関係を示すグラフである。 図9(a)は、参考例3におけるCNT/C−Dps(CdSe)の電流−電圧測定結果を示すグラフであり、図9(b)は、参考例3における2電極間の温度差と熱起電力との関係を示すグラフである。 実施例1、2のCNT/C−Dps(Co)、CNT/C−Dps(Fe)、比較例1のCNT(pristine)、参考例1、2、3のCNT/C−Dps(apo)、CNT/C−Dps(CdS)、CNT/C−Dps(CdSe)について、縦軸をゼーベック係数の対数値、横軸を導電率の対数値としたグラフである。 CNT/C−Dps/CNT接合部のエネルギーダイアグラムの模式図である。
本発明の熱電変換材料は、複数の導電性材料と、導電性のコア部及び絶縁性のシェル部を有するコアシェル粒子とを有し、複数の導電性材料間の少なくとも一部がコアシェル粒子を介して接合されていることを特徴とする。本発明の熱電変換材料においては、複数の導電性材料間の少なくとも一部がコアシェル粒子を介して接合されていることにより、導電性材料を単独で用いる場合に比して、熱電変換効率を向上することができる。本発明の熱電変換材料において、熱電変換効率が向上する機序の詳細は明らかではないが、例えば、次のように考えることができる。熱電変換材料の熱電変換効率を向上させるためには、導電率が高いこと、熱伝導性が低いことなどが要求されるが、例えばカーボンナノチューブなどの導電性材料においては、導電率は高いものの、熱伝導率が高いため、これらの導電性材料の熱電変換効率は、一般に高くない。これに対して、本発明の熱電変換材料においては、複数の導電性材料の間の少なくとも一部が、絶縁性のシェル部と導電性のコア部とを有するコアシェル粒子により接合されている。このため、接合部において、絶縁性のシェル部によって局所的なフォノン(格子振動)反射が生じ、熱電変換材料全体としての熱伝導率が低くなる。より詳細には、絶縁性のシェル部の熱伝導率が小さいことに加えて、フォノンの共振周波数が導電性材料とシェル部とで大きく異なることにより、フォノンが接合部において反射され、熱電変換材料全体としての熱伝導率が低くなるものと考えられる。また、コアシェル粒子のコア部が導電性を有し、かつ、シェル部がトンネル効果などによって電気伝導を極端には妨げないため、導電性材料が有する導電率の低下が抑制されている。これらの結果、本発明の熱電変換材料においては、高導電率かつ低熱伝導率となり、熱電変換効率が向上するものと考えられる。また、本発明においては、導電性材料として、例えば後述のカーボンナノチューブなどの微細なものを用いることにより、大面積に利用でき、様々な形状の表面に対応できる柔軟性と機械的強度を持った熱電変換材料とすることが可能となる。
なお、本発明においては、複数の導電性材料の間の一部が、絶縁性のシェル部と導電性のコア部とを有するコアシェル粒子により接合されていれば、熱電変換効率が高く、大面積に利用でき、様々な形状の表面に対応できる柔軟性を持った熱電変換材料とすることができる。
導電性材料としては、導電性を有する材料であれば特に制限されず、好ましくは導電性繊維などが挙げられる。本発明の熱電変換材料の熱電変換効率を高める観点からは、導電性材料は、後述のコアシェル粒子よりも導電性が相対的に高いことが好ましい。導電性材料の具体例としては、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノファイバー、金属ウィスカー繊維、金属酸化物ウィスカー繊維などが挙げられ、これらの中でも好ましくはカーボンナノチューブ及びカーボンナノホーンが挙げられる。金属ウィスカー繊維を構成する金属としては、特に制限されず、例えば、スズ、鉄などが挙げられる。また、金属酸化物ウィスカー繊維を構成する金属酸化物としては、前記の金属ウィスカー繊維を構成する金属の酸化物などが挙げられる。導電性材料は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
導電性材料のアスペクト比としては、特に制限されず、例えば1〜1,000,000程度、好ましくは10〜100,000程度が挙げられる。また、導電性材料の長さとしては、特に制限されず、例えば0.01〜100μm程度、好ましくは1〜10μm程度が挙げられる。導電性材料の厚みとしては、特に制限されず、例えば0.01〜100μm程度、好ましくは1〜10μm程度が挙げられる。
複数の導電性材料間を接合しているコアシェル粒子は、導電性のコア部及び絶縁性のシェル部を有する。コアシェル粒子において、コア部の直径としては特に制限されず、例えば0.1〜100nm程度、好ましくは1〜10nm程度が挙げられる。また、絶縁性のシェル部の厚みとしては、特に制限されないが、熱電変換材料の導電性を高める観点からは、好ましくは5nm以下、より好ましくは3nm以下が挙げられる。シェル部の厚みの上限値がこのような値であることにより、導電性材料と導電性のコア部とがトンネル効果によって導通されるため、熱電変換材料の導電性を高めることが可能になる。また、本発明の熱電変換材料の熱電変換効率を高める観点からは、シェル部の厚みの下限値としては0.5nmが挙げられる。なお、本発明において、シェル部の厚みは、本発明の熱電変換材料の導電性材料とコアシェル粒子との接合部における、導電性材料とコア部との最短距離を測定して得られる値である。当該距離は、例えば電子顕微鏡により測定することができる。シェルの厚みが以上のような上限値と下限値とを有することにより、熱電変換材料の導電性を保ちつつ、熱伝導を抑制することができ、熱電変換効率を効果的に高め得る。コアシェル粒子は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
コアシェル粒子は、上記の導電性材料よりも熱伝導率が相対的に低いことが好ましい。コアシェル粒子の熱伝導率が導電性材料の熱伝導率よりも相対的に低いことにより、熱電変換材料全体としての熱伝導率を効果的に低くすることができ、さらには、コアシェル粒子に隣接する複数の導電性材料間に大きな温度が生じることによってコアシェル粒子接合部に大きな熱起電力が生じるため、本発明の熱電変換材料の熱電変換効率を効果的に高め得る。
コアシェル粒子の粒子径としては、後述の複数の導電性材料間の少なくとも一部を接合することができれば特に制限されず、例えば1〜110nm程度、好ましくは2〜20nm程度が挙げられる。特に、コアシェル粒子の粒子径がこのような範囲内にあり、かつ、コアシェル粒子の熱伝導率が導電性材料の熱伝導率よりも相対的に低い場合には、熱電変換材料全体として導電率の低下をさらに効果的に抑制しつつ、熱電変換材料全体としての熱伝導率を効果的に低くすることができるため、本発明の熱電変換材料の熱電変換効率をより効果的に高め得る。
コアシェル粒子のシェル部を構成する材料としては、絶縁性を有し、かつ、複数の導電性材料間を接合することができるものであれば、特に制限されず、好ましくはポリペプチドなどが挙げられる。ポリペプチドとしては、特に制限されないが、例えば、無機粒子を内包できるかご状タンパク質が挙げられ、具体的には、球殻状タンパク質が挙げられる。球殻状タンパク質としては、例えば、フェリチン様タンパク質などが挙げられる。フェリチンタンパク質とは、フェリチンを構成する球状のタンパク質であり、内部空間に酸化鉄などの金属酸化物や化合物半導体などの無機粒子を内包することができる。フェリチン様タンパク質には、このフェリチンタンパク質の他、アミノ酸配列やサブユニットの数などの点でフェリチンタンパク質とは非共通部分があるが、内部空間に無機粒子を内包できる機能を有するタンパク質が含まれる。なお、フェリチンとは、生体内で鉄を貯蔵するタンパク質として知られており、タンパク質のサブユニットが24個であり、フェリチンタンパク質の内部空間には酸化鉄が内包されている。内部空間に酸化鉄などの無機粒子が含まれていないフェリチンは、一般に、アポフェリチンなどと称される。フェリチンタンパク質の由来は、特に制限されず、例えば人、馬などの哺乳動物由来、大豆などの植物由来、大腸菌などの微生物由来などが挙げられる。また、フェリチンタンパク質のサブユニットは、L鎖(軽鎖)又はH鎖(重鎖)のいずれか一方で構成されていても、またこれらの双方で構成されていてもよいが、好ましくはL鎖が挙げられる。また、フェリチン様タンパク質には、リステリア菌に由来するリステリアフェリチンタンパク質も含まれる。リステリアフェリチンタンパク質とは、リステリアフェリチンを構成する球状のタンパク質であり、フェリチンタンパク質と同様、内部空間に酸化鉄などの金属酸化物や化合物半導体などの無機粒子を内包することができる。リステリアフェリチンタンパク質は、タンパク質のサブユニットが上記フェリチンタンパク質の半数の12個である。
これらの球殻状タンパク質のサブユニットは、上記のような無機粒子を内包できることを限度として、1または数個若しくは複数個のアミノ酸残基が置換、欠失、付加、または挿入された変異体であってもよい。なお、変異体は、公知の遺伝子工学的手法を使用することによって作成することができる。
コアシェル粒子のシェル部を構成するポリペプチドの具体例として、配列番号21、22、23に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、又はその変異体が挙げられる。配列番号21に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは馬の脾臓由来のフェリチンタンパク質のL鎖に該当し、配列番号22に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、馬の脾臓由来のフェリチンタンパク質のH鎖に該当し、配列番号23に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、リステリア菌由来のリステリアフェリチンタンパク質のサブユニットに該当している。また、当該ポリペプチドの変異体としては、具体的には、配列番号21、22、23に示されるアミノ酸配列において、1又は数個若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失付加、または挿入されたアミノ酸配列からなり、且つ無機粒子を内包する作用を示すポリペプチドが挙げられる。
コアシェル粒子のコア部を構成する材料としては、導電性を有する材料であれば特に制限されず、例えば、無機半導体などが挙げられる。コアシェル粒子のコア部が無機半導体により構成されている場合、含まれる不純物や導電性材料との接触電位差などによって無機半導体の状態密度関数がフェルミ準位の上下で非対称となる。このため、2つの導電性材料でコアシェル粒子を挟んだ接合部において両導電性材料間に温度差があるとき、導電性材料とコア部との間におけるシェル部を介したトンネル拡散流が正孔と電子とで非対称となり、接合部に正味の電流が発生する。よって、接合部において局所的に高いゼーベック係数が得られ、結果として熱電変換材料としてのゼーベック係数を高めることができると考えられる。無機半導体としては、好ましくは金属酸化物、化合物半導体などが挙げられる。金属酸化物としては、鉄、コバルト、マンガン、ニッケル、クロム、ベリリウム、ガリウム、ウラン、鉛、銅、バナジウムなどの金属の酸化物が挙げられる。また、化合物半導体としては、セレン化カドミウム(CdSe)、硫化カドミウム(CdS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、硫化亜鉛(ZnS)、硫化鉄(FeS)などが挙げられる。コア部の構成する材料は、1種類単独であってもよいし、2種類以上を組み合わせたものであってもよい。また、コア部を構成する材料は、単結晶、多結晶、アモルファスいずれの結晶状態でもよい。
コアシェル粒子としては、特に好ましくは、コア部として上記の金属酸化物または上記の化合物半導体が内包されているフェリチンが挙げられる。このようなフェリチンは、公知の方法により合成することができ、例えば、K. Iwahori, K. Yoshizawa, M. Muraoka, I. Yamashita, Inorg. Chem., 44, 6393 (2005)に記載された大腸菌を用いた遺伝子組み換え技術を用いることにより合成することができる。また、リステリアフェリチンでは、例えば、K. Iwahori, T. Enomoto, H. Furusho, A. Miura, K. Nishio,Y. Mishima, I. Yamashita, Chem. Mater. 2007, 19, 3105-3111に記載された大腸菌を用いた遺伝子組み換え技術を用いることにより合成することができる。
コアシェル粒子のシェル部がフェリチンタンパク質などのポリペプチドにより構成されている場合、コアシェル粒子と導電性材料とを密着性高く接合することなどを目的として、当該シェル部には、導電性材料と結合できるペプチドが形成されていることが好ましい。このようなペプチドとしては、好ましくは、配列番号1〜20に示されるアミノ酸配列からなるペプチド(特開2004−121154号公報、Chem.Phys.Lett.,309:165−170,1999などを参照)や、配列番号1〜20のいずれかに示されるアミノ酸配列の全部又はその一部を含み、導電性材料への結合能を有するペプチドを挙げることができる。これらのペプチドの中でも、好ましくはDYFSSPYYEQLF(配列番号1)、YDPFHII(配列番号2)などが例示できる。ペプチドは、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
シェル部において、これらのペプチドを形成する部位としては、ペプチドによってシェル部が導電性材料と接合し得る部位であれば特に制限されず、例えばシェル部がフェリチンタンパク質である場合、サブユニットのN末端、フェリチンタンパク質の表面に露出したループ構造部位などが挙げられる。リステリアフェリチンでは、サブユニットのN末端及び/又はC末端、リステリアフェリチンタンパク質の表面に露出したループ構造部位などが挙げられる。本発明の熱電変換材料の製造の簡便性の観点からは、シェル部の表面に位置するN末端及び/又はC末端にペプチドを形成することが好ましい。
球殻状タンパク質に前記ペプチドを融合により形成する方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、Molecular Cloning: A laboratory Mannual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY.,1989.、Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38,John Wiley & Sons (1987-1997)等に記載の方法に準じて行うことができる。具体的には、N末端に前記ペプチドを結合させたフェリチンタンパク質のサブユニットを製造する方法としては、フェリチンタンパク質のサブユニットをコードするcDNAの5’末端及び/又は3’末端に前記ペプチドをコードするcDNAを連結させたDNAを作製して、当該DNAを導入した組換え体を製造し、当該組換え体を培養する方法が挙げられる。また、リステリアフェリチンタンパク質については、リステリアフェリチンタンパク質のサブユニットのN末端及び/又はC末端において、同様にして形成することができる。
また、球殻状タンパク質にペプチドを化学的に結合させることにより形成する方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、Proteins secondedition, T. E. Creighton, W. H. Freemen and Company, New York, 1993.、G. T. Hermanson, in Bioconjugate Techniques, ed. G. T. Hermanson, Academic Press, San Diego CA, 1996, pp. 169-186.等に記載の方法に準じて行うことができる。
また、コアシェル粒子としては、上記で例示したものの他に、例えば、シェル部が絶縁性の複数の側鎖部分(デンドロン)により構成されており、前記コア部が導電性のπ共役系コア部により構成されているデンドリマーも挙げられる。
このようなデンドリマーのπ共役系コア部としては、特に制限されず、例えば、ポルフィリン骨格などが挙げられる。また、シェル部を構成する絶縁性の側鎖部分としては、複数の導電性材料間を接合することができるものであれば、特に制限されず、例えば、2価の炭化水素基が、エーテル結合、エステル結合、アミド結合などにより繰り返し結合された構造を有するものなどが挙げられる。
コアシェル粒子として使用し得るデンドリマーとしては、例えば、D. Astruc, Nat. Chem., 4, 255 (2012)などに記載されたものが挙げられ、具体例としては、下記式で表されるデンドリマーが挙げられる。
[式中、Mは、Fe、Co、Ni、Cu、Mn、Zn、Pbなどの金属である。]
本発明の熱電変換材料において、導電性材料とコアシェル粒子の質量比は特に制限されず、例えば導電性材料100質量部に対してコアシェル粒子を0.01〜1000質量部程度、好ましくは1〜100質量部程度とすることができる。
本発明の熱電変換材料において、熱電変換効率をより効果的に高める観点からは、上記の導電性材料がp型半導体特性を有する場合には、コアシェル粒子におけるコア部はp型半導体的であることが好ましい。同様の理由により、上記の導電性材料がn型半導体特性を有する場合には、コアシェル粒子におけるコア部はn型半導体的であることが好ましい。例えば、カーボンナノチューブ、グラフェンなどの導電性材料は、実用的な環境においてp型半導体的特性を有し、鉄、コバルト、ニッケルなどの金属酸化物や、CuInSeなどの化合物半導体もp型半導体である。このため、導電性材料としてカーボンナノチューブ、鉄などの金属酸化物を用い、コアシェル粒子のコア部として鉄、コバルト、ニッケルなどの金属酸化物や、CuInSeなどの化合物半導体を用いることにより、本発明の熱電変換材料の熱電変換効率を効果的に高めることが可能となる。一方、例えば、酸化亜鉛などの導電性材料は、実用的な環境においてn型半導体的特性を有し、InGaZnOなどの金属酸化物や、CdSなどの化合物半導体もn型半導体である。このため、導電性材料として酸化亜鉛などの金属酸化物を用い、コアシェル粒子のコア部として、同じく酸化亜鉛などの金属酸化物や、CdSなどの化合物半導体を用いることにより、本発明の熱電変換材料の熱電変換効率を効果的に高めることが可能となる。
このように、共にp型半導体特性を有する導電性材料とコア部との組み合わせ、または共にn型半導体特性を有する導電性材料とコア部との組み合わせによって、熱電変換効率がより一層向上することの機序の詳細は明らかではないが、例えば、次のように考えることができる。すなわち、本発明の熱電変換材料において、複数の導電性材料間の少なくとも一部を接合しているコアシェル粒子のコア部が例えばp型半導体特性を有する場合、当該コア部ではp型のゼーベック効果が生じると考えられる。また、カーボンナノチューブなどp型半導体特性を有する導電性材料においても、p型のゼーベック効果が生じる。このため、導電性材料/コアシェル粒子/導電性材料の接合部において、p型のゼーベック効果が奏され、結果として、熱電変換材料全体としてのゼーベック係数が増大し、熱電変換効率が向上するものと考えられる。また、n型の導電性材料とn型のコア部を用いた場合においても、同様の機序により熱電変換効率が向上するものと考えられる。
本発明の熱電変換材料は、単独で用いてもよいし、樹脂などと複合化して用いてもよい。樹脂としては、特に制限されず、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などを用いることができる。例えば、本発明の熱電変換材料を樹脂と複合化する場合、導電性材料をコアシェル粒子で接合した不織布状の熱電変換材料における空隙部に、絶縁性の樹脂を含浸させることにより、本発明の熱電変換材料の機械的強度を増強することができる。
本発明の熱電変換材料は、例えば、上記の導電性材料とコアシェル粒子とを混合することにより製造することができる。導電性材料とコアシェル粒子との混合は、例えば、溶媒中で混合した後、溶媒を除去することにより行うこともできる。また、本発明の熱電変換材料を樹脂などと複合化する場合、本発明の熱電変換材料を固体化した後に溶融した樹脂を含浸させることにより行うことができる。
本発明の熱電変換材料は、熱電変換効率が高く、大面積に利用でき、様々な形状の表面に対応できる柔軟性を有するため、例えば、スマートハウスやスマートビルディングなどにおけるセンサマトリクスを形成するための分散電源;体温、脈拍、心電などを計測するステッカー型の生体情報計測器の電源;カーエレクトロニクスのための駐車時補助電源などの各種電源に好適に利用することができる。
以下、実施例を挙げて、本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1
タンパク質として、K. Iwahori, T. Enomoto, H. Furusho, A. Miura, K. Nishio, Y. Mishima, I. Yamashita, Chem. Mater., 19, 3105 (2007)に記載されたListeria Dpsを使用し、Listeria Dpsの表面に、I. Inoue, B. Zheng, K. Watanabe, Y. Ishikawa, K. Shiba, H. Yasueda, Y. Uraoka, I. Yamashita.Chem. Commun., 47, 12649 (2011)に記載された方法で特開2004−121154号公報に記載の配列番号1(DYFSSPYYEQLF)で示されるアミノ酸配列からなるペプチド(NHBP−1)を付与した。以下、この分子をC−Dpsという。次に、K. Iwahori, K. Yoshizawa, M.Muraoka, I. Yamashita, Inorg. Chem., 44, 6393 (2005)とR. Tsukamoto, K.Iwahori, M. Muraoka, I. Yamashita, Bull. Chem. Soc. Jpn., 78, 2075 (2005)に記載の方法に従い、コバルトをC−Dpsに内包させ、C−Dpsがシェル部分、コバルトがコア部分を構成するコアシェル粒子を得た。このコアシェル粒子の直径は約9nm、コア部分の直径は約4.5nmであった。以下、得られたコアシェル粒子をC−Dps(Co)のように表記する。次に、単層カーボンナノチューブ(CNT、純度50−70%、金属半導体混合、シグマ・アルドリッチ社製)を用い、以下の手順でCNTとC−Dps(Co)との複合材料を作製した。以下、この複合材料(熱電変換材料)をCNT/C−Dps(Co)のように表記する。
まず、CNTの水分散液(濃度0.2g/l)と、C−Dps(Co)の水分散液(濃度0.3g/l)とを混合し、超音波を用いて水中で分散させつつ、CNTにC−Dps(Co)を付着させた。次に、遠心分離機を用い、CNTに付着しなかったC−Dps(Co)を水分散液から取り除いた。得られた水分散液を、UV/O3処理によって親水化したガラス基板上に滴下し、大気中で乾燥させ、薄膜状のCNT/C−Dps(Co)を得た。図1に、得られたCNT/C−Dps(Co)のX線回折(XRD)パターンと、Co34のパウダーのXRDパターンとの比較を示す。この結果から、CNT/C−Dps(Co)に内包されているコバルトは、Co34として存在していることが確認された。また、図2に、CNT/C−Dps(Co)の透過電子顕微鏡(TEM)写真を示す。なお、透過電子顕微鏡(TEM)写真は、後述の熱電特性を測定した試料より薄いものを用いて観察した。この写真から、CNT/C−Dps(Co)においては、CNTがランダムネットワークを形成しており、CNT間の少なくとも一部がC−Dps(Co)によって接合されていることがわかる。
<熱電特性の測定>
次に、マスク蒸着によって、ガラス基板上のCNT/C−Dps(Co)に金電極パターンを形成し、M.Nakamura,A. Hoshi, M.Sakai, and K.Kudo, Mat. Res. Soc. Symp. Proc. 1197, 1197−D09−07(2010)に記載の有機薄膜用熱電特性評価装置を用いて、室温・高真空中において、電流−電圧測定、ゼーベック係数の測定を行った。測定対象試料の横幅は2mm、長さは10mm、膜厚は約50nmとした。図3(a)及び図3(b)に、CNT/C−Dps(Co)の熱電特性の測定結果を示す。図3(a)は、電流−電圧測定結果を示すグラフである。このグラフの傾きから電気伝導率を求めたところ、0.86S/cmという値が得られた。また、図3(b)は、2電極間の温度差と熱起電力の関係である。あらかじめ求めた上記装置のゼーベック係数17.5μV/Kをこのグラフの傾きから差し引くことで、CNT/C−Dps(Co)の絶対ゼーベック係数として85.4μV/Kという値が得られた。他の実施例等との熱電性能比較のために、縦軸をゼーベック係数の対数値、横軸を導電率の対数値としたグラフにCNT/C−Dps(Co)についての測定結果を表示したものを図10に示す。図10のグラフにおいて、斜線は等パワーファクター線を示しており、パワーファクターという点では、右上ほど性能が良いということになる。また、エラーバーは、それぞれの試料の複数回の測定結果から統計処理により得られた信頼区間95%の範囲を表している。
実施例2
コバルトの代わりに鉄を内包させたこと以外は、実施例1と同様にして、C−Dpsに鉄を内包させたコアシェル粒子CNT/C−Dps(Fe)を得た。図4に、得られたCNT/C−Dps(Fe)のX線回折(XRD)パターンと、Fe23・nH2OのパウダーのXRDパターンとの比較を示す。この結果から、CNT/C−Dps(Fe)に内包されている鉄は、Fe23・nH2Oとして存在していることが確認された。また、このコアシェル粒子の直径は約9nm、コア部分の直径は約4.5nmであった。
<熱電特性の測定>
次に、実施例1と同様にして、CNT/C−Dps(Fe)について、電流−電圧測定、ゼーベック係数の測定を行った。図5(a)及び図5(b)に、CNT/C−Dps(Fe)の熱電特性の測定結果を示す。図5(a)は、電流−電圧測定結果を示すグラフである。このグラフの傾きから電気伝導率を求めたところ、0.81S/cmという値が得られた。また、図5(b)は、2電極間の温度差と熱起電力の関係である。あらかじめ求めた上記装置のゼーベック係数17.5μV/Kをこのグラフの傾きから差し引くことで、CNT/C−Dps(Fe)の絶対ゼーベック係数として55.0μV/Kという値が得られた。他の実施例及び比較例との熱電性能の比較のために、縦軸をゼーベック係数の対数値、横軸を導電率の対数値としたグラフにCNT/C−Dps(Fe)についての測定結果を表示したものを図10に示す。
比較例1
C−Dps(Co)を付着させなかったCNTをそのままCNT(pristine)として用い、熱電特性を測定した。
<熱電特性の測定>
実施例1と同様にして、CNT(pristine)について、電流−電圧測定、ゼーベック係数の測定を行った。図6(a)及び図6(b)に、CNT(pristine)の熱電特性の測定結果を示す。図6(a)は、電流−電圧測定結果を示すグラフである。このグラフの傾きから電気伝導率を求めたところ、0.31S/cmという値が得られた。また、図6(b)は、2電極間の温度差と熱起電力の関係である。あらかじめ求めた上記装置のゼーベック係数17.5μV/Kをこのグラフの傾きから差し引くことで、CNT(pristine)の絶対ゼーベック係数として33.2μV/Kという値が得られた。他の実施例等との熱電性能比較のために、縦軸をゼーベック係数の対数値、横軸を導電率の対数値としたグラフにCNT(pristine)についての測定結果を表示したものを図10に示す。
参考例1
コバルトを内包させなかったこと以外は、実施例1と同様にして、CNT/C−Dps(apo)を得た。
<熱電特性の測定>
次に、実施例1と同様にして、CNT/C−Dps(apo)について、電流−電圧測定、ゼーベック係数の測定を行った。図7(a)及び図7(b)に、CNT/C−Dps(apo)の熱電特性の測定結果を示す。図7(a)は、電流−電圧測定結果を示すグラフである。このグラフの傾きから電気伝導率を求めたところ、0.61S/cmという値が得られた。また、図7(b)は、2電極間の温度差と熱起電力の関係である。あらかじめ求めた上記装置のゼーベック係数17.5μV/Kをこのグラフの傾きから差し引くことで、CNT/C−Dps(apo)の絶対ゼーベック係数として37.0μV/Kという値が得られた。他の実施例等との熱電性能比較のために、縦軸をゼーベック係数の対数値、横軸を導電率の対数値としたグラフにCNT(apo)についての測定結果を表示したものを図10に示す。
参考例2
コバルトの代わりに硫化カドミウム(CdS)を内包させたこと以外は、実施例1と同様にして、硫化カドミウムを内包させたコアシェル粒子CNT/C−Dps(CdS)を得た。このコアシェル粒子の直径は約9nm、コア部分の直径は約4.5nmであった。
<熱電特性の測定>
次に、実施例1と同様にして、CNT/C−Dps(CdS)について、電流−電圧測定、ゼーベック係数の測定を行った。図8(a)及び図8(b)に、CNT/C−Dps(CdS)の熱電特性の測定結果を示す。図8(a)は、電流−電圧測定結果を示すグラフである。このグラフの傾きから電気伝導率を求めたところ、0.14S/cmという値が得られた。また、図8(b)は、2電極間の温度差と熱起電力の関係である。あらかじめ求めた上記装置のゼーベック係数17.5μV/Kをこのグラフの傾きから差し引くことで、CNT/C−Dps(CdS)の絶対ゼーベック係数として34.3μV/Kという値が得られた。他の実施例等との熱電性能比較のために、縦軸をゼーベック係数の対数値、横軸を導電率の対数値としたグラフにCNT/C−Dps(CdS)についての測定結果を表示したものを図10に示す。
参考例3
コバルトの代わりにカドミウムセレニド(CdSe)を内包させたこと以外は、実施例1と同様にして、カドミウムセレニドを内包させたコアシェル粒子CNT/C−Dps(CdSe)を得た。このコアシェル粒子の直径は約9nm、コア部分の直径は約4.5nmであった。
<熱電特性の測定>
次に、実施例1と同様にして、CNT/C−Dps(CdSe)について、電流−電圧測定、ゼーベック係数の測定を行った。図9(a)及び図9(b)に、CNT/C−Dps(CdSe)の熱電測定結果を示す。図9(a)は、電流−電圧測定結果を示すグラフである。このグラフの傾きから電気伝導率を求めたところ、0.22S/cmという値が得られた。また、図9(b)は、2電極間の温度差と熱起電力の関係である。あらかじめ求めた上記装置のゼーベック係数17.5μV/Kをこのグラフの傾きから差し引くことで、CNT/C−Dps(CdSe)の絶対ゼーベック係数として28.1μV/Kという値が得られた。他の実施例等との熱電性能比較のために、縦軸をゼーベック係数の対数値、横軸を導電率の対数値としたグラフにCNT/C−Dps(CdSe)についての測定結果を表示したものを図10に示す。
考察
実施例1のCNT/C−Dps(Co)では、比較例1のCNT(pristine)と比較して、ゼーベック係数が2.3倍、導電率が2.9倍になることによって、パワーファクターPが15倍になった。また、実施例2のCNT/C−Dps(Fe)では、比較例1のCNT(pristine)と比較して、ゼーベック係数が1.7倍、導電率が2.8倍になることによって、パワーファクターPが8倍になった。また、参考例1のCNT/C−Dps(apo)と比較しても、実施例1のCNT/C−Dps(Fe)及び実施例2のCNT/C−Dps(Co)を用いると、導電率及びゼーベック係数ともに増加することが分かる。
一方、C−Dps(apo)を付着させた参考例1のCNT/C−Dps(apo)と、C−Dpsを付着させていないCNT比較例1の(pristine)との比較から、C−Dps(apo)の付着によっては、ゼーベック係数に変化が生じないことが分かる。一方、参考例1では、比較例1と比較して、導電率は増加していた。この理由としては、C−Dps(apo)の付着によって半導体性のCNTにキャリアドーピングが生じている可能性と、C−Dps(apo)の界面活性剤としての効果によって、両者の間にCNTネットワークの接続状態に差が生じている可能性との両方が考えられる。
一方、参考例2のC−Dps(CdS)及び参考例3のC−Dps(CdSe)では、ゼーベック係数はわずかに減少し、導電率も減少していることが分かる。この理由については、例えば次のように考えることができる。図11に、CNT/C−Dps/CNT接合部のエネルギーダイアグラムを模式的に示す。図11において、C−Dpsの導電性のコア部分については、価電子帯端及び伝導帯端のエネルギー位置が描かれ、CNTについては電子のフェルミ−ディラック分布f(E)が描かれている。実施例1で用いたC−Dps(Co)及び実施例2で用いたC−Dps(Fe)の内包物であるCo34及びFe23・nH2Oは、いずれもp型の半導体になりやすいことが知られており、図11の左側(p−type)のようなエネルギーダイアグラムとなる。一方、参考例2で用いたDps(CdS)及び参考例3で用いたC−Dps(CdSe)の内包物は、いずれもn型の半導体になりやすいことが知られており、図11の右側(n−type)のようなエネルギーダイアグラムとなる。それぞれのフェルミ−ディラック関数は、左側が低温、右側が高温の状態を表しており、高温側で電子の熱励起が盛んになるに従って、コア部分の上下非対称な状態密度関数(DOS)によって、電子または正孔のどちらかが優先的に低温側へ輸送されることで正味の電流が生じる。これによって、p型のコア部分ではp型のゼーベック効果が、n型のコア部分ではn型のゼーベック効果が生じると考えらえる。実施例などで用いたCNTは、実用的な状態においてp型のゼーベック効果を示す。このため、実施例1及び実施例2では、p型的なCNT/C−Dps/CNT接合による同極性のゼーベック効果が直列的に加わることにより、コンポジット熱電変換材料としてのゼーベック係数が増加したと考えられる。一方、参考例2及び参考例3のようなn型的なCNT/C−Dps/CNT接合では、逆極性のゼーベック効果が直列的に加わることにより、ゼーベック係数が減少すると考えられる。ただし、CNTの導電率、すなわち、キャリア密度も減少していることから、CNT部分のゼーベック係数は半導体のゼーベック効果理論に従い増加すると考えられ、そのためにコンポジット熱電変換材料としてのゼーベック係数の変化が相殺される傾向が見られているものと考えられる。以上の考察より、内包するナノ粒子の状態密度関数を室温付近でのゼーベック効果が最大化するように調整することで、更にゼーベック係数を増加させることができると考えられる。なお、コア部分の種類による導電率の増減については、半導体性のCNTがp型であることからp型的な状態密度関数を持つ粒子の方が、トンネル電流が流れやすくなるという効果、CNT周囲に多くのC−Dpsが吸着することでCNT/C−Dps接合部の熱平衡時の電荷移動によって、半導体性CNTにキャリアドーピングが生じる効果が生じると考えられる。

Claims (12)

  1. 複数の導電性材料と、導電性のコア部及び絶縁性のシェル部を有するコアシェル粒子とを有し、
    前記複数の導電性材料間の少なくとも一部が前記コアシェル粒子を介して接合されており、
    前記導電性材料が、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノファイバー、グラフェン、金属ウィスカー繊維、及び金属酸化物ウィスカー繊維からなる群から選択された少なくとも1種である、熱電変換材料。
  2. 前記コアシェル粒子における前記シェル部の厚みが5nm以下である、請求項1に記載の熱電変換材料。
  3. 前記コアシェル粒子における前記コア部の直径が0.1〜100nmである、請求項1または2に記載の熱電変換材料。
  4. 前記コアシェル粒子の粒子径が1〜110nmであり、前記コアシェル粒子の熱伝導率が前記導電性材料の熱伝導率よりも相対的に小さい、請求項1〜3のいずれかに記載の熱電変換材料。
  5. 前記導電性材料が繊維状である、請求項1〜4のいずれかに記載の熱電変換材料。
  6. 前記コアシェル粒子は、前記シェル部がポリペプチドにより構成されており、前記コア部が無機半導体により構成されている、請求項1〜のいずれかに記載の熱電変換材料。
  7. 前記ポリペプチドが、球殻状タンパク質である、請求項に記載の熱電変換材料。
  8. 前記無機半導体が、金属酸化物または化合物半導体である、請求項6または7に記載の熱電変換材料。
  9. 前記ポリペプチドの表面のペプチドが前記導電性材料と結合している、請求項6〜8のいずれかに記載の熱電変換材料。
  10. 前記コアシェル粒子がデンドリマーであり、前記デンドリマーにおける前記シェル部が絶縁性の側鎖部分により構成されており、前記コア部が導電性のπ共役系コアにより構成されている、請求項1〜のいずれかに記載の熱電変換材料。
  11. 前記複数の導電性材料がp型半導体特性を有し、前記導電性のコア部がp型半導体である、請求項1〜10のいずれかに記載の熱電変換材料。
  12. 前記複数の導電性材料がn型半導体特性を有し、前記導電性のコア部がn型半導体である、請求項1〜10のいずれかに記載の熱電変換材料。
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