JP6919243B2 - 複合体ナノ粒子の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、複合体ナノ粒子及びその製造方法、ならびに複合体ナノ粒子を含む組成物に関する。
ナノ粒子は、化粧品、診断薬、及び治療薬などのバイオ医療応用から、配線材、発電・蓄電デバイス、及び発光素子などのエレクトロニクス応用まで幅広い分野で活用され、新規技術の開発も期待されている重要な素材である。従来、物理化学的に合成された金及び酸化チタンなどの微粒子が実用化されてきたが、高機能化や新機能付加に伴い多種多様な金属、及び半導体ナノ粒子が求められている(非特許文献1及び非特許文献2)。特に、セレン化銅インジウムや硫化銅インジウムからなる三元系の化合物ナノ粒子は太陽電池やレーザーなどへの応用が期待されており、様々な物理化学的合成方法が検討されてきた(特許文献1及び特許文献2)。
一般に、物理化学的なナノ粒子の合成方法として、素材を物理的に粉砕や研磨することで微粒子化する方法や、溶液あるいは気相中の原料を結晶成長させる方法などが知られている(非特許文献3及び非特許文献4)。しかし、いずれの方法においても、粒子の粒径制御、粒子同士の凝集防止、粒子表面の柔軟な機能化が課題となっている。
一方、自然界に存在する金属内包性タンパク質を利用したナノ粒子合成方法も知られている(特許文献3)。この方法においては、例えば、内径7nmの内腔を有する外径12nmのカゴ状タンパク質であるフェリチンやその類縁タンパク質を、極微小な反応ポットとしてナノ粒子を合成する。この方法で合成されたナノ粒子は、タンパク質内部の限られた空間で形成されるため粒子径が均一で、タンパク質で被膜されているので溶液分散性が高く、遺伝子工学的にタンパク質表面を自由に改変でき粒子表面の機能化が容易といった特徴を持つ。さらに、該ナノ粒子は基本的に水溶液中、常温、大気圧の条件下の環境負荷が低いプロセスで合成できる。フェリチンタンパク質を用いて合成されたものとしては、鉄、マンガン、ウラン、鉛、コバルト、ニッケル、銅、クロムなどの金属の酸化物、また、酸化亜鉛、セレン化カドミウム、硫化カドミウムなどの半導体や磁性体などのナノ粒子が知られている(特許文献4、特許文献5及び非特許文献5)。
特許第5566901号公報 特表2014−502052号公報 特許第3683265号公報 特許第3703479号公報 特開2009―190982号公報
Marie−Christine Daniel and Didier Astruc,Chem.Rev.2004,Vol.104,p293. S. M. Gupta, et al.,Chinese Sci.Bull.,2011,Vol.56,p.1639. Rajib Ghosh Chaudhuri and Santanu Paria Chem.Rev.2012, 112,p.2373. Sarita Kango et al. Progress in Polymer Science 38(2013),p.1232. I.Yamashita et al.,Biochem.Biophys.Acta,2010,vol.1800,p.846.
例えば、セレン化銅インジウム等のような三元系の化合物のナノ粒子は太陽電池やレーザーなどへの応用が期待されているが、一般的な物理的合成方法により合成すると、粒子径の制御、粒子同士の凝集防止、及び粒子表面の機能化などが困難であった。
一方、カゴ状タンパク質を微少な反応場として利用する方法によれば、均一な粒径を持ち、溶液分散性に優れ、粒子表面が加工可能な化合物ナノ粒子を得ることが期待されるが、二種類以上の金属を含む化合物を内包したカゴ状タンパク質や、その合成例は、本発明者らが把握する限り、知られていなかった。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、内腔を有するタンパク質の内腔に、二種以上の金属を含む化合物を内包した複合体ナノ粒子と、その製造方法を提供することである。
本発明者らは、鋭意検討した結果、内腔を有するタンパク質の内腔を微少な反応場として利用することで、均一な粒径を持ち、溶液分散性に優れるとともに、粒子表面が加工可能な、内腔に二種以上の金属を含む化合物を内包してなる複合体ナノ粒子の合成方法を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本願発明は、以下のとおりである。
[1]内腔を有するタンパク質と、前記内腔に内包され、少なくとも3つの元素から構成される化合物と、を備え、前記化合物を構成する元素のうち、少なくとも2つの元素が金属元素である、複合体ナノ粒子。
[2]前記化合物が化合物半導体である、[1]に記載の複合体ナノ粒子。
[3]前記化合物を構成する元素が、銅、インジウム、ガリウム及びアルミニウムから選ばれる2つ以上の金属元素を含む、[1]または[2]に記載の複合体ナノ粒子。
[4]前記化合物を構成する元素が、セレン及び/又は硫黄を含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の複合体ナノ粒子。
[5]前記化合物がセレン化銅インジウムまたは硫化銅インジウムである、[1]〜[4]のいずれかに記載の複合体ナノ粒子。
[6]平均粒子径が5nm〜30nmである、[1]〜[5]のいずれかに記載の複合体ナノ粒子。
[7]内腔を有するタンパク質が、内腔を有する24量体を形成し得るタンパク質又は内腔を有する12量体を形成し得るタンパク質である、[1]〜[6]のいずれかに記載の複合体ナノ粒子。
[8][1]〜[7]のいずれかに記載の複合体ナノ粒子の製造方法であって、(A)系中に、内腔を有するタンパク質、金属イオン、及び陰イオンを存在させて、金属イオンと陰イオンとが結合した化合物前駆体をタンパク質の内腔中に生成する工程と、(B)系中に、化合物前駆体を構成する金属イオンとは別の金属イオンをさらに存在させて、2種以上の金属イオンと陰イオンとが結合した化合物をタンパク質の内腔中に生成する工程と、を含む、複合体ナノ粒子の製造方法。
[9](A)工程の系中に存在させる金属イオンが銅イオンであり、(B)工程の系中に存在させる、化合物前駆体を構成する金属イオンとは別の金属イオンがインジウムイオンである、[8]に記載の複合体ナノ粒子の製造方法。
[10](B)工程において、系を加熱する、[8]または[9]に記載の複合体ナノ粒子の製造方法。
[11][1]〜[7]のいずれかに記載の複合体ナノ粒子の製造方法であって、系中に、内腔を有するタンパク質、2種以上の金属イオン、及び陰イオンを存在させて、2種以上の金属イオンと陰イオンとが結合した化合物をタンパク質の内腔中に生成する、複合体ナノ粒子の製造方法。
[12][1]〜[7]のいずれかに記載の複合体ナノ粒子と、水と、を含む組成物。
本発明によれば、内腔を有するタンパク質の内腔に、二種以上の金属を含む化合物を内包してなる複合体ナノ粒子と、その製造方法を提供することができる。
図1は合成例1で作製したセレン化インジウム−フェリチン複合体ナノ粒子の無染色サンプルの透過型電子顕微鏡(TEM)像である。 図2は合成例1で作製したセレン化インジウム−フェリチン複合体を2.0%の金チオグルコース液で負染色したサンプルのTEM像である。 図3は合成例1で作製したセレン化インジウム−フェリチン複合体の電子エネルギー損失分光法(EELS)を用いた元素マッピング像である。 図4は合成例1で作製したセレン化インジウム−フェリチン複合体のエネルギー分散型X線分析(EDS)を用いた元素分析のチャートである。 図5は合成例2において、反応液のpHを3.4〜6.2としたときの、セレン化インジウム−フェリチン複合体粒子形成率を示すグラフである。 図6は合成例2において、反応液に含まれるアンモニアの濃度を50mM〜200mMとしたときの、セレン化インジウム−フェリチン粒子形成率を示すグラフである。 図7は合成例2において、反応液の温度を4℃から60℃としたときのセレン化インジウム−フェリチン粒子の形成率を示すグラフである。 図8は合成例3で作製したセレン化銅−フェリチン複合体の無染色サンプルの透過型電子顕微鏡(TEM)像である。 図9は合成例3で作製したセレン化銅−フェリチン複合体を2.0%の金チオグルコース液で負染色したサンプルのTEM像である。 図10は合成例3で作製したセレン化銅−フェリチン複合体のEELSを用いた元素マッピング像である。 図11は合成例3で作製したセレン化銅−フェリチン複合体のEDSを用いた元素分析のチャートである。 図12は合成例4において、反応液のpHを3.5〜6.8としたときの、セレン化銅−フェリチン複合体粒子形成率を示すグラフである。 図13は合成例4において、反応液に含まれるアンモニアの濃度を40mM〜90mMとしたときの、セレン化銅−フェリチン粒子形成率を示すグラフである。 図14は合成例4において、反応液の温度を4℃から90℃としたときのセレン化銅−フェリチン粒子形成率を示すグラフである。 図15は実施例1−1のセレン化銅インジウム−フェリチン複合粒子を2.0%の金チオグルコース液で負染色したサンプルのTEM像である。 図16は実施例1−1のセレン化銅インジウム−フェリチン複合粒子のEELSを用いた元素マッピング像である。 図17は実施例1−1のセレン化銅インジウム−フェリチン複合体のEDSを用いた元素分析のチャートである。 図18は実施例2−1のセレン化銅インジウム−フェリチン複合体のTEM像である。 図19は実施例2−1のセレン化銅インジウム−フェリチン複合体のEELSを用いた元素マッピング像である。 図20は実施例2−1のセレン化銅インジウム−フェリチン複合体のEDSを用いた元素分析のチャートである。 図21は実施例3のセレン化銅インジウム−フェリチン複合体のXRDパターンである。 図22はセレン化銅−フェリチン複合体を前駆体として作成した実施例3のセレン化銅インジウム−フェリチン複合体(実線)の吸光スペクトルと、セレン化インジウム−フェリチン複合体を前駆体として合成された実施例1−1のセレン化銅インジウム−フェリチン複合体(破線)の吸光スペクトルである。 図23はセレン化インジウム−フェリチン複合体を前駆体として合成された実施例1−1のセレン化銅インジウム−フェリチン複合体の蛍光スペクトルである。 図24はアポフェリチンの蛍光スペクトルである。 図25は実施例3のセレン化銅インジウム−フェリチン複合体の粒度分布を示すグラフである。 図26は実施例3のセレン化銅インジウム−フェリチン複合体のTEM計測による粒度分布を示すグラフである。 図27は実施例4で作製されたセレン化銅インジウム−フェリチン複合体を2.0%の金チオグルコース液で負染色したサンプルのTEM像である。 図28は実施例4で作製されたセレン化銅インジウム−フェリチン複合体のEELSを用いた元素マッピング像である。 図29は実施例4で作製されたセレン化銅インジウム−フェリチン複合体のEDSを用いた元素分析のチャートである。 図30は実施例5において作製した硫化インジウム−Dps複合粒子を2.0%の金チオグルコース液で負染色したサンプルのTEM像である。 図31は実施例5において作製した硫化インジウム−Dps複合粒子のEDSを用いた元素分析のチャートである。 図32は実施例6において作製した硫化銅インジウム−Dps複合粒子のXRDを用いた結晶分析のチャートである。 図33は実施例6において作製した硫化銅インジウム−Dps複合粒子のXPSを用いた元素分析のチャートである。 図34は実施例6において作製した硫化銅インジウム−Dps複合粒子のXPSを用いた元素分析のチャートである。 図35は実施例7において作製した硫化インジウム−フェリチン複合粒子のTEM像である。 図36は実施例7において作製した硫化銅インジウム−フェリチン複合粒子のTEM像である。 図37は実施例7において作製した硫化銅インジウム−フェリチン複合粒子のXRDを用いた結晶分析のチャートである。
<複合体ナノ粒子>
本発明は、内腔を有するタンパク質と、少なくとも3つの元素からなり、前記内腔に内包される化合物と、を備え、前記化合物を構成する元素のうち、少なくとも2つの元素が金属元素である、複合体ナノ粒子を提供する。
用語「内腔を有するタンパク質」とは、内部に空間を有するタンパク質をいう。ここで、前記のタンパク質は単独で内部に空間を有していてもよく、多量体を形成することによって当該多量体の内部に空間を有していてもよい。通常タンパク質としては多量体を形成することによって当該多量体の内部に空間を有するタンパク質を用いる。このような多量体は内腔を有する多量体を形成し得るタンパク質によって形成され得る。ここで、用語「内腔を有する多量体を形成し得るタンパク質」とは、内部に空間を有する多量体を、タンパク質の会合によって、形成する能力を有するタンパク質をいう。このようなタンパク質としては、幾つかのタンパク質が知られている。例えば、このようなタンパク質としては、内腔を有する24量体を形成し得るタンパク質(例、フェリチン)、および内腔を有する多量体(例、12量体)を形成し得るタンパク質が挙げられる。内腔を有する多量体を形成し得るタンパク質としては、例えば、内腔を有する12量体を形成し得るDps(DNA−binding protein from starved cells)が挙げられる。Dpsは、分子量約18kDaの単量体単位からなる12量体を形成することにより、約5nmの直径の内腔を有する外径9nmからなるかご状構造を形成する。Dpsは、それが由来する細菌の種類によってはNapA、バクテリオフェリチン、DlpまたはMrgAと称呼される場合があり、また、Dpsには、DpsA、DpsB、Dps1、Dps2等のサブタイプが知られている(T.Haikarainen and A.C.Papageorgion, Cell.Mol.Life Sci.,2010 vol.67,p.341を参照)。したがって、本発明では、用語「Dps」は、これらの別名で称呼されるタンパク質も含むものとする。内腔を有する多量体を形成し得るタンパク質は、そのN末端部および/またはC末端部が多量体の表面に露出していてもよい。
内腔を有する多量体を形成し得るタンパク質は、原核生物または真核生物に由来するものであってもよい。内腔を有する多量体を形成し得るタンパク質はまた、微生物、昆虫、植物、および哺乳動物等の動物に由来するものであってもよい。
好ましい実施形態では、内腔を有する多量体を形成し得るタンパク質は、内腔を有する多量体を形成し得るタンパク質を産生する微生物に由来するタンパク質であってもよい。このような微生物としては、例えば、リステリア(Listeria)属、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属、バチルス(Bacillus)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ビブリオ(Vibrio)属、エスケリシア(Escherichia)属、ブルセラ(Brucella)属、ボレリア(Borrelia)属、マイコバクテリウム(Mycobacterium)属、カンピロバクター(Campylobacter)属、サーモシネココッカス(Thermosynechococcus)属、およびデイノコッカス(Deinococcus)属、パイロコッカス(Pyrococcus)属、ならびにコリネバクテリウム(Corynebacterium)属に属する細菌が挙げられる。
リステリア属に属する細菌としては、例えば、リステリア・イノキュア(Listeria innocua)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)が挙げられる。スタフィロコッカス属に属する細菌としては、例えば、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus Aureus)が挙げられる。バチルス属に属する細菌としては、例えば、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)が挙げられる。ストレプトコッカス属に属する細菌としては、例えば、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス スイス(Streptococcus suis)が挙げられる。ビブリオ属に属する細菌としては、例えば、ビブリオ・コレラ(Vibrio cholerae)が挙げられる。エスケリシア属に属する細菌としては、例えば、エスケリシア・コリ(Escherichia coli)が挙げられる。ブルセラ属に属する細菌としては、例えば、ブルセラ・メリテンシス(Brucella Melitensis)が挙げられる。ボレリア属に属する細菌としては、例えば、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia Burgdorferi)が挙げられる。マイコバクテリウム属に属する細菌としては、例えば、マイコバクテリウム・スメグマティス(Mycobacterium smegmatis)が挙げられる。カンピロバクター属に属する細菌としては、例えば、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)が挙げられる。サーモシネココッカス属に属する細菌としては、例えば、サーモシネココッカス・エロンガタス(Thermosynechococcus Elongatus)が挙げられる。デイノコッカス属に属する細菌としては、例えば、デイノコッカス・ラディオデュランス(Deinococcus Radiodurans)が挙げられる。パイロコッカス(Pyrococcus)属に属する細菌としては、例えば、パイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)が挙げられる。コリネバクテリウム(Corynebacterium)属に属する細菌としては、例えば、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)が挙げられる。
別の好ましい実施形態では、内腔を有する多量体を形成し得るタンパク質は、内腔を有する多量体を形成し得るタンパク質を産生する、哺乳動物等の動物に由来するタンパク質であってもよい。哺乳動物としては、例えば、ヒト、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ウシ、ウマ、ヤギ、およびブタが挙げられる。
内腔を有する多量体を形成し得るタンパク質としては、耐熱性タンパク質を用いることもまた好ましい。このような耐熱性タンパク質としては、例えば、パイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)等のパイロコッカス(Pyrococcus)属細菌のような好熱性微生物に由来するタンパク質が挙げられる。耐熱性タンパク質を用いることで、内腔を有する多量体の培地からの回収が容易になる。
内腔を有する多量体を形成し得るタンパク質はさらに、天然に生じるタンパク質、または内腔を有する多量体を形成し得るその変異体であってもよい。このような変異体としては、例えば、1または数個(例、1〜20個、1〜15個、1〜10個または1〜5個)のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入および/または付加を有する変異体である。当業者であれば、本願明細書中の開示、および当該分野における技術常識に基づき、このような変異体を容易に作製することができる。
例えば、内腔を有する多量体を形成し得るタンパク質は、標的物質に結合し得るペプチド部分をそのN末端および/またはC末端に付加されたものであってもよい。用語「標的物質に結合し得るペプチド部分」とは、任意の標的物質に対して親和性を有するペプチドを有し、かつ当該標的物質に対して結合できる部分をいう。標的物質に対して親和性を有する種々のペプチドが知られているので、本発明では、このようなペプチドを有する部分を、上記ペプチド部分として用いることができる。標的物質に結合し得るペプチド部分は、任意の標的物質に対して親和性を有する1個のペプチドのみを有していてもよいし、あるいは任意の標的物質に対して親和性を有する同種または異種の複数のペプチドを有していてもよい。標的物質としては、例えば、無機材料および有機材料、あるいは導体材料、半導体材料および磁性体材料が挙げられる。具体的には、このような標的物質としては、金属材料(例、チタン、ニオブ等の金属、および金属酸化物等の金属化合物)、シリコン材料(例、シリコン、およびシリコン酸化物等のシリコン化合物)、炭素材料(例、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン等のカーボンナノ材料)、低分子化合物(例、ポルフィリン等の生体物質、放射性物質、蛍光物質、色素、薬物)、ポリマー(例、疎水性有機ポリマーまたは伝導性ポリマー)、タンパク質(例、オリゴペプチドまたはポリペプチド)、核酸、糖質、脂質が挙げられる。
内腔を有する多量体を形成し得るタンパク質はまた、内腔を有する多量体を形成し得るタンパク質のN末端に、分泌シグナルを有していてもよい。分泌シグナルとしては、例えば、糸状菌において作用できるものが挙げられる。このようなシグナル配列としては、例えば、セロビオヒドロラーゼ遺伝子(例、cbhI、cbhII)、エンドグルカナーゼ遺伝子、β−グルコシダーゼ遺伝子、およびアミラーゼ遺伝子などの遺伝子由来のシグナル配列が挙げられる。内腔を有する多量体を形成し得るタンパク質が分泌シグナルを有する場合、分泌シグナルが付加された、内腔を有する多量体を形成し得るタンパク質が糸状菌内で発現するが、分泌過程において分泌シグナルは切断され得るので、培地中には、分泌シグナルを含まない、内腔を有する多量体を蓄積させることができる。
本発明において、内腔を有するタンパク質の内腔に内包される化合物は、少なくとも3つの元素からなり、該化合物を構成する元素のうち、少なくとも2つの元素が金属元素である。内腔を有するタンパク質の内腔に内包される化合物は、二種以上の金属を含む。
内腔を有するタンパク質に内包される化合物を構成する元素としては、例えば、銅、銀及び金等の第11族の元素、亜鉛、及びカドミウム等の第12族の元素、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム及びタリウム等の第13族の元素、ケイ素、ゲルマニウム及びスズ等の第14族の元素、窒素、リン、及びヒ素等の第15族の元素、ならびに、硫黄、セレン、及びテルル等の第16族の元素などが挙げられる。
内腔を有するタンパク質に内包される化合物を構成する金属元素としては、銅、インジウム、ガリウム及びアルミニウムから選ばれる2つ以上の金属元素を含むのが好ましく、銅及びインジウムを含むのがより好ましい。また内腔を有するタンパク質の内腔に内包される化合物を構成する元素としては、セレン及び/又は硫黄を含むのが好ましい。本発明において、内腔を有するタンパク質に内包される化合物としては、化合物半導体が好ましく、セレン化銅インジウム及び硫化銅インジウムがより好ましい。
内腔を有するタンパク質の内腔には、二種以上の金属を含む化合物とともに、例えば鉄、ベリリウム、ガリウム、マンガン、リン、ウラン、鉛、コバルト、ニッケル、クロムなどの一種の金属の酸化物、また、セレン化カドミウム、硫化亜鉛、硫化鉄、硫化カドミウムなどの半導体又は磁性体などのナノ粒子等が内包されていてもよい。
本発明の複合体ナノ粒子の平均粒子径は、例えば内腔を有するタンパク質としてフェリチンを用いる場合、5nm〜30nmであるのが好ましく、7nm〜25nmであるのがより好ましく、7nm〜20nmであるのがさらに好ましい。複合体ナノ粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することにより測定することができる。また、複合体ナノ粒子の粒度分布は例えば、ゼータサイザーナノを用いた動的光散乱法で測定することができる。内腔を有するタンパク質の厚みは0.1nm〜10nmであるのが好ましく、0.5nm〜7nmであるのがより好ましく、1nm〜5nmであるのがさらに好ましい。タンパク質の内腔に内包されている化合物の粒子径は、1nm〜20nmであるのが好ましく、2nm〜15nmであるのがより好ましく、2nm〜7nmであるのがさらに好ましい。
<複合体ナノ粒子の製造方法>
次に、本発明の複合体ナノ粒子の製造方法について説明する。
本発明の複合体ナノ粒子の製造方法の一実施形態においては、(A)系中に、内腔を有するタンパク質、金属イオン、及び陰イオンを存在させて、金属イオンと陰イオンとが結合した化合物前駆体を該タンパク質の内腔中に生成する工程(以下、「(A)工程」という)と、(B)系中に、化合物前駆体を構成する金属イオンとは別の金属イオンをさらに存在させて、2種以上の金属イオンと陰イオンとが結合した化合物をタンパク質の内腔中に生成する工程(以下、「(B)工程」という)と、を含む。この実施形態は、(A)工程及び(B)工程の2工程を含み、少なくとも2段階の反応により、タンパク質の内腔中で、2種以上の金属イオンと陰イオンとを結合させた化合物を生成し、複合体ナノ粒子を製造する(第1の実施形態)。
(第1の実施形態)
(A)工程
(A)工程は、内腔を有するタンパク質、金属イオン、及び陰イオンを存在させて、金属イオンと陰イオンとが結合した化合物前駆体を該タンパク質の内腔中に生成する工程である。
(A)工程において、系中に存在させる、内腔を有するタンパク質は、上記<複合体ナノ粒子>における「内腔を有するタンパク質」と同様である。
(A)工程において、系中に存在させる金属イオン(「第1の金属イオン」ともいう)は、上記の内腔を有するタンパク質の内腔に内包される化合物を構成する元素のうち、金属元素を供給するイオンである。第1の金属イオンとしては、銅イオン、銀イオン及び金イオン等の第11族の金属イオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、インジウムイオン及びタリウムイオン等の第13族の金属イオンが挙げられる。これらのうち、銅イオン、インジウムイオン、ガリウムイオン及びアルミニウムイオンが好ましく、銅イオン及びインジウムイオンがより好ましい。
系中に第1の金属イオンを存在させるには、第1の金属イオンを供給する化合物を用いることができる。第1の金属イオンを供給する化合物としては、第1の金属イオンの塩(酢酸塩、硫酸塩、硝酸塩、及び塩酸塩等)が挙げられる。銅イオンを供給する化合物の具体例としては、酢酸銅、硫酸銅、及び塩化銅等が挙げられ、インジウムイオンを供給する化合物の具体例としては、例えば硫酸インジウム、及び塩化インジウム等が挙げられる。
(A)工程において、系中に存在させる陰イオンは、上述の内腔を有するタンパク質の内腔に内包される化合物を構成する元素のうち、金属元素以外の元素を供給するイオンである。陰イオンとしては、セレン化物イオン、硫化物イオン、テルル化物イオン、窒化物イオン、リン化物イオン、及びヒ化物イオン等が挙げられる。これらのうち、セレン化物イオン及び硫化物イオンが好ましい。
系中に陰イオンを存在させるには、陰イオンを供給する化合物を用いることができる。陰イオンを供給する化合物の具体例としては、セレノ尿素及びチオ酢酸等が挙げられる。
(A)工程において、系中には、内腔を有するタンパク質、第1の金属イオンを供給する化合物および陰イオンを供給する化合物以外に、緩衝剤、水等の溶媒、塩酸、酢酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のpH調整剤、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のキレート剤等を含ませることができる。第1の金属イオンを供給する化合物として硫酸インジウムや酢酸銅を用い、陰イオンを供給する化合物としてセレノ尿素及び/又はチオ酢酸を用いる場合には、緩衝剤として酢酸アンモニウム等を用いることができる。またこの場合に、反応液はアンモニア等を含んでいてもよい。さらに、この場合には、溶媒として水を用いることができ、pH調整剤として塩酸を用いることができる。
好適な一実施形態において、内腔を有するタンパク質としてアポフェリチンを用い、第1の金属イオンを供給する化合物として硫酸インジウムを用い、陰イオンを供給する化合物としてセレノ尿素を用い、これらの成分と、アンモニアと酢酸アンモニウムとを含む反応液を0.5〜20時間放置して、アポフェリチンの内腔に、化合物前駆体を生成する。この実施形態において、反応液のpHは、収率を高める観点から、3.7〜5.1であるのが好ましく、4.3〜4.7であるのがより好ましく、4.4〜4.5であるのがより好ましい。また、この実施形態においては、反応液中の総アンモニアの濃度は、収率を高める観点から、50mM〜200mMであるのが好ましく、60mM〜100mMであるのがより好ましく、85mM〜100mMであるのがさらに好ましい。さらにこの実施形態において、反応液の温度は、収率を高める観点から、4℃〜60℃であるのが好ましく、40℃以下であるのがより好ましい。
別の好適な一実施形態において、内腔を有するタンパク質としてアポフェリチンを用い、第1の金属イオンを供給する化合物として酢酸銅を用い、陰イオンを供給する化合物としてセレノ尿素を用い、これらの成分と、アンモニアと酢酸アンモニウムとを含む反応液を6〜12時間放置して、アポフェリチンの内腔に、化合物前駆体を生成する。この実施形態において、反応液のpHは、収率を高める観点から、3.5〜6.8であるのが好ましく、3.7〜5.1であるのがより好ましく、3.9〜5.1であるのがさらに好ましい。また、この実施形態においては、反応液中の総アンモニアの濃度は収率を高める観点から40mM〜90mMであるのが好ましく、50mM〜70mMであるのがより好ましい。さらにこの実施形態において、反応液の温度は、収率を高める観点から40℃以下であるのが好ましく、4℃〜40℃であるのがより好ましく、25℃〜40℃であるのがさらに好ましく、25℃〜35℃であるのがさらに好ましい。
上記とは別の好適な一実施形態において、内腔を有するタンパク質としてアポフェリチンを用い、第1の金属イオンを供給する化合物として硫酸インジウムを用い、陰イオンを供給する化合物としてチオ酢酸を用い、これらの成分と、アンモニアと酢酸アンモニウムとを含む反応液を0.5〜20時間放置して、アポフェリチンの内腔に、化合物前駆体を生成する。この実施形態において、反応液のpHは、収率を高める観点から、3.2〜5.1であるのが好ましく、3.5〜4.7であるのがより好ましく、3.7〜4.5であるのがより好ましい。また、この実施形態においては、反応液中の総アンモニアの濃度は、収率を高める観点から、50mM〜200mMであるのが好ましく、60mM〜150mMであるのがより好ましく、85mM〜150mMであるのがさらに好ましい。さらにこの実施形態において、反応液の温度は、収率を高める観点から、4℃〜60℃であるのが好ましく、40℃以下であるのがより好ましい。
反応液中の、内腔を有するタンパク質の量は、タンパク質の種類により適宜選択することができるが、例えばアポフェリチン及びDpsの場合だと、0.01g/L〜100g/Lであるのが好ましく、0.05g/L〜50g/Lであるのがより好ましく、0.1g/L〜10g/Lであるのがさらに好ましい。反応液中の第1の金属イオンを供給する化合物の量は、最終濃度で0.01mM〜100mMであるのが好ましく、0.05mM〜50mMであるのがより好ましく、0.1mM〜10mMであるのがさらに好ましい。また、反応液中の陰イオンを供給する化合物の量は最終濃度で0.01mM〜100mMであるのが好ましく、0.05mM〜50mMであるのがより好ましく、0.1mM〜10mMであるのがさらに好ましい。
(B)工程
(B)工程は、(A)工程を経た後の系中に、化合物前駆体を構成する金属イオン(第1の金属イオン)とは別の金属イオン(「第2の金属イオン」ともいう)をさらに存在させて、2種以上の金属イオンと陰イオンとが結合した化合物をタンパク質の内腔中に生成する工程である。
(B)工程において、系中に存在させる第2の金属イオンとしては第1の金属イオンと相違する金属のイオンであればよく、1種であっても2種以上であってもよい。第2の金属イオンは、内腔を有するタンパク質の内腔に内包される化合物を構成する元素のうち、金属元素を供給するイオンである。第2の金属イオンとしては、第1の金属イオンと同様の金属イオンを例示することができ、銅イオン、インジウムイオン、ガリウムイオン及びアルミニウムイオンが好ましく、銅イオン及びインジウムイオンがより好ましい。
(B)工程において、系中に第2の金属イオンを存在させるには、第2の金属イオンを供給する化合物を用いることができる。第2の金属イオンを供給する化合物としては、第1の金属イオンを供給する化合物と同様の化合物を例示することができる。
(B)工程においては、系中に、(A)工程において系中に存在させる陰イオンと同じ陰イオンを存在させてもよいし、別の陰イオンを存在させてもよい。(B)工程において、系中に存在させる陰イオンとしては(A)工程において系中に存在させる陰イオンと同様の金属イオンを例示することができ、セレン化物イオン及び硫化物イオンが好ましい。(B)工程において系中に存在させる陰イオンは一種であっても二種以上であってもよい。
(B)工程において、系中に陰イオンを供給する化合物としては、(A)工程において系中に陰イオンを供給する化合物と同様の化合物を例示することができる。(B)工程において、系中に存在させる陰イオンと、(A)工程において系中に存在させる陰イオンとが同じ場合、(B)工程において、陰イオンを供給する化合物を追加してもよいし、追加しなくてもよい。
(B)工程においても、系中に、内腔を有するタンパク質、第2の金属イオンを供給する化合物、陰イオンを供給する化合物以外に、緩衝剤、水等の溶媒、塩酸、酢酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のpH調整剤、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のキレート剤等を含ませることができる。第2の金属イオンを供給する化合物として硫酸インジウムや酢酸銅を用い、陰イオンを供給する化合物としてセレノ尿素を用いる場合には、緩衝剤として酢酸アンモニウム等を用いることができる。またこの場合に、反応液はアンモニア等を含んでいてもよい。さらに、この場合には、溶媒として水を用いることができ、pH調整剤として塩酸を用いることができる。
反応液中の第2の金属イオンを供給する化合物の量は、最終濃度で0.01mM〜100mMであるのが好ましく、0.05mM〜50mMであるのがより好ましく、0.1mM〜10mMであるのがさらに好ましい。また、反応液中の陰イオンを供給する化合物の量は最終濃度で100mM以下であるのが好ましく、50mM以下であるのがより好ましく、10mM以下であるのがさらに好ましい。(B)工程において陰イオンを供給する化合物は必須ではないが、陰イオンを供給する化合物を用いる場合、反応液中の陰イオンを供給する化合物の量は最終濃度で0.1mM以上、より好ましくは0.5mM以上であるのがより好ましい。
本発明の複合体ナノ粒子の製造方法において、内腔を有するタンパク質の内腔に内包させる化合物を構成する2種以上の金属イオンを系中に存在させる順序は限定されない。例えば、フェリチンの内腔にセレン化銅インジウムを内包させてなる複合体ナノ粒子を作製する場合、(A)工程において、系中に銅イオンを存在させ、(B)工程において、系中にインジウムイオンを存在させてもよいし、(A)工程において、系中にインジウムイオンを存在させ、(B)工程において、系中に銅イオンを存在させてもよい。
第1の実施形態により複合体ナノ粒子を作製する場合、収率を高める観点から、(B)工程において系の温度を25℃以上60℃以下となるように加熱するのが好ましく、25℃以上40℃以下となるように加熱するのがより好ましい。
内腔を有するタンパク質に内包される化合物が3種以上の金属を含む場合、(B)工程において、系中に2種以上の金属イオンを存在させることにより、(A)工程で生成した化合物前駆体に2種以上の金属イオンを結合させてもよいし、(B)工程を2回以上繰り返すことにより、(A)工程で生成した化合物前駆体に2種以上の金属イオンを結合させてもよい。
(第2の実施形態)
本発明の複合体ナノ粒子の製造方法の別の実施形態では、系中に、内腔を有するタンパク質、2種以上の金属イオン、及び陰イオンを存在させて、2種以上の金属イオンと陰イオンとが結合した化合物をタンパク質の内腔中に生成する。この実施形態においては、2種以上の金属イオンと陰イオンとを1段階の反応で結合させてタンパク質の内腔中に内包させる。
2種以上の金属イオンとしては、第1の実施形態において第1の金属イオンとして例示した金属イオンと同様のものを用いることができ、2種以上の金属イオンを供給する化合物としては第1の実施形態において第1の金属イオンを供給する化合物として例示した化合物のうちから2種以上を用いることができる。
第2の実施形態において、2種以上の金属イオンとしては、銅イオン及びインジウムイオンを用いるのが好ましく、これらの金属イオンを供給する化合物としては、酢酸銅および硫酸インジウムが好ましい。
陰イオンとしては、第1の実施形態において説明した陰イオンと同様のものを用いることができ、陰イオンを供給する化合物としては第1の実施形態において説明した陰イオンを供給する化合物と同様のものを用いることができる。陰イオンとしてはセレン化物イオン及び硫化物イオンが好ましく、陰イオンを供給する化合物としてはセレノ尿素及びチオ酢酸が好ましい。
第2の実施形態において、内腔を有するタンパク質、金属イオンを供給する化合物、及び陰イオンを供給する化合物以外に、緩衝剤、水等の溶媒、塩酸等のpH調整剤等を含ませることができる。金属イオンを供給する化合物として硫酸インジウム及び酢酸銅を用い、陰イオンを供給する化合物としてセレノ尿素及びチオ酢酸を用いる場合には、緩衝剤として酢酸アンモニウム等を用いることができる。またこの場合に、反応液はアンモニア等を含んでいてもよい。さらに、この場合には、溶媒として水を用いることができ、pH調整剤として塩酸を用いることができる。
第2の実施形態において、内腔を有するタンパク質、金属イオンを供給する化合物を二種以上、陰イオンを供給する化合物、緩衝剤、溶媒、pH調整剤等を含む反応液を0.5〜20時間放置することにより複合体ナノ粒子が得られる。
第2の実施形態において、反応液中の内腔を有するタンパク質の量は、タンパク質の種類により適宜選択することができるが、例えばアポフェリチンの場合だと、最終濃度で0.01g/L〜100g/Lであるのが好ましく、0.05g/L〜50g/Lであるのがより好ましく、0.1g/L〜10g/Lであるのがさらに好ましい。反応液中の金属イオンを供給する化合物の量は、最終濃度で0.01mM〜100mMであるのが好ましく、0.05mM〜50mMであるのがより好ましく、0.1mM〜10mMであるのがさらに好ましい。また、反応液中の陰イオンを供給する化合物の量は最終濃度で0.01mM〜100mMであるのが好ましく、0.05mM〜50mMであるのがより好ましく、0.1mM〜10mMであるのがさらに好ましい。
本発明の複合体ナノ粒子は、溶液分散性が高く、遺伝子工学的にタンパク質表面を自由に改変でき粒子表面の機能化が容易といった特徴を有しており、例えば、光触媒活性または電気特性等に優れたデバイスおよび材料等の開発に有用である。具体的には、複合体ナノ粒子は、光電変換素子(例、色素増感太陽電池等の太陽電池)、水素発生素子、半導体メモリ素子の作製における材料または構成要素として有用である。
本発明の複合体ナノ粒子および本発明の製造方法により得られる複合体ナノ粒子は、通常、複合体ナノ粒子及び水を含む組成物の状態で得られる。複合体ナノ粒子は分散性に優れるので、該複合体ナノ粒子と水とを含む本発明の組成物も、複合体ナノ粒子と同様の用途等に有用である。本発明の組成物には用途等を考慮して、水及び複合体ナノ粒子以外の成分を含有させることが可能である。本発明の組成物中の、複合体ナノ粒子の濃度は、組成物の用途によって適宜設定することが可能であるが、例えば、太陽電池素子の用途においては、0.01〜50質量%であるのが好ましく、0.05〜30質量%であるのがより好ましく、0.1〜10質量%であるのがさらに好ましい。
以下の実施例により、本発明を詳細に説明するが、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。
<合成例1:セレン化インジウム−フェリチン複合体の合成>
内腔を有するタンパク質としてフェリチンを用い、以下の方法により、セレン化インジウム−フェリチン複合体(セレン化インジウムを内包したフェリチン)を作製した。
終濃度が、硫酸インジウム1mM、セレノ尿素0.5mM、アポフェリチン(金属化合物粒子を内包していないフェリチン)0.3g/L、酢酸アンモニウム40mM、アンモニア50mMであるとともに、1MのHCl水溶液によりpH4.5となるように調製した反応液を、25℃で20時間放置した。その後、15,000rpm、5分間の遠心分離により、上清を回収することで得られたサンプルにつき、無染色のサンプルと、2.0%金チオグルコース液により負染色したサンプルを、それぞれ、透過型電子顕微鏡(TEM、JEOL日本電子(株)製「JEM−2200FS」)により解析したところ、粒子径が均一なナノ粒子を複数個、確認した(図1及び図2を参照)。さらに、得られたナノ粒子の組成を、電子顕微鏡(JEOL日本電子(株)製「JEM−3100FEF」)を用いた電子エネルギー損失分光法(EELS)と、エネルギー分散型X線分析(EDS)とにより分析した結果、いずれの分析方法によってもインジウムとセレンが検出され、セレン化インジウムを内包したフェリチンのナノ粒子(セレン化インジウム−フェリチン複合体のナノ粒子)が得られていることが確認された(図3及び図4を参照)。
<合成例2:セレン化インジウム−フェリチン複合体の合成条件の検討>
セレン化インジウム−フェリチン複合体の合成条件(反応液のpH、反応液に含まれるアンモニアの濃度及び反応温度)の検討を行った。
(反応液のpHの検討)
セレン化インジウム−フェリチン複合体の合成条件を最適化するために、種々のpHの反応液を作製し検討した。具体的には、終濃度が、硫酸インジウム1mM、セレノ尿素0.5mM、アポフェリチン0.3g/L、酢酸アンモニウム40mM、アンモニア34mMであるとともに、1MのHCl水溶液によりpHが3.4から6.2となるように調製した反応液を、それぞれ25℃で20時間放置した。その後、15,000rpm、5分間の遠心分離により、上清を回収することで得られたサンプルを2.0%の金チオグルコース液により負染色し、透過型電子顕微鏡(TEM、JEOL日本電子(株)製「JEM−2200FS」)を使用した解析するとともに、EELS及びEDSによる元素分析を行い、観察された全フェリチンのうち、セレン化インジウムを内包しているフェリチンの割合を計測しグラフに示した(図5を参照)。図5に示すグラフにおいて、横軸は反応液のpHを示し、縦軸は、全フェリチン中のセレン化インジウムを内包しているフェリチンの割合(以下、「セレン化インジウムを内包しているフェリチンの割合」ともいう)を示している。グラフの縦軸における、Nはセレン化インジウムを内包しているフェリチンの割合が0であることを示し、Lはセレン化インジウムを内包しているフェリチンの割合が0.4未満であることを示し、Mはセレン化インジウムを内包しているフェリチンの割合が0.4以上0.8未満であることを示し、Hはセレン化インジウムを内包しているフェリチンの割合が0.8以上であることを示す。
図5に示すように、反応液のpHを3.7から5.1としたものにおいて、セレン化インジウム−フェリチン複合体のナノ粒子の形成が確認された。特に、反応液のpHを4.3から4.7としたものでは、セレン化インジウムを内包しているフェリチンの割合が0.4以上、すなわち、全フェリチンのうち、40%以上のフェリチンの内腔にセレン化インジウム粒子が生成されるので、セレン化インジウム−フェリチン複合体のナノ粒子の形成において好ましいということがわかった。
(アンモニア濃度の検討)
種々のアンモニア濃度の反応液を作製し検討した。具体的には、終濃度が、硫酸インジウム1mM、セレノ尿素0.5mM、アポフェリチン0.3g/L、酢酸アンモニウム40mMであるとともに、アンモニアを終濃度が10mM〜160mMとなるように加え、1MのHCl水溶液によりpH4.4に調製した反応液をそれぞれ25℃で20時間放置した。その後、15,000rpm、5分間の遠心分離により、上清を回収することで得られたサンプルを2.0%の金チオグルコース液により負染色し、透過型電子顕微鏡(TEM、JEOL日本電子(株)製「JEM−2200FS」)を使用した解析するとともに、EELS及びEDSによる元素分析を行い、観察された全フェリチン中のセレン化インジウムを内包しているフェリチンの割合を計測しグラフに示した(図6を参照)。ここで、図6のグラフの横軸は、反応液中の総アンモニア濃度(緩衝剤として添加している酢酸アンモニウムと、アンモニアとの合計の濃度)を示し、縦軸はセレン化インジウムを内包しているフェリチンの割合を示している。図6に示すグラフの縦軸における、N、L、M、Hは、図5のグラフの縦軸におけるN、L、M、Hと同様である。
図6に示すように、総アンモニア濃度が50mM〜200mMの反応液において、セレン化インジウム−フェリチン複合体のナノ粒子の形成が確認された。特に、総アンモニア濃度が60mMから100mMのものでは、全フェリチンのうち、40%以上のフェリチンの内腔にセレン化インジウムが生成されるので、セレン化インジウム−フェリチン複合体のナノ粒子の形成において好ましいことがわかった。
(反応温度の検討)
反応液の温度条件を変えて反応温度の検討を行った。具体的には、終濃度が、硫酸インジウム1mM、セレノ尿素0.5mM、アポフェリチン0.3g/L、酢酸アンモニウム40mMであるとともに、アンモニアを終濃度が34mMとなるように加え、1MのHCl水溶液によりpH4.4に調製した反応液を4℃〜60℃の温度条件でそれぞれ20時間放置した。その後、15,000rpm、5分間の遠心分離により、上清を回収することで得られたサンプルを2.0%の金チオグルコース液により負染色し、透過型電子顕微鏡(TEM、JEOL日本電子(株)製「JEM−2200FS」)を使用した解析するとともに、EELS及びEDSによる元素分析を行い、観察された全フェリチン中の、インジウム化合物を内包しているフェリチンの割合を計測しグラフに示した(図7を参照)。ここで、図7に示すグラフにおいて、横軸は反応温度を示し、縦軸は全フェリチン中のインジウム化合物を内包しているフェリチンの割合を示している。グラフの縦軸における、Nはインジウム化合物を内包しているフェリチンの割合が0であることを示し、Lはインジウム化合物を内包しているフェリチンの割合が0.4未満であることを示し、Mはインジウム化合物を内包しているフェリチンの割合が0.4以上0.8未満であることを示し、Hはインジウム化合物を内包しているフェリチンの割合が0.8以上であることを示す。
図7に示すように、反応温度4℃〜60℃で、金属化合物を内包したフェリチンのナノ粒子の形成が確認されたが、元素分析により、反応温度を40℃以上としたものでは、フェリチンに内包されている粒子は酸化インジウムであることが確認された。なお、反応温度が35℃以下のものでは、フェリチンに内包されている粒子がセレン化インジウムであることが確認された。この結果より、セレン化インジウム−フェリチン複合体のナノ粒子の形成においては反応温度を40℃よりも低くすることが好ましいということがわかった。
なお、図7のグラフにおいては、フェリチンの内腔に形成されているインジウム化合物がセレン化インジウムであると確認されたもの(つまり、セレン化インジウム−フェリチン複合体のナノ粒子が形成されているもの)については、グラフを黒く塗りつぶし、フェリチンの内腔に形成されているインジウム化合物が酸化インジウムであると確認されたもの(つまり、酸化インジウムを内包したフェリチンのナノ粒子が形成されているもの)についてはグラフに斜線を施した。
<合成例3:セレン化銅−フェリチン複合体の合成>
内腔を有するタンパク質としてフェリチンを用い、以下の方法により、セレン化銅−フェリチン複合体(セレン化銅を内包したフェリチン)を作製した。
終濃度が、酢酸銅1mM、セレノ尿素1mM、アポフェリチン0.3g/L、酢酸アンモニウム40mM、アンモニア50mMであるとともに、1MのHCl水溶液によりpH4.7となるように調製した反応液を、25℃で20時間放置した。その後、15,000rpm、5分間の遠心分離により、上清を回収することで得られたサンプルにつき、無染色のサンプルと、2.0%金チオグルコース液により負染色したサンプルを、それぞれ、透過型電子顕微鏡(TEM、JEOL日本電子(株)製「JEM−2200FS」)により解析したところ、粒子径が均一なナノ粒子を複数個、確認した(図8及び図9を参照)。さらに、得られたナノ粒子の組成を、電子顕微鏡(JEOL日本電子(株)製「JEM−3100FEF」)を用いた電子エネルギー損失分光法(EELS)と、エネルギー分散型X線分析(EDS)とにより分析した結果、いずれの分析方法によっても銅とセレンが検出され、セレン化銅−フェリチン複合体のナノ粒子が得られていることが確認された(図10及び図11を参照)。
<合成例4:セレン化銅−フェリチン複合体の合成条件の検討>
セレン化銅−フェリチン複合体の合成条件(反応液のpH、反応液に含まれるアンモニアの濃度及び反応温度)の検討を行った。
(反応液のpHの検討)
セレン化銅−タンパク質複合体の合成条件を最適化するために、種々のpHの反応液を作製し検討した。具体的には、終濃度が、酢酸銅1mM、セレノ尿素1mM、アポフェリチン0.3g/L、酢酸アンモニウム40mM、アンモニア50mMであるとともに、1MのHCl水溶液によりpHが3.5から6.8となるように調製した反応液を、それぞれ25℃で20時間放置した。その後、15,000rpm、5分間の遠心分離により、上清を回収することで得られたサンプルを2.0%の金チオグルコース液により負染色し、透過型電子顕微鏡(TEM、JEOL日本電子(株)製「JEM−2200FS」)を使用した解析するとともに、EELS及びEDSによる元素分析を行い、観察された全フェリチン中の、セレン化銅を内包しているフェリチンの割合を計測しグラフに示した(図12を参照)。図12に示すグラフにおいて、横軸は反応液のpHを示し、縦軸は全フェリチン中のセレン化銅を内包しているフェリチンの割合(以下、「セレン化銅を内包しているフェリチンの割合」ともいう)を示している。具体的には、グラフの縦軸における、Nはセレン化銅を内包しているフェリチンの割合が0であることを示し、Lはセレン化銅を内包しているフェリチンの割合が0.4未満であることを示し、Mはセレン化銅を内包しているフェリチンの割合が0.4以上0.8未満であることを示し、Hはセレン化銅を内包しているフェリチンの割合が0.8以上であることを示す。
図12に示すように、反応液のpHを3.5から6.8としたものにおいて、セレン化銅−フェリチン複合体のナノ粒子の形成が確認された。特に、反応液のpHを4.4から5.1としたものでは、セレン化銅を内包しているフェリチンの割合が0.4以上、すなわち、全フェリチンのうち、40%以上のフェリチンの内腔にセレン化銅粒子が生成されるので、セレン化銅−フェリチン複合体のナノ粒子の形成において好ましいということがわかった。
(アンモニア濃度の検討)
種々のアンモニア濃度の反応液を作製し検討した。具体的には、終濃度が、酢酸銅1mM、セレノ尿素1mM、アポフェリチン0.3g/L、酢酸アンモニウム40mMであるとともに、アンモニアを終濃度が0mM〜50mMとなるように加え、1MのHCl水溶液によりpH4.4に調製した反応液をそれぞれ25℃で20時間放置した。その後、15,000rpm、5分間の遠心分離により、上清を回収することで得られたサンプルを2.0%の金チオグルコース液により負染色し、透過型電子顕微鏡(TEM、JEOL日本電子(株)製「JEM−2200FS」)を使用した解析するとともに、EELS及びEDSによる元素分析を行い、観察された全フェリチン中のセレン化銅を内包しているフェリチンの割合を計測し、グラフに示した(図13を参照)。ここで、図13に示すグラフにおいて、横軸は反応液中の総アンモニアの濃度(緩衝剤として添加している酢酸アンモニウムと、アンモニアとの合計)を示し、縦軸は全フェリチン中のセレン化銅を内包しているフェリチンの割合を示している。グラフの縦軸における、N、L、M、Hは図12のグラフの縦軸におけるN、L、M、Hと同様である。
図13に示すように、すべての反応液においてセレン化銅−フェリチン複合体のナノ粒子の形成が確認された。特に、総アンモニア濃度が40mMから90mMのものでは、全フェリチンのうち、40%以上のフェリチンの内腔にセレン化銅粒子が生成されるので、セレン化銅−フェリチン複合体のナノ粒子の形成において好ましいことがわかった。
(反応温度の検討)
反応液の温度条件を変えて反応温度の検討を行った。具体的には、終濃度が、酢酸銅1mM、セレノ尿素1mM、アポフェリチン0.3g/L、酢酸アンモニウム40mMであるとともに、アンモニアを終濃度が34mMとなるように加え、1MのHCl水溶液によりpH4.7に調製した反応液を4℃〜60℃の温度条件でそれぞれ20時間放置した。その後、15,000rpm、5分間の遠心分離により、上清を回収することで得られたサンプルを2.0%の金チオグルコース液により負染色し、透過型電子顕微鏡(TEM、JEOL日本電子(株)製「JEM−2200FS」)を使用した解析するとともに、EELS及びEDSによる元素分析を行い、観察された全フェリチン中のセレン化銅を内包しているフェリチンの割合を計測しグラフに示した(図14を参照)。ここで、図14に示すグラフにおいて、横軸は反応温度を示し、縦軸は全フェリチン中のセレン化銅を内包しているフェリチンの割合を示している。グラフの縦軸における、N、L、M、Hは図12のグラフの縦軸におけるN、L、M、Hと同様である。
図14に示すように、反応温度4℃〜40℃で、セレン化銅−フェリチン複合体のナノ粒子の形成が確認された。特に、反応温度が25℃と40℃のものでは、全フェリチンのうち、40%以上のフェリチンの内腔にセレン化銅粒子が生成されるので、セレン化銅−フェリチン複合体のナノ粒子の形成において好ましいことがわかった。
(実施例1−1:銅−インジウム−セレンを含む化合物を内包するタンパク質複合体ナノ粒子の作製)
インジウム化合物を内包したフェリチンを前駆体として、銅−インジウム−セレンを含む化合物を内包したフェリチンのナノ粒子を作製した。
終濃度が、硫酸インジウム1mM、セレノ尿素2mM、アポフェリチン0.3g/L、酢酸アンモニウム40mM、アンモニア34mMであるとともに、1MのHCl水溶液によりpH4.4となるように調製した反応液を、40℃で20時間放置した。その後、15,000rpm、5分間の遠心分離により、上清を回収することで、粒径が均一なフェリチンに内包されたインジウム化合物(インジウム化合物を内包したフェリチン)を含む水溶液を得た。
インジウム化合物を内包したフェリチンを含む水溶液をアミコンウルトラ(メルクミリポア社、50K)にて限外濾過処理し、インジウム化合物を内包したフェリチンが懸濁された溶媒を水に置換した。置換処理後のインジウム化合物を内包したフェリチンを含む溶液に、終濃度が、酢酸銅3mM、セレノ尿素1mM、酢酸アンモニウム40mM、アンモニア20mMであるとともに、1MのHCl水溶液によりpH4.5となるように各成分を添加してなる反応液を、25℃で20時間放置した。その後、15,000rpm、5分間の遠心分離により、上清を回収しサンプルを得た。
得られたサンプルを2.0%の金チオグルコース液により負染色し透過型電子顕微鏡(TEM、JEOL日本電子(株)製「JEM−2200FS」)により解析したところ、9割以上のフェリチンの内腔にナノ粒子が形成されていることを確認することができた(図15を参照)。さらに、フェリチンに内包されたナノ粒子の組成を、電子顕微鏡(JEOL日本電子(株)製「JEM−3100FEF」)を用いた電子エネルギー損失分光法(EELS)と、エネルギー分散型X線分析(EDS)とにより分析した結果、銅、インジウム、セレンを同時に含む粒子であることが確認された(図16および図17を参照)。またEELS分析により、フェリチンに内包されたナノ粒子は酸素を含有しない粒子であることが確認された(図16を参照)。この結果より、インジウム化合物を内包したフェリチンに、銅イオンとセレンイオンを添加することで、銅とインジウムとセレンとを含むナノ粒子を内包したフェリチンのナノ粒子が生成したことを確認することができた。
(実施例1−2〜1−5:銅−インジウム−セレンを含む化合物を内包するタンパク質の複合体ナノ粒子の作製)
インジウム化合物を内包したフェリチンを含む溶液に添加する酢酸銅、セレノ尿素、酢酸アンモニウム及びアンモニアの量を表1に記載の量とし、表1に記載の成分を含む反応液のpHを4.6とすること以外は、実施例1−1と同様にした場合にも、銅−インジウム−セレンを含む化合物を内包したフェリチンを得ることができた(実施例1−2〜1−5)。表1には実施例1−1のインジウム化合物を内包したフェリチンを含む溶液に添加する酢酸銅、セレノ尿素、酢酸アンモニウム及びアンモニアの量及びこれらを含む反応液のpHも併せて示した。
Figure 0006919243
(実施例2−1:銅−インジウム−セレン内包タンパク質複合体の合成)
銅化合物を内包したフェリチンを前駆体として、銅−インジウム−セレンを含む化合物を内包したフェリチンのナノ粒子を作製した。
終濃度が、酢酸銅1mM、セレノ尿素1mM、アポフェリチン0.3g/L、酢酸アンモニウム40mM、アンモニア20mMであるとともに、1MのHCl水溶液によりpH4.5となるように調製した反応液を、25℃で一晩放置した。その後、15,000rpm、5分間の遠心分離により、上清を回収することで、粒径が均一なフェリチンに内包された銅化合物(銅化合物を内包したフェリチン)を含む水溶液を得た。
銅化合物を内包したフェリチンを含む水溶液をアミコンウルトラ(メルクミリポア社、50K)にて限外濾過処理し、銅化合物を内包したフェリチンが懸濁された溶媒を水に置換した。置換処理後の銅化合物を内包したフェリチンを含む溶液に、終濃度が、硫酸インジウム1mM、セレノ尿素1mM、酢酸アンモニウム40mM、アンモニア34mMであるとともに、1MのHCl水溶液によりpH4.4となるように各成分を添加した反応液を、25℃で一晩放置した。その後、15,000rpm、5分間の遠心分離により、上清を回収しサンプルを得た。サンプルを実施例1−1と同様に分析した結果、銅とインジウムとセレンとを含むナノ粒子を内包したフェリチンのナノ粒子が生成したことを確認することができた(図18〜図20を参照)。
(実施例2−2〜2−4:銅−インジウム−セレンを含む化合物を内包するタンパク質の複合体ナノ粒子の作製)
銅化合物を内包したフェリチンを含む溶液に添加する硫酸インジウム、セレノ尿素、酢酸アンモニウム及びアンモニアの量を表2に記載の量とすること以外は、実施例2−1と同様にした場合にも、銅−インジウム−セレンを含む化合物を内包したフェリチンを得ることができた(実施例2−2〜2−4)。表2には実施例2−1の銅化合物を内包したフェリチンを含む溶液に添加する硫酸インジウム、セレノ尿素、酢酸アンモニウム及びアンモニアの量及びこれらを含む反応液のpHも併せて示した。
Figure 0006919243
(実施例3:銅−インジウム−セレン内包タンパク質複合体の物性分析)
(1)銅インジウムセレン内包タンパク質複合体の作製
終濃度が、酢酸銅1mM、セレノ尿素1mM、アポフェリチン0.3g/L、酢酸アンモニウム40mM、アンモニア20mMであるとともに、1MのHCl水溶液によりpH4.6となるように調製した反応液を、25℃で20時間放置した。その後、15,000rpm、5分間の遠心分離により、上清を回収することで、粒径が均一なフェリチンに内包された銅化合物(銅化合物を内包したフェリチン)を含む水溶液を得た。
銅化合物を内包したフェリチンを含む水溶液をアミコンウルトラ(メルクミリポア社、50K)にて限外濾過処理し、銅化合物を内包したフェリチンが懸濁された溶媒を水に置換した。置換処理後の銅化合物を内包したフェリチンを含む溶液に、終濃度が、硫酸インジウム1mM、セレノ尿素1mM、酢酸アンモニウム40mM、アンモニア34mMであるとともに、1MのHCl水溶液によりpH4.4となるように各成分を添加してなる反応液を、25℃で20時間放置した。その後、15,000rpm、5分間の遠心分離により、上清を回収し、銅−インジウム−セレンを含む化合物を内包したフェリチンが懸濁された溶媒を得た。
(2)XRD分析
アミコンウルトラ(メルクミリポア社、50K)にて限外濾過処理し、銅−インジウム−セレンを含む化合物を内包したフェリチンが懸濁された溶媒を水に置換した。置換処理後の銅−インジウム−セレンを含む化合物を内包したフェリチンを含む水溶液を室温で放置することで乾燥させ、X線回折装置((株)リガク製「RINT−TTR 3/NM」)を用いてX線回折(XRD)による結晶性の分析を行った。XRD測定は、光源としてCuKα線(Kα1とKα2とが2:1で混ざったもの)を用い、ステップ幅0.02度の条件で行った。その結果、αカルコパイライト型CuInSe結晶に特有の回折光を検出することができ、フェリチン内部に形成された粒子はαカルコパイライト型のCuInSeであること、つまり、CuInSeを内包したフェリチンが生成されていることが確認された(図21を参照)。
(3)分光スペクトルの測定
銅化合物を内包したフェリチンを前駆体として作製したCuInSeを内包したフェリチン((1)で作製したもの。以下サンプル1)及びインジウム化合物を内包したフェリチンを前駆体として作製したCuInSeを内包したフェリチン(実施例1−1。以下サンプル2)の分光スペクトルを、分光光度計(米国ベックマンコールター(株)製「DU−800」)を用いて測定した。その結果、サンプル1では900nm〜1000nmから光吸収をしており、そのバンドギャップエネルギーは1.2〜1.4eVと推測された(図22を参照)。一方、サンプル2ではより短い波長である600nm付近まで光吸収している様子が観察され、そのバンドギャップエネルギーは2.0eV前後であると推測された。これらはバルクであるCuInSeのバンドエネルギー(1.04eV)より大きかった。CuInSeの粒子径を4nmから5nm程度にナノ粒子化した場合、量子サイズ効果によりバンドギャップエネルギーは1.2〜1.4eVに増加することが期待できる。このことから、銅化合物を前駆体としてフェリチン内部に形成されたCuInSeの結晶粒のサイズは4nmから5nm程度である可能性が高いと考えられる。一方、CuInSeの粒子径を2nmから3nm程度にナノ粒子化した場合、量子サイズ効果によりバンドギャップエネルギーは1.6〜2.2eVに増加することが期待でき、インジウム化合物を前駆体としてフェリチン内部に形成されたCuInSeの結晶粒のサイズは2nmから3nm程度である可能性が高いと考えられる。
(4)蛍光スペクトルの測定
インジウム化合物を内包したフェリチンを前駆体として作製したCuInSeを内包したフェリチン(実施例1−1)とナノ粒子を内包していないフェリチン(アポフェリチン)の蛍光スペクトルを、蛍光分光光度計計((株)堀場製作所製「Nanolog−NR」)を用いて測定した。その結果、550nmの光で励起されたCuInSeを内包したフェリチンでは680nmをピークとした蛍光を発しており、そのバンドギャップエネルギーは1.8eVと推測された(図23を参照)。これはバルクであるCuInSeのバンドエネルギー(1.04eV)より大きかった。CuInSeの粒子径を2.4nmから2.5nm程度にナノ粒子化した場合、量子サイズ効果によりバンドギャップエネルギーは1.8eV前後に増加することが期待できる。このことから、フェリチン内部に形成されたCuInSeの微結晶のサイズは2.4nmから2.5nm程度である可能性が高いと考えられる。なお、図24はアポフェリチンの蛍光スペクトルである。
(5)粒度分布の測定
(1)で作製した銅−インジウム−セレンを含む化合物を内包したフェリチンが懸濁された溶媒を用いて、CuInSeを内包したフェリチンの粒度分布を測定した。10mMトリス緩衝液(pH8.0)中に、フェリチンタンパク質の濃度が1mg/mlとなるように懸濁した溶液サンプルについて、英国マルバーン製のゼータサイザーナノZSを用いて粒度分布を測定した。その結果、粒子径(直径)15nmを頂点としたピークの単一ピークが観察された(図25を参照)。すなわち、本発明のCuInSeを内包したフェリチンは、フェリチン由来の粒径均一性と溶液分散性を維持しており、優れた機能を有するナノ粒子であることが確認された。
(1)で作製した銅−インジウム−セレンを含む化合物を内包したフェリチンが懸濁された溶媒を用いて、CuInSeを内包したフェリチンの粒度分布を測定した。10mMトリス緩衝液(pH8.0)中に、フェリチンタンパク質の濃度が0.3mg/mlとなるように懸濁した溶液サンプルを無染色で透過型電子顕微鏡(TEM、JEOL日本電子(株)製「JEM−2200FS」)により解析し、画像処理ソフト(米国NIH製「Image−J」)を用いて粒径を測定した。粒径の計測はTEM画像中の646個の粒子について、以下のように行った。まずImage−J中でTEM像を8bitグレースケールに変更し、TEM画像中の20nmの長さバーと同じ長さに線を引き、その長さを画像中の単位長さとした。次にTEM画像の明るさとコントラストを調整し、画像を二値化した。その後、粒子が見えにくい部分を四角く囲み削除し、楕円近似にて画像中の粒子の長軸と短軸の長さを計測し、長軸と短軸の平均値を粒子の直径としてヒストグラム化した。その結果、フェリチンに内包されたCuInSeの粒径は6.0±0.9nmであることが分かった(図26を参照)。
(実施例4:銅−インジウム−セレン内包タンパク質複合体の作製)
終濃度が、硫酸インジウム1mM、酢酸銅1mM、セレノ尿素2mM、アポフェリチン0.3g/L、酢酸アンモニウム40mM、アンモニア34mM、pH4.4(1M HCl水溶液にて調製)となる反応液を25℃で17時間放置した。その後、15,000rpm、5分間の遠心分離により、上清を回収することで、サンプルを得た。
得られたサンプルを2.0%の金チオグルコース液により負染色し透過型電子顕微鏡(TEM、JEOL日本電子(株)製「JEM−2200FS」)により解析したところ、9割以上のフェリチンの内腔にナノ粒子が形成されていることを確認することができた(図27を参照)。さらに、フェリチンに内包されたナノ粒子の組成を、電子顕微鏡(JEOL日本電子(株)製「JEM−3100FEF」)を用いた電子エネルギー損失分光法(EELS)と、エネルギー分散型X線分析(EDS)とにより分析した結果、少なくともナノ粒子の一部は、銅、インジウム、セレンを同時に含む粒子であることが確認された(図28および図29を参照)。この結果より、フェリチンに、インジウムイオン、銅イオン及びセレンイオンを添加することで、銅とインジウムとセレンとを含むナノ粒子を内包したフェリチンのナノ粒子が生成したことを確認することができた。
(実施例5:硫化銅インジウムを内包するDpsタンパク質複合体の作製)
(1)硫化インジウム内包タンパク質複合体の作製
終濃度が、硫酸インジウム1mM、チオ酢酸2mM、Dps0.3g/L、酢酸アンモニウム40mM、アンモニア110mMであるとともに、1MのHCl水溶液によりpH3.8となるように調製した反応液を、25℃で20時間放置した。その後、15,000rpm、5分間の遠心分離により、上清を回収することで、粒径が均一なDpsに内包された硫化インジウム(硫化インジウムを内包したDps)を含む水溶液を得た。
上記反応液を遠心分離して上清を回収することで得られたサンプルにつき、2.0%金チオグルコース液により負染色し、透過型電子顕微鏡(TEM、JEOL日本電子(株)製「JEM−2200FS」)により解析した結果、粒子径が均一なナノ粒子を複数個、確認した(図30を参照)。さらに、得られたナノ粒子の組成を、電子顕微鏡(JEOL日本電子(株)製「JEM−3100FEF」)を用いたエネルギー分散型X線分析(EDS)により分析した結果、インジウムと硫黄が検出され、硫化インジウムを内包したDpsのナノ粒子(硫化インジウム−Dps複合体のナノ粒子)が得られていることが確認された(図31を参照)。
上記反応液に代えて、終濃度が、硫酸インジウム0.5〜1.5mM、チオ酢酸0.5〜2.0mM、Dps0.3g/L、酢酸アンモニウム40mM、アンモニア0〜110mMであるとともに、1MのHCl水溶液によりpH3.5〜4.5となるように調製した反応液を用いたものについても、同様に、硫化インジウムを内包したDpsのナノ粒子が得られることを確認した。
(2)硫化銅インジウム内包タンパク質複合体の作製
(1)で作製した硫化インジウムを内包したDpsを含む水溶液をアミコンウルトラ(メルクミリポア社、50K)にて限外濾過処理し、硫化インジウムを内包したDpsが懸濁された溶媒を水に置換した。置換処理後の硫化インジウムを内包したDpsを含む溶液に、終濃度が、酢酸銅1mM、チオ酢酸0.5mM、酢酸アンモニウム40mM、アンモニア30mMであるとともに、1MのHCl水溶液によりpH4.1となるように各成分を添加してなる反応液を、25℃で20時間放置した。その後、15,000rpm、5分間の遠心分離により、上清を回収することで、硫化銅インジウムを内包したDpsのナノ粒子(硫化銅インジウム−Dps複合体のナノ粒子)が得られた。
なお、上記反応液に代えて終濃度が、酢酸銅0.1〜10mM、チオ酢酸0.5〜1.0mM、酢酸アンモニウム40mM、アンモニア0〜50mMであるとともに、1MのHCl水溶液によりpH4.0〜5.0となるように各成分を添加してなる反応液を用いた場合も同様に、硫化銅インジウムを内包したDpsのナノ粒子(硫化銅インジウム−Dps複合体のナノ粒子)が得られた。
(実施例6:硫化銅インジウムを内包するDpsタンパク質複合体の作製)
(1)硫化インジウム内包タンパク質複合体の作製
終濃度が、硫酸インジウム1mM、チオ酢酸2mM、Dps0.3g/L、酢酸アンモニウム40mM、アンモニア110mMであるとともに、1MのHCl水溶液によりpH3.8となるように調製した反応液を、25℃で20時間放置した。その後、15,000rpm、5分間の遠心分離により、上清を回収することで、粒径が均一なDpsに内包された硫化インジウム(硫化インジウムを内包したDps)を含む水溶液を得た。
(2)硫化銅インジウム内包タンパク質複合体の作製
(1)で作製した硫化インジウムを内包したDpsを含む水溶液をアミコンウルトラ(メルクミリポア社、50K)にて限外濾過処理し、硫化インジウムを内包したDpsが懸濁された溶媒を水に置換した。置換処理後の硫化インジウムを内包したDpsを含む溶液に、終濃度が、酢酸銅1mM、酢酸アンモニウム40mM、アンモニア30mMであるとともに、1MのHCl水溶液によりpH4.1となるように各成分を添加してなる反応液を、25℃で10分間放置した。その後、15,000rpm、5分間の遠心分離により、上清を回収することで、硫化銅インジウムを内包したDpsのナノ粒子(硫化銅インジウム−Dps複合体のナノ粒子A)が得られた。
なお、上記反応液に代えて終濃度が、酢酸銅0.1〜10mM、酢酸アンモニウム40mM、アンモニア0〜50mMであるとともに、特にpHが調整されていない反応液を用いた場合も同様に、硫化銅インジウムを内包したDpsのナノ粒子(硫化銅インジウム−Dps複合体のナノ粒子)が得られた。当該反応液にさらにチオ酢酸を0.5〜1.0mM追加した場合でも、硫化銅インジウムを内包したDpsのナノ粒子(硫化銅インジウム−Dps複合体のナノ粒子)が得られたが、チオ酢酸を用いなかった場合よりも収率が低かった。
(3)硫化銅インジウムを内包するDpsタンパク質複合体のXRD分析
(2)で作製した硫化銅インジウム−Dps複合体のナノ粒子Aを、アミコンウルトラ(メルクミリポア社、50K)にて限外濾過処理し、硫化銅インジウムを含む化合物を内包したDpsが懸濁された溶媒を水に置換した。置換処理後の硫化銅インジウムを含む化合物を内包したDpsを含む水溶液0.1mlを室温で24時間から72時間放置することで乾燥させた。乾燥後の硫化銅インジウム−内包Dps複合体を、さらに、窒素中で30分間、400℃で加熱して得られたサンプルを、X線回折装置((株)リガク製「RINT−TTR 3/NM」)を用いて、X線回折(XRD)による結晶性の分析を行った。XRD測定は、光源としてCuKα線(Kα1とKα2とが2:1で混ざったもの)を用い、ステップ幅0.02度の条件で行った。得られた結果を図32に示した。図32には、400℃で加熱して得られたサンプルの分析結果とCuInSの標品の分析結果を並べて示した。
分析の結果、400℃で加熱されたサンプルではαカルコパイライト型CuInS結晶に特有の回折光を明確に検出することができ、Dps内部に形成された粒子は銅−インジウム−硫黄からなり、加熱によりαカルコパイライト型のCuInSに変換できることが確認された(図32を参照)。
(4)硫化銅インジウム内包タンパク質複合体のXPSによる組成分析
(2)で作製した硫化銅インジウム−Dps複合体のナノ粒子Aを含む水溶液をアミコンウルトラ(メルクミリポア社、50K)にて限外濾過処理し、硫化銅インジウムを内包したDps複合体が懸濁された溶媒を水に置換し、サンプル溶液を得た。115℃で1時間のUVオゾン処理により、基板表面に親水性のSiO膜を形成させた厚さ300μm、1cm角のp型低抵抗シリコン基板に、サンプル溶液を滴下し自然乾燥させた。サンプル溶液の滴下量が、硫化銅インジウム−Dps複合体のナノ粒子の外殻のDps量として50μg分となるように基板に滴下した。乾燥後、基板表面の構成元素をPHI 5000 VersaProbe II(アルバック・ファイ(株)製)を使ったX線光電子分光(XPS)で分析し、結果を図33及び図34に示した。
その結果、タンパク質由来の炭素(図33のC1s)および窒素(図33のN1s)由来のシグナルを各々検出することができた。また、硫化銅インジウム由来のCu(図34のCu2p3/2)とIn(図34のIn3d5/2とIn3d3/2)、S(図34のS2p3/2とS2p1/2)由来のシグナルを各々検出することができた。この結果より、本条件で得られたDps内部には、銅とインジウム、硫黄の各元素が含有されており、銅とインジウムと硫黄とを含むナノ粒子を内包したDpsのナノ粒子が得られたことを確認することができた。
(実施例7:硫化銅インジウムを内包するフェリチンタンパク質複合体の作製)
(1)硫化インジウム内包タンパク質複合体の作製
内腔を有するタンパク質としてフェリチンを用い、以下の方法により、硫化インジウム−フェリチン複合体(硫化インジウムを内包したフェリチン)を作製した。
終濃度が、硫酸インジウム1mM、チオ酢酸2mM、アポフェリチン0.3g/L、酢酸アンモニウム40mM、アンモニア110mMであるとともに、1MのHCl水溶液によりpH4.3となるように調製した反応液を、25℃で20時間放置した。その後、15,000rpm、5分間の遠心分離により、上清を回収することで得られたサンプルAを、2.0%金チオグルコース液により負染色して得られたサンプルを透過型電子顕微鏡(TEM、JEOL日本電子(株)製「JEM−2200FS」)により解析したところ、粒子径が均一な硫化インジウムナノ粒子を内包したフェリチンを複数個、確認した(図35を参照。代表例を白矢印で示す)。
(2)硫化銅インジウム内包タンパク質複合体の作製
硫化インジウムを内包したフェリチン(サンプルA)を含む水溶液をアミコンウルトラ(メルクミリポア社、50K)にて限外濾過処理し、硫化インジウムを内包したフェリチンが懸濁された溶媒を水に置換した。置換処理後の硫化インジウムを内包したフェリチンを含む溶液に、終濃度が、酢酸銅1mM、酢酸アンモニウム40mM、アンモニア30mMであるとともに、1MのHCl水溶液によりpH4.5となるように各成分を添加してなる反応液を、25℃で10分間放置した。その後、15,000rpm、5分間の遠心分離により、上清を回収しサンプルを得た。
得られたサンプルを2.0%の金チオグルコース液により負染色し透過型電子顕微鏡(TEM、JEOL日本電子(株)製「JEM−2200FS」)により解析したところ、9割以上のフェリチンの内腔にナノ粒子が形成されていることを確認することができた(図36を参照。代表例を白矢印で示す)。
(3)硫化銅インジウムを内包するDpsタンパク質複合体のXRD分析
(2)で得られたサンプルを、アミコンウルトラ(メルクミリポア社、50K)にて限外濾過処理し、硫化銅インジウムを含む化合物を内包したフェリチンが懸濁された溶媒を水に置換した。置換処理後の硫化銅インジウムを含む化合物を内包したフェリチンを含む水溶液を室温で放置することで乾燥させた。さらに、窒素中で30分間、400℃で加熱して得られたサンプルと、400℃で加熱する前のサンプルについてX線回折装置((株)リガク製「RINT−TTR 3/NM」)を用いてX線回折(XRD)による結晶性の分析を行った。XRD測定は、光源としてCuKα線(Kα1とKα2とが2:1で混ざったもの)を用い、ステップ幅0.02度の条件で行った。得られた結果を図37に示した。図37には、400℃で加熱して得られたサンプルの分析結果、400℃で加熱する前のサンプルの分析結果、及びCuInSの標品の分析結果を並べて示した。
その結果、400℃で加熱されたサンプルでは、αカルコパイライト型CuInS結晶に特有の回折光を明確に検出することができ、フェリチン内部に形成された粒子は銅−インジウム−硫黄からなり、加熱によりαカルコパイライト型のCuInSに変換できることが確認された(図37を参照)。

Claims (11)

  1. 複合体ナノ粒子の製造方法であって、
    前記複合体ナノ粒子が、内腔を有するタンパク質と、前記内腔に内包され、少なくとも3つの元素から構成される化合物と、を備え、
    前記化合物を構成する元素が、第11族及び第13族から選ばれる2以上の金属元素、並びに、第15族及び第16族から選ばれる1以上の元素を含み、
    前記製造方法が、
    (A)系中に、内腔を有するタンパク質、金属イオン、及び陰イオンを存在させて、金属イオンと陰イオンとが結合した化合物前駆体をタンパク質の内腔中に生成する工程と、
    (B)系中に、化合物前駆体を構成する金属イオンとは別の金属イオンをさらに存在させて、2種以上の金属イオンと陰イオンとが結合した化合物をタンパク質の内腔中に生成する工程と、を含む、複合体ナノ粒子の製造方法。
  2. 前記化合物を構成する元素が、銅、インジウム、ガリウム及びアルミニウムから選ばれる2つ以上の金属元素を含む、請求項に記載の複合体ナノ粒子の製造方法
  3. (A)工程の系中に存在させる金属イオンが銅イオンであり、
    (B)工程の系中に存在させる、化合物前駆体を構成する金属イオンとは別の金属イオンがインジウムイオンである、
    請求項1又は2に記載の複合体ナノ粒子の製造方法。
  4. (B)工程において、系を加熱する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合体ナノ粒子の製造方法。
  5. 複合体ナノ粒子の製造方法であって、
    前記複合体ナノ粒子が、内腔を有するタンパク質と、前記内腔に内包され、少なくとも3つの元素から構成される化合物と、を備え、
    前記化合物を構成する元素が、第11族及び第13族から選ばれる2以上の金属元素、並びに、第15族及び第16族から選ばれる1以上の元素を含み、
    前記製造方法が、系中に、内腔を有するタンパク質、2種以上の金属イオン、及び陰イオンを存在させて、2種以上の金属イオンと陰イオンとが結合した化合物をタンパク質の内腔中に生成する、複合体ナノ粒子の製造方法。
  6. 前記化合物を構成する元素が、銅、インジウム、ガリウム及びアルミニウムから選ばれる2つ以上の金属元素を含む、請求項に記載の複合体ナノ粒子の製造方法
  7. 前記化合物が化合物半導体である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の複合体ナノ粒子の製造方法
  8. 前記化合物を構成する元素が、セレン及び/又は硫黄を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の複合体ナノ粒子の製造方法
  9. 前記化合物がセレン化銅インジウムまたは硫化銅インジウムである、請求項1〜のいずれか一項に記載の複合体ナノ粒子の製造方法
  10. 前記複合体ナノ粒子の平均粒子径が5nm〜30nmである、請求項1〜のいずれか一項に記載の複合体ナノ粒子の製造方法
  11. 内腔を有するタンパク質が、内腔を有する24量体を形成し得るタンパク質又は内腔を有する12量体を形成し得るタンパク質である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の複合体ナノ粒子の製造方法
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