JP5332373B2 - 静電容量型振動センサ - Google Patents
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Description
図1に静電容量型振動センサの基本的構造を示す。振動センサ11は、中央部に空洞部12を有する基板13の上面に振動電極板14を配置し、振動電極板14の上方を固定電極板15で覆ったものである。固定電極板15には複数個の音響孔16(アコースティックホール)が上下に貫通している。また、空洞部12の周囲では、基板13の上面と振動電極板14の下面との間にベントホール17を設けてあり、ベントホール17によって振動電極板14及び固定電極板15間の空間(以下、エアギャップ18という。)と空洞部12とを連通させている。このような構造の振動センサ(コンデンサマイクロフォン)としては、特許文献1に開示されたものがある。
このような振動センサ11では、基板13の表面が振動電極板14の振動と干渉しないよう、基板13に空洞部12を設けている。空洞部12は、図1のように基板13を上下に貫通している場合もあれば、基板13の下面で塞がっていて凹部となっている場合もある。貫通した空洞部12の場合でも、振動センサ11を配線基板などに実装することによって貫通孔の下面が配線基板などで塞がれることが多い。そのため、この空洞部12はバックチャンバと呼ばれることがある。
上記のような振動センサにおいては、出力信号にノイズが含まれており、センサ出力のS/N比を低下させていた。本発明の発明者らは、振動センサのノイズの原因を追及した結果、振動センサに生じるノイズは、振動電極板と固定電極板との間のエアギャップにおける熱雑音(空気分子の揺らぎ)に起因することを発見した。すなわち、図2(a)に示すように、振動電極板14と固定電極板15との間のエアギャップ18、すなわち準密閉空間内にある空気分子αは揺らぎによって振動電極板14に衝突しており、振動電極板14には空気分子αとの衝突による微小力が加わるとともに振動電極板14に加わる微小力がランダムに変動している。そのため、振動電極板14は熱雑音によって微小振動し、振動センサに電気ノイズが発生している。特に、感度の高い振動センサ(マイクロフォン)では、このような熱雑音に起因するノイズが大きく、S/N比が悪くなる。
つぎに、振動センサの低周波特性について述べる。基板と振動電極板との間に設けたベントホールは、前述のように振動電極板の上面側と下面側とを連通させてその圧力差を小さくする働きをしている。しかし、ベントホールの隙間が大きい場合には、その近傍の音響孔からベントホールを通過して基板の空洞部に至る経路(図1に矢印線20で示す。)の音響抵抗が小さくなる。しかも、低周波振動は、高周波振動に較べてベントホールを通過しやすいので、音響孔を通過してエアギャップ内に伝搬してきた振動のうち低周波振動はベントホールを通って空洞部側へ漏れやすくなる。その結果、ベントホール近傍の音響孔を通った低周波の音響振動は、振動電極板を振動させることなく空洞部側へ漏れてしまい、振動センサの低周波特性を劣化させることになる。
1/fL=2π・Rv(Cbc+Csp) …(数式1)
ただし、Rv: ベントホールの音響抵抗(抵抗成分)
Cbc: 基板の空洞部の音響コンプライアンス
Csp: 振動電極板のスティフネス定数
である。
Rv=(8・μ・t・A2)/(Sv2) …(数式2)
ただし、μ: 空気の粘性係数
t: ベントホールの通気方向の長さ
A: ダイアフラムの面積
Sv: ベントホールの断面積
である。
以上の議論をまとめると、つぎのような結論となる。ベントホールにおける熱雑音によるノイズを低減させるためには、ベントホールの隙間を広くしたり、ベントホールの通気方向における長さを短くすればよい。一方、振動センサの低周波特性が悪くならないようにするためには、ベントホールの通気方向の長さtを長くするか、ベントホールの断面積Svを小さくすればよい。
本発明にかかる第2の静電容量型振動センサにあっては、基板の空気経路部に面する部位に、空気経路部の空気を振動電極板の厚み方向に逃がすための空気逃げ部を設けているので、空気経路部内の熱雑音ないし空気分子を空気逃げ部へ逃がすことができる。よって、本発明にかかる第2の静電容量型振動センサによれば、空気経路部における熱雑音によるノイズを低減させることができ、振動センサのS/N比を向上させることができる。しかも、空気逃げ部を空気経路部に設けているだけであるので、空気経路部自体の断面積を大きくする場合のように音響抵抗が低下しにくく、振動センサの低周波特性の低下を小さくすることができる。この結果、低ノイズで、かつ、良好な低周波特性を有する振動センサを得ることができる。
この空気逃げ部は、空気通路部内の熱雑音の原因である空気分子を逃がすことができればよいので、基板に設ける空気経路部は、孔のように個々に独立したものでもよく、溝のようにある方向に延びているものであってもよい。
以下、図3〜図7を参照して本発明の第1の実施形態を説明する。図3は実施形態1による静電容量型の振動センサ31を示す模式的な断面図である。図4は振動センサ31の分解斜視図である。また、図5は振動センサ31の平面図である。図6は振動センサ31の上面の固定電極板を除いた状態における平面図である。図7は本実施形態の作用効果を説明するための図であって、振動センサ31の断面の一部を表している。
図8は実施形態1の変形例による振動センサの一部を拡大して示す断面図である。この変形例においては、振動電極板34に垂直な方向から見たとき、音響孔43と空気逃げ部42とが重なり合わないように、空気逃げ部42を配置している。好ましくは、垂直方向から見たとき、音響孔43と空気逃げ部42が接することなく、ある程度の距離を保っていることが好ましい。
図9(a)は実施形態2による振動センサの一部を示す拡大断面図、図9(b)は空洞部37の周囲に位置するシリコン基板32の一部を示す平面図である。この実施形態においては、ベントホール45の設けられている位置において、基板42に空気逃げ部51、52を設けている。空気逃げ部51は、シリコン基板32を上下に貫通する貫通孔となっており、空気逃げ部51は有底の窪み(つまり、一方が塞がった孔)となっている。
図10は実施形態3による振動センサの一部を示す拡大断面図、図11は当該振動センサに用いられているシリコン基板32の平面図である。この実施形態では、ベントホール45内において、空洞部37の周囲を囲むようにして、シリコン基板32の上面に溝状をした空気逃げ部61を設けている。図示例では、2本の空気逃げ部61を設けているが、1本でもよく、音響抵抗があまり小さくならない限度であれば3本以上であってもよい。また、空気逃げ部61の溝は環状である必要はなく、各辺に沿ってそれぞれ直線状の溝を形成していてもよい。
32 シリコン基板
33 絶縁被膜
34 振動電極板
35 エアギャップ
36 固定電極板
37 空洞部
38 固定部
39 ダイアフラム
40 支持層
41 固定電極
42 空気逃げ部
43 音響孔
45 ベントホール
51、52、61 空気逃げ部
Claims (3)
- 空洞部を有する基板の上面側に、振動を受けて膜振動する振動電極板を前記空洞部に対向させて配置し、厚み方向に貫通した複数の音響孔が開口した固定電極板を前記振動電極板に対向させて配置し、
前記空洞部の周囲のうち少なくとも一部において、前記基板の上面と前記振動電極板の下面との間に、前記振動電極板及び前記固定電極板間の空間と前記空洞部とを連通させる空気経路部を設けた静電容量型振動センサであって、
前記振動電極板の前記空気経路部に面する部位に、当該空気経路部の空気を前記振動電極板の厚み方向に逃がすための空気逃げ部が形成され、
前記空気逃げ部は、前記音響孔の直径よりも小さな直径を有する貫通孔であることを特徴とする静電容量型振動センサ。 - 前記貫通孔は、前記振動電極板に垂直な方向から見て、前記音響孔と重なり合わない位置に配設されていることを特徴とする、請求項1に記載の静電容量型振動センサ。
- 空洞部を有する基板の上面側に、振動を受けて膜振動する振動電極板を前記空洞部に対向させて配置し、厚み方向に貫通した複数の音響孔が開口した固定電極板を前記振動電極板に対向させて配置し、
前記空洞部の周囲のうち少なくとも一部において、前記基板の上面と前記振動電極板の下面との間に、前記振動電極板及び前記固定電極板間の空間と前記空洞部とを連通させる空気経路部を設けた静電容量型振動センサであって、
前記基板の前記空気経路部に面する部位に、当該空気経路部の空気を前記振動電極板の厚み方向に逃がすための孔又は溝からなる空気逃げ部が形成されていることを特徴とする静電容量型振動センサ。
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