JP5331925B2 - 情報記録媒体用基板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、情報記録媒体用基板(ハードディスク用基板)の製造方法に関する。より詳しくは優れた平坦性及び平滑性が要求される情報記録媒体用基板の研磨をCeO以外の研磨砥粒を用い、高効率かつ高品質に研磨を行う方法に関する。
近年、パーソナルコンピュータや各種電子デバイスにおいては動画や音声等の大きなデータが扱われるようになり、大容量の情報記録装置が必要となっている。その結果、いわゆるハードディスクと呼ばれる情報磁気記録媒体に対して年々高記録密度化の要求が高まっており、モバイル用途への需要が拡大している背景から耐衝撃特性にも優れている必要がある。
これに対応すべく、次世代の磁気記録方式に使用されるガラス系材料からなるハードディスク用基板は機械的強度や表面の平滑性がより高いレベルで求められている。
一方で、ハードディスクの市場の一部がフラッシュメモリを使用した情報記録装置であるSSD(ソリッドステートドライブ)に置き換わりつつあり、SSDに対しての優位点である記憶容量当たりの単価を訴求する為に、より一層の製造コスト削減を求められている。
しかし、次世代のハードディスク用基板は機械的強度が高い故に加工効率(加工レート)が悪く、より高いレベルの表面平滑性を実現しようとすると、製造コストは増大してゆくこととなる。
すなわち、次世代のハードディスク用基板の製造においては、従来材料と比較して、加工効率が悪い材料を、より高いレベルの表面平滑性に優れた材料に仕上げるという、低コスト化とは相反する要求に対応しなければならない。
特開平9−314458号公報
特開平11−278865号公報
ところで、現在ガラスまたは結晶化ガラスからなる無機材料の研磨には、高い研磨効率と研磨後の高い平滑性が得られる為に、酸化セリウムからなる研磨砥粒が使用されている。これはガラスまたは結晶化ガラスからなる無機材料に対して、酸化セリウム砥粒による物理的化学的研磨効果が優れていることによる。
しかし近年、酸化セリウムは市場価格が従来のおおよそ8倍に高騰しており、製造コストへの影響が極めて大きくなっている。
このため、酸化セリウム砥粒を使用した研磨工程に代えて、新しい研磨工程が模索されているが、酸化セリウム砥粒と同等の効果が得られ、かつ低コストでこれを実現できる研磨工程は開発されていない。
特許文献1には、遊離砥粒として酸化セリウムを使用しない研磨方法が開示されているが、研磨後の表面粗さはRaで6Åまでしか達成できていない。
特許文献2には、砥粒として酸化ジルコニウム(ZrO)を用いることが開示されている。しかし酸化ジルコニウムを砥粒として用いる研磨によっては、近年の極めて高精度な基板の表面粗さを達成することは困難である。さらに酸化ジルコニウムは、従来の酸化セリウムの市場価格のおおよそ2倍であり、従来の酸化セリウムの市場価格と同等のコストを実現することは不可能である。
本発明の目的は、研磨液中の遊離砥粒として酸化セリウムの代替として、酸化セリウムと同等の研磨効果が得られる研磨工程によって、次世代のハードディスク用基板に求められる、機械的強度が高い材料を低コストで高精度の表面性状に加工する製造方法を提供することにある。
また、本発明のさらなる目的は、製造コストにおいても、従来の市場価格における酸化セリウムを使用した製造コストと同等か、それ以下の製造コストを実現する、情報記録媒体用基板の製造方法を提供することである。
本発明者らは、鋭意試験研究を重ねた結果、研磨砥粒として特定のものを選択し、これを使用した研磨液及びその他の研磨工程の条件を、被加工物に合わせ適宜選択及び調整することにより、上記の課題を解決するに至った。
本発明は、具体的には以下のような製造方法を提供する。
(構成8)
少なくともSiO成分を含む板状の無機材料を、研磨液及び研磨パッドを用いて研磨する研磨工程を含む情報記録媒体用基板の製造方法であって、
前記研磨液は、Zr及びSiを含む化合物からなる研磨砥粒を少なくとも含有し、
前記研磨液中の砥粒濃度が2wt%〜40wt%の範囲であることを特徴とする情報記録媒体用基板の製造方法。
(構成9)
前記研磨液中の砥粒の平均粒径d50が0.2μm〜2.0μmである構成1に記載の情報記録媒体用基板の製造方法。
(構成10)
前記無機材料は酸化物基準の質量%で、SiO成分40〜82%、Al成分2〜20%、R’O成分0〜20%(ただし、R’はLi、Na、Kから選ばれる1種以上)を含有することを特徴とする構成1または2に記載の情報記録媒体用基板の製造方法。
(構成11)
前記無機材料は結晶化ガラスである構成1から3のいずれかに記載の情報記録媒体用基板の製造方法。
(構成12)
前記無機材料はガラスである構成1から3のいずれかに記載の情報記録媒体用基板の製造方法。
(構成13)
前記研磨工程終了後の基板の表面粗さRaを6Å未満となるようにする構成1から5のいずれかに記載の情報記録媒体用基板の製造方法。
(構成14)
前記研磨工程終了後、さらに研磨工程を施し、最終の研磨工程後の基板の表面粗さRaを1.5Å未満となるようにする構成6に記載の情報記録媒体用基板の製造方法。
本発明によれば、酸化セリウムを使用せずとも、または極少量のみを用いた場合であっても、次世代のハードディスク基板用途として要求される機械的強度の高いガラスまたは結晶化ガラスからなる無機材料であっても高い研磨効率で研磨することができ、平滑性の高い表面性状が低コストで得られるので、ガラス基板、結晶化ガラス基板等の情報記録媒体用基板を低コストで製造することができる。
また、本発明の製造方法によって得られた基板の表面粗さRaは、初回の研磨工程後において、6Å未満の表面粗さとすることが可能であり、より好ましい実施態様においては4Å以下の表面粗さを得ることが可能である。
さらに、本発明の製造方法によって得られた基板の表面粗さRaは、最終の研磨工程後において、1.5Å未満の表面粗さとすることが可能であり、より好ましい実施態様においては1.0Å以下の表面粗さを得ることが可能である。
本発明の製造方法で得られたガラス基板(1P後)の表面性状を、原子間力顕微鏡を用い視野角1〜10μmで観察した画像である。 本発明の製造方法で得られたガラス基板(1P後)の表面性状を、原子間力顕微鏡を用い視野角1〜10μmで観察した画像である。 本発明の製造方法で得られたガラス基板(2P後)の表面性状を、原子間力顕微鏡を用い視野角1〜10μmで観察した画像である。 本発明の製造方法で得られたガラス基板(2P後)の表面性状を、原子間力顕微鏡を用い視野角1〜10μmで観察した画像である。
本発明において「情報記録媒体用基板」とは、ハードディスク用のガラス基板または結晶化ガラス基板を意味する。
また、本発明において、「無機材料」とはガラス、結晶化ガラスの両方を意味する。
結晶化ガラスとは、ガラスセラミックスとも呼ばれ、ガラスを加熱することでガラス内部に結晶を析出させてなる材料であり、非晶質固体とは区別される。ガラスを出発材料として製造したものであれば、100%が結晶となったものも結晶化ガラスとして良い。結晶化ガラスは、内部に分散している結晶により、ガラスでは得られない物性を備える事ができる。例えば、ヤング率、破壊靱性等の機械的強度、酸性やアルカリ性の薬液に対する被エッチング特性、熱膨張係数等の熱的特性等について、結晶化ガラスは、ガラスでは実現しえない特性を付与することができる。
同様に、結晶化ガラスは紛体を焼結してなるセラミックスとは異なる物性を備えることができる。結晶化ガラスはガラスを出発材料として、内部に結晶を析出させることにより製造される為、セラミックスと比較して、空孔が無く、緻密な組織を得ることができる。
ガラス、結晶化ガラス、セラミックスの違いは以上の通りであるが、本発明は、ガラス、結晶化ガラスの双方に効果があることが、実験により明らかになっている。
ガラスまたは結晶化ガラス等の無機材料からなる情報記録媒体用基板は、一般に以下の方法により製造される。すなわち、ガラス原料を溶融して溶融ガラスとし、この溶融ガラスを板状に成形する。板状に成形する方法としては、溶融ガラスを成形型でプレスして成形するダイレクトプレス法や、溶融金属上に浮かせて成形するフロート法、その他公知のフュージョン法、ダウンドロー法、リドロー法等を用いることができる。結晶化ガラスの場合は、この板状ガラスを熱処理することにより内部に結晶を析出させる。
次に板状の無機材料を、中心に円孔を有するディスク状に前加工し、板厚や平坦度を最終形状に近づける為の研削工程、平滑な表面性状を得る為の研磨工程を施した後、サブストレートと呼ばれるハードディスク用基板となる。
必要に応じ、化学強化法等により基板表面に圧縮応力層を生じさせ、基板の強度を高める工程を有していても良い。
前加工工程は、円板状の基板の中心に円孔をあけるコアリング工程と、外周部、内周部の径を所望の値に近づけつつ、面取りするチャンファー工程がある。
コアリング工程やチャンファー工程に使用する研削工具としては、ダイヤモンド粒子をメタルで結合したメタル電着仕様や、ダイヤモンド粒子をビトリファイドで結合したビトリファイド電着仕様を用いることができる。治具の粗さ、仕上げ番手の組み合わせとしては#270〜#1000までが好ましい。
前加工後、研削工程、研磨工程をこの順に行う。研削工程、研磨工程共に複数の段階に分けて行われ、段階を経るごとに砥粒を小さくし被加工物の表面粗さを平滑にしていく事が一般的である。
研削工程、研磨工程では、加工機械及びワーク(被加工物)のサイズごとに予め定められた枚数をまとめて一度に加工し、加工が終了したら引き続き次の所定枚数を加工する。このとき、所定枚数で定められた材料を加工するひとつの工程を「バッチ」と呼ぶ。
研削工程は上下の定盤間に板状ガラスを保持し、遊離砥粒を含む研磨液(研磨スラリー)を供給しながら定盤と板状ガラスとを回転させて相対移動することにより行う遊離砥粒法や、レジン、メタル、ビトリファイド等のボンドでダイヤモンド微粉をペレット状にし、このペレットを複数個配置した定盤によって研削液(クーラント)を供給しながら定盤と板状ガラスとを回転させて相対移動することにより行う固定砥粒法により行われることが従来においては一般的である。また、ダイヤモンドパッドによる研削を行っても良い。
ダイヤモンドパッドとはダイヤモンドシートとも呼ばれ、可とう性があるシート状の樹脂にダイヤモンド砥粒が固定されているものである。ダイヤモンドパッドの表面にはクーラントを研削面に供給し研削屑を排出する為の溝が設けられている。前記の溝は格子状、螺旋状、放射状、同心円状やこれらの組みあわせの形状に設けられている。
本発明の研削工程は複数の工程に分かれていても良いが、少なくとも1つの研削工程においては、好ましくは最終の研削工程においては、固定されているダイヤモンド砥粒の平均径が2μm〜5μmであるダイヤモンドパッドで研削することが好ましい。前記の様なダイヤモンドパッドを用いて研削する事により、加工レートを悪化させる事無く研削工程終了後の表面粗さRaの値を小さくする事が可能となり、研削工程、研磨工程を含めた加工時間を短時間とすることができる。上記の効果を得る為のより好ましいダイヤモンド砥粒の平均径は2μm〜4.5μmである。ダイヤモンドパッドに固定されるダイヤモンド砥粒は10wt%以下が好ましい。この時、最終のサブ工程より前のサブ工程ではダイヤモンドパッドの砥粒の平均径を6μm〜10μmの範囲とすることが好ましい。
また、従来行っていた第1段階の研磨工程(粗研磨工程)を省略する場合は、研削工程の最終工程においてダイヤモンド砥粒の平均径が0.1μm以上2μm未満のダイヤモンドパッドで研削することが好ましい。従来、研削工程の後の研磨工程は2段階以上に分けて、各段階ごとに砥粒の種類および平均粒径等を替えながら加工を行っていた。この時、粗研磨工程を省略することができれば製造工程の短縮化となり、大幅なコストダウンが可能となる。本発明においては研削工程の最終工程においてダイヤモンド砥粒の平均径が0.1μm以上2μm未満のダイヤモンドパッドで研削することにより、研削工程で要求される加工速度を維持しつつ、粗研磨工程で必要な表面の平滑性を得ることが出来る為、粗研磨工程を省略することが可能となる。例えば研磨工程は1段階のみでも情報記録媒体用基板として必要な表面性状を得ることが可能となる。より好ましくはダイヤモンド砥粒の平均径が0.2μm以上1.8μm以下である。この効果は特に結晶化ガラスからなる基板を加工する時に顕著である。これは結晶化ガラスのダイヤモンドパッドによる被研削性が、スクラッチを生じさせにくいという性質であることも要因の一つであると考えられる。この場合、必須ではないが、加工全体の効率を良好とするために研削工程における最終工程より前の工程ではダイヤモンド砥粒の平均径が2μm〜10μmであるダイヤモンドパッドで研削することが好ましい。
従って、研削工程で使用するダイヤモンドパッドとしては固定されているダイヤモンド砥粒の平均径が0.1μm〜5μmのものを使用することができる。
また、ダイヤモンドパッドに固定されているダイヤモンド砥粒の平均径はレーザー回折錯乱法で測定された体積基準のd50の値を用いることができる。通常は製造段階で管理されるダイヤモンド砥粒の粒径分布により把握されるが、ダイヤモンドパッドを薬液で溶解する等してダイヤモンド砥粒のみを取りだして測定することも可能である。
研磨工程は研削工程と同様に上下の定盤間に板状ガラスを保持し、定盤に研磨パッドを貼付け、遊離砥粒を含有する研磨液を供給しながら定盤と板状ガラスとを回転させて相対移動することにより行われる。
また、本発明の対象となる基板はガラス、結晶化ガラスにかかわらず、基板表面に圧縮応力層を設けることにより、機械的強度をより向上させる効果を得ることができる。
圧縮応力層の形成方法としては、例えば圧縮応力層形成前の基板の表面層に存在するアルカリ金属成分と、よりイオン半径の大きなアルカリ金属成分とで交換反応させることによる化学強化法がある。また、ガラス基板を加熱し、その後急冷する熱強化法、ガラス基板の表面層にイオンを注入するイオン注入法がある。
化学強化法としては、例えばカリウム又はナトリウムを含有する塩、例えば硝酸カリウム(KNO)、硝酸ナトリウム(NaNO)またはその複合塩の溶融塩を300〜600℃に加熱し、その溶融塩に基板を0.1〜12時間浸漬する。この工程により、基板表面付近に存在するリチウム成分(Liイオン)が、ナトリウム成分(Naイオン)もしくはカリウム成分(Kイオン)と交換され、または、基板表面に存在するナトリウム成分(Naイオン)がカリウム(Kイオン)成分と交換される。その結果、基板表面層中に圧縮応力が発生する。
以上はアルカリ金属成分の交換について述べたが、アルカリ土類金属成分の交換処理を行うことも可能である。
化学強化法による基板表面への圧縮応力層の形成は、基板表面の研磨後におこなって良い。しかし、溶融塩から基板をひきあげた後に、基板表面に溶融塩が結晶化して付着し、その後に洗浄を行っても完全に除去できない場合がある。そのため、化学強化法による圧縮応力層の形成工程後に少なくとも1回、研磨工程を行うことが好ましい。化学強化工程後の研磨工程によって、基板表面に付着した塩の結晶を除去することが容易となるからである。
上定盤と下定盤との間に研磨パッドを介してワークであるガラスまたは結晶化ガラスである板状の無機材料を保持し、研磨パッドとワークを相対移動させて研磨する為に使用できる研磨装置について説明する。
当該研磨装置は、例えば公知の遊星歯車方式の両面研磨装置を例示できる。
遊星歯車方式の両面研磨装置は下定盤、外歯を備えたサンギア、内歯を備えたインターナルギア及び上定盤を有しており、これらはそれぞれ回転軸を同一にして機台に回転可能に支持されている。上定盤はさらに昇降可能になっており、被研磨物(ワーク)に対して加圧することが可能となっている。
また、研磨加工時には上定盤と下定盤にそれぞれ研磨パッドが貼付けられる。
ワークは外歯を有する円形のキャリアの保持孔内に収められ、研磨パッドが貼付けられた上定盤と下定盤の間に保持される。
キャリアの外歯がサンギアとインターナルギアに噛合する事によって、キャリアは公転しながら自転し、さらに上下の定盤が回転する事によって、ワークと研磨パッドが相対移動し、ワークが研磨される。その他、研磨液の供給装置等の付属装置も公知のものが使用できる。
研磨液は、微細な研磨砥粒を液体中に分散させたものが用いられる。本発明は、研磨砥粒として、少なくとも、Zr及びSiを含む化合物からなる砥粒を用いなければならない。Zr及びSiを含む化合物からなる砥粒を用いることにより、研磨レート(研磨加工の能率)を高くすることができ、研磨後の表面粗さを特に平滑にすることが可能となり、表面発生するスクラッチを極限まで低減することが可能となる。
Zr及びSiを含む化合物としては、ジルコン(ZrSiO)、ZrSi等が挙げられ、その他、これらの化合物に他の元素が固溶したものでもよい。ジルコンは市場価格が従来の酸化セリウムのおおよそ半額であり、これを砥粒として用いることにより、酸化セリウムの市場価格が高騰する以前の製造コストよりもさらにコストを低減することが可能となる。
また、Zr及びSiを含む化合物からなる砥粒のほか、その他の研磨砥粒を研磨液に混合することも可能である。従って、Zr及びSiを含む化合物からなる砥粒の含有量は、研磨液中の全砥粒重量に対し、70wt%以上であることが好ましく、80wt%以上であることがより好ましく、90wt%以上であることが最も好ましい。その他研磨砥粒には、スピネル(RAl、ただしRはZn、Mg、Feから選択される1種類以上)、又は酸化ケイ素(SiO)などが好ましく挙げられる。その他の研磨砥粒は、Zr及びSiを含む化合物からなる砥粒の効果を損なわない範囲で混合することが好ましく、ジルコン(ZrSiO)のみを用いることが最も好ましい。
酸化セリウム砥粒は含まないか、上記の砥粒と共に含む場合はごく少量であり、その量は研磨液中の全砥粒重量に対し、20%以下であり、10%以下がより好ましく、3%以下が最も好ましい。
なお、Zrを含む化合物として酸化ジルコニウム(ZrO)があるが、酸化ジルコニウムを用いると、基板表面にスクラッチが多数発生し、近年の極めて高精度な基板の表面粗さを達成することは困難であるために、酸化ジルコニウムは研磨液中の全砥粒重量に対し7%以下に制限され、3%以下がより好ましく、砥粒として使用しないことが最も好ましい。
また、酸化アルミニウム(Al)、酸化マンガン(MnO、MnO、Mn、Mn、Mn等)、水酸化アルミニウム、およびベーマイト(AlOOH)は、平滑な表面が得られないか、加工レートが低い為、その含有量は、研磨液中の全砥粒重量に対し7%以下に制限され、3%以下がより好ましく、使用しないことが最も好ましい。
上記研磨砥粒は、最終の研磨工程以外の研磨工程で使用する事が好ましく、1段目の研磨工程で使用することが最も好ましい。
最終の研磨工程では、コロイダルシリカを用いることが好ましい。
一般的に、粒度が大きい砥粒で1段目の研磨を行い、より粒度の小さい砥粒で2段目の研磨を最終の研磨工程として行うことが多く行われているが、本発明の基板の製造方法においては、2段の研磨加工のみならず、適当な研磨砥粒を選択し、研磨加工を1段のみとしてもよいし、3段以上とすることも可能である。
なお、複数の段階の研磨工程のうち、Zr及びSiを含む化合物からなる研磨砥粒を少なくとも含有する研磨液を使用した研磨工程が、少なくとも1つ含まれていれば、他の工程は特に限定されない。
研磨液中の研磨砥粒の濃度は2wt%以上であると加工レートがより高くなり研磨加工が進むので2wt%以上が好ましく、10wt%以上がより好ましく、15wt%以上が最も好ましい。また、40wt%以下であると研磨液の流動性が高くなり、研磨液のコストもより低くなる為、40wt%以下が好ましく、29wt%以下がより好ましく、27wt%以下が最も好ましい。
タンクに貯留された研磨液中の研磨砥粒の濃度を、上記の範囲となるように管理することが好ましい。研磨液の濃度は所定量のスラリーの重量を測定し、砥粒と溶媒の比重から求めることができる。
研磨液のpHは研磨する材料の組成や種類に応じて適宜調整をすることが可能である。pHの調整は、公知のpH調整剤を用いることができる。
例えばスピネル系結晶を主結晶とする結晶化ガラスの場合、研磨液のpHが5.0以上であると、基板の表面の荒れがより低減し、より平滑な表面が得られるため、5.0以上が好ましく、7.0以上がより好ましく、8.5以上がさらに好ましく、9.0以上が最も好ましい。また、12.0以下であると研磨加工中の化学的研磨作用が適度に作用し、ガラス基板の表面が荒れがより低減され、より平滑な表面が得られる為12.0以下が好ましく、11.5以下がより好ましく、11.0以下が最も好ましい。
研磨液中の砥粒の分散状態は、研磨液のpHに応じて変化するので、分散状態の調整は公知の分散調整剤により調整することが可能である。
研磨砥粒の平均粒径d50が0.2μm以上であると、研磨加工中の機械的研磨作用が十分に得られ、高い加工レートが得られるため、0.2μm以上が好ましく、0.3μm以上が好ましく、0.4μm以上が最も好ましい。
また、研磨砥粒の平均粒径d50が3.0μm以下であるとガラス基板表面にマイクロスクラッチの発生がより低減し、より平滑な表面が得られるため3.0μm以下が好ましく、2.8μm以下がより好ましく、2.6μm以下が最も好ましい。
研磨液の温度は、冷温却チラーユニットや、冷却チラー定盤等の温度制御手段によって調整してもよい。
研磨パッドは発泡硬質樹脂からなるいわゆる硬質パッド、またはスエードタイプのいわゆる軟質パッドを使用することが高い加工レートを得ることができるので好ましい。スエードタイプの研磨パッドとは、基材層と、多数の気泡を有しスエード調の外観を呈するナップ層とからなるものをいう。ナップ層は被研磨物側に位置する表面層である。基材層の材質はポリエステル系樹脂やポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が使用でき、例えばポリエチレンエチレンテレフタレートが好ましい。基材層の形状は前記の材料からなるフィルムや不織布を使用できる。
ナップ層の材質はポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル、ポリカーボネート等を使用でき、これらの樹脂に異種の材料を添加させたものでも良い。
硬質パッドとしては砥粒含有ウレタンパッドが例示される。本発明においては研磨パッドの少なくとも表面層またはナップ層にベーマイト、酸化アルミニウム、酸化マンガン、酸化亜鉛、スピネル系化合物、カーボンブラック、酸化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、酸化ジルコニウムから選ばれる一種以上の微粒子が分散して含まれていても良い。これにより、研磨レートをより向上させることや研磨後の表面性状をより良好にすることができる。ナップ層の樹脂にカーボンブラックを添加した軟質パッドが、本発明の目的とする被研磨材料に対して研磨後のスクラッチを効果的に低減できる点で好ましい。
研磨パッドの硬度(アスカーC)、研磨パッドの開口径範囲は、被研磨材料に応じておうじて適宜選択すれば良い。また、スエードタイプの研磨パッドを用いる場合、そのナップ長についても被研磨材料に応じて適宜選択すれば良い。
硬質パッドの平面度は5点スパンゲージで測定した時のX・Y方向の値がそれぞれ−25μm〜+25μmの範囲であることが好ましい。この範囲とすることで平坦なガラス基板を得やすくなる。より好ましくは−15μm〜+15μmの範囲である。
研磨工程の加工圧力は50g/cm〜160g/cmが好ましく、90g/cm〜150g/cmがより好ましい。回転速度は10〜50rpmが好ましい。回転比率は下定盤が10〜40rpm、上定盤が5〜30rpm、公転は無くとも良いが、公転させる場合1〜15rpmが好ましい。
2段目の研磨工程以降は仕上げ研磨であるので、コロイダルシリカ等の研磨力の小さい砥粒を用いる為に、2段目の研磨直前にはある程度の表面粗さに加工をしておく必要がある。次世代のハードディスク基板を得るためには、かつ、加工コスト低減のためには少なくとも1段目の研磨工程後には基板の表面粗さをRa1Å以上6Å未満とすることが好ましい。これに鑑みると1段目の加工後に前記の表面粗さとするためには、研削後、1段目の研磨工程前の表面粗さをRa0.05〜0.40μmとし、1段目の研磨工程の加工時間を、5分〜120分に設定することが好ましい。120分未満では所望の表面粗さにならず、120分を超えると平面性悪化となりやすく、加工コストも悪化する。より好ましくは5分〜60分であり、最も好ましくは5分〜45分である。
上述した条件は1段目の研磨加工において特に顕著な効果を得ることができる。
各研磨工程や化学強化工程の後には、基板を洗浄することが好ましい。洗浄はRO水、酸、アルカリ、IPA等を用い、超音波洗浄装置等を使用して洗浄する。
本発明が目的とする被加工材料は、少なくともSiO成分を含むガラスまたは結晶化ガラスからなる無機材料である。この材料は次世代のハードディスク基板の要求に合致する、機械的硬度の高い材料である。
無機材料が結晶化ガラスの場合、主結晶相がスピネル系結晶(RAl:RはZn、Mg、Feから選択される1種類以上)、RTiO、二珪酸リチウム、エンスタタイト(MgSiO)、β−石英、α−クリストバライト及びそれらの固溶体から選ばれる1種以上の結晶を含む結晶化ガラスを使用することができる。
無機材料がガラスの場合、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ソーダアルミノ珪酸ガラス、アルミノボロシリケートガラス、ボロシリケートガラス、石英ガラス等を使用することができる。
より好ましくは、本発明が目的とする被加工材料は、酸化物基準の質量%で、SiO成分40〜82%、Al成分2〜20%、R’O成分0〜20%(ただし、R’はLi、Na、Kから選ばれる1種以上)を含有するガラスまたは結晶化ガラスからなる無機材料である。
さらに好ましくは、酸化物基準の質量%で、SiO成分40〜82%、Al成分2〜20%、R’O成分0〜20%(ただし、R’はLi、Na、Kから選ばれる1種以上)、P成分0〜7%、ZrO成分0〜10%、B成分0〜15%、BaO成分0〜15%、SrO成分0〜15%、ZnO成分0〜35%、MgO成分0〜35%、FeO成分0〜35%を含有するガラスまたは結晶化ガラス無機材料である。
なお、その他の成分も適宜含むことが可能である。
そしてその中でも特に、酸化物基準の質量%で、SiO成分40〜60%、Al成分7〜20%、RO成分1〜35%(ただしRはZn、Mg、Feから選択される1種類以上)、TiO成分1〜15%、R’O成分2〜15%、(ただしR’はLi、Na、Kから選ばれる1種以上)、P成分0〜7%、B成分0%以上8%未満、CaO成分0〜15%、SrO成分0〜5%、BaO成分0〜5%、ZrO成分0〜10%、SnO+CeO:0.01〜1.0%の各成分を含んだガラスを熱処理し、主結晶相としてRAl、RTiO、(ただしRはZn、Mg、Feから選択される1種類以上)から選ばれる一種以上の結晶相を含有する結晶化ガラスは、機械的強度が特に高いため、これに対し本発明の製造方法を用いる意義が大きい。
また、酸化物基準の質量%で、SiO成分40〜82%、Al成分2〜20%、R’O成分0〜20%(ただし、R’はLi、Na、Kから選ばれる1種以上)、P成分0〜7%、ZrO成分0〜10%、B成分0〜15%、BaO成分0〜15%、SrO成分0〜15%、ZnO成分0〜35%、MgO成分0〜35%、FeO成分0〜35%を含有するガラスについても、本発明の製造方法の効果を得ることが可能である。
なお、近年は環境への配慮の為に、ガラス溶融の際の清澄剤として、As成分やSb成分を使用せず、CeO成分やSnO成分が用いることが好ましい。ただし、As成分やSb成分を清澄剤として用いても良い。
本発明に適用する被加工材料の形状は上述したダイレクトプレス法、フロート法、フュージョン法、ダウンドロー法、リドロー法などにより板状に成形されたものを用いることができ、ハードディスク基板に用いる為には、ディスク状または中心に円孔があるディスク状がより好ましい。
[板状のガラス系材料を準備する工程]
酸化物基準の質量%で表1の組成となるように酸化物、炭酸塩のバッチ原料を混合し、これを石英製の坩堝を用いて約1250〜1450℃の温度で溶解した。
溶解工程では、原料となるバッチを溶け残りが発生しないよう充分溶解した後、約1,350〜1,500℃の温度に昇温後、1,450〜1,250℃の温度まで降温し、ガラス内部に発生していた泡の消泡、清澄化を行った。
その後、温度を維持したまま所定量の溶融ガラスを流出し、上型の温度を300±100℃、下型の温度を当該ガラスのTg±50℃に設定した成形型を用い、ダイレクトプレス方式により、直径約67mm、厚さ0.95mmのディスク状に成形した。
次にディスク状のセラミックス製セッターと得られたガラスディスクを交互に積み重ね、核形成温度670℃で3時間保持し、その後結晶成長温度750℃で5時間保持する事により結晶を析出させた。
得られた結晶化ガラスの結晶相はスピネル系化合物(RAl、ただしRはZn、Mg、Feから選択される1種類以上)であり、結晶化度は6質量%以下であった。また、結晶相の平均結晶粒径は6nm以下であり、ヤング率は91〜98GPa、比重は2.56〜2.72、ビッカース硬度Hvは660〜730、平均線膨張係数は50×10−7/℃〜58×10−7/℃、破壊靭性は1.3〜1.9であった。
同様に酸化物基準の質量%で表2の組成となるように酸化物、炭酸塩のバッチ原料を混合し、これを石英製の坩堝を用いて約1250〜1450℃の温度で溶解した。
溶解工程では、原料となるバッチを溶け残りが発生しないよう充分溶解した後、約1,350〜1,500℃の温度に昇温後、1,450〜1,250℃の温度まで降温し、ガラス内部に発生していた泡の消泡、清澄化を行った。
その後、温度を維持したまま所定量の溶融ガラスを流出し、上型の温度を300±100℃、下型の温度を当該ガラスのTg±50℃に設定した成形型を用い、ダイレクトプレス方式により、直径約67mm、厚さ0.95mmのディスク状に成形した。
次にディスク状のセラミックス製セッターと得られたガラスディスクを交互に積み重ね、表2に記載の条件で熱処理し、結晶を析出させた。
得られた結晶化ガラスの結晶相は材料5はβ石英固溶体であり、材料6は二珪酸リチウムであり、材料7はエンスタタイトであり、結晶化度はそれぞれ70質量%、45質量%、45質量%であった。また、結晶相の平均結晶粒径はそれぞれ30nm、100nm、40nm、であり、ヤング率は90GPa、98GPa、150GPa、比重は2.54、2.47、2.95、ビッカース硬度Hvは570、740、850、平均線膨張係数は2×10−7/℃、85×10−7/℃、75×10−7/℃であった。
平均線膨張係数はJOGIS(日本光学硝子工業会規格)16−2003「光学ガラスの常温付近の平均線膨張係数の測定方法」に則り、温度範囲を25℃から100℃に換えて測定した値である。
比重はアルキメデス法、ヤング率は超音波法を用いて測定した。
ビッカース硬度は対面角が136°のダイヤモンド四角すい圧子を用いて、試験面にピラミッド形状のくぼみをつけたときの荷重(N)を、くぼみの長さから算出した表面積(mm)で割った値で示した。(株)明石製作所製微小硬度計MVK−Eを用い、試験荷重は4.90(N)、保持時間15(秒)で行った。
結晶化度はリートベルト法を用い粉末XRDから得られた回折強度より算出した結晶の量(質量%)から求めた。リートベルト法については、日本結晶学会「結晶解析ハンドブック」編集委員会編、「結晶解析ハンドブック」、共立出版株式会社、1999年9月、p.492−499に記載されている方法を用いた。
結晶相の平均結晶粒径はTEM(透過型電子顕微鏡)により倍率100,000〜500,000倍での任意の部位の画像を取得し、得られた画像に現われた結晶を平行な2直線で挟んだ時の最長距離の平均値とした。このときのn数は100とした。
破壊靭性(K1C)はSEPB法(JIS R1607)によって得られた値を用いた。
次にガラス(アモルファスガラス)を作製した。ガラスの組成は、酸化物基準の質量%で表3および表4に記載の通りであり、結晶化のための熱処理を施さないこと以外は材料1〜7と同様に製造し、ディスク状に成形した。
[前加工工程]
次にこれらのディスク状材料をコアドリルで中央部分へΦ18.7mmの孔を空け、その後コアツールで被加工物の内外周部端面を研削し、面取形状加工を施した。
研削工具としては、ダイヤモンド粒子をメタルで結合したメタル電着仕様や、ダイヤモンド粒子をビトリファイドで結合したビトリファイド電着仕様を用いても良い。
治具の粗さ、仕上げ番手の組み合わせとしては#270〜#1000までが好ましい。
[研削工程]
1)1段目の工程
浜井産業社製または、スピードファム社製の12B〜16B両面加工機、#1000のダイヤモンドシートを使用し研削加工をした。
当該1段目の研削を省略し、研削工程をダイヤモンドシートを使用した研削工程のみとする場合もある。
2)2段目のサブ工程(最終のサブ工程または唯一の研削工程)
浜井産業社製または、スピードファム社製の12B〜16B両面加工機、ダイヤモンド粒子をシート状の樹脂に分散させたダイヤモンドシートを使用し、研削加工をした。
[内外周研磨工程]
研削工程の後、内外周の端面の表面を平滑に研磨した。加工後のディスクの直径は65.0mmである。
[1段目の研磨工程(1P)]
1)1段目の工程(1P)
表面粗さRaで5.0〜6.0Å未満とすることを目的として、浜井産業株式会社製の16B両面加工機、研磨パッドを使用し、上下の定盤に研磨パッドを貼付け、上記前加工、研削工程、内外周研磨工程を施した結晶化ガラス板を樹脂製のキャリアと共に上下の定盤間(研磨パッドの間)に保持し、遊離砥粒を含む研磨スラリーを再生循環供給しながら1段目の研磨加工を連続3〜5バッチ行い、条件を変えながら研磨効率(加工レート)の測定を行った。
研磨パッドは硬質発泡ウレタン(硬度(アスカーC)90または100:浜井産業社製HPC90D2)、ナップ層にカーボンブラックを含有した軟質パッド(硬度(アスカーC)81:FILWEL社製、硬度(アスカーC)86:浜井産業製)を使用した。
研磨パッドは、使用する前に、#400、#600、#800のドレッサーでドレス処理を施した。
研磨スラリーは、遊離砥粒として平均粒子径(d50)が0.2〜2.0μmのジルコン等を水に分散し、希釈濃度を種々変化させ使用した。必要に応じ研磨スラリーのpH調整の為にNaOH水溶液を添加した。
研磨スラリーのタンク内は第1バッチ開始時において上記研磨スラリー38リットルを貯留し、当該研磨スラリーの濃度を30wt%、pHを種々変化させ研磨した。研磨スラリーの循環供給経路内には100μmのフィルターを設けた。
加工開始から回転数、加工圧力ともに段階的に上昇させ、最大回転数、最大加工圧力で一定時間保持し、その後回転数、加工圧力ともに下降させる。
尚、1バッチの加工枚数はディスク110枚である。測定はこの中から2枚を任意に抜だし、内外周別に測定した。1バッチ終了後に研削工程終了後の新たなディスクを用意し、次バッチの加工を行った。一つの実施例または比較例の開始前には未使用の研磨スラリーに交換して加工を行った。
比較例結果を表5、表6、表7に、実施例の結果を表8〜表13に記載する。表中、そのバッチの加工前に作業を行った場合には、加工前作業の欄にその作業を記載した。Aは研磨パッドドレス処理を意味し、Bは研磨スラリーのpHの調整(NaOH水溶液等の添加)を意味する。また、表中の本加工時間とは最大加工圧力での加工時間である。基板品質の評価はDub−Off値70Å以下、かつ、基板表面粗度Ra6Å未満のものを「◎」、基板端部形状Dub−Off値100Å以下、かつ、基板表面粗度Ra6Å未満のものを「○」、基板端部形状Dub−Off値180Å以下、かつ、基板表面粗度Ra10Å以下のものを「△」、これらの条件を満たさないものを「×」とした。
Dub−Off値とは、基板端部のダレ形状についての指標であり、0に近い事が好ましい。本発明におけるDub−Off値とは、基板主表面に垂直であり、基板の中心を通る断面に現れる外径について、基板を水平に保持した場合の基板の外周縁に接する垂直線から中心に向かって水平に0.575mmの距離にある基板表面上の点と、基板の外周縁に接する垂直線から中心に向かって水平に0.475mmの距離にある基板表面上の点との2点について、当該2点を結んだ直線と、当該2点間の基板外径線との最大距離をいう。
比較例1〜5は従来の酸化セリウムの遊離砥粒を使用した例である。
比較例15において、研磨砥粒の重量比はCeO:ZrO=1:9である。
実施例1〜5において、表面品質、加工レート共に良好であった。
実施例6において、重量比でZrSiO:CeO=9:1である。
実施例7において、重量比でZrSiO:SiO=9:1である。
実施例1〜5において、表面品質、加工レート共に良好であった。
実施例11〜15において、表面品質、加工レート共に良好であった。
実施例20において、重量比でZrSiO:SiO=9:1である。
実施例16〜20において、表面品質、加工レート共に良好であった。
実施例21において、重量比でZrSiO:SiO=9:1である。
実施例21〜25において、表面品質、加工レート共に良好であった。
実施例29において、重量比でZrSiO:CeO=8:2である。
実施例30において、重量比でZrSiO:SiO=7:3である。
実施例26〜30において、表面品質、加工レート共に良好であった。
[2段目の研磨工程(2P)]
洗浄後の基板を、浜井産業社製の16B両面加工機、スピードファム社製の16B両面加工機、スエード研磨パッドを使用し、遊離砥粒を含む研磨スラリーを供給しながら以下の条件で2段目の研磨加工をし、表面粗さRaを1.0Å以下とした。
研磨砥粒:コロイダルシリカ(平均粒径d50=0.02μm)
研磨スラリーpH:1.0〜7.7
研磨スラリー濃度:10〜30wt%
最大加工圧力:110g/cm
最大回転数:25rpm
加工時間:30分
加工後の表面粗さと、板端部形状Dub−Off値を表14に示す。
以上より、本発明の研磨方法は、酸化セリウムを遊離砥粒とした研磨方法と比較しても、基板品質、加工レートが同等の研磨方法であることが分かる。
[化学強化工程]
基板の機械的強度を向上させる為、化学強化処理を行った。化学強化工程は、研削工程後や1段目の研磨工程後、または最終研磨工程後に適宜行うことができる。
(実施例31)
材料3の基板について、研削工程終了後、RO水による洗浄を行い、下記の条件で化学強化処理を行った。
強化塩:硝酸カリウム(KNO:純度99.5%)
温度:530℃
時間:60分
化学強化用溶融塩から基板を引き揚げた後、70℃のRO水に10分浸漬し、さらにその後pH10のKOH水溶液で5分洗浄した。
その後、実施例1の条件で1段目、2段目の研磨加工を施した。
この基板は化学強化処理工程を施さず、それ以外は同条件で作成した基板と比較して、リング曲げ強度が3〜6倍に向上していることが確認された。
なお、リング曲げ強度とは、作製した情報記録媒体用基板を円形の支持リングと荷重リングにより該円板状試料の強度を測定する同心円曲げ法で測定した曲げ強度をいう。
(実施例32)
実施例1と同じ条件で製造した基板について、1段目の研磨工程終了後、KOHによる洗浄を行い、下記の条件で化学強化処理を行った。
強化塩:硝酸カリウム(KNO:純度99.5%)
温度:500℃
時間:30分
化学強化用溶融塩から基板を引き揚げた後、70℃のRO水に10分浸漬し、さらにその後pH10のKOHで5分間洗浄した。
その後、実施例1の条件で2段目の研磨加工を施した。
この基板は化学強化処理工程を施さず、それ以外は同条件で作成した基板と比較して、リング曲げ強度が1.5〜4倍に向上していることが確認された。
(実施例33)
実施例1と同じ条件で製造した基板について、最終の研磨工程終了後、HSOによる洗浄を行い、下記の条件で化学強化処理を行った。
強化塩:硝酸カリウム(KNO:純度99.5%)
温度:450℃
時間:15分
化学強化用溶融塩から基板を引き揚げた後、70℃のRO水に10分浸漬し、さらにその後pH2のHSOで洗浄した。
この基板は化学強化処理工程を施さず、それ以外は同条件で作成した基板と比較して、リング曲げ強度が1.5〜3倍に向上していることが確認された。
(実施例34)
材料11の基板について、研削工程終了後、RO水による洗浄を行い、下記の条件で化学強化処理を行った。
強化塩:硝酸カリウム(KNO:純度99.5%)
温度:430℃
時間:40分
化学強化用溶融塩から基板を引き揚げた後、70℃のRO水に10分浸漬し、さらにその後pH10のKOH水溶液で5分洗浄した。
その後、実施例18の条件で1段目、2段目の研磨加工を施した。
この基板は化学強化処理工程を施さず、それ以外は同条件で作成した基板と比較して、リング曲げ強度が3〜6倍に向上していることが確認された。
(実施例35)
実施例15と同じ条件で製造した基板について、最終の研磨工程終了後、HSOによる洗浄を行い、下記の条件で化学強化処理を行った。
強化塩:硝酸カリウムと硝酸ナトリウムの混合塩(KNO:NaNO=1:3、純度99.5%)
温度:400℃
時間:15分
化学強化用溶融塩から基板を引き揚げた後、70℃のRO水に10分浸漬し、さらにその後pH2のHSOで洗浄した。
この基板は化学強化処理工程を施さず、それ以外は同条件で作成した基板と比較して、リング曲げ強度が1.5〜3倍に向上していることが確認された。
実施例1の条件で、スラリーを交換かつ継ぎ足しせずに、連続バッチ試験したところ、7バッチ目の研磨まで研磨レートの低下は認められなかった。
一方、比較例11の条件で、同様にスラリーを交換かつ継ぎ足しせずに、連続バッチ試験したところ、3バッチ目の研磨で研磨レート低下が確認できた。
また、比較例12の条件で、同様にスラリーを交換かつ継ぎ足しせずに、連続バッチ試験したところ、3バッチ目の研磨で研磨レート低下が確認できた。

Claims (8)

  1. 少なくともSiO成分を含むガラス又は結晶化ガラスからなる板状の無機材料を、研磨液及び研磨パッドを用いて研磨する研磨工程を含む情報記録媒体用基板の製造方法であって、
    前記研磨液は、Zr及びSiを含む化合物砥粒として少なくとも含有し、
    前記研磨液中の砥粒濃度が2wt%〜40wt%の範囲であり、
    前記研磨液中の砥粒の全重量に対する、前記Zr及びSiを含む化合物からなる砥粒の含有量が70wt%以上であり、
    砥粒として酸化セリウムを含む場合、その含有量は、前記研磨液中の砥粒の全重量に対して20wt%以下であり、
    前記研磨工程における加工圧力が120g/cm〜160g/cmであることを特徴とする情報記録媒体用基板の製造方法。
  2. 前記研磨液中の砥粒の平均粒径d50が0.2μm〜2.0μmである請求項1に記載の情報記録媒体用基板の製造方法。
  3. 前記無機材料は酸化物基準の質量%で、SiO成分40〜82%、Al成分2〜20%、R’O成分0〜20%(ただし、R’はLi、Na、Kから選ばれる1種以上)を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の情報記録媒体用基板の製造方法。
  4. 前記無機材料は結晶化ガラスである請求項1から3のいずれかに記載の情報記録媒体用基板の製造方法。
  5. 前記無機材料はガラスである請求項1から3のいずれかに記載の情報記録媒体用基板の製造方法。
  6. 前記研磨工程の終了後における基板の表面粗さRaを6Å未満となるようにする請求項1から5のいずれかに記載の情報記録媒体用基板の製造方法。
  7. 前記研磨工程の終了後、さらに研磨工程を施し、最終の研磨工程後の基板の表面粗さRaを1.5Å未満となるようにする請求項6に記載の情報記録媒体用基板の製造方法。
  8. 前記研磨工程の後に、コロイダルシリカを用いた別の研磨工程を行う、請求項1から7に記載の情報記録媒体用基板の製造方法。
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