JP5329506B2 - ホエイ蛋白質組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
1)ホエイ蛋白質と増粘多糖類とを混合して、ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を調製する工程、
2)調製したホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を薄膜円筒状に旋回しながら流し込み、流れるホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液に、後続するホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を連続的に接触混合させる工程、
3)前記2)と並行して、連続的に接触混合しているホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を、85〜120℃の範囲にある温度で、剪断速度15,000s−1〜25,000s−1で8分〜0.1秒間剪断して蛋白質−増粘多糖類混合組成物を調製し、調製したホエイ蛋白質−増粘多糖類混合組成物を、脂肪感を有するホエイ蛋白質組成物となす工程、
を含むホエイ蛋白質組成物の製造方法である。
円筒状の固定攪拌槽内に回転軸を同心に設け、固定攪拌槽より僅かに小径の回転羽根を該回転軸に取り付けられた装置であって、前記回転羽根が、円筒体に半径方向の小孔を多数貫通して設けた多孔円筒部を外周側に備えた装置を使用して、
多孔円筒部内部に導入されたホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液が多孔円筒部の小孔を通じて、回転羽根の高速回転により固定攪拌槽と多孔円筒部の間を薄膜円筒状に旋回して流れるホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液へと、接触混合することによって行われることが好ましい。
円筒状の固定攪拌槽内に回転軸を設け、固定攪拌槽より僅かに小径の回転羽根を該回転軸に取り付けられた装置であって、前記回転羽根が、円筒体に半径方向の小孔を多数貫通して設けた多孔円筒部を外周側に備えた装置を使用して、
回転羽根の高速回転により、ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を、回転羽根の高速回転により固定攪拌槽と多孔円筒部の間を薄膜円筒状に旋回して流しながら剪断することによって行われることが好ましい。
以下の1a)〜3a)の工程:
1a)ホエイ蛋白質と増粘多糖類とを混合して、ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を調製する工程、
2a)調製したホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を薄膜円筒状に旋回しながら流し込み、流れるホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液に、後続するホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を連続的に接触混合させる工程、
3a)前記2)と並行して、連続的に接触混合しているホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を、85〜120℃の範囲にある温度で、剪断速度15,000s−1〜25,000s−1で8分〜0.1秒間剪断して蛋白質−増粘多糖類混合組成物を調製し、調製したホエイ蛋白質−増粘多糖類混合組成物を、脂肪感を有するホエイ蛋白質組成物となす工程、を含む、ホエイ蛋白質に脂肪感を付与する方法である。
円筒状の固定攪拌槽内に回転軸を同心に設け、固定攪拌槽より僅かに小径の回転羽根を該回転軸に取り付けられた装置であって、前記回転羽根が、円筒体に半径方向の小孔を多数貫通して設けた多孔円筒部を外周側に備えた装置を使用して、
多孔円筒部内部に導入されたホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液が多孔円筒部の小孔を通じて、回転羽根の高速回転により固定攪拌槽と多孔円筒部の間を薄膜円筒状に旋回して流れるホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液へと、接触混合することによって行われることが好ましい。
円筒状の固定攪拌槽内に回転軸を設け、固定攪拌槽より僅かに小径の回転羽根を該回転軸に取り付けられた装置であって、前記回転羽根が、円筒体に半径方向の小孔を多数貫通して設けた多孔円筒部を外周側に備えた装置を使用して、
回転羽根の高速回転により、ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を、回転羽根の高速回転により固定攪拌槽と多孔円筒部の間を薄膜円筒状に旋回して流しながら剪断することによって行われることが好ましい。
[1]
ホエイ蛋白質、増粘多糖類、及び溶媒を混合して、ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を調製する工程、
調製したホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を薄膜円筒状に旋回させて流し、旋回して流れるホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液に、後続するホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を連続的に接触混合させて、連続的に接触混合されて薄膜円筒状に旋回して流れるホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を、85〜120℃の範囲にある温度で、剪断速度15,000s−1〜25,000s−1で8分〜0.1秒間剪断する工程、
を含む、ホエイ蛋白質組成物の製造方法。
[2]
接触混合が、
円筒状の固定攪拌槽内に回転軸を同心に設け、固定攪拌槽より僅かに小径の回転羽根を該回転軸に取り付けられた装置であって、前記回転羽根が、円筒体に半径方向の小孔を多数貫通して設けた多孔円筒部を外周側に備えた装置を使用して、
多孔円筒部内部に導入されたホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液が多孔円筒部の小孔を通じて、回転羽根の高速回転により固定攪拌槽と多孔円筒部の間を薄膜円筒状に旋回して流れるホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液へと、接触混合することによって行われる、[1]に記載の方法。
[3]
剪断が、
円筒状の固定攪拌槽内に回転軸を同心に設け、固定攪拌槽より僅かに小径の回転羽根を該回転軸に取り付けられた装置であって、前記回転羽根が、円筒体に半径方向の小孔を多数貫通して設けた多孔円筒部を外周側に備えた装置を使用して、
回転羽根の高速回転により、ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を、回転羽根の高速回転により固定攪拌槽と多孔円筒部の間を薄膜円筒状に旋回して流しながら剪断することによって行われる、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]
ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液が、ホエイ蛋白質を10〜15質量%含有し、増粘多糖類を0.04〜0.67質量%含有する溶液である、[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5]
増粘多糖類が、LMペクチン、ネイティブ型ジェランガム、脱アシル型ジェランガム、カッパカラギナン及びイオタカラギナンからなる群から選択される1又は2以上である、[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6]
ホエイ蛋白質組成物が、脂肪感を有し、120℃、15分間の加熱処理によってもゲルを発生しない、[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[7]
ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を調製する工程に用いられるホエイ蛋白質が、熱変性率が42%以下のホエイ蛋白質である、[1]〜[6]のいずれかに記載の方法。
[8]
[1]〜[7]のいずれかに記載の方法で製造された、
脂肪感を有し、120℃、15分間の加熱処理によってもゲルを発生しない、ホエイ蛋白質組成物。
[9]
[8]に記載のホエイ蛋白質組成物からなる、熱安定性脂肪感付与剤。
[10]
ホエイ蛋白質、増粘多糖類、及び溶媒を混合して、ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を調製する工程、
調製したホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を薄膜円筒状に旋回させて流し、旋回して流れるホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液に、後続するホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を連続的に接触混合させて、連続的に接触混合されて薄膜円筒状に旋回して流れるホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を、85〜120℃の範囲にある温度で、剪断速度15,000s−1〜25,000s−1で8分〜0.1秒間剪断する工程、
を含む、ホエイ蛋白質に脂肪感を付与する方法。
[11]
接触混合が、
円筒状の固定攪拌槽内に回転軸を同心に設け、固定攪拌槽より僅かに小径の回転羽根を該回転軸に取り付けられた装置であって、前記回転羽根が、円筒体に半径方向の小孔を多数貫通して設けた多孔円筒部を外周側に備えた装置を使用して、
多孔円筒部内部に導入されたホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液が多孔円筒部の小孔を通じて、回転羽根の高速回転により固定攪拌槽と多孔円筒部の間を薄膜円筒状に旋回して流れるホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液へと、接触混合することによって行われる、[10]に記載の方法。
[12]
剪断が、
円筒状の固定攪拌槽内に回転軸を同心に設け、固定攪拌槽より僅かに小径の回転羽根を該回転軸に取り付けられた装置であって、前記回転羽根が、円筒体に半径方向の小孔を多数貫通して設けた多孔円筒部を外周側に備えた装置を使用して、
回転羽根の高速回転により、ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を、回転羽根の高速回転により固定攪拌槽と多孔円筒部の間を薄膜円筒状に旋回して流しながら剪断することによって行われる、[10]又は[11]に記載の方法。
[13]
ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液が、ホエイ蛋白質を10〜15質量%含有し、増粘多糖類を0.04〜0.67質量%含有する溶液である、[10]〜[12]のいずれかに記載の方法。
[14]
増粘多糖類が、LMペクチン、ネイティブ型ジェランガム、脱アシル型ジェランガム、カッパカラギナン及びイオタカラギナンからなる群から選択される1又は2以上である、[10]〜[13]のいずれかに記載の方法。
[15]
ホエイ蛋白質組成物が、脂肪感を有し、120℃、15分間の加熱処理によってもゲルを発生しない、[10]〜[14]のいずれかに記載の方法。
[16]
ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を調製する工程に用いられるホエイ蛋白質が、熱変性率が42%以下のホエイ蛋白質である、[10]〜[15]のいずれかに記載の方法。
[17]
[10]〜[16]のいずれかに記載の方法で脂肪感を付与された、
脂肪感を有し、120℃、15分間の加熱処理によってもゲルを発生しない、ホエイ蛋白質組成物。
[18]
[17]に記載のホエイ蛋白質組成物からなる、熱安定性脂肪感付与剤。
例えば、本発明のホエイ蛋白質組成物は、パン、ケーキ、シチュー、カレー、アイスクリーム等に含まれる脂肪の一部又は全量に代替して使用することができる。
また、本発明のホエイ蛋白質組成物は、熱安定性に優れていることから、レトルト殺菌のような120℃を超える高温加熱殺菌処理(加熱)によってもホエイ蛋白粒子の凝集、ゲル化、沈殿等を生じず、食感や風味の良好な製品を提供することが可能である。
例えば、本発明のホエイ蛋白質組成物は、ゼリー、プリン、アイスクリーム、ドリンクヨーグルト、ジュース、乳飲料、加工乳、コーヒー、スポーツドリンク、スープ、焼成食品、粉乳、育児用調製粉乳、経腸栄養剤及び流動食等の食品群に好適に使用することが可能である。また、シャンプー、リンスや保湿クリーム等の化粧品にも好適に使用することも可能である。
さらに、本発明によるホエイ蛋白質組成物は、ホエイ蛋白質と増粘多糖類以外は使用しないことから、極めて安心して飲食品に使用することができる。
本願第一の発明である、ホエイ蛋白質組成物の製造方法(以下、本発明の製造方法と記載することがある)は、以下の工程:
ホエイ蛋白質、増粘多糖類、及び溶媒を混合して、ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を調製する工程、
調製したホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を薄膜円筒状に旋回させて流し、流れるホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液に、後続するホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を連続的に接触混合させて、
連続的に接触混合されて薄膜円筒状に旋回して流れるホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を、85〜120℃の範囲にある温度で、剪断速度15,000s−1〜25,000s−1で8分〜0.1秒間剪断する工程、
を含んでいる。
混合する方法としては、ホエイ蛋白質原料を溶解水などの溶媒に溶解したホエイ蛋白質溶液に粉末の増粘多糖類を添加して溶解する方法や、ホエイ蛋白質原料と増粘多糖類を粉で倍散してから溶解する方法を採用してもよいが、ホエイ蛋白質原料と増粘多糖類を、別々に溶解して、得られたホエイ蛋白質(原料)溶液と増粘多糖類溶液とを混合することが好ましい。すなわち、ホエイ蛋白質溶液と、増粘多糖類溶液とを混合して、ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を調製する工程とすることが好ましい。
一方、増粘多糖類は溶解水、好ましくは加温した溶解水(温湯に)溶解して、増粘多糖類溶液を調製する。温湯は70〜100℃に調整することが好ましい。
そして、ホエイ蛋白質溶液と増粘多糖類溶液を混合し、濃度を調整する。
pHを調整する場合は、当業者の用いる通常の手段によってpHを調整することができ、例えば、塩酸、水酸化ナトリウム等を添加してpH調整をすることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
本発明の好適な実施の態様において、このホエイ蛋白質と増粘多糖類の一体構造を得るためには、あらかじめ変性させる処理、特に加熱変性させる処理が行われていないホエイ蛋白質と増粘多糖類とを混合して加熱剪断することが好ましい。これにより、本発明のホエイ蛋白質組成物は脂肪感や熱安定性を得ることが可能である。変性させる処理とは、例えば、加熱変性(熱変性)、酸・アルカリ変性、圧力変性、変性剤による変性の処理をいう。本発明の好適な実施の態様において、上述のような変性させる処理が実質的に行われていないホエイ蛋白質を使用することができる。本発明の好適な実施の態様において、上述のような変性させる処理が実質的に行われていないホエイ蛋白質として、変性率、特に熱変性率が、好ましくは50%以下、さらに好ましくは42%以下、さらに好ましくは35%以下であるホエイ蛋白質を使用することができる。ホエイ蛋白質が過度に変性してしまっている場合は、増粘多糖類との一体構造の形成に問題が生じる可能性があると考えられる。
本発明の好適な実施の態様において、熱変性率が42%以下であるホエイ蛋白質として、市販のWPC等のホエイ蛋白質を水に溶解してホエイ蛋白質の5〜18質量%溶液とした場合に、85℃、30秒の加熱処理、またはこれと同等以上の熱履歴による加熱処理がされていないホエイ蛋白質を、ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を調製する工程において好適に使用することができる。
なお、同等以上の熱履歴による加熱処理の条件には、加熱処理と同時に剪断処理がされているものや、加熱処理とは別に剪断処理がされているものも含まれる。この剪断処理について、剪断の方法や程度は問わない。
本発明において、ホエイ蛋白質の変性率は、ホエイ蛋白質の可溶解度に基づく下記の方法から求められる。
ホエイ蛋白質を溶解水に溶解し、固形分として12.5質量%となるように溶液を調製して試料とする。ホエイ蛋白質としてWPC80を用いた場合、固形分中の80質量%がホエイ蛋白質であるから、蛋白質の固形分は10質量%である。
続いて、調製した試料を、遠心分離機で10,000G、10分の条件で遠心分離する。
試料を高速遠心分離することにより、変性した蛋白質が沈殿を生じるから、遠心分離前の試料の蛋白質質量と遠心後の沈殿した蛋白質質量を測定し、下記式にて求められる数値をホエイ蛋白質の変性率とすることができる。
蛋白質質量の測定方法は、ケルダール法、デュマ法、紫外吸収法、Bradford法、Lowry法、BCA法等を使用することができ、特にケルダール法を用いることが好ましい。
ここでは、ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を、薄膜円筒状に旋回し、さらに後続するホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を連続的に接触混合するために、剪断装置を用いる。
使用する剪断装置の撹拌槽の温度は常温でもよく、攪拌槽ジャケット内の温湯による予備加熱を行って、60℃以下の任意の温度に保持した状態であってもよい。
本発明の製造方法では、旋回して流れるホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液に、後続するホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を連続的に接触混合させるために、ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を、あらかじめ薄膜円筒状に旋回させて流しておく。いったん、ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を、あらかじめ薄膜円筒状に旋回させて流しておけば、その後は、連続的に操作を行うことができる。
本発明のホエイ蛋白質組成物の製造方法で原料として使用するホエイ蛋白質は、獣乳由来のものを使用することができるが、好ましくは牛乳由来のものである。本発明のホエイ蛋白質(原料)として、牛乳由来の蛋白質であるホエイであれば、如何なるものでも使用することができる。例えば、牛乳、脱脂乳、全脂粉乳、脱脂粉乳等のホエイを含有する原料から、常法により精製して得られるホエイである。
ホエイの精製法としては、牛乳または脱脂粉乳にレンネット等を加えてカゼインと乳脂肪を取り除く方法や、前記工程からさらにゲル濾過法、限外濾過法、イオン交換法等により処理する方法があり、これらの方法で得られるWPC(ホエイ蛋白濃縮物)、またはWPI(ホエイ蛋白分離物)等を使用することができる。また、市販のWPCやWPI等の各種ホエイ蛋白質を使用することもできる。その他、生乳、脱脂乳、脱脂粉乳等のホエイ蛋白質を含有する通常の乳製品をそのまま使用することもできる。
なお、粉体物を溶解する際の溶媒は特に制限されるものではないが、水、生乳、脱脂乳等が好適に用いられる。
本発明に用いられるホエイ蛋白質(原料)としては、蛋白質ベースの価格が安価で入手しやすく、ホエイ蛋白質の効率的な処理が行えることから、ホエイ蛋白質を約80%含むホエイ蛋白質濃縮物(独、ミライ社製。商品名:ミライ80)を使用することが好ましい。本明細書では、当該ホエイ蛋白質濃縮物をWPC80と記載する。
なお、本発明で原料として用いられるホエイ蛋白質は、変性処理を行っていない蛋白質、特に加熱変性されていないホエイ蛋白質を使用することが好ましい。なお、加熱変性されていないホエイ蛋白質とは、前記の通りである。
そして、本発明の脂肪感が付与されたホエイ蛋白質組成物の製造方法は、未加熱変性のホエイ蛋白質を増粘多糖類と混合してから加熱剪断することで、脂肪感が付与され、熱安定性の良好なホエイ蛋白質組成物を製造することができる。
本発明の製造方法で使用する増粘多糖類としては、例えば、ペクチン、ジェランガム、カラギナンを挙げることができ、LM(ローメトキシ)ペクチン、ネイティブ型ジェランガム、脱アシル型ジェランガム、カッパカラギナン及びイオタカラギナンが好ましく、LM(ローメトキシ)ペクチン、ネイティブ型ジェランガム、脱アシル型ジェランガムがさらに好ましく、LM(ローメトキシ)ペクチンが特に好ましい。
増粘多糖類は、上記したもの以外であっても、水と混合したときにゲル化する性質を有する増粘多糖類であれば、好適に使用することができる。
本発明で使用する増粘多糖類は溶解して増粘多糖類溶液として、これとは別に調製したホエイ蛋白質溶液と混合して、ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液として使用する。
本発明の方法で製造されるホエイ蛋白質組成物は、ホエイ蛋白質と増粘多糖類をそれぞれ溶解し、混合された混合溶液を本発明の加熱剪断方法によって得られるものであって、豊かな脂肪感及び高い熱安定性を備えている。
本発明のホエイ蛋白質組成物が豊かな脂肪感を有するためには、ホエイ蛋白質組成物における蛋白質濃度が好ましくは7.5〜15質量%であり、さらに好ましくは10〜15質量%であり、この範囲の蛋白質濃度において粘度が好ましくは7.0〜96mPa・sであり、さらに好ましくは7.0〜76mPa・sであり、さらに好ましくは7.0〜54mPa・sであり、さらに好ましくは7.0〜40mPa・s、さらに好ましくは7.0〜16mPa・sである。
また、本発明のホエイ蛋白質組成物は、平均粒子径が0.5〜2.0μmであることが好ましい。
剪断工程の好適な実施の一態様において、調製したホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液(以下、混合溶液と記載することがある)は、固定された攪拌槽の底部の円心付近から供給され、回転羽根の高速回転により既に旋回している混合溶液に対し、円心付近から放射状に散って、回転羽根が備えている多孔円筒部の内面に到達し、回転羽根の高速回転による遠心力を受けて、多孔円筒部に多数貫通して設けられた小孔を通じて、回転羽根の多孔円筒部の外面と固定攪拌槽の内面との間に設けられている円筒型の空間へと流出し、回転羽根の高速回転によって薄膜円筒状となって旋回し、続けて供給される混合溶液は先に薄膜円筒状となって旋回している混合溶液の中へと流出し、接触して混合されて、その中に拡散される。回転羽根の多孔円筒部の内周面に到達している混合溶液は、遠心力によって内周面上に薄膜状となり、高速回転の続く間、多数貫通して設けられた小孔を通じて、回転羽根の多孔円筒部の外周面へと混合溶液を供給し続ける。回転羽根の多孔円筒部の外面(外周面)と固定攪拌槽の内面(内周面)との間に設けられている円筒型の空間で薄膜円筒状となっているホエイ蛋白質溶液は、回転羽根の高速回転に連れて旋回し、遠心力で薄膜円筒状を保持しながら、固定攪拌槽内面と回転羽根の多孔円筒部外面との速度差によって剪断作用を受ける。
多孔円筒部の円心方向から、多数貫通して設けられた小孔を通じて、連続して流出する混合溶液は、強い遠心力を受け、回転羽根の多孔円筒部の外周面と固定攪拌槽の内周面との間で、薄膜円筒状となって旋回して流れる混合溶液内に放射状に噴出しながら混合される。このとき異なる方向の流れが接触混合されることによって、乱流が発生し、攪拌作用を生じて、剪断作用を効果的に助長する。
剪断速度(s−1)=V/C
剪断温度として高い温度を選択すれば、より短い保持時間で処理しても、本発明を好適に実施することができる。最低温度として85℃を含む温度範囲とする場合には、3分(180秒)以上の保持時間とすることが好ましい。最低温度として90℃を含む温度範囲とする場合には、1分(60秒)以上の保持時間とすることが好ましい。最低温度として100℃を含む温度範囲とする場合には、0.1秒以上の保持時間とすることが好ましい。本発明の好適な態様において、85℃〜120℃の範囲の温度で、8分(480秒)〜1分(60秒)の範囲の保持時間とすることができる。本発明の別の好適な態様において、85℃〜120℃の範囲の温度で、5分(300秒)〜0.1秒の範囲の保持時間とすることができる。本発明の別の好適な態様において、90℃〜100℃の範囲の温度で、8分(480秒)〜0.1秒の範囲の保持時間とすることができる。本発明の別の好適な態様において、85℃〜100℃の範囲の温度で、8分(480秒)〜0.1秒の範囲の保持時間とすることができる。
本発明で用いる剪断装置は、円筒状の固定攪拌槽内に回転軸を同心に設け、円筒体に半径方向の小孔を多数貫通して設けた多孔円筒部を外周側に備えた、固定攪拌槽より僅かに小径の回転羽根を該回転軸に取り付けられた装置において、回転羽根の高速回転によりホエイ蛋白質溶液を固定攪拌槽の内面に薄膜円筒状に拡散しながら剪断するものである。好適な態様において、固定攪拌槽内周面には凹凸が設けられている。図1は、本発明で用いる剪断装置の一例の断面の模式図である。剪断装置1は、円筒状の固定攪拌槽2の内部に、回転羽根3と、供給管4及び5を備えている。回転羽根3は、回転軸3aと、アーム3cと、アーム3cによって回転軸3aと回転可能に一体となっている多孔円筒部3bとを有している。多孔円筒部3bは図示されない多数の小孔が半径方向に貫通しており、アーム3cは図示されない連通孔が回転軸の軸方向に複数貫通している。供給管4及び5は、固定攪拌槽2の底部の円心付近に位置し、ここから剪断装置1へ、調製したホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液(以下、混合溶液と記載することがある)が供給される。供給された混合溶液は、回転羽根3の高速回転により既に旋回している混合溶液に対し、供給管4及び5の出口付近から放射状に散って、多孔円筒部3bの内面に到達し、回転羽根3の高速回転による遠心力を受けて、多孔円筒部3bに多数貫通して設けられた小孔を通じて、多孔円筒部3bの外面と固定攪拌槽2の内面との間に設けられている円筒型の空間へと流出し、回転羽根3の高速回転によって薄膜円筒状となって旋回し、続けて供給される混合溶液は先に薄膜円筒状となって旋回している混合溶液の中へと流出し、接触して混合されて、その中に拡散される。多孔円筒部3bの外面(外周面)と固定攪拌槽2の内面(内周面)との間に設けられている円筒型の空間で薄膜円筒状となっている混合溶液は、回転羽根3の高速回転に連れて旋回し、遠心力で薄膜円筒状を保持しながら、固定攪拌槽2の内面と多孔円筒部3bの外面との速度差によって剪断作用を受ける。多孔円筒部3bの円心方向から、多数貫通して設けられた小孔を通じて、連続して流出する混合溶液は、強い遠心力を受け、多孔円筒部3bの外周面と固定攪拌槽2の内周面との間で、薄膜円筒状となって旋回して流れる混合溶液内に放射状に噴出しながら混合される。このとき異なる方向の流れが接触混合されることによって、乱流が発生し、攪拌作用を生じて、剪断作用を効果的に助長する。多孔円筒部3bの内周面上で薄膜状となっている混合溶液は、多数貫通して設けられた小孔を通じて多孔円筒部3bの外周面へと流出した液量と同じ液量が、多孔円筒部3bの外面(外周面)と固定攪拌槽2の内面(内周面)との間に設けられている円筒型の空間で薄膜円筒状となっている混合溶液、及び/又は供給管から流入するために、高速回転を続ける間、上記接触混合は連続的に行われる。これによって、乱流の発生と攪拌作用、それによる剪断作用の助長は、高速回転を続ける間、継続して行われる。好適な実施の態様において、固定攪拌槽2は、図示されない温度調節装置、例えば所望の温度の水を循環可能なジャケットを備えている。好適な実施の態様において、剪断装置1は、剪断処理済みの混合溶液を排出するために、図示されない排出管を備えている。好適な実施の態様において、剪断装置1は、固定攪拌槽2の内部に、図示されない堰板を備えている。この図示されない堰板は、固定攪拌槽2の内面において多孔円筒部3bの上端よりも上部に位置して、固定攪拌槽2の内面から円心方向に回転軸3a付近まで伸びて、円環状の堰板となっている。この堰板は、薄膜円筒状となった混合溶液が固定攪拌槽2の内面の所望しない上部にまで至ることを防ぎ、あるいは、この堰板を越えた混合溶液を図示されない排出管に導いて、剪断後の混合溶液を連続的に流出させて回収することを可能にする。
本願第三の発明である、ホエイ蛋白質に脂肪感を付与する方法は、ホエイ蛋白質と増粘多糖類とを含む組成物を加熱剪断することを特徴とする、ホエイ蛋白質に脂肪感を付与する方法であって、以下の工程:
ホエイ蛋白質、増粘多糖類、及び溶媒を混合して、ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を調製する工程、
調製したホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を薄膜円筒状に旋回させて流し、流れるホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液に、後続するホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を連続的に接触混合させて、
連続的に接触混合されて薄膜円筒状に旋回して流れるホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を、85〜120℃の範囲にある温度で、剪断速度15,000s−1〜25,000s−1で8分〜0.1秒間剪断する工程、
を含むホエイ蛋白質に脂肪感を付与する方法、である。
混合する方法としては、ホエイ蛋白質(原料)を溶媒(好ましくは溶解水)に溶解したホエイ蛋白質溶液に粉末の増粘多糖類を添加して溶解する方法や、ホエイ蛋白質原料と増粘多糖類を粉で倍散してから溶解する方法を採用してもよいが、ホエイ蛋白質原料と増粘多糖類を、別々に溶解し、得られたホエイ蛋白質(原料)溶液と、増粘多糖類溶液を混合して行うことが好ましい。
一方、増粘多糖類は溶解水、好ましくは加温した溶解水(温湯)に溶解して、増粘多糖類溶液を調製する。温湯は70〜100℃に調整することが好ましい。
そして、ホエイ蛋白質溶液と増粘多糖類溶液を混合し、濃度を調整する。
pHを調整する場合は、公知の手段を使用することができ、例えば、塩酸、水酸化ナトリウム等を添加することによってpH調整することができるが、特にこれらに限定されるものではない。
このために、加熱変性していないホエイ蛋白質と増粘多糖類を混合して加熱剪断することが好ましい。すなわち、原料として使用するホエイ蛋白質が、既に変性しているものではないことが好ましい。
ここで、加熱変性していないホエイ蛋白質として、市販のWPC等のホエイ蛋白質を水に溶解してホエイ蛋白質の5〜18質量%溶液とした場合に、85℃、30秒の加熱処理、またはこれと同等以上の熱履歴による加熱処理がされていないものを好適に使用することができる。
なお、同等以上の熱履歴による加熱処理の条件には、加熱処理と同時に剪断処理がされているものや、加熱処理とは別に剪断処理がされているものも含まれる。この剪断処理について、剪断の方法や程度は問わない。
この工程では、ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を、薄膜円筒状に旋回し、さらに後続するホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を連続的に接触混合するために、剪断装置を用いる。
本発明の方法で使用される増粘多糖類は、前記した本発明の製造方法で用いられるホエイ蛋白質を使用することができる。
本発明の方法で脂肪感を付与されたホエイ蛋白質は、前記した本発明のホエイ蛋白質組成物として使用することができる。
本発明の方法において、剪断工程は、前記した本発明の製造方法の剪断工程に準じて実施することができる。
本発明の方法において、剪断工程で使用する剪断装置は、前記した本発明の製造方法で使用する剪断装置を使用することができる。
このように、本発明の方法は、ホエイ蛋白質組成物の製造方法に準じた方法で実施することができる。
ホエイ蛋白質組成物は、官能評価によって脂肪感が付与されたことを確認することができる。
本発明における官能評価とは、5〜10名のパネラーにより、製造されたホエイ蛋白質組成物等について行う、外観試験及び風味の試験を総称したものを指す。
そして、このような官能評価により、製造したホエイ蛋白質組成物の脂肪感の評価を行うことができる。
官能評価は、具体的に風味試験、外観試験等を例示できるが、これ以外の官能評価についても、適宜評価することが可能である。
風味試験は、加熱剪断した試料について行われる。
風味試験は、試料の風味、ざらつき、粉っぽさについて、5点を最高値とする5点から1点までの5段階評価を行い、パネラーの平均点を算出する評価方法である。なお、平均点は小数点以下を四捨五入した。
風味試験では特に脂肪感を重視する。
脂肪感とは、特に液状クリームの有する脂肪感のような脂肪感を指す。本発明の好適な実施の態様において、ホエイ蛋白質組成物は、従来のホエイ蛋白質にない液状クリーム様の豊かな脂肪感を有しており、平均粒子径は0.5〜2.0μmであることが好ましい。本発明の脂肪感の評価は、ホエイ蛋白質組成物を試食したときの喉越し、口溶け、コク等について総合評価し、液状クリームの脂肪感、口溶けに非常に近く、ざらつきや粉っぽさのほとんどないものについて最高の評価(5点)とし、脂肪感の少ないものや、ざらつきや粉っぽさが目立つものはその大小により減点した評価(4〜1点)とした。風味試験の評価点が4点以上のものを風味良好であると判断することができる。
外観試験においては、試料が液状であるものを「良」、試料に一部ゲルや凝集の見られるものを「やや良」、試料全体がゲル化しているものを「不良」とした。
本発明では、外観試験の評価が「良」または「やや良」のものを外観が良好であると判断することができる。
本発明によれば、ホエイ蛋白質組成物に高い熱安定性を付与することができる。
本発明の好適な実施の態様において、製造されたホエイ蛋白質組成物は、ホエイ蛋白質の変性温度を超える温度であって、特にレトルト殺菌のような120℃以上の熱履歴の大きな殺菌条件であっても、ホエイ蛋白質組成物が凝集、ゲル化、沈殿等を引き起こさない性質を有している。このように、本発明のホエイ蛋白質組成物は、顕著な熱安定性を有していることから、食品製造時に加熱殺菌工程を含む飲食品の原料として好適に使用できる。
本発明において、ホエイ蛋白質組成物の熱安定性は、後記する「加熱テスト」により評価することができる。
本発明の加熱テストは、製造されたホエイ蛋白質組成物の試料40mlをオートクレーブに投入し、120℃、15分間の条件で加熱処理を行い、加熱処理後の試料溶液の外観を評価するものである。オートクレーブでの加熱は、加熱温度が徐々に上がってゆくため、試料が120℃に到達するまでの時間、及び、120℃から室温程度に戻るまでの時間が非常に長く熱履歴が大きいことに特徴がある。そのため、実際の飲食品におけるレトルト殺菌処理等を想定した試験として非常に適している。
試料は通常、試料中の蛋白質と増粘多糖類を合わせた固形分濃度が12.5〜13.2質量%であることが好ましい。そして、試料中の蛋白質濃度は10質量%、試料中の増粘多糖類の濃度は0.04〜0.67質量%に調製することが好ましい。
120℃、15分間で加熱処理された試料は、試料をスパチュラですくいとり、外観を観察する。試料溶液が均一であってゲルを生じないものを「良」、試料中にゲルを生じるものや一部に凝集を生じるものを「やや良」、全体がゲル化して液状を保てなかった試料を「不良」とした。さらに、外観に加えて、風味の評価を適宜行った。加熱テストでの風味の評価は、試料の風味、ざらつき、粉っぽさについて、対照試料との比較による相対評価によって行った。対照試料と同程度と感じられる場合を3点とし、対照試料よりもやや優れている(4点)、対照試料よりもかなり優れている(5点)、対照試料よりもやや劣る(2点)、対照試料よりもかなり劣る(1点)とした、5点から1点までの5段階評価を行い、パネラーの平均点を算出して評価した。なお、平均点は小数点以下を四捨五入した。相対評価は、特に脂肪感を重視して行い、喉越し、口溶け、コク、ざらつきや粉っぽさ等について総合評価して行った。4点以上のものを相対風味A、3点のものをB、2点以下のものをCと判断した。さらに、加熱テスト後の試料は、平均粒子径や粘度を、適宜測定することがある。
本発明において、平均粒子径とは、粒度累積分布の50%に相当する粒子径を意味する。平均粒子径の測定は、ホエイ蛋白質を含む試料をホエイ蛋白質の固形分として10質量%となるように調製し、レーザー回折式粒度分布測定装置等を使用してホエイ蛋白質の平均粒子径を測定することによって行う。
本発明において、粘度とは、ホエイ蛋白質を含む試料について、振動式粘度計で測定した粘度を意味する。本発明における粘度計の設定は、駆動振動数を30Hz、定振幅設定値を50mVとした。そして、試料の温度を25℃に調整して粘度を測定した。
本発明の好適な実施の態様において、ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液のpH範囲は、pH5.5〜7.0で自由に設定できるが、pH5.6〜6.6であることが好ましく、pH6.2〜6.4であることがさらに好ましい。pHを下げたいときは塩酸溶液を用いることができ、pHを上げたいときは水酸化ナトリウム溶液を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
本発明のホエイ蛋白質組成物は、好適な実施の態様において、脂肪感豊かでなめらかな特性を有することから、舌触りや喉ごし等を重視するような食品の原料として利用することが可能である。
本発明のホエイ蛋白質組成物は、好適な実施の態様において、豊かな脂肪感と高い熱安定性を有していることから、特に、プリン、アイスクリーム等の冷菓、ドリンクヨーグルト、乳飲料、加工乳、シチュー、バタークリームや生クリーム等のクリーム類、菓子パン等を含むパン、ケーキや饅頭等の洋菓子や和菓子、経腸栄養剤及び流動食等の飲食品原料、特にこれらのレトルト食品や電子レンジ対応食品等に使用することが可能である。
その他、チューイングガム、ゼリービーンズ等を含む菓子、ゼリー、スポーツドリンク等の清涼飲料水、ジュース、コーヒー、スポーツドリンク、ハンバーグ、ソーセージ、ハム、チキンナゲット、ミートボール、餃子、シュウマイ、ロールキャベツの具、麻婆豆腐、麻婆茄子等、中華麺、パスタ、うどん、パン、クッキー、ビスケット、シリアル、ピザの生地、ちくわぶ、餃子の皮、春巻の皮、スープ、焼成食品、イチゴジャムやマーマレード等のジャム、焼き肉、焼き鳥等に用いられるタレ等のソース類、蒲鉾等の練り製品、惣菜、ダイエット食品、経腸栄養剤及び流動食等の飲食品原料、冷凍食品、粉乳、育児用調製粉乳等の食品群の原料として使用することが可能である。
本発明の製造方法で得られたホエイ蛋白質組成物、及び本発明の方法によって脂肪感が付与されたホエイ蛋白質組成物は、飲食品に利用される以外に、シャンプー、リンス、保湿クリーム、乳液等の化粧品等にも好適に使用することが可能である。
〔実施例1〕
ホエイ蛋白質としてWPC80(独、ミライ社製。商品名:ミライ80)を常温水に溶解して固形分が25質量%の溶液を調製した。これにLMペクチンを85℃の温湯で溶解して得られた2質量%溶液を添加し、さらにホエイ蛋白質の固形分が12.5質量%溶液、増粘多糖類の固形分が0.25質量%溶液となるように常温水で調製してホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液(pH6.3)を調製した。次いで、当該ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を剪断装置「フィルミックスFM−80−50」に投入した。剪断装置の剪断速度を20,000s−1に設定して装置の運転を開始し、ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液の温度が85℃に達するまで予備加熱を行い、90℃に到達してから3分間保持して剪断処理を行った後、剪断を終了した。剪断終了後は、攪拌槽の外側に設置されたジャケット内にチルド水を通液し、攪拌槽を冷却した後、剪断装置からホエイ蛋白質組成物を回収した。
回収したホエイ蛋白質組成物は、脂肪感豊かなものであった。
さらに、当該ホエイ蛋白質組成物について120℃で15分間加熱処理する加熱テストを行った結果、ゲルの発生もなく、外観良好であり、熱安定性が顕著に良好なものであった。
実施例1の方法で得られたホエイ蛋白質組成物を配合したレトルトプリンを製造した。表1に配合割合を示す。表1の数値は質量百分率であって単位は「質量%」である。
なお、本実施例においては、ホエイ蛋白質組成物として実施例1で製造されたホエイ蛋白質組成物を常法により濃縮し、さらに噴霧乾燥したもの(固形分97%。以下、ホエイ蛋白質組成物噴霧乾燥品と記載する)である。
20℃の溶解水に加糖凍結卵黄20を溶解した。さらに、グラニュー糖、脱脂粉乳、ゲルアップPI−1210P、ホモゲンDM、ホエイ蛋白質組成物噴霧乾燥品を粉混合し、溶解水に添加した。
次いで、混合液を80℃まで加熱し、ホモミキサー(プライミクス社製)で4000rpmで攪拌しながら、ヤシ油を添加した。さらに加熱して90℃、10分の条件で攪拌、混合し、ホモミキサーで10,000rpmで1分攪拌した。
得られた原料を容器に充填し、120℃、25分の条件で静置した条件でレトルト殺菌した。
製造したレトルトプリンは、組織が滑らかでざらつきもなく、風味も良好であった。
〔試験例1〕
本試験は、本発明の製造方法が従来の製造方法よりも優れていることを確認するために行った。
1.試料の調製
ホエイ蛋白質としてWPC80(独、ミライ社製)を常温水に溶解して固形分として25質量%のホエイ蛋白質溶液を調製した。また、増粘多糖類としてLMペクチン(三栄源エフ・エフ・アイ社製)を85℃の湯に溶解して固形分として2質量%の増粘多糖類溶液を調製した。
〔試験方法〕
始めに、ホエイ蛋白質溶液と増粘多糖類溶液を混合し、ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を調製した。この溶液中のホエイ蛋白質の濃度は、固形分として12.5質量%(蛋白質として10質量%)、増粘多糖類の濃度が固形分として0.25質量%となるように調製した。
次いで、当該ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液(pH6.3)を剪断装置「フィルミックスFM-80-50」に投入した。剪断装置の剪断速度を25,000s−1に設定して剪断を開始し、ホエイ蛋白質溶液の温度が90℃に達するまで予備加熱を行い、90℃に達してから3分間保持して剪断処理を行った後、剪断を終了して試験試料を回収した。
対照方法は、ホエイ蛋白質を単独で剪断処理した後、増粘多糖類を混合して、再び同等の剪断条件にて剪断処理する方法である。本方法は、特開2009−207419号公報に記載の方法を参照した。
始めに、ホエイ蛋白質溶液を固形分として12.5質量%に調製し、剪断装置「フィルミックスFM-80-50」に投入した。剪断装置の剪断速度を25,000s−1に設定して剪断を開始し、ホエイ蛋白質溶液の温度が85℃に達するまで予備加熱を行い、85℃に達してから1分間保持した後、剪断を終了し、加熱剪断されたホエイ蛋白質溶液(以降、加熱剪断ホエイ蛋白質溶液と記載することがある)を回収した。
この加熱剪断ホエイ蛋白質溶液に、増粘多糖類溶液を混合した。この溶液中の増粘多糖類の濃度は0.25質量%とした。この溶液(pH6.3)を、再度、剪断装置「フィルミックスFM-80-50」に投入した。、剪断装置の剪断速度を25,000s−1に設定して剪断を開始し、ホエイ蛋白質溶液の温度が90℃に達するまで予備加熱を行い、90℃にしてから3分間保持して剪断処理を行った後、剪断を終了して対照試料を回収した。
各試料について、官能評価(外観、風味)及び平均粒子径の測定を行った。さらに、加熱テストを行い、外観を観察した。
平均粒子径の測定は、レーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所製、商品名:LA−500)を使用して行った。装置の条件は、循環流量2、攪拌速度2に設定し、試料を装置に備えられた超音波装置で約2分間分散した後、平均粒子径(粒度累積分布の50%に相当する粒子径)を測定した。
加熱テストは各試料40mlをオートクレーブ(トミー精工社製)に投入し、徐々に昇温して120℃まで昇温した後、120℃で15分間加熱保持した。15分経過後は徐々に冷却して室温に戻した。
本試験の結果は表2に示すとおりである。試験方法で得られた試料を試験試料、対照方法で得られた試料を対照試料と表記した。
加熱剪断直後の外観はいずれの試料も良好な液状を保っていた。一方、風味については、試験試料が豊かな脂肪感を有していたが、対照試料は脂肪感の少ないものであった。また、平均粒子径は試験試料が0.69μm、試験試料が0.80μmとあまり差はなかった。
さらに、各試料について加熱テストを行った。試験試料はゲルや凝集の発生がなく、良好であったが、対照試料はゲルが発生したことから不良となった。また、試験試料は加熱テストでの風味も、対照試料と比べて優れており、相対評価がAとなった。(対照試料の相対評価はBとなる。)
本結果から、加熱剪断されていないホエイ蛋白質と増粘多糖類を剪断前に混合し、加熱剪断することで、脂肪感が付与され、熱安定性に優れたホエイ蛋白質組成物が得られることが明らかになった。
ホエイ蛋白質溶液と加熱剪断ホエイ蛋白質溶液を固形分として12.5質量%(蛋白質として10質量%)になるように調製したものを試料とした。
続いて、調製された試料を、遠心分離機で10,000G、10分の条件で遠心分離して変性した蛋白質の沈殿を生じた試料を回収した。
そして、遠心分離前の試料の蛋白質の総量と遠心後の沈殿した蛋白質質量を測定し、下記式にて求められる数値をホエイ蛋白質の変性率とした。
本試験では、蛋白質質量の測定はケルダール法により行った。
本試験は、本発明の製造方法で好適に使用できる増粘多糖類を特定するために行った。
1.試料の調製
ホエイ蛋白質としてWPC80(独、ミライ社製)を常温水に溶解した。一方、増粘多糖類として、LMペクチン(三栄源エフ・エフ・アイ社製)、ネイティブ型ジェランガム(三栄源エフ・エフ・アイ社製)、脱アシル型ジェランガム(三栄源エフ・エフ・アイ社製)、カッパカラギナン(三栄源エフ・エフ・アイ社製)、イオタカラギナン(三栄源エフ・エフ・アイ社製)、ラムダカラギナン(三栄源エフ・エフ・アイ社製)、キサンタンガム(三栄源エフ・エフ・アイ社製)、ローカストビーンガム(三栄源エフ・エフ・アイ社製)、グアーガム(三栄源エフ・エフ・アイ社製)を使用した。これらの増粘多糖類は、20〜85℃の水に溶解した。
ホエイ蛋白質溶液と増粘多糖類溶液を混合し、ホエイ蛋白質の固形分濃度が12.5質量%(ホエイ蛋白質として10質量%)となるように、ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を調製した。このときの増粘多糖類の添加量は、増粘多糖類の種類により0.04質量%〜0.67質量%と様々であるが、溶液の粘度がほぼ同様となるように調整した。
次いで、当該ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を剪断装置「フィルミックスFM-80-50」に投入した。剪断装置の剪断速度を25,000s−1に設定して剪断を開始し、ホエイ蛋白質溶液の温度が90℃に達するまで予備加熱を行い、90℃に到達してから3分間保持した後、剪断を終了した。剪断終了後は、撹拌槽の外側に設置されたジャケット内にチルド水を通液し、撹拌槽を冷却した後、剪断装置からホエイ蛋白質組成物を回収した。
各試料について、外観及び風味について官能評価試験を行った。
官能評価試験は、試験例1と同様の方法で行った。官能評価試験が良好な試料については120℃、15分の加熱テストをさらに行った。
本試験の結果は表3に示すとおりである。
使用した増粘多糖類のうち、いずれの試料でも外観は良好であった。一方、風味試験については、LMペクチン、ネイティブ型ジェランガム、脱アシル型ジェランガムが、5点の評価を得た。この中でも、特にLMペクチンの風味が良好であった。
続いてカッパカラギナン及びイオタカラギナンが、4点の評価を得た。
一方、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、ラムダカラギナンについては脂肪感等の風味が十分でなく、3点の評価を得た。
さらに、風味が4点または5点であった試料について加熱テストを行って外観を観察したが、いずれも良好であった。
なお、本試験では粘度及び平均粒子径について評価したが、試料によって大きな違いは見られなかった。
表3から明らかなように、本発明のホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液において、ホエイ蛋白質の濃度が10質量%のとき、好ましい増粘多糖類の配合量は、0.04〜0.67%の範囲であった。
本発明の製造方法に好適に採用できる増粘多糖類、すなわちLMペクチン、ネイティブ型ジェランガム、脱アシル型ジェランガム、カッパカラギナン及びイオタカラギナンは、いずれも水に溶解・分散したときにゲルを形成する性質を有している。
従って、本発明の製造方法に好適な増粘多糖類は、上記した増粘多糖類の他、ゲル化能を有する増粘多糖類を使用できることが示唆された。
本試験は、本発明のホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液の好ましいホエイ蛋白質濃度を確認するために行った。
1.試料の調製
WPC80(独、ミライ社製)を常温水に溶解してホエイ蛋白質溶液を調製した。また、LMペクチンを85℃の温湯に溶解して増粘多糖類溶液を調製した。
ホエイ蛋白質溶液と増粘多糖類溶液を混合し、ホエイ蛋白質と増粘多糖類の濃度が異なるホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液(pH6.2〜6.4)を調製した。
調製したホエイ蛋白質溶液と増粘多糖類溶液を混合して、ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を調製した。混合溶液中のホエイ蛋白質溶液の濃度は、WPC80の固形分濃度として6.25質量%、12.5質量%または18.8質量%(ホエイ蛋白質としてそれぞれ5質量%、10質量%または15質量%)に調製した。
また、混合溶液中の増粘多糖類の濃度は0.09〜0.56質量%に調製し、剪断装置に通液した。
剪断加熱条件として、剪断速度は20,000s−1とし、加熱条件を90℃、3分に設定し、ホエイ蛋白質組成物を調製した。当該ホエイ蛋白質混合組成物について加熱テストを行った。
なお、試験例3は試料の蛋白質濃度が異なるので、試料の蛋白質濃度を5質量%に調整した後、加熱テストを行った。
本試験の結果は表4に示すとおりである。表4は、ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液の濃度及び粘度と、加熱テストの結果を示したものである。なお、表4ではLMペクチンの濃度をペクチン濃度と略記する。
その結果、ホエイ蛋白質の蛋白質濃度が10質量%又は15質量%の場合、加熱テストが良好な結果となった。また、LMペクチンの濃度が高くなると試料の粘度は高くなり、蛋白質濃度が高くなっても試料の濃度は高くなった。
一方、蛋白質濃度が5質量%の場合、ペクチン濃度にかかわらず加熱テストが不良となった。
本結果より、本発明のホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液において、蛋白質濃度は10〜15質量%であることが好ましいことが明らかになった。なお、本試験において、蛋白質濃度が10〜15質量%のときのペクチン濃度は0.09質量%〜0.56質量%であったが、これは試験例2の好ましい増粘多糖類の濃度範囲に含まれるものであった。
従って、試験例2及び3から、本発明のホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液においては、蛋白質濃度が10〜15質量%であって、かつ、増粘多糖類濃度が0.04〜0.67質量%であることが好ましく、蛋白質濃度が10〜15質量%であって、かつ、増粘多糖類濃度が0.09〜0.56質量%であることが好ましいことが明らかとなった。
本試験は、ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液の加熱剪断処理工程における好ましい剪断速度を確認するために行った。
1.試料の調製
WPC80(独、ミライ社製)を常温水に溶解してホエイ蛋白質溶液を調製した。また、LMペクチンを85℃の温湯に溶解して増粘多糖類溶液を調製した。
ホエイ蛋白質溶液と増粘多糖類溶液を混合し、ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液(pH6.3)を調製した。
加熱剪断処理を行う際のホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液中のホエイ蛋白質溶液の濃度を12.5質量%(ホエイ蛋白質含量として10質量%)、増粘多糖類の濃度を0.25質量%に調製した試料(pH6.3)を使用して、剪断速度を10,000s−1〜25,000s−1とし、加熱工程における加熱温度を90℃、加熱保持時間を3分に設定して試料のホエイ蛋白質組成物を調製した。
調製した各試料は、さらに加熱テストを行った。
本試験の結果は表5に示すとおりである。
剪断速度を15,000s−1、20,000s−1の範囲にした場合は、加熱テストにおいてゲルの発生もなく、外観は良好であった。また、剪断速度を25,000s−1にした場合も官能評価は良好であり、加熱テストでは僅かなゲルが認められたのでやや良となったが、良好とされる範囲だった。
一方、剪断速度が10,000s−1のときは官能評価で外観がやや良、風味が4となり、加熱テストではゲルを生じたために評価はいずれも不良となった。
さらに、加熱テストにおいて、剪断速度が10,000s−1の場合を対照試料として、風味の相対評価を行ったところ、剪断速度が15,000s−1、20,000s−1、25,000s−1の場合は、何れも対照試料と比べて優れており、相対評価がAとなった。(対照試料の相対評価はBとなる。)
従って、剪断速度は15,000s−1〜25,000s−1であることが好ましい。
本試験は、ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液の加熱剪断処理工程における好ましい加熱温度と時間の組み合わせを確認するために行った。
1.試料の調製
WPC80(独、ミライ社製)を常温水に溶解してホエイ蛋白質溶液を調製した。また、LMペクチンを85℃の温湯に溶解して増粘多糖類溶液を調製した。
ホエイ蛋白質溶液と増粘多糖類溶液を混合して、ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液(pH6.3)を調製した。溶液中のWPC濃度は12.5%(ホエイ蛋白質濃度として10質量%)、増粘多糖類の濃度は0.25質量%に調製した。
ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液に対し、剪断速度を25,000s−1に固定し、剪断加熱工程の加熱温度及び加熱保持時間について様々な条件に設定してホエイ蛋白質組成物を調製した。
各試料は120℃、15分の加熱テストを行った。
本試験の結果は表6に示すとおりである。表6の時間の単位は秒で示した。加熱剪断された試料は、官能評価した後、加熱テストを行った。
その結果、加熱剪断温度が85℃、加熱保持時間が3分(180秒)の設定条件で調製された試料では、官能評価、及び加熱テストが良好であったことから、熱安定性が良好と判定された。また、加熱剪断温度が90℃のときは、加熱保持温度が1分(60秒)、3分(180秒)、5分(300秒)のいずれの長さでも加熱テストの結果は良好であった。加熱テストでの風味の相対評価は、130℃0.1秒の場合を対照試料として行った。
加熱温度が100℃、110℃及び120℃のときは、加熱保持時間が0.1秒の場合において、いずれも加熱テストの結果は良好であった。
よって、設定温度が100℃以上の場合であれば、加熱保持時間が0.1秒であっても、本発明の製造方法に適用することができる。
本結果から明らかなように、本発明の製造方法における加熱剪断工程の加熱温度及び加熱保持時間は、85〜120℃の任意の設定温度に昇温し、5分(300秒)〜0.1秒の処理をすることが好ましい。中でも、短時間で効率的に処理するには、ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を85〜95℃に昇温し、3分(180秒)〜1分(60秒)で保持することが好ましい。
本試験は、ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液の加熱剪断処理工程での好ましいpH範囲を検討するために行った。
1.試料の調製
WPC80(独、ミライ社製)を常温水に溶解してホエイ蛋白質溶液を調製した。また、LMペクチンを85℃の温湯に溶解して増粘多糖類溶液を調製した。
ホエイ蛋白質溶液と増粘多糖類溶液を混合して、ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を調製した。溶液中のWPC濃度は12.5%(ホエイ蛋白質濃度として10質量%)、増粘多糖類濃度は0.25質量%に調製した。
ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液は、pH調整しないときのpHは6.3であったので、試料をpH5.2〜6.2に調整する際は、10質量%の塩酸(国産化学社製)溶液を用いた。一方、試料をpH6.4〜7.2に調整する際は、20質量%の水酸化ナトリウム(国産化学社製)溶液を用いた。
pH5.2〜7.2に調整したホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液に対し、剪断加熱工程における剪断速度を25,000s−1に固定し、加熱温度を90℃、加熱保持時間を3分に設定してホエイ蛋白質組成物を調製した。
調製されたホエイ蛋白質組成物は、pHを6.3に戻して官能評価を行った。pHが6.3以上の試料は10質量%の塩酸溶液でpHを6.3に調整した。同様に、pHが6.3以下の試料については20質量%水酸化ナトリウム溶液でpHを6.3に調整した。
調整したホエイ蛋白質組成物は、85℃、5分の条件で加熱した後、官能評価を行った。
本試験の結果は表7に示すとおりである。
pHを7.2に調整した場合、試料はゲル化した。一方、pHを5.2〜7.0に調整した場合、加熱剪断後の評価は良好で、ホエイ蛋白質組成物は脂肪感を有していた。しかし、製造したホエイ蛋白質組成物を85℃、5分の条件で加熱したとき、pH5.6〜6.6の試料が良好な液状を保ったが、pHが5.4以下の試料とpHが6.8以上の試料はゲルを発生した。
85℃、5分の条件で加熱した後において、pH7.2の場合を対照試料として、風味の相対評価を行ったところ、pH5.6〜6.6の場合は、何れも対照試料と比べて優れており、相対評価がAとなった。(対照試料の相対評価はBとなる。)
本結果から、本発明のホエイ蛋白質組成物を得るためのホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液のpHは、5.6〜6.6が好ましいことが明らかになった。
本試験は、本発明の脂肪感を有するホエイ蛋白質組成物と、従来の方法で製造された脂肪代替品としてのホエイ蛋白質組成物について評価するために行った。
1.試料の調製
ホエイ蛋白質として、WPC80(独、ミライ社製)を常温水に溶解した。一方、増粘多糖類としてLMペクチン(三栄源エフ・エフ・アイ社製)を使用した。増粘多糖類は85℃の温湯に溶解した。
ホエイ蛋白質溶液と増粘多糖類溶液を混合し、ホエイ蛋白質の固形分濃度が12.5質量%(ホエイ蛋白質として10質量%)となるように、ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を調製した。このときの増粘多糖類の添加量は0.25質量%であった。
次いで、当該ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を剪断装置「フィルミックスFM-80-50」に投入した。剪断装置の剪断速度を20,000s−1に設定して剪断を開始し、ホエイ蛋白質溶液の温度が90℃に達するまで予備加熱を行い、90℃に到達してから3分間保持した後、剪断を終了した。剪断終了後は、撹拌槽の外側に設置されたジャケット内にチルド水を通液し、撹拌槽を冷却した後、剪断装置からホエイ蛋白質組成物を回収した。
本発明の加熱剪断工程を有さない脂肪代替品の製造方法の例として、特開2000−325057号公報、実施例3の製造方法を参照して脂肪代替品を製造した。
すなわち、WPC80(独、ミライ社製)60gとガラクトマンナン酵素分解物(商品名:サンファイバーR、太陽化学社製)50gを脱イオン水に溶解し、凍結乾燥して粉末を回収した。該粉末を60℃、相対湿度72%(飽和食塩水により調製)の条件にて2日間加熱保存し、ホエイ蛋白質−増粘多糖類複合体約100gを回収した。
製造した各試料について、外観と風味について官能評価を行った。ホエイ蛋白質−増粘多糖類複合体はホエイ蛋白質の固形分濃度が12.5質量%(ホエイ蛋白質として10質量%)となるように、溶解したものを対照試料とした。
さらに熱安定性の評価のため、各試料を85℃、5分間で加熱した後、外観を評価した。平均粒子径の測定は、加熱処理後の試料溶液について、レーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所製、商品名:LA−500)を使用して、循環流量2、攪拌速度2とし、装置に備えられた超音波装置で試料を2分間超音波分散した後に測定、という条件で測定したときの平均粒子径の値を測定した。
結果を表8に示す。試験試料は、白色でさらさらした液状であって、色調の褐変や劣化臭の発生もなく、外観は良好であった。また、試験試料はクリーム様の豊かな風味を有しており、風味試験の評価は「5」となった。
一方、対照試料は褐変を生じたことから黄変が進んでおり、外観は不良となった。また、対照試料は劣化臭、劣化味を有しており、脂肪感もほとんど感じられなかったことから、風味試験の評価は「2」となった。
本試験では、これらの試料をさらに85℃、5分の加熱条件で加熱した。加熱後の試験試料は外観に変化はなく、平均粒子径は0.88μmであった。また、対照試料と比較した風味の相対評価を行ったところ、試験試料は、対照試料と比べて非常に優れており、相対評価がAとなった。(対照試料の相対評価はBとなる。)
一方、加熱後の対照試料は沈殿が発生し、液状部分の平均粒子径は7.2μmとなり、本発明の好ましいホエイ蛋白質組成物の平均粒子径から外れるものとなった。対照試料では、蛋白質が凝集していることが推測された。
なお、試験試料については、別途120℃、15分の加熱テストを行ったところ、ゲルや凝集の発生は観察されず、外観は良好であった。
本試験から、本発明のホエイ蛋白質組成物の製造方法によれば、液状のホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を加熱剪断することで、従来法の課題であった褐変による変色を生じることなく、良好な外観を有するホエイ蛋白質を製造できることが明らかになった。
さらには、本発明のホエイ蛋白質組成物の製造方法によれば、従来よりも風味の点でクリーム様の脂肪感が顕著に付与された、熱安定性良好なホエイ蛋白質組成物が得られることが明らかになった。
本試験は、本発明のホエイ蛋白質組成物を用いてレトルトプリンを製造し、他のホエイ蛋白質を用いて製造したものと脂肪感等の風味を比較するために行った。
1.試料の調製
本試験では、油脂原料全体の50質量%を脂肪代替原料に置換した配合でレトルトプリンを製造した。
なお、油脂原料として油脂のみを使用して製造したレトルトプリンをコントロールとした。
まず、本発明のホエイ蛋白質組成物を常法で濃縮し、噴霧乾燥したもの(実施例2で使用したホエイ蛋白質組成物噴霧乾燥品と同じ。以下、ホエイ蛋白質組成物噴霧乾燥品とする)を油脂原料であるヤシ油全体の50質量%と置換して製造されたレトルトプリンを試験試料とした。
一方、WPC80を固形分として12.5質量%(蛋白質として10質量%)となるように調製し、剪断装置「フィルミックスFM-80-50」に投入し、剪断装置の剪断速度を25,000s−1に設定して剪断を開始し、ホエイ蛋白質溶液の温度が85℃に達するまで予備加熱を行い、85℃に達してから1分間保持した後剪断を終了し、回収して得られた加熱剪断WPC80を常法で濃縮し、噴霧乾燥したもの(加熱剪断ホエイ蛋白質噴霧乾燥品。以下、加熱剪断ホエイ蛋白質とする)を、油脂原料と置換して製造したレトルトプリンを対照試料1とした。
また、WPC80を油脂原料と置換して製造したレトルトプリンを対照試料2、市販のホエイ蛋白質であるシンプレス100(Simplesse 100、CPケルコ社製:ホエイ蛋白質含有量約50%)を油脂原料と置換して製造したレトルトプリンを対照試料3とした。これらのレトルトプリンの配合割合を表9に示す。表9の数値は質量百分率であって単位は「質量%」である。なお、レトルトプリンの原料に含まれるゲルアップPI−1210Pの成分には増粘多糖類が含まれているが、ゲル化剤として使用されるものであり、本発明のホエイ蛋白質組成物やその他の脂肪代替原料に影響を及ぼすものではない。また、ホモゲンDMは、グリセリン脂肪酸エステルを成分とする乳化剤である。
始めに、20℃の溶解水に加糖凍結卵黄20を溶解した。そして、グラニュー糖、脱脂粉乳、ゲルアップPI−1210P、ホモゲンDM、上記した脂肪代替品を粉混合し、溶解水に添加した。
次いで、混合液を80℃まで加熱し、ホモミキサー(プライミクス社製)で4000rpmで攪拌しながら、ヤシ油を添加した。さらに加熱して90℃、10分の条件で攪拌、混合し、ホモミキサーで10,000rpmで1分攪拌した。
得られた原料を容器に充填し、120℃、25分の条件で静置した条件でレトルト殺菌してレトルトプリンを得た。
レトルトプリンについての外観及び風味の評価を含む官能評価を表10に示す。試験試料はコントロールに最も近い風味を有しており、脂肪感豊かでホエイの臭気もなかった。しかし、従来品のホエイ蛋白質を用いた対照試料1〜3は、試験例と比較すると脂肪感、風味が十分でないという結果となった。
例えば、対照試料1は脂肪感が十分ではなかった。また、対照試料2は食感にざらつきを生じていた。そして、対照試料3は脂肪感、風味ともに十分な効果が得られなかった。
また、本発明は、ホエイ蛋白質組成物に脂肪感を付与する方法でもある。
本発明によって製造されたホエイ蛋白質組成物は、熱処理工程を含む飲食品やその原料、特に脂肪代替品、化粧品等の原料として好適に使用することができる。
本発明のホエイ蛋白質組成物はそのまま液体として使用することができるが、乾燥して粉末を得ることもできる。
2. 固定攪拌槽
3. 回転羽根
3a. 回転羽根の回転軸
3b. 回転羽根の多孔円筒部
3c. 回転羽根のアーム
4. 供給管
5. 供給管
Claims (12)
- ホエイ蛋白質、
LMペクチン、ネイティブ型ジェランガム、脱アシル型ジェランガム、カッパカラギナン及びイオタカラギナンから選択される1又は2以上の増粘多糖類、
及び溶媒
を混合して、ホエイ蛋白質を10〜15質量%含有し、増粘多糖類を0.04〜0.67質量%含有する、ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を調製する工程、
調製したホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液をpH5.6〜6.6にpH調整する工程、
pH調整したホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を薄膜円筒状に旋回させて流し、旋回して流れるホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液に、後続するホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を連続的に接触混合させて、連続的に接触混合されて薄膜円筒状に旋回して流れるホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を、85〜120℃の範囲にある温度で、剪断速度15,000s-1〜25,000s-1で8分〜0.1秒間剪断する工程、
を含む、ホエイ蛋白質組成物の製造方法。 - 接触混合が、
円筒状の固定攪拌槽内に回転軸を同心に設け、固定攪拌槽より僅かに小径の回転羽根を該回転軸に取り付けられた装置であって、前記回転羽根が、円筒体に半径方向の小孔を多数貫通して設けた多孔円筒部を外周側に備えた装置を使用して、
多孔円筒部内部に導入されたホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液が多孔円筒部の小孔を通じて、回転羽根の高速回転により固定攪拌槽と多孔円筒部の間を薄膜円筒状に旋回して流れるホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液へと、接触混合することによって行われる、請求項1に記載の製造方法。 - 剪断が、
円筒状の固定攪拌槽内に回転軸を同心に設け、固定攪拌槽より僅かに小径の回転羽根を該回転軸に取り付けられた装置であって、前記回転羽根が、円筒体に半径方向の小孔を多数貫通して設けた多孔円筒部を外周側に備えた装置を使用して、
回転羽根の高速回転により、ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を、回転羽根の高速回転により固定攪拌槽と多孔円筒部の間を薄膜円筒状に旋回して流しながら剪断することによって行われる、請求項1又は2に記載の製造方法。 - ホエイ蛋白質組成物が、脂肪感を有し、120℃、15分間の加熱処理によってもゲルを発生しない、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を調製する工程に用いられるホエイ蛋白質が、熱変性率が42%以下のホエイ蛋白質である、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれかの製造方法で製造された、
脂肪感を有し、120℃、15分間の加熱処理によってもゲルを発生しない、ホエイ蛋白質組成物。 - 請求項6に記載のホエイ蛋白質組成物からなる、脂肪感付与剤。
- ホエイ蛋白質、
LMペクチン、ネイティブ型ジェランガム、脱アシル型ジェランガム、カッパカラギナン及びイオタカラギナンから選択される1又は2以上の増粘多糖類、
及び溶媒
を混合して、ホエイ蛋白質を10〜15質量%含有し、増粘多糖類を0.04〜0.67質量%含有する、ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を調製する工程、
調製したホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液をpH5.6〜6.6にpH調整する工程、
pH調整したホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を薄膜円筒状に旋回させて流し、旋回して流れるホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液に、後続するホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を連続的に接触混合させて、連続的に接触混合されて薄膜円筒状に旋回して流れるホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を、85〜120℃の範囲にある温度で、剪断速度15,000s-1〜25,000s-1で8分〜0.1秒間剪断する工程、
を含む、ホエイ蛋白質に脂肪感を付与する方法。 - 接触混合が、
円筒状の固定攪拌槽内に回転軸を同心に設け、固定攪拌槽より僅かに小径の回転羽根を該回転軸に取り付けられた装置であって、前記回転羽根が、円筒体に半径方向の小孔を多数貫通して設けた多孔円筒部を外周側に備えた装置を使用して、
多孔円筒部内部に導入されたホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液が多孔円筒部の小孔を通じて、回転羽根の高速回転により固定攪拌槽と多孔円筒部の間を薄膜円筒状に旋回して流れるホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液へと、接触混合することによって行われる、請求項8に記載の方法。 - 剪断が、
円筒状の固定攪拌槽内に回転軸を同心に設け、固定攪拌槽より僅かに小径の回転羽根を該回転軸に取り付けられた装置であって、前記回転羽根が、円筒体に半径方向の小孔を多数貫通して設けた多孔円筒部を外周側に備えた装置を使用して、
回転羽根の高速回転により、ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を、回転羽根の高速回転により固定攪拌槽と多孔円筒部の間を薄膜円筒状に旋回して流しながら剪断することによって行われる、請求項8又は9に記載の方法。 - ホエイ蛋白質組成物が、脂肪感を有し、120℃、15分間の加熱処理によってもゲルを発生しない、請求項8〜10のいずれかに記載の方法。
- ホエイ蛋白質−増粘多糖類混合溶液を調製する工程に用いられるホエイ蛋白質が、熱変性率が42%以下のホエイ蛋白質である、請求項8〜11のいずれかに記載の方法。
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