JP5328012B2 - 改質ガラスの製造方法 - Google Patents
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Description
このような強化ガラス(改質ガラス)は、ガラス材料の表面に存在する微小な傷が外部からの衝撃により進展しないように、ガラス材料の表面に圧縮応力をかけてガラスを改質させることにより製造されていた。
具体的には、例えば物理強化法によって製造されていた。即ち、例えばガラス材料を約700℃〜800℃という高温で加熱した後急冷し、冷却に伴うガラス表面と内部とにおける熱収縮率差を利用してガラス表面に圧縮応力を発生させる方法である(非特許文献1参照)。
また、化学強化法によって製造する方法がある。即ち、ガラス材料を構成する一部の元素をよりイオン半径の大きな元素で400℃前後の高温条件下で数十時間かけて置換することにより圧縮応力を発生させる方法である(非特許文献1参照)。
また、化学強化法においても、一部の結晶化ガラスを強化できるが、一般には結晶化ガラスの強化は困難であるという問題があった。また、高温で数十時間という長時間の加熱が必要となるため、製造コストが増大してしまうという問題や、省エネルギー化の観点から好ましくないという問題があった。また、圧縮応力を発生させるためにガラス材料(ガラス板)にはおよそ0.5mm以上の厚みが必要で薄板ガラスの強化はできなかった。
また、ソーダライトガラスに窒素イオン(N+)ビームを照射してガラスを改質する技術が提案されている(非特許文献2参照)。
上記ガラス材料の表面に、窒素分子イオン(N 2 + )と窒素イオン(N + )とを含有する上記イオンビームを、イオンの注入深さを変えて複数回照射し、上記ガラス材料に少なくとも上記窒素分子イオンを注入し、上記ガラス材料の表面積1cm 2 あたりの上記窒素分子イオンの注入量を、窒素原子の個数で、1×10 13 〜5×10 15 個/cm 2 にすることを特徴とする改質ガラスの製造方法にある(請求項1)。
本発明の改質ガラスの製造方法においては、上記のごとく、ガラス材料の表面に上記イオンビームを照射する。
上記改質ガラスの製造に用いるガラス材料としては、結晶化ガラスの他に、通常のガラスを用いることができる。
この場合には、上述の従来の物理強化法及び化学強化法によって改質が困難であった結晶化ガラスについても改質させることができるという本発明の作用効果を顕著に発揮することができる。
N−0タイプのネオセラムの組成を表1に示す。
N−0タイプのネオセラムを本発明の製造方法によって改質させると、上述のごとくより曲げ強度や耐衝撃性等を向上させることができるため、例えば防火扉用超耐熱ガラス等の防火用ガラスの用途においては、ガラスの板厚を小さくすることが可能になる。厚みを小さくしても充分な強度を発揮できるからである。また、軽量化に伴う運搬コストの削減、施工負担の軽減、材料コストの削減を図ることができる。
また、ガス調理器のトッププレートにおいても、上述の防火用ガラスと同様の効果が得られることに加えて、ガス調理器のトッププレートには必要となる加熱部の穴加工に伴うトッププレートの強度劣化を抑制することができる。
上記ガラスの表面積1cm2当たりの上記窒素分子イオン(N2 +)の注入量は、イオン注入装置(例えば日新イオン機器株式会社製の「iG4」又は「G4」等)の注入条件及び注入時間を適宜制御することにより調整することができる。
この場合には、窒素分子イオンと窒素イオンとを分ける必要がなくなるため、上記改質ガラスの製造がより容易になり、製造コストを低減させることができる。即ち、窒素分子イオン(N2 +)の作製時には、窒素分子イオン(N2 +)の他に窒素イオン(N+)が生成するため、窒素分子イオン(N2 +)を単独で用いる場合には、N2 +とN+とを分離する必要が生じる。具体的には、これらのイオンを分離する手段を備えた装置が必要となる。上記のごとく、N2 +とN+との混合イオンをそのまま用いると、上述の分離手段が必要なくなるため、より安価な装置を用いることが可能になる。
例えばソーダライムガラスは、一般に、SiO2、Na2O、CaO等を主成分とし、結晶化ガラスは、一般にSiO2、Al2O3、Li2O等を主成分とするため、これらと反応する元素のイオンを含有するビームを採用することができる。具体的には、アルゴンイオン、炭素イオン、ホウ素イオン、リンイオン、珪素イオン、酸素イオン、及びヒ素イオン等から選ばれる1種以上のイオンを含有するイオンビームを採用することができる。なお、上述の窒素分子イオンや、窒素イオンがこれらの成分と反応すると、Si3N4、AlN、あるいはこれらにより組成のずれた化合物が形成されうる。
この場合には、上記改質ガラスの強度をより向上させることができる。
この場合には、上記改質ガラスの製造の省エネルギー化を図ることができる。また、この場合には、ガラス材料自体の温度が高くなる前にイオン注入を完了できるため、多量のイオンを短時間で注入させることができる。なお、ここでいう室温は雰囲気条件の温度のことである。上記ガラス材料の温度は上記イオンビームの照射により上昇しうる。
上記イオンビームの照射は、上記ガラス材料の軟化点以下の温度で行うことが好ましい(請求項3)。
上記ガラス材料の軟化点を越える場合には、上記ガラス材料が熱により変形し、所望の形状の改質ガラスを得ることが困難になるおそれがある。より好ましくは、軟化点よりも50℃以下、さらには100℃以下低い温度で行うことがよい。具体的には、上記イオンビームの照射は温度500℃以下で行うことがよい。
上記改質ガラスは、改質前のガラス材料に比べて強度を向上できるため、厚みを小さくしても充分な強度を発揮できる。その結果、軽量化に伴う運搬コストの削減、施工負担の軽減、材料コストの削減を図ることができる。
上述のごとく、板厚を小さくしても十分な強度を発揮できるため、この場合には、トッププレートの表面側と裏面側との間での熱伝導の遅れを小さくすることができる。
次に、本発明の製造方法の実施例につき、説明する。
本例は、ガラス材料の表面に、イオンビームを照射して改質ガラスを製造する方法である。
即ち、図1及び図2に示すごとく、ガラス材料(ガラス基板)2の表面に、少なくとも窒素分子イオン(N2 +)45を含有するイオンビーム4を照射し、ガラス材料2に少なくとも窒素分子イオン(N2 +)45を注入して改質ガラス1を作製する。
本例において、曲げ強度は、JIS R1601に規定する曲げ試験(3点曲げ法)に準拠して行った。
一般に、アルゴンイオンを用いて改質を行う場合には、1016〜1017オーダーのイオンの注入が必要であったことを考えると、N2 +を用いることにより、Arに比べて非常に少量のイオン注入量でガラス基板の改質を行うことができる。
図5に示すごとく、改質ガラス1(又はガラス基板)の4つの頂点をベークライト(登録商標)製の支持台71、72上に配置して改質ガラスを保持する。このとき、改質ガラス1は、イオンを注入した面(改質層3側)を支持体71、72側に向けて配置する。次いで、直径50.8mm、質量500gの剛球7を準備し、この剛球7を支持台71,72に配置した改質ガラス1に向けて所定の高さhから落下させる。高さhは20cmから開始し、改質ガラスが破損するまで5cm刻みで高さhを大きくした。そして、改質ガラスが破損したときの高さを求めた。また、改質ガラスと同様の衝撃試験をイオンを注入していないガラス基板についても行い、その結果を比較した。
さらに、改質ガラスを温度400℃で12時間保持させた後、上述の衝撃試験を行ったところ、衝撃強度はほとんど変化していなかった。
次に、本例においては、実施例1とは異なる条件で改質ガラスを作製し、その特性を評価する例である。
本例においては、イオン注入装置として、日新イオン機器株式会社製の「iG4」を用いて改質ガラスの作製を行った。このイオン注入装置「iG4」は、実施例1で用いたイオン注入装置「G4」とほぼ同様の構成を有しているが、加速管53に質量分離手段(図示略)を備えている(図3参照)。即ち、イオン発生手段51において発生したN2 +とN+との混合イオンから両者をその質量の違いにより分離し、N2 +又はN+のいずれか一方を含むイオンビーム4をガラス基板2に照射させることができる。
また、参考用に、表3には、イオンを注入していない(注入量0個/cm2)ガラス基板の曲げ強度を併記してある。
また、実施例1の表2及び本例の表3の結果から知られるごとく、窒素分子イオン(N2 +)と窒素イオン(N+)の両方を含有するイオンビームよりも、窒素分子イオン(N2 +)と窒素イオン(N+)との混合イオンから窒素イオン(N+)を取り除いたイオンビームを用いた方がより少ない注入量でガラス材料を十分に改質できることがわかる。
2 ガラス材料(ガラス基板)
3 改質層
4 イオンビーム
45 窒素分子イオン
Claims (5)
- ガラス材料の表面に、イオンビームを照射して改質ガラスを製造する方法において、
上記ガラス材料の表面に、窒素分子イオン(N 2 + )と窒素イオン(N + )とを含有する上記イオンビームを、イオンの注入深さを変えて複数回照射し、上記ガラス材料に少なくとも上記窒素分子イオンを注入し、上記ガラス材料の表面積1cm 2 あたりの上記窒素分子イオンの注入量を、窒素原子の個数で、1×10 13 〜5×10 15 個/cm 2 にすることを特徴とする改質ガラスの製造方法。 - 請求項1において、上記イオンビームの照射は、室温で行うことを特徴とする改質ガラスの製造方法。
- 請求項1又は2において、上記イオンビームの照射は、上記ガラス材料の軟化点以下の温度で行うことを特徴とする改質ガラスの製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか一項において、上記ガラス材料としては、結晶化ガラスを採用することを特徴とする改質ガラスの製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか一項において、上記改質ガラスは、電磁調理器のトッププレートに用いられることを特徴とする改質ガラスの製造方法。
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