以下、本発明に係る一実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。図1は、本発明に係る一実施の形態における分布型光ファイバ圧力センサの構成を示すブロック図である。
図1に示す分布型光ファイバ圧力センサFSは、第1光源1と、光カプラ2、5、8、21、23、30と、光パルス生成部3と、光スイッチ4、22と、光強度・偏光調整部6と、光サーキュレータ7、12と、光コネクタ9、26、27、28と、第1自動温度制御部(以下、「第1ATC」と略記する。)10と、第1自動周波数制御部(以下、「第1AFC」と略記する。)11と、制御処理部13と、歪み、圧力及び温度検出計14と、検出用光ファイバ15と、温度検出部16と、基準用光ファイバ17と、第2自動温度制御部(以下、「第2ATC」と略記する。)18と、第2自動周波数制御部(以下、「第2AFC」と略記する。)19と、第2光源20と、光強度調整部24と、1×2光スイッチ25、29、31とを備える。
第1及び第2光源1、20は、それぞれ、第1及び第2ATC10、18によって予め設定される所定温度で略一定に保持されるとともに、第1及び第2AFC11、19によって予め設定される所定周波数で略一定に保持されることにより、所定周波数の連続光を生成して射出する光源装置である。第1光源1の出力端子(射出端子)は、光カプラ2の入力端子(入射端子)に光学的に接続される。第2光源20の出力端子(射出端子)は、光カプラ21の入力端子(入射端子)に光学的に接続される。
第1及び第2光源1、20は、それぞれ、例えば、発光素子と、発光素子の近傍に配置され、この発光素子の温度を検出する温度検出素子(例えば、サーミスタ等)と、発光素子の後方から射出されるバック光を受光して2つに分岐する光カプラ(例えばハーフミラー等)で分岐された一方の光を、周期的フィルタであるファブリペローエタロンフィルタ(Fabry-perotetalon Filter)を介して受光する第1受光素子と、光カプラで分岐した他方の光を受光する第2受光素子と、温度調整素子と、これら発光素子、温度検出素子、光カプラ、第1及び第2受光素子、ファブリペローエタロンフィルタ及び温度調整素子が配設される基板とを備えて構成される。
発光素子は、線幅の狭い所定周波数の光を発光するとともに、素子温度や駆動電流を変更することによって発振波長(発振周波数)を変えることができる素子であり、例えば、多量子井戸構造DFBレーザや可変波長分布ブラッグ反射型レーザ等の波長可変半導体レーザ(周波数可変半導体レーザ)である。したがって、第1光源1は、周波数可変光源としても機能する。
第1及び第2光源1、20における各温度検出素子は、検出した各検出温度を第1及び第2ATC10、18へそれぞれ出力する。第1及び第2光源1、20における第1及び第2受光素子は、例えばホトダイオード等の光電変換素子を備え、各受光光強度に応じた各受光出力を第1及び第2AFC11、19へそれぞれ出力する。温度調整素子は、発熱及び吸熱を行うことにより基板の温度を調整する部品であり、例えば、ペルチェ素子やゼーベック素子等の熱電変換素子を備えて構成される。
第1及び第2ATC10、18は、それぞれ、制御処理部13の制御に従って、第1及び第2光源1、20における各温度検出素子の各検出温度に基づいて各温度調整素子を制御することによって、各基板の温度を所定温度に自動的に略一定に保持する回路である。これによって第1及び第2光源1、20における各発光素子の温度が所定温度に自動的に略一定に保持される。このため、発光素子が発光する光の周波数が温度依存性を有する場合に、その温度依存性が抑制される。
第1及び第2AFC11、19は、それぞれ、制御処理部13の制御に従って、第1及び第2光源1、20における第1及び第2受光素子の各受光出力に基づいて各発光素子を制御することによって、各発光素子が発光する光の周波数を所定周波数に自動的に略一定に保持したり、所定の周波数範囲で掃引したりする回路である。
第1及び第2光源1、20における光カプラ、ファブリペローエタロンフィルタ、第1及び第2受光素子と、第1及び第2AFC11、19とは、第1及び第2光源1、20における発光素子が発光する光の波長(周波数)を略固定する所謂波長ロッカーをそれぞれ構成している。
光カプラ2、5、21、23は、1個の入力端子から入射された入射光を2つの光に分配して2個の出力端子へそれぞれ射出する光部品である。光カプラ8は、2個の入力端子のうちの一方の入力端子から入射された入射光を1個の出力端子から射出するとともに、他方の入力端子から入射された入射光を上記の出力端子から射出する光部品である。光カプラ30は、2個の入力端子から入射された2つの入射光を結合して2個の出力端子から射出する光部品である。光カプラ2、5、21、23、8、30は、例えば、ハーフミラー等の微少光学素子形光分岐結合器や溶融ファイバの光ファイバ形光分岐結合器や光導波路形光分岐結合器等を利用することができる。
光カプラ2の一方の出力端子は、光パルス生成部3の入力端子に光学的に接続され、他方の出力端子は、1×2光スイッチ31の入力端子に光学的に接続される。光カプラ5の一方の出力端子は、光強度・偏光調整部6の入力端子に光学的に接続され、他方の出力端子は、歪み、圧力及び温度検出計14の入力端子に光学的に接続される。光カプラ21の一方の出力端子は、光スイッチ22の入力端子に光学的に接続され、他方の出力端子は、光コネクタ28を介して基準用光ファイバ17の他方端に光学的に接続される。光カプラ23の一方の出力端子は、光強度調整部24の入力端子に光学的に接続され、他方の出力端子は、歪み、圧力及び温度検出計14の入力端子に光学的に接続される。光カプラ8の一方の入力端子は、光サーキュレータ7の第2端子に光学的に接続され、他方の入力端子は、1×2光スイッチ25の他方の出力端子に光学的に接続され、出力端子は、光コネクタ9を介して検出用光ファイバ15の一方端に光学的に接続される。光カプラ30の一方の入力端子は、1×2光スイッチ31の他方の出力端子に光学的に接続され、他方の入力端子は、1×2光スイッチ29の一方の出力端子に光学的に接続され、2つの出力端子は、歪み、圧力及び温度検出計14の入力端子に光学的に接続される。
光パルス生成部3は、第1光源1が射出した連続光が入射され、この連続光から、ポンプ光として、メイン光パルスとサブ光パルスとを生成する装置である。メイン光パルスは、スペクトル拡散方式が用いられた光パルスである。スペクトル拡散方式としては、例えば、周波数を変化させる周波数チャープ方式や、位相を変調する位相変調方式や、これら周波数チャープ方式と位相変調方式とを組み合わせたハイブリッド方式等を挙げることができる。
周波数チャープ方式としては、例えば、周波数を単調に、例えば直線的に変化させる方式等が挙げられる。そして、位相変調方式としては、例えば、PN系列を用いて位相を変調する方式等が挙げられる。PN系列は、疑似乱数(pseudo-random number)系列であり、PN系列としては、例えば、M系列(maximal-length sequences)やGold系列等が挙げられる。M系列は、複数段のシフトレジスタとその複数段の各段における各状態の論理結合をシフトレジスタへフィードバックする論理回路とを備えて構成される回路によって生成することが可能である。また、Gold系列は、n次の原始多項式F1(x)及びF2(x)で発生されたM系列の0を−1に、1を+1に対応させた系列をそれぞれMi、Mjとすると、両者の積Mi・Mjによって生成することが可能である。また、位相変調方式の疑似乱数系列としてGolay符号系列を用いることもできる。このGolay符号系列は、自己相関関数のサイドローブが厳密に0になるという優れた特性を有している。サブ光パルスは、変調されていない無変調の光パルスであり、その最大光強度がメイン光パルスの光強度以下であるとともに、パルス幅が音響フォノンの寿命よりも充分に長い。
そして、光パルス生成部3は、制御処理部13の制御に従って、本実施の形態のブリルアンスペクトラム時間領域分析(BOTDA)では、メイン光パルスがサブ光パルスよりも時間的に先に検出用光ファイバ15に入射されないように、サブ光パルス及びメイン光パルスを生成する。このような光パルス生成部3によって生成されるポンプ光としてのサブ光パルス及びメイン光パルスについては、後述する。
光スイッチ4、22は、制御処理部13の制御に従って、入力端子と出力端子との間で光をオン/オフする光部品である。オンでは、光が透過され、オフでは、光が遮断される。光スイッチ4、22は、本実施の形態では、例えばMZ光変調器や半導体電界吸収型光変調器等の、入射光の光強度を変調する光強度変調器が用いられる。光スイッチ4、22には、制御処理部13によって制御され、この光強度変調器を駆動するドライバ回路が含まれる。このドライバ回路は、例えば、光強度変調器を通常状態においてオフするための直流電圧信号を生成する直流電源と、通常オフされている光強度変調器をオンするための電圧パルスを生成するパルス発生器と、この電圧パルスの生成タイミングを制御するタイミング発生器とを備えて構成される。光スイッチ4の出力端子は、光カプラ5の入力端子に光学的に接続される。光スイッチ22の出力端子は、光カプラ23の入力端子に光学的に接続される。
光強度・偏光調整部6は、制御処理部13によって制御され、入射光の光強度を調整するとともに、入射光の偏光面をランダムに変更して射出する部品である。光強度・偏光調整部6の出力端子は、光サーキュレータ7の第1端子に光学的に接続される。光強度・偏光調整部6は、例えば、入射光の光強度を減衰して射出するとともにその減衰量を変更することができる光可変減衰器と、入射光の偏光面をランダムに変えて射出することができる偏光制御器とを備えて構成される。光強度・偏光調整部6は、誘導ブリルアン散乱光とレイリー後方散乱光との計測に共用され、光の偏光面をランダムに変更する。
光サーキュレータ7、12は、入射光と射出光とがその端子番号に循環関係を有する非可逆性の光部品である。すなわち、第1端子に入射した光は、第2端子から射出されるとともに、第3端子からは射出されず、第2端子に入射した光は、第3端子から射出されるとともに、第1端子からは射出されず、第3端子に入射した光は、第1端子から射出されるとともに、第2端子からは射出されない。光サーキュレータ7の第1端子は、光強度・偏光調整部6の出力端子に光学的に接続され、第2端子は、光カプラ8の一方の入力端子に光学的に接続され、第3端子は、1×2光スイッチ29の入力端子に光学的に接続される。光サーキュレータ12の第1端子は、1×2光スイッチ31の一方の出力端子に光学的に接続され、第2端子は、光コネクタ27を介して基準用光ファイバ17の一方端に光学的に接続され、第3端子は、歪み、圧力及び温度検出計14に光学的に接続される。
光コネクタ9、26、27、28は、光ファイバ同士や光部品と光ファイバとを光学的に接続する光部品である。
光強度調整部24は、制御処理部13によって制御され、入射光の光強度を調整して射出する部品である。光強度調整部24の出力端子は、光スイッチ25の入力端子に光学的に接続される。光強度調整部24は、例えば、入射光の光強度を減衰して射出する光可変減衰器と、入力端子から出力端子へ一方向のみ光を透過する光アイソレータとを備えて構成される。光強度調整部24に入射した入射光は、光可変減衰器で光強度が所定光強度に調整されて光アイソレータを介して射出される。この光アイソレータは、分布型光ファイバ圧力センサFS内における各光部品の接続部等で生じる反射光の伝播やサブ光パルス及びメイン光パルスの第2光源20への伝播を防止する役割を果たす。
1×2光スイッチ25、29、31は、光路を切り換えることによって、入力端子から入射された光を2個の出力端子のうちの何れか一方から射出する1入力2出力の光スイッチであり、例えば、機械式光スイッチや光導波路スイッチ等が利用される。
1×2光スイッチ25の一方の出力端子は、光カプラ8の他方の入力端子に光学的に接続され、他方の出力端子は、光コネクタ26を介して検出用光ファイバ15の他方端に光学的に接続される。制御処理部13の制御(又は手動)に従って、ブリルアンスペクトラム時間領域分析(BOTDA)の第1態様(両端測定)で動作させる場合には、入力端子から入射された光が光コネクタ26を介して検出用光ファイバ15の他方端へ入射されるように、1×2光スイッチ25が切り換えられ、ブリルアンスペクトラム時間領域分析(BOTDA)の第2態様(片端測定)で動作させる場合には、入力端子から入射された光が光カプラ8及び光コネクタ9を介して検出用光ファイバ15の一方端へ入射されるように、1×2光スイッチ25が切り換えられる。
1×2光スイッチ29の一方の出力端子は、光カプラ30の他方の入力端子に光学的に接続され、他方の出力端子は、歪み、圧力及び温度検出計14に光学的に接続される。制御処理部13の制御(又は手動)に従って、ブリルアンスペクトラム時間領域分析(BOTDA)の第1態様、又はブリルアンスペクトラム時間領域分析(BOTDA)の第2態様で動作させる場合には、入力端子から入射された光が歪み、圧力及び温度検出計14へ入射されるように、1×2光スイッチ29が切り換えられ、レイリー散乱現象を利用するコヒーレント光パルス試験器(COTDR)として動作させる場合には、入力端子から入射された光が光カプラ30の他方の入力端子へ入射されるように、1×2光スイッチ29が切り換えられる。
1×2光スイッチ31の一方の出力端子は、光サーキュレータ12の第1端子に光学的に接続され、他方の出力端子は、光カプラ30の一方の入力端子に光学的に接続される。制御処理部13の制御(又は手動)に従って、ブリルアンスペクトラム時間領域分析(BOTDA)の第1態様、又はブリルアンスペクトラム時間領域分析(BOTDA)の第2態様で動作させる場合には、入力端子から入射された光が光サーキュレータ12へ入射されるように、1×2光スイッチ31が切り換えられ、レイリー散乱現象を利用するコヒーレント光パルス試験器(COTDR)として動作させる場合には、入力端子から入射された光が光カプラ30の一方の入力端子へ入射されるように、1×2光スイッチ31が切り換えられる。
検出用光ファイバ15は、センサ用の光ファイバであり、BOTDAでは、サブ光パルス及びメイン光パルスと連続光とが入射され、誘導ブリルアン散乱現象の作用を受けた光が射出され、レイリー散乱現象を利用する場合、パルス光が入射され、レイリー散乱現象の作用を受けた光が射出される。検出用光ファイバ15は、一端が光コネクタ9に光学的に接続される第1検出用光ファイバ151(第1の光ファイバに相当)と、この第1検出用光ファイバ151の他端に折返し部153を介して連なる第2検出用光ファイバ152(第2の光ファイバに相当)とを備え、これらの両光ファイバ151,152が端部において折返し部153を介して連設されることにより1本の光ファイバとして構成されている。
なお、本実施の形態では、検出用光ファイバ15は第1及び第2検出用光ファイバ151、152の折返し部153側の端部が融着されることにより1本の光ファイバとして構成され、この折返し部153を図1に概略的に示すようなステンレスなどの有底筒状の保護管154内に挿入し、さらにこの保護管154内をエポキシ樹脂などの封止材で封止している。この保護管154は適宜省略することができるが、検出用光ファイバ15の折返し部153を保護する観点から、本実施の形態のように保護管154を用いるのが好ましい。
第1検出用光ファイバ151は、光ファイバの圧力、温度及び軸方向の歪みを検出するセンサ用の光ファイバであり、計測対象に沿って配設されている。計測対象としては、例えば、配管、油田管、橋、トンネル、ダム、貯蔵庫、建物等の構造物等自体、又は構造物等に貯留、流通される流体などが挙げられる。なお、この第1検出用光ファイバ151が構造物に配設され、構造物に作用する圧力や温度だけでなく、その歪みをも測定する場合には、当該構造物に対し接着剤や固定部材等により適宜固定される。この第1検出用光ファイバ151は、BOTDAでは、サブ光パルス及びメイン光パルスと連続光とが入射されることにより、軸方向の歪み、圧力及び温度に依存する、誘導ブリルアン散乱現象の作用を受けた光が射出される。
第2検出用光ファイバ152は、光ファイバの軸方向の歪み及び温度を検出するセンサ用の光ファイバであり、第1検出用光ファイバ151に沿って、詳しくは該第1検出用光ファイバ151に近接した位置で略平行に配設されている。この第2検出用光ファイバ152は、計測対象に対応した検出範囲において、内圧が略一定に保たれた圧力遮蔽管33に挿通され、必要に応じてこの圧力遮蔽管33の内壁面に接着剤や固定部材等により適宜固定されている。第2検出用光ファイバ152は、圧力遮蔽管33内に挿通されているため、第1検出用光ファイバ151と異なり、検出用光ファイバ15の軸方向(長尺方向)に沿って圧力差がある場合でもこの軸方向に沿った圧力差による影響を受けず、圧力は長尺方向に沿って略一定となり、軸方向の歪み及び温度のみの影響を受ける。従って、第2検出用光ファイバ152は、BOTDAでは、サブ光パルス及びメイン光パルスと連続光とが入射されることにより、軸方向の歪み及び温度にのみ依存する、誘導ブリルアン散乱現象の作用を受けた光が射出される。
圧力遮蔽管33は、第2検出用光ファイバ152の検出範囲に外圧(周辺の圧力)が作用することを防ぐためのものであり、検出用光ファイバ15の折返し部153側の端部、及び必要に応じてこの端部と反対側の端部において第2検出用光ファイバ152との間が気密的にシールされている。この圧力遮蔽管33の内圧は、適宜設定することができるが、第2検出用光ファイバ152に作用する圧力が最も小さい地点での圧力(以下「基準圧力」と称する。)に設定するのが好ましく、通常、この基準圧力は、地上の圧力とされる1気圧に設定されている。圧力遮蔽管33は、第1検出用光ファイバ151に沿って、詳しくは長尺方向にこの第1検出用光ファイバ151に当接した状態で配設され、必要に応じて(例えば計測対象の歪みを測定する場合など)計測対象に対して接着剤や固定部材等により適宜固定される。
具体的には、圧力遮蔽管33は、鋼管、ステンレス管、CFRP(carbon fiber reinforced plastics)管等、所定の剛性と熱伝導性を有する管状部材からなり、外圧や熱伝導性の観点から素材、壁厚、形状が設定される。例えば、この光ファイバ圧力センサFSが油井における油層の圧力や油井の状態の検出に用いられる場合には、圧力遮蔽管33は外径が3mm程度の断面円形のステンレス製の毛細管が用いられる。なお、圧力遮蔽管33の内径は、第2検出用光ファイバ152が挿通可能であればよく、その肉厚は、材質や、検出用光ファイバ15の敷設環境に応じて適宜設定される。
この圧力遮蔽管33の折返し部153側の端部は、所定の長さに亘って前記保護管153内の封止材内に封入され、確実に気密的にシールされるように構成されている。一方、この圧力遮蔽管33の他端部は、例えば大気圧などの基準圧力の下で開放されているものであってもよいが、本実施の形態では、折返し部153側の端部と同様に、第1及び第2検出用光ファイバ151、152を結束するためのステンレスなどの筒状の結束管156内に導入され、この結束管156内に充填されている封止材内に封入されている。
また、本実施の形態では、第1検出用光ファイバ151、第2検出用光ファイバ152及び圧力遮蔽管33は、保護管154と結束管156との間において、被覆材155などにより束ねて1本のケーブルとして構成されている。このように1本のケーブルとして束ねた場合には、計測対象に対する配設作業が容易になるだけでなく、第1検出用光ファイバ151と第2検出用光ファイバ152との相対的な位置関係を一定に保ち易くなるとともに、これらの光ファイバ151、152及び圧力遮蔽管33を計測対象に対して固定する場合には確実に同一箇所で固定することができ、これらの相対的位置関係や固定箇所のズレなどに基づく計測誤差を可及的に抑制することができる。
なお、検出用光ファイバ15と、圧力遮蔽管33と、これらの光ファイバ15及び圧力遮蔽管33を保護あるいは被覆する保護管154、被覆材155及び結束管156とにより、分布型光ファイバ圧力センサFSにおけるセンサ部として機能する。そして、このセンサ部を計測対象に配設することにより、計測対象の少なくとも圧力及び温度を測定することができる。
これらの第1検出用光ファイバ151、及び第2検出用光ファイバ152の計測対象に対する敷設は、計測対象を考慮して適宜行われる。例えば、第1及び第2検出用光ファイバ151、152を計測対象に沿って直線的に敷設するものであっても良いし、計測対象に蛇行状、あるいは巻回し状に敷設するものであっても良い。
具体的には、例えば、油層の圧力や温度を検出するために、油井に本実施の形態の分布型光ファイバ圧力センサFSが用いられる場合には、掘削されたボーリング穴に挿入されたチュービングの内壁面に沿って第1検出用光ファイバ151、及び圧力遮蔽管33に挿通された第2検出用光ファイバ152を直線的に敷設する。この場合、各検出用光ファイバ151、152は、これらの軸方向とチュービング(油井)の中心軸方向とが一致又は略一致するように敷設される。このように第1及び第2検出用光ファイバ151、152の軸方向とチュービングの中心軸方向とを一致させて直線的に敷設することによりチュービング(油井)の断面に占めるセンサの面積を小さくすることができ、これにより石油の汲み上げに対する抵抗を減らして石油の採掘効率を向上することができる。なお、石油採掘の手法は種々あるが、採掘にあたり、チュービングとして内外二重のチュービングが用いられる場合には、第1及び第2検出用光ファイバ151、152は、内側管、外側管のいずれに沿って敷設してもよい。また、これらの検出用光ファイバ151、152は、チュービングに対して固定されているものであってもよいが、通常、敷設作業の容易性を勘案してチュービングに沿ってフリー状態で配設される。この場合、この光ファイバ圧力センサFSによって、チュービング内の圧力、及び温度が計測されることになる。チュービングの歪み等を検出する場合には、これらの検出用光ファイバ151,152をチュービングに対して適宜固定する必要がある。
基準用光ファイバ17は、第1及び第2光源1、20がそれぞれ射出する各光の周波数を調整するために使用される光ファイバであって、誘導ブリルアン散乱現象を起こす第1及び第2光における周波数差と誘導ブリルアン散乱現象に係る光の光強度との関係が予め既知の光ファイバである。また、基準用光ファイバ17をレイリー後方散乱光の計測に用いられる光の調整に用いてもよい。
温度検出部16は、基準用光ファイバ17の温度を検出する回路であり、検出温度を制御処理部13へ出力する。
歪み、圧力及び温度検出計14は、受光素子、光スイッチ、増幅回路、アナログ/ディジタル変換器、信号処理回路、スペクトルアナライザ及びコンピュータ等を備えて構成される。歪み、圧力及び温度検出計14は、制御処理部13と信号を入出力することによって、分布型光ファイバ圧力センサFSの各部を制御する。歪み、圧力及び温度検出計14は、光コネクタ27及び光サーキュレータ12を介して入力端子に入射された、基準用光ファイバ17から射出した誘導ブリルアン散乱現象に係る光の光強度を求め、この求めた光強度を制御処理部13へ出力する。
また、歪み、圧力及び温度検出計14は、制御処理部13と信号を入出力することによって、分布型光ファイバ圧力センサFSの各部を制御し、1×2光スイッチ29は、光サーキュレータ7と歪み、圧力及び温度検出計14とを接続し、誘導ブリルアン散乱現象に係る光が、歪み、圧力及び温度検出計14内の誘導ブリルアン散乱光用の1入力端子を有する受光素子に入射される。歪み、圧力及び温度検出計14は、内部のスイッチにより誘導ブリルアン散乱光用の受光素子と増幅回路とを接続し、所定のサンプリング間隔で受光した誘導ブリルアン散乱現象に係る光を検出することによって、検出用光ファイバ15の長尺方向における検出用光ファイバ15の各領域部分のブリルアンスペクトルをそれぞれ求め、この求めた各領域部分のブリルアンスペクトルに基づいて各領域部分のブリルアン周波数シフト量をそれぞれ求める。
また、歪み、圧力及び温度検出計14は、制御処理部13と信号を入出力することによって、分布型光ファイバ圧力センサFSの各部を制御し、1×2光スイッチ29は、光サーキュレータ7と光カプラ30とを接続し、レイリー後方散乱現象に係る光が、光カプラ30を介して歪み、圧力及び温度検出計14内のレイリー後方散乱光用の2入力端子を有する受光素子に入射される。歪み、圧力及び温度検出計14は、内部のスイッチによりレイリー後方散乱光用の受光素子と増幅回路とを接続し、所定のサンプリング間隔で受光したレイリー後方散乱現象に係る光を検出することによって、検出用光ファイバ15の長尺方向における検出用光ファイバ15の各領域部分のレイリースペクトルをそれぞれ求め、この求めた各領域部分のレイリースペクトルに基づいて各領域部分のレイリー周波数シフト量をそれぞれ求める。
さらに、歪み、圧力及び温度検出計14は、上記のようにして求めたブリルアン周波数シフト量及びレイリー周波数シフト量から、検出用光ファイバ15の軸方向の歪み分布、温度分布、及び第1検出用光ファイバ151の圧力分布を同時に且つ独立して検出する。
歪み、圧力及び温度検出計14の各入力端子から入射された各入射光は、それぞれ、光電変換を行う受光素子によって受光光量に応じた電気信号に変換される。誘導ブリルアン散乱現象に係る光として入射された入射光は、受光素子で電気信号に変換されることによって直接検波され、整合フィルタによってフィルタリングされ、アナログ/ディジタル変換器によってディジタルの電気信号に変換され、ブリルアンスペクトルを求めるために用いられる。レイリー後方散乱現象に係る光として入射された入射光は、受光回路で電気信号に変換されることによって直接検波され、整合フィルタによってフィルタリングされ、アナログ/ディジタル変換器によってディジタルの電気信号に変換され、レイリースペクトルを求めるために用いられる。また、必要に応じて、ディジタル変換される前に増幅回路によって電気信号が増幅される。
制御処理部13は、例えば、マイクロプロセッサ、ワーキングメモリ、及び、検出用光ファイバ15の軸方向の歪み、圧力及び温度の分布を高空間分解能で測定するために必要な各データを記憶するメモリ等を備える。制御処理部13は、歪み、圧力及び温度検出計14と信号を入出力することによって、検出用光ファイバ15の長尺方向における検出用光ファイバ15の軸方向の歪み、圧力及び温度の分布を高空間分解能で且つより遠距離まで測定するように、第1及び第2光源1、20、第1及び第2ATC10、18、第1及び第2AFC11、19、光パルス生成部3、光スイッチ4、22、光強度・偏光調整部6、1×2光スイッチ25、29、31、及び光強度調整部24を制御する電子回路である。
制御処理部13は、基準用光ファイバ17における、誘導ブリルアン散乱現象を起こす第1及び第2光における周波数差と誘導ブリルアン散乱現象に係る光の光強度との関係が予め記憶される記憶部と、歪み、圧力及び温度検出計14が求めた誘導ブリルアン散乱現象に係る光の光強度と基準用光ファイバ17における既知の前記関係とに基づいて第1及び第2光源1、20における第1及び第2発光素子が発光する各光の周波数差が予め設定される所定周波数差となるように、第1AFC11及び/又は第2AFC19を制御する周波数設定部とを機能的に備えている。また、制御処理部13は、基準用光ファイバ17における、レイリー後方散乱現象を起こす光を射出するように第1AFC11を制御する周波数設定部を機能的に備えている。
なお、これら第1及び第2光源1、20、第1及び第2ATC10、18、第1及び第2AFC11、19、光強度・偏光調整部6、光強度調整部24及び光強度変調器は、上記特許文献1を参考にすることができる。
ここで、検出用光ファイバに入射する光にスペクトル拡散方式を用いた場合におけるブリルアン周波数シフトについて以下に説明する。
スペクトル拡散方式、あるいはパルス圧縮方式は、いわゆるレーダ分野において、その計測可能距離を伸ばすために利用されている。これは、目標物を探知するために空間に放射されるパルス内部で周波数変調や位相変調等を用いることによってパルスのスペクトルを拡散し、目標物で反射された反射波にパルス圧縮と呼ばれる復調を施すことによって、目標物までの距離を探知するものである。これによって、パルスのエネルギーを大きくすることができ、計測可能距離を伸ばすことができる。スペクトル拡散は、一般に、信号を送信するために本来必要とされる帯域幅よりも意図的にその帯域幅を広くすることである。
このスペクトル拡散方式をBOTDAやBOTDRへ適用する場合、ブリルアン周波数シフトが非線形なプロセスを経て生じるため、光パルスのスペクトルを広げる(拡散する)と、これによって、第1に、励起される音響フォノンのスペクトルが広がるとともに、第2に、周波数毎の反射波の時系列信号におけるスペクトルも広がるという、スペクトルに二重の広がりが生じてしまう。このため、単純に、スペクトル拡散符号をBOTDAやBOTDRへ適用することができない。そこで、本願発明者は、以下に解析するように、光パルスをメイン光パルスとサブ光パルスとから構成し、メイン光パルスにスペクトル拡散方式を用いることによって、スペクトル拡散方式をBOTDAやBOTDRへ適用することができることを見出した。
以下に、BOTDAの場合について説明するが、同様に、BOTDRについても解析を行うことができる。
BOTDAでは、検出用光ファイバの一方端(z=0)からポンプ光が入射されるとともに、ポンプ光の周波数と異なる周波数のプローブ光が他方端から入射され、励起された音響フォノンの後方散乱がz=0の端点で観測される。ブリルアン・ゲイン・スペクトル(BGS)は、プローブ光のパワーの増分である。
まず、このポンプ光Ap(0,t)は、複素包絡線が式1によって表される形状を持った光パルスとする。
ここで、Ppは、ポンプ光のパワーであり、f(t)は、時刻tにおけるポンプ光の振幅を表す関数であって、その絶対値の最大が1となるように規格化されている。
また、式2によって関数を定義すると、そのフーリエ変換は、式3によって表される。この場合において、ブリルアン・ゲイン・スペクトルV(t、ν)は、2次元のコンボルーション(畳み込み、convolution)であり、式4によって表される。式4の右辺第1項が時変ローレンツスペクトルである。
ここで、上付きの*は、複素共役であることを表し、iは、複素単位である(i2=−1)。また、γは、利得係数であり、νB(z)は、位置zにおけるブリルアン周波数シフトである。そして、G(ν)は、ローレンツスペクトルであり、vgは、ポンプ光の群速度である。演算子*は、コンボルーションを表し、その上付き文字t,νは、これらの変数に関しての2次元のコンボルーションであることを表している。なお、乗算の演算子・は、記載が省略されている。
ここで、理想的には、式4の右辺第1項の時変ローレンツスペクトル自体が観測されることであるが、実際には、点広がり関数ψ(t、ν)とのコンボルーションでぼかされたブリルアン・ゲイン・スペクトルが観測される。このため、点広がり関数ψ(t、ν)が2次元デルタ関数もしくはそれに近いことが必要となる。したがって、ψ(t、ν)≒δ(t)δ(ν)となることが好ましい。
ここで、ポンプ光をメイン光パルスf1(t)とサブ光パルスf2(t)とから構成する。すなわち、ポンプ光の振幅f(t)は、式5となる。
このサブ光パルスは、メイン光パルスのために、音響フォノンを励起するように機能するものである。サブ光パルスのパルス幅Dsubは、少なくとも音響フォノンの寿命に較べて充分に長くする。音響フォノンの寿命は、通常、5ns程度である。
このメイン光パルスは、音響フォノンで散乱されたエネルギーをプローブ光に渡すように機能するものである。このメイン光パルスは、時間方向に所定の時間幅で複数のセルに分割され、スペクトル拡散方式が用いられて広帯域化される。広帯域とは、音響フォノンのスペクトル線幅(約30〜40MHz)に較べてである。このセルの時間幅がBOTDAの空間分解能を決め、この逆数がスペクトルの幅になる。例えば、セル幅(セル時間幅)が0.1nsである場合には、空間分解能は、1cmとなり、スペクトル幅は、10GHzとなる。そして、メイン光パルスのパルス幅Dは、計測可能距離を伸ばすためにポンプ光に与えるエネルギー量を決める。ここで、BOTDAの空間分解能は、上述したように、メイン光パルスのセル幅で決まるため、メイン光パルスのパルス幅Dは、BOTDAの空間分解能とは独立に設定することができる。したがって、メイン光パルスのパルス幅Dは、所望の計測可能距離に応じて適宜に決定可能である。このため、計測可能距離を従来より伸ばすことが可能となる。
このようにポンプ光を2成分で構成した場合に、ブリルアン・ゲイン・スペクトルV(t、ν)は、3つの成分から構成され、式6及び式7(式7−1〜式7−3)によって表される。
そして、その点広がり関数ψ(t、ν)は、式8によって表され、ポンプ光がメイン光パルスとサブ光パルスとから構成されることから、この点広がり関数ψ(t、ν)は、式9及び式10によって表される。
ここで、スペクトル拡散方式では、その復調に、そのスペクトル拡散方式に対応する整合フィルタ(マッチドフィルタ)が用いられ、整合フィルタのインパルス応答h(t)がf1(D−t)とされる(h(t)=f1(D−t))。整合フィルタは、例えば、スペクトル拡散に用いた信号(スペクトル拡散に符号系列を用いる場合ではその符号)を時間的に反転して、整合フィルタの入力とのコンボルーションを取るものである。
メイン光パルスは、スペクトル拡散方式を用い、サブ光パルスは、無変調で、そのパルス幅が充分に長いとすることから、点広がり関数ψ(t、ν)の成分ψ1,2(t、ν)は、式11のように近似可能であり、前記好ましい型になる。
ここで、Cpは、メイン光パルスとサブ光パルスとの振幅比である。
したがって、これに対応するブリルアン・ゲイン・スペクトルは、式12によって表される。
なお、ブリルアン・ゲイン・スペクトルV(t、ν)における他の成分V1,1(t、ν)及びV2,1(t、ν)は、メイン光パルスが疑似乱数によってスペクトル拡散されている場合には、フラットなスペクトルとなる。また、他の成分V2,2(t、ν)は、復調の際における整合フィルタによって抑圧される。
また、ブリルアン・ゲイン・スペクトルV(t、ν)における成分V1,1(t、ν)及びV2,2(t、ν)は、ポンプ光をメイン光パルスのみで構成、あるいはサブ光パルスのみで構成し、ブリルアン・ゲイン・スペクトルを計測することによって抽出可能である。
以上の解析から、本分布型光ファイバ圧力センサでは、検出用光ファイバに入射する光パルスを、スペクトル拡散方式を用いたメイン光パルスと無変調のサブ光パルスとの2成分で構成することによって、空間分解能と計測可能距離とを独立に設定することができるから、光ファイバに作用する歪み及び温度等を高空間分解能で測定可能としつつ、計測可能距離を伸ばしてより遠くまで測定することができる。
図1に示す分布型光ファイバ圧力センサFSは、ブリルアン周波数シフト量を計測する場合、BOTDAとして機能し、1×2光スイッチ25、29、31を切り換えることによって第1態様(両端測定)として動作する。図2は、図1に示す分布型光ファイバ圧力センサを第1態様で動作させた場合における分布型光ファイバ圧力センサの概略構成を示すブロック図である。
図2に示すように、両端測定時において、分布型光ファイバ圧力センサFSは、光パルス光源LSpによって生成されたサブ光パルス及びメイン光パルスをポンプ光として、軸方向の歪み、圧力及び温度を検出するための検出用光ファイバ15の一方端から入射するとともに、連続光光源LSCWによって生成された連続光を、プローブ光として検出用光ファイバ15の他方端から入射する。
分布型光ファイバ圧力センサFSは、歪み、圧力及び温度検出計14によって検出用光ファイバ15で生じた誘導ブリルアン散乱現象に係る光を受光し、歪み、圧力及び温度検出計14によってブリルアン・ゲイン・スペクトラム時間領域分析(BGain−OTDA)又はブリルアン・ロス・スペクトラム時間領域分析(BLoss−OTDA)を行うことにより、ブリルアン周波数シフト量を計測する。
光パルス光源LSpでは、レーザ光源LDから射出されたレーザ光が光信号生成器OSGにおいて疑似乱数発生器RGからの疑似乱数で位相変調されることによって、スペクトル拡散方式を用いたメイン光パルスが生成される。疑似乱数発生器RGで生成した疑似乱数は、復調のために、歪み、圧力及び温度検出計14へ通知される。そして、歪み、圧力及び温度検出計14では、検出用光ファイバ15から射出される誘導ブリルアン散乱現象に係る光が、疑似乱数発生器RGからの疑似乱数に応じた整合フィルタMFでフィルタリングされ、信号処理部SPでBOTDAの信号処理が施されることによって、ブリルアン周波数シフト量が計測される。
なお、以下、ブリルアン・ゲイン・スペクトラム時間領域分析又はブリルアン・ロス・スペクトラム時間領域分析は、ブリルアンスペクトラム時間領域分析と適宜略記される。このブリルアンスペクトラム時間領域分析では、誘導ブリルアン散乱現象に係る光は、ブリルアン増幅又は減衰を受けた光である。
また、図1に示す分布型光ファイバ圧力センサFSは、ブリルアン周波数シフト量を計測する場合、BOTDAとして機能し、光スイッチ25、29、31を切り換えることによって第2態様(片端測定)として動作する。図3は、図1に示す分布型光ファイバ圧力センサを第2態様で動作させた場合における分布型光ファイバ圧力センサの概略構成を示すブロック図である。
図3に示すように、片端測定時において、分布型光ファイバ圧力センサFSは、光パルス光源LSpによって生成されたサブ光パルス及びメイン光パルスをポンプ光として、そして、連続光光源LSCWによって生成された連続光をプローブ光として、検出用光ファイバ15の一方端から入射する。なお、メイン光パルスには、スペクトル拡散方式が用いられる。
分布型光ファイバ圧力センサFSは、歪み、圧力及び温度検出計14によって検出用光ファイバ15で生じた誘導ブリルアン散乱現象に係る光を受光し、歪み、圧力及び温度検出計14によってブリルアン・ゲイン・スペクトラム時間領域分析(BGain−OTDA)又はブリルアン・ロス・スペクトラム時間領域分析(BLoss−OTDA)を行うことにより、ブリルアン周波数シフト量を計測する。
次に、分布型光ファイバ圧力センサFSの動作について説明する。まず、測定開始に当たって、第1及び第2光源1、20から射出される各連続光の各周波数が基準用光ファイバ17を用いてそれぞれ調整(キャリブレーション)される。
より具体的には、制御処理部13は、第1ATC10及び第1AFC11と、第2ATC18及び第2AFC19とをそれぞれ制御することによって第1及び第2光源1、20を各所定周波数で各連続光をそれぞれ発光させ、これら各連続光を基準用光ファイバ17に互いに対向するように入射させる。これら第1光源1からの連続光及び第2光源20からの連続光は、基準用光ファイバ17で誘導ブリルアン散乱現象を起こし、この誘導ブリルアン散乱現象に係る光は、基準用光ファイバ17から光サーキュレータ12を介して歪み、圧力及び温度検出計14に入射される。
歪み、圧力及び温度検出計14は、この誘導ブリルアン散乱現象に係る光を受光し、この受光した誘導ブリルアン散乱現象に係る光の光強度を検出し、この検出した光強度を制御処理部13へ通知する。制御処理部13には、基準用光ファイバ17における、誘導ブリルアン散乱現象を起こす第1及び第2光における周波数差と誘導ブリルアン散乱現象に係る光の光強度との関係がその記憶部に予め記憶されている。制御処理部13は、この通知を受けると、その周波数設定部によって、第1及び第2光源1、20における第1及び第2発光素子が発光する各光の設定すべき所定周波数差faに対応する基準光強度Paを上記関係から求め、歪み、圧力及び温度検出計14が検出した測定光強度Pdがこの基準光強度Paと一致するように、第1AFC11及び第2AFC19を制御する。これによって第1及び第2光源1、20における第1及び第2発光素子が発光する各光の周波数差は、設定すべき所定周波数差faに調整される。なお、本実施の形態では、光強度Pdは、受光素子で光電変換された電圧値で与えられ、基準光強度Paは、この基準光強度Paに対応する電圧値となる。
ここで、基準用光ファイバ17における、誘導ブリルアン散乱現象を起こす第1及び第2光源1、20における周波数差と誘導ブリルアン散乱現象に係る光の光強度との関係は、一般に、温度依存性を有している。本実施の形態では、調整の際に、制御処理部13は、温度検出部16によって基準用光ファイバ17の温度を検出し、この検出温度に応じて基準用光ファイバ17における上記関係を補正している。このため、より高精度に調整を実行することが可能となる。
このように動作することによって第1及び第2光源1、20から射出される各連続光の各周波数が調整される。このような調整は、測定精度をより向上させる観点から、ブリルアンスペクトルを得る際に、掃引のために周波数が変更される毎に実行されても良いし、あるいは、測定時間を短縮させる観点から、歪み及び温度を測定毎に、又は、所定期間の経過毎に、さらに又は、分布型光ファイバ圧力センサFSの起動の際に、実行されても良い。
次に、歪み及び温度の計測動作について説明する。図4は、図1に示す分布型光ファイバ圧力センサFSによる軸方向の歪み、圧力及び温度の計測動作を説明するためのフローチャートである。
まず、ステップS1において、歪み、圧力及び温度検出計14は、第1及び第2ブリルアン周波数シフト量Δνb1、Δνb2を含む検出用光ファイバ15のブリルアン周波数シフト量Δνbを推定し、ブリルアン周波数シフト量Δνbを計測するための周波数の掃引範囲を決定し、決定した掃引範囲で第1及び第2光源1、20からの各連続光を発光させるように、制御処理部13に指示する。ここでのブリルアン周波数シフト量Δνbの推定は、例えば、予測される最大温度変化量及び最大歪み変化量等を基に行われる。なお、ブリルアン周波数シフト量を測定するための周波数の掃引範囲は狭いので、この周波数の掃引範囲は簡単に推定することができる。
次に、ステップS2において、歪み、圧力及び温度検出計14は、ブリルアン周波数シフト量Δνbを測定する。例えば、以下の処理により、ブリルアン周波数シフト量Δνbが得られる。
まず、制御処理部13は、第1ATC10及び第1AFC11と、第2ATC18及び第2AFC19とを制御することによって、第1及び第2光源1、20に各所定周波数で各連続光をそれぞれ発光させる。第1光源1から射出された連続光は、光カプラ2を介して光パルス生成部3に入射され、第2光源20から射出された連続光は、光カプラ21を介して光スイッチ22に入射される。
次に、制御処理部13は、光パルス生成部3を制御することによって、所定のポンプ光(サブ光パルス及びメイン光パルス)を生成させる。より具体的には、制御処理部13は、例えば、次のように光パルス生成部3を動作させることによって、ポンプ光を生成している。
図5は、図1に示す光パルス生成部3の構成及びその動作を説明するための図である。図6は、ポンプ光(サブ光パルス及びメイン光パルス)の構成及び整合フィルタを説明するための図であり、図6(A)は、ポンプ光の構成を示し、図6(B)は、整合フィルタを示す図である。
光パルス生成部3は、例えば、図5に示すように、入射光の光強度を変調するLN強度変調器101と、LN強度変調器101を駆動するための第1駆動回路を構成する直流電源102、乗算器103及びタイミングパルス発生器104と、入射光の位相を変調するLN位相変調器111と、LN位相変調器111を駆動するための第2駆動回路を構成する直流電源112、乗算器113及び疑似乱数発生器114と、エルビウム添加光ファイバ増幅器(EDFA)121と、入射光の光強度を変調するLN強度変調器131と、LN強度変調器131を駆動するための第3駆動回路を構成する直流電源132、乗算器133及びタイミングパルス発生器134とを備えて構成される。
LN位相変調器111は、例えば電気光学効果を有するニオブ酸リチウムの基板に、光導波路と信号電極と接地電極とが形成されることで構成され、両電極間に所定の信号を印加することによって生じる電気光学効果による屈折率変化に伴う位相変化をそのまま用いることにより、入射光の位相を変調する装置である。
LN強度変調器101、131は、例えば、マッハツェンダ干渉計を構成して電気光学効果による屈折率変化に伴う位相変化を強度変化に変えることにより、入射光の光強度を変調する装置である。なお、LN強度変調器101、131及びLN位相変調器111には、ニオブ酸リチウムの基板に代え、例えば、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム・タンタル酸リチウム固有体等の他の電気光学効果を有する基板が用いられてもよい。
第1駆動回路において、直流電源102は、強度変調すべく、LN強度変調器101の信号電極に印加する直流電圧を生成する電源回路であり、タイミングパルス発生器104は、LN強度変調器101を動作させるべく、動作タイミングパルスを生成するパルス生成回路であり、そして、乗算器103は、直流電源102から入力される直流電圧とタイミングパルス生成器104から入力される動作タイミングパルスとを乗算し、動作タイミングパルスに応じた直流電圧をLN強度変調器101へ出力する回路である。
第2駆動回路において、直流電源112は、位相変調すべく、LN位相変調器111の信号電極に印加する直流電圧を生成する電源回路であり、疑似乱数発生器114は、入射光をスペクトル拡散方式で変調するようにLN位相変調器111を動作させるべく、動作タイミングで疑似乱数を生成する疑似乱数生成回路であり、乗算器113は、直流電源112から入力される直流電圧と疑似乱数発生器114から入力される疑似乱数とを乗算し、疑似乱数に応じた直流電圧を位相変調器111へ出力する回路である。
EDFA121は、エルビウムを添加した光ファイバを備えて構成され、入射光を増幅して射出する光部品である。EDFA121は、検出用光ファイバ15における歪み及び温度の検出に適した光強度にすべく、入射光を予め設定された所定の増幅率で増幅する。これによって第1光源1から検出用光ファイバ15まで伝播する間において、損失(ロス)が発生する場合に、この損失も補償され、所定の計測範囲の測定が可能となる。
第3駆動回路において、直流電源132は、オン/オフ制御するようにLN強度変調器131を強度変調すべく、LN強度変調器131の信号電極に印加する直流電圧を生成する電源回路であり、タイミングパルス発生器134は、LN強度変調器131を動作させるべく、動作タイミングパルスを生成するパルス生成回路であり、乗算器133は、直流電源132から入力される直流電圧とタイミングパルス発生器134から入力される動作タイミングパルスとを乗算し、動作タイミングパルスに応じた直流電圧をLN強度変調器131へ出力する回路である。
このような光パルス生成部3を動作させることによって、例えば、図6(A)に示す構成のポンプ光を生成することができる。
図6(A)に示すポンプ光は、スペクトル拡散方式で符号化されたメイン光パルスと、無変調であって、このメイン光パルスと重なることなく(オーバラップすることなく)時間的に先行するサブ光パルスとから構成されている。メイン光パルスは、所定の時間幅(セル幅)で複数のセルに分割され、本実施の形態では、それら各セルがM系列バイナリ符号によって変調(符号化)されている。セル幅は、所望の空間分解能に応じて設定され、メイン光パルスのパルス幅は、所望の計測距離に応じて設定される。また、サブ光パルスは、音響フォノンを完全に立ち上げることができるパルス幅とされ、図6(A)に示す例では、メイン光パルスの光強度と同レベルの光強度とされている。
サブ光パルスとメイン光パルスとは、図6(A)に示す例では、時間的に連続しているが、時間的に分離していてもよい。時間的に分離している場合には、サブ光パルスによって立ち上げられた音響フォノンが消失しないうちに、メイン光パルスが前記音響フォノンに作用する時間間隔に設定されることが好ましい。通常、音響フォノンの寿命は、約5nsであるので、サブ光パルスとメイン光パルスとの時間間隔は、約5ns以内であることが好ましい。
図6(A)に示す構成のポンプ光を生成するために、図5において、まず、第1光源1から射出された連続光L1は、光カプラ2を介して光パルス生成部3のLN強度変調器101に入射される。
光パルス生成部3では、ポンプ光の生成タイミングで、サブ光パルスのパルス幅Dsubとメイン光パルスのパルス幅Dとに相当するパルス幅(Dsub+D)の動作タイミングパルスがタイミングパルス発生器104から乗算器103へ出力され、直流電源102から入力された直流電圧と乗算され、パルス幅(Dsub+D)の直流電圧がLN強度変調器101の信号電極に印加される。これによって、LN強度変調器101は、動作タイミングパルスに応じてそのパルス幅(Dsub+D)に相当する時間幅(Dsub+D)の間、オンされ、連続光L1は、LN強度変調器101で、パルス幅(Dsub+D)の光パルスL2となって射出される。
そして、光パルス生成部3では、メイン光パルスの生成タイミングで、メイン光パルスのパルス幅Dに相当する時間幅Dの間、疑似乱数がセル幅の時間タイミングで疑似乱数発生器114から乗算器113へ順次に出力され、直流電源112から入力された直流電圧と乗算され、メイン光パルスの生成タイミングから時間幅Dで、M系列バイナリ符号で変調された直流電圧がセル幅の時間タイミングでLN位相変調器111の信号電極に順次に印加される。
すなわち、M系列バイナリ符号で変調された直流電圧は、M系列バイナリ符号が“+”の場合に対応する直流電圧がLN位相変調器111に供給された場合にLN位相変調器111から射出される光の位相とM系列バイナリ符号が“−”の場合に対応する直流電圧がLN位相変調器111に供給された場合にLN位相変調器111から射出される光の位相とが互いに180度異なるような電圧値である。これによって、光パルスL2は、LN位相変調器111で、無変調の部分(サブ光パルスに対応する)とM系列バイナリ符号で変調された部分(メイン光パルスに対応する)とからなる光パルスL3となって射出される。
そして、EDFA121では、光パルスL3が所定の光強度となるまで増幅され、光パルスL4となって射出される。
さらに、光パルス生成部3では、ポンプ光の生成タイミングに応じて、サブ光パルスのパルス幅Dsubとメイン光パルスのパルス幅Dに相当するパルス幅(Dsub+D)の動作タイミングパルスがタイミングパルス発生器134から乗算器133へ出力され、直流電源132から入力された直流電圧と乗算され、パルス幅(Dsub+D)の直流電圧がLN強度変調器131の信号電極に印加される。これによって、光パルスL4は、LN強度変調器131で、EDFA121で光パルスL4に付随した自然放出光(ASE)等のノイズが除去され、パルス幅Dsubであって無変調であるサブ光パルスとパルス幅Dであってスペクトル拡散方式で符号化されたメイン光パルスとから成るポンプ光L5となって射出される。
そして、制御処理部13は、光パルス生成部3におけるポンプ光(サブ光パルス及びメイン光パルス、光パルスL4)の生成タイミングに応じて、光スイッチ4及び光スイッチ22をオンする。制御処理部13は、ポンプ光(サブ光パルス及びメイン光パルス)の生成タイミングを歪み、圧力及び温度検出計14に通知する。
光スイッチ4がオンされると、ポンプ光(サブ光パルス及びメイン光パルス)は、光カプラ5に入射され、2つに分岐される。分岐された一方のポンプ光は、光強度・偏光調整部6に入射され、光強度・偏光調整部6でその光強度が調整され、その偏光方向がランダム(無作為)に調整され、光サーキュレータ7、光カプラ8及び光コネクタ9を介して検出用光ファイバ15の一方端に入射される。一方、光カプラ5で分岐された他方のサブ光パルス及びメイン光パルスは、歪み、圧力及び温度検出計14に入射される。
歪み、圧力及び温度検出計14は、ポンプ光(サブ光パルス及びメイン光パルス)のスペクトルを計測し、ポンプ光の周波数及び光強度を制御処理部13へ通知する。制御処理部13は、この通知を受けると、最適な測定結果が得られるように必要に応じて、第1ATC10、第1AFC11及び光強度・偏光調整部6を制御する。
一方、光スイッチ22がオンされると、連続光(プローブ光)は、光カプラ23に入射され、2つに分岐される。分岐された一方のプローブ光(連続光)は、光強度調整部24に入射され、光強度調整部24でその光強度が調整され、1×2光スイッチ25に入射される。1×2光スイッチ25は、第1態様でブリルアンスペクトラム時間領域分析(BOTDA)が実行される場合には、入力端子から入射された光が光コネクタ26を介して検出用光ファイバ15の他方端へ入射されるように切り換えられており、プローブ光(連続光)は、光コネクタ26を介して検出用光ファイバ15の他方端へ入射される。
一方、1×2光スイッチ25は、第2態様でブリルアンスペクトラム時間領域分析(BOTDA)が実行される場合には、入力端子から入射された光が光カプラ8及び光コネクタ9を介して検出用光ファイバ15の一方端へ入射されるように切り換えられており、プローブ光(連続光)は、光カプラ8及び光コネクタ9を介して検出用光ファイバ15の一方端へ入射される。一方、光カプラ23で分岐された他方のプローブ光(連続光)は、歪み、圧力及び温度検出計14に入射される。
歪み、圧力及び温度検出計14は、プローブ光(連続光)のスペクトルを計測し、プローブ光の周波数及び光強度を制御処理部13へ通知する。制御処理部13は、この通知を受けると、最適な測定結果が得られるように必要に応じて、第2ATC18、第2AFC19及び光強度調整部24を制御する。
第1態様のブリルアンスペクトラム時間領域分析では、検出用光ファイバ15の一方端に入射したポンプ光(サブ光パルス及びメイン光パルス)は、検出用光ファイバ15の他方端から入射され検出用光ファイバ15を伝播するプローブ光(連続光)と誘導ブリルアン散乱現象を生じさせながら検出用光ファイバ15の一方端から他方端へ伝播する。第2態様のブリルアンスペクトラム時間領域分析では、検出用光ファイバ15の一方端に入射したポンプ光(サブ光パルス及びメイン光パルス)は、検出用光ファイバ15の一方端から入射され検出用光ファイバ15の他方端で反射して検出用光ファイバ15を伝播するプローブ光(連続光)と誘導ブリルアン散乱現象を生じさせながら検出用光ファイバ15の一方端から他方端へ伝播する。このようなポンプ光とプローブ光との相互作用に基づいて光スイッチ4及び光スイッチ22におけるオン/オフのタイミングが制御処理部13によって調整される。
1×2光スイッチ29は、第1態様又は第2態様でブリルアンスペクトラム時間領域分析(BOTDA)が実行される場合には、入力端子から入射された光が歪み、圧力及び温度検出計14へ入射されるように切り換えられている。したがって、誘導ブリルアン散乱現象に係る光は、検出用光ファイバ15の一方端から射出され、光コネクタ9、光カプラ8、光サーキュレータ7及び1×2光スイッチ29を介して歪み、圧力及び温度検出計14に入射される。
歪み、圧力及び温度検出計14では、誘導ブリルアン散乱現象に係る光は、上述したように直接検波によって抽出され、受光素子によって電気信号に変換され、整合フィルタによってフィルタリングされる。この整合フィルタは、例えば、図6(B)に示すように、光パルス生成部3のLN位相変調器111でM系列バイナリ符号によって位相変調した位相変調パターン(P1P2P3・・・Pn−1Pn)を時間的に反転した逆位相変調パターン(PnPn−1・・・P3P2P1)のフィルタである。
例えば、メイン光パルスの各セルがM系列バイナリ符号によって“+−++−+・・・+−”の位相変調パターンで変調されている場合には、整合フィルタは、この位相変調パターンを時間的に反転した“−+・・・+−++−+”の逆パターンとなる。このような整合フィルタを用いることによって、スペクトル拡散符号化されたメイン光パルスに起因した誘導ブリルアン散乱現象に係る光を精度よく検出することが可能となる。歪み、圧力及び温度検出計14は、制御処理部13から通知された生成タイミングに基づいて、この受光した誘導ブリルアン散乱現象に係る光を時間領域分析し、第1検出用光ファイバ151及び第2検出用光ファイバ152を含めた検出用光ファイバ15の長尺方向における誘導ブリルアン散乱現象に係る光の光強度の分布を測定する。
ここで、誘導ブリルアン散乱現象に係るポンプ光(サブ光パルス及びメイン光パルス)とプローブ光(連続光)との間における相互作用の程度は、これら各光の偏光面の相対関係に依存するが、本実施の形態に係る分布型光ファイバ圧力センサFSでは、測定毎に光強度・偏光調整部6でポンプ光の偏光面がランダムに変わるので、測定を複数回実行してその平均値を採用することによって、この依存性を実質的に解消することができる。このため、精度よく誘導ブリルアン散乱現象に係る光の光強度の分布を得ることができる。
このような検出用光ファイバ15の長尺方向における誘導ブリルアン散乱現象に係る光の光強度の分布が、例えば第2光源20から射出されるプローブ光(連続光)の周波数を制御処理部13の制御によって所定の周波数間隔で所定の周波数範囲で掃引することによって、各周波数において高精度且つ高空間分解能で測定される。その結果、検出用光ファイバ15の長尺方向の各領域部分におけるブリルアンスペクトルが高精度且つ高空間分解能で得られる。
そして、歪み、圧力及び温度検出計14は、検出用光ファイバ15に歪みを作用していない部分におけるブリルアンスペクトルのピークに対応する周波数を基準に、検出用光ファイバ15の長尺方向の各領域部分におけるブリルアンスペクトルのピークに対応する周波数の差を求めることによって、検出用光ファイバ15の長尺方向の各部分におけるブリルアン周波数シフト量を高精度且つ高空間分解能で求める。
再び、図4を参照して、次に、歪み及び温度検出計14は、ステップS3において、上記の処理により求めたブリルアン周波数シフト量Δνbからレイリー周波数シフト量Δνrを推定し、ステップS4において、推定したレイリー周波数シフト量Δνrからレイリー後方散乱光を計測するためのパルス光の周波数の掃引範囲を決定する。
なお、前記レイリー周波数シフト量Δνrの推定と、パルス光の周波数の掃引範囲の決定は、検出用光ファイバ15が第1検出用光ファイバ151と第2検出用光ファイバ152とを含むので、厳密には第1及び第2検出用光ファイバ151、152間で異なる。しかし、本実施の形態では、簡単のため、第2検出用光ファイバ152のレイリー周波数シフト量Δν2を推定し、この推定に基づき第1及び第2検出用光ファイバ151、152を含めた検出用光ファイバ15のパルス光の掃引範囲を決定している。
具体的には、第2検出用光ファイバ152のブリルアン周波数シフト量Δνb2及びレイリー周波数シフト量Δνr2は、軸方向の歪みの変化量をΔε2、圧力の変化量をΔP、温度の変化量をΔTとすると、下記式で表される。下記式において、B11≒0.05×10−3GHz/με、B12≒1.07×10−3GHz/℃、R11≒−0.15GHz/με、R12≒−1.25GHz/℃である。
なお、第2検出用光ファイバ152の検出範囲において内部が基準圧力に保たれた圧力遮蔽管33に挿通されているので、第2検出用光ファイバ152のブリルアン周波数シフト量Δνb2は、圧力による影響を受けない。
Δνb2=B11×Δε2+B12×ΔT …(13)
Δνr2=R11×Δε2+R12×ΔT …(14)
上記の式13と式14とを比較すると、レイリー周波数シフト量Δνr2の感度は、ブリルアン周波数シフト量Δνb2に比して非常に高いことがわかる。これは、計測精度を向上させるには非常に有利であるが、ブリルアン周波数シフト量Δνb2を計測するための周波数の掃引範囲と同様にレイリー周波数シフト量Δνr2を計測するための周波数の掃引範囲を決定した場合、レイリー周波数シフト量Δνr2を計測するための周波数の掃引範囲が非常に広くなり、計測に長時間を要することとなる。
このため、本実施の形態で、既にステップS2で測定されたブリルアン周波数シフト量Δνbのうち第2検出用光ファイバ152に対応するブリルアン周波数シフト量Δνb2からレイリー周波数シフト量Δνr2を推定する。例えば、ブリルアン周波数シフト量Δνb2=300MHzが測定によって得られた場合、まず、すべての変化が温度の影響によるものと仮定すると、Δε2=0となり、式13から、ΔT≒300℃が得られる。このΔT=300℃を式14へ代入すると、Δνr2=−375GHzが得られる。
次に、すべての変化が歪みの影響によるものと仮定すると、ΔT=0となり、式13から、Δε2=6000μεが得られる。このΔε=6000μεを式14へ代入すると、Δνr2=−900GHzが得られる。この場合、レイリー周波数シフト量Δνr2を計測するための周波数の掃引範囲として、−375GHzから−900GHzまでの範囲が決定される。したがって、−375GHzの近辺から−900GHzの近辺までを掃引すれば、短時間でレイリー周波数シフト量Δνr2を計測することが可能となる。
なお、周波数の掃引範囲は、上記のようにして求めた2つの周波数をそのまま用いてもよいし、所定の測定マージン量を適宜付加したり、計測時間を短縮するために掃引範囲を所定量だけ狭くする等の種々の変更が可能である。また、この例では、温度変化量の下限は0℃、歪みの大きさは制限無しという想定での場合を示したが、装置の適用対象に応じて温度変化量や歪みの大きさの範囲は変わってもよい。温度変化量に上限と下限、また、歪みの大きさに上限が想定される場合にも、それに応じてレイリー周波数掃引範囲が決定される。
また、上記のように第2検出用光ファイバ152のブリルアン周波数シフト量Δνb2から第2検出用光ファイバ152のレイリー周波数シフト量Δνr2を求めてもよいが、例えば各検出用光ファイバ151、152のそれぞれのブリルアン周波数シフト量Δνb1、Δνb2から、各レイリー周波数シフト量Δνr1、Δνr2を推定し、これらの各推定値に基づき、各々の光ファイバの掃引範囲を決定してもよいし、第1検出用光ファイバ151のブリルアン周波数シフト量Δνb1から同検出用光ファイバ151のレイリー周波数シフト量Δνr1を推定し、この推定値に基づき第1及び第2検出用光ファイバ151、152のパルス光の掃引範囲を決定してもよい。
この場合、第1検出用光ファイバ151のレイリー周波数シフト量Δνr1の推定は、以下の手法により行われる。
すなわち、第1検出用光ファイバ151のブリルアン周波数シフト量Δνb1及びレイリー周波数シフト量Δνr1は、軸方向の歪みの変化量をΔε1、圧力の変化量をΔP、温度の変化量をΔTとすると、下記式で表される。下記式において、B11≒0.05×10−3GHz/με、B12≒1.07×10−3GHz/℃、B13=9.01×10−7MHz/Pa、R11≒−0.15GHz/με、R12≒−1.25GHz/℃である。
Δνb1=B11×Δε1+B12×ΔT+B13×ΔP …(15)
Δνr1=R11×Δε1+R12×ΔT …(16)
なお、レイリー散乱現象は光ファイバ固有の性状(密度のゆらぎ)に依存した現象のため、レイリー周波数シフト量は光ファイバに作用する圧力の変化量に依存せず、このため、式16において式15の右辺第3項(圧力によるブリルアン周波数シフト量)に相当する項は存在しない。
上記式13と式15において、第1及び第2検出用光ファイバ151、152の軸方向歪み変化量Δε1、Δε2が等しい(Δε1=Δε2)と仮定して、仮定圧力変化量ΔPsを求める。
ΔPs=(Δνb1―Δνb2)/B13 …(17)
そして、歪み、圧力及び温度検出計14は、ステップS2の処理により求めた第1検出用光ファイバ152のブリルアン周波数シフト量Δνb1と、上記処理において求めた第1検出用光ファイバ151に作用する仮定圧力変化量ΔPsから、圧力変化による影響を排除した第1検出用光ファイバ151の補正ブリルアン周波数シフト量Δνb1’を求める。この補正ブリルアン周波数シフト量Δνb1’は下記式で表される。
Δνb1’=Δνb1−B13×ΔPs=Δνb2 …(18)
次に、歪み、圧力及び温度検出計14は、上記処理により求めた補正ブリルアン周波数シフト量Δνb1’からレイリー周波数シフト量Δνr1を推定し、推定したレイリー周波数シフト量Δνr1からレイリー後方散乱光を計測するためのパルス光の周波数の掃引範囲を決定する。この推定手法については、上記で説明した、第2検出用光ファイバ152のブリルアン周波数シフト量Δν2から第2検出用光ファイバ152のレイリー周波数シフト量Δνr2を推定する手法と同様であるので、ここでは説明を省略する。
次に、ステップS5において、歪み、圧力及び温度検出計14は、上記のようにして決定した周波数の掃引範囲を用いて、レイリー周波数シフト量Δνr(Δνr1、Δνr2)を測定する。例えば、以下の処理により、レイリー周波数シフト量Δνrが得られる。
まず、制御処理部13は、第1ATC10及び第1AFC11を制御することによって、第1光源1に所定周波数で連続光を発光させる。第1光源1から射出された連続光は、光カプラ2を介して光パルス生成部3及び1×2光スイッチ31に入射され、1×2光スイッチ31は、第1光源1から射出された連続光を光カプラ30へ出力する。なお、レイリー周波数シフト量の計測時において、光スイッチ22はオフされており、検出用光ファイバ15の他方端から光は入射されない。
次に、制御処理部13は、光パルス生成部3を制御することによって、レイリー散乱現象を利用するためのパルス光を生成させる。より具体的には、制御処理部13は、例えば、以下のように光パルス生成部3を動作させることによって、パルス光を生成している。
図7は、図1に示す光パルス生成部3から射出されるパルス光の一例を示す図であり、図7(A)は、パルス光の波長を示し、図7(B)はパルス光の波形を示している。図7(B)に示すパルス光は、所定レベルの矩形波であり、図7(A)に示すように、所定数のパルス毎にその周期が所定周波数だけ順次増加される。なお、図7(A)では、図示を容易にするために、周波数が線形的に増加するように模式的に図示しているが、厳密には、数パルス毎にその周波数が増加され、パルス光の周波数はステップ状に増加される。また、後述する加算平均を行わない場合、すなわち、1パルスでレイリー後方散乱光を計測する場合は、1パルス毎にその周波数を増加するようにしてもよい。
なお、パルス光は、この例に特に限定されず、レイリー散乱現象を利用できれば、種々の形態の光等を用いることができる。また、レイリー散乱現象を利用する光に、上記の誘導ブリルアン散乱現象に利用する光と同様に、M系列バイナリ符号によって変調(符号化)する等の種々の方法を適用してもよい。
図7に示すパルス光を生成するために、第1光源1から射出された連続光は、光カプラ2を介して光パルス生成部3のLN強度変調器101に入射される。光パルス生成部3では、パルス光の生成タイミングで、パルス光のパルス幅に相当する動作タイミングパルスがタイミングパルス発生器104から乗算器103へ出力され、直流電源102から入力された直流電圧と乗算され、パルス幅の直流電圧がLN強度変調器101の信号電極に印加される。これによって、LN強度変調器101は、動作タイミングパルスに応じてそのパルス幅に相当する時間幅の間、オンされ、連続光は、図7(B)に示すパルス幅の光パルスとなって射出される。その後、パルス光は、LN位相変調器111を介してEDFA121へ入射され、光パルスが所定の光強度となるまで増幅され、LN強度変調器131を介して光スイッチ4へ射出される。
そして、制御処理部13は、光パルス生成部3におけるパルス光の生成タイミングに応じて、光スイッチ4をオンし、パルス光の生成タイミングを歪み、圧力及び温度検出計14に通知する。
光スイッチ4がオンされると、パルス光は、光カプラ5に入射され、2つに分岐される。分岐された一方のパルス光は、光強度・偏光調整部6に入射され、光強度・偏光調整部6でその光強度が調整されるとともに、その偏光方向がランダム(無作為)に調整され、光サーキュレータ7、光カプラ8及び光コネクタ9を介して検出用光ファイバ15の一方端に入射される。一方、光カプラ5で分岐された他方のパルス光は、歪み、圧力及び温度検出計14に入射される。
歪み、圧力及び温度検出計14は、パルス光のスペクトルを計測し、パルス光の周波数及び光強度を制御処理部13へ通知する。制御処理部13は、この通知を受けると、最適な測定結果が得られるように必要に応じて、第1ATC10、第1AFC11及び光強度・偏光調整部6を制御する。
検出用光ファイバ15の一方端に入射したパルス光は、検出用光ファイバ15内で散乱されてレイリー散乱現象を生じさせ、レイリー散乱現象に係る光は、検出用光ファイバ15の一方端から射出され、光コネクタ9、光カプラ8、光サーキュレータ7及び1×2光スイッチ29を介して光カプラ30に入射される。この結果、光カプラ30により混合された2つの光が歪み、圧力及び温度検出計14に入射される。なお、このレイリー散乱現象は、第1検出用光ファイバ151内と、第2検出用光ファイバ152内の双方で生じ、これらレイリー散乱現象に係る光が共に検出用光ファイバ15の一方端から射出される。
上記のようにして、第1光源1は、波長可変光源として機能し、時間とともにパルス光の波長を変化させ、光パルス生成部3は、光強度変調器、光増幅器及び光強度変調器として機能し、所定パルス幅のパルスを作成し、光強度・偏光調整部6は、高速偏波スクランブラーとして機能し、各パルス光にランダムな偏波面を与える。光カプラ30は、第1光源1からの連続波と検出用光ファイバ15からのレイリー後方散乱光とを混合させ、歪み、圧力及び温度検出計14の受光素子は、これらの光をホモダイン受信する。
このとき、光強度・偏光調整部6により各パルス光にランダムな偏光面を測定毎に与えているので、歪み、圧力及び温度検出計14は、波長の変化分のレイリー後方散乱光を加算して平均を取ることにより、平滑なレイリー後方散乱光を得ることができ、このレイリー後方散乱光のレベルから各距離の損失を換算することができる。
このような検出用光ファイバ15の長尺方向におけるレイリー散乱現象に係る光の光強度の分布が、パルス光の周波数を制御処理部13の制御によって所定の周波数範囲で掃引することによって、各周波数において高精度且つ高空間分解能で測定される。その結果、第1検出用光ファイバ151及び第2検出用光ファイバ152を含む検出用光ファイバ15の長尺方向の各領域部分におけるレイリースペクトルが高精度且つ高空間分解能で得られる。
そして、歪み、圧力及び温度検出計14は、検出用光ファイバ15に歪みが作用していない部分におけるレイリースペクトルと、検出用光ファイバ15の長尺方向の各領域部分におけるレイリースペクトルとの相関関係係数を計算することによって、検出用光ファイバ15の長尺方向の各部分におけるレイリー周波数シフト量を高精度且つ高空間分解能で求める。
図8は、図1に示す分布型光ファイバ圧力センサFSにより計測された第2検出用光ファイバ152のレイリー周波数シフト量の一例を示す図である。図8(A)は、歪みがある場合と歪みがない場合とのレイリースペクトルを示し、図8(B)は、歪みがある場合と歪みがない場合との相関関係係数を示している。図8(A)に示すように、歪みがある場合のレイリースペクトルが図中の実線であり、歪みがない場合のレイリースペクトルが図中の破線であり、両者の相関関係係数を計算すると、図8(B)に示すようになり、両者の相関関係係数のピークのオフセット量Δvr2がレイリー周波数シフト量となる。
このΔvr2だけ、歪みがある場合のレイリースペクトル(実線)を移動させると、図8(C)のようになり、歪みがある場合のレイリースペクトル(実線)と歪みがない場合のレイリースペクトル(破線)とがほぼ一致しており、レイリー周波数シフト量を高精度且つ高空間分解能で求めることができたことがわかる。なお、第1検出用光ファイバ151のレイリー周波数シフト量もこれら第2検出用光ファイバ152のレイリーシフト量Δνb2と同様に求めることができる。
最後に、ステップS6おいて、歪み、圧力及び温度検出計14は、上記のようにして得られたブリルアン周波数シフト量Δνb(Δνb1、Δνb2を含む)とレイリー周波数シフト量Δνr(Δνr1、Δνr2を含む)とから、検出用光ファイバ15の長尺方向の各部分における検出用光ファイバ15の軸方向の歪みと温度とを検出する。
歪み、圧力及び温度検出計14は、式13〜式16の連立方程式に、各領域部分のブリルアン周波数シフト量Δνb1、Δνb2及びレイリー周波数シフト量Δνr1、Δνr2を代入し、ガウスの消去法を用いて、検出用光ファイバ15の長尺方向の各領域部分における圧力の変化量ΔP、及び温度の変化量ΔT並びに各検出用光ファイバ151、152の軸方向の歪み変化量Δε1、Δε2を求め、求めた圧力の変化量ΔP、及び温度の変化量ΔT、並びに軸方向の歪みの変化量Δε1、Δε2を所定の基準圧力、基準温度、及び基準歪みに加算し、最終的に圧力及び温度並びに軸方向の歪みを高精度且つ高分解能で求める。この求めた値のうち、例えば第1検出用光ファイバ151の長尺方向の各領域部分における圧力及び温度の分布は、CRT表示装置やXYプロッタやプリンタ等の不図示の出力部に提示される。なお、第1及び第2検出用光ファイバ151、152が計測対象としての物体に固定される場合には、第1検出用光ファイバ151の軸方向の歪みをこの物体の検出用光ファイバ15に沿った方向の歪みとして出力部に提示するようにしてもよい。
なお、第1及び第2検出用光ファイバ151、152の長尺方向の各領域部分における温度の分布は、この両検出用光ファイバ151、152の相互間で同一又は略同一であり、これが計測対象に作用する温度の分布となる。
上記の構成により、本実施の形態の分布型光ファイバ圧力センサFSでは、圧力遮蔽管33に挿通されることにより外圧から遮断された第2検出用光ファイバ152が、外圧をも作用している第1検出用光ファイバ151と近接した位置に略平行に配設されているので、計測対象における特定位置に対応する位置での第1及び第2の検出用光ファイバ151、152の温度はいずれの光ファイバ151、152でも同一又は略同一の値となる。従って、この分布型光ファイバ圧力センサFSによれば、検出用光ファイバ15の長尺方向について圧力差が存在する環境下においても、第1及び第2検出用光ファイバ151、152によって計測されたブリルアン周波数シフト量Δνb1、Δνb2と、レイリー周波数シフト量Δνr1、Δνr2とを計測しているので、これらの4つの周波数シフト量を用いて、4つの未知数、すなわち第1及び第2の光ファイバに作用した軸方向の各歪み変化量Δε1、Δε2、及び各光ファイバに共通して作用する温度変化量ΔT、並びに第1検出用光ファイバ151に作用する圧力の変化量ΔPを同時且つ独立して算出することができ、第1及び第2の光ファイバ151、152が敷設された計測対象の温度と圧力を同時に且つ独立して高空間分解能で計測することができる。この結果、約0.1mの空間分解能で且つ0.1MPa以下又は約±0.1℃以下の精度で圧力や温度を検出することができた。
なお、計測対象における特定位置に対応する位置での各検出用光ファイバ151、152の軸方向の歪み変化量Δε1、Δε2は、圧力や、圧力遮蔽管33の影響等により必ずしも相互に一致しないが、例えば第1の光ファイバが計測対象(特に物体)に固定されている場合、光ファイバの軸方向歪みがこの物体の光ファイバに沿った方向の歪みと等しくなることから、第1の光ファイバの軸方向歪みを計測することで計測対象である物体の歪みを計測することも可能となる。
また、図1に示す構成の分布型光ファイバ圧力センサFSは、その構成要素を改良してBOTDRを構成することも可能である。
図9は、図1に示す分布型光ファイバ圧力センサをBOTDRに構成した場合における分布型光ファイバ圧力センサの構成を示すブロック図である。
図9において、BOTDRの分布型光ファイバ圧力センサFSは、第1光源1と、光パルス生成部3と、光スイッチ4と、光カプラ5と、光強度・偏光調整部6と、光サーキュレータ7と、1×2光スイッチ35と、光コネクタ9、26と、第1ATC10と、第1AFC11と、制御処理部13と、歪み、圧力及び温度検出計14と、第1検出用光ファイバ251と、第2検出用光ファイバ252と、圧力遮蔽管33とを備えて構成されている。
なお、1×2光スイッチ35の入力端子は、光サーキュレータ7の出力端子に光学的に接続され、一方の出力端子は、光コネクタ9に光学的に接続され、他方の出力端子は、光コネクタ26に光学的に接続される。この1×2光スイッチ35も、1×2光スイッチ25、29、31と同様に、光路を切り換えることによって、入力端子から入射された光を2個の出力端子のうちのいずれか一方から射出する1入力2出力の光スイッチであり、例えば、機械式光スイッチや光導波路スイッチ等が利用される。この1×2光スイッチ35は、制御処理部13の制御(又は手動)に従って、第1検出用光ファイバ251の各周波数シフト量を検出する場合には、入力端子から入射された光が光コネクタ9を介して第1検出用光ファイバ251の一方端へ入射されるように、1×2光スイッチ35が切り換えられ、第2検出用光ファイバ252の各周波数シフト量を検出する場合には、入力端子から入射された光が光コネクタ26を介して第2検出用光ファイバ252の一方端へ入射されるように、1×2光スイッチ35が切り換えられる。
BOTDRの場合では、歪み、圧力及び温度検出計14は、制御処理部13と信号を入出力することによって、分布型光ファイバ圧力センサFSの各部を制御し、所定のサンプリング間隔で受光した自然ブリルアン散乱現象に係る光を検出することによって、第1検出用光ファイバ251又は第2検出用光ファイバ252の各領域部分のブリルアン・ゲイン・スペクトルをそれぞれ求め、この求めた各領域部分のブリルアン・ゲイン・スペクトルに基づいて各領域部分のブリルアン周波数シフト量をそれぞれ求める。
歪み、圧力及び温度検出計14の入力端子から入射された各入射光は、光電変換を行う受光素子によって受光光量に応じた電気信号に変換され、アナログ/ディジタル変換器によってこの電気信号がディジタルの電気信号に変換され、ブリルアン・ゲイン・スペクトルを求めるために用いられる。このとき、光バンドパスフィルタ(以下、「光BPF」と略記する。)が用いられ、この光BPFは、狭い所定の透過周波数帯域の光部品、すなわち、狭い所定の周波数帯域の光を透過するとともに、この所定の周波数帯域を除く帯域の光を遮断する光部品であり、例えば、以下の狭線幅光バンドパスフィルタが用いられる。
図10は、狭線幅光バンドパスフィルタを説明するための図である。図10(A)は、狭線幅光バンドパスフィルタの構成を示すブロック図であり、図10(B)乃至(D)は、狭線幅光バンドパスフィルタの動作を説明するための図である。
光サーキュレータ7から歪み、圧力及び温度検出計14の入力端子へ入射された入射光は、例えば、図10に示す光BPFによってフィルタリングされ、自然ブリルアン散乱現象に係る光が抽出される。また、入射光は、受光素子によって電気信号に変換され、整合フィルタによってフィルタリングされ、アナログ/ディジタル変換器によってディジタルの電気信号に変換され、ブリルアン・ゲイン・スペクトルを求めるために用いられる。また、必要に応じて、ディジタル変換される前に増幅回路によって電気信号が増幅される。
光BPF310は、例えば、図10(A)に示すように、第1ファブリペローエタロンフィルタ(以下、「EF」と略記する。)311と、第1EF311に光学的に接続される第2EF312とを備えて構成される。第1EF311は、図10(B)に示すように、その半値全幅FWHM1が、光BPF310における所定の透過周波数帯域に相当する周波数幅であるように設定されるとともに、その透過周波数帯域の中心周波数fa1の一つが、光BPF310における透過周波数帯域の中心周波数faと一致するように設定される。
第2EF312は、図10(C)に示すように、そのFSR(Free Spectral Range、フリースペクトラムレンジ)2が光パルス(サブ光パルス及びメイン光パルス)の周波数と自然ブリルアン後方散乱光の周波数との間の周波数間隔より広くなるように設定されるとともに、その透過周波数帯域が第1EF311の透過周波数帯域を含むようにするために、その半値全幅FWHM2が第1EF311の半値全幅FWHM1以上に設定され、そして、その透過周波数帯域の中心周波数fa2の一つが光BPF310における透過周波数帯域の中心周波数faと一致するように設定される。
このような構成の光BPF310では、第1EF311で、所定の透過周波数帯域に相当する周波数の光が透過する。すなわち、第1EF311のFSR1毎に半値全幅FWHM1に相当する周波数の光が透過する。そして、第1EF311を透過した光は、第2EF312で、第1EF311の中心周波数fa1の透過周波数帯域に相当する周波数の光のみが透過する。このため、このような構成の狭帯域な光BPF310の透過周波数特性は、図10(B)に示す第1EF311の透過周波数特性と図10(C)に示す第2EF312の透過周波数特性とを合成した特性となり、図10(D)に示すように、その透過周波数帯域の中心周波数faが周波数fa1(=fa2)で、その半値全幅FWHMが第1EF311の半値全幅FWHM1で、そして、そのFSRが第2EF312のFSR2となる。なお、第1EF311と第2EF312とは、逆に光学的に接続されてもよい。
また、BOTDRの場合では、制御処理部13は、歪み、圧力及び温度検出計14と信号を入出力することによって、第1検出用光ファイバ252又は第2検出用光ファイバ252の長尺方向における各検出用光ファイバ251、252の軸方向の歪み、温度及び圧力の分布を高空間分解能で且つより遠距離まで測定するように、第1光源1、第1ATC10、第1AFC11、光パルス生成部3、光スイッチ4及び光強度・偏光調整部6を制御する。
このような構成のBOTDRの分布型光ファイバ圧力センサFSでは、第1光源1及び光パルス生成部3によって生成されたサブ光パルス及びメイン光パルスは、光スイッチ4、光カプラ5、光強度・偏光調整部6、光サーキュレータ7及び光コネクタ9、26を介して、第1検出用光ファイバ252又は第2検出用光ファイバ252の一方端から入射される。メイン光パルスには、スペクトル拡散方式が用いられる。第1検出用光ファイバ252又は第2検出用光ファイバ252で自然ブリルアン散乱現象の作用を受けた光(自然ブリルアン後方散乱光)が第1検出用光ファイバ252又は第2検出用光ファイバ252の一方端から射出され、歪み、圧力及び温度検出計14によって受光される。そして、歪み、圧力及び温度検出計14によってブリルアン・ゲイン・スペクトラム時間領域反射分析(BGain−OTDR)が行われ、ブリルアン周波数シフト量が検出される。なお、自然ブリルアン散乱現象に係る光は、自然ブリルアン後方散乱光である。
このような構成のBOTDRの分布型光ファイバ圧力センサFSでも、1×2光スイッチ35を切り換えることにより第1検出用光ファイバ251及び第2検出用光ファイバ252の各ブリルアン周波数シフト量と各レイリー周波数シフト量とを検出することができるため、第1検出用光ファイバ251に作用する圧力を計測することができ、また、光パルスを、スペクトル拡散方式を用いたメイン光パルスとサブ光パルスとで構成することによって、空間分解能と計測可能距離とを独立に設定することができるから、検出用光ファイバ15の軸方向の歪み、温度及び圧力を高空間分解能で測定可能としつつ、計測可能距離を伸ばしてより遠くまで測定することができる。
なお、このBOTDRの分布型光ファイバ圧力センサFSでは、第1検出用光ファイバ251のブリルアン周波数シフト量及びレイリー周波数シフト量の計測と、第2検出用光ファイバ252のブリルアン周波数シフト量及びレイリー周波数シフト量の計測とは、1×2光スイッチ35を切り換えることにより別個に行う必要があることから、各検出用光ファイバ251、252の計測は、経時変化による計測対象の状態の変化を考慮して、時間的に連続して行うか、短い時間間隔で行うのが好ましい。
図11は、全体から構成要素を減算することによってブリルアン周波数シフト量を求める方法を説明するための図である。図11の横軸は、MHz単位で表す周波数であり、その縦軸は、mW単位で表すブリルアン・ゲインである。図11(A)は、第1乃至第3ブリルアンスペクトルを示し、図11(B)は、全体から第2及び第3ブリルアンスペクトルを減算した結果を示す。そして、図11(A)の実線は、全体のブリルアンスペクトルである第1ブリルアンスペクトルであり、破線は、その構成要素である第2ブリルアンスペクトルと第3ブリルアンスペクトルとの和である。
なお、本実施の形態に係るBOTDAの分布型光ファイバ圧力センサFSにおいて、まず、制御処理部13の制御によって、検出用光ファイバ15に、ポンプ光としてのサブ光パルス及びメイン光パルスとプローブ光としての連続光とを入射させ、歪み、圧力及び温度検出計14は、この場合に検出用光ファイバ15から射出される第1誘導ブリルアン散乱現象に係る光に基づいて第1ブリルアンスペクトルを求める。次に、制御処理部13の制御によって、検出用光ファイバ15に、ポンプ光としてのメイン光パルスとプローブ光としての連続光とを入射させ、歪み、圧力及び温度検出計14は、この場合に検出用光ファイバ15から射出される第2誘導ブリルアン散乱現象に係る光に基づいて第2ブリルアンスペクトルを求める。そして、歪み、圧力及び温度検出計14は、これら第1ブリルアンスペクトルと第2ブリルアンスペクトルとの差を求め、この求めた差に基づいて第1及び第2検出用光ファイバ151、152を含めた検出用光ファイバ15のブリルアン周波数シフト量を求め、このブリルアン周波数シフト量から第1検出用光ファイバ151に作用する圧力、及び第1又は第2検出用光ファイバ151、152に作用した軸方向の歪み及び温度を測定してもよい。
あるいは、制御処理部13の制御によって、検出用光ファイバ15に、ポンプ光としてのサブ光パルスとプローブ光としての連続光とを入射させ、歪み、圧力及び温度検出計14は、この場合に検出用光ファイバ15から射出される第3誘導ブリルアン散乱現象に係る光に基づいて第3ブリルアンスペクトルを求める。そして、歪み、圧力及び温度検出計14は、これら第1ブリルアンスペクトルと第3ブリルアンスペクトルとの差を求め、この求めた差に基づいて第1及び第2検出用光ファイバ151、152を含めた検出用光ファイバ15のブリルアン周波数シフト量を求め、このブリルアン周波数シフト量から第1検出用光ファイバ151に作用する圧力、及び第1又は第2検出用光ファイバ151、152に作用した軸方向の歪み及び温度を測定してもよい。
このように構成することによって、BOTDAにおいて、ブリルアン周波数シフト量を求める際に、ブリルアンスペクトルの不要成分を抑圧することができ、ブリルアン周波数シフト量をより簡単により高精度に求めることができる結果、検出用光ファイバに作用した軸方向の歪み、圧力及び温度をより簡単により高精度に求めることが可能となる。
あるいは、例えば、図11において、まず、分布型光ファイバ圧力センサFSを上述のように動作させることによって、第1ブリルアンスペクトル(図11(A)の実線)を求める。次に、分布型光ファイバ圧力センサFSを上述のように動作させることによって、第2及び第3ブリルアンスペクトルをそれぞれ求める。次に、歪み、圧力及び温度検出計14は、これら第1ブリルアンスペクトル(図11(A)の実線)と第2ブリルアンスペクトル及び第3ブリルアンスペクトルの和(図11(A)の破線)との差(図11(B))を求める。そして、歪み、圧力及び温度検出計14は、この求めた差に基づいて第1及び第2検出用光ファイバ151、152を含めた検出用光ファイバ15のブリルアン周波数シフト量を求め、このブリルアン周波数シフト量から第1検出用光ファイバ151に作用する圧力、及び第1又は第2検出用光ファイバ151、152に作用した歪み及び温度を測定してもよい。
このように構成することによって、BOTDAにおいて、ブリルアン周波数シフト量を求める際に、ブリルアンスペクトルの不要成分を抑圧することができ、ブリルアン周波数シフト量をさらにより簡単にさらにより高精度に求めることができる結果、検出用光ファイバに作用した歪み及び温度をさらにより簡単にさらにより高精度に求めることが可能となる。
また、本実施の形態に係るBOTDRの分布型光ファイバ圧力センサFSにおいて、まず、制御処理部13の制御によって、第1又は第2検出用光ファイバ251、252に、サブ光パルス及びメイン光パルスを入射させ、歪み、圧力及び温度検出計14は、この場合に第1又は第2検出用光ファイバ251、252から射出される第1自然ブリルアン散乱現象に係る光に基づいて第1ブリルアン・ゲイン・スペクトルを求める。次に、制御処理部13の制御によって、検出用光ファイバ15に、メイン光パルスを入射させ、歪み、圧力及び温度検出計14は、この場合に第1又は第2検出用光ファイバ251、252から射出される第2自然ブリルアン散乱現象に係る光に基づいて第2ブリルアン・ゲイン・スペクトルを求める。そして、歪み、圧力及び温度検出計14は、これら第1ブリルアン・ゲイン・スペクトルと第2ブリルアン・ゲイン・スペクトルとの差を求め、この求めた差に基づいて第1及び第2検出用光ファイバ251、252のブリルアン周波数シフト量を求め、このブリルアン周波数シフト量から第1検出用光ファイバ251に作用する圧力、及び第1又は第2検出用光ファイバ251、252に作用した軸方向の歪み及び温度を測定してもよい。
あるいは、制御処理部13の制御によって、第1又は第2検出用光ファイバ251、252に、サブ光パルスを入射させ、歪み、圧力及び温度検出計14は、この場合に第1又は第2検出用光ファイバ251、252から射出される第3自然ブリルアン散乱現象に係る光に基づいて第3ブリルアン・ゲイン・スペクトルを求める。そして、歪み、圧力及び温度検出計14は、これら第1ブリルアン・ゲイン・スペクトルと第3ブリルアン・ゲイン・スペクトルとの差を求め、この求めた差に基づいて第1及び第2検出用光ファイバ251、252のブリルアン周波数シフト量を求め、このブリルアン周波数シフト量から第1検出用光ファイバ251に作用する圧力、及び第1又は第2検出用光ファイバ251、252に作用した軸方向の歪み及び温度を測定してもよい。
このように構成することによって、BOTDRにおいて、ブリルアン周波数シフト量を求める際に、ブリルアン・ゲイン・スペクトルの不要成分を抑圧することができ、ブリルアン周波数シフト量をより簡単により高精度に求めることができる結果、各検出用光ファイバに作用した歪み、温度及び圧力をより簡単により高精度に求めることが可能となる。
あるいは、第2及び第3ブリルアン・ゲイン・スペクトルをそれぞれ求め、そして、歪み、圧力及び温度検出計14は、これら第1ブリルアン・ゲイン・スペクトルと第2ブリルアン・ゲイン・スペクトル及び第3ブリルアン・ゲイン・スペクトルの和との差を求め、この求めた差に基づいて第1及び第2検出用光ファイバ251、252のブリルアン周波数シフト量を求め、このブリルアン周波数シフト量から第1検出用光ファイバ251に作用する圧力、及び第1又は第2検出用光ファイバ251、252に作用した軸方向の歪み及び温度を測定してもよい。
このように構成することによって、BOTDRにおいて、ブリルアン周波数シフト量を求める際に、ブリルアン・ゲイン・スペクトルの不要成分を抑圧することができ、ブリルアン周波数シフト量をさらにより簡単にさらにより高精度に求めることができる結果、各検出用光ファイバに作用した歪み、温度及び圧力をさらにより簡単にさらにより高精度に求めることが可能となる。
次に、上記のような無変調のサブ光パルスとスペクトル拡散方式を用いたメイン光パルスとからなる光パルスを用いた分布型光ファイバ圧力センサFSにおける実験結果について説明する。この実験結果は、例えば、BOTDAにおいて、第1ブリルアンスペクトルと第2ブリルアンスペクトル及び第3ブリルアンスペクトルの和との差を求め、この求めた差に基づいて検出用光ファイバに作用した歪みによるブリルアン周波数シフト量を測定した結果である。
図12は、図6(A)に示す構成のポンプ光を用いた場合における分布型光ファイバ圧力センサの第2検出用光ファイバ152のブリルアン周波数シフト量を測定した実験結果を示す図である。図12(A)は、ブリルアン・ゲイン・スペクトルを示し、図12(B)は、ブリルアン周波数シフトを示す。図12(A)のx軸は、周波数(MHz)であり、y軸は、ブリルアンゲイン(nW)であり、z軸は、第2検出用光ファイバ152の長尺方向における距離(m)である。図12(B)の横軸は、第2検出用光ファイバ152の長尺方向における距離(m)であり、その縦軸は、ピーク周波数(MHz)である。実線は、測定されたピーク周波数であり、破線は、ブリルアン周波数シフトである。なお、この実験結果は、検出用光ファイバ15の全長に亘る測定結果ではなく、検出用光ファイバ15、特に第2検出用光ファイバ152の長尺方向の一部を取り出したものであるが、簡略化のため取り出し部分の一端をz=0として説明する。
本実験では、ポンプ光は、図6(A)に示すように、パルス幅30nsのサブ光パルスと、このサブ光パルスに連続して後続するパルス幅12.7nsのメイン光パルスとからなり、メイン光パルスは、セル幅0.1nsの127個のセルに分割されており、各セルは、M系列バイナリ符号で変調(符号化)され、スペクトル拡散符号化されている。
第2検出用光ファイバ152には、表1に示すように、z=100cmからz=101cmまでの第1区間、z=200cmからz=202cmまでの第2区間、z=300cmからz=303cmまでの第3区間、z=400cmからz=404cmまでの第4区間の各区間のそれぞれに、ブリルアン周波数シフト換算で80MHzの歪み(=約1600με)が予め与えられている。
このような第2検出用光ファイバ152にスペクトル拡散方式を一部に用いられたポンプ光を入射させ、測定すると、図12(A)に示すブリルアン・ゲイン・スペクトルが得られ、その結果、図12(B)に示すブリルアン周波数シフトが得られる。図12に示すように、表1に示す各歪み位置に、予め与えられた大きさの歪みによるブリルアン周波数シフト量が測定されており、高精度且つ高空間分解能で歪みが求められていることが理解される。
このようにメイン光パルスにスペクトル拡散方式を用いても高精度且つ高空間分解能で歪みを求めることができている。そして、上述したように、ポンプ光を、スペクトル拡散方式を用いたメイン光パルスとサブ光パルスとで構成することによって、空間分解能と計測可能距離とを独立に設定することができるから、歪みを高空間分解能で測定可能としつつ、計測可能距離を伸ばしてより遠くまで測定することができる。
なお、上述の実施の形態では、図6に示す態様のポンプ光(サブ光パルス及びメイン光パルス)が用いられたが、これに限定されるものではなく、例えば、図13に示す態様のポンプ光(サブ光パルス及びメイン光パルス)が用いられてもよい。
図13は、ポンプ光(サブ光パルス及びメイン光パルス)の他の構成を説明するための図であり、図13(A)は、ポンプ光の他の第1構成を示し、図13(B)は、ポンプ光の他の第2構成を示す。
図6(A)に示すポンプ光は、サブ光パルスの光強度がメイン光パルスの光強度と同一レベルであったが、例えば、図13(A)に示すように、ポンプ光は、サブ光パルスの光強度がメイン光パルスの光強度よりも小さくてもよい。サブ光パルスは、上述したように、メイン光パルスに時間的に先行して音響フォノンを立ち上げる役割を果たすので、メイン光パルスのように大きな光強度が必要ではなく、メイン光パルスの光強度よりも小さくてよい。
また、図6(A)及び図13(A)に示す各ポンプ光は、サブ光パルスがメイン光パルスと重なることなくメイン光パルスに時間的に先行するように構成されたが、例えば、図13(B)に示すように、ポンプ光は、メイン光パルスとサブ光パルスとが時間的に重なった部分を持っていてもよい。このような構成のポンプ光では、メイン光パルスに時間的に先行してサブ光パルスによって音響フォノンを立ち上げる観点から、メイン光パルスと重なっていないサブ光パルスの部分がメイン光パルスに対して時間的に先行していることが好ましく、さらに、このメイン光パルスと重なっていないサブ光パルスの部分が音響フォノンを完全に立ち上げる時間以上、例えば約30ns以上であることがより好ましい。
ここで、このようなスペクトル拡散方式を用いたメイン光パルスと、メイン光パルスと重なった部分を持つサブ光パルスとからなるポンプ光を分布型光ファイバ圧力センサFSに用いた場合における実験結果について説明する。この実験結果は、図12に示す実験結果と同様に、例えば、BOTDAにおいて、第1ブリルアンスペクトルと第2ブリルアンスペクトル及び第3ブリルアンスペクトルの和との差を求め、この求めた差に基づいて検出用光ファイバに作用した歪みによるブリルアン周波数シフト量を測定した結果である。また、第2検出用光ファイバ152の一部を取り出し、その取り出し部分の一端をz=0として表している。
図14は、図13(B)に示す構成のポンプ光を用いた場合における分布型光ファイバ圧力センサの実験結果を示す図である。図14(A)は、ブリルアン・ゲイン・スペクトルを示し、図14(B)は、ブリルアン周波数シフトを示す。図14(A)及び(B)における各軸は、図12(A)及び(B)とそれぞれ同じである。
本実験では、ポンプ光は、図13(B)に示すように、パルス幅132.3nsのサブ光パルスと、このサブ光パルスに対し30nsだけ時間的に遅れてこのサブ光パルスと重なっているパルス幅102.3nsのメイン光パルスとからなり、メイン光パルスは、セル幅0.1nsの1023個のセルに分割されており、各セルは、M系列バイナリ符号で変調され、スペクトル拡散符号化されている。
第2検出用光ファイバ152には、上述と同様に、表1に示すように、第1ないし第4区間の各区間のそれぞれに、ブリルアン周波数シフト換算で80MHzの歪み(=約1600με)が予め与えられている。
このような検出用光ファイバ15に図13(B)に示す構成のポンプ光を入射させ、測定すると、図14(A)に示すブリルアン・ゲイン・スペクトルが得られ、その結果、図14(B)に示すブリルアン周波数シフトが得られる。図14に示すように、表1に示す各歪み位置に、予め与えられた大きさの歪みによるブリルアン周波数シフト量が測定されており、高精度且つ高空間分解能で歪みが求められていることが理解される。
このようにサブ光パルスとメイン光パルスとに重なった部分が存在する場合でも、高精度且つ高空間分解能で歪みを求めることができている。そして、上述したように、ポンプ光を、スペクトル拡散方式を用いたメイン光パルスとサブ光パルスとで構成することによって、空間分解能と計測可能距離とを独立に設定することができるから、歪みを高空間分解能で測定可能としつつ、計測可能距離を伸ばしてより遠くまで測定することができる。
さらに、本実施の形態の分布型光ファイバ圧力センサFSに用いられるポンプ光(サブ光パルス及びメイン光パルス)の他の態様について説明する。
図15は、ポンプ光(サブ光パルス及びメイン光パルス)のさらに他の構成及び整合フィルタを説明するための図であり、図15(A)は、ポンプ光の構成を示し、図15(B)は、整合フィルタを示す図である。図16は、図15(A)に示す構成のポンプ光を生成するための、光パルス生成部の構成及びその動作を説明するための図である。
図13(B)に示す構成のポンプ光は、メイン光パルスに時間的に先行する部分を持ちつつメイン光パルスと重なった部分を持ったサブ光パルスと、メイン光パルスとから構成されたが、図15(A)に示すように、ポンプ光は、メイン光パルスに時間的に先行する部分を持つことなくメイン光パルスと時間的に完全に一致するように重なったサブ光パルスと、メイン光パルスとから構成されてもよい。すなわち、サブ光パルスの立ち上がりタイミング及びその立ち下がりタイミングは、メイン光パルスの立ち上がりタイミング及びその立ち下がりタイミングとそれぞれ一致している。
このような図15(A)に示す構成のポンプ光は、例えば、図16に示す構成の光パルス生成部3から生成することができる。図16に示す構成の光パルス生成部3では、その構成は、図5に示す光パルス生成部3及び光スイッチ4の構成と一致し、その動作が、図5に示す光パルス生成部3の動作と異なるものである。このため、ここでは、その構成の説明を省略し、その動作について説明する。
まず、図16(A)に示す構成のポンプ光を生成するために、LN強度変調器101は、サブ光パルスを生成するために、所定のレベルの光(漏れ光)が漏れ出す(射出する)ように、オンされている。
第1光源1から射出された連続光L11(=L1)は、光カプラ2を介して光パルス生成部3のLN強度変調器101に入射される。連続光L11が入射されると、LN強度変調器101は、前記漏れ光を射出する。
光パルス生成部3では、ポンプ光の生成タイミングで、メイン光パルスのパルス幅Dに相当するパルス幅Dの動作タイミングパルスがタイミングパルス発生器104から乗算器103へ出力され、直流電源102から入力された直流電圧と乗算され、パルス幅Dの直流電圧がLN強度変調器101の信号電極に印加される。これによって、連続光L11は、LN強度変調器101で、パルス幅Dの光パルスが漏れ光に重畳された光パルスL12となって射出される。
そして、光パルス生成部3では、メイン光パルスの生成タイミングで、メイン光パルスのパルス幅Dに相当する時間幅Dの間、疑似乱数がセル幅の時間タイミングで疑似乱数発生器114から乗算器113へ順次に出力され、直流電源112から入力された直流電圧と乗算され、メイン光パルスの生成タイミングから時間幅Dで、M系列バイナリ符号で変調された直流電圧がセル幅の時間タイミングでLN位相変調器111の信号電極に順次に印加される。これによって、光パルスL12は、LN位相変調器111で、M系列バイナリ符号で変調された部分(メイン光パルスに対応する)が漏れ光に重畳された光パルスL13となって射出される。
そして、EDFA121では、前記光パルスL13が所定の光強度となるまで増幅され、光パルスL14となって射出される。
さらに、光パルス生成部3では、ポンプ光の生成タイミングに応じて、サブ光パルスのパルス幅Dsub(=メイン光パルスのパルス幅D)に相当するパルス幅Dsub(=D)の動作タイミングパルスがタイミングパルス発生器134から乗算器133へ出力され、直流電源132から入力された直流電圧と乗算され、パルス幅Dsub(=D)の直流電圧がLN強度変調器131の信号電極に印加される。これによって、光パルスL14は、LN強度変調器131で、EDFA121で光パルスL14に付随した自然放出光等のノイズが除去されるとともに、光パルスL14の前後の漏れ光に起因する光(EDFA121で増幅された漏れ光)が除去され、パルス幅Dsub(=D)であって無変調であるサブ光パルスとパルス幅D(=Dsub)であってスペクトル拡散符号化されたメイン光パルスとから成り、サブ光パルス上にメイン光パルスが時間的に完全に一致して重なったポンプ光L15となって射出される。
ここで、図13(B)や図15(A)に示すように、メイン光パルスとサブ光パルスとが時間的に重なった部分を持つポンプ光を用いる場合には、分布型光ファイバセンサFSは、ブリルアン・ゲイン・スペクトルV(t、ν)における成分V2,1(t、ν)に対応するブリルアン周波数シフトを時系列データとして複数求める場合に、現時点の成分V2,1(t、ν)を成分V2,1(t、ν)に対応する過去のブリルアン周波数シフトに基づいて所定の関数式を用いることによって推定し、上述した前記第1ブリルアンスペクトルから前記第2ブリルアンスペクトルおよび前記第3ブリルアンスペクトルを減算した結果から、さらに前記推定結果^V2,1(t、ν)を減算するように構成されてもよい。このように構成することによって、より高精度に検出用光ファイバ15に作用した歪みおよび/または温度を測定することが可能となる。
このメイン光パルスとサブ光パルスとが時間的に重なった部分を持つポンプ光を用いる場合では、より正確には、ブリルアン・ゲイン・スペクトルV(t、ν)は、4つの成分から構成され、式19および式20(式20−1〜式20−4)によって表される。
なお、式20−1、式20−2および式20−4は、それぞれ、上述の式7−1、式7−2および式7−3と同じである。
そして、その点広がり関数ψ(t、ν)は、上述の式8によって表され、ポンプ光がメイン光パルスとサブ光パルスとから構成されることから、この点広がり関数ψ(t、ν)は、上述の式9および式10によって表される。なお、図17に、点広がり関数ψ(t、ν)の計算例を示す。図17(A)は、点広がり関数ψ1,1(t、ν)を示し、図17(B)は、点広がり関数ψ1,2(t、ν)を示し、図17(C)は、点広がり関数ψ2,1(t、ν)を示し、そして、図17(D)は、点広がり関数ψ2,2(t、ν)を示す。
メイン光パルスとサブ光パルスから成るポンプ光と連続光のプローブ光とを検出用光ファイバ15に入射させた場合に、V1,1(t,ν)は、検出用光ファイバ15から射出される誘導ブリルアン散乱現象にかかる光のうち、メイン光パルスとプローブ光とにより励起されたフォノンにメイン光パルスが散乱されて生じる成分であり、V1,2(t,ν)は、前記場合に、検出用光ファイバ15から射出される誘導ブリルアン散乱現象にかかる光のうち、サブ光パルスとプローブ光とにより励起されたフォノンにメイン光パルスが散乱されて生じる成分であり、V2,1(t,ν)は、前記場合に、検出用光ファイバ15から射出される誘導ブリルアン散乱現象にかかる光のうち、メイン光パルスとプローブ光とにより励起されたフォノンにサブ光パルスが散乱されて生じる成分であり、そして、V2,2(t,ν)は、検出用光ファイバ15から射出される誘導ブリルアン散乱現象にかかる光のうち、サブ光パルスとプローブ光とにより励起されたフォノンにサブ光パルスが散乱されて生じる成分である。
なお、このV1,1(t,ν)は、ポンプ光としてのメイン光パルスとプローブ光としての連続光とを検出用光ファイバ15に入射させ、この場合に検出用光ファイバ15から射出される誘導ブリルアン散乱現象にかかる光に基づくものであり、また、V2,2(t,ν)は、ポンプ光としてのサブ光パルスとプローブ光としての連続光とを検出用光ファイバ15に入射させ、この場合に検出用光ファイバ15から射出される誘導ブリルアン散乱現象にかかる光に基づくものである。
例えば歪み区間の幅が比較的短くかつそれ以外では歪みがない場合には、ブリルアン・ゲイン・スペクトルV(t、ν)における成分V2,1(t、ν)は、メイン光パルスが疑似乱数によってスペクトル拡散されているため、フラットなスペクトルとなり、図14に示すように、高精度かつ高空間分解能で歪みが求められるが、より一般的には、歪みおよび/または温度を高精度かつ高空間分解能で求めるために、この成分V2,1(t、ν)を考慮する必要がある。この成分V2,1(t、ν)は、次のように考慮され、分布型光ファイバセンサFSは、メイン光パルスとサブ光パルスとが時間的に重なった部分を持つポンプ光を用いる場合に、より一般的に、歪みおよび/または温度を高精度かつ高空間分解能で求めること可能となる。
この成分V2,1(t、ν)における点広がり関数ψ2,1(t、ν)は、式21のように表され、このうちのsに関する積分は、t<0である場合には、式22のように表される。ここで、t<0の場合には常にt−|τ|<0であることから、メイン光パルスがスペクトル拡散(パルス圧縮)される場合には、式22によって表される積分値は、0となる。したがって、この場合、点広がり関数ψ2,1(t、ν)は、0に近似される。このことは、図17(C)からも理解される。
そして、この点広がり関数ψ2,1(t、ν)がt≧0の範囲においてのみ0ではない値を持つことは、式23が、νB(vgs/2)、s≦tによって決定され、νB(vgs/2)、s>tには、依存しないことを意味する。このことから、ブリルアン・ゲイン・スペクトルV(t、ν)における成分V2,1(t、ν)は、時間tにおいて、前記時間tまでのブリルアン周波数シフトνB(s)、t−D≦s≦tから推定することが可能となる。すなわち、時間tにおけるブリルアン・ゲイン・スペクトルV(t、ν)における成分V2,1(t、ν)の推定値は、式24のように表され、メイン光パルスとサブ光パルスとが時間的に重なった部分を持つポンプ光を用いる場合におけるブリルアン・ゲイン・スペクトルV(t、ν)は、式25のように表され、ブリルアン・ゲイン・スペクトルV(t、ν)における成分V2,1(t、ν)の影響を略取り除くことが可能となる。
なお、上記式中において、成分V2,1(t、ν)の推定値は、推定値であることを表す符号“^”をオーバラップさせた“V”で表記されている。
上述の式24および式25によって表される処理は、例えば、次の信号処理部によって実現される。
図18は、ブリルアン・ゲイン・スペクトルV(t、ν)における成分V2,1(t、ν)を取り除いてブリルアン・ゲイン・スペクトルV(t、ν)を求めるための信号処理部の構成を示すブロック図である。図18における添え字nは、時間を離散化してtn=n△t(n=1、2、3、・・・)とした場合において、当該変数が時間tnにおける値であることを表す。なお、時間刻み幅△tは、メイン光パスルを周波数拡散する場合における前記セル幅と同程度かそれ以下に設定される。
この信号処理部41は、例えば、図18に示すように、減算部411と、ブリルアン周波数シフト推定部(BFS推定部)412と、ブリルアン周波数シフト推定値記憶部(BFS推定値記憶部)413と、V2,1成分推定部414とを備えて構成される。信号処理部41は、例えば歪み、圧力及び温度検出計14にさらに搭載され、メイン光パルスとサブ光パルスとが時間的に重なった部分を持つポンプ光を用いる場合に利用される。信号処理部41は、ハードウェア的に構成されてもよく、また、ソフトウェア的に構成されてもよい。ソフトウェア的に構成される場合には、信号処理部41は、歪み、圧力及び温度検出計14に実装されたマイクロコンピュータ上に機能的に実現される。
減算部411は、入力信号Yn(ν)からV2,1成分推定部414からの出力信号^V2、1(tn−1、ν)を減算し、この減算結果Xn(ν)を出力する回路である。この入力信号Yn(ν)は、上述した前記第1ブリルアンスペクトルから前記第2ブリルアンスペクトルおよび前記第3ブリルアンスペクトルを減算した信号である。すなわち、入力信号Yn(ν)は、観測雑音(外乱雑音)をζ(ν)とすれば、式26のように表される。
減算部411から出力される減算結果Xn(ν)は、観察雑音ζ(ν)や推定誤差が無ければ、ブリルアン・ゲイン・スペクトルV(t、ν)における成分V2,1(t、ν)となる。すなわち、減算部411から出力される減算結果Xn(ν)は、観察雑音ζ(ν)や推定誤差を含んだ、ブリルアン・ゲイン・スペクトルV(t、ν)における成分V2,1(t、ν)である。
BFS推定部412は、減算部411から出力される減算結果Xn(ν)をブリルアン・ゲイン・スペクトルとして扱うことによって、減算結果Xn(ν)のピーク値からブリルアン周波数シフト(BFS)を求め、この求めたブリルアン周波数シフトを離散時間tnにおけるブリルアン周波数シフトの推定値^νB,nとするものである。ここでは、記載の都合上、推定値であることを表す符号“^”は、“ν”の前に記載されているが、式中では、“^”は、“ν”にオーバラップさせて表記されている。以下、同様である。この推定では、減算結果Xn(ν)のピーク付近で減算結果Xn(ν)またはその対数に放物線を当てはめるようにすることによって、比較的精度よく推定することが可能となる。BFS推定部412の推定結果^νB,1、^νB,2、^νB,3、・・・、^νB,nは、信号処理部41の出力とされると共に、BFS推定値記憶部413へ出力される。
BFS推定値記憶部413は、BFS推定部412から出力される推定結果^νB,1、^νB,2、^νB,3、・・・、^νB,nを記憶するものである。BFS推定値記憶部413は、これら記憶している全てのブリルアン周波数シフトの推定値^νB,1、^νB,2、^νB,3、・・・、^νB,nをV2,1成分推定部414へ出力する。
V2,1成分推定部414は、BFS推定値記憶部413に記憶されている離散時間tnよりも前の時間に推定されたブリルアン周波数シフトの推定結果^νB,1、^νB,2、^νB,3、・・・、^νB,nに基づいて、ブリルアン・ゲイン・スペクトルV(t、ν)における成分V2,1(t、ν)を推定し、この推定したV2,1成分推定値^V2,1(tn、ν)を減算部411へ出力するものである。この減算部411へ出力されるV2,1成分推定値^V2,1(tn、ν)は、減算部411に入力されてくる次の入力信号Yn(ν)に対し、1ステップ(=△t)の時間遅れ(Z−1)が生じており、離散時刻tn−1におけるV2,1成分推定値^V2,1(tn−1、ν)となる。より具体的には、V2,1成分推定部414は、式24を離散化した式27を演算することによって、ブリルアン・ゲイン・スペクトルV(t、ν)における成分V2,1(t、ν)の推定値^V2,1(t、ν)を求める。
このV2,1成分推定値^V2,1(tn−1、ν)を用いると、減算部411の減算結果Xn(ν)は、式28のように表される。
このように構成することによって、メイン光パルスとサブ光パルスとが時間的に重なった部分を持つポンプ光を用いる場合において、分布型光ファイバセンサFSは、より高精度に検出用光ファイバ15に生じた歪みおよび/または温度を測定することが可能となる。
図19は、メイン光パルスとサブ光パルスとが時間的に重なった部分を持つポンプ光を用いる場合であって比較的短い区間幅に歪みを与えている場合における分布型光ファイバセンサの数値実験結果を示す図である。図19(A)および(B)は、図18に示す信号処理部41による信号処理を実行していない場合の結果を示し、図19(C)および(D)は、図18に示す信号処理部41による信号処理を実行している場合の結果を示す。図19(A)および(C)は、ブリルアン周波数シフトの推定値を示し、その横軸は、m単位で表す距離であり、その縦軸は、MHz単位で表すブリルアン周波数シフト値である。図19(B)および(D)は、その推定誤差を示し、その横軸は、m単位で表す距離であり、その縦軸は、MHz単位で表す誤差値である。CRBは、いわゆるクラメール・ラオの限界と呼ばれる理論的な性能限界であり、よい推定値ほど誤差がこの限界に近づくという性質を有している。
図19に示す実験では、図6(A)等の場合と同様に、検出用光ファイバ15には、表1に示すように、z=100cmからz=101cmまでの第1区間、z=200cmからz=202cmまでの第2区間、z=300cmからz=303cmまでの第3区間、z=400cmからz=404cmまでの第4区間の各区間のそれぞれに、80MHzのブリルアン周波数シフトに対応する歪みが与えられ、これ以外の箇所では歪みが与えられていない(ブリルアン周波数シフトが0である)。
図19(A)および(B)と図19(C)および(D)とを較べて見ると分かるように、区間幅2cmの第2区間および区間幅3cmの第3区間において、本信号処理部41による信号処理を実行した方がよい推定値が得られており、これら推定誤差は、略理論限界に近い。
図20は、メイン光パルスとサブ光パルスとが時間的に重なった部分を持つポンプ光を用いる場合であって比較的長い区間幅に歪みを与えている場合における分布型光ファイバセンサの数値実験結果を示す図である。図20(A)および(B)は、図18に示す信号処理部41による信号処理を実行していない場合の結果を示し、図20(C)および(D)は、図18に示す信号処理部41による信号処理を実行している場合の結果を示す。図20(A)および(C)は、ブリルアン周波数シフトの推定値を示し、その横軸は、m単位で表す距離であり、その縦軸は、MHz単位で表すブリルアン周波数シフト値である。図20(B)および(D)は、その推定誤差を示し、その横軸は、m単位で表す距離であり、その縦軸は、MHz単位で表す誤差値である。
図20に示す実験では、検出用光ファイバ15には、z=60cmからz=80cmまでの第11区間に10MHzのブリルアン周波数シフトに対応する歪みが与えられ、z=140cmからz=160cmまでの第12区間に20MHzのブリルアン周波数シフトに対応する歪みが与えられ、z=220cmからz=240cmまでの第13区間に30MHzのブリルアン周波数シフトに対応する歪みが与えられ、z=300cmからz=320cmまでの第14区間に40MHzのブリルアン周波数シフトに対応する歪みが与えられ、z=380cmからz=400cmまでの第15区間に50MHzのブリルアン周波数シフトに対応する歪みが与えられ、これ以外の箇所では歪みが与えられていない(ブリルアン周波数シフトが0である)。
このような比較的長い区間幅(図20に示す例では20cm)である場合には、図20(A)および(B)と図20(C)および(D)とを較べて見ると分かるように、本信号処理部41による信号処理を実行しない場合には推定値に比較的大きな誤差が含まれているが、本信号処理部41による信号処理を実行した場合には、推定誤差がほとんどなく、よい推定値が得られている。
また、これら図6(A)、図13(A)、図13(B)及び図15(A)に示す構成の光パルス(サブ光パルス及びメイン光パルス)は、上述のBOTDRの分布型光ファイバ圧力センサでも、BOTDAの分布型光ファイバ圧力センサと同様に利用することが可能である。なお、BOTDRでは、上述したように、熱雑音によって励起されている音響フォノンを利用するため、サブ光パルスは、メイン光パルスに必ずしも時間的に先行する必要はない。もちろん、サブ光パルスがメイン光パルスよりも時間的に先行していてもよい。
また、ポンプ光(サブ光パルス及びメイン光パルス)としては、さらに、上記特許文献1に記載される階段状パルスだけでなく、以下のようなパルスを用いてもよい。
図21は、他の一例のサブ光パルス及びメイン光パルスの波形を示す図である。以下の各図の横軸は、ns単位で表す時間(time)であり、縦軸は、光強度である。図21に示す例では、メイン光パルスOPmは、第1所定パルス幅D1で第1所定光強度P1の矩形形状(光強度Pが第1所定パルス幅D1間において第1所定光強度P1で一定)であり、サブ光パルスOPsは、第2所定パルス幅D2で第2所定光強度P2の矩形形状(光強度Pが第2所定パルス幅D2間において第2所定光強度P2で一定)である。そして、サブ光パルスOPsとメイン光パルスOPmとの間には、所定時間が空けられている。よって、サブ光パルスOPsの第2所定パルス幅D2は、サブ光パルスOPs立ち上がりからメイン光パルスOPmの立ち上がりまでの時間よりも短い時間幅である。
例えば、メイン光パルスOPmは、パルス幅D1が1nsであって光強度P1が0.062であり、サブ光パルスOPsは、パルス幅D2が5nsであって光強度P2が0.005であり、サブ光パルスOPsとメイン光パルスOPmとの間(サブ光パルスOPsの立ち下がりからメイン光パルスOPmの立ち上がりまで)には、7nsの時間が空けられている。
図22は、他の一例のサブ光パルス及びメイン光パルスの波形を示す図である。図22に示す例では、メイン光パルスOPmは、第1所定パルス幅D1で第1所定光強度P1の矩形形状であり、サブ光パルスOPsは、第2所定パルス幅D2で第2所定光強度(最大光強度)P2で立ち上がって光強度Pが時間経過に従って徐々に減少する直角三角形状であり、そして、メイン光パルスOPmがサブ光パルスOPsの終了後に略直ちに立ち上がっている。例えば、メイン光パルスOPmは、パルス幅D1が1nsであって光強度P1が0.062であり、サブ光パルスOPsは、パルス幅D2が13nsであって立ち上がりの光強度P2が0.005である。
図23は、他の一例のサブ光パルス及びメイン光パルスの波形を示す図である。図23(A)に示す例では、メイン光パルスOPmは、第1所定パルス幅D1で第1所定光強度P1の矩形形状であり、サブ光パルスOPsは、第2所定パルス幅D2で光強度Pが第2所定光強度(最大光強度)P2まで時間経過に従って徐々に増加する直角三角形状であり、そして、第1光パルスOPmが第2光パルスOPsの終了後に略直ちに立ち上がっている。例えば、メイン光パルスOPmは、パルス幅D1が1nsであって光強度P1が0.062であり、サブ光パルスOPsは、パルス幅D2が13nsであって立ち下がりの光強度P2が最大光強度であって0.005である。
図23(B)に示す例では、メイン光パルスOPmは、第1所定パルス幅D1で第1所定光強度P1の矩形形状であり、サブ光パルスOPsは、第2所定パルス幅D2で光強度Pが時間経過に従って第2所定光強度(最大光強度)P2まで徐々に増加してその後時間経過に従って徐々に減少する二等辺三角形状であり、そして、メイン光パルスOPmがサブ光パルスOPsの終了後に略直ちに立ち上がっている。例えば、メイン光パルスOPmは、パルス幅D1が1nsであって光強度P1が0.062であり、サブ光パルスOPsは、パルス幅D2が13nsであってパルスの中央における最大光強度P2が0.005である。
図23(C)に示すように、メイン光パルスOPmは、第1所定パルス幅D1で第1所定光強度P1の矩形形状であり、サブ光パルスOPsは、第2所定パルス幅D2で光強度Pが時間経過に従って第2所定光強度(最大光強度)P2まで徐々に増加してその後時間経過に従って徐々に減少するガウス曲線形状である。そして、サブ光パルスOPsとメイン光パルスOPmとの間には、所定時間が空けられている。よって、サブ光パルスOPsの第2所定パルス幅D2は、サブ光パルスOPs立ち上がりからメイン光パルスOPmの立ち上がりまでの時間よりも短い時間幅である。例えば、メイン光パルスOPmは、パルス幅D1が1nsであって光強度P1が0.062であり、サブ光パルスOPsは、パルス幅D2が5nsであって最大光強度P2が0.005であり、サブ光パルスOPsとメイン光パルスOPmとの間(サブ光パルスOPsの立ち下がりからメイン光パルスOPmの立ち上がりまで)には、4.5nsの時間が空けられている。
図24は、他の一例のサブ光パルス及びメイン光パルスの波形を示す図である。図24に示す例では、第1及び第2光パルスOPw1、OPw2のパルス幅及び光強度が同一であり、第1光パルスOPw1と第2光パルスOPw2との間には、所定時間が空けられている。例えば、第1及び第2光パルスOPw1、OPw2は、パルス幅が1nsであって、光強度が0.062であって、所定時間が5nsである。
なお、上述の実施の形態におけるBOTDAの分布型光ファイバ圧力センサFSでは、ポンプ光(サブ光パルス及びメイン光パルス)の周波数が固定され、プローブ光(連続光)の周波数が所定の周波数範囲で掃引されてブリルアンスペクトルが測定されたが、プローブ光の周波数が固定され、ポンプ光の周波数が所定の周波数範囲で掃引されてブリルアンスペクトルが測定されてもよい。
また、上述の実施の形態では、ブリルアンスペクトラム時間領域分析(BOTDA)用の分布型光ファイバ圧力センサと、レイリー散乱現象を利用するコヒーレント光パルス試験器(COTDR)とが一体で実行可能なように分布型光ファイバ圧力センサが構成され、又はこの一体型分布型光ファイバ圧力センサの一部を改良して、ブリルアンスペクトラム時間領域反射分析(BOTDR)用の分布型光ファイバ圧力センサと、レイリー散乱現象を利用するコヒーレント光パルス試験器(COTDR)とが一体で実行可能なように分布型光ファイバ圧力センサが構成されたが、ブリルアンスペクトラム時間領域分析が実行可能な分布型光ファイバ圧力センサと、ブリルアンスペクトラム時間領域反射分析が実行可能な分布型光ファイバ圧力センサと、レイリー散乱現象を利用する分布型光ファイバ圧力センサとが、それぞれ別体で構成されてもよいし、一部が共用されてもよい。
また、本実施の形態の分布型光ファイバ圧力センサでは、セル幅は、任意の幅(秒)に設定することが可能である。上記の実験では、セル幅は、0.1ns(ナノ秒)に設定されたが、例えばピコ秒オーダ等のさらに短く設定することが可能である。したがって、本実施の形態の分布型光ファイバ圧力センサFSは、ミリメートルオーダの超高分解能を実現することが可能であり、光学部品の歪み、例えば光導波路の歪みを計測することに適用することも可能である。
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施の形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施の形態を変更及び/又は改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。従って、当業者が実施する変更形態又は改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態又は当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。