JP5321572B2 - 情報記憶装置 - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関の燃料噴射弁に関する情報を記憶機器に記憶させる情報記憶装置に関する。
インジェクタ(燃料噴射弁)の内部に燃料圧力センサを配置し、インジェクタの噴射に伴い生じる燃料圧力の変動を燃料圧力センサにより検出することで、インジェクタの噴射特性を学習するものがある(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載ものでは、学習した噴射特性をICメモリ(記憶機器)に記憶させている。このICメモリは、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)で構成されている。
特開2009−74536号公報
ところで、インジェクタの噴射特性を逐次学習して更新する場合には、その更新頻度が高いほど学習した噴射特性の精度を向上させることができる。しかしながら、上記ICメモリへの書込み回数には制限があるため、書込み回数が制限を超えないようにする必要がある。
また、インジェクタに不具合が生じることがあり、その不具合の発生原因を把握するためには、インジェクタの状況を知ることができることが望ましい。
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、燃料噴射弁に関する情報の精度を保証しつつ、記憶機器への書込み回数を抑制することのできる情報記憶装置を提供することを主たる目的とする。
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
第1の発明は、内燃機関の燃料噴射弁に関する情報を書込み回数に制限のある記憶機器に記憶させる情報記憶装置であって、前記燃料噴射弁の噴射特性を示す特性値を学習する学習手段と、前記学習手段により前記特性値を学習する時の前記燃料噴射弁の状況を取得する状況取得手段と、前記学習手段により学習された前記特性値と前記記憶機器に記憶された前記特性値との相違が所定度合よりも大きいことを条件として、前記学習手段により学習された特性値と共に前記状況取得手段により取得された前記状況を前記記憶機器に記憶させる情報記憶手段と、を備えることを特徴とする。
上記構成によれば、学習手段によって、燃料噴射弁の噴射特性を示す特性値が学習される。また、状況取得手段によって、学習手段により特性値を学習する時の燃料噴射弁の状況が取得される。
そして、学習手段により学習された特性値と記憶機器に記憶された特性値との相違が所定度合よりも大きいことを条件として、学習された特性値と共に、特性値を学習する時の燃料噴射弁の状況が記憶機器に記憶させられる。すなわち、学習手段により学習された特性値が、記憶機器に記憶された特性値から所定度合よりも大きく変化した場合には、学習された特性値と共にその時の燃料噴射弁の状況が記憶機器に記憶させられる。一方、学習手段により学習された特性値が、記憶機器に記憶された特性値から所定度合よりも大きく変化していない場合には、燃料噴射弁の特性値や状況といった燃料噴射弁に関する情報が記憶機器に記憶させられることはない。
したがって、記憶された特性値から、学習された特性値が所定度合よりも大きく変化した場合のみ、記憶機器に情報の書込みを行うため、記憶機器への書込み回数を抑制することができる。そして、記憶された特性値から、学習された特性値が所定度合よりも大きく変化しており、記憶された特性値を更新する必要のある場合には、学習された特性値が記憶機器に記憶させられる。このため、記憶機器に記憶された特性値の精度を保証することができる。さらに、学習された特性値と共に、特性値を学習する時の燃料噴射弁の状況が記憶機器に記憶させられる。このため、記憶された特性値から、学習された特性値が所定度合よりも大きく変化した時の燃料噴射弁の状況を、記憶機器に記憶させることができる。その結果、記憶機器に記憶された燃料噴射弁の状況の精度も保証することができる。
第2の発明では、前記学習手段は、複数種類の前記特性値を学習するものであり、前記情報記憶手段は、前記噴射特性に与える影響の大きい前記特性値の前記所定度合を、前記噴射特性に与える影響の小さい前記特性値の前記所定度合よりも小さく設定する。
上記構成によれば、学習手段によって、燃料噴射弁の噴射特性を示す複数種類の特性値が学習される。そして、上述したように、学習手段により学習された特性値と記憶機器に記憶された特性値との相違が所定度合よりも大きいことを条件として、学習された特性値と共に燃料噴射弁の状況が記憶機器に記憶させられる。
ここで、噴射特性に与える影響の大きい特性値の上記所定度合が、噴射特性に与える影響の小さい特性値の上記所定度合よりも小さく設定されている。このため、噴射特性に与える影響の大きい特性値は、噴射特性に与える影響の小さい特性値よりも高い頻度で、燃料噴射弁の状況と共に記憶機器に記憶させられ易くなる。したがって、噴射特性に与える影響の大きい特性値の精度を、噴射特性に与える影響の小さい特性値の精度よりも高くすることができる。その結果、噴射特性に与える影響の大きさに応じて、複数種類の特性値を適切な精度で記憶させることができる。
第3の発明では、前記学習手段は、前記燃料噴射弁に供給される燃料の圧力レベルに応じて前記特性値を学習するものであり、前記情報記憶手段は、前記圧力レベルが低い場合の前記所定度合を、前記圧力レベルが高い場合の前記所定度合よりも小さく設定する。
第4の発明では、前記学習手段は、前記燃料噴射弁により噴射される燃料の量に応じて前記特性値を学習するものであり、前記情報記憶手段は、前記燃料の量が少ない場合の前記所定度合を、前記燃料の量が多い場合の前記所定度合よりも小さく設定する。
燃料噴射弁から噴射される燃料の量が少ないほど、噴射される燃料の量を高い精度で制御することが要求される。このため、一般に、燃料噴射弁から噴射される燃料の量が少ないほど、燃料噴射弁に供給される燃料の圧力レベルが低くされ、単位時間当たりに噴射される燃料の量が減少させられる。したがって、燃料噴射弁に供給される燃料の圧力レベルが低いほど、また燃料噴射弁から噴射される燃料の量が少ないほど、燃料噴射弁の噴射特性を示す特性値の精度が高いことが望ましい。
この点、第3の発明によれば、学習手段によって、燃料噴射弁に供給される燃料の圧力レベルに応じて、燃料噴射弁の噴射特性を示す特性値が学習される。そして、燃料の圧力レベルが低い場合の上記所定度合が、燃料の圧力レベルが高い場合の上記所定度合よりも小さく設定されている。このため、燃料の低い圧力レベルに応じた特性値の精度を、燃料の高い圧力レベルに応じた特性値の精度よりも高くすることができる。その結果、燃料の圧力レベルの高さに応じて、特性値を適切な精度で記憶させることができる。
また、第4の発明によれば、学習手段によって、燃料噴射弁により噴射される燃料の量に応じて、燃料噴射弁の噴射特性を示す特性値が学習される。そして、燃料の量が少ない場合の上記所定度合が、燃料の量が多い場合の所定度合よりも小さく設定されている。このため、燃料の少ない噴射量に応じた特性値の精度を、燃料の多い噴射量に応じた特性値の精度よりも高くすることができる。その結果、燃料の噴射量の多さに応じて、特性値を適切な精度で記憶させることができる。
第5の発明では、前記学習手段は、前記燃料噴射弁に供給される燃料の温度レベルに応じて前記特性値を学習するものであり、前記情報記憶手段は、所定温度レベルに応じた前記特性値のみを、前記状況取得手段により取得された前記状況と共に前記記憶機器に記憶させる。
一般に、内燃機関の運転状態に応じて、燃料噴射弁に供給される燃料の温度は変化する。そして、燃料の温度が変化した場合には、燃料噴射弁の噴射特性が変化するおそれがある。
この点、上記構成によれば、学習手段によって、燃料噴射弁に供給される燃料の温度レベルに応じて、燃料噴射弁の噴射特性を示す特性値が学習される。このため、内燃機関の燃料噴射制御等において、燃料の温度レベルに応じた上記特性値を使用することが可能となる。また、所定温度レベルに応じた上記特性値のみが、燃料噴射弁の状況と共に記憶機器に記憶させられる。このため、燃料の温度レベルに応じて特性値を学習しつつ、記憶機器へ書込む情報の量を抑制することができる。
第6の発明では、前記情報記憶手段は、前記記憶機器に前記特性値を前回記憶させてから、前記学習手段により前記特性値が所定回数よりも多く学習されたことを更に条件として、前記学習手段により学習された特性値と共に前記状況取得手段により取得された前記状況を前記記憶機器に記憶させる。
第7の発明では、前記情報記憶手段は、前記記憶機器に前記特性値を前回記憶させてから、前記燃料噴射弁により燃料の噴射が所定回数よりも多く行われたことを更に条件として、前記学習手段により学習された特性値と共に前記状況取得手段により取得された前記状況を前記記憶機器に記憶させる。
何らかの誤検出や過渡状態での誤差等により、学習手段により学習される上記特性値が急変するおそれがある。
この点、第6の発明によれば、記憶機器に上記特性値を前回記憶させてから、学習手段により特性値が所定回数よりも多く学習されるまでは、学習された特性値と共に燃料噴射弁の状況が記憶機器に記憶させられることはない。このため、記憶機器に特性値を前回記憶させてから特性値を学習した回数が所定回数よりも少なく、実際に特性値が変化していると考えにくい場合には、燃料噴射弁に関する情報を記憶機器に記憶させないようにすることができる。
また、第7の発明によれば、記憶機器に上記特性値を前回記憶させてから、燃料噴射弁により燃料の噴射が所定回数よりも多く行われるまでは、学習された特性値と共に燃料噴射弁の状況が記憶機器に記憶させられることはない。このため、記憶機器に特性値を前回記憶させてから、燃料噴射弁により燃料の噴射が行われた回数が所定回数よりも少なく、実際に特性値が変化していると考えにくい場合には、燃料噴射弁に関する情報を記憶機器に記憶させないようにすることができる。
第8の発明では、前記状況取得手段は、前記学習手段により前記特性値を学習する時までの前記燃料噴射弁の累積作動時間又は累積作動回数を、前記状況として取得する。
上記構成によれば、特性値を学習する時までの燃料噴射弁の累積作動時間又は累積作動回数が、特性値を学習する時の燃料噴射弁の状況として取得され、学習された特性値と共にこの状況が記憶機器に記憶させられる。したがって、燃料噴射弁の噴射特性を示す特性値の変化と、燃料噴射弁の累積作動時間又は累積作動回数の増加との関係を把握することができる。
第9の発明では、前記状況取得手段は、前記内燃機関の機関回転速度及び前記燃料噴射弁による燃料噴射量の少なくとも一方を複数の領域に分けたときに、前記学習手段により前記特性値を学習する時までの各領域での前記燃料噴射弁の使用頻度を、前記状況として取得する。
上記構成によれば、内燃機関の機関回転速度及び燃料噴射弁による燃料噴射量の少なくとも一方を複数の領域に分けたときに、特性値を学習する時までの各領域での燃料噴射弁の使用頻度が、特性値を学習する時の燃料噴射弁の状況として取得され、学習された特性値と共にこの状況が記憶機器に記憶させられる。したがって、燃料噴射弁の噴射特性を示す特性値の変化と、特性値を学習する時までの機関回転速度や燃料噴射量の各領域での燃料噴射弁の使用頻度との関係を把握することができる。
第10の発明では、前記状況取得手段は、前記学習手段により前記特性値を学習する時の、前記燃料噴射弁に供給される燃料の圧力、前記内燃機関の機関回転速度、及び前記燃料噴射弁による燃料噴射量の少なくとも1つを、前記状況として取得する。
上記構成によれば、特性値を学習する時の、燃料噴射弁に供給される燃料の圧力、内燃機関の機関回転速度、及び燃料噴射弁による燃料噴射量の少なくとも1つが、特性値を学習する時の燃料噴射弁の状況として取得され、学習された特性値と共にこの状況が記憶機器に記憶させられる。したがって、記憶された特性値から、学習された特性値が所定度合よりも大きく変化した時に、その時の燃料圧力や、機関回転速度、燃料噴射量を記憶機器に記憶させておくことができる。その結果、燃料噴射弁が過酷な状況で使用されたことにより、燃料噴射弁の噴射特性が変化したことなどを把握することが可能となる。
第11の発明では、前記状況取得手段は、前記学習手段により前記特性値を学習する時に、前記燃料噴射弁に供給されている燃料の体積弾性係数を、前記状況として取得する。
上記構成によれば、特性値を学習する時に燃料噴射弁に供給されている燃料の体積弾性係数が、特性値を学習する時の燃料噴射弁の状況として取得され、学習された特性値と共にこの状況が記憶機器に記憶させられる。したがって、記憶された特性値から、学習された特性値が所定度合よりも大きく変化した時に、その時の燃料の体積弾性係数を記憶機器に記憶させておくことができる。その結果、燃料の性状が変化したことにより、燃料噴射弁の噴射特性が変化したことなどを把握することができる。
第12の発明では、前記記憶機器は、前記燃料噴射弁に搭載されている。
一般に、燃料噴射弁とは別の場所に設けられた制御手段(ECU)により、燃料噴射弁の作動が制御される。燃料噴射弁に関する情報をECUに記憶させると、例えば燃料噴射弁に不具合が生じた場合に、不具合の生じた燃料噴射弁を受け取った解析作業者は、ECUも受け取らなければ、燃料噴射弁に関する情報を取得することができない。
この点、上記構成によれば、燃料噴射弁に上記記憶機器が搭載されているため、解析作業者は、燃料噴射弁と共に、燃料噴射弁に関する情報の記憶された記憶機器を受け取ることができる。その結果、燃料噴射弁を解析する作業の効率を向上させることができる。
情報記憶装置の適用される燃料噴射システムの概略を示す図。 噴射指令信号、噴射率、及び検出圧力の関係を示すタイムチャート。 学習及び情報記憶制御の処理手順を示すフローチャート。 学習値更新回数と学習値間の差との関係を示す図。 各学習値についての閾値を示す図。 累積使用回数を記憶させるマップを示す図。
以下、情報記憶装置を具体化した一実施形態について図面を参照しつつ説明する。この情報記憶装置は、車両用のエンジン(内燃機関)に搭載されたものであり、エンジンとして、複数の気筒#1〜#4において高圧燃料を噴射して圧縮自着火燃焼させるディーゼルエンジンを採用している。
図1は、上記エンジンの各気筒に搭載された燃料噴射弁10、燃料噴射弁10に搭載された燃圧センサ20(燃料圧力センサ)、燃圧センサ20に搭載されたEEPROM25a、及び車両に搭載されたECU30(電子制御装置)等を示している。
まず、燃料噴射弁10を含むエンジンの燃料噴射システムについて説明する。燃料タンク40内の燃料は、高圧ポンプ41によりコモンレール42(蓄圧容器)に圧送されて蓄圧され、各気筒の燃料噴射弁10へ分配供給される。
燃料噴射弁10は、以下に説明するボデー11、ニードル12(弁体)及びアクチュエータ13等を備えて構成されている。ボデー11は、内部に高圧燃料通路11aを形成するとともに、燃料を噴射する噴孔11bを形成している。ニードル12は、ボデー11内に収容されて噴孔11bを開閉する。アクチュエータ13は、ニードル12を往復動させる。
そして、ECU30がアクチュエータ13の駆動を制御することで、ニードル12による噴孔11bの開閉が制御される。これにより、コモンレール42から高圧燃料通路11aへ供給される高圧燃料は、ニードル12の往復動に応じて噴孔11bから噴射される。例えばECU30は、エンジン出力軸の回転速度及びエンジン負荷等に基づき、噴射開始時期、噴射終了時期及び噴射量等の噴射態様を算出し、算出した噴射態様となるように、アクチュエータ13の駆動を制御する。
次に、燃圧センサ20のハード構成について説明する。
燃圧センサ20は、ステム21(起歪体)、圧力センサ素子22及びモールドIC23等を備えて構成されている。ステム21は、有底円筒状に形成されており、ボデー11に取り付けられている。ステム21では、底部として形成されたダイヤフラム部21aが、高圧燃料通路11aを流通する高圧燃料の圧力を受けて弾性変形する。
圧力センサ素子22は、ダイヤフラム部21aに取り付けられており、ダイヤフラム部21aで生じた弾性変形量に応じて圧力検出信号を出力する。
モールドIC23は、圧力センサ素子22から出力される圧力検出信号を増幅する増幅回路、書き換え可能な不揮発性メモリであるEEPROM25a(記憶機器)等の電子部品を樹脂モールドして形成されている。モールドIC23は、ステム21と共に燃料噴射弁10に搭載されている。EEPROM25aへの書込み回数には、例えば10万回が上限というように制限がある。
ボデー11の上部(端部)には、コネクタ14が設けられている。そして、コネクタ14に接続されたハーネス15により、モールドIC23及びアクチュエータ13と、ECU30とが、それぞれ電気接続されている。
そして、噴孔11bから燃料の噴射を開始することに伴い高圧燃料通路11a内の燃料の圧力(燃圧)が低下し、噴射を終了することに伴い燃圧が上昇する。すなわち、燃圧の変化と噴射率(単位時間当たりに噴射される燃料の量)の変化とは相関があり、燃圧変化から噴射率変化を推定することができる。そして、噴射率変化を推定できれば、燃料噴射制御に用いる各種制御パラメータ(燃料噴射弁10の噴射特性を示す特性値)を取得して、それらを学習することができる。以下、噴射率変化から取得できる上記制御パラメータについて、図2を参照して説明する。
図2(a)は、燃料噴射弁10のアクチュエータ13へECU30から出力される噴射指令信号を示している。この指令信号のパルスオンにより、アクチュエータ13が作動して噴孔11bが開かれる。すなわち、噴射指令信号のパルスオン時刻t1において噴射開始が指令され、パルスオフ時刻t2において噴射終了が指令される。よって、指令信号のパルスオン時間Tq(噴射指令時間)により、噴孔11bが開かれる時間、すなわち燃料噴射弁10の開弁時間を制御することで、噴射量Qが制御される。
図2(b)は、上記噴射指令に伴い生じる燃料噴射弁10の燃料噴射率の変化(推移波形)を示し、図2(c)は、噴射率の変化に伴い生じる検出圧力の変化(変動波形)を示している。検出圧力の変動と噴射率の変化とは以下に説明する相関があるため、検出圧力の変動波形から噴射率の推移波形を推定することができる。
まず、噴射開始指令がなされた時刻t1の後、噴射率がR1の時点で上昇を開始して噴射が開始される。一方、検出圧力は、R1の時点で噴射率が上昇を開始したことに伴って、変化点P1にて下降を開始する。その後、R2の時点で噴射率が最大噴射率に到達したことに伴って、検出圧力の下降は変化点P2にて停止する。次に、R2の時点から噴射率が下降を開始したことに伴って、検出圧力は変化点P2から上昇を開始する。その後、R3の時点で噴射率がゼロになり実際の噴射が終了したことに伴って、検出圧力は変化点P3まで上昇した後に一定となる。
以上により、燃圧センサ20による検出圧力の変動のうち変化点P1及びP3を検出することで、噴射率の上昇開始時点R1(実噴射開始時点)及び下降終了時点R3(実噴射終了時点)を算出することができる。また、以下に説明する検出圧力の変化と噴射率の変化との相関関係に基づき、検出圧力の変化から噴射率の変化を推定することができる。
すなわち、検出圧力の変化点P1から変化点P2までの圧力下降率Pαと、噴射率の変化した時点R1から時点R2までの噴射率上昇率Rαとは相関がある。変化点P2から変化点P3までの圧力上昇率Pγと、時点R2から時点R3までの噴射率下降率Rγとは相関がある。変化点P1から変化点P2までの圧力下降量Pβ(最大落込量)と時点R1から時点R2までの噴射率上昇量Rβとは相関がある。
したがって、検出圧力の変動から圧力下降率Pα、圧力上昇率Pγ及び圧力下降量Pβを検出することで、噴射率上昇率Rα、噴射率下降率Rγ及び噴射率上昇量Rβを算出することができる。以上の如く噴射率の各種状態(R1,R3,Rα,Rβ,Rγ)を算出することができ、よって、図2(b)に示す燃料噴射率の変化(推移波形)を推定することができる。
さらに、実噴射開始から終了までの噴射率の積分値(斜線を付した符号Sに示す部分の面積)は噴射量に相当する。そして、検出圧力の変動波形のうち実噴射開始から終了までの噴射率変化に対応する部分(変化点P1〜P3の部分)の圧力の積分値と、噴射率の積分値Sとは相関がある。よって、検出圧力の変動から圧力積分値を算出することで、噴射率積分値S(噴射量Q)に対応する値を算出することができる。なお、これらの換算に際しては、予め試験装置等で検出された噴射量Qが用いられる。
噴射指令信号のパルスオン時刻t1、パルスオフ時刻t2及びパルスオン時間Tqと、上記各種状態(R1,R3,Rα,Rβ,Rγ)、及び噴射量Qとの関係を、燃料噴射弁10の噴射特性を示す特性値として学習する。そして、学習した特性値をEEPROM25aに記憶させて、その特性値を更新する。
より具体的には、上記の噴射率上昇率Rα、噴射率下降率Rγと、以下に説明するtd,te,dqmaxとを特性値として学習する。すなわち、パルスオン時刻t1から時点R1までの時間を噴射開始応答遅れ時間tdとして学習する。噴射指令によるパルスオン時間Tqと、時点R1からR3までの時間である実噴射時間との偏差を噴射時間偏差teとして学習する。噴射指令によるパルスオン時間Tqと噴射率上昇量Rβとの比率を上昇量比率dqmaxとして学習する。例えば、燃料噴射弁10の劣化が進行すると、噴射開始応答遅れ時間tdが長くなり、噴射時間偏差teが大きくなる等の傾向が見られる。
ECU30のマイコンは、基本的にはアクセル操作量等から算出されるエンジン負荷やエンジン回転速度に基づき要求噴射量及び要求噴射時期を算出する。そして、学習した特性値により算出される噴射率モデルを用いて、要求噴射量及び要求噴射時期を満たすように噴射指令信号(t1、t2、Tq)を設定する。これにより、燃料噴射状態(噴射タイミング及び噴射量等)を制御する。
ここで、燃料噴射弁10において、所望する量の燃料を噴射できない等の不具合が生じることがある。これに対して、その不具合の原因解析に有用となる各種情報を、本実施形態ではEEPROM25aに記憶させている。上記不具合の具体例としては、粗悪燃料を使用したことや、燃料噴射弁10を過酷な状況で使用したことが原因で、燃料噴射弁10の劣化が進行した場合等が挙げられる。
図3は、学習及び情報記憶制御の処理手順を示すフローチャートである。この一連の処理は、上記特性値の学習を実行する条件が成立した場合に、ECU30が有するマイコンにより所定の周期で繰り返し実行される。なお、学習実行条件には、例えば、燃圧センサ20により測定される燃料圧力が所定範囲内にあること、燃料温度が所定範囲内にあること、学習対象とする気筒において所定の噴射パターンによる燃料噴射の指令が出され、その噴射パターンでの噴射実行中であること、その噴射量(指令値)が所定範囲内にあること、学習処理に係る各種センサが正常であることが含まれる。
まず、噴射を実行している気筒の燃料噴射弁10において、EEPROM25aに記憶された各学習値(各特性値)を読み込む(S11)。なお、この処理に先立って、EEPROM25aには、各学習値の各初期値、又は最初の学習で得られた各学習値が記憶させられている。
続いて、現在実行している噴射において各学習値を算出する(S12)。具体的には、上述した手順により、燃圧センサ20による検出圧力の変動に基づいて、噴射率上昇率Rα、噴射率下降率Rγ、噴射開始応答遅れ時間td、噴射時間偏差te、及び上昇量比率dqmaxを各学習値として算出する。
そして、EEPROM25aに記憶された各学習値と、それに対応する上記算出された各学習値との偏差が、各学習値についての各閾値よりも大きいか否か判定する(S13)。具体的には、学習値が逐次算出される(更新される)ことに伴って、その算出される学習値の大きさが変化する。このため、図4に示すように、EEPROM25aに記憶された学習値と、算出された学習値との差も変化する。これに対して、これら学習値の差が、上限閾値よりも大きい状態又は下限閾値よりも小さい状態であるか、それとも上限閾値と下限閾値との中間の状態であるかを判定する。そして、これら学習値の差が、上限閾値よりも大きい状態又は下限閾値よりも小さい状態であれば、EEPROM25aに記憶された学習値と算出された学習値との偏差(相違)が、学習値についての閾値(所定度合)よりも大きいと判定する。一方、これら学習値の差が、上限閾値と下限閾値との中間の状態であれば、EEPROM25aに記憶された学習値と算出された学習値との偏差が、学習値についての閾値よりも大きくないと判定する。なお、上記の状態が所定時間よりも長く継続したことを判定の条件として加えてもよい。
ここで、図5に示すように、各学習値についての閾値は、それぞれ異なる値に設定されている。例えば、図5(a)は、燃料噴射弁10の噴射特性に与える影響の大きい学習値(特性値)の上記差に対する閾値(上限閾値、下限閾値)を示しており、図5(b)は、噴射特性に与える影響の小さい学習値の上記差に対する閾値を示している。影響の大きい学習値では影響の小さい学習値と比較して、上限閾値が小さく設定されており、下限閾値が大きく設定されている。詳しくは、影響の大きい学習値ほど、上限閾値が小さく設定されており、また下限閾値が大きく設定されている。すなわち、影響の大きい学習値ほど、上記偏差に対する閾値が小さく設定されている。上記の各学習値では、噴射特性に対する影響の大きい順に、上昇量比率dqmax、次いで噴射開始応答遅れ時間td及び噴射時間偏差te、そして噴射率上昇率Rα及び噴射率下降率Rγとなる。なお、EEPROM25aに記憶された学習値と算出された学習値との相違が所定度合よりも大きいことを判定する他の態様として、記憶された学習値と算出された学習値との比が、上限閾値よりも大きいこと又は下限閾値よりも小さいことを判定してもよい。
図3に戻り、上記判定において、EEPROM25aに記憶された各学習値と、それに対応する上記算出された各学習値との偏差が、各学習値についての各閾値よりも大きくないと判定した場合には(S13:NO)、この一連の処理を一旦終了する(END)。すなわち、学習値の偏差が閾値よりも大きくないと判定された学習値については、以下の処理(S14〜S18)を実行することなく終了する。一方、上記判定において、EEPROM25aに記憶された各学習値と、それに対応する上記算出された各学習値との偏差が、各学習値についての各閾値よりも大きいと判定した場合には(S13:YES)、以下の処理(S14〜S18)を実行する。すなわち、学習値の偏差が閾値よりも大きいと判定された学習値について、算出した学習値(特性値)と共に、その特性値を学習した時の燃料噴射弁10の状況を、EEPROM25aに記憶させる。
具体的には、上記偏差が閾値よりも大きいと判定された学習値について、算出した学習値をEEPROM25aに記憶させる(S14)。続いて、燃料噴射弁10の使用開始から学習値を算出した時までの累積作動時間を、特性値を学習した時の状況としてEEPROM25aに記憶させる。なお、特性値を学習した時の状況として、燃料噴射弁10の累積作動時間に代えて累積作動回数を記憶させてもよい。
続いて、エンジンの回転速度及び燃料噴射弁10による噴射量Qを複数の領域に分けたときに、特性値を学習する時までの各領域での燃料噴射弁10の使用頻度を、上記状況としてEEPROM25aに記憶させる(S16)。具体的には、図6に示すように、EEPROM25aは、回転速度NE及び燃料噴射量Q(エンジン負荷)を複数の領域に分けたマップを有している。そこで、各領域について燃料噴射弁10の使用開始から学習値を算出した時までの累積使用回数D(Qi,NEj)を算出し、領域毎に累積使用回数D(Qi,NEj)を記憶させる。すなわち、領域毎の燃料噴射弁10の使用頻度を、特性値を学習した時の状況として記憶させる。なお、エンジンの回転速度及び燃料噴射弁10による噴射量Qのいずれか一方のみを、複数の領域に分けてもよい。
続いて、学習値を算出した時の燃料圧力、エンジン回転速度NE、燃料噴射量Qを、燃料噴射弁10の特性値を学習した時の状況としてEEPROM25aに記憶させる(S17)。具体的には、燃料噴射弁10に供給される燃料の圧力を燃圧センサ20により検出し、クランク角センサ等によりエンジン回転速度NEを検出し、燃圧センサ20の検出圧力の変動に基づいて燃料噴射量Qを算出する。そして、これらを上記状況として、EEPROM25aに記憶させる。なお、燃料噴射弁10に供給される燃料の圧力を、コモンレール42に設けられた燃圧センサにより検出することもできる。燃料噴射量Qを、噴射量指令信号に基づいて算出することもできる。また、学習値を算出した時の燃料圧力、エンジン回転速度NE、燃料噴射量Qの少なくとも1つを、上記状況としてEEPROM25aに記憶させるようにしてもよい。
続いて、学習値を算出した時の燃料の体積弾性係数Kを、燃料噴射弁10の特性値を学習した時の状況としてEEPROM25aに記憶させる(S18)。具体的には、高圧ポンプ41の吐出口41aから各々の燃料噴射弁10の噴孔11bに至るまでの燃料経路内全体の燃料を対象として、燃料の体積弾性係数Kを算出する。体積弾性係数Kは、所定の流体における圧力変化について、「ΔP=K・ΔV/V」(K:体積弾性係数、ΔP:流体の体積変化に伴う圧力変化量、V:体積、ΔV:体積Vからの体積変化量)なる関係式を満足させる係数Kであり、この係数Kの逆数は圧縮率に相当する。
以下に、ECU30に設けられたマイコンが体積弾性係数Kを算出する手順について説明する。先ず、燃圧センサ20による検出圧力を取得し、取得した検出圧力の推移を表す変動波形(図2(c)参照)から、1回の噴射に伴い生じる燃料圧力の低下量ΔPを算出する。具体的には、変化点P1での検出圧力から変化点P3での検出圧力を減算することで、噴射開始時点から終了時点までに生じた燃料圧力の低下量ΔPを算出する。
次に、前記変動波形から噴射量Qを算出する。具体的には先述したように、図2(c)に示す変動波形から図2(b)に示す噴射率の推移波形を算出し、その推移波形を用いて実噴射開始から終了までの噴射率の積分値S(噴射量Q)を算出する。
次に、算出した低下量ΔP及び噴射量Qに基づき、体積弾性係数Kを算出する。具体的には、上記関係式「ΔP=K・ΔV/V」中のΔPは上記低下量ΔPに相当し、関係式中のΔVは上記噴射量Qに相当する。また、関係式中のVは、予め計測した値であってECU30が有するメモリ(図示せず)又はEEPROM25aに記憶させておいた値を用いる。以上により、低下量ΔP、噴射量Q(ΔV)及び計測した値Vを上記関係式に代入することで、体積弾性係数Kを算出する。
そして、算出した体積弾性係数KをEEPROM25aに記憶させた後、この一連の処理を一旦終了する(END)。
なお、S12の処理が学習手段としての処理に相当し、S15〜S18の処理が状況取得手段としての処理に相当し、S13〜S18の処理が情報記憶手段としての処理に相当する。
上記の各特性値を学習する時の燃料噴射弁10の状況によれば、燃料噴射弁に不具合が発生した原因等を以下のように把握することができる。
燃料噴射弁10を過酷な状況で使用している場合には、それが原因となって燃料噴射弁10が故障したり、劣化が著しく促進されたりする場合がある。
具体例として、耐用年数を超えて長期に亘り燃料噴射弁10を使用した場合が挙げられる。したがって、図3のS15で記憶された累積作動時間は、EEPROM25aに記憶された各特性値から、学習された各特性値が所定度合よりも変化した場合に、使用状況が過酷であったか否かを解析するのに有効に利用できる。
他の具体例としては、高負荷高回転領域での燃料噴射弁10の使用頻度が高いことが挙げられる。したがって、図3のS16で記憶された領域毎の燃料噴射弁10の使用頻度は、EEPROM25aに記憶された各特性値から、学習された各特性値が所定度合よりも変化した場合に、使用状態が過酷であったか否かを解析するのに有効に利用できる。
さらに、他の具体例としては、燃料噴射弁10内部の燃料圧力が瞬時的に許容圧を超えた場合、燃料噴射量Q及びエンジン回転速度NEが瞬時的に許容値を超えた場合等が挙げられる。したがって、図3のS17で記憶された特性値を学習した時の燃圧,NE,Qは、EEPROM25aに記憶された各特性値から、学習された各特性値が所定度合よりも変化した場合に、使用状態が過酷であったか否かを解析するのに有効に利用できる。
また、粗悪燃料を用いると、通常燃料と比較して体積弾性係数Kが大きく変化する。また、体積弾性係数Kが変化すれば、上述した各種特性値(学習値)も大きく変化する。したがって、EEPROM25aに記憶された各特性値から、学習された各特性値が所定度合よりも変化した場合に、EEPROM25aに記憶された情報を見れば、その時の燃料の体積弾性係数Kを取得することができる。
さらに、各気筒の燃料噴射弁10毎に、噴射特性を示す各特性値、及び特性値を学習する時の燃料噴射弁10の状況が、搭載するEEPROM25aに記憶されているので、各燃料噴射弁10において各特性値と状況との関係を把握することができる。
以上詳述した本実施形態は以下の利点を有する。
・ECU30により学習された特性値とEEPROM25aに記憶された特性値との相違が所定度合よりも大きいことを条件として、学習された特性値と共に、特性値を学習する時の燃料噴射弁10の状況がEEPROM25aに記憶させられる。すなわち、ECU30により学習された特性値が、EEPROM25aに記憶された特性値から所定度合よりも大きく変化した場合には、学習された特性値と共にその時の燃料噴射弁10の状況がEEPROM25aに記憶させられる。一方、ECU30により学習された特性値が、EEPROM25aに記憶された特性値から所定度合よりも大きく変化していない場合には、燃料噴射弁10の特性値や状況といった燃料噴射弁10に関する情報がEEPROM25aに記憶させられることはない。
したがって、記憶された特性値から、学習された特性値が所定度合よりも大きく変化した場合のみ、EEPROM25aに情報の書込みを行うため、EEPROM25aへの書込み回数を抑制することができる。そして、記憶された特性値から、学習された特性値が所定度合よりも大きく変化しており、記憶された特性値を更新する必要のある場合には、学習された特性値がEEPROM25aに記憶させられる。このため、EEPROM25aに記憶された特性値の精度を保証することができる。さらに、学習された特性値と共に、特性値を学習する時の燃料噴射弁10の状況がEEPROM25aに記憶させられる。このため、記憶された特性値から、学習された特性値が所定度合よりも大きく変化した時の燃料噴射弁10の状況を、EEPROM25aに記憶させることができる。その結果、EEPROM25aに記憶された燃料噴射弁10の状況の精度も保証することができる。
・噴射特性に与える影響の大きい特性値の上記所定度合が、噴射特性に与える影響の小さい特性値の上記所定度合よりも小さく設定されている。具体的には、ECU30により学習された特性値とEEPROM25aに記憶された特性値との偏差に対して、影響の大きい特性値の閾値が影響の小さい特性値の閾値よりも小さく設定されている。このため、噴射特性に与える影響の大きい特性値は、噴射特性に与える影響の小さい特性値よりも高い頻度で、燃料噴射弁10の状況と共にEEPROM25aに記憶させられ易くなる。したがって、噴射特性に与える影響の大きい特性値の精度を、噴射特性に与える影響の小さい特性値の精度よりも高くすることができる。その結果、噴射特性に与える影響の大きさに応じて、複数種類の特性値を適切な精度で記憶させることができる。
・特性値を学習する時までの燃料噴射弁10の累積作動時間が、特性値を学習する時の燃料噴射弁10の状況として取得され、学習された特性値と共にこの状況がEEPROM25aに記憶させられる。したがって、燃料噴射弁10の噴射特性を示す特性値の変化と、燃料噴射弁10の累積作動時間の増加との関係を把握することができる。
・エンジン回転速度NE及び燃料噴射弁10による燃料噴射量Qを複数の領域に分けたときに、特性値を学習する時までの各領域での燃料噴射弁10の使用頻度が、特性値を学習する時の燃料噴射弁10の状況として取得され、学習された特性値と共にこの状況がEEPROM25aに記憶させられる。したがって、燃料噴射弁10の噴射特性を示す特性値の変化と、特性値を学習する時までのエンジン回転速度NEや燃料噴射量Qの各領域での燃料噴射弁10の使用頻度との関係を把握することができる。
・特性値を学習する時の、燃料噴射弁10に供給される燃料の圧力、エンジン回転速度NE、及び燃料噴射弁10による燃料噴射量Qが、特性値を学習する時の燃料噴射弁10の状況として取得され、学習された特性値と共にこれらの状況がEEPROM25aに記憶させられる。したがって、記憶された特性値から、学習された特性値が所定度合よりも大きく変化した時に、その時の燃料圧力や、エンジン回転速度NE、燃料噴射量QをEEPROM25aに記憶させておくことができる。その結果、燃料噴射弁10が過酷な状況で使用されたことにより、燃料噴射弁10の噴射特性が変化したことなどを把握することが可能となる。
・特性値を学習する時に燃料噴射弁10に供給されている燃料の体積弾性係数Kが、特性値を学習する時の燃料噴射弁10の状況として取得され、学習された特性値と共にこの状況がEEPROM25aに記憶させられる。したがって、記憶された特性値から、学習された特性値が所定度合よりも大きく変化した時に、その時の燃料の体積弾性係数をEEPROM25aに記憶させておくことができる。その結果、燃料の性状が変化したことにより、燃料噴射弁10の噴射特性が変化したことなどを把握することが可能となる。
・燃料噴射弁10とは別の場所に設けられたECU30により、燃料噴射弁10の作動が制御される。燃料噴射弁10に関する情報をECU30に記憶させると、例えば燃料噴射弁10に不具合が生じた場合に、不具合の生じた燃料噴射弁10を受け取った解析作業者は、ECU30も受け取らなければ、燃料噴射弁10に関する情報を取得することができない。この点、燃料噴射弁10に上記EEPROM25aが搭載されているため、解析作業者は、燃料噴射弁10と共に、燃料噴射弁10に関する情報の記憶されたEEPROM25aを受け取ることができる。その結果、燃料噴射弁10を解析する作業の効率を向上させることができる。
上記実施形態に限定されず、例えば次のように実施することもできる。
・ECU30は、燃料噴射弁10に供給される燃料の圧力レベルに応じて上記特性値を学習し、圧力レベルが低い場合の上記所定度合を、圧力レベルが高い場合の上記所定度合よりも小さく設定してもよい(第1構成)。また、ECU30は、燃料噴射弁10により噴射される燃料の量(燃料噴射量Q)に応じて上記特性値を学習し、燃料噴射量Qが少ない場合の上記所定度合を、燃料噴射量Qが多い場合の上記所定度合よりも小さく設定してもよい(第2構成)。
燃料噴射量Qが少ないほど、燃料噴射量Qを高い精度で制御することが要求される。このため、一般に、燃料噴射量Qが少ないほど、燃料噴射弁10に供給される燃料の圧力レベルが低くされ、単位時間当たりに噴射される燃料の量が減少させられる。したがって、燃料噴射弁10に供給される燃料の圧力レベルが低いほど、また燃料噴射量Qが少ないほど、燃料噴射弁10の噴射特性を示す特性値の精度が高いことが望ましい。
この点、上記第1構成によれば、ECU30によって、燃料噴射弁10に供給される燃料の圧力レベルに応じて、燃料噴射弁10の噴射特性を示す特性値が学習される。そして、燃料の圧力レベルが低い場合の上記所定度合が、燃料の圧力レベルが高い場合の上記所定度合よりも小さく設定されている。このため、燃料の低い圧力レベルに応じた特性値の精度を、燃料の高い圧力レベルに応じた特性値の精度よりも高くすることができる。その結果、燃料の圧力レベルの高さに応じて、特性値を適切な精度で記憶させることができる。なお、より具体的には、燃料の圧力レベルが低いほど、上記所定度合が小さく設定されているといった構成を採用するとよい。
また、上記第2構成によれば、ECU30によって、燃料噴射量Qに応じて、燃料噴射弁10の噴射特性を示す特性値が学習される。そして、燃料噴射量Qが少ない場合の上記所定度合が、燃料噴射量Qが多い場合の所定度合よりも小さく設定されている。このため、少ない燃料噴射量Qに応じた特性値の精度を、多い燃料噴射量Qに応じた特性値の精度よりも高くすることができる。その結果、燃料噴射量Qの多さに応じて、特性値を適切な精度で記憶させることができる。なお、より具体的には、燃料噴射量Qが少ないほど、上記所定度合が小さく設定されているといった構成を採用するとよい。
・上記実施形態では、噴射特性に与える影響の大きい特性値の上記所定度合を、噴射特性に与える影響の小さい特性値の上記所定度合よりも小さく設定したが、これらの所定度合を同じ度合とすることもできる。
・ECU30は、燃料噴射弁10に供給される燃料の温度レベルに応じて上記特性値を学習し、所定温度レベルに応じた特性値のみを、特性値を学習する時の燃料噴射弁10の状況と共にEEPROM25aに記憶させてもよい(第3構成)。所定温度レベルとして、燃料噴射弁10に供給される燃料の平均温度や、エンジンの定常運転時における燃料の温度を採用することが望ましい。こうした所定温度レベルによれば、比較的高い頻度で実現される燃料の温度を、EEPROM25aに情報を記憶させる時の基準温度とすることができる。
一般に、エンジンの運転状態に応じて、燃料噴射弁10に供給される燃料の温度は変化する。そして、燃料の温度が変化した場合には、燃料噴射弁10の噴射特性が変化するおそれがある。
この点、上記構成によれば、ECU30によって、燃料噴射弁10に供給される燃料の温度レベルに応じて、燃料噴射弁10の噴射特性を示す特性値が学習される。このため、エンジンの燃料噴射制御等において、燃料の温度レベルに応じた上記特性値を使用することが可能となる。また、所定温度レベルに応じた上記特性値のみが、燃料噴射弁10の状況と共にEEPROM25aに記憶させられる。このため、燃料の温度レベルに応じて特性値を学習しつつ、EEPROM25aへ書込む情報の量を抑制することができる。
・ECU30は、EEPROM25aに上記特性値を前回記憶させてから、特性値が所定回数よりも多く学習されたことを更に条件として、学習された特性値と共に特性値を学習する時の燃料噴射弁10の状況をEEPROM25aに記憶させてもよい(第4構成)。また、ECU30は、EEPROM25aに上記特性値を前回記憶させてから、燃料噴射弁10により燃料の噴射が所定回数よりも多く行われたことを更に条件として、学習された特性値と共に特性値を学習する時の燃料噴射弁10の状況をEEPROM25aに記憶させてもよい(第5構成)。
何らかの誤検出や過渡状態での誤差等により、ECU30により学習される上記特性値が急変するおそれがある。
この点、上記第4構成によれば、EEPROM25aに上記特性値を前回記憶させてから、特性値が所定回数よりも多く学習されるまでは、学習された特性値と共に燃料噴射弁10の状況がEEPROM25aに記憶させられることはない。このため、EEPROM25aに特性値を前回記憶させてから特性値を学習した回数が所定回数よりも少なく、実際に特性値が変化していると考えにくい場合には、燃料噴射弁10に関する情報をEEPROM25aに記憶させないようにすることができる。
また、上記第5構成によれば、EEPROM25aに上記特性値を前回記憶させてから、燃料噴射弁10により燃料の噴射が所定回数よりも多く行われるまでは、学習された特性値と共に燃料噴射弁10の状況がEEPROM25aに記憶させられることはない。このため、EEPROM25aに特性値を前回記憶させてから、燃料噴射弁10により燃料の噴射が行われた回数が所定回数よりも少なく、実際に特性値が変化していると考えにくい場合には、燃料噴射弁10に関する情報をEEPROM25aに記憶させないようにすることができる。
・上記実施形態では、EEPROM25aを、圧力センサ素子22を備えた燃圧センサ20に取り付けているが、このような構成に限定されるものではなく、例えばボデー11やコネクタ14にEEPROM25aを取り付けるよう構成してもよい。
・上記実施形態では、燃料噴射弁10に関する情報(各学習値及び燃料噴射弁10の状況)を、各燃料噴射弁10に搭載されたEEPROM25aに記憶させたが、この情報をその他の部分に設けられた取り外し可能なEEPROMに記憶させてもよい。こうした構成によっても、燃料噴射弁10に関する情報をECU30に記憶させる構成と比較して、作業者はEEPROMを取り外すことにより、燃料噴射弁10に関する情報を容易に入手することができる。
・上記実施形態では、コモンレール42を備える燃料噴射システムに具体化したが、直噴ガソリンエンジンのデリバリパイプを備える燃料噴射システムに具体化することもできる。
10…燃料噴射弁、20…燃圧センサ、25a…EEPROM(記憶機器)、30…ECU、42…コモンレール。

Claims (13)

  1. 内燃機関の燃料噴射弁に関する情報を書込み回数に制限のある記憶機器に記憶させる情報記憶装置であって、
    前記燃料噴射弁の噴射特性を示す特性値を学習する学習手段と、
    前記学習手段により前記特性値を学習する時の前記燃料噴射弁の状況を取得する状況取得手段と、
    前記学習手段により学習された前記特性値と前記記憶機器に記憶された前記特性値との相違が所定度合よりも大きいことを条件として、前記学習手段により学習された特性値と共に前記状況取得手段により取得された前記状況を前記記憶機器に記憶させる情報記憶手段と、
    を備え
    前記学習手段は、複数種類の前記特性値を学習するものであり、
    前記情報記憶手段は、前記噴射特性に与える影響の大きい前記特性値の前記所定度合を、前記噴射特性に与える影響の小さい前記特性値の前記所定度合よりも小さく設定することを特徴とする情報記憶装置。
  2. 前記学習手段は、前記燃料噴射弁に供給される燃料の圧力レベルに応じて前記特性値を学習するものであり、
    前記情報記憶手段は、前記圧力レベルが低い場合の前記所定度合を、前記圧力レベルが高い場合の前記所定度合よりも小さく設定する請求項1に記載の情報記憶装置。
  3. 内燃機関の燃料噴射弁に関する情報を書込み回数に制限のある記憶機器に記憶させる情報記憶装置であって、
    前記燃料噴射弁の噴射特性を示す特性値を学習する学習手段と、
    前記学習手段により前記特性値を学習する時の前記燃料噴射弁の状況を取得する状況取得手段と、
    前記学習手段により学習された前記特性値と前記記憶機器に記憶された前記特性値との相違が所定度合よりも大きいことを条件として、前記学習手段により学習された特性値と共に前記状況取得手段により取得された前記状況を前記記憶機器に記憶させる情報記憶手段と、
    を備え、
    前記学習手段は、前記燃料噴射弁に供給される燃料の圧力レベルに応じて前記特性値を学習するものであり、
    前記情報記憶手段は、前記圧力レベルが低い場合の前記所定度合を、前記圧力レベルが高い場合の前記所定度合よりも小さく設定することを特徴とする情報記憶装置。
  4. 前記学習手段は、前記燃料噴射弁により噴射される燃料の量に応じて前記特性値を学習するものであり、
    前記情報記憶手段は、前記燃料の量が少ない場合の前記所定度合を、前記燃料の量が多い場合の前記所定度合よりも小さく設定する請求項1〜3のいずれか1項に記載の情報記憶装置。
  5. 内燃機関の燃料噴射弁に関する情報を書込み回数に制限のある記憶機器に記憶させる情報記憶装置であって、
    前記燃料噴射弁の噴射特性を示す特性値を学習する学習手段と、
    前記学習手段により前記特性値を学習する時の前記燃料噴射弁の状況を取得する状況取得手段と、
    前記学習手段により学習された前記特性値と前記記憶機器に記憶された前記特性値との相違が所定度合よりも大きいことを条件として、前記学習手段により学習された特性値と共に前記状況取得手段により取得された前記状況を前記記憶機器に記憶させる情報記憶手段と、
    を備え、
    前記学習手段は、前記燃料噴射弁により噴射される燃料の量に応じて前記特性値を学習するものであり、
    前記情報記憶手段は、前記燃料の量が少ない場合の前記所定度合を、前記燃料の量が多い場合の前記所定度合よりも小さく設定することを特徴とする情報記憶装置。
  6. 前記学習手段は、前記燃料噴射弁に供給される燃料の温度レベルに応じて前記特性値を学習するものであり、
    前記情報記憶手段は、所定温度レベルに応じた前記特性値のみを、前記状況取得手段により取得された前記状況と共に前記記憶機器に記憶させる請求項1〜のいずれか1項に記載の情報記憶装置。
  7. 前記情報記憶手段は、前記記憶機器に前記特性値を前回記憶させてから、前記学習手段により前記特性値が所定回数よりも多く学習されたことを更に条件として、前記学習手段により学習された特性値と共に前記状況取得手段により取得された前記状況を前記記憶機器に記憶させる請求項1〜のいずれか1項に記載の情報記憶装置。
  8. 前記情報記憶手段は、前記記憶機器に前記特性値を前回記憶させてから、前記燃料噴射弁により燃料の噴射が所定回数よりも多く行われたことを更に条件として、前記学習手段により学習された特性値と共に前記状況取得手段により取得された前記状況を前記記憶機器に記憶させる請求項1〜のいずれか1項に記載の情報記憶装置。
  9. 前記状況取得手段は、前記学習手段により前記特性値を学習する時までの前記燃料噴射弁の累積作動時間又は累積作動回数を、前記状況として取得する請求項1〜のいずれか1項に記載の情報記憶装置。
  10. 前記状況取得手段は、前記内燃機関の機関回転速度及び前記燃料噴射弁による燃料噴射量の少なくとも一方を複数の領域に分けたときに、前記学習手段により前記特性値を学習する時までの各領域での前記燃料噴射弁の使用頻度を、前記状況として取得する請求項1〜のいずれか1項に記載の情報記憶装置。
  11. 前記状況取得手段は、前記学習手段により前記特性値を学習する時の、前記燃料噴射弁に供給される燃料の圧力、前記内燃機関の機関回転速度、及び前記燃料噴射弁による燃料噴射量の少なくとも1つを、前記状況として取得する請求項1〜10のいずれか1項に記載の情報記憶装置。
  12. 前記状況取得手段は、前記学習手段により前記特性値を学習する時に前記燃料噴射弁に供給されている燃料の体積弾性係数を、前記状況として取得する請求項1〜11のいずれか1項に記載の情報記憶装置。
  13. 前記記憶機器は、前記燃料噴射弁に搭載されている請求項1〜12のいずれか1項に記載の情報記憶装置。
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