ところで、帯電装置においては、安定板の機能を発揮させるため、安定板の形状のバラツキをできるだけ小さく抑える必要がある。そのためには、剛体を切削したり鋳造成型したりして安定板を製造し、安定板の姿勢や形状を高精度に管理可能にすることが望ましい。しかしながら、部品コストの増大を防ぐためには、そのような構造を安定板に採用することは難しい。そのため、一般に安定板には、板金をコ字形状(チャンネル形状)に曲げ加工するなどした構造が採用されている。上記加工などにより形成される従来の安定板において、コの字の先端部の開き角度は部品の加工精度に左右されるものであり、安定板の寸法誤差は比較的大きかった。なお、安定板とそれを保持するホルダとの間には、安定板の寸法誤差が大きくても両者を組み付けることができるように、空間が設けられていた。
しかしながら、上述のように寸法誤差が大きく、安定板の先端部の位置が適正な位置からずれると、以下のような不具合が発生する可能性が生じる。すなわち、感光体を安定して帯電させることが困難になる。また、安定板やそれに取り付けられている物が感光体に接触して感光体の外周面が傷つく可能性が増加し、高画質な画像を形成する機能が損なわれるおそれがある。また、安定板が、コロナ放電時に発生したオゾンを装置外に排出するための流路の一部を構成する機能を有している場合、その流路が所望の形状にならないおそれがある。
また、オゾンを排出する流路を構成するために安定板の先端部に上流シールを貼り付ける場合、安定板の形状が不均一であると、上流シールの貼り付け位置の精度が悪くなる。その結果として、発生したオゾンを排出する流路が所望の形状にならないおそれがある。
以下に、上述のような安定板の先端部の位置のばらつきの態様及び安定板に上流シールを貼り付ける場合の上流シールの貼り付け位置の変化について、より具体的に説明する。
図16は、従来の帯電装置における、各部材が設計中心値の寸法を有する場合の上流シールと感光体との位置関係を示す側面図である。
図を参照して、帯電装置の安定板863の内部には、ホルダ865が組み付けられている。安定板863は、ホルダ865が配された溝の開口部が感光体851に面するように配置されている。安定板863のうち、溝の側方に位置する壁部の下端部近傍には、上流シール867が貼り付けられている。上流シール867は、感光体851に接触するように配置されている。上流シール867は、組み立て工程において、安定板863とホルダ865とを組み付けた状態で取り付けられる。上流シール867は、例えば、回転軸Cを中心に安定板863を回転させ、取り付け治具(図示せず)上の所定の位置に配置された上流シール867に安定板863を接触させることにより取り付けられる。
各部品が設計中心値の寸法を有する場合、すなわち、図において、寸法E1〜E3のそれぞれが以下の通りである場合の上流シール867と感光体851との位置関係について説明する。安定板863の中央から壁部の曲げ元までの寸法E1は、6.25±0.15mmである。壁部の長さ寸法E2は、19±0.2mmである。ホルダ865の基準点(基準ボス)からホルダ865の上端までの寸法E3は、10.8±0.1mmである。このとき、ホルダ865の中央から壁部の端部までの水平距離E6は、6.25±0.15mm程度になる。
この状態で取り付け治具を用いて上流シール867を取り付けるとき、安定板863の壁部の端部が先に上流シール867に接触する(図に矢印Tで示す)。そして、その後、図に点線で示すように、上流シール867が、壁部の端部を中心にその先端が外方向に変位するように倒れ、壁部に取り付けられる。このとき、感光体851の中心から上流シール867の先端までの距離E7は、14.546mm程度になる。
図17は、従来の帯電装置における、感光体851と上流シール867との間の距離が最大となる場合の上流シール867と感光体851との位置関係の一例を示す側面図である。
感光体851と上流シール867との間の距離が最大となる場合の上流シール867と感光体851との位置関係の一例について説明する。図において、寸法E1が6.1mmであり、寸法E2が18.8mmであり、寸法E3が10.9mmであると仮定する。このとき、安定板863の壁部が外側に開くと、ホルダ865の中央から壁部の端部までの水平距離寸法E6は、6.4mm程度になる。
この状態で上流シール867が取り付けられる場合、壁部の端部が上記の場合よりもさらに外側に開いているので、壁部の端部がより早いタイミングで上流シール867に接触し、上流シール867の端部もさらに外側に開く。このとき、感光体851の中心から上流シール867の先端までの距離E7は、14.725mm程度になる。
図18は、従来の帯電装置における、感光体851と上流シール867との間の距離が最小となる場合の上流シール867と感光体851との位置関係の一例を示す側面図である。
感光体851と上流シール867との間の距離が最小となる場合の上流シール867と感光体851との位置関係の一例について説明する。図において、寸法E1が6.4mmであり、寸法E2が19.2mmであり、寸法E3が10.7mmであると仮定する。このとき、安定板863の壁部が内側に倒れると、ホルダ865の中央から壁部の端部までの水平距離寸法E6は、6.1mm程度になる。
この状態では、上記各部品が設計中心値の寸法を有する場合や安定板863の壁部が外側に開いている場合とは異なり、上流シール867の取り付け時に、上流シール867の上端が先に安定板863に接触する(図に矢印T’で示す)。そのため、上流シール867は、上端部を中心に、下端側が内側に変位するように回転して倒れ、安定板863に取り付けられる。このとき、感光体851の中心から上流シール867の先端までの距離E7は、14.377mm程度になる。
帯電装置の機能を発揮させるためには、上流シールの先端位置や安定板の先端位置と感光体の中心間の距離を管理することが重要である。しかしながら、上述のように、各部材の寸法が異なったり、安定板先端の開き具合が異なると、上流シールの先端位置のばらつきが例えば0.348mmにもなり、帯電装置の機能が損なわれる場合がある。特に、上述したように、安定板の底部に対する安定板の壁部の角度によって上流シールの粘着面と安定板とが最初に当接する位置が異なり、シール先端の位置ずれが大きくなりやすい。
なお、このような問題やその解決策について、特許文献1や特許文献2には何ら記載されていない。
この発明はそのような問題点を解決するためになされたものであり、安定板の形状を略一定に保ち、安定板と感光体との位置関係を精度良く管理することができ、帯電装置の機能を安定化させることができる帯電装置、それを用いたプロセスカートリッジ、及びそれを用いた画像形成装置を提供することを目的としている。
上記目的を達成するためこの発明のある局面に従うと、感光体を帯電させるために用いられる帯電装置は、電極と、電極を保持し、一部に凸形状の突出部が形成されたホルダと、底部と底部から立ち上がる2つの壁部とを有することで溝が形成されており、溝の内側に電極が位置する金属製の安定板とを備え、ホルダは、溝の内側に配置されており、安定板は、2つの壁部のうち少なくとも一方の壁部の底部と接する側とは逆側の端部近傍でホルダの突出部に当接して弾性変形することによりホルダに付勢保持されている。
好ましくは突出部は、安定板の内面に当接し、端部を安定板の外側に向け付勢する。
好ましくは突出部は、ホルダのうち突出部の周辺部から徐々にその突出高さが高くなるように形成された傾斜面を少なくとも一部に有しており、ホルダは、安定板の端部に傾斜面が摺接されながら溝に挿入されることで溝の内側に配置されている。
好ましくはホルダの突出部を含まない部分の、2つの壁部の内面にそれぞれ面する2つの側面間の寸法は、安定板が自然状態であるときの開口部の幅寸法よりも小さい。
好ましくは安定板は、安定板が自然状態であるとき、溝の開口部側の2つの壁部の内面間の距離が、底部側の2つの壁部の内面間の距離よりも短い。
好ましくは安定板は、厚みが0.5ミリメートルのステンレス鋼板をコ字状断面を有するように曲げて形成されている。
この発明の他の局面に従うと、プロセスカートリッジは、上記の帯電装置と、帯電装置により帯電されるように配置された感光体とを備える。
この発明のさらに他の局面に従うと、画像形成装置は、少なくとも上記の帯電装置又は上記のプロセスカートリッジを備える。
これらの発明に従うと、安定板の端部がホルダに当接して安定板の外側に向け付勢されるので、安定板の寸法精度がそれほど高くなくても、安定板の端部の位置のばらつきを比較的小さくできる。したがって、安定板の形状を略一定に保ち、安定板と感光体との位置関係を精度良く管理することができ、帯電装置の機能を安定化させることができる帯電装置、それを用いたプロセスカートリッジ、及びそれを用いた画像形成装置を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態における帯電装置を用いた画像形成装置について説明する。
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態の1つにおける画像形成装置1を示す側面図である。
図を参照して画像形成装置1は、給紙カセット3と、排紙トレイ5とを備える。画像形成装置1の筐体の内部には、用紙搬送部20及び画像形成部30などが設けられている。
給紙カセット3には、B5サイズ、A4サイズ、又はA3サイズなどの用紙が装てんされている。給紙カセット3は、画像形成装置1の下部に、画像形成装置1の筐体に抜き差し可能に配置されている。給紙カセット3に装てんされた用紙は、プリント時に、1枚ずつ給紙カセット3から給紙され、画像形成部30に搬送される。なお、給紙カセット3の数は1つに限られず、それより多くてもよい。
排紙トレイ5は、画像形成装置1の上方に配置されている。排紙トレイ5には、画像形成部30により画像が形成された用紙が画像形成装置1の筐体の内部から排紙される。
用紙搬送部20は、給紙ローラ、レジストローラ、排紙ローラ、及びそれらを駆動するモータなどで構成されている。各ローラは、例えば対向する2つのローラで用紙を挟みながら、モータの駆動力によりそのローラを回転させて用紙を搬送する。
用紙は、用紙搬送部20により、給紙カセット3から給紙され、レジストローラでスキュー補正された後、画像形成部30に搬送される。また、用紙は、用紙搬送部20により、定着装置49から搬送されて画像形成装置1の筐体の外部に排出される。排出された用紙は、排紙トレイ5上に堆積される。
画像形成部30は、4組のプリントヘッド31と、光走査装置35と、中間転写ベルト41と、2次転写ローラ43と、定着装置49などとで構成されている。
中間転写ベルト41は、環状であり、支持ローラ41a,41b及びテンションローラ41cに架けられている。中間転写ベルト41は、支持ローラ41a,41bが用紙搬送部20に連動して回転することにより、矢印a方向に回転する。2次転写ローラ43は、中間転写ベルト41のうち支持ローラ41aに接触している部分に対向するように配置されている。用紙は、中間転写ベルト41と2次転写ローラ43との間の転写部43aにおいて、中間転写ベルト41と2次転写ローラ43とに挟まれながら搬送される。
各プリントヘッド31は、感光体51、現像装置53、クリーナ55、及び帯電装置60などを含んでいる。プリントヘッド31は、それぞれ、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)のCMYK各色の画像を形成するために設けられている。プリントヘッド31は、中間転写ベルト41の直下に、中間転写ベルト41の回転上流側からブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)の順で並ぶように配置されている。各感光体51の上方には、感光体51との間で中間転写ベルト41を挟むように、1次転写ローラ33が配置されている。
光走査装置35は、各プリントヘッド31の下方に配置されている。光走査装置35は、各プリントヘッド31の感光体51上にレーザ光を走査する。なお、光走査装置として、各プリントヘッド31に対応するようにひとまとまりにユニット化されたものを用いてもよい。
中間転写ベルト41の側方には、中間転写ベルト41上の残留トナーを除去するクリーニング器45及び廃棄トナー回収ボックス47が設置されている。各プリントヘッド31のクリーナ55で感光体51上から除去したトナーは、図示しない搬送経路を通じてこの廃棄トナー回収ボックス47に回収される。
定着装置49は、加熱ローラ及び加圧ローラを有している。定着装置49は、加熱ローラと加圧ローラとでトナー像が形成された用紙を挟みながら搬送し、その用紙に加熱及び加圧を行う。これにより、定着装置49は、用紙に付着したトナーを溶融させて用紙に定着させ、用紙に画像を形成する。定着装置49を経由した用紙は、排紙ローラにより画像形成装置1の筐体から排出される。
図2は、プリントヘッド31を示す側面図である。
感光体51は、ドラム形状を有している。感光体51は、中間転写ベルト41の回転方向に直交する方向が長手方向となるように配置されている。現像装置53は、感光体51の光走査装置35によりレーザ光が操作される部位よりも下流側に設けられている。各プリントヘッド31の現像装置53の内部には、各色のトナーが収納されている。現像装置53は、内部でトナーをかき混ぜながら、感光体51に接触し感光体51と共に回転する現像ローラの表面にそのトナーを均一に付着させる。
クリーナ55は、感光体51の中間転写ベルト41に接触する部位よりも回転方向下流側に配置されている。クリーナ55は、感光体51の表面に残留したトナーを感光体51から除去する。クリーナ55は、除去したトナーを廃棄トナー回収ボックス47に送る。
クリーナ55よりも感光体51の回転方向下流側には、イレーサ57が設けられている。イレーサ57は、感光体51の表面に光を照射し、感光体51の表面に残留した電荷を消去する。
帯電装置60は、イレーサ57により電荷が消去された感光体51の表面を一様に帯電させる。
本実施の形態において、感光体51と、クリーナ55と、イレーサ57と、帯電装置60とは、共に1つのカートリッジ筐体に取り付けられてひとまとまりのプロセスカートリッジ50を構成している。感光体51などが寿命を迎えたときには、プロセスカートリッジ50を別のものに容易に交換することができる。
画像形成部30において、次のように画像形成が行われる。すなわち、光走査装置35は、CMYKの各色別の画像データに基づいて、帯電装置60により一様に帯電した各感光体51上に潜像を形成する。現像装置53は、各感光体51に各色別のトナー像を形成する。すなわち、これにより、各感光体51上に各色別の画像が書き込まれる。1次転写ローラ33は、各感光体51上のトナー像を中間転写ベルト41に転写し、中間転写ベルト41上に、用紙に形成するトナー像の鏡像を形成する(1次転写)。中間転写ベルト41上には、黒色、シアン、マゼンタ、イエローの順に各色のトナー像が形成される。すなわち、中間転写ベルト41に、カラー画像が書き込まれる。その後、転写部43aにおいて、2次転写ローラ43は、中間転写ベルト41に形成されたトナー像を用紙に転写し、用紙上にトナー像を形成する(2次転写)。トナー像が形成された用紙は定着装置49に送られ、トナーが定着された後、画像形成装置1から排紙トレイ5に排出される。
図3は、帯電装置60を示す斜視図である。
図を参照して、帯電装置60は、感光体51に沿うように、その長手方向が感光体51の長手方向に一致するように配置されている。帯電装置60は、電極61、安定板63、2つのホルダ65、及び上流シール67などを有している。電極61は、感光体51の長手方向略全域にわたって感光体51に沿うように配置されている。電極61の感光体51に面する先端部は、コロナ放電に適した鋸歯状に形成されている。なお、電極61は、他の形状に形成されていてもよい。また、電極61は、例えば放電ワイヤであってもよい。
図4は、帯電装置60を示す正面図である。
図を参照して、ホルダ65は、帯電装置60の長手方向両端部に配置されている。電極61は、その長手方向両端部でホルダ65により保持されている。ホルダ65は、形状が安定した成型品で構成される。
図5は、帯電装置60を示す側面図である。
図を参照して、安定板63は、弾性部材である金属薄板を折り曲げて形成された板金部材である。安定板63は、例えば、厚みが0.5ミリメートル程度のステンレス鋼板を用いて形成されている。安定板63は、底部63aと底部63aの両側部からそれぞれ立ち上がる2つの壁部63b,63cとそれらにより形成される溝63gとを有している。換言すると、安定板63は、長手方向に垂直な断面においてコ字状断面を有しており、底部63aの内面と壁部63b,63cの内面とで溝63gの内面が構成される。安定板63の一方の壁部63bは、感光体51の回転方向上流側に位置し、他方の壁部63cは、感光体51の回転方向下流側に位置している。本実施の形態において、帯電装置60は、感光体51の中心よりも感光体51の回転方向上部側にオフセットした位置に配置されている。壁部63bは、壁部63cよりも底部63aからの突出高さが高くなるように形成されており、2つの壁部63b,63cの各端部と感光体51との間の隙間がさほど大きくならないように構成されている。
安定板63は、溝63gの内側に電極61が位置するように、かつ、溝63gの開口部63hを介して電極61が感光体51に面するように配置されている。安定板63は、電極61を覆うように配置されている。安定板63は、その長手方向の両端部それぞれにホルダ65が位置するような、感光体51の長手方向略全域にわたって電極61を覆う程度の長手方向の寸法を有している。なお、開口部63hには、図示しないグリッドが設けられていてもよいし、設けられていなくてもよい。
安定板63には、電極部61aが接続されている。電極部61aは、電極61又は安定板63を所定の電位にするために設けられている。
本実施の形態において、安定板63の2つの壁部63b,63cのうち感光体51の回転方向上流側の壁部63bには、その長手方向に沿って、上流シール67が貼り付けられている。上流シール67は、壁部63bの下端部から感光体51の表面に突出するように配置されている。上流シール67は、その下端部が感光体51の長手方向と略平行になるように配置されている。上流シール67は、感光体51の表面に摺接している。これにより、帯電装置60の駆動時に、コロナ放電に伴い発生するオゾンが帯電装置60内に形成された所定のオゾン流路を流れて機外に排出され、オゾンが機内の他の部位に拡散しにくくなる。なお、オゾンを機内で回収する場合、発生したオゾンを所定の部位に導くようにオゾン流路を構成してもよい。
図6は、帯電装置60の端部を示す斜視図である。
図を参照して、ホルダ65は、安定板63の両端部の溝63gの内側に取り付けられている。ホルダ65の上面には、安定板63の底部63aに貫入する底部突起65aが設けられている。ホルダ65は、底部突起65aを底部63aに貫入させて位置決めされた状態で、取り付けねじ(図示せず)が安定板63の底部63a側からホルダ65にねじ込まれて安定板63に固定されている。
各ホルダ65は、帯電装置60及び感光体51の両側部に配されたすべり軸受50aに嵌め込まれている。すべり軸受50aは、プロセスカートリッジ50に取り付けられている。また、感光体51は、すべり軸受50aにより、すべり軸受50aに対し回転可能に保持されている。すなわち、帯電装置60及び感光体51は、互いに位置決めされて保持されている。これにより、感光体51が帯電装置60によって均一に帯電され、高画質な画像を形成可能になる。
ここで、本実施の形態において、安定板63は、ホルダ65により付勢保持されている。以下、安定板63のホルダ65への取り付け構造について説明する。
図7は、図4のA−A線断面図である。
図を参照して、ホルダ65の壁部63b,63cに面する側面には、それぞれ突出部65b,65cが形成されている。安定板63は、2つの壁部63b,63cの開口部63h側の2つの端部の近傍部位で、突出部65b,65cに当接している。
図8は、図4のB−B線断面図である。
以下に示す図において、説明を簡明に行うため、安定板63などの形状を変形して示すことがある。
図を参照して、突出部65b,65cは、それぞれ、ホルダ65の壁部63b,63cに面する側面から側方に突出するように、凸形状に形成されている。ホルダ65の側面と各突出部65b,65cの上部との間には、傾斜面65d,65eが形成されている。傾斜面65d,65eは、ホルダのうち各突出部65b,65cの周辺部から各突出部65b,65cまでの突出高さが徐々に高くなるように、テーパ状に形成されている。各突出部65b,65cは、溝63gにホルダ65が配置されたときすなわちホルダ65の上面が安定板63の底部63aの内面に接触したときに各壁部63b,63cの開口部63h側の端部近傍に対応する位置に配置されている。
図9は、上流シール67の取り付け方法の一例を説明する側面図である。
上流シール67の安定板63への取り付け精度としては高い精度が必要になるため、上流シール67は、以下に示すように、取り付け治具(jig)500を用いて取り付けられる。なお、図において、突出部65cの図示は省略している(後述の図13乃至図15においても同様)。
図を参照して、取り付け治具500は、その上面の所定の位置に、例えば吸引力によって上流シール67を保持する。上流シール67の上面には、接着剤が配置されている。他方、取り付け治具500に対し位置決めされている腕部550は、安定板63を支持したホルダ65を保持する。腕部550は、回転軸Cを中心として取り付け治具500に対して回転可能である。
上流シール67の取り付け時には、図に矢印Rで示すように腕部550を回転させることにより、安定板63をホルダ65と共に取り付け治具500上の所定の位置まで変位させ、壁部63bを上流シール67の上面に接触させる。これにより、上流シール67の正面に配された接着剤によって上流シール67が壁部63bに接着される。取り付け治具500による上流シール67の吸引などを解除することにより、安定板63に上流シール67を取り付けることができる。このように取り付け治具500を用いることにより、帯電装置60毎の上流シール67の取り付け位置のばらつきが生じにくくなるので、上流シール67を適正位置に精度良く取り付けることができる。
なお、上流シール67の取り付け方法はこれに限られるものではない。
図10は、突出部65bの近傍部位を示す断面図である。
図を参照して、ホルダ65が安定板63の内側に配置された状態で、突出部65bには、壁部63bの端部近傍部位が接触している。これにより、安定板63は、ホルダ65などが安定板63の内側に配置されていない自然状態から弾性変形し、壁部63bの端部が安定板63の外側に変位した状態となっている。安定板63は、壁部63bの端部の近傍で突出部65bに当接して弾性変形し、壁部63bが側方(図の矢印F方向)に付勢されている。また、他方の壁部63cもこれと同様であり、その端部近傍で突出部65cに当接し弾性変形し、側方に付勢されている。このように、安定板63は、その壁部63b,63cの端部が突出部65b,65cに当接した状態で、安定板63自身の曲げ応力によりその内面をホルダ65に押し付け、ホルダ65に付勢支持されている。
図11は、安定板63を示す側面図である。
図において、自然状態にある安定板63を実線で示し、ホルダ65に保持された状態にある安定板63を2点鎖線で示す。
安定板63が自然状態であるとき、開口部63h側の2つの壁部63b,63cの端部の内面間の距離(図の寸法D1)が、底部63a側の2つの壁部63b,63cの端部の内面間の距離(図の寸法D1’)よりも短い。すなわち、2つの壁部63b,63cの内面の延長面は、開口部63h側で交わる。また、本実施の形態において、安定板63が自然状態であるとき、底部63aの内面と壁部63bの内面とがなす角の角度θb、及び底部63aの内面と壁部63cの内面とがなす角の角度θcは、共に鋭角である。
図12は、ホルダ65が組み付けられるときの安定板63を示す側面図である。
安定板63は、ホルダ65の上面側から、ホルダ65に被せるようにしてホルダ65に取り付けられる。換言すると、ホルダ65は、その上部が安定板63の開口部63hから安定板63の溝63gに挿入されて、溝63gの内側に配置される。
ここで、ホルダ65の突出部65b,65cを含まない部分の、2つの壁部63b,63cの内面にそれぞれ面する2つの側面間の寸法(図の寸法D2)は、自然状態にある安定板63の開口部63h側の2つの壁部63b,63cの内面間の距離すなわち開口部63hの幅寸法(図の寸法D1)よりも小さい。他方、自然状態にある安定板63の開口部63hの幅寸法D1は、ホルダ65の両突出部65b,65c間の寸法(図の寸法D3)よりも小さい。したがって、ホルダ65は、突出部65b,65cが設けられている部位に安定板63が接触するまでは、安定板63の溝63gに容易に挿入される。また、ホルダ65は、安定板63の壁部63b,63cの端部に傾斜面65d,65eを摺接させ、安定板63を弾性変形させながら溝63gに容易に挿入される。
このように、ホルダ65と安定板63との組み付け作業は、容易に行うことができる。また、ホルダ65と安定板63とが組み付けられた状態では、安定板63が自然状態から大きく変形しているため、安定板63の復元力により、壁部63b,63cが確実にホルダ65に接触した状態が保たれる。
本実施の形態においては、安定板63がホルダ65の突出部65b,65cに当接して付勢支持されているので、安定板63の寸法精度がそれほど高くなくても、安定板63の壁部63b,63cの端部の位置のばらつきを比較的小さくできる。これにより、上流シール67の感光体51に対する取り付け位置の精度を向上させることができる。以下、これについて具体例と共に説明する。
図13は、各部材が設計中心値の寸法を有する場合の上流シール67と感光体51との位置関係を示す側面図である。
各部品が設計中心値の寸法を有する場合、すなわち、図において、寸法E1〜E5のそれぞれが以下の通りである場合の上流シール67と感光体51との位置関係について説明する。安定板63の中央から壁部63bの曲げ元までの寸法E1は、6.25±0.15mmである。壁部63bの長さ寸法E2は、19±0.2mmである。ホルダ65の基準点(基準ボス)からホルダ65の上端までの寸法E3は、10.8±0.1mmである。ホルダ65の基準点から突出部65bの上端部までの水平距離E4は、7.7±0.1mmである。ホルダ65の中央から突出部65bまでの水平距離E5は、6.35±0.1mmである。このとき、壁部63bの内面が突出部65bに当接して外側に開いており、ホルダ65の中央から壁部63bの端部までの水平距離E6は、6.353mm程度になる。
この状態で上述のように取り付け治具500を用いて上流シール67を取り付けるとき、壁部63bが外側に開いているので、先ず、壁部63bの端部が先に上流シール67に接触する(図に矢印Tで示す)。そして、その後、図に点線で示すように、上流シール67が、壁部63bの端部を中心に、その先端が外方向に変位するように倒れ、壁部63bに精度良く取り付けられる。このとき、感光体51の中心から上流シール67の先端までの距離E7は、14.656mm程度になる。
図14は、感光体51と上流シール67との間の距離が最大となる場合の上流シール67と感光体51との位置関係の一例を示す側面図である。
感光体51と上流シール67との間の距離が最大となる場合の上流シール67と感光体51との位置関係の一例について説明する。図において、寸法E1が6.1mmであり、寸法E2が18.8mmであり、寸法E3が10.9mmであり、寸法E4が7.6mmであり、寸法E5が6.45mmであると仮定する。このとき、上述と同様に、壁部63bの内面が突出部65bに当接して外側に開いているので、ホルダ65の中央から壁部63bの端部までの水平距離寸法E6は、6.456mm程度になる。
この状態でも、上記各部品が設計中心値の寸法を有する場合と略同様に、上流シール67が取り付けられる。この場合、壁部63bの端部が上記の場合よりもさらに外側に開いているので、壁部63bの端部が上流シール67により早いタイミングで接触し、上流シール67の端部もさらに外側に開く。このとき、感光体51の中心から上流シール67の先端までの距離E7は、14.781mm程度になる。
図15は、感光体51と上流シール67との間の距離が最小となる場合の上流シール67と感光体51との位置関係の一例を示す側面図である。
感光体51と上流シール67との間の距離が最小となる場合の上流シール67と感光体51との位置関係の一例について説明する。図において、寸法E1が6.4mmであり、寸法E2が19.2mmであり、寸法E3が10.7mmであり、寸法E4が7.8mmであり、寸法E5が6.25mmであると仮定する。このとき、上述とは異なり、壁部63bの端部が突出部65bに当接する。壁部63bの端部は外側に開き、ホルダ65の中央から壁部63bの端部までの水平距離寸法E6は、6.25mm程度になる。
この状態でも、上記各部品が設計中心値の寸法を有する場合と略同様に、上流シール67が取り付けられる。このとき、感光体51の中心から上流シール67の先端までの距離E7は、14.520mm程度になる。
このように、本実施の形態では、各部材の寸法が異なったとしても、上流シール67の先端位置のばらつきは、最大でも0.261mmの範囲内に納まる。すなわち、ホルダ65の突出部65b,65cにより、安定板63の先端を常時開く方向に付勢して保持することができ、安定板63の加工精度に影響されず、上流シール67の貼付け時のバラツキを小さくすることができる。
[実施の形態における効果]
以上のように構成された画像形成装置では、安定板の端部がホルダの突出部に当接して安定板の外側に向け付勢される。そのため、安定板の寸法精度がそれほど高くなくても、安定板の端部の位置のばらつきが比較的小さくなる。したがって、安定板の形状を略一定に保ち、安定板と感光体との位置関係を精度良く管理することができ、帯電装置の機能を安定化させることができる。すなわち、安定板の先端をホルダに密着させることで、その開き角度、姿勢を一定に保つことができる。また、安定板の位置を感光体に対して一定にすることができる。
また、上流シールの取り付け時において、常に同じように壁部の端部が最初に上流シールに接触する。したがって、上流シールの取り付け時に上流シールがずれる可能性が小さくなり、より正確な位置に上流シールを取り付けることができる。そのため、理想的なオゾン流路を容易に形成したり、感光体の損傷を防止したりすることができ、帯電装置の機能をより安定化させることができる。
[その他]
なお、上流シールに対して、感光体の回転方向下流側に下流シールを設けてもよい。その場合、下流シールを精度良く配置することができる。また、上流シールを設けなくてもよい。
また、安定板は、金属板を曲げて形成されたものに限られず、複数の部材を溶接などにより接合して構成されていてもよい。また、安定板は、板金部材でなくてもよい。
また、画像形成装置としては、モノクロ/カラーの複写機、プリンタ、ファクシミリ装置やこれらの複合機(MFP(Multi Function Peripheral))などいずれであってもよい。また、画像形成装置は、上述のようなタンデム型のカラープリンタではなく、各色の現像装置を回転させながら例えば1つの感光体により画像形成を行うロータリー型のものであってもよい。
なお、上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。