JP5320843B2 - 金属粉末射出成形用コンパウンドおよび焼結体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、金属粉末射出成形用コンパウンドおよび焼結体の製造方法に関するものである。
粉末冶金法では、金属粉末と有機バインダとを混合し、所定の形状に成形して成形体とした後、この成形体を脱脂・焼成することによって焼結体を得る。このようにして得られた焼結体は、比較的複雑な形状であっても目的とする形状に近いものとなり、後加工の加工量が少なくて済む。また、金型を用いて成形するため、均一な品質の焼結体を効率よく大量に生産することができる。これにより、生産コストの低減を容易に図ることができる。
ところが、金属粉末と有機バインダとの混合物では、金属粉末同士の潤滑性により、混合物の流動性が左右される。そして、混合物の流動性が低い場合、成形時の混合物の充填性が低下し、成形体の密度の低下を招くこととなる。
このような問題に対し、特許文献1には、混合物中に脂肪酸金属塩の粒子を添加し、これにより混合物の流動性を高める方法が開示されている。
しかしながら、特許文献1に開示の方法では、混合物中で金属粉末と脂肪酸金属塩の粒子とが均一に分散するのは困難であるため、金属粉末同士の潤滑性が一様に向上することは期待できない。したがって、混合物の流動性を十分に高めることは難しく、成形時の充填性が低下するため、高密度の焼結体を得ることは困難である。
また、焼結体中に脂肪酸金属塩の分解物等が多量に残存する。特に、脂肪酸金属塩は金属原子を含んでいるため、焼結体の各種特性に悪影響を及ぼすことが懸念される。
特開2000−273502号公報
本発明の目的は、金属粉末射出成形における成形時の充填性に優れ、高密度で寸法精度に優れた焼結体を製造可能な金属粉末射出成形用コンパウンドおよび焼結体の製造方法を提供することにある。
上記目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の金属粉末射出成形用コンパウンドは、平均粒径1〜30μmの金属粉末を水溶性の有機アミン類を主成分とする材料で構成された被膜により被覆してなる金属粉末射出成形用金属粉末有機バインダと、を混合してなる金属粉末射出成形用コンパウンドであって、
前記金属粉末は、水アトマイズ法または高速回転水流アトマイズ法により製造された、ステンレス鋼、ダイス鋼、高速度工具鋼、低炭素鋼、Fe−Ni合金、およびFe−Ni−Co合金のうちのいずれかで構成されたFe基合金粉末であり、
前記金属粉末射出成形用金属粉末のタップ密度Aは、前記金属粉末のタップ密度Bの1.05倍以上であり、
前記有機アミン類は、沸点が100℃超のものであって、その分解温度が前記有機バインダの分解温度より低いものであることを特徴とする。
これにより、金属粉末射出成形における成形時の充填性に優れ、高密度で寸法精度に優れた焼結体を製造可能な金属粉末射出成形用コンパウンドが得られる。
また、金属粉末射出成形法では、一般に金属粉末の粒子同士の潤滑性および粒子と有機バインダとの潤滑性が、成形体の寸法精度や成形密度に大きな影響を及ぼす。本発明の金属粉末射出成形用コンパウンドは、被膜の作用により個々の粒子の表面平滑性が高いため、粒子同士の潤滑性および粒子と有機バインダとの潤滑性が高く、粉末全体での流動性に優れている。このため、この金属粉末射出成形用コンパウンドは、成形型のキャビティの隅々まで確実に流れることができ、成形体はキャビティの形状が忠実に転写されたものとなる。また、流動性が高いことによって、混練物は、キャビティ内に疎密なく均一に流れることができる。その結果、均質で個体差の少ない成形体を効率よく作製することができる。
本発明の金属粉末射出成形用コンパウンドでは、前記金属粉末射出成形用金属粉末のタップ密度は、4.5g/cm以上であることが好ましい。
このようなタップ密度の金属粉末射出成形用金属粉末は、たとえ被膜形成前の金属粉末に異形状の粒子が含まれていたとしても、特に十分な流動性を有すると言える。したがって、このようなタップ密度の金属粉末射出成形用金属粉末を成形型に充填した場合、被膜形成前の金属粉末の性状によらず、安定して寸法精度および密度の高い成形体を製造することができ、最終的に、寸法精度が高くかつ高密度の焼結体を製造することができる。
本発明の金属粉末射出成形用コンパウンドでは、前記水溶性の有機アミン類は、アルキルアミン、シクロアルキルアミン、アルカノールアミンおよびこれらの誘導体のうちの少なくとも1種であることが好ましい。
これらのアミン類は、十分な水溶性を有するとともに、十分な耐酸化性を有する被膜を形成することができる。
本発明の金属粉末射出成形用コンパウンドでは、前記有機アミン類の誘導体は、有機アミン類の亜硝酸塩、有機アミン類のカルボン酸塩および有機アミン類のクロム酸塩のいずれかであることが好ましい。
これらのアミン類は、十分な水溶性を有するとともに、十分な耐酸化性を有する被膜を形成することができる。
本発明の金属粉末射出成形用コンパウンドでは、前記被膜の平均厚さは、1〜20nmであることが好ましい。
これにより、被膜は、平滑性や耐酸化性の観点から必要かつ十分な厚さを有するものとなる。
本発明の金属粉末射出成形用コンパウンドでは、前記被膜は、その表面が疎水性を有するものであることが好ましい。
これにより、粉末冶金用金属粉末は、水分の付着や浸透を抑制し、水分による金属粉末の酸化を抑制することができる。その結果、粉末冶金用金属粉末は、特に優れた耐酸化性を有するものとなる。
本発明の焼結体の製造方法は、本発明の金属粉末射出成形用コンパウンドを用いて金属粉末射出成形法により焼結体を得ることを特徴とする。
これにより、高密度で寸法精度に優れた焼結体を製造することができる。
本発明の焼結体の製造方法では、前記金属粉末射出成形用金属粉末が備える前記被膜は、その表面が、前記有機バインダに対する親和性を有するものであることが好ましい。
これにより、粉末冶金用金属粉末と有機バインダとの混合物(混練物)は、前記親和性に基づいて高い流動性を有するものとなる。このため、形状転写性および充填性の高い成形体、ひいては焼結体を製造することができる。
本発明の焼結体の製造方法では、前記被膜は、前記焼成の際の加熱温度以下の温度で分解するものであることが好ましい。
これにより、特に高密度の焼結体が得られる。
以下、本発明の金属粉末射出成形用金属粉末、金属粉末射出成形用コンパウンドおよび焼結体の製造方法について、添付図面に示す好適な実施形態に基づいて説明する。
金属粉末射出成形用金属粉末>
まず、本発明の金属粉末射出成形用金属粉末について説明する。
本発明の金属粉末射出成形用金属粉末は、各粒子の表面が被膜で覆われているため、高い流動性を示すものとなる。
図1は、本発明の金属粉末射出成形用金属粉末の実施形態を示す断面図、図2は、本発明の金属粉末射出成形用金属粉末の製造に用いるミキサーの構成を示す正面図である。なお、以下の説明では、図2中の上方を「上」、下方を「下」、右方を「右」、左方を「左」と言う。
図1に示す粉末冶金用金属粉末(金属粉末射出成形用金属粉末)1は、金属粉末2と、その各粒子の表面を被覆する被膜3とで構成されている。以下、各部について詳述する。
金属粉末2は、いかなる金属材料の粉末であってもよい。
具体的には、金属粉末2に用いられる金属材料として、例えば、Mg、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Pd、Ag、In、Sn、Sn、Ta、W、またはこれらの合金が挙げられる。
このうち、金属粉末2には、ステンレス鋼、ダイス鋼、高速度工具鋼、低炭素鋼、Fe−Ni合金、Fe−Ni−Co合金等の各種Fe基合金の粉末が好ましく用いられる。このようなFe基合金は、機械的特性に優れているため、このFe基合金粉末を用いて得られた焼結体は、機械的特性に優れ、広範な用途に用いることができる。
なお、ステンレス鋼としては、例えば、SUS304、SUS316、SUS317、SUS329、SUS410、SUS430、SUS440、SUS630等が挙げられる。
また、金属粉末2の平均粒径は、1〜30μm、好ましくは3〜20μmとされる。このような比較的粒径の小さい金属粉末2は、比表面積が極めて大きいため、各粒子が凝集し易く、本来流動性は低いが、粉末冶金用金属粉末1では、被膜3の作用によってその流動性を十分に高めることができる。したがって、このような粒径の金属粉末2の表面を被膜3で被覆してなる粉末冶金用金属粉末1によれば、小粒径の粉末を高密度に充填することができるため、高密度の焼結体を容易に製造することができる。また、金属材料の機械的強度は、結晶粒径の1/2乗に反比例して高まることが経験的に知られている。すなわち、粒径が小さい粉末冶金用金属粉末1を用いることによって、焼結体中の結晶粒径が小さくなり、その機械的強度を飛躍的に高めることができる。
なお、前記下限値より平均粒径が小さい金属粉末2は、製造することが困難である。また、金属粉末2の平均粒径が前記上限値を上回ると、金属粉末2の流動性に対して表面の状態が及ぼす影響の割合が小さくなるため、被膜3による流動性向上の作用がほとんど得られなくなるおそれがある。
被膜3は、金属粉末2の各粒子の表面摩擦を緩和することによって、表面の摩擦抵抗を下げることができる。これにより、粉末冶金用金属粉末1は、流動性に優れたものとなる。そして、各粒子同士の潤滑性や、金属粉末2と有機バインダとの潤滑性、金属粉末2と成形型の内壁面との潤滑性を、それぞれ高めることができる。
また、上記のような流動性および潤滑性の向上に加え、被膜3は、金属粉末2が酸素や水分等に直接触れるのを防止することができる。このため、粉末冶金用金属粉末1は、耐酸化性および耐候性に優れたものとなる。すなわち、粉末冶金用金属粉末1は、粉末冶金に供される前において、酸化による変質・劣化を確実に防止することができる。
このような被膜3は、水溶性の有機アミン類を含む材料で構成されている。
ここで、この水溶性の有機アミン類について詳述する。
この有機アミン類は、各分子にアミノ基を含んでいるが、このアミノ基は極性基であるため、特に水溶液の状態下で、金属粉末2の各粒子の表面にこのアミノ基が速やかに吸着することができる。これは、極性基が有する孤立電子対と、金属粉末2の各粒子表面の吸着サイトとの相互作用によって、有機アミノ類と金属粉末2とが効率的に吸着しているものと推察される。その結果、有機アミン類は、各粒子の表面に緻密で強固な被膜3を形成することができる。
このようにして形成された被膜3は、金属粉末2の各粒子の表面摩擦を緩和することによって、表面の摩擦抵抗を下げることができる。これにより、各粒子同士の潤滑性が高くなり、粉末冶金用金属粉末1は、流動性に優れたものとなる。それに加え、被膜3は、金属粉末2が酸素や水分等に直接触れるのを防止するため、粉末冶金用金属粉末1は、耐酸化性および耐候性に優れたものとなる。
このような水溶性の有機アミン類としては、例えば、アルキルアミン類、シクロアルキルアミン類、アルカノールアミン類、アリルアミン類、アリールアミン類、アルコキシアミン類、またはこれらの誘導体等の中から水溶性のものが挙げられるが、この中でも特にアルキルアミン類、シクロアルキルアミン類、アルカノールアミン類およびこれらの誘導体のうちの少なくとも1種が好ましく用いられる。これらのアミン類は、十分な水溶性を有するとともに、十分な耐酸化性を有する被膜3を形成することができる。
アルキルアミン類としては、例えば、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン(ノルマルオクチルアミン)、2−エチルヘキシルアミンのようなモノアルキルアミン類、ジイソブチルアミンのようなジアルキルアミン類、ジイソプロピルエチルアミンのようなトリアルキルアミン類等が挙げられる。
また、シクロアルキルアミン類としては、例えば、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等が挙げられる。
また、アルカノールアミン類としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−アミノエチルエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン等が挙げられる。
さらに、これらの有機アミン類の誘導体としては、特に限定されないが、好ましくは有機アミン類の亜硝酸塩、有機アミン類のカルボン酸塩、有機アミン類のクロム酸塩等を用いることができる。このようなアミン類も、十分な水溶性を有するとともに、十分な耐酸化性を有する被膜3を形成することができる。
また、被膜3の平均厚さは、1〜20nm程度であるのが好ましく、1〜5nm程度であるのがより好ましい。このような被膜3は、潤滑性や耐酸化性の観点から必要かつ十分な厚さを有するものとなる。なお、平均厚さが前記上限値を上回ってもよいが、例えば、本実施形態のように粉末冶金用金属粉末1を用いて金属粉末焼結体を製造するような場合に、多量の被膜3が焼結体中に残存してしまったり、焼結体の密度が低下してしまうのを防止することができる。
また、有機アミン類の極性基が金属粉末2の表面に吸着したとき、有機アミン類の疎水性基がその反対側に露出する。特に前述したようなアルキルアミン類、シクロアルキルアミン類では、この傾向が顕著である。この場合、粉末冶金用金属粉末1(被膜3)の表面は、疎水性を示す。このため、粉末冶金用金属粉末1は、水分の付着や浸透を抑制し、水分による金属粉末2の酸化を抑制することができる。このような理由から、粉末冶金用金属粉末1は、特に優れた耐酸化性を有するものとなる。
このような粉末冶金用金属粉末1は、前述したように高い流動性を示すものとなるが、このような粉末の流動性は、タップ密度によって定量的に評価可能である。
具体的には、粉末冶金用金属粉末1(本発明の金属粉末射出成形用金属粉末)のタップ密度をAとし、被膜3で覆われる前の金属粉末2のタップ密度をBとしたとき、A>Bの関係を満足する。このように粉末冶金用金属粉末1は、たとえ被膜3が付加されたことによって被膜3の分だけ密度が低下したとしても、それを流動性の向上に伴う充填性の向上が、その密度の低下を補って余りある。このため、最終的に高密度で寸法精度に優れた焼結体を製造することができる。
より具体的には、粉末冶金用金属粉末1のタップ密度Aは、金属粉末2のタップ密度Bの1.05倍以上であるのが好ましく、1.1倍以上であるのがより好ましい。タップ密度Aがタップ密度Bを上記のように上回ると、粉末冶金用金属粉末1を用いて形成された成形体は、金属粉末2のみで形成された成形体に比べて、充填性が高く高密度なものとなる。これは、金属粉末2の比重に比べて相対的に低比重の被膜3が付加され、それによって成形体の密度が低くなるおそれがあるが、前述した充填性の向上はこの密度の低下を補って余りあるためである。すなわち、タップ密度Aが前記範囲内であれば、従来に比べて焼結体の密度を飛躍的に高めることができる。
また、金属粉末2がFe基合金粉末である場合、粉末冶金用金属粉末1のタップ密度Aは4.5g/cm以上であるのが好ましく、4.7g/cm以上であるのがより好ましい。このような粉末冶金用金属粉末1は、たとえ金属粉末2に異形状の粒子が含まれていたとしても、特に十分な流動性を有すると言える。したがって、タップ密度Aが前記範囲内にある粉末冶金用金属粉末1を成形型に充填した場合、金属粉末2の性状によらず、安定して寸法精度および密度の高い成形体を製造することができ、最終的に、寸法精度が高くかつ高密度の焼結体を製造することができる。
次に、図1に示す粉末冶金用金属粉末1を製造する方法について説明する。
粉末冶金用金属粉末1の製造方法は、金属粉末2と水溶性の有機アミン類とを接触させることにより、有機アミン類の分子が金属粉末2の表面を覆うようにして被膜3が形成されるのを利用している。
具体的には、この製造方法は、[1]金属粉末2を用意し、この金属粉末2を水に懸濁させ、懸濁水4を得る工程と、[2]懸濁水4に水溶性の有機アミン類を含む添加剤5を添加した後、懸濁水4を乾燥させ、添加剤5の成分で金属粉末2の各粒子を被覆してなる粉末冶金用金属粉末1を得る工程とを有する。以下、各工程について順次説明する。
[1]まず、金属粉末2を用意する。
金属粉末2は、いかなる方法で作製されたものでもよく、その方法としては、例えば、アトマイズ法(例えば、水アトマイズ法、ガスアトマイズ法、高速回転水流アトマイズ法等)、還元法、カルボニル法、粉砕法等が挙げられる。
このうち、金属粉末2は、特に各種アトマイズ法で作製されたものが好ましく、水アトマイズ法または高速回転水流アトマイズ法がより好ましい。アトマイズ法は、金属粉末2の原材料を溶融してなる溶融金属を、ガスジェットまたは水ジェットに衝突させることによって、溶融金属を飛散させるとともに冷却・固化して、金属粉末を作製する方法である。このようなアトマイズ法によれば、微細で粒度分布の狭い(粒径の揃った)金属粉末2を効率よく作製することができる。
また、特に水アトマイズ法または高速回転水流アトマイズ法によれば、上記アトマイズ法の利点に加え、ガスジェットに比べて比重の高い水ジェットを用いるため、溶融金属が激しく分断される。これにより、異形状の粒子を多く含む金属粉末2が得られる。このような金属粉末2は、粒子間の潤滑性が低く、本来流動性が低い。このため、被膜3で被覆されていない金属粉末2のみを粉末冶金に供した場合、成形性(成形型への充填性)が低く、得られた焼結体の寸法精度や密度が低いことが従来は問題となっていた。
これに対し、粉末冶金用金属粉末1では、被膜3の作用によってその流動性を十分に高めることができる。このため、粉末冶金用金属粉末1によれば、水アトマイズ法で作製された金属粉末2を用いても、成形性が高くなり、最終的に高品位の焼結体を得ることができる。
また、前述した異形状の粒子を多く含む金属粉末2が被膜3で被覆されてなる粉末冶金用金属粉末1では、成形した際に加圧されることにより、異形状の粒子同士が絡まり合うように成形される。このため、得られた成形体は、形状が崩れ難くなり、その形状の保持性(保形性)に優れたものとなる。したがって、異形状の粒子を多く含む金属粉末2によれば、寸法精度に優れた焼結体を確実に作製することができる。
ここでは、一例として、水アトマイズ法により金属粉末2を作製する方法について詳述する。
まず、金属粉末2の原材料を溶融し、溶融金属を得る。
次に、溶融金属を水アトマイズ法により粉末化するとともに冷却・固化し、金属粉末2が得られる。得られた金属粉末2は、水アトマイズ法で噴射された冷却水(水ジェット)とともに、懸濁水4の状態で回収される。
[2]次に、得られた懸濁水4に水溶性の有機アミン類を含む添加剤を添加した後、懸濁水4を脱水・乾燥させる。これにより、添加剤5の成分で金属粉末2の各粒子を被覆してなる粉末冶金用金属粉末1が得られる。
添加剤5は、水溶性の有機アミン類を含んでいるので、この有機アミン類は、懸濁水4中に溶解し、全体に速やかに拡散する。これにより、有機アミン類を懸濁水4の全体に行き渡らせることができ、金属粉末2の全体にわたって有機アミン類が均一に接触するため、均一な被膜3を形成することができる。
また、水溶性の有機アミン類は、懸濁水4中に溶解し、分子がバラバラに分散する。各分子にはアミノ基が含まれているが、このアミノ基は極性基であるため、金属粉末2の各粒子の表面に速やかに吸着することができる。これは、極性基が有する孤立電子対と、金属粉末2の各粒子表面の吸着サイトとの相互作用によって、有機アミノ類と金属粉末2とが効率的に吸着しているものと推察される。その結果、有機アミン類は、各粒子の表面に緻密で強固な被膜3を形成することができる。
このようにして形成された被膜3は、前述したように、金属粉末2の各粒子の表面にある凹凸を緩和することによって、表面の平滑性を高めることができる。これにより、各粒子同士の潤滑性が高くなり、粉末冶金用金属粉末1は、流動性に優れたものとなる。それに加え、被膜3は、金属粉末2が酸素や水分等に直接触れるのを防止するため、粉末冶金用金属粉末1は、耐酸化性および耐候性に優れたものとなる。
懸濁水4に対する添加剤5の添加量は、有機アミン類の量に基づいて設定される。具体的には、添加剤5の添加量は、金属粉末2の質量に対して0.005〜10質量%となるような量であるのが好ましく、0.01〜5質量%程度となるような量であるのがより好ましい。これにより、必要かつ十分な厚さの被膜3を形成することができる。その結果、被膜3に十分な潤滑性が付与されるとともに、被膜3によって金属粉末2の耐酸化性および耐候性の向上を図ることができる。
また、脱水工程において、懸濁水4中に添加剤5を添加することによって、被膜3を形成するために必要最小限の量の添加剤5を添加しさえすれば、効率的に被膜3が形成される。すなわち、添加剤5の消費量を抑制することができる。その結果、添加剤5による環境負荷を低減することができる。
また、水溶性の有機アミン類は、沸点が100℃超のものが好ましく用いられる。このような有機アミン類は、後述する脱水・乾燥において気化してしまうことが防止される。その結果、脱水・乾燥において有機アミン類が確実に残存し、被膜3が確実に形成されることとなる。
また、添加剤5には、前述したような有機アミン類以外の成分を含んでいてもよい。かかる成分としては、例えば、界面活性剤、有機溶剤等が挙げられる。
界面活性剤には、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等を用いることができる。
また、添加剤5を添加した後、懸濁水4を攪拌することにより、添加剤5が金属粉末2と均一に混じり合うことができる。その結果、金属粉末2の各粒子のそれぞれに、より均一な被膜3を形成することができる。
懸濁水4の攪拌は、バッチ式、連続式等の各種ミキサーにより行うことができ、さらにバッチ式ミキサーにも強制式、重力式等の方式があるが、好ましくは図2に示すようなバッチ式の強制式ミキサー200により行う。
図2に示すミキサー200は、台座201と、台座201上に鉛直方向に沿って設けられた支柱202と、支柱202の上端から支柱202の左右に伸びる支持部203とを有している。
また、ミキサー200は、容器204と、容器204の蓋部205と、容器204の内部で回転し、容器204内の内容物を撹拌する2つの撹拌翼206、206とを有している。そして、蓋部205は、支持部203の左端に固定されている。一方、蓋部205と容器204とは分離可能になっており、容器204は、支柱202に沿って上下に移動可能になっている。これにより、容器204を上下に移動することにより、容器204に対して蓋部205を開閉することができる。
また、支持部203の右側にはモータ207が設けられている。さらに、蓋部205を貫通するように回転軸(図示せず)が挿通されている。この回転軸の下部は、各撹拌翼206、206に固定されており、一方、回転軸の上部は、図示しない動力伝達機構を介してモータ207の動力を受けるようになっている。このような機構により、モータ207によって各撹拌翼206、206を回転させることができる。このようにして各撹拌翼206、206が回転することにより、容器204内の内容物を撹拌することができる。
また、容器204の外側面には、スチーム(水蒸気)が通過する流路208が隣接している。この流路208にスチームを流すことにより、容器204とスチームとの間の熱交換を利用して、懸濁水4を乾燥させることができる。
このようなミキサー200の容器204内に懸濁水4を投入する。続いて、添加剤5も容器204内に添加する。
懸濁水4にこのような添加剤5が添加されると、水溶性の有機アミン類の分子が金属粉末2の各粒子の表面に吸着し、これにより各粒子の表面に被膜3が形成される。
その後、懸濁水4を脱水・乾燥させることによって、粉末冶金用金属粉末1が得られる。
また、ミキサー200によって懸濁水4を攪拌することにより、金属粉末2と添加剤5のように、混合割合に大きな差がある原材料を均一に混合するのに適しているため、被膜3のさらなる均一化を図ることができる。
なお、懸濁水4における水の含有率は、3〜30質量%程度であるのが好ましく、5〜20質量%程度であるのがより好ましい。水分量を前記範囲内にすることにより、有機アミン類が溶解した水を、金属粉末2の全体に確実に回すことができる。これにより、攪拌に伴う発熱量を十分に抑制することができ、熱による金属粉末2や添加剤5の変質・劣化を防止することができる。
なお、含有率が前記下限値を下回った場合、水が金属粉末2の全体に行き渡らないばかりか、懸濁水4を攪拌した際の摩擦による発熱量が著しく増大するおそれがある。一方、含有率が前記上限値を上回った場合、除去すべき水分量が膨大になり、脱水・乾燥に長時間を要するおそれがある。
以上のようにして粉末冶金用金属粉末1が得られる。
<焼結体の製造方法>
次に、上述したような粉末冶金用金属粉末1を用いて、焼結体を製造する方法(本発明の焼結体の製造方法)について説明する。
本発明の焼結体の製造方法は、図3に示すように、[A]粉末冶金用金属粉末1を有機バインダ6と混合し、この混合物を成形して成形体7を得る成形工程と、[B]成形体7を脱脂し、脱脂体8を得る脱脂工程と、[C]脱脂体8を焼成し、焼結体9を得る焼成工程とを有する。以下、各工程について順次説明する。
[A]成形工程
まず、粉末冶金用金属粉末1と有機バインダ6とを混合する。
次いで、得られた混合物を、所定の形状に成形し、成形体7を得る。
成形体の製造方法(成形方法)は、特に限定されず、例えば、金属粉末射出成形(MIM:Metal Injection Molding)法、圧縮成形(圧粉成形)法、押出成形法等が挙げられる。
このうちMIM法は、比較的小型のものや、複雑で微細な形状の成形体をニアネット(最終形状に近い形状)で製造することができる。
以下、成形方法の一例として、MIM法による成形体7の製造について説明する。
まず、粉末冶金用金属粉末1と有機バインダ6とを混練し、混練物(またはこの混練物のペレット)を得る。次いで、この混練物を射出成形機により成形型内に射出し、所望の形状の成形体7を製造する。
このようにして得られた成形体7は、有機バインダ6中に粉末冶金用金属粉末1がほぼ均一に分散した状態となっている。
ここで、粉末冶金用金属粉末1は、流動性に優れているため、混練物も優れた流動性を有するものとなる。特に、MIM法では、一般に金属粉末の粒子同士の潤滑性および粒子と有機バインダとの潤滑性が、成形体の寸法精度や成形密度に大きな影響を及ぼす。前述したように、粉末冶金用金属粉末1は、被膜3の作用により個々の粒子の表面平滑性が高いため、粒子同士の潤滑性および粒子と有機バインダとの潤滑性が高く、粉末全体での流動性に優れている。このため、粉末冶金用金属粉末1を含む混練物は、成形型のキャビティの隅々まで確実に流れることができ、成形体7はキャビティの形状が忠実に転写されたものとなる。また、流動性が高いことによって、混練物は、キャビティ内に疎密なく均一に流れることができる。その結果、均質で個体差の少ない成形体7を効率よく作製することができる。
なお、製造される成形体7の形状寸法は、以後の脱脂および焼成による成形体7の収縮分を見込んで決定される。
射出成形の条件としては、用いる粉末冶金用金属粉末1の金属組成や粒径、有機バインダ6の組成およびこれらの配合量等の諸条件により異なるが、その一例を挙げれば、材料温度は、好ましくは80〜200℃程度、射出圧力は、好ましくは2〜30MPa(20〜300kgf/cm)程度とされる。
また、前述したように、有機アミン類の極性基が金属粉末2の表面に吸着したとき、有機アミン類の疎水性基はその反対側に露出するため、被膜3の表面には疎水性が発現する。したがって、粉末冶金用金属粉末1の表面は親油性を示し、有機バインダ6に対して高い親和性(濡れ性)を有するものとなる。その結果、粉末冶金用金属粉末1と有機バインダ6との混合物(混練物)は、前述した親和性に基づいて高い流動性を有するものとなるため、形状転写性および充填性の高い成形体7を得ることができる。
[B]脱脂工程
前記成形工程で得られた成形体7に対し、脱脂処理(脱バインダ処理)を施す。これにより、脱脂体8を得る。
脱脂処理は、成形体7を加熱することにより、熱分解によって成形体7中の有機バインダ6を除去する。
脱脂処理における加熱温度は、有機バインダ6の組成等に応じて若干異なるが、100〜750℃程度であるのが好ましく、150〜600℃程度であるのがより好ましい。成形体7中の有機バインダ6を効率よく除去することができる。
また、成形体7中の粉末冶金用金属粉末1の被膜3は、この脱脂工程において分解(または揮発)・除去されるものが好ましい。被膜3がこのような分解性(または揮発性)を有するように、その組成等を適宜設定することにより、最終的に得られる焼結体9中に被膜3の成分が残存するのを確実に防止することができる。
また、脱脂処理における加熱時間は、成形体7の体積や加熱温度に応じて異なるものの、加熱温度が前記範囲内であった場合、0.1〜20時間程度とするのが好ましく、0.5〜15時間程度とするのがより好ましい。これにより、成形体7の脱脂を必要かつ十分に行うことができる。
また、脱脂処理における雰囲気としては、例えば、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気、水素ガス等の還元性ガス雰囲気、またはこれらを減圧した減圧(真空)雰囲気等が挙げられる。
なお、本脱脂工程において、成形体7中の有機バインダ6の全部を除去するのではなく、一部を残すようにしてもよい。
また、被膜3の主成分である水溶性の有機アミン類には、有機バインダ6よりも分解温度(または揮発温度)が低いものを用いるのが好ましい。これにより、脱脂工程において、被膜3が有機バインダ6よりも先に除去されることになる。その結果、被膜3が存在していた部分に空孔が形成される。この空孔は、必然的に成形体7の外部と連通しているため、昇温に伴って、今度は有機バインダ6の分解物がこの空孔を介して成形体7の外部に排出される。このようにして、有機バインダ6の突発的な揮発に伴い、成形体7に割れ等が生じるのを確実に防止しつつ、成形体7の脱脂をより効率よく行うことができる。
なお、被膜3は金属粉末2の表面を覆うようにして、成形体7の全体に均一に分散しているので、前述した空孔も成形体7の全体にわたって均一に形成されることとなる。したがって、成形体7は、均一に脱脂されることになり、最終的に均質な焼結体9を得ることができる。
また、被膜3が先に除去される場合、本脱脂工程を、脱脂条件の異なる複数の過程(ステップ)に分けて行うようにしてもよい。すなわち、被膜3が除去され、有機バインダ6は除去されないような加熱温度で一定時間保持した後、今度は、有機バインダ6が除去されるような加熱温度で一定時間保持するようにすれば、前述したような空孔を介した有機バインダ6の除去が促進されることとなる。その結果、効率よく確実な脱脂処理が可能になる。
また、有機バインダ6は、前述した被膜3の主成分である水溶性の有機アミン類を含んでいるのが好ましい。これにより、被膜3の分解とともに、有機バインダ6の一部にも分解が生じる。その結果、本脱脂工程において、有機バインダ6の脱脂をさらに促進することができる。
[C]焼成工程
前記脱脂工程で得られた脱脂体8を、焼成炉で焼成する。この焼結により、脱脂体8中の金属粉末2は、各粒子同士の界面で拡散が生じ、結晶組織となる。その結果、焼結体9が得られる。
焼成温度は、金属粉末2の組成や粒径等に応じて異なるものの、例えば、金属粉末2がFe基合金粉末である場合、1000〜1400℃程度であるのが好ましく、1100〜1350℃程度であるのがより好ましい。このような温度で脱脂体8を焼成することにより、結晶組織が必要以上に肥大化するのを防止することができる。その結果、微小な結晶組織を含み、機械的特性および化学的特性に優れた焼結体9を得ることができる。
また、焼成時間は、焼成温度を前記範囲内とする場合、0.2〜7時間程度であるのが好ましく、1〜4時間程度であるのがより好ましい。焼成時間を前記範囲内とすることにより、脱脂体8の焼結をより最適化して、結晶組織の肥大化を確実に防止しつつ焼結させることができる。
焼成の際の雰囲気は、特に限定されないが、水素、のような還元性雰囲気、窒素、ヘリウム、アルゴンのような不活性雰囲気、これら各雰囲気を減圧した減圧雰囲気等が挙げられる。
以上のようにして、焼結体9を得ることができる。
このようにして得られた焼結体9は、粉末冶金用金属粉末1の流動性が高いことから、成形体7の形状転写性および充填性が高くなり、その結果、寸法精度に優れた高密度のものとなる。
また、本発明によれば、たとえ金属粉末2が平均粒径1〜30μmと微細(小粒径)であって、かつ、異形状の粒子が多く含まれるような、本来流動性が特に低いようなものであっても、被膜3の作用により、流動性の高い粉末冶金用金属粉末1が得られる。そして、この粉末冶金用金属粉末1を用いることにより、高密度でかつ高強度の焼結体9が得られる。
さらに、粉末冶金用金属粉末1の各粒子が備える被膜3は、金属粉末2を保護し、金属粉末2の酸化を防止することができる。このため、粉末冶金用金属粉末1は、耐酸化性および耐候性に優れたものとなる。そして、この粉末冶金用金属粉末1を用いて製造された焼結体9は、酸素含有率が低く、耐酸化性および耐候性等の化学的特性に加え、電磁気的特性や機械的特性にも優れた高品位のものが得られる。
以上、本発明の金属粉末射出成形用金属粉末および焼結体の製造方法について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、焼結体の製造方法では、必要に応じて、任意の工程を追加することもできる。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.粉末冶金用金属粉末および焼結体の製造
(実施例1)
[1]まず、原材料としてFe基合金(AISI 4340)を用い、水アトマイズ法により金属粉末を得た。
なお、AISI 4340の組成(鋼種)は、C:0.38〜0.43質量%、Si:0.15〜0.30質量%、Mn:0.60〜0.80質量%、P:0.035質量%以下、S:0.040質量%以下、Ni:1.65〜2.00質量%、Cr:0.70〜0.90質量%、Mo:0.20〜0.30質量%、Fe:残部である。
得られた金属粉末は、水アトマイズ法の際に使用した冷却水とともに、懸濁水の状態で回収される。
また、得られた金属粉末の平均粒径をレーザー回折方式の粒度分布測定装置(マイクロトラック、日機装株式会社製、HRA9320−X100)により行ったところ、平均粒径は10μmであった。
[2]次に、懸濁水を図2に示すミキサーに投入した。なお、ミキサーに投入した懸濁水中の水分含有率は、15質量%とした。
次いで、ミキサー中に、さらに添加剤としてアルキルアミン誘導体を添加した。なお、アルキルアミン誘導体の添加量は、金属粉末の質量に対して0.045質量%になる量とした。
そして、懸濁水を攪拌しつつ乾燥させた。これにより、金属粉末の各粒子をアルキルアミン誘導体の被膜で被覆してなる粉末冶金用金属粉末を得た。
また、得られた粉末冶金用金属粉末について定性分析を行ったところ、アルキルアミン誘導体の存在が確認できた。このことから、前述したアルキルアミン誘導体は、乾燥によって揮発することなく、被膜として金属粉末の各粒子を被覆していると推察される。
なお、金属粉末の比表面積および添加剤の添加量から、粉末冶金用金属粉末の被膜の平均厚さを算出したところ、被膜の平均厚さは3nmであった。
[3]次に、粉末冶金用金属粉末と、ポリプロピレンとワックスの混合物(有機バインダ)とを、質量比で9:1となるように秤量して混合原料を得た。
次に、混合原料を混練機で混練し、コンパウンドを得た。
[4]次に、このコンパウンドを、以下に示す成形条件で成形し、成形体を作製した。
<成形条件>
・成形方法:射出成形法
・成形形状:20mm角の立方体形状
・材料温度:150℃
・射出圧力:11MPa(110kgf/cm
[5]次に、得られた成形体に対して、以下に示す脱脂条件で熱処理(脱脂処理)を施し、脱脂体を得た。
<脱脂条件>
・脱脂温度 :520℃
・脱脂時間 :5時間
・脱脂雰囲気:窒素ガス雰囲気
[6]次に、得られた脱脂体を、以下に示す焼成条件で焼成した。このようにして焼結体を10個作製した。
<焼成条件>
・焼成温度 :1200℃
・焼成時間 :2.5時間
・焼成雰囲気:減圧Ar雰囲気
・雰囲気圧力:1.3kPa(10Torr)
(実施例2)
添加剤をシクロアルキルアミン誘導体に変更した以外は、前記実施例1と同様にして粉末冶金用金属粉末および焼結体(10個)を得た。
(実施例3)
添加剤をアルカノールアミン誘導体に変更した以外は、前記実施例1と同様にして粉末冶金用金属粉末および焼結体(10個)を得た。
(実施例4)
原材料を、Fe基合金(2%Ni−Fe)に変更した以外は、前記実施例1と同様にして、水アトマイズ粉末および焼結体(10個)を得た。
なお、2%Ni−Feの組成は、C:0.4〜0.6質量%、Si:0.35質量%以下、Mn:0.8質量%以下、P:0.03質量%以下、S:0.045質量%以下、Ni:1.5〜2.5質量%、Cr:0.2質量%以下、Fe:残部である。
また、得られた金属粉末の平均粒径は6μmであった。
(実施例5)
原材料を、Fe基合金(SUS−316L)に変更し、水アトマイズ法の条件を変更した以外は、前記実施例1と同様にして、水アトマイズ粉末および焼結体(10個)を得た。
なお、得られた金属粉末の平均粒径は4μmであった。
(実施例6)
原材料を、Fe基合金(SUS−316L)に変更し、水アトマイズ法の条件を変更した以外は、前記実施例1と同様にして、水アトマイズ粉末および焼結体(10個)を得た。
なお、得られた金属粉末の平均粒径は8μmであった。
(実施例7)
原材料を、9.5Cr−3Siに変更し、水アトマイズ法の条件を変更した以外は、前記実施例1と同様にして、水アトマイズ粉末および焼結体(10個)を得た。
なお、9.5Cr−3Siの組成は、C:0.015質量%以下、Si:2.90〜3.30質量%、Mn:0.20質量%以下、P:0.040質量%以下、S:0.020質量%以下、Ni:2.00質量%以下、Cr:9.10〜9.70質量%、Mo:0.20質量%以下、Fe:残部である。
また、得られた金属粉末の平均粒径23μmであった。
(比較例1)
添加剤の添加を省略した以外は、前記実施例1と同様にして金属粉末および焼結体(10個)を得た。
(比較例2)
添加剤の添加を省略した以外は、前記実施例4と同様にして金属粉末および焼結体(10個)を得た。
(比較例3)
添加剤の添加を省略した以外は、前記実施例5と同様にして金属粉末および焼結体(10個)を得た。
(比較例4)
添加剤の添加を省略した以外は、前記実施例6と同様にして金属粉末および焼結体(10個)を得た。
(比較例5)
添加剤の添加を省略した以外は、前記実施例7と同様にして金属粉末および焼結体(10個)を得た。
(比較例6)
原材料を、Ni−20Cr−LCに変更し、水アトマイズ法の条件を変更するとともに、添加剤をアルカノールアミン誘導体に変更した以外は、前記実施例1と同様にして、水アトマイズ粉末および焼結体(10個)を得た。
なお、Ni−20Cr−LCの組成は、C:0.03質量%以下、Si:0.50〜1.20質量%、Mn:0.50質量%以下、P:0.035質量%以下、S:0.030質量%以下、Fe:0.50質量%以下、Cr:19.00〜21.00質量%、Ni:残部である。
また、得られた金属粉末の平均粒径33μmであった。
(比較例7)
添加剤の添加を省略した以外は、前記比較例6と同様にして、水アトマイズ粉末および焼結体(10個)を得た。
(比較例8)
懸濁水への添加剤の添加を省略するとともに、コンパウンド中に非水溶性のステアリン酸亜鉛(脂肪酸金属塩)を0.01質量%の割合で添加した以外は、前記実施例1と同様にして金属粉末および焼結体(10個)を得た。
(比較例9)
懸濁水への添加剤の添加を省略するとともに、コンパウンド中に非水溶性のステアリン酸亜鉛(脂肪酸金属塩)を0.01質量%の割合で添加した以外は、前記実施例4と同様にして金属粉末および焼結体(10個)を得た。
(比較例10)
懸濁水への添加剤の添加を省略するとともに、コンパウンド中に非水溶性のステアリン酸アミドを0.01質量%の割合で添加した以外は、前記実施例1と同様にして金属粉末および焼結体(10個)を得た。
(比較例11)
懸濁水への添加剤の添加を省略するとともに、コンパウンド中に非水溶性のステアリン酸アミドを0.01質量%の割合で添加した以外は、前記実施例4と同様にして金属粉末および焼結体(10個)を得た。
2.評価
2.1 粉末流動性の評価
各実施例および各比較例で得られた金属粉末の流動性を評価するため、JIS Z 2512に規定の方法に基づき、粉末冶金用金属粉末のタップ密度を測定した。
2.2 焼結体の寸法精度の評価
各実施例および各比較例で得られた焼結体について、寸法精度を評価した。なお、寸法精度の評価にあたっては、金属粉末射出成形法を用いた粉末冶金分野における一般公差(±0.5%)と以下の評価基準に基づいて評価した。
<寸法精度の評価基準>
◎:全ての焼結体が一般公差内である
○:一般公差から外れた焼結体が1個である
△:一般公差から外れた焼結体が2〜4個である
×:一般公差から外れた焼結体が5個以上である
2.3 焼結体の相対密度の評価
各実施例および各比較例で得られた焼結体について、アルキメデス法により密度を測定した。そして、各原材料の真密度から相対密度を算出した。
2.4 焼結体中の酸素含有率の測定
各実施例および各比較例で得られた焼結体の酸素含有率を、酸素窒素同時分析装置(LECO社製、TC−300型)により測定した。
以上、2.1〜2.4の測定結果を表1に示す。
Figure 0005320843
表1から明らかなように、各実施例で得られた金属粉末(粉末冶金用金属粉末)は、各比較例で得られた金属粉末に比べてタップ密度が高かった。このため、各実施例で得られた粉末冶金用金属粉末は、流動性が高いことが明らかとなった。
また、各実施例では、いずれも各比較例に比べて寸法精度および相対密度が高く、酸素含有率が低い高品位な焼結体が得られた。
なお、比較例6は、比較例7と比較したとき、タップ密度の十分な向上が認められなかった。
また、各比較例8〜11で得られた焼結体では、非水溶性の添加剤を用いたことによって、相対密度の若干の向上が認められたが、実施例1〜4には及ばなかった。また、各比較例8〜11で得られた焼結体は、酸素含有率が高かった。これは、金属粉末の製造後、コンパウンドの製造までの間に、金属粉末が酸化してしまったためと考えられる。
本発明の金属粉末射出成形用金属粉末の実施形態を示す断面図である。 本発明の金属粉末射出成形用金属粉末の製造に用いるミキサーの構成を示す正面図である。 本発明の焼結体の製造方法の実施形態を説明するための図である。
符号の説明
1……粉末冶金用金属粉末 2……金属粉末 3……被膜 4……懸濁水 5……添加剤 6……有機バインダ 7……成形体 8……脱脂体 9……焼結体 200……ミキサー 201……台座 202……支柱 203……支持部 204……容器 205……蓋部 206……撹拌翼 207……モータ 208……流路

Claims (9)

  1. 平均粒径1〜30μmの金属粉末を水溶性の有機アミン類を主成分とする材料で構成された被膜により被覆してなる金属粉末射出成形用金属粉末有機バインダと、を混合してなる金属粉末射出成形用コンパウンドであって、
    前記金属粉末は、水アトマイズ法または高速回転水流アトマイズ法により製造された、ステンレス鋼、ダイス鋼、高速度工具鋼、低炭素鋼、Fe−Ni合金、およびFe−Ni−Co合金のうちのいずれかで構成されたFe基合金粉末であり、
    前記金属粉末射出成形用金属粉末のタップ密度Aは、前記金属粉末のタップ密度Bの1.05倍以上であり、
    前記有機アミン類は、沸点が100℃超のものであって、その分解温度が前記有機バインダの分解温度より低いものであることを特徴とする金属粉末射出成形用コンパウンド
  2. 前記金属粉末射出成形用金属粉末のタップ密度は、4.5g/cm以上である請求項1に記載の金属粉末射出成形用コンパウンド
  3. 前記水溶性の有機アミン類は、アルキルアミン、シクロアルキルアミン、アルカノールアミンおよびこれらの誘導体のうちの少なくとも1種である請求項1または2に記載の金属粉末射出成形用コンパウンド
  4. 前記有機アミン類の誘導体は、有機アミン類の亜硝酸塩、有機アミン類のカルボン酸塩および有機アミン類のクロム酸塩のいずれかである請求項3に記載の金属粉末射出成形用コンパウンド
  5. 前記被膜の平均厚さは、1〜20nmである請求項1ないし4のいずれかに記載の金属粉末射出成形用コンパウンド
  6. 前記被膜は、その表面が疎水性を有するものである請求項1ないし5のいずれかに記載の金属粉末射出成形用コンパウンド
  7. 請求項1ないし6のいずれかに記載の金属粉末射出成形用コンパウンドを用いて金属粉末射出成形法により焼結体を得ることを特徴とする焼結体の製造方法。
  8. 前記金属粉末射出成形用金属粉末が備える前記被膜は、その表面が、前記有機バインダに対する親和性を有するものである請求項に記載の焼結体の製造方法。
  9. 前記被膜は、前記焼成の際の加熱温度以下の温度で分解するものである請求項7または8に記載の焼結体の製造方法。
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