JP5741071B2 - 造粒粉末および造粒粉末の製造方法 - Google Patents

造粒粉末および造粒粉末の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、造粒粉末および造粒粉末の製造方法に関するものである。
金属粉末を成形する方法としては、金属粉末と有機バインダーとの混合物を、所定の成形型に充填し、圧縮することにより、所定の形状の成形体を得る圧縮成形法が知られている。得られた成形体は、有機バインダーを除去する脱脂処理、金属粉末を焼結する焼成処理を経て、金属焼結体となる。このような技術は粉末冶金技術の一例であり、成形型の形状次第で複雑な形状の金属焼結体を大量に製造可能であることから、近年、多くの産業分野で普及している。
圧縮成形法では、まず、成形型内に金属粉末をできるだけ隙間なく充填する必要がある。成形型内に隙間があると、この隙間が空孔として成形体内に残存し、最終的に金属焼結体の緻密性を損なうからである。
ところが、金属粉末として、平均粒径が10μm以下の微細な粉末が用いられる場合がある。このような微細な粉末は、流動性が低いため、成形型内への充填性に乏しい。このため、金属粉末と有機バインダーとの混合物を、より大きな粒子に造粒することで、流動性の改善を図ることが行われる。混合物を造粒すると、金属粉末中の複数の粒子が有機バインダーによって結着し、より大きな造粒粉末となる。造粒粉末は、金属粉末に比べて流動性が高いため、成形型内への充填性に優れ、緻密な成形体および焼結体の製造を可能にする。
例えば、特許文献1には、鉄基合金の金属焼結体を製造する際に、球形整粒機により金属粉末を造粒した後、得られた造粒粉末を金型のダイキャビティーに充填し、圧縮成形することが開示されている。
また、造粒粉末の形状を球形化して流動性を高めることにより、ダイキャビティーに充填される原料粉末の量がばらつかず、成形体の重量が安定化することが開示されている。
しかしながら、造粒粉末を球形化することで流動性を高めることはできるが、成形型に狭小部分があったり、成形型の一部分が深くなっている場合には、造粒粉末の充填性に問題が生じ、要求している形状の製品が得られないおそれがある。
特開2008−189993号公報
本発明の目的は、流動性が高く、成形時の充填性が高い造粒粉末、およびかかる造粒粉末を効率よく製造可能な造粒粉末の製造方法を提供することにある。
上記目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の造粒粉末は、複数個の金属粒子を有機バインダーで結着してなる二次粒子と、
前記二次粒子の表面を覆うように設けられた外側被覆層と
を有し、
前記有機バインダーは、ポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドンを含んでおり、
前記外側被覆層は、有機アミン類またはその誘導体、および、アクリル系樹脂のいずれかで構成されたものであることを特徴とする。
これにより、流動性が高く、成形時の充填性が高い造粒粉末が得られる。かかる造粒粉末を用いることにより、高密度でかつ寸法精度の高い焼結体が得られる。
また、これにより、吸湿性の低い外側被覆層が形成されるため、造粒粉末の流動性を特に高めることができる。また、二次粒子と外気との接触機会を減少させることができるので、金属粒子を酸素や水分等から保護し、最終的に高密度で酸素含有率が低く、かつ耐候性に優れた焼結体を得ることができる。
また、これらのバインダー成分は、結着性が高いため、比較的少量であっても効率よく造粒粉末を形成することができる。また、熱分解性も高いことから、脱脂および焼成の際に、短時間で確実に分解、除去することが可能になる。
本発明の造粒粉末では、前記外側被覆層の存在比は、前記金属粒子100重量部に対して0.02重量部以上0.8重量部以下であることが好ましい。
これにより、過不足ない厚さの外側被覆層が形成され、造粒粉末の流動性を十分に高めることができる
本発明の造粒粉末では、前記外側被覆層の構成材料は、有機アミン類またはその誘導体であり、
前記外側被覆層は、前記二次粒子との界面の少なくとも一部において、前記金属粒子の表面と接していることが好ましい。
これにより、金属粒子の表面に有機アミン類中のアミノ基が自発的にかつ強固に吸着する。その結果、外側被覆層の剥離確率を低下させることができ、造粒粉末の流動性および耐候性を安定的に高めることができる。
本発明の造粒粉末では、前記有機アミン類またはその誘導体は、アルキルアミン、シクロアルキルアミン、アルカノールアミンおよびこれらの誘導体のうちの少なくとも1種であることが好ましい。
これらの有機アミン類は、相互作用性が低いので、造粒粉末のさらなる流動性向上に寄与する。
本発明の造粒粉末では、前記有機アミン類の誘導体は、前記有機アミン類の亜硝酸塩、前記有機アミン類のカルボン酸塩、前記有機アミン類のクロム酸塩および前記有機アミン類の酢酸塩のうちのいずれかであることが好ましい。
これらの有機アミン類の誘導体は、相互作用性が低いので、造粒粉末のさらなる流動性向上に寄与する。
本発明の造粒粉末では、前記金属粒子は、その表面が、前記外側被覆層と同様の構成の内側被覆層で覆われてなるものであることが好ましい。
これにより、2層の被覆層が形成されることになり、金属粒子を構成する金属材料が外気と接触する機会をさらに減少させることができる。また、造粒粉末を成形型に充填して成形する際、造粒粉末の各粒子には圧縮力が付与されて崩壊するが、この際の金属粒子同士の潤滑性を高めることができる。その結果、成形体の保形性が高くなり、最終的に寸法精度の高い焼結体が得られる。
本発明の造粒粉末では、前記金属粒子は、Fe基合金粉末であり、
当該造粒粉末における、JIS Z 2502に規定の金属粉の流動性試験方法に準じて測定された流動度は、33[sec/50g]以下であることが好ましい。
これにより、仮に成形型に狭小部分および一部に深い部分があったとしても、この狭小部分や深い部分に隙間なく流動し、成形型を確実に充填可能な造粒粉末が得られる。その結果、均質で高密度の焼結体が得られる。
本発明の造粒粉末の製造方法は、複数個の金属粒子を有機バインダーで結着してなる二次粒子と、前記二次粒子の表面を覆うように設けられた外側被覆層とを有する造粒粉末を製造する方法であって、
前記有機バインダーの溶液としてポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドンを含む溶液を供給しつつ、複数個の金属粒子に転動および流動の少なくとも一方を施すことにより、前記二次粒子を得る第1の工程と、
前記二次粒子に対し、有機アミン類またはその誘導体、および、アクリル系樹脂のいずれかを含む溶液を供給し、前記外側被覆層を形成する第2の工程と
を有することを特徴とする。
これにより、流動性が高く、成形時の充填性が高い造粒粉末を効率よく製造することができる。
本発明の造粒粉末の製造方法では、前記有機アミン類またはその誘導体、および、アクリル系樹脂のいずれかを含む溶液は、噴霧により供給されることが好ましい。
これにより、二次粒子にはこの溶液が徐々に供給されることになるので、一度に大量の溶液を供給する場合に比べて、二次粒子の崩壊を抑制することができる。これに加え、低水溶性材料の溶液を無駄なく供給可能であるため、供給量の制御が容易である。
本発明の造粒粉末中の1粒子の実施形態を示す断面図である 本発明の造粒粉末の他の構成例を示す断面図である。 本発明の造粒粉末の製造方法において用いられる転動造粒装置の構成を示す模式図である。 有機バインダーとしてポリビニルアルコールを用いた場合の造粒粉末について、横軸を低水溶性材料の添加量とし、縦軸を造粒粉末の流動度としたときの各実施例1B〜8Bおよび比較例1Bで得られた造粒粉末の分布を示すグラフである。 有機バインダーとしてポリビニルピロリドンを用いた場合の造粒粉末について、横軸を低水溶性材料の添加量とし、縦軸を造粒粉末の流動度としたときの各実施例9B〜16Bおよび比較例2Bで得られた造粒粉末の分布を示すグラフである。
以下、本発明の造粒粉末および造粒粉末の製造方法を、添付図面に基づく好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明の造粒粉末は、金属粉末と有機バインダーとを含むものであり、金属粉末中の複数個の金属粒子を有機バインダーで結着し造粒してなる二次粒子を有するものである。
そして、本発明の造粒粉末は、前記二次粒子の表面を覆うように設けられた外側被覆層を有している。この外側被覆層は、有機バインダーよりも水溶性の低い材料で構成されたものである。
このような造粒粉末は、外側被覆層を設けたことによって、流動性が高く、成形時の充填性が高いものとなる。このため、かかる造粒粉末を用いることにより、成形性(成形型の転写性)に優れ、かつ高密度の焼結体が得られる。
以下、本発明の造粒粉末について詳述する。
(金属粉末)
本発明の造粒粉末に含まれる金属粉末としては、特に限定されないが、例えば、Mg、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Pd、Ag、In、Sn、Ta、W、またはこれらの合金が挙げられる。
このうち、金属粉末には、ステンレス鋼、ダイス鋼、高速度工具鋼、低炭素鋼、Fe−Ni合金、Fe−Ni−Co合金等の各種Fe基合金の粉末が好ましく用いられる。このようなFe基合金は、機械的特性に優れているため、このFe基合金粉末を用いて得られた焼結体は、機械的特性に優れ、広範な用途に用いることができる。
なお、ステンレス鋼としては、例えば、SUS304、SUS316、SUS317、SUS329、SUS410、SUS430、SUS440、SUS630等が挙げられる。
また、金属粉末の平均粒径は、好ましくは1μm以上30μm以下、より好ましくは3μm以上20μm以下とされ、さらに好ましくは3μm以上10μm以下とされる。このような粒径の金属粉末は、成形時の圧縮性の低下を避けつつ、最終的に十分に緻密な焼結体を製造可能なものとなる。
なお、平均粒径が前記下限値未満である場合、造粒前において金属粉末が凝集し易くなり、造粒粉末の粒子間において金属粉末の含有量にバラツキが生じたり、成形時の圧縮性が著しく低下するおそれがある。一方、平均粒径が前記上限値を超える場合、成形した際に、造粒粉末の粒子間の隙間が大きくなり過ぎて、最終的に得られる焼結体の緻密化が不十分になるおそれがある。
また、本発明に用いられる金属粉末のタップ密度は、例えばFe基合金粉末の場合、3.5g/cm以上であるのが好ましく、3.8g/cm以上であるのがより好ましい。このようにタップ密度が大きい金属粉末であれば、造粒粉末を得る際に、粒子間の充填性が特に高くなる。このため、最終的に、特に緻密な焼結体を得ることができる。
また、本発明に用いられる金属粉末の比表面積は、特に限定されないが、0.15m/g以上であるのが好ましく、0.2m/g以上であるのがより好ましく、0.3m/g以上であるのがさらに好ましい。このように比表面積の広い金属粉末であれば、表面の活性(表面エネルギー)が高くなるため、より少ないエネルギーの付与でも容易に焼結することができる。したがって、成形体を焼結する際に、より短時間で焼結することができる。その結果、低温での焼成であっても焼結体の緻密化を図ることができる。
このような金属粉末は、例えば、いかなる方法で製造されたものでもよいが、例えば、アトマイズ法(水アトマイズ法、ガスアトマイズ法、高速回転水流アトマイズ法等)、還元法、カルボニル法、粉砕法等の方法により製造されたものを用いることができる。
このうち、金属粉末には、アトマイズ法により製造されたものを用いるのが好ましい。アトマイズ法によれば、前記したような極めて微小な平均粒径の金属粉末を効率よく製造することができる。また、粒径のバラツキが少なく、粒径の揃った金属粉末を得ることができる。したがって、このような金属粉末を用いることにより、焼結体における気孔の生成を確実に防止することができ、密度の向上を図ることができる。
また、アトマイズ法で製造された金属粉末は、比較的真球に近い球形状をなしているため、バインダーに対する分散性や流動性に優れたものとなる。このため、造粒粉末を成形型に充填して成形する際に、その充填性および均一性を高めることができ、最終的により緻密な焼結体を得ることができる。
(有機バインダー)
本発明の造粒粉末に含まれる有機バインダーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンまたはこれらの共重合体等の各種樹脂や、各種ワックス、パラフィン、高級脂肪酸(例:ステアリン酸)、高級アルコール、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド等の各種有機バインダーが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を混合して用いることができる。
このうち、有機バインダーとしては、ポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドンを含むものが好ましい。これらのバインダー成分は、結着性が高いため、比較的少量であっても効率よく造粒粉末を形成することができる。また、熱分解性も高いことから、脱脂および焼成の際に、短時間で確実に分解、除去することが可能になる。
また、外側被覆層6が疎水性(油溶性)を示すという観点から、親水性(水溶性)の高いポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンを有機バインダーとして用いることにより、外側被覆層6を形成する際に用いる溶媒として、油溶性の溶媒を用いることが可能になる。すなわち、外側被覆層6を形成する際に油溶性の溶媒を用いることにより、有機バインダーが溶解するのを防止し、二次粒子が崩壊するのを効果的に防止することができる。
また、有機バインダーの含有率は、造粒粉末全体の0.2質量%以上10質量%以下程度であるのが好ましく、0.3質量%以上5質量%以下程度であるのがより好ましく、0.3質量%以上2質量%以下であるのがさらに好ましい。有機バインダーの含有率が前記範囲内であることにより、著しく大きな粒子が造粒されたり、造粒されていない金属粒子が残存してしまうのを確実に防止しつつ、造粒粉末を効率よく形成することができる。また、成形性が向上するため、成形体の形状の安定性等を特に優れたものとすることができる。また、有機バインダーの含有率を前記範囲内としたことにより、成形体と脱脂体との大きさの差、いわゆる収縮率を最適化して、最終的に得られる焼結体の寸法精度の低下を防止することができる。
(造粒粉末)
本発明の造粒粉末は、上述したような金属粉末中の複数個の金属粒子を、上述したような有機バインダーで結着してなる二次粒子と、この二次粒子の表面を覆う外側被覆層とを有するものである。
図1は、本発明の造粒粉末中の1粒子の実施形態を示す断面図である。
本発明の造粒粉末中の造粒粒子1は、二次粒子5と外側被覆層6とを有している。
このうち、二次粒子5は、複数個の金属粒子51を含んでおり、各粒子の間に有機バインダー52が介在することで、全体として球形状にまとまっている。
図1に示す二次粒子5において、有機バインダー52は金属粒子51同士の間に介在するとともに、各金属粒子51を覆うように存在している。これにより、各金属粒子51は、有機バインダー52のマトリックス中に分散した状態になっている。
一方、外側被覆層6は、二次粒子5の表面を覆うよう設けられている。この外側被覆層6は、有機バインダーよりも水溶性の低い材料で構成されたものである。
このような外側被覆層6を有することにより、造粒粒子1は、流動性および耐候性の高いものとなる。これは、有機バインダーよりも水溶性の低い材料(以下、省略して「低水溶性材料」という。)は、吸湿性も低いためである。すなわち、吸湿により造粒粒子1の表面の摩擦係数が増大してしまうのを防止することができるので、造粒粒子1の流動性および耐候性を高めることができる。
また、造粒粒子1を成形型に充填して成形する場合には、成形型と造粒粒子1との固着を防止して、成形体の離型性を高めることができる。
なお、造粒粒子1の吸湿は、高湿度の環境下でなくでも、通常の大気中であれば起こり得るものである。特に、湿度が上昇する夏場では吸湿に伴う造粒粒子1の流動性低下、耐候性低下の問題が顕著であった。このため、従来は、造粒粒子1の特性に季節的変化が生じ、最終的に得られる焼結体の特性も不均一になっていた。
これに対し、本発明によれば、上述したような造粒粒子1の特性の季節的変化を抑制し、均一な特性の焼結体を製造することができる。
上述したような低水溶性材料としては、例えば、有機アミン類またはその誘導体、アクリル系樹脂、界面活性剤、ポリビニルブチラール等が挙げられる。
このうち、好ましくは、有機アミン類またはその誘導体、または、アクリル系樹脂のいずれかが用いられる。
有機アミン類が各分子に比較的活性の高いアミノ基を含んでおり、このアミノ基が二次粒子5の粒子表面に吸着し、二次粒子5同士の摩擦を低減することができるためである。また、アミノ基が二次粒子5の粒子表面に吸着すると、二次粒子5側とは反対側(外側)には、比較的活性の低い官能基が配向する確率が高くなる。この官能基同士は相互作用性に乏しく、かつ疎水性を示すため、二次粒子5同士が接近しても粒子間で相互作用を生じる確率が低くなる。また、外側被覆層6の吸湿性も低くなる。その結果、造粒粉末の流動性が向上し、さらには二次粒子5同士の粒子間距離が小さくなり易くなるので、成形体の緻密化、焼結体の緻密化に寄与する。
一方、アクリル系樹脂は、各種の有機バインダー成分に対する吸着性が高く、かつ疎水性を示す。このため、アクリル系樹脂で構成された外側被覆層6は、吸湿性が低く、造粒粉末の流動性向上に寄与する。
これに加え、二次粒子5表面に吸着した有機アミン類またはその誘導体やアクリル系樹脂が、二次粒子5と外気との接触機会を減少させることにより、金属粒子51を酸素や水分等から保護し、金属粒子51の耐候性を高める。その結果、最終的に、高密度で酸素含有率が低く、かつ耐候性に優れた焼結体を得ることができる。
ここで、外側被覆層6の存在比は、特に限定されないが、好ましくは複数の金属粒子51の100重量部に対して0.02重量部以上0.8重量部以下とされ、より好ましくは0.05重量部以上0.6重量部以下とされ、さらに好ましくは0.07重量部以上0.5重量部以下とされる。外側被覆層6の存在比を前記範囲内とすることにより、過不足ない厚さの外側被覆層6が形成され、造粒粉末の流動性を十分に高めることができる。具体的には、外側被覆層6を有しない場合と比べて、造粒粉末の流動度を1.5%以上高めることができる。このような流動度の向上が得られると、最終的に得られる焼結体の相対密度を2%以上高めることが可能にある。
なお、外側被覆層6の存在比が前記下限値を下回った場合、外側被覆層6が途切れる確率が高くなるおそれがある。一方、外側被覆層6の存在比が前記上限値を上回った場合、造粒粉末全体における外側被覆層6の存在比が高くなり過ぎてしまい、焼結体中に残存したり、焼結体の密度を下げてしまうおそれがある。
有機アミン類またはその誘導体としては、例えば、アルキルアミン類、シクロアルキルアミン類、アルカノールアミン類、アリルアミン類、アリールアミン類、アルコキシアミン類、またはこれらの誘導体等が挙げられるが、この中でも特にアルキルアミン類、シクロアルキルアミン類、アルカノールアミン類およびこれらの誘導体のうちの少なくとも1種が好ましく用いられる。これらのアミン類で構成された外側被覆層6は、相互作用性が低く、造粒粉末のさらなる流動性向上に寄与する。
アルキルアミン類としては、例えば、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン(ノルマルオクチルアミン)、2−エチルヘキシルアミンのようなモノアルキルアミン類、ジイソブチルアミンのようなジアルキルアミン類、ジイソプロピルエチルアミンのようなトリアルキルアミン類等が挙げられる。
また、シクロアルキルアミン類としては、例えば、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等が挙げられる。
また、アルカノールアミン類としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−アミノエチルエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン等が挙げられる。
さらに、これらの有機アミン類の誘導体としては、特に限定されないが、好ましくは有機アミン類の亜硝酸塩、有機アミン類のカルボン酸塩、有機アミン類のクロム酸塩、有機アミン類の酢酸塩等を用いることができる。これらのアミン類で構成された外側被覆層6は、相互作用性が低く、造粒粉末のさらなる流動性向上に寄与する。
一方、アクリル系樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸イソブチル、ポリ(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、ポリ(メタ)アクリル酸ラウリルのようなポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル、前記ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル用のモノマーを二種以上共重合させて得られる共重合ポリマー等が挙げられる。
また、アクリル系樹脂の分解性が損なわれない範囲で、前記ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル用の単量体と共重合可能な他の単量体(例えば、グリシジルメタクリレート、ヒドロキシメタクリレート、スチレン等)との共重合樹脂でもよい。
なお、これら樹脂は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。なお、(メタ)アクリルはメタクリルまたはアクリルを意味する。
上記の(メタ)アクリル酸系樹脂のうち、熱分解性の観点から、ポリメタクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸イソブチル、ポリメタクリル酸ラウリル、またはこれらを主成分とする樹脂が好ましく用いられる。
外側被覆層6の平均厚さは、1nm以上1000nm以下程度であるのが好ましく、5nm以上500nm以下程度であるのがより好ましい。平均厚さを前記範囲内とすることにより、外側被覆層6による造粒粉末の流動性向上および耐候性向上が十分に実現される。
なお、外側被覆層6の平均厚さが前記下限値を下回った場合、外側被覆層6が途切れる確率が高くなる。一方、外側被覆層6の平均厚さが前記上限値を上回った場合、造粒粉末全体における外側被覆層6の存在比が高くなり過ぎるおそれがある。
ところで、図1に示す二次粒子5では、前述したように、金属粒子51同士の間に有機バインダー52が介在するとともに、各金属粒子51を覆うように有機バインダー52が存在している。このため、外側被覆層6と二次粒子5との界面では、主に外側被覆層6と有機バインダー52とが接している。
ここで、二次粒子5の表面には、その一部で金属粒子51が露出している部分(図1に示す露出部分510)を有しているのが好ましい。このような金属粒子51の露出部分510には、外側被覆層6がより強く密着するとともに高密度の外側被覆層6が得られる。これは、外側被覆層6中のアミノ基が露出部分510に対して自発的に吸着するためであると考えられる。なお、この吸着は、極性基であるアミノ基が有する孤立電子対と、露出部分510の吸着サイトとの相互作用によるものと考えられる。このような相互作用により、外側被覆層6の剥離確率を低下させることができ、流動性および耐候性を安定的に高め得る造粒粒子1が得られる。
上述したような造粒粉末は、流動性の高いものとなる。具体的には、JIS Z 2502に規定の金属粉の流動性試験方法に準じて測定された本発明の造粒粉末の流動度は、金属粉末としてFe基合金粉末を用いた場合、33[sec/50g]以下であるのが好ましく、32[sec/50g]以下であるのがより好ましく、31[sec/50g]以下であるのがさらに好ましい。このような流動度を有する造粒粉末は、仮に成形型に狭小部分および一部に深い部分があったとしても、この当該部分に隙間なく流動し、成形型を確実に充填することができる。その結果、希望通りの寸法でかつ均質で高密度の焼結体が得られる。
なお、造粒粉末の流動度は、以下のようにして測定される。
まず、測定用に校正された漏斗を用意し、漏斗のオリフィスを塞いだ状態で、漏斗内に測定対象の造粒粉末50gを入れる。
次いで、オリフィスを開けると同時に計時を開始する、そして、最後の造粒粉末がオリフィスを離れる瞬間に計時を終了する。
次いで、漏斗に設定された補正係数を、造粒粉末の落下に要した時間の平均値に乗じて、流動度の測定値とする。
以上のようにして流動度が測定される。
また、本発明の造粒粉末の各粒子形状は、流動性および充填性に大きな影響を及ぼす。かかる観点から、造粒粉末の各粒子形状は、真球に近い形状であるのが好ましい。
(他の構成例)
ここで、本発明の造粒粉末の他の構成例について説明する。
図2は、本発明の造粒粉末の他の構成例を示す断面図である。
図2に示す造粒粒子1は、金属粒子51が、コア部511と、コア部511を覆う内側被覆層512とで構成されているものであり、この箇所以外は、図1に示す造粒粒子1と同様である。
コア部511は、図1における金属粒子51と同様、各種金属材料で構成されている。
一方、内側被覆層512は、図1における外側被覆層6と同様、有機アミン類で構成されたものであり、前述した外側被覆層6と同様の構成を有するものである。
すなわち、図2に示す造粒粒子1は、金属材料で構成されたコア部511を直接覆う内側被覆層512と、これらを含む二次粒子5を覆う外側被覆層6という2層の被覆層を有するものとなる。このため、図1に示す造粒粒子1と同様の流動性を有するとともに、より優れた耐候性を有するものとなる。これは、2層の被覆層によって、コア部511の外気との接触機会をさらに減少させることができるからである。このような造粒粉末を用いることにより、特に高密度な焼結体が得られる。
また、造粒粒子1を成形型に充填して成形する場合、造粒粒子1には圧縮力が付与されることで所定の形状に成形されるが、このとき造粒粒子1の崩壊を伴うことで成形体の保形性が発現する。この際、コア部511を覆う内側被覆層512を設けたことにより、金属粒子51同士の潤滑性が向上して、円滑な崩壊が実現される。その結果、成形体の保形性が高くなり、最終的に寸法精度の高い焼結体が得られる。
(造粒粉末の製造方法)
次に、本発明の造粒粉末の製造方法の実施形態について説明する。
以下、造粒粉末の製造方法の説明に先立って、この製造方法に用いられる造粒装置について説明する。
図3は、本発明の造粒粉末の製造方法において用いられる転動造粒装置の構成を示す模式図である。なお、図3(a)は、転動造粒装置の縦断面図であり、図3(b)は、図3(a)のA−A線断面図である。
転動造粒装置100は、造粒を行うための処理容器10と、処理容器10内に配設されたブレード20およびクロススクリュー30と、スプレーノズル40とを備えている。
処理容器10は、図3(a)に示すように、底部11と、底部11から立設された側壁部12とを有し、側壁部12は、上方から下方に向かって内径および外径が漸増する錘状(例えば円錐台筒状)をなしている。処理容器10(側壁部12)がこのような形状をなしていることにより、処理容器10内に、ブレード20により処理容器10の外周側を吹き上げられた粉末が、処理容器10の中央側に降下するような気流を形成することができる。その結果、粉末をムラなく処理することができ、粒度分布がシャープな造粒粉末を効率よく製造することができる。
また、処理容器10は、上方に開口を有し、この開口を塞ぐように蓋部13が装着されている。
ブレード20は、基部23と、この基部23に一端が固定され、放射状にほぼ等間隔に設けられた3枚の回転翼21、21、21とを有している。
また、処理容器10の底部11の中心には、貫通孔110が設けられており、この貫通孔110に回転駆動軸22が挿通されている。
回転駆動軸22の上端は、基部23に固定されており、下端は、回転駆動源(図示省略)に接続されている。そして、この回転駆動源により回転駆動軸22が正逆方向に回転駆動されることにより、ブレード20が回転する。
また、回転翼21、21、21は、それぞれ、ブレード20の回転方向前方側が下り斜面となるように、回転駆動軸22に対して傾斜して固定されている。これにより、ブレード20の回転に伴って、粉末を効果的に跳ね上げることができ、前述したような気流を形成することができる。
処理容器10の側壁部12には、貫通孔130が設けられており、この貫通孔130に回転駆動軸31が挿通されている。
回転駆動軸31の一端は、クロススクリュー30に固定されており、他端は、回転駆動源(図示省略)に接続されている。そして、この回転駆動源により回転駆動軸31が正逆方向に回転駆動されることにより、クロススクリュー30が回転する。
スプレーノズル40は、処理容器10に装着された蓋部13を貫通して設けられており、供給口が処理容器10内に位置している。これにより、処理容器10内に溶媒を噴霧し得るよう構成されている。スプレーノズル40から溶媒を噴霧することにより、スプレーノズル40付近には、下降気流が発生する。
ここで、前述したような転動造粒装置100の動作、すなわち転動造粒装置100を用いた造粒粉末の製造方法を説明する。転動造粒装置100を用いた造粒粉末の製造方法は、本発明の造粒粉末の製造方法の一例であり、本発明の造粒粉末の製造方法がこれに限定されないのは、言うまでもない。
次に、上記転動造粒装置100を用いて造粒粉末を製造する方法について説明する。
造粒粉末の製造方法は、有機バインダーの溶液(バインダー溶液)を供給しつつ、金属粉末を転動および/または流動させることにより、金属粉末を造粒して二次粒子を得る第1の工程と、低水溶性材料の溶液を二次粒子に供給することにより、被覆層を形成する第2の工程と、を有するものである。
[1]まず、上述したような転動造粒装置100の処理容器10の内部に金属粉末を投入する。そして、ブレード20で撹拌することにより金属粉末を転動および/または流動させる。
それとともに、スプレーノズル40からバインダー溶液を噴霧する。ミスト状態のバインダー溶液は、金属粉末を湿潤させるとともに、金属粉末の粒子同士を結着させる。その結果、金属粉末の造粒がなされ、造粒粉末80が得られる。この造粒粉末80は、ブレード20の回転に伴って、処理容器10の外周側(側壁部12側)へ徐々に移動(転動)するとともに、回転翼21によって上方に跳ね上げられる。跳ね上げられた造粒粉末80は、処理容器10の中央部側を下降して、再びブレード20によって転動される。このような一連の過程が繰り返されると、整形が行われ、真球に近い造粒粉末80が形成される。
また、このような造粒の過程で、造粒中の粒子が回転中のクロススクリュー30に接触すると、粒径の大きな粒子(造粒の進行度合いが大きい粒子)が解砕される。これにより、過度の造粒が抑制され、造粒粉末の粒度分布が狭い幅に制御されることとなる。
なお、バインダー溶液は、あらかじめ処理容器10内に入れておく等、いかなる方法で供給されてもよいが、図3(a)に示すように上方から噴霧するのが好ましい。これにより、ブレード20によって跳ね上げられた造粒粉末80に均一に過不足なくバインダー溶液が供給されるため、造粒粉末80の形状やサイズの均一化が図られる。特に、造粒粉末80が空中に浮いているときにバインダー溶液と接触することにより、造粒粉末80の粒子の表面全体がムラなく湿潤するため、前記均一化がより顕著なものとなる。その結果、粒度分布の揃った造粒粉末80が得られる。
バインダー溶液に用いられる溶媒としては、例えば、水、二硫化炭素、四塩化炭素等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−メトキシエタノール、アリルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、2−メトキシエタノール等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタン、ジデカン、メチルシクロヘキセン、イソプレン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、フルフリルアルコール等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化合物系溶媒、アセチルアセトン、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソペンチル、クロロ酢酸エチル、クロロ酢酸ブチル、クロロ酢酸イソブチル、ギ酸エチル、ギ酸イソブチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル等のエステル系溶媒、トリメチルアミン、ヘキシルアミン、トリエチルアミン、アニリン等のアミン系溶媒、アクリロニトリル、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、ニトロメタン、ニトロエタン等のニトロ系溶媒、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンタナール、アクリルアルデヒド等のアルデヒド系溶媒等の有機溶媒等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を混合したものを用いることができる。
ここで、ブレード20の単位時間当たりの回転数(以下、単に「回転数」と言う。)は、造粒粉末80の転動が最低限確保できれば、特に限定されないが、例えば、50rpm以上500rpm以下程度であるのが好ましく、100rpm以上300rpm以下程度であるのがより好ましい。ブレード20の回転数が前記範囲内の値であると、造粒粉末80を効率よく転動させて、効率よく造粒を行うことができる。
これに対し、ブレード20の回転数が前記下限値未満であると、造粒粉末80の転動や跳ね上げが不十分となり、造粒ムラの原因となる可能性がある。また、球状にならずの流動性の良くない不規則形状造粒粉末80となる可能性がある。一方、ブレード20の回転数が前記上限値を超えると、ブレード20による造粒粒子の解砕が進み、造粒が進まない粉末が多くなる可能性がある。
また、造粒時のクロススクリュー30の単位時間当たりの回転数は、特に限定されないが、例えば、50rpm以上3500rpm以下程度であるのが好ましく、100rpm以上3000rpm以下程度であるのがより好ましい。これにより、過度の解砕を防止しつつ、粒径の大きな粒子を解砕して、粒径の均一化を図ることができる。
また、バインダー溶液の供給速度は、特に限定されないが、例えば、20g/分以上1000g/分以下であるのが好ましく、30g/分以上800g/分以下であるのがより好ましく、50g/分以上600g/分以下であるのがさらに好ましい。バインダー溶液の供給速度が前記範囲内の値であると、バインダー溶液による金属粉末の結合(造粒)をムラなく進行させつつ、得られる造粒粉末の粒度分布をよりシャープなものとすることができる。
これに対し、バインダー溶液の供給速度が前記下限値未満であると、造粒ムラの原因となる可能性がある。一方、バインダー溶液の供給速度が前記上限値を超えると、造粒が過度に進む可能性がある。その結果、得られる造粒粉末は、粒度分布が広いものとなってしまう可能性がある。
さらに、バインダー溶液中の有機バインダーの濃度は、0.5重量%以上20重量%以下であるのが好ましく、1重量%以上15重量%以下であるのがより好ましく、2重量%以上13重量%以下であるのがさらに好ましい。
なお、造粒の処理時間(撹拌時間)は、特に限定されないが、1分以上90分以下であるのが好ましく、2分以上85分以下であるのがより好ましく、3分以上80分以下であるのがさらに好ましい。これにより、未造粒の金属粉末の残存を抑制し、得られる造粒粉末の粒度分布を十分にシャープなものとすることができる。 これに対し、造粒の処理時間が前記下限値未満であると、比較的多くの小粒径粉末(未造粒の金属粉末等)が残存する可能性がある。一方、造粒の処理時間が前記上限値を超えると、粒径の比較的大きい粉末(転動または流動していない粉末の固まり)に溶媒が直接付与され、造粒ムラの原因となる可能性がある。
また、必要に応じて、造粒粉末に対して、有機バインダーを溶解可能な溶媒を噴霧(供給)するようにしてもよい。これにより、造粒粉末の形状やサイズのさらなる均一化が図られる。
なお、最終的には、造粒粉末80は十分に乾燥した状態で得られる。
以上のようにして複数の金属粒子を有機バインダーで結着してなる二次粒子が得られる(第1の工程)。
なお、上記では、転動造粒装置100により二次粒子を製造する方法(転動造粒法)について説明したが、二次粒子の製造方法は上記の方法に限定されず、例えば、流動層造粒法、転動流動造粒法、スプレードライ(噴霧乾燥)法等により製造することもできる。
また、得られた二次粒子に対し、必要に応じて振動処理、解砕処理等を加えることにより、二次粒子表面の有機バインダーを一部除去して、金属粒子を露出させることもできる。これにより、前述したように、二次粒子と外側被覆層6との密着性を高めることができる。
なお、上記処理によらずとも、有機バインダーの添加量を少なくすることにより、金属粒子を露出させることも可能である。
[2]次に、得られた二次粒子を容器内に入れ、その上から低水溶性材料の溶液を供給する(第2の工程)。これにより、二次粒子の表面に低水溶性材料の液状被膜を形成し、これを乾燥させることで外側被覆層6が形成される。
この供給方法は、特に限定されないが、溶液を噴霧する方法、溶液に二次粒子を浸漬する方法等が挙げられる。このうち、溶液を噴霧する方法が好ましく用いられる。この方法によれば、溶液の使用量を抑えつつ、各二次粒子表面を覆うように低水溶性材料の溶液を効率よく供給することができる。
また、低水溶性材料の溶液を噴霧する際には、上述した転動造粒装置100を用いるようにしてもよい。
すなわち、転動造粒装置100により二次粒子を製造した後、引き続き、噴霧する溶液を有機バインダーの溶液から低水溶性材料の溶液に変更して、転動造粒装置100を動作させる。その結果、別途、容器等を用意することなく、効率よく本工程を行うことができる。
また、低水溶性材料の溶液を噴霧することにより、二次粒子にはこの溶液が徐々に供給されることになるので、一度に大量の溶液を供給する場合に比べて、二次粒子の崩壊を抑制することができる。これに加え、低水溶性材料の溶液を無駄なく供給可能であるため、供給量の制御が容易である。
さらに、転動および/または流動の作用により、二次粒子が回転するため、二次粒子の表面と低水溶性材料の溶液との接触機会が多くなる。その結果、短時間でも外側被覆層6を効率よく形成することができる。
ここで、低水溶性材料の溶液に用いられる溶媒としては、前述したバインダー溶液に用いられる各種溶媒が好ましく用いられるものの、好ましくは前記有機バインダーを溶解し難い溶媒が用いられる。
例えば、有機バインダーが水溶性材料で構成されている場合、本工程において低水溶性材料の溶液に含まれる溶媒としては、油溶性溶媒を用いるのが好ましい。反対に有機バインダーが油溶性材料で構成されている場合、本工程では、水溶性溶媒を用いるのが好ましい。
溶液中の低水溶性材料の濃度は、0.5重量%以上20重量%以下であるのが好ましく、1重量%以上15重量%以下であるのがより好ましく、2重量%以上10重量%以下であるのがさらに好ましい。これにより、均一な厚さの外側被覆層6が得られる。
以上のようにして本発明の造粒粉末が得られる。
また、本発明の造粒粉末の用途は、特に限定されないが、例えば、当該造粒粉末を含む成形体の製造、特に、当該造粒粉末を含む成形体を焼結することにより得られる焼結体の製造に好適に用いることができる。
(焼結体の製造方法)
以下、焼結体の製造方法の一例について説明する。
<成形>
まず、上述したような本発明の造粒粉末を用いて、プレス成形機により成形し、所望の形状、寸法の成形体を製造する。本発明の造粒粉末は、それ自体が緻密であり、かつ、充填性の高いものである。このため、高密度の成形体を製造することができ、最終的に、高密度でかつ収縮率の小さい焼結体が得られる。
なお、製造される成形体の形状寸法は、以後の脱脂および焼結による収縮分を見込んで決定される。また、成形法は、プレス成形に限定されず、圧縮成形、射出成形等であってもよい。
<脱脂処理>
前述した成形工程で得られた成形体に対し、脱脂処理(脱バインダー処理)を施し、脱脂体を得る。この脱脂処理としては、特に限定されないが、非酸化性雰囲気、例えば真空または減圧状態下(例えば1×10−1〜1×10−6Torr)、あるいは窒素ガス、アルゴンガス、水素ガス、アンモニア分解ガス等のガス中で、熱処理を行うことによりなされる。この場合、熱処理の条件は、有機バインダーの分解開始温度等によって若干異なるが、好ましくは温度100℃以上750℃以下程度で0.5時間以上40時間以下程度、より好ましくは温度150℃以上700℃以下程度で1時間以上24時間以下程度とされる。
また、このような熱処理による脱脂は、種々の目的(例えば、脱脂時間の短縮等の目的)で、複数の工程(段階)に分けて行ってもよい。この場合、例えば、前半を低温で、後半を高温で脱脂するような方法や、低温と高温を繰り返し行う方法等が挙げられる。
なお、有機バインダーは、脱脂処理によって完全に除去されなくてもよく、例えば、脱脂処理の完了時点で、その一部が残存していてもよい。
<焼成>
前述した脱脂処理工程で得られた脱脂体を焼成炉で焼成して焼結させ、目的とする焼結体を得る。この焼成により、造粒粉末を構成していた金属粉末は、拡散、粒成長し、全体として緻密な、すなわち高密度、低空孔率の焼結体が得られる。
焼成時における焼成温度は、造粒粉末の組成等により若干異なるが、例えば、Fe基合金粉末を用いた場合、900℃以上1200℃未満であるのが好ましく、1000℃以上1180℃以下であるのがより好ましい。焼成温度が前記範囲内であれば、特殊な耐熱構造を有しない、比較的安価で焼結体の量産性にも優れた焼成炉を用いて、効率よく焼結体を製造することができる。なお、焼成温度が前記下限値未満であると、金属粉末の焼結が十分に進行せず、最終的に得られる焼結体の空孔率が大きくなって十分な機械的強度が得られないおそれがある。一方、焼成温度が前記上限値を超えると、特殊な耐熱構造を有する焼成炉を用いる必要があるため、焼成の容易性が低下する。
焼成中の最高温度保持時間は0.5時間以上8時間以下程度であるのが好ましく、0.75時間以上5時間以下程度であるのがより好ましい。
特に、有機バインダーとしてポリビニルアルコールやポリビニルピロリドンのように結着性が大きく、かつ熱分解性の高い材料を用いることにより、有機バインダーの使用量を抑え、かつ金属粒子の粒子間距離を縮めることができるので、焼結開始温度を下げることができる。その結果、比較的低温で短時間の焼成であっても、緻密な焼結体が得られる。
また、焼成雰囲気は、特に限定されないが、減圧(真空)下または非酸化性雰囲気とされるのが好ましい。これにより、金属の酸化による特性劣化を防ぐことができる。好ましい焼成雰囲気としては、1Torr以下(より好ましくは1×10−2Torr以上1×10−6Torr以下)の減圧(真空)下、または1Torr以上760Torr以下の窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気、または1Torr以上760Torr以下の水素ガス雰囲気であるのが好ましい。
なお、焼成雰囲気は、焼成の途中で変化してもよい。例えば、最初に1×10−2Torr以上1×10−6Torr以下の減圧(真空)下とし、途中で前記のような不活性ガスに切り替えることができる。
また、焼成は、2段階またはそれ以上で行ってもよい。例えば、焼成条件の異なる1次焼成と2次焼成とを行い、2次焼成の焼成温度を、1次焼成の焼成温度より高い温度としてもよい。
なお、上記のようにして得られた焼結体は、いかなる目的で用いられるものであってもよく、その用途としては、各種機械部品等が挙げられる。
以上のようにして得られる焼結体の相対密度は、その用途等により異なるが、例えば、93%超、好ましくは94%以上となることが期待される。このような焼結体は、機械的特性に特に優れたものとなる。また、本発明の造粒粉末を用いることにより、低温での焼成であっても、かかる機械的特性に優れた焼結体を効率よく製造することができる。
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、造粒粉末の製造方法では、必要に応じて、任意の工程を追加することができる。
また、本発明の造粒粉末の製造方法に用いる装置は、前述した実施形態のものに限定されない。例えば、前記実施形態では、転動造粒装置を用いて説明したが、流動作用により造粒を行う流動層造粒装置や、転動流動作用により造粒を行う転動流動造粒装置、噴霧乾燥させるスプレードライ装置等を用いるようにしてもよい。
1.造粒粉末の製造
(実施例1A)
<1>まず、原料粉末として、水アトマイズ法により製造された平均粒径6μmのステンレス鋼粉末(エプソンアトミックス(株)製、SUS−316L、真密度7.98g/cm)を用意した。
<2>一方、有機バインダーとして、ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製、RS−1717)を用意した。また、溶媒としてイオン交換水を用意した。なお、溶媒の添加量は、有機バインダー1gあたり50gとした。
次いで、ポリビニルアルコールをイオン交換水に混合し、室温まで冷却することにより、有機バインダー溶液を調製した。なお、ポリビニルアルコールの添加量は、金属粉末100重量部に対して、0.8重量部となる量とした。また、ポリビニルアルコールの鹸化度は93、重合度は1700であった。
<3>次いで、転動造粒装置((株)パウレック製、VG−25)の処理容器内に原料粉末を投入した。そして、転動造粒装置のスプレーノズルから有機バインダー溶液を噴霧しつつ、以下の条件で原料粉末を転動させた。これにより、平均粒径75μmの二次粒子を得た。
<転動条件>
・ブレード回転数:200rpm
・クロススクリュー回転数:2500rpm
・バインダー溶液の供給速度:200g/分
・造粒時間:90分間
<4>次いで、低水溶性材料であるアルキルアミン誘導体(酢酸塩)をトルエンに溶解し、低水溶性材料の溶液を調製した。この際、アルキルアミン誘導体の添加量は、金属粉末100重量部に対して、0.3重量部となる量とした。
次いで、転動造粒装置のスプレーノズルから低水溶性材料の溶液を噴霧しつつ、二次粒子を転動させた。これにより、二次粒子の表面に外側被覆層を形成し、造粒粉末を得た。
(実施例2A〜8A)
有機バインダーの添加量や低水溶性材料およびその添加量を表1のように変更した以外は、それぞれ実施例1Aと同様にして造粒粉末を得た。
(実施例9A)
二次粒子の作製に先立って、原料粉末に低水溶性材料の溶液を噴霧し、乾燥させた。これにより、原料粉末の表面を覆うように内側被覆層を形成した。
以下、内側被覆層を形成した原料粉末を用い、実施例1Aと同様にして造粒粉末を得た。
(実施例10A)
二次粒子の作製に先立って、原料粉末に低水溶性材料の溶液を噴霧し、乾燥させた。これにより、原料粉末の表面を覆うように内側被覆層を形成した。
以下、内側被覆層を形成した原料粉末を用い、実施例4Aと同様にして造粒粉末を得た。
(実施例11A〜18A)
有機バインダーをポリビニルピロリドン(BASF社製、PVP/K−90)に変更した以外は、実施例1A〜8Aと同様にして造粒粉末を得た。なお、ポリビニルピロリドンの重量平均分子量は360,000であった。
(実施例19A)
二次粒子の作製に先立って、原料粉末に低水溶性材料の溶液を噴霧し、乾燥させた。これにより、原料粉末の表面を覆うように内側被覆層を形成した。
以下、内側被覆層を形成した原料粉末を用い、実施例11Aと同様にして造粒粉末を得た。
(実施例20A)
二次粒子の作製に先立って、原料粉末に低水溶性材料の溶液を噴霧し、乾燥させた。これにより、原料粉末の表面を覆うように内側被覆層を形成した。
以下、内側被覆層を形成した原料粉末を用い、実施例14Aと同様にして造粒粉末を得た。
(比較例1A、2A)
外側被覆層の形成を省略した以外は、実施例1A、5Aと同様にして造粒粉末を得た。
(比較例3A、4A)
外側被覆層の形成を省略した以外は、実施例11A、15Aと同様にして造粒粉末を得た。
(実施例1B)
原料粉末として、水アトマイズ法により製造された平均粒径6μmの2%Ni−Fe合金粉末(エプソンアトミックス(株)製、真密度7.827g/cm)を用いるようにした以外は、実施例1Aと同様にして造粒粉末を得た。
なお、2%Ni−Feの組成は、C:0.4〜0.6質量%、Si:0.35質量%以下、Mn:0.8質量%以下、P:0.03質量%以下、S:0.045質量%以下、Ni:1.5〜2.5質量%、Cr:0.2質量%以下、Fe:残部である。
また、工程<4>において、低水溶性材料の添加量は、金属粉末100重量部に対して、0.01重量部となる量とした。
(実施例2B〜8B)
低水溶性材料の添加量を表2のように変更した以外は、それぞれ実施例1Bと同様にして造粒粉末を得た。
(実施例9B)
原料粉末として、水アトマイズ法により製造された平均粒径6μmの2%Ni−Fe合金粉末(エプソンアトミックス(株)製、真密度7.827g/cm)を用いるようにした以外は、実施例11Aと同様にして造粒粉末を得た。
なお、2%Ni−Feの組成は、C:0.4〜0.6質量%、Si:0.35質量%以下、Mn:0.8質量%以下、P:0.03質量%以下、S:0.045質量%以下、Ni:1.5〜2.5質量%、Cr:0.2質量%以下、Fe:残部である。
また、工程<4>において、低水溶性材料の添加量は、金属粉末100重量部に対して、0.01重量部となる量とした。
(実施例10B〜16B)
低水溶性材料の添加量を表2のように変更した以外は、それぞれ実施例9Bと同様にして造粒粉末を得た。
(比較例1B)
外側被覆層の形成を省略した以外は、実施例1Bと同様にして造粒粉末を得た。
(比較例2B)
外側被覆層の形成を省略した以外は、実施例9Bと同様にして造粒粉末を得た。
2.造粒粉末の評価
2.1 流動度の評価
各実施例および各比較例で得られた造粒粉末について、JIS Z 2502に規定の金属粉の流動性試験方法により流動度を測定した。
2.2 焼結密度の評価
各実施例および各比較例で得られた造粒粉末を、以下に示す成形条件で成形した。
<成形条件>
・成形方法 :プレス成形法
・成形形状 :20mm角の立方体形状
・成形圧力 :600MPa(6t/cm
次いで、得られた成形体を、以下に示す脱脂条件で脱脂した。
<脱脂条件>
・脱脂温度 :600℃
・脱脂時間 :1時間
・脱脂雰囲気:窒素ガス雰囲気
次いで、得られた脱脂体を、以下に示す焼成条件で焼成した。これにより、焼結体を得た。
<焼成条件>
・焼成温度 :1150℃
・焼成時間 :3時間
・焼成雰囲気:減圧Ar雰囲気
・雰囲気圧力:1.3kPa(10Torr)
次いで、得られた焼結体について、アルキメデス法(JIS Z 2501に規定)に準じた方法により密度を測定した。また、測定された焼結密度と、金属粉末の真密度から、焼結体の相対密度を算出した。
2.3 寸法精度の評価
次いで、得られた焼結体について、その幅寸法をマイクロメーターで測定した。そして、測定値について、JIS B 0411(金属焼結品の普通許容差)に規定の「幅の普通許容差」に基づき、以下の評価基準に基づいて評価した。
なお、焼結体の幅とは、プレス成形時の圧縮方向と直交する方向の寸法である。
<評価基準>
◎:等級が精級である(許容差±0.1mm以下)
○:等級が中級である(許容差±0.1mm超±0.2mm以下)
△:等級が並級である(許容差±0.2mm超±0.5mm以下)
×:許容外である
以上、2.1〜2.3の評価結果を表1、表2に示す。
Figure 0005741071
表1から明らかなように、各実施例で得られた造粒粉末は、流動性が高く、高密度の焼結体を製造し得ることが認められた。特に、低水溶性材料としてアルキルアミン系材料またはアクリル系樹脂を用いた場合には、その傾向が顕著であった。
Figure 0005741071
表2から明らかなように、各実施例で得られた造粒粉末は、低水溶性材料の添加量を最適化することにより、その流動性を特に高めることができ、焼結体のさらなる高密度化を図ることができた。また、それに伴い、寸法精度の向上も認められた。
図4は、有機バインダーとしてポリビニルアルコールを用いた場合の造粒粉末について、横軸を低水溶性材料の添加量とし、縦軸を造粒粉末の流動度としたときの各実施例1B〜8Bおよび比較例1Bで得られた造粒粉末の分布を示すグラフである。なお、グラフにおいて各実施例は、黒に塗りつぶされた四角で示され、比較例1Bが、白抜きの四角で示されている。
図4からは、低水溶性材料の添加量が、金属粉末100重量部に対して0.02重量部以上0.8重量部以下にあるとき、特に造粒粉末の流動度が高くなる(流下に要する時間が短くなる)ことが認められる。また、この場合には、焼結体の相対密度も高くなっており、高密度の焼結体が製造された。
一方、図5は、有機バインダーとしてポリビニルピロリドンを用いた場合の造粒粉末について、横軸を低水溶性材料の添加量とし、縦軸を造粒粉末の流動度としたときの各実施例9B〜16Bおよび比較例2Bで得られた造粒粉末の分布を示すグラフである。なお、グラフにおいて各実施例は、黒に塗りつぶされた四角で示され、比較例2Bが、白抜きの四角で示されている。
図5からは、図4と同様、低水溶性材料の添加量が、金属粉末100重量部に対して0.02重量部以上0.8重量部以下にあるとき、特に造粒粉末の流動度が高くなる(流下に要する時間が短くなる)ことが認められる。また、この場合には、焼結体の相対密度も高くなっており、高密度の焼結体が製造された。
なお、比較例1Bで得られた造粒粉末について、焼成温度を1150℃から1250℃に変更して焼結体を得る補足実験を行った。得られた焼結体は、その相対密度が97%超となり、各実施例で得られた造粒粉末を用いて得られた焼結体の焼結密度と同等まで改善することができた。このことから、本発明の造粒粉末を用いることにより、より低温で焼成しても、従来の造粒粉末を用いて高温焼成を行う場合と同等の焼結体を製造し得ることが明らかとなった。これにより、汎用性が高く安価な焼成炉を用い、より短時間で焼成することができるので、焼成の低コスト化および効率化が期待できる。
1……造粒粒子 5……二次粒子 51……金属粒子 510……露出部分 511……コア部 512……内側被覆層 52……有機バインダー 6……外側被覆層 100……転動造粒装置 10……処理容器 11……底部 110……貫通孔 12……側壁部 13……蓋部 130……貫通孔 20……ブレード 21……回転翼 22……回転駆動軸 23……基部 30……クロススクリュー 31……回転駆動軸 40……スプレーノズル 80……造粒粉末

Claims (9)

  1. 複数個の金属粒子を有機バインダーで結着してなる二次粒子と、
    前記二次粒子の表面を覆うように設けられた外側被覆層と
    を有し、
    前記有機バインダーは、ポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドンを含んでおり、
    前記外側被覆層は、有機アミン類またはその誘導体、および、アクリル系樹脂のいずれかで構成されたものであることを特徴とする造粒粉末。
  2. 前記外側被覆層の存在比は、前記金属粒子100重量部に対して0.02重量部以上0.8重量部以下である請求項1に記載の造粒粉末。
  3. 前記外側被覆層の構成材料は、有機アミン類またはその誘導体であり、
    前記外側被覆層は、前記二次粒子との界面の少なくとも一部において、前記金属粒子の表面と接している請求項1または2に記載の造粒粉末。
  4. 前記有機アミン類またはその誘導体は、アルキルアミン、シクロアルキルアミン、アルカノールアミンおよびこれらの誘導体のうちの少なくとも1種である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の造粒粉末。
  5. 前記有機アミン類の誘導体は、前記有機アミン類の亜硝酸塩、前記有機アミン類のカルボン酸塩、前記有機アミン類のクロム酸塩および前記有機アミン類の酢酸塩のうちのいずれかである請求項ないしのいずれか1項に記載の造粒粉末。
  6. 前記金属粒子は、その表面が、前記外側被覆層と同様の構成の内側被覆層で覆われてなるものである請求項1ないしのいずれか1項に記載の造粒粉末。
  7. 前記金属粒子は、Fe基合金粉末であり、
    当該造粒粉末における、JIS Z 2502に規定の金属粉の流動性試験方法に準じて測定された流動度は、33[sec/50g]以下である請求項1ないしのいずれか1項に記載の造粒粉末。
  8. 複数個の金属粒子を有機バインダーで結着してなる二次粒子と、前記二次粒子の表面を覆うように設けられた外側被覆層とを有する造粒粉末を製造する方法であって、
    前記有機バインダーの溶液としてポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドンを含む溶液を供給しつつ、複数個の金属粒子に転動および流動の少なくとも一方を施すことにより、前記二次粒子を得る第1の工程と、
    前記二次粒子に対し、有機アミン類またはその誘導体、および、アクリル系樹脂のいずれかを含む溶液を供給し、前記外側被覆層を形成する第2の工程と
    を有することを特徴とする造粒粉末の製造方法。
  9. 前記有機アミン類またはその誘導体、および、アクリル系樹脂のいずれかを含む溶液は、噴霧により供給される請求項に記載の造粒粉末の製造方法。
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