以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は一実施形態の冷蔵庫を示す正面図である。また、図2、図3は図1のA−A断面図及びB−B断面図である。冷蔵庫1は上部に冷蔵室2が配され、冷蔵室2の下方には温度切替室3及び製氷室4が左右に並設される。温度切替室3及び製氷室4の下方には冷凍室6が配され、冷凍室6の下方に野菜室5が配されている。
冷蔵室2は回動式の扉2aにより開閉され、貯蔵物を冷蔵保存する。野菜室5は収納ケース5bと一体の引き出し式の扉5aにより開閉され、冷蔵室2よりも高い室内温度(約8℃)で野菜を冷却保存する。温度切替室3は扉(不図示)で開閉され、詳細を後述するように、使用者により室温を切り替えられるようになっている。
冷凍室6は収納ケース6bと一体の引き出し式の扉6aにより開閉され、貯蔵物を冷凍保存する。製氷室4は貯氷容器4bと一体の扉4aにより開閉され、冷凍室6に連通して氷を製氷する。尚、製氷室4及び冷凍室6は氷点以下に維持される。
冷蔵室2内の下部には隔離室から成るチルド室21、小物収納室102、水タンク室103が左右に並設される。チルド室21は冷蔵室2内よりも低温の温度帯の例えばチルド温度帯(約0℃)に維持される。チルド室21に替えて氷温(約−3℃)に維持される氷温室を設けてもよい。水タンク室103は製氷用の水タンク103aが着脱自在に収納される。小物収納室102は詳細を後述する冷気通路32の前方に配され、小物ケース102aを有して卵等の小物を収納する。
冷蔵庫1の本体部は外箱1aと内箱1bとの間に発泡断熱材1cを充填して形成されている。製氷室4及び温度切替室3と冷蔵室2との間は断熱壁7により隔離され、冷凍室6と野菜室5との間は断熱壁8により隔離される。また、温度切替室3と冷凍室6との間は断熱壁35により隔離され、温度切替室3と製氷室4との間は縦断熱壁36により隔離されている。
発泡断熱材1cは外箱1aと内箱1bとの間に充填される際に断熱壁7、8内に同時に充填される。即ち、発泡断熱材1cの原液が外箱1aと内箱1bとの間とこれに連通する断熱壁7、8に同時に注入され、一体に発泡される。ウレタン発泡断熱材等の発泡断熱材1cを外箱1a、内箱1b間と同時に断熱壁7、8に充填することにより、断熱壁7、8を簡単に薄く形成することができる。従って、冷蔵庫1の内容積を広く確保することができる。
冷蔵室2には貯蔵物を載置する複数の載置棚41が設けられる。本実施形態では載置棚41が上下に3段設けられる。冷蔵室2の扉2aには複数の収納ポケット42が設けられる。野菜室5の背後には機械室50が設けられ、機械室50内に圧縮機57が配される。圧縮機57には凝縮器、膨張器(いずれも不図示)及び冷却器11が順に接続され、圧縮機57の駆動によりイソブタン等の冷媒が循環して冷凍サイクルが構成される。これにより、冷却器11が冷凍サイクルの低温側となる。
冷凍室6の背後には背面板6cで仕切られた冷気通路31が設けられる。詳細を後述するように、冷気通路31は冷蔵室2の背後に配された冷気通路32に冷蔵室ダンパ20を介して連通する。冷気通路31は仕切板31cにより前部31aと後部31bとに仕切られ、後部31bに冷却器11が配される。冷却器11は冷媒が流通する冷媒管11aが蛇行して形成され、冷媒管11aの左右端部がエンドプレート11bにより支持されている。冷媒管11aには放熱用の多数のフィン(不図示)が接して設けられている。冷媒管11aの上部には気液分離器45が接続される。
冷凍サイクルの低温側となる冷却器11と冷気通路31の後部31bを流通する空気とが熱交換して冷気が生成される。冷却器11が冷凍室6の背面側に配されるため、冷却器11の冷熱が仕切板31c及び背面板6cを介して冷凍室6側へ放出される。このため、冷凍室6が効率よく冷却され、冷却効率が向上される。
冷却器11の下方には冷却器11を除霜する除霜ヒータ33が設けられている。除霜ヒータ33の下方には除霜による水を受けるドレンパン63が設けられる。ドレンパン63にはドレンパイプ64が設けられ、機械室50内に配された蒸発皿(不図示)にドレンパイプ64を介してドレン水が導かれる。
冷気通路31内には軸流ファンから成る冷凍室送風機12が回転軸方向を水平にして配置される。冷気通路31には冷凍室送風機12の前方で製氷室4に臨む開口部(不図示)が設けられるとともに、冷凍室6の収納ケース6bに臨む吐出口6d、6eが設けられる。これにより、冷凍室送風機12が駆動されると製氷室4及び冷凍室6に冷気が送出される。冷凍室6の下部には冷却器11の正面に開口して冷却器11に冷気を戻す戻り口22が設けられる。
冷却器11は左右方向で製氷室4側に偏って配置され、冷却器11の側方には冷蔵室2と野菜室5とを連通させる連通路34が配置される。また、冷蔵室ダンパ20及び冷凍室送風機12は冷却器11と同じ方向に偏って上下方向にほぼ並べて配置される。即ち、冷蔵室ダンパ20及び冷凍室送風機12は平面投影において重なるように配置されている。これにより、冷蔵庫1の左右方向の幅を狭くできるとともに、冷気通路31、32を短縮して容積効率や送風効率を向上することができる。
また、温度切替室3の容積を広く確保するため、温度切替室3と製氷室4とを隔離する縦断熱壁36は図1において左側に偏って配置される。温度切替室3の背後に冷気通路31の前部31aや冷蔵室ダンパ20を設けると、温度切替室3から冷気通路31内の冷気に熱が放出される。
冷気通路31を流通する冷気は例えば−23℃であり、温度切替室3が該冷気よりも高温(例えば、3℃、8℃、50℃)に制御されていると熱ロスが大きくなる。このため、縦断熱壁36の後方かそれよりも左側に冷蔵室ダンパ20や冷気通路31の前部31aを設け、温度切替室3から冷気への熱の放出を防止している。これにより、冷却効率をより向上することができる。
温度切替室3には冷気通路31から分岐して冷気を導く導入通風路15が接続される。温度切替室3の後部には温度切替室送風機18及びヒータ16が配置される。温度切替室3の左下部には温度切替室吐出ダンパ37が設けられる。温度切替室吐出ダンパ37は導入通風路15内に配置され、温度切替室送風機18は導入通風路15の上部に配置される。
温度切替室吐出ダンパ37を開いて温度切替室送風機18を駆動すると導入通風路15を介して冷却器11から冷気が温度切替室3に流入する。温度切替室吐出ダンパ37の開閉量によって導入通風路15から温度切替室3に流入する風量が調整される。温度切替室3には、ヒータ16に加えて底部にパネルヒータを設けてもよい。
温度切替室3の下部には温度切替室戻りダンパ38が設けられる。温度切替室戻りダンパ38は下方に延びる戻り通路17を開閉し、温度切替室3内の空気は戻り通路17を介して冷気通路31に戻るようになっている。
尚、温度切替室3の室内温度が高温に設定されているときは導入通風路15や戻り通路17内の空気が温度切替室3内の空気よりも低温となる。高温の空気は温度切替室3内で上昇するとともに、温度切替室吐出ダンパ37及び温度切替室戻りダンパ38が温度切替室3の下部に設けられる。このため、温度切替室3から導入通風路15や戻り通路17への熱気の漏れを低減することができる。
戻り通路17を流通する空気は冷却器11の上下方向の中間に設けた流出口17aから冷却器11に戻される。冷凍室戻り口22を介して冷凍室6から流出する冷気は冷却器11の下部に戻る。また、野菜室5から冷気が戻り通路46(図2参照)を介して冷却器11の下方に戻る。
従って、各貯蔵室から流出した冷気は冷却器11に分散して戻される。このため、各貯蔵室を循環して戻ってきた水分を含む冷気による霜が一部に集中的に発生せずに、冷却器11全体に分散して発生する。これにより、霜による冷気流れの目詰まりが防止され、冷却器11の冷却性能低下を防止することができる。
また、容積の小さい温度切替室3を流通した冷気は冷却器11の上部で冷却され、容積の大きい冷蔵室3、野菜室5及び冷凍室6を流通した冷気は冷却器11の上下方向の全体で冷却される。従って、温度切替室3から流出した冷気が必要以上に冷却器11と熱交換されず、冷却器11の熱交換効率を向上することができる。
冷蔵室2の背後には冷気通路32及び循環通路81がその一部を前後に重ねて設けられる。図1には循環通路81の正面形状が破線D1で示されており、図4には冷気通路32の正面形状が破線D2で示される。また、図5は図1のC−C断面図を示している。冷気通路32の小物収納室102よりも上方及び循環通路81は冷蔵室2の背面に配された冷却パネル70により一体に形成され、冷気通路32の前方に循環通路81が配される。
尚、場合によっては、後述する循環通路81の縦通路81bを前後方向で冷気通路32と同様の位置に並設し、後述する横通路81cを冷気通路32の前方に配してもよい。これにより、庫内容積を大きくすることができる。
冷却パネル70は正面形状が矩形に形成され、パネルベース71及び部材72から成っている。パネルベース71は発泡スチロール等の断熱材の成形品から成り、冷気通路32及び循環通路81の外形を一体に形成する。
部材72はパネルベース71の前面に配され、金属板等の熱良導体により正面形状が略矩形に形成される。部材72の材料として、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、黄銅、メッキ鋼板等を選択することができる。熱伝導率、防錆性、強度、軽さ、価格等を考慮して部材72をアルミニウムにより形成するとより望ましい。部材72により循環通路81の前面が形成され、循環通路81を流通する冷気は部材72と接する。
図3、図4において、冷気通路32は冷蔵室ダンパ20から上方に延び、横幅が狭い流入部32cが小物収納室102の背後の冷蔵室2下部に設けられる。流入部32cには冷蔵室送風機23が配される。冷蔵室送風機23は軸流ファンから成り、冷蔵室ダンパ20を開いて冷蔵室送風機23を駆動することによって冷気通路32に冷気が流通する。
冷蔵室ダンパ20から冷気通路32に流入した直後の冷気は極低温(約−20℃〜−18℃)になっている。このため、冷気通路32の下部の庫内側には断熱材107が配される。これにより、冷蔵室2の背壁表面の結露を防止することができる。
冷蔵室ダンパ20の下流側は冷蔵室2の背壁が傾斜し、冷気通路32の下部の奥行が約10mm程度まで絞られる。これにより、冷気通路32の奥行を狭く形成して冷蔵室2の奥行を広く確保することができる。また、冷蔵室ダンパ20は一部が正面投影において断熱壁7と重なる位置に配置される。このため、冷蔵室ダンパ20が冷蔵室2や冷凍室6に突出される量を削減し、冷蔵室2及び冷凍室6を広く形成することができる。
冷気通路32は流入部32cの上方で左右に分岐し、右通路32a及び左通路32bを上部に有している。右通路32aの側端には上方から順に複数の吐出口73a、73b、73cが側方に開口して設けられる。左通路32bの側端には上方から順に複数の吐出口74a、74b、74cが側方に開口して設けられる。これにより、吐出口73a〜73c、74a〜74c(第1吐出口)が冷蔵室2の左右方向の両端部に配される。冷気通路32は下方から上方に向かって冷気が流通し、吐出口73a、74aは冷気通路32の終端部となる上部に設けられる。
また、上段の吐出口73a、74aは上から1段目の載置棚41の上方に設けられる。中段の吐出口73b、74bは上から1段目の載置棚41と2段目の載置棚41との間に設けられる。下段の吐出口73c、74cは上から2段目の載置棚41と3段目の載置棚41との間に設けられる。
中段及び下段の吐出口73b、73c、74b、74cの開口面積は上段の吐出口73a、74aの開口面積よりも小さくなっている。これにより、冷気通路32の冷気流入側に近く、冷蔵室2下部に配された戻り口2dに近い下方の吐出口73b、73c、74b、74cから吐出される冷気量が制限される。従って、冷気通路32の上部まで冷気を導くことができる。
また、右通路32aの下端にはチルド室21に冷気を吐出する吐出口75、76が設けられる。冷蔵室ダンパ20から冷気通路32に流入した直後の冷気が吐出口75、76からチルド室21に吐出されるため、チルド室21を低温に維持することができる。
チルド室21の背面下部には冷蔵室2の冷気が流出する戻り口2dが設けられる。戻り口2dからは冷蔵室2と野菜室5とを連通させる連通路34が導出される。連通路34の上部は戻り口2dに面してチルド室21の左端から右端に延びる冷気戻り部34aが設けられ、連通路34の下部は冷気戻り部34aの右部から下方に延びる。
連通路34の下端は野菜室5に開口する流入口5cが設けられる。野菜室5の上部には野菜室5の前部及び冷気通路31の正面に開口して冷却器11の下方に冷気を戻す戻り通路46(図2参照)が設けられる。
図1、図2において、循環通路81は冷却パネル70によって冷蔵室2の背面に形成される背面部81aと、冷蔵室2の天井面に形成される天井部81dとを有している。天井部81dは前後に延びて設けられる。天井部81dの後部には循環送風機85が配され、前端に吐出口84(第2吐出口)が設けられる。循環送風機85と吐出口84との間にはイオンを発生するイオン発生装置86が配される。
図6は天面部81dの上面図を示している。天井部81dは冷蔵室2の左右方向の中央部に配され、前端に吐出口84が開口する。循環送風機85は遠心ファンから成り、図中、左方に偏った位置から排気する。このため、イオン発生装置86は左方に偏って配置される。
イオン発生装置86は高圧電圧の印加によりイオンを発生する電極86a、86bを有し、電極86a、86bが天井部81dを通る冷気に面して配されている。イオン発生装置86を循環送風機85と吐出口84との間に配置することにより循環送風機85との衝突によるイオンの消滅を防止することができる。また、イオンを発生する電極を天井部81dに配置してイオン発生装置86の電源部等を別の位置に配置してもよい。
イオン発生装置86の電極86a、86bには交流波形またはインパルス波形から成る電圧が印加される。電極86aには正電圧が印加され、電離により発生するイオンが空気中の水分と結合して主としてH+(H2O)mから成る電荷が正のクラスタイオンを発生する。電極86bには負電圧が印加され、電離により発生するイオンが空気中の水分と結合して主としてO2 -(H2O)nから成る電荷が負のクラスタイオンを発生する。ここで、m、nは任意の自然数である。H+(H2O)m及びO2 -(H2O)nは空気中の浮遊菌や臭い成分及び貯蔵物の付着菌の表面で凝集してこれらを取り囲む。
そして、式(1)〜(3)に示すように、衝突により活性種である[・OH](水酸基ラジカル)やH2O2(過酸化水素)を微生物等の表面上で凝集生成して浮遊菌や臭い成分等を破壊する。ここで、m’、n’は任意の自然数である。従って、プラスイオン及びマイナスイオンを発生して吐出口84から吐出することにより室内の殺菌及び臭い除去を行うことができる。
H+(H2O)m+O2 -(H2O)n→・OH+1/2O2+(m+n)H2O ・・・(1)
H+(H2O)m+H+(H2O)m’+O2 -(H2O)n+O2 -(H2O)n’
→ 2・OH+O2+(m+m'+n+n')H2O ・・・(2)
H+(H2O)m+H+(H2O)m’+O2 -(H2O)n+O2 -(H2O)n’
→ H2O2+O2+(m+m'+n+n')H2O ・・・(3)
背面部81aは縦通路81b及び横通路81cを有している。縦通路81bは左右方向の中央部に上下に延びて天井部81dに連通する。横通路81cは縦通路81bから櫛状に水平に延びて形成され、循環送風機85の駆動によって冷蔵室2内の冷気が吸い込まれる吸込口82a、82b、83a、83bが設けられる。
吸込口82a、82bは横通路81cの右側の端部に側方に向かって開口し、吸込口83a、83bは横通路81cの左側の端部に側方に向かって開口する。これにより、吸込口82a、82b、83a、83bは冷蔵室2の左右方向の両端部に配される。上方の吸込口82a、83aは上から2段目の載置棚41と3段目の載置棚41との間に配される。下方の吸込口82b、83bは上から3段目の載置棚41の下方に配される。
また、天面部81dには循環送風機85の吸気側に対向して吸込口87が設けられる。吸込口87は吸込口82a、82b、83a、83bよりも開口面積が狭くなっている。例えば、吸込口87の開口面積は2mm×100mm程度に形成され、吸込口82a、82b、83a、83bの開口面積は8mm×50mm〜8mm×90mm程度に形成される。
これにより、上段の吐出口73a、74aから左右方向の中央部に配される吸込口87への冷気の流入を抑制するとともに、イオン発生装置86により多くの湿った冷気を供給することができる。
図5に示すように、載置棚41の後端と冷蔵室2の背面との間には冷却パネル70の側方に隙間88が形成される。これにより、吐出口73a〜73cと吸込口82a、82bとの間及び吐出口74a〜74cと吸込口83a、83bとの間に隙間88によるダクトが形成される。
上記構成の冷蔵庫1において、冷凍室送風機12が駆動されると冷却器11で生成された冷気は製氷室4に吐出されるとともに、吐出口6d、6eを介して冷凍室6に吐出される。製氷室4に吐出された冷気は製氷室4を流通し、冷凍室6に吐出された冷気と混合して冷凍室6を流通する。製氷室4及び冷凍室6を流通した冷気は冷凍室戻り口22から流出して冷却器11に戻る。これにより、製氷室4及び冷凍室6内が冷却される。
冷蔵室ダンパ20が開かれると、冷蔵室送風機23及び循環送風機85が駆動される。この時、冷蔵室送風機23の風速は循環送風機85の風速よりも低く設定される。冷蔵室送風機23の駆動によって冷凍室送風機12の排気側で分岐した冷気が冷気通路32を流通する。冷気通路32を流通する冷気は右通路32aと左通路32bとに分岐する。右通路32aを通る冷気の一部は矢印A1(図4参照)に示すように吐出口75、76を介してチルド室21へ吐出される。チルド室21を流通した冷気は戻り口2dから流出する。
また、右通路32a及び左通路32bを下方から上方へ上昇する冷気は吐出口73a〜73c、74a〜74cを介して矢印A2(図4、図5参照)に示すように冷蔵室2に吐出される。この時、冷蔵室送風機23の風速が比較的低いため、吐出口73a〜73c、74a〜74cから側方に向かって吐出された冷気は冷蔵室2の側壁を伝って前方に流通する。また、吐出口73a〜73c、74a〜74cから吐出された冷気の一部は載置棚41後方の隙間88を介して降下する。
吐出口73a〜73c、74a〜74cから側壁に沿って前方に流通する冷気は載置棚41上の貯蔵物を周囲から冷却し、載置棚41の前方を側壁に沿って降下する。そして、吸込口82a、82b、83a、83b及び戻り口2dに導かれる。戻り口2dに導かれる冷気の一部は小物収納室102の貯蔵物や水タンク室103の水タンク103aを冷却する。
載置棚41の前方を降下する冷気の一部及び隙間88を降下した冷気は冷蔵室2内の湿った冷気と混合される。そして、水分を含んだ冷気が矢印A3(図1、図5参照)に示すように吸込口82a、82b、83a、83bから循環通路81に吸い込まれる。循環通路81に吸い込まれた冷気は循環通路81内を上昇する。また、吸込口87から冷蔵室2内の冷気が矢印A4(図2参照)に示すように循環通路81の天面部81dに吸い込まれる。
循環通路81を流通する冷気はイオン発生装置86により発生したイオンが含まれる。イオンを含んだ冷気は矢印A5(図2、図6参照)に示すように循環通路81の吐出口84から冷蔵室2に吐出される。この時、吐出口84から上段のドアポケット42と載置棚41との間に向かって斜め下方に冷気が吐出される。これにより、ドアポケット42の内部を冷却及び除菌し、イオンを含んだ冷気が載置棚41の前方を降下する。循環通路81を流通する冷気中の水分が多くなっているためイオンが水分子との結合によってクラスタ化して消滅しにくくなり、冷蔵室2の下方まで正負のイオンが行き届く。
吐出口84から冷蔵室2に吐出された冷気は載置棚41の前方を降下し、戻り口2dに導かれるとともに一部が吸込口82a、82b、83a、83bに導かれる。これにより、循環通路81によって冷蔵室2内の冷気が冷却器11を通らずに循環する。また、吐出口84は冷蔵室2の左右方向の中央部で開口するため、天面の中央部から吐出された冷気が左右方向の両端部に配された吸込口82a、82b、83a、83bに導かれる。これにより、イオン及び水分を含む冷気が冷蔵室2の下部後方まで行き渡り、冷蔵室2全体が冷却及び除菌される。
また、循環通路81を流通する冷気や吐出口73a〜73c、74a〜74cから吐出された冷気の冷熱は部材72に伝えられる。部材72は熱伝導性が高いため温度が均一化され、冷蔵室2の背面全体から冷熱が放出される。これにより、冷蔵室2の温度分布を均一化することができる。
更に、扉2aを開いて外気が冷蔵室2内に流入した際に部材72の表面は外気の水分が結露して曇った状態になる。結露した水分は冷気の循環によってその後蒸発し、冷蔵室2内に放出される。従って、部材72によって冷蔵室2が保湿される。この時、循環通路81の背面部81aに面した部材72の背面側にも結露が発生するため結露面積が広く確保され、保湿効果を向上することができる。
部材72の前面及び背面に折曲による凹凸を設けると、部材72上を流下する結露水を凹凸の上方に面した面に溜めて保湿効果をより向上することができる。凹凸はプレス加工や絞り加工等によって折曲により容易に形成することができる。また、背面部81aの下端に結露水を溜める貯水部(不図示)を設けても同様に、部材72を流下する結露水を貯水部に溜めて保湿効果をより向上することができる。
戻り口2dはチルド室21の左方に偏って配置され、冷蔵室2の左右方向の中央部近傍に配される。このため、左右方向の両端部の吐出口73a〜73c、74a〜74cから戻り口2dに導かれる冷気によって冷蔵室2をより均一に冷却することができる。
戻り口2dを介して冷蔵室2から流出する冷気は連通路34を通り、流入口5cから野菜室5に流入する。この時、流入口5cが野菜室2の上方に設けられるため連通路34が短く形成され、圧力損失を小さくすることができる。野菜室5に流入した冷気は野菜室5内を流通し、戻り通路46を介して冷却器11に戻る。これにより、冷蔵室2及び野菜室5内が冷却され、設定温度になると冷蔵室ダンパ20が閉じられて冷蔵室送風機23及び循環送風機85が停止される。
また、温度切替室送風機18の駆動により、冷凍室送風機12の排気側で分岐した冷気は温度切替室吐出ダンパ37を介して温度切替室3に流入する。温度切替室3に流入した冷気は温度切替室3内を流通して温度切替室戻りダンパ38から流出し、戻り通路17を介して冷却器11に戻る。これにより、温度切替室3内が冷却される。
前述のように、温度切替室3は使用者の操作により室内温度を切り替えることができるようになっている。温度切替室3の動作モードは温度帯に応じてワイン(8℃)、冷蔵(3℃)、チルド(0℃)、ソフト冷凍(−8℃)、冷凍(−15℃)の各冷却モードが設けられる。
これにより、使用者は所望の温度で貯蔵物を冷却保存できる。室内温度の切り替えは温度切替室吐出ダンパ37を開く量を可変して行うことができる。尚、例えば冷凍の室内温度から冷蔵の室内温度に切り替える際にヒータ16に通電して昇温してもよい。これにより、迅速に所望の室内温度に切り替えることができる。
ヒータ16に通電することにより、温度切替室3の室内温度を貯蔵物を冷却保存する低温側から常温よりも高温の高温側に切り替えることができる。これにより、調理済み加熱食品の一時的な保温や温調理等を行うことができる。
高温側の室内温度は、主な食中毒菌の発育温度が30℃〜45℃であるため、ヒータ容量の公差や温度切替室3内の温度分布等を考慮して50℃以上にするとよい。これにより、食中毒菌の繁殖を防止できる。
また、冷蔵庫に用いられる一般的な樹脂製部品の耐熱温度が80℃であるため、高温側の室内温度を80℃以下にすると安価に実現することができる。加えて、食中毒菌を滅菌するためには、例えば腸管出血性大腸菌(病原性大腸菌O157)の場合では75℃で1分間の加熱が必要である。従って、高温側の室内温度を75℃〜80℃にするとより望ましい。
以下は55℃での食中毒菌の滅菌に関する試験結果である。試験サンプルは初期状態で大腸菌2.4×103CFU/mL、黄色ブドウ球菌2.0×103CFU/mL、サルモネラ2.1×103CFU/mL、腸炎ビブリオ1.5×103CFU/mL、セレウス4.0×103CFU/mLを含んでいる。この試験サンプルを40分間で3℃から55℃に加温し、55℃で3.5時間保温後、80分間で55℃から3℃に戻して再度各菌の量を調べた。その結果、いずれの菌も10CFU/mL以下(検出せず)のレベルまで減少していた。従って、温度切替室3の高温側の設定温度を55℃としても充分滅菌効果がある。
本実施形態によると、冷蔵室2の背面に配される冷気通路32は冷気が下方から上方に流通して冷気通路32の終端部となる上部に吐出口73a、74a(第1吐出口)が設けられる。また、循環通路81は冷気が下方から上方に流通して冷蔵室2の上部に吐出口84(第2吐出口)が設けられる。このため、冷気通路32が上下方向に屈曲せず、冷気通路32及び循環通路81の横幅を広く形成できる。これにより、冷気通路32及び循環通路81の奥行を広くせずに庫内容積を充分確保しつつ流路面積を増加することができる。従って、送風効率を向上することができるとともに、庫内循環が隈なくされて均一冷却することができる。加えて、冷気通路32の通路長を短縮することができ、外部への冷熱の放出を低減して冷却効率を向上して省エネルギー化を図ることができる。
また、冷却器11からの冷気が通る冷気通路32と冷却器11を通らずに冷気が循環する循環通路81とを前後に重ねて配置したので、吐出口73a〜73c、74a〜74c(第1吐出口)を背面の左右方向の両端部に設けるとともに、吸込口82a、82b、83a、83bを左右方向の両端部に設けることができる。これにより、吸込口82a、82b、83a、83bから吸い込まれる湿った冷蔵室2内の冷気が吐出口73a〜73c、74a〜74cから吐出される乾いた冷気に混合され、冷蔵室2の全体を流通する。従って、乾燥した冷気が貯蔵物に直接接触する量を削減し、貯蔵物の乾燥を低減することができる。
また、吐出口84(第2吐出口)が冷蔵室2の左右方向の中央部に配されるため、吐出口84から吐出された冷気が両端の吸込口82a、82b、83a、83bに導かれて冷蔵室2全体に冷気が流通する。従って、冷蔵室2の温度を均一にすることができる。尚、吐出口84は少なくとも冷蔵室2の左右方向の中央部が開口していればよく、中央部から左右に広がって形成してもよい。
また、吐出口73a〜73c、74a〜74cの下方に吸込口82a、82b、83a、83bを設けたので、吐出口73a〜73c、74a〜74cから吐出された冷気が自重により降下して吸込口82a、82b、83a、83bに円滑に導かれる。従って、吐出口73a〜73c、74a〜74cから吐出された冷気が貯蔵物に直接接触する量をより削減し、貯蔵物の乾燥を低減することができる。
また、冷蔵室2の背壁と載置棚41との間に吐出口73a〜73c、74a〜74cと吸込口82a、82b、83a、83bとを連通させる隙間88を形成したので、より円滑に冷気を吸込口82a、82b、83a、83bに導くことができる。
また、上方の吸込口82a、83a及び下方の吐出口73c、74cはいずれも上から2段目の載置棚41と3段目の載置棚41との間に設けられ、吸込口82a、83aはそれぞれ吐出口73c、74cの近傍に配置される。従って、より円滑に吐出口73c、74cから吐出される冷気を吸込口82a、83aに導くことができる。
また、循環通路81は天井部81dによって冷蔵室2の天井面まで延設され、吐出口84を天井部81dの前部に設けたので、扉2aの近傍まで湿った冷気を行き渡らせることができる。
また、循環送風機85を循環通路81の上部に配置したので、循環送風機85の上流側の吸込口82a、82b、83a、83bの配置自由度が増加する。
本実施形態において、吸込口82a、82b、83a、83bを冷蔵室2の左右方向の両端部に配置し、吐出口84を左右方向の中央部に配置している。これに対して、循環通路81の吐出口を冷蔵室2の左右方向の両端部に配置し、吸込口を冷蔵室2の左右方向の中央部に配置してもよい。この時、循環通路81の吐出口を冷気通路32の吐出口73a〜73c、74a〜74cの近傍に配置すると、冷気通路32の吐出口73a〜73c、74a〜74cから吐出される乾燥した冷気に循環通路81の吐出口から吐出される湿った冷気が混合される。
これにより、上記と同様に、乾燥した冷気が貯蔵物に直接接触する量を削減し、貯蔵物の乾燥を低減することができる。また、循環通路81の吐出口(第2吐出口)から吐出された冷気が中央部の吸込口に導かれて冷蔵室2全体に冷気が流通する。従って、冷蔵室2の温度を均一にすることができる。