以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1、図2は第1実施形態の冷蔵庫を示す正面図及び右側面図である。冷蔵庫1は上部に扉2aで開閉される冷蔵室2(貯蔵室)が配される。冷蔵室2の下方には扉3a、4aで開閉される温度切替室3及び製氷室4が左右に並設される。温度切替室3及び製氷室4の下方には扉6aで開閉される冷凍室6が配され、冷凍室6の下方に扉5aで開閉される野菜室5が配されている。
冷蔵室2は貯蔵物を冷蔵保存し、野菜室5は冷蔵室2よりも高い室内温度(約8℃)で野菜を冷却保存する。温度切替室3は詳細を後述するように、使用者により室温を切り替えられるようになっている。冷凍室6は貯蔵物を冷凍保存し、製氷室4は冷凍室6に連通して氷を製氷する。尚、製氷室4及び冷凍室6は氷点以下に維持され、本明細書において製氷室4は冷凍室6の一部を構成する。
図3、図4は冷蔵庫1の右側面断面図及び正面図である。冷蔵庫1の本体部は外箱1aと内箱1bとの間に発泡断熱材1cが充填されている。製氷室4及び温度切替室3と冷蔵室2との間は断熱壁7により隔離され、冷凍室6と野菜室5との間は断熱壁8により隔離される。また、温度切替室3と冷凍室6との間は断熱壁35により隔離され、温度切替室3と製氷室4との間は縦断熱壁36により隔離されている。
発泡断熱材1cはウレタン発泡断熱材等から成り、外箱1aと内箱1bとの間に充填される際に断熱壁7、8内に同時に充填される。即ち、発泡断熱材1cの原液が外箱1aと内箱1bとの間とこれに連通する断熱壁7、8に同時に注入され、一体に発泡される。これにより、断熱壁7、8を簡単に薄く形成することができる。従って、冷蔵室2の容積を広く確保することができる。
また、断熱壁7、8の外装は内箱1bと別部材から成り、発泡断熱材1cの充填前は断熱壁7、8の側面が開口して内箱1bが断熱壁7、8の側面に対向して開口する。発泡断熱材1cの充填により断熱壁7、8の側面の開口と内箱1bの開口とが連結して一体となる。
これにより、断熱壁7、8によって隔離された温度帯の異なる各貯蔵室間での冷気や暖気の漏れが防止される。従って、熱ロスの低減による省エネルギー化を図ることができる。また、断熱壁7、8の振動や、該振動による断熱壁7、8と内箱1bとの摺動によって発生する異常音を防止することができる。加えて、一体形成による構造的な強度を向上することができる。
製氷室4、冷凍室6、野菜室5及び温度切替室3には貯蔵物を収納する収納ケース43が設けられる。冷蔵室2には貯蔵物を載置する複数の収納棚41が設けられる。冷蔵室2の扉2aには複数の収納ポケット42が設けられる。これらにより、冷蔵庫1の使い勝手が向上されている。
また、冷蔵室2内の下部には上面が仕切板41aにより仕切られて隔離された隔離室から成るチルド室21が設けられる。チルド室21は冷蔵室2と異なる温度帯の例えばチルド温度帯(約0℃)に維持される。チルド室21には貯蔵物を収納する収納ケース107が配される。チルド室21に替えて氷温(約−3℃)に維持される氷温室にしてもよい。
野菜室5の背後には機械室50が設けられ、機械室50内に圧縮機57が配される。圧縮機57には凝縮器、膨張器(いずれも不図示)及び冷却器11が接続され、圧縮機57の駆動によりイソブタン等の冷媒が循環して冷凍サイクルが運転される。これにより、冷却器11が冷凍サイクルの低温側となる。
機械室50の後部には電装部51が設けられる。電装部51は冷蔵庫1の本体部に取付けられる背面側が開口した電装ボックス52を有し、機械室50の背面を塞ぐ背面カバー50aにより密閉される。電装ボックス52は金属板の絞り加工により形成され、放熱面積が大きく電装部品の発熱を容易に放熱できるとともに電装部51内を容易に密閉することができる。
電装部51には圧縮機57や各送風機等を制御する制御回路を有した制御基板53を含む電装部品が内装される。電装部51を機械室50内に設置したので、冷蔵室2の背後に設置した場合に比して使用頻度の高い冷蔵室2の容積を広く確保し、冷蔵庫1の容積効率を向上して利便性を向上することができる。
冷凍室6の背後には背面板6bで仕切られる冷気通路31が設けられる。冷蔵室2の背後には冷蔵室ダンパ20を介して冷気通路31と連通する冷気通路32が設けられる。冷気通路31は仕切板31cにより前部31aと後部31bとに仕切られ、後部31bに冷却器11が配される。冷却器11が冷凍室6の背面側に配されるため、冷却器11の冷熱が仕切板31c、前部31a、背面板6bを介して冷凍室6側へ放出される。このため、冷凍室6が効率よく間接冷却され、冷却効率が向上されるようになっている。
冷凍サイクルの低温側となる冷却器11と冷気通路31を流通する空気とが熱交換して冷気が生成される。冷却器11の下方には冷却器11を除霜する除霜ヒータ33が設けられている。除霜ヒータ33の下方には除霜による水を受けるつゆ受皿63が設けられる。つゆ受皿63にはドレンパイプ64が設けられ、機械室50内に配された蒸発皿(不図示)にドレンパイプ64を介してドレン水が導かれる。
冷気通路31、32内には冷凍室送風機12及び冷蔵室送風機23がそれぞれ配される。詳細を後述するように、冷却器11で生成された冷気は冷凍室送風機12の駆動により冷気通路31の前部31aを流通し、冷凍室6、製氷室4及び温度切替室3に供給される。また、該冷気は冷蔵室送風機23の駆動により、冷気通路32を介して冷蔵室2、チルド室21及び野菜室5に供給される。
冷凍室送風機12は軸流ファンから成り、排気側を前方上方に向けて配置される。これにより、下方の冷却器11で冷却された冷気を冷凍室送風機12の斜め後方から効率よく吸い込むことができる。また、冷気通路31の前部31aに向かって前方上方に冷気を送出し、製氷室4に吐出するとともに上方の冷気通路32に導く。従って、上方へ効率よく冷気を流通させて低騒音化及び省エネルギー化を図ることができる。
冷蔵室送風機23は軸流ファンから成り、軸方向を上下方向に向けて配置される。これにより、上記と同様に、上方へ効率よく冷気を流通させて低騒音化及び省エネルギー化を図ることができる。また、冷蔵室送風機23が高さ方向に低くなり、冷蔵室送風機23と断熱壁7とを正面投影において重なるように同一水平面内に配置することができる。
これにより、使用頻度の高い冷蔵室2の背後に冷蔵室送風機23が配置されず、冷気通路32の奥行を狭くすることができる。即ち、冷気通路32の奥行きは冷蔵室送風機23の吐出側で例えば80mmに形成され、空気流の下流側に向かって徐々に狭くなって例えば12mmに形成されている。この時、冷気通路32の左右方向の幅の合計は冷蔵室送風機23の吐出側付近よりも広く形成される。これにより、冷気通路32の通風面積を確保して冷気流量が維持され、送風効率の低下が防止されている。従って、狭くなった冷気通路32の前方の冷蔵室2の奥行きが増加し、冷蔵室2の容積を広く確保することができる。
尚、断熱壁7を同図に示すよりも上方に設けて冷蔵室2の容積を維持し、温度切替室3や製氷室4の容積を広く確保してもよい。また、冷蔵室送風機23を遠心ファンにより形成してもよい。この時、遠心ファンは吸込み側を下方に向け、吐出側を左右方向に向けて配置され、空気の吐出時または吐出後に空気流を上方に向けるようにするとよい。
また、冷蔵室送風機23が断熱壁7と上下方向で重なる領域に設けられるため、冷凍室送風機12は製氷室4の上部に配される製氷皿62から離れた低い位置に配置される。しかし、冷凍室送風機12の冷気の吐出し方向が前方上方の製氷皿62の方向になっているため、製氷皿62の貯水を効率よく冷却することができる。
冷気通路32の前面側はパネル組品120により覆われる。パネル組品120は発泡樹脂成形品等から成るダクト102の前面に樹脂成形品から成るパネル100が配され、その前面側に高熱伝導性を有する部材101が配される。ダクト102には断熱性の高い発泡ポリスチレン等の発泡樹脂が用いられる。パネル100には加工が容易なPP、PS、ABS等の樹脂が用いられる。部材101にはアルミニウムや耐食性の高いステンレス等の金属が用いられる。
ダクト102はチルド室21に面した下部の略全面を所定の厚みで覆って断熱する断熱部102dを有している。これにより、冷気通路32は冷却器11から冷気が流入する側に断熱部材が配される。冷却器11から冷気通路32に流入した直後の低温の冷気は断熱部102dによって冷熱が断熱される。このため、冷蔵室2内に配されたチルド室21の背面に発生する結露を低減することができる。
冷蔵室2の天井面にはランプカバー109により覆われた照明ランプ110が配される。照明ランプ110の出射光は上方から冷蔵室2内を照明するとともに、部材101の表面で反射して後方から冷蔵室2内を照明する。これにより、冷蔵室2内をより明るくすることができる。ランプカバー109や収納棚41を半透明または透明なガラスや樹脂(ABS、PS、ポリカーボネイト、アクリル等)により形成するとより望ましい。
図4は冷蔵庫1の正面断面図を示している。部材101はパネル100に突設される係合爪100aと取付部材101aによってパネル100の上部に着脱自在に設けられる。従って、部材101を容易に清掃して冷蔵室2内を清潔に維持することができる。
ダクト102はパネル100に突設された係合爪(不図示)によってパネル100に取り付けられる。これにより、ダクト102、パネル100及び部材101が一体化される。パネル組品120はパネル100の背面側周部に設けられた係合爪(不図示)により内箱1bに取り付けられている。取付部材101aにはビスや樹脂製の先端が矢じり状の押しピン等が用いられる。
尚、部材101の下端を境界にしてパネル100、ダクト102を上下に分割し、部材101、パネル100の上部及びダクト102の上部を組品にして上記と同様に着脱自在に形成してもよい。
冷気通路32はダクト102によって下部で分岐した第1、第2分岐路32a、32bが形成される。第1、第2分岐路32a、32bは冷蔵室2の上部で連結部32cにより連結される。冷気通路32の下部にはチルド室21に冷気吐出する吐出口103a、103bがパネル100に開口して設けられる。
第1、第2分岐路32a、32bの上端には冷蔵室2に冷気を吐出する吐出口105a、105bがそれぞれ部材101に開口して設けられる。連結部32cには冷蔵室2の略中央上部に冷気を吐出する吐出口105cが部材101に開口して設けられる。
図5は図4のA−A断面図を示し、第2分岐路32bの断面を示している。第1分岐路32aと第2分岐路32bとは対称に形成される。ダクト102は後方に突出する突起部102a、102bを有し、突起部102a、102bが内箱1bに当接して第2分岐路32bが形成される。
内側の突起部102bは環状に形成され、第1、第2分岐路32a、32b間に空間部111を形成する。外側の突起部102aは第1、第2分岐路32a、32bの側壁を形成し、所定間隔で開口して吐出口104a(図4参照)、104bが設けられる。第1、第2分岐路32a、32bを流通する冷気は吐出口104a、104bから冷蔵室2の側壁に向かって吐出される。吐出口104a、104bを冷気通路32の側端部に配置したので、冷蔵室2内を側端部まで容易に冷却することができる。尚、内箱1bは突起部102aの外側で前方に向かって傾斜した傾斜面1dを有している。
ダクト102の前面側、パネル100及び部材101は突起部102aよりも外側に配され、冷気通路32の周囲に延びて形成されている。ダクト102には第1、第2分岐路32a、32bに面して開口部102eが形成される。パネル100には第1、第2分岐路32a、32bに面して厚みを薄く形成した凹部100bが設けられる。
冷気通路32を流通する冷気の冷熱は凹部100bを介して部材101に伝えられ、部材101を介して冷蔵室2内に放出される。これにより、冷蔵室2の温度分布が均一化される。凹部100bを開口して冷気通路32を流通する冷気が直接部材101に接するようにしてもよい。
また、凹部100bを空間111の前方側へ延びて形成してもよい。これにより、冷気通路32bの冷気の一部が凹部100bを介して空間111の前方に流入し、部材101の中央部から冷熱が放出される。これにより、部材101からより均一に冷熱を放出することができる。この時、空間111の前面に吐出口を設けて部材101の中央から冷気を吐出してもよい。
尚、冷気の冷熱が多い場合は凹部100bを省いて開口部102eの前面側をダクト102により遮蔽し、断熱厚さを調整してもよい。
図6は部材101の側面断面図を示している。部材101の表面には水平に延びる凹部113及び凸部112が形成される。凹部113の内面及び凸部112の上面は上方に面し、部材101に発生する結露水を溜める。結露水は扉2aを開いた際等に温度の高い外気が冷蔵室2に流入し、低温の部材101に接触して発生する。扉101を閉じて冷蔵室2内が冷却されると部材101に保持された結露水は徐々に蒸発する。これにより、冷蔵室2の保湿効果を得ることができる。
また、高熱伝導性を有する部材101を冷蔵室2の開口部から離れた背面にのみ配置しているため、開口部から外気が流入しても部材101に到達するまでに降温される。従って、部材101に発生する結露を低減することができる。
部材101の表面に形成される吐出口114(吐出口105aや空間111の前面の吐出口等)は凹部113の内周面や凸部112の外周面に開口して形成される。吐出口114から吐出される冷気は部材101表面に沿って流通し、部材101に伝えられる冷熱量が増加して冷蔵室2の温度分布をより均一にできる。尚、吐出口114にはダクト102及びパネル100を貫通する通路(不図示)を介して冷気が供給される。これにより、冷蔵室2の背面の全領域において吐出口114を形成して冷気を吐出することができる。
部材表面の凹部113や凸部112は他の形状でもよい。例えば、図7の上面断面図に示すように、部材101に形成した凹部113の側面の内周面に吐出口114が形成される。また、図8の正面図に示すように部材表面に文字や図柄から成るマーク115を突設してもよい。図8のB−B断面図を図9に示すように、マーク115による凸部112の外周面に吐出口114を形成することができる。この時、吐出口114の吐出方向を上下方向や左右方向等の所望の方向に設定することにより、冷蔵室2内の温度分布を調整することができる。
図4において、冷蔵室2内にはチルド室21と隔壁(不図示)によって隔離された自動製氷用のタンク108が配される。タンク108内の水はポンプ(不図示)によってパイプ(不図示)を通り、下方の製氷室4に設けられた製氷装置108aの製氷皿62へ供給される。これにより、製氷皿62に自動的に水を供給して氷が自動的に作られる。
冷蔵室送風機23、冷蔵室ダンパ20及び冷凍室送風機12は上下方向にほぼ並べて配置される。即ち、冷蔵室送風機23、冷蔵室ダンパ20及び冷凍室送風機12は平面投影において重なるように配置されている。これにより、冷蔵庫1の左右方向の幅を狭くできるとともに、冷気通路31、32を短縮して容積効率や送風効率をより向上することができる。
冷凍室6の背後の冷気通路31は冷凍室送風機12の前面を開口し、冷凍室送風機12によって製氷室4に空気が送出される。製氷室4に連通する冷凍室6の下部には冷凍室戻り口22が設けられる。また、冷気通路31から分岐して温度切替室3に冷気を導く導入通風路15が設けられる。
冷気通路31の上部は冷蔵室ダンパ20を介して冷気通路32に連通する。冷蔵室ダンパ20を開いて冷凍室送風機12を駆動すると冷蔵室2及びチルド室21に冷気が供給される。冷蔵室ダンパ20は正面投影において縦断熱壁36と重なるように縦断熱壁36の後方に配される。
温度切替室3の容積を広く確保するため、温度切替室3と製氷室4とを隔離する縦断熱壁36は図中、右側に偏って配置される。冷気通路32は冷蔵室ダンパ20の出口側から左右に分岐して冷蔵室2全体から冷気が吐出されるようになっている。この時、冷蔵室ダンパ20を左右方向の中央に配置すると、左右に分岐する冷気通路32に均一に冷気を流通させることができる。
しかし、温度切替室3の背後に冷気通路31の前部31a(図3参照)や冷蔵室ダンパ20のバッフルを設けると、温度切替室3から冷気通路31内に熱が放出される。冷気通路31を流通する冷気が例えば−23℃に生成される。このため、温度切替室3が該冷気よりも高温(例えば、3℃や8℃や50℃)に制御されていると、熱ロスが大きくなる。
従って、縦断熱壁36の後方に冷蔵室ダンパ20のバッフルや冷気通路31の前部31a(図3参照)を設け、温度切替室3から冷気通路31への熱の放出が防止されている。これにより、冷蔵室ダンパ20を左右方向の中央に近づけるとともに、冷却効率をより向上することができる。
冷蔵室2の背面下部には冷蔵室流出口2bが開口し、野菜室5には野菜室流入口5bが設けられる。冷蔵室流出口2bと野菜室流入口5bとは温度切替室3の背面を通る連結路34により連結され、冷蔵室2と野菜室5が連通している。野菜室5の背面上部には冷気通路31に連通する戻り通風路46(図3参照)が設けられている。
温度切替室3の上部には温度切替室送風機18及びヒータ16が配置される。温度切替室3の右下部には温度切替室吐出ダンパ37が設けられる。温度切替室吐出ダンパ37は導入通風路15上に配され、温度切替室送風機18は導入通風路15の上方に配置される。温度切替室吐出ダンパ37を開いて温度切替室送風機18を駆動すると導入通風路15を介して冷却器11から冷気が温度切替室3に流入する。温度切替室吐出ダンパ37の開閉量によって導入通風路15から温度切替室3に流入する風量が調整される。
温度切替室3の左下部には温度切替室戻りダンパ38が設けられる。温度切替室戻りダンパ38は下方に延びる戻り通風路17を開閉し、温度切替室3内の空気は戻り通風路17を介して冷気通路31に戻るようになっている。
冷却器11は冷媒が流通する冷媒管11aが蛇行して形成され、冷媒管11aの左右端部がエンドプレート11bにより支持されている。冷媒管11aには放熱用の多数のフィン(不図示)が接して設けられている。
温度切替室3から戻り通風路17を流通する空気は冷却器11の上下方向の中間に設けた流出口17aから冷却器11に戻される。また、冷凍室戻り口22を介して冷凍室6から流出する冷気は冷却器11の下部に戻り、野菜室5から流出して戻り通路46を通る冷気は冷却器11の下方に戻る。
従って、各貯蔵室から流出した冷気は冷却器11に分散して戻される。このため、各貯蔵室を循環して戻ってきた水分を含む冷気による霜が一部に集中的に発生せずに、冷却器11全体に分散して発生する。これにより、霜による冷気流れの目詰まりが防止され、冷却器11の冷却性能低下を防止することができる。
また、容積の狭い温度切替室3を流通した冷気が冷却器11の上部で冷却され、容積の広い冷蔵室3、野菜室5及び冷凍室6を流通した冷気が冷却器11の上下方向の全体で冷却される。従って、温度切替室3から流出した冷気が必要以上に冷却器11と熱交換されず、冷却器11の熱交換効率を向上することができる。
また、冷凍室戻り口22を介して冷凍室6から流出した冷気は両側のエンドプレート11bの間に導かれる。野菜室5から流出した冷気は戻り通風路46(図3参照)を介して冷却器11の両側のエンドプレート11bの内側及び外側の左右方向全体に導かれる。
これにより、野菜室5から流出した冷気の熱交換面積が冷凍室6から流出した冷気の熱交換面積よりも大きくなる。従って、冷凍室6から戻る低温の冷気を必要以上に冷却させず、野菜室5から戻る高温の冷気を冷却器11全体で冷却して冷却器11の熱交換効率をより向上することができる。
温度切替室3は冷凍温度に維持される場合があるため、エンドプレート11bには戻り通風路17の流出口17aに対向する位置に切欠き(不図示)が設けられる。これにより、温度切替室3を流出した冷気を両側のエンドプレート11bの間に導いて冷気を分散させることができる。従って、冷却器11の結露を分散して目詰まりをより防止することができる。
冷媒管11aの上部には気液分離器45が接続される。気液分離器45は温度切替室3から離れて製氷室4側の端部に配置される。これにより、温度切替室吐出ダンパ37を温度切替室3の下部に配置しても気液分離器45と干渉しない。その結果、冷蔵室ダンパ20と温度切替室吐出ダンパ37との干渉を回避して縦断熱壁36の後方に冷蔵室ダンパ20を配置することができる。
図10は冷蔵庫1の冷気の流れを示す冷気回路図である。冷凍室6、冷蔵室2及び温度切替室3はそれぞれ並列に配される。製氷室4は冷凍室6と直列に配され、野菜室5は冷蔵室2と直列に配される。冷却器11で生成された冷気は、冷凍室送風機12の駆動により製氷室4に送出される。製氷室4に送出された冷気は製氷室4及び冷凍室6を流通し、冷凍室戻り口22から流出して冷却器11に戻る。これにより、製氷室4及び冷凍室6内が冷却される。
冷凍室送風機12の排気側で分岐した冷気は冷蔵室送風機23の駆動により、冷蔵室ダンパ20を介して冷蔵室送風機23の吸込み側に送られる。冷蔵室送風機23から送出された冷気は冷気通路32内を前後方向では絞られながら左右に広がって流れる。これにより、冷気は急激に流通速度を下げて動圧を静圧に変換され、上方へ流れる。冷気の流通速度が低下することによって送風効率を向上することができる。
冷気通路32を流通する冷気の一部は下部に設けられた吐出口103a、103bからチルド室21に吐出される。吐出口103a、103bから吐出された冷気はチルド室21内のケース107に流入する。冷気通路32に流入した冷気を直ちにチルド室21に供給するため、ケース107内の貯蔵物は冷蔵室2よりも低温に冷却される。
冷気通路32を流通する残りの冷気は左右に分岐した第1、第2分岐路32a、32bを上昇し、吐出口104a、104bから冷蔵室2へ吐出される。また、第1、第2分岐路32a、32bの上部及び連結部32cに設けた吐出口105a〜105cから冷蔵室内に冷気が吐出される。また、冷気通路32を流通する冷気の冷熱が冷気通路32の周囲に延びる部材101に伝えられる。これにより、冷蔵室2が広くても冷蔵室2背面の広い範囲から冷熱が放出され、冷蔵室2の温度分布が均一化される。
連結部32cが設けられるため、第1、第2分岐路32a、32bに分岐した冷気量に差が生じても連結部32cを介して均一化される。従って、冷蔵室2に吐出される冷気量を左右で略同じにして温度分布を均一にすることができる。また、吐出口105cを連結部32cに設けたので、冷蔵室2の略中央上部から冷気が吐出される。従って、吐出口104a、104b、105a、105bから冷蔵室2の端部に冷気が吐出されるとともに吐出口105cから中央部に冷気が吐出される。従って、冷蔵室2の温度分布をより均一にすることができる。
吐出口104a、104bから内箱1bに沿って吐出される冷気は傾斜面1dで斜め前方に流れ、冷気通路32の周囲に延びる部材101によって上下方向に拡散される。これにより、部材101の外周全体から拡散しながら冷蔵室2内に均一に冷気が流れ出す。また、部材101の外周全体に流れだす冷気によって部材101が更に冷却され、部材101から放出される冷熱量を増加させることができる。
冷蔵室2に吐出された冷気は収納棚41や仕切板41a上を前方へ流通し、これらに載置された貯蔵物と熱交換する。そして、扉2aに設けた収納ポケット42内の貯蔵物を冷却して下方に流れる。下方に流通する冷気は冷蔵室流出口2b側の冷蔵室2の側壁とケース107の外側の間を通って冷蔵室流出口2bから連結路34に流入する。
連結路34を流通する冷気は野菜室5に流入する。野菜室5に流入した冷気は野菜室5内を流通し、戻り通風路46を介して冷却器11に戻る。これにより、冷蔵室2及び野菜室5内が冷却され、設定温度になると冷蔵室ダンパ20が閉じられる。
また、冷凍室送風機12の排気側で分岐した冷気は、温度切替室送風機18の駆動により温度切替室吐出ダンパ37を介して温度切替室3に流入する。温度切替室3に流入した冷気は温度切替室3内を流通して温度切替室戻りダンパ38から流出し、戻り通風路17を介して冷却器11に戻る。これにより、温度切替室3内が冷却される。
前述のように、温度切替室3は使用者の操作により室内温度を切り替えることができるようになっている。温度切替室3の動作モードは温度帯に応じてワイン(8℃)、冷蔵(3℃)、チルド(0℃)、ソフト冷凍(−8℃)、冷凍(−15℃)の各冷却モードが設けられる。
これにより、使用者は所望の温度で貯蔵物を冷凍または冷蔵して冷却保存できる。室内温度の切り替えは温度切替室吐出ダンパ37を開く量を可変して行うことができる。尚、例えば冷凍の室内温度から冷蔵の室内温度に切り替える際にヒータ16に通電して昇温してもよい。これにより、迅速に所望の室内温度に切り替えることができる。
また、ヒータ16に通電することにより、温度切替室3の室内温度を貯蔵物を冷却保存する低温側から常温よりも高温の高温側に切り替えることができる。これにより、調理済み加熱食品の一時的な保温や温調理等を行うことができる。
本実施形態によると、冷蔵室2背面の冷気通路32を流通する冷気の冷熱を放出する部材101を冷気通路32の周囲に延びて設けたので、冷気通路32の流路面積を必要な大きさに保って形成するとともに部材101によってより広い範囲から冷熱を冷蔵室2に放出することができる。これにより、冷気の流速の著しい低下を抑制して冷気通路32内を冷気が行き届き、冷熱が冷蔵室2全体に行き届く。従って、冷蔵室2の容積を広くしても温度分布を均一にできる。部材101は冷気通路32の側方に延びて形成しているが、上下に延びて形成してもよい。
更に、部材101は第1、第2分岐路32a、32b間の空間部111の前面も覆うため、より広範囲に冷気の冷熱を放出することができる。従って、冷蔵室2の温度分布をより均一にするとともに、保湿効果を向上することができる。加えて、照明ランプ110の光を反射する面積も増加するため冷蔵室2内をより広範囲に明るくすることができる。
また、部材101が冷蔵室2の開口部から離れた背面に配されるため、部材101に発生する結露を低減することができる。更に、結露水の保持面積を広くとれるため冷蔵室2内に流下する結露水を低減できる。加えて、冷気通路32に流入した直後の低温の冷気は断熱部102dによって冷熱が断熱されるため、冷蔵室2内のチルド室21の背面に発生する結露を低減することができる。
また、冷気通路32が空間111によって第1、第2分岐路32a、32bに分岐するため、冷蔵庫1が大型となって、左右の巾が広くなっても冷気通路32の流路面積を適度に保つことができる。これにより、冷蔵室送風機23からの冷気を充分に冷蔵室2の上部まで送ることができる。また、冷蔵庫2の端部に冷気を送ることができる。
また、冷蔵室2の下方の断熱壁7と冷蔵室送風機23とを正面投影において重なる位置に配置したので、冷蔵室2と冷蔵室送風機23とが接近して配置される。このため、冷蔵室2の容積が大きくても冷蔵室送風機23に近い吐出口と遠い吐出口との間で吐出される冷気流の強さの差が小さくなる。
従って、冷蔵室2の温度分布を更に均一にすることができる。また、冷蔵室2内に冷蔵室送風機23が配置されないため、冷蔵室2の容積を広く確保して冷蔵庫1の容積効率を向上することができる。尚、冷蔵室2の容積を維持して温度切替室3等の他の貯蔵室の容積を広く確保してもよい。
次に、図11は第2実施形態の冷蔵庫を示す正面断面図である。説明の便宜上、前述の図1〜図10に示す第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付している。本実施形態は冷蔵室2の背面の冷気通路32が分岐せずに上方に延び、上部で左右に広がる。その他の部分は第1実施形態と同様である。
ダクト102の背面に突設される突起部102aは中央部に冷気通路32を形成する。突起部102aは冷気通路32の両側方でそれぞれ環状に設けられ、空間部111を形成する。冷気通路32は空間部111の上方で左右に広がり、左右の端部に吐出口104a、104bが形成される。
また、部材101はダクト102の側壁よりも外側を覆い、冷気通路32の周囲に延びて形成される。これにより、第1実施形態と同様に、冷気通路32の流路面積を小さく形成するとともに部材101によって広い範囲から冷熱を冷蔵室2に放出することができる。これにより、冷気の流速の著しい低下を抑制して冷気通路32内を冷気が行き届き、冷熱が冷蔵室2全体に行き届く。従って、冷蔵室2の容積を広くしても温度分布を均一にできる。
吐出口104a、104bは冷蔵室2の上部に設けられるため、吐出口104a、104bから吐出された冷気は自重により流下する。これにより、冷蔵室2内に冷気を行き渡らせることができる。
次に、図12は第3実施形態の冷蔵庫を示す側面断面図である。説明の便宜上、前述の図1〜図10に示す第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付している。本実施形態は冷蔵室送風機23が排気側を後方上方に向けて傾斜して配置されている。その他の部分は第1実施形態と同様である。
本実施形態によると、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、冷却器11で生成された冷気は冷凍室送風機12により冷気通路31の前部31aに導かれ、冷蔵室ダンパ20を介して冷蔵室送風機23の吸気側に導かれる。冷気通路32は冷蔵室送風機23よりも上方で冷蔵室ダンパ20よりも後方に配置される。
このため、冷蔵室送風機23によって前部31aから冷気がスムーズに冷気通路32へ導かれる。従って、冷気流の渦が発生しにくく圧力損失も小さくなり、送風効率を向上して省エネルギー化を図るとともに騒音の発生を抑えることができる。
次に、図13、図14は第4実施形態の冷蔵庫を示す正面図及び右側面断面図である。説明の便宜上、前述の図1〜図10に示す第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付している。本実施形態は第1実施形態に対して冷蔵室送風機23(図3参照)が省かれ、冷凍室送風機12及び冷蔵室ダンパ20の配置が異なっている。その他の部分は第1実施形態と同様である。
冷凍室送風機12は冷蔵庫1本体の右側の端部に配置され、正面投影において断熱壁7と一部が重なり下部が冷凍室6側に延びている。これにより、冷気通路31は冷却器11と冷凍室送風機12との距離が長く、広い空間をとることができる。このため、この空間部分が冷凍室送風機12の吸い込み側の負の圧力室として働き、冷却器11の上部付近において前後方向及び左右方向で冷気流がほぼ均一となる。その結果、冷却器11と熱交換する冷気は前後方向及び左右方向で均一に流通し、冷却器11の熱交換効率が向上する。
また、冷凍室送風機12は製氷室4上部に配される製氷皿62の後方に配置され、正面の製氷皿62に向けて送風する。このため、製氷皿62に対して充分な冷却を行うことができ、製氷を早く完了させることができる。尚、冷凍室送風機12と製氷皿62の位置関係によっては、製氷皿62の方向に向けて冷凍室送風機12を配置してもよい。例えば、冷凍室送風機12を斜め上向きや斜め下向きに配置してもよく、左右方向に少し傾けて配置してもよい。
また、冷気の吐出し方向を少し左右方向の中央よりに向けるように冷凍室送風機12を配置してもよい。これにより、冷蔵室用ダンパ20や温度切替室吐出ダンパ37への送風効率が向上する。
冷蔵室ダンパ20は冷凍室送風機12の左方に隣接し、正面投影において断熱壁7と重なって配置される。これにより、製氷室4の奥行を広く確保して容積効率を向上できるとともに、冷蔵室ダンパ20の下方のスペースを広く確保して冷却器11と冷凍室送風機12との距離を容易に長くすることができる。尚、冷蔵室ダンパ20が断熱壁7の上下方向に離れて近設されていてもよい。
本実施形態によると、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、冷蔵室2の下方の断熱壁7と冷凍室送風機12とを正面投影において重なる位置に配置したので、冷蔵室2と冷凍室送風機12とが接近して配置される。このため、冷蔵室2の容積が大きくても冷凍室送風機12に近い吐出口と遠い吐出口との間で吐出される冷気流の強さの差が小さくなる。
従って、冷蔵室2の温度分布を更に均一にすることができる。また、冷蔵室2内に冷凍室送風機12が配置されないため、冷蔵室2の容積を広く確保して冷蔵庫1の容積効率を向上することができる。
第1〜第4実施形態において、野菜室5の流出口にダンパを設けてもよい。これにより、温度切替室3を高温側から低温側に切り替えた際に、該ダンパを閉じて温度切替室3からの熱風が野菜室5に逆流することを防止できる。また、温度切替室3を高温側から低温側へ切り替える際に冷凍室送風機12が停止されている場合には、冷凍室戻り口22が閉じられるように通路開閉機構(例えば、ダンパ)を設けてもよい。これにより、温度切替室送風機18の駆動によって冷凍室戻り口22から冷凍室6内へ熱風が逆流することを防止できる。