JP5319026B2 - エステル官能性シランの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、エステル基と、エステルのアルコール誘導体部分にケイ素原子を有するシランの製造方法に関する。
エステルのアルコール誘導体部分にケイ素原子を有するエステル官能性シランは、式Iによって表されることが可能であり、該式Iを用いて、エステルのどの部分が"アルコール誘導体部分"と呼ばれ、どの部分が"カルボン酸誘導体部分"と呼ばれるのかが示される:
Figure 0005319026
3のいずれも加水分解可能ではない場合、それらは構造HO−R2−SiR3 3のアルコールと構造R1−C(=O)−OH又はカルボン酸の誘導体(例えば、エステル、酸無水物、酸アジド;一般構造式:R1−C(=O)−Y;−Y=−OH、−Oアルキル、−Oアリール、−Oアシル、−N3、−Cl等)との反応によって製造されることができる:
Figure 0005319026
H−Yは、必要ならば、補助塩基によって捕捉されることができる。少なくとも基R3の1つが加水分解可能である場合に、構造HO−R2−SiR3 3のアルコールが、1当量のH−R3の脱離下でそれ自体と縮合して、シラ−オキサ環又はそのオリゴマーが生じる。それゆえ、反応1で示した反応経路は、係るシランに残念ながら用いることはできない。
代替的に、これらのエステル官能性シランのいくつかは、構造R1−C(=O)−O−CH=CH2又は構造R1−C(=O)−O−R'−CH=CH2のエステルをヒドロシリル化によって、少なくとも1つのSi−H結合を有するシランと結合させる(反応2)ことによって製造されることができる。しかしながら、この方法は、Si原子とエステル官能基の間に少なくとも2つのC原子を有するエステル官能性シランに制限されている;ヒドロシリル化は、二重結合に不十分なレギオ選択性を頻繁に示し、かつヒドロシリル化を引き起こす触媒はまた、副反応としてのC(O)O−C結合の開裂を、なかでも、アリルエステルとの反応に際して頻繁に引き起こす。
係るシランを製造するための3つ目の利用可能な反応タイプの場合に、カルボン酸の塩、カルボキシレートが、Si結合した炭化水素基に脱離基"X"を有するシランと反応させられる:
Figure 0005319026
この反応経路は、最初の2つの経路の欠点を有さない。そのため、例えば、加水分解可能な基R3又は炭素原子を1つだけR2中に有するシランにも用いることができる。とは言っても、この経路の場合には、塩[Ma+]X- aが明らかに生じる。塩を分離するための水系後処理は、生成物が加水分解感受性ではない場合にのみ可能であるが、このことは、しかし、そのようにして製造されたシランが、基R3の1つ又は複数において、有機官能性シリコーンの製造のための又は湿式架橋のための該シランの利用を可能にする反応性を示すことになる場合に一般に当てはめられる。塩の非水系分離には、遠心工程又は濾過工程が必要とされる。係る方法は、例えば、WO2007063011に又はMonatshefte fuer Chemie(2003)第134巻の第1081頁〜第1092頁に記載されている。塩は煩雑に後洗浄されなければならず、かつ後洗浄するにも関わらず、塩の中には生成物残分が頻繁に留まり、そうして失われる。濾過後、濾液は分別蒸留されることができる。濾過工程を省き、かつ塩を直接に蒸留した場合、塩は、蒸留の過程で蒸留器中でますます乾燥し、蒸留器表面に固着し、混合、ひいては蒸留の分離性能がますます悪化し、かつ、これは局所的な過熱、ひいては発熱分解反応の誘発のリスクを頻繁に招く。塩は蒸留を通じて蒸留器中で固く凝固し、かつ、あとで除去できても非常に困難を伴う。さらになお、未反応のカルボキシレートが、事前に濾過しなかった蒸留に際して、不所望の副反応を、R1、R2又はR3が感受性基を含有する場合には誘発する可能性がある。溶媒が反応に際して又は塩の後洗浄のために使用された場合には、まず溶媒が時間を掛けて留去されなければならず、その後に生成物が取得されることができる。所望されているのは、濾過工程なしに直接に塩の蒸留を可能にする方法(その際、可能な限り、生成物損失は、式Iのシランが塩に付着し続ける(一般に濾過に当てはめられる)ことによって発生するべきではない)、又は実際の生成物蒸留前の溶媒の面倒な留去を回避する方法、又は最良の場合には双方を成し遂げる方法である。
本発明の対象は、
一般式II
[R1−C(=O)−O]a[Ma+] (II)
のカルボン酸の少なくとも1種の塩を、
一般式III
X−R2−SiR3 3 (III)
の少なくとも1種のシランと反応させることによって、一般式I
1−C(=O)−O−R2−SiR3 3 (I)
のシランを製造する方法であって、
その際、該方法は、少なくとも1つの蒸留処理工程を有し、ここで、留出物は、一般式Iの少なくとも1種のシランを含有し、かつ少なくとも1種の高沸点溶媒HS−LMが存在しており、
その際、HS−LMは、蒸留処理工程が実施される圧力で測定して、一般式Iのシランより高い沸点を有し、
かつ、式中、
Xは、カルボキシレートによって置換可能である脱離基であり、
1は、置換されていない又は1つ若しくはそれより多い基Qで置換された、1つ若しくはそれより多いヘテロ原子によって中断されていてよい、一価のC1〜C18炭化水素基、又は水素原子であり、
2は、置換されていない又は1つ若しくはそれより多い基Qで置換された、1つ若しくはそれより多いヘテロ原子によって中断されていてよい、二価のC1〜C18炭化水素基であり、
3は、水素、置換されていない又は1つ若しくはそれより多い基Qで置換された、1つ若しくはそれより多いヘテロ原子によって中断されていてよい、一価のC1〜C18炭化水素基、C1〜C18炭化水素オキシ基、Si1〜Si4シラン基又はSi1〜Si4シロキシ基であり、
a+は、a価の正に耐電したカチオンであり、かつ
aは、1以上の整数である。
該方法によって、反応3は、一般式Iのシラン(反応生成物)の蒸留回収前に、濾過するか若しくは溶媒を留去する必要なしに、又は双方を行う必要なしに行われることができる。
高沸点溶媒HS−LMは、一般式Iのシランの蒸留分離に際して存在しており、かつ、蒸留処理工程の前及び/又は間に添加されることができる。
一般式IIの化合物のカルボキシレート基によって置換可能な脱離基Xは、好ましくは、ハロゲン原子、アルキルスルフェート基、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基、又はアゾジカルボキシレート上のアルコールの反応生成物、有利には塩素原子、臭素原子又はヨウ素元素、メタンスルホネート基、p−トルエンスルホネート基、p−クロロスルホネート基又はベンゼンスルホネート基、特に有利には塩素原子である。Xは、好ましくは、R2内の炭素原子に、有利にはCH2単位に結合している。
1、R2及びR3は、互いに無関係に、1つ若しくはそれより多いヘテロ原子を有してよく、ヘテロ原子によって中断されていてよく、ヘテロ原子含有基Qによって置換されていてよく、非環状若しくは環状若しくはオリゴ環状であってよく、又は非環状若しくは環状若しくはオリゴ環状の基を有してよく、飽和していてよく又はオレフィン系若しくはアルキン系若しくは芳香族系不飽和を有してよく、又は直鎖状若しくは分枝鎖状若しくは互いに結合されていてよい。
1は、好ましくは、炭素原子によって基C(=O)に結合されているか、又は好ましくは水素原子である。R1は、好ましくは、炭素原子1〜12個、有利には1〜8個、特に有利には1〜6個を有するか、又は水素原子である。R1は、好ましくは、ヘテロ原子0〜3個、有利には0個又は1個を有し、特に有利にはヘテロ原子を有さない。R1は、好ましくは、置換基0〜3個、有利には0個又は1個を有し、特に有利には置換基を有さない。好ましくは、R1は、
Figure 0005319026
を表す。
2は、好ましくは、炭素原子によってケイ素原子に結合されている。R2は、好ましくは、炭素原子によって、有利にはCH2単位によって基Xに結合されている。R2は、好ましくは、炭素原子1〜12個、有利には1〜8個、特に有利には1〜4個を有する。R2は、好ましくは、ヘテロ原子0〜3個、有利には0個又は1個を有し、特に有利にはヘテロ原子を有さない。R2は、好ましくは、置換基Q0〜3個、有利には0個又は1個を有し、特に有利には置換基を有さない。好ましくは、R2は、基−CH2−、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2−、−CH−o−フェニレン−、−CH2−m−フェニレン−又は−CH2−p−フェニレン−、有利には基−CH2−又は−CH2CH2CH2−、特に有利には−CH2−を表す。
3は、好ましくは、C1〜C12炭化水素基、C1〜C12炭化水素オキシ基又はSi1〜Si4シロキシ基、有利にはC1〜C6アルキル基、フェニル基又はC1〜C6アルコキシ基、特に有利にはメチル基、メトキシ基又はエトキシ基を表す。有利には、基R3の少なくとも1つは、炭化水素オキシ基を表す。R3は、好ましくは、置換基Q0〜3個、有利には0個又は1個を有し、特に有利には置換基を有さない。R3が、Si1〜Si4シラン基又はSi1〜Si4シロキシ基を表す場合、該基中のケイ素原子は、好ましくは、場合により基Q若しくはXを有してよいC1〜C12炭化水素基、水素又はC1〜C12炭化水素オキシ基によって置換されており、有利には、場合によりXを有するC1〜C6アルキル基によって、フェニル基若しくはC1〜C6アルコキシ基によって、特に有利には、場合により基Xを有するメチル基若しくは場合により末端位に基Xを有するプロピレン基、又はメトキシ基若しくはエトキシ基によって置換されている。
a+は、好ましくは、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はオニウムイオン、例えば、場合によりアルキル化、アリール化若しくは置換されたアンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、アミジニウムイオン若しくはグアニジニウムイオン、有利にはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、場合によりアルキル化、アリール化若しくは置換されたアンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、アミジニウムイオン若しくはグアニジニウムイオン、特に有利にはナトリウムイオン、カリウムイオン、場合によりアルキル化、アリール化若しくは置換されたアンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、アミジニウムイオン若しくはグアニジニウムイオンである。
a+が、場合によりアルキル化、アリール化若しくは置換されたアンモニウムイオンである場合、アンモニウムカルボキシレートは、好ましくは、一般式IIIのシランとの反応の前若しくは間に、構造R1−C(=O)−OHのカルボン酸とアンモニア若しくはアミンとの反応によって作製される。
aは、好ましくは、1〜4、有利には1〜2、殊に1である。
Qは、それがsp3混成炭素原子に結合されている場合には、炭化水素オキシ基、アシルオキシ基、炭化水素カルボニル基、カルボニル基、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素スルフィド基、アシルスルフィド基、シアノ基又はニトロ基から選択され、
かつ、それがsp2混成炭素原子又はsp混成炭素原子に結合されている場合には、炭化水素オキシ基、アシルオキシ基、炭化水素カルボニル基、カルボニル基、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素スルフィド基、アシルスルフィド基、シアノ基又はニトロ基から選択されるか、又は上で定義したようなXの意味から選択される。
好ましくは、一般式IIのカルボン酸塩は、10000ppm未満、有利には1000ppm未満、特に有利には100ppm未満の含水量を有する。好ましくは、一般式IIのカルボン酸塩は、10%未満、有利には1%未満、特に有利には0.1%未満の含有率の遊離カルボン酸を有する。好ましくは、一般式IIのカルボン酸塩は、10%未満、有利には1%未満、特に有利には0.1%未満の含有率の塩基性不純物、例えばアルカリ金属水酸化物若しくはアルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属酸化物若しくはアルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属炭酸塩若しくはアルカリ土類金属炭酸塩又はアルカリ金属炭酸水素塩若しくはアルカリ土類金属炭酸水素塩を有する。カルボン酸塩は、本発明による方法における使用中若しくは使用前に、例えば、水を連行する溶媒と共沸させることによって、加熱することによって、真空を作ることによって、乾燥剤により貯蔵乾燥させることによって、乾燥したガス流若しくは流体流によって、又はこれらの方法の組合せによって乾燥させられることができる。
有利には、該方法において、まさに一般式IIIのシランが用いられる。ここで、"まさに一般式IIIのシラン"との用語は、一般式IIIのシランの純度により定義される。好ましくは、一般式IIIのシランの純度は、該方法において存在する全ての一般式IIIのシランを基準として質量%で、80%を上回り、有利には90%を上回り、特に有利には97%を上回る。しかし、一般式IIIの複数種のシランより成る混合物も用いられることができる。有利には、該方法において、正確に一般式IIのカルボン酸塩が用いられる。ここで、"正確に一般式IIのカルボン酸塩"との用語は、一般式IIのカルボン酸塩の純度により定義される。好ましくは、一般式IIのカルボン酸塩の純度は、該方法において存在する一般式IIのカルボン酸塩+そのカルボン酸誘導体を基準として80%を上回り、有利には90%を上回り、特に有利には97%を上回る(質量%)。しかし、一般式IIの複数種のカルボン酸塩より成る混合物も用いられることができる。
一般式IIIのシランにて若しくは一般式IIのカルボン酸塩にて、異性体、例えば構造異性体若しくは配置異性体が発生する場合に、異性体の1つ又はそれより多くが純度計算に際して不純物として考慮されるか否かは、反応生成物の意図した使用にそれらが及ぼす影響に依存する。
該方法は、好ましくは、触媒の存在下で実施される。例えば触媒は、殊に、使用される溶媒又は溶媒混合物が、20℃で混合試験に際して、水と溶解度ギャップを有する程度に、すなわち、溶媒に対する水の、それらが完全に均一には混和性でない量比を有する程度に無極性である場合には相間移動触媒であってよい。
一般式IIのカルボン酸塩を有するようなカルボキシレートイオンの反応を引き起こすのに適している相間移動触媒は、例えば−そのアニオン以外に−炭化水素基、好ましくはC1〜C40炭化水素基を持つカチオンを有する塩である。該触媒のカチオンが複数種の炭化水素基を有する場合、好ましくは、これらの基の少なくとも1つは、C2〜C40炭化水素基であり、有利には、これらの基の少なくとも1つは、C4〜C40炭化水素基であり、特に有利には、これらの基の2つ、3つ、4つ又はそれより多くはC4〜C40炭化水素基である。
該触媒のカチオンは、好ましくは、テトラ(C1〜C40−アルキル)アンモニウムイオン、ベンジルトリ(C1〜C40−アルキル)アンモニウムイオン、(C1〜C40−アルキル)ピリジニウムイオン、テトラ(C1〜C40−アルキル)グアニジニウムイオン、ヘキサ(C1〜C40−アルキル)グアニジニウムイオン、テトラ(C1〜C40−アルキル)ホスホニウムイオン、ベンジルトリ(C1〜C40−アルキル)ホスホニウムイオン又はトリフェニル(C1〜C40−アルキル)ホスホニウムイオン並びにベンジルトリフェニルホスホニウムイオンであり、その際、C1〜C40−アルキル鎖は全体で、互いに無関係に、構造的に同じであるか又は異なっていてよく、かつ、カチオンの個々のC1〜C40−アルキル鎖は、構造的に一様であるか又は複数種の構造的に異なるアルキル鎖の混合物であってよい。例は、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラヘキシルアンモニウムイオン、テトラオクチルアンモニウムイオン、トリメチルテトラデシルアンモニウムイオン、トリブチルメチルアンモニウムイオン、トリブチルヘキサデシルアンモニウムイオン、トリオクチルメチルアンモニウムイオン、トリオクチルプロピルアンモニウムイオン、ジメチルジオクタデシルアンモニウムイオン、ベンジルトリメチルアンモニウムイオン、ベンジルトリエチルアンモニウムイオン、ベンジルトリブチルアンモニウムイオン、ベンジルジメチルドデシルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジニウムイオン、ヘキサエチルグアニジニウムイオン、テトラブチルホスホニウムイオン、テトラオクチルホスホニウムイオン、トリ(イソブチル)メチルホスホニウムイオン、トリブチルテトラデシルホスホニウムイオン、トリブチルヘキサデシルホスホニウムイオン、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムイオン、トリオクチルエチルホスホニウムイオン、ベンジルトリブチルホスホニウムイオン及びトリフェニルメチルホスホニウムイオンである。
該触媒のアニオンは、好ましくは、ハロゲン化物イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、アルキル硫酸イオン、アルカンスルホン酸イオン、芳香族スルホン酸イオン、カルボキシレートイオン、炭酸水素イオン、カーボネートイオン又は水酸化物イオン、アリールオキシドイオン又はアルコキシドイオン、有利にはフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、メチル硫酸イオン、ラウリル硫酸イオン、メタンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、ギ酸イオン、酢酸イオン、安息香酸イオン、炭酸水素イオン、炭酸イオン又は水酸化物イオン、特に有利には、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸水素イオン又は酢酸イオンである。
相間移動触媒は、酸、例えば構造R1−C(=O)−OHのカルボン酸を塩基と、相応する酸−塩基塩が形成されるように反応させることによって、現場でも作製されることができ、その際、塩基に適合する、ここで形成されるブレンステッド酸が、相間移動触媒のカチオンについて上で述べた条件を満たす;適した塩基は、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリオクチルアミン、トリブチルアミン、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ヘキシルアミン、テトラメチルグアニジンである。さらになお、相間移動触媒は、一般式IIIのシラン中の基X−R2−と反応することができるアミン、ホスフィン又はスルフィドを使用し、Xの置換によって、あとで相間移動触媒として作用することができる相応するアンモニウムイオン、ホスホニウムイオン又はスルホニウムイオンを形成させることによって、現場で作製されることができる。相間移動触媒の現場での後者の作製法においては、任意に、一般式IIIのシランとしての他のアルキル化剤も用いられることができる。
前で示した相間移動触媒は、[Ma+]と相間移動触媒の1種又は複数種のカチオンとの交換を引き起こすことで、結果生じる、カチオンとして相間移動触媒のカチオンを有する新しいカルボン酸塩が反応種を表す;この新しい塩は、一般に、初めに使用されたカルボン酸塩より良好に反応混合物中での溶解性を示す。
相間移動触媒として、クラウンエーテル、クリプタンド又はコロナンド、例えば18−クラウン−6又は15−クラウン−4も使用されることができる。これらは、有利には、カチオンとしてアルカリ金属又はアルカリ土類金属、殊にアルカリ金属を有する一般式IIのカルボン酸塩と組み合わせて使用される。これらの相間移動触媒は、金属と、錯体、例えば1:1錯体又は1:2錯体を形成することができ、該錯体は、カルボキシレートイオンと一緒に改善された溶解性を示し、そのため反応が促進される。
有利な相間移動触媒は、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、トリブチルメチルアンモニウムクロリド、メチルトリ(C8〜C10−アルキル)アンモニウムクロリド、ジメチルジ(C16〜C18−アルキル)アンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムクロリド、ヘキサエチルグアニジニウムクロリド及びヘキサエチルグアニジニウムブロミドである。相間移動触媒は、例えば、商品名Cyphos(R)(Cytec社)、Aliquat(R)(Cognis社)、Arquad(R)(Akzo Nobel社)又はPraepagen(R)(Clariant社)のもとに入手可能であり、例えばCyphos(R)IL164、Cyphos(R)IL163、Cyphos(R)IL101、Aliquat(R)100、Aliquat(R)134、Aliquat(R)336、Aliquat(R)175、Aliquat(R)HTA−1、Arquad(R)2HT−75又はPraepagen(R)WKの型が入手可能である。
触媒は、例えば、一般式IIIのシラン中の基Xのための活性化剤であってよい。好ましくは、これに関して、ヨウ化物又は臭化物の塩、特に有利にはヨウ化物の塩、例えば臭化リチウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化カリウム又はヨウ化カリウムが使用される。これらの塩は、基Xを臭素原子又はヨウ素原子で置き換えることができ、そうしてケイ素原子上で結果生じる構造Br−R2−の(ブロモ)アルキル基若しくは結果生じる構造I−R2−の(ヨードアルキル)基が、一般式IIのカルボン酸塩に含有されているようなカルボキシレートイオンに対する特に高い反応性を有する。
触媒は、一般式IIIのシランの使用された物質量を基準として、好ましくは、0.01〜30mol%、有利には0.1〜10mol%、殊に0.5〜5mol%の量で使用される。一般式IIIの複数種のシランが用いられる場合、これらの範囲は、一般式IIIの全ての使用されたシランの物質量の合計に基づいている。好ましくは、触媒は、10%未満、有利には1%未満、特に有利には0.1%未満の含水率を有する。触媒は、本発明による方法における使用の間若しくは使用の前に、例えば、水を連行する溶媒と共沸させることによって、加熱することによって、真空を作ることによって、乾燥剤により貯蔵乾燥させることによって、乾燥したガス流若しくは流体流によって、又はこれらの方法の組合せによって乾燥させられることができる。
触媒は、単独で又は2種、3種若しくは複数種の触媒より成る混合物として用いられることができる。触媒は、離散物質として又は溶液として、例えば、水、アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパン−2−オール、炭化水素、エーテル、エステル中で用いられることができる。触媒が場合により溶解されている溶媒は、本発明による方法の実施の前、間又は後に、例えば蒸留によって除去されることができる。溶媒は、好ましくは、本発明による方法の実施前に、それが反応を妨げる場合、例えば、相間移動触媒の溶媒が水を含有し、かつ、一般式IIIのシランが加水分解可能な基R3を有する場合か、又は相間移動触媒の溶媒が、一般式Iのシランと似ている沸点を有する場合、すなわち、殊に、その沸点が、蒸留処理工程が行われる圧力で測定して、一般式Iのシランの沸点より40K未満上回るか若しくは下回る場合には除去される。
好ましくは、使用された溶媒は、単純な蒸留分離が可能となるほど一般式Iのシランの沸点とは著しく逸れる沸点を有する。
該方法に際して用いられることができる溶媒若しくは溶媒混合物は、上述の蒸留処理工程(その際、留出物は、一般式Iの少なくとも1種のシランを含有する)が実施される圧力で測定して、一般式Iのシランより高い沸点を有する(以下では"沸点条件"と呼ぶ)少なくとも1種の高沸点溶媒"HS−LM"を含有するか若しくは有することを特徴としている。好ましくは、この基準に適合する少なくとも1種の溶媒成分は、上述の蒸留処理工程が実施される圧力で測定して、一般式Iのシランの沸点より少なくとも10K高い、有利には少なくとも20K高い、特に有利には少なくとも30K高い沸点を有する。HS−LMの条件を満たす複数種の溶媒が混合物中に存在する場合、そこから、式Iのシランより10K未満高い沸点を有する全てのHS−LMの合計の割合は、好ましくは10%未満、有利には5%未満、特に有利には1%未満であり;一般式Iのシランより20K未満高い沸点を有する全てのHS−LMの合計の割合は、好ましくは20%未満、有利には10%未満、特に有利には2%未満であり;一般式Iのシランより30K未満高い沸点を有する全てのHS−LMの合計での割合は、好ましくは40%未満、有利には20%未満、特に有利には5%未満であり、これらは、使用された全てのHS−LMの合計を基準として、そのつど質量%で記載され、その際、沸点は、上述の蒸留処理工程が行われる圧力で測定される。方法において使用された全ての溶媒の合計を質量%において基準とした、HS−LMの基準に適合する溶媒の割合は、方法において、好ましくは少なくとも20%、有利には少なくとも50%、特に有利には少なくとも80%である。好ましくは、方法に際して、一般式Iのシランより10K未満高い沸点を有する溶媒、有利には一般式Iのシランより20K未満高い沸点を有する溶媒、特に有利には一般式Iのシランより30K未満高い沸点を有する溶媒は使用されず、その際、沸点は、上述の蒸留処理工程が行われる圧力で測定される。その沸点が不所望にも一般式Iのシランの沸点付近にある成分の不所望にも高い割合を溶媒混合物が含有する場合、溶媒混合物は使用前に初めにストリッピングしてよく、すなわち、低沸点のカットが分離され、かつ、より高沸点のカット又は残留塔底物(HS−LMから成るか又はHS−LMを含有する)が溶媒として本発明による方法において使用される。
使用された溶媒、殊に、HS−LMの沸点条件を満たす溶媒は、好ましくは、反応及び蒸留処理工程の条件下で、関与した反応物、触媒、生成物及び場合により更なる添加物に対して不活性であるか、又は反応物によって若しくは任意に他の成分によって不活性化合物に変えられる;有利には、それらは不活性である。
溶媒として(沸点条件を満たす場合は、例えばHS−LMとして)好ましくは用いられることができる不活性の化合物クラスの例は、飽和若しくはオレフィン系若しくは芳香族系不飽和の、直鎖状若しくは分枝鎖状の、非環状若しくは環状若しくはオリゴ環状若しくは環状の基を有する炭化水素、エーテル、カルボン酸エステル、アミド、例えばカルボン酸アミド若しくはリン酸アミド、カルバメート、スルホキシド、スルホン、尿素、ラクトン、ラクタム、N−アルキルラクタム、イオン性溶媒、アルキル末端若しくはアリール末端のシリコーン油、例えばトリメチルシリル末端のシリコーン油である;上記の溶媒の中で有利なのは、直鎖状若しくは分枝鎖状の、非環状若しくは環状の、飽和若しくは芳香族系不飽和の炭化水素、エーテル、カルボン酸エステル、アミド、スルホキシド、スルホン、尿素、イオン性溶媒又はアルキル末端若しくはアリール末端のシリコーン油である。特に有利なのは、直鎖状若しくは分枝鎖状の、非環状若しくは環状の、飽和若しくは芳香族系不飽和の炭化水素又はアルキルシリル末端シリコーン油である。(沸点条件を満たす場合は、例えばHS−LMとして)用いられることができる有利な溶媒の例は、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、ヘネイコサン、ドコサン、トリコサン、テトラコサン、ペンタコサン、ヘキサコサン、ヘプタコサン、オクタコサン、ノナコサン、トリアコンタンの異性体、殊にn−異性体、C31〜C100−炭化水素、炭化水素混合物、例えばパラフィン、Shell社のWhite Spirit−、Low Aromatic White Spirit−、High Aromatic White Spirit−、High Flash White Spirit−、Kristalloel−、SBP−、Shellsol(R)−若しくはSarasol(R)級の溶媒(例えばShellsol(R)D40、D43、D60、DSC、D70、D80、D90、D100、D100S、D120、A100、A150、A150ND、TC、TD、OMS、T、TK、TM、B、HT、7 EC、15、15、H、2325、2046、1495;Serasol(R)40、75、85、120;SBP 140/165)、Total社のHydroseal級、Isane級、Ketrul(R)級、Kerdane(R)級、Spirdane(R)級若しくはSolvarex(R)級の溶媒(例えばHydroseal G400、G340H、G3H、G250H、G240H、G232H;Ketrul D100、220、212、211、D85、D80、D75、D70、HT;Spirdane D66、K2、D60L、D60、D40K、D40、HT、D30、L1、D25;Isane IP185、IP175、IP165、IP155、IP130;Solvarex 9、10、10LN)、熱媒油(例えばMarlotherm(R)SH、AVIA社)、可塑剤油(例えばTotal社のExarol(R)−、Plaxene(R)−若しくはPlaxolene(R)級)、ワックス、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ジメチルプロピレン尿素(1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン)、テトラメチル尿素、尿素、α,ω−ビス(トリメチルシリル)末端ポリ(ジメチルシロキサン)、例えばシリコーン油 AK 35、AK 50、AK 100、AK 200、AK 350、AK 1000、AK 10000、AK 12500、AKF 1000、AKF 10000(全てWacker Chemie AG)、ポリ(ジメチルシロキサン−co−メチルフェニルシロキサン)、例えばAP 100、AP 200、AP 1000、AS 100、AR 200(全てWacker Chemie AG)、官能性シリコーン油、例えばWacker L 051 シリコーン油、ADVALON(R)PN 100,FA 33、PS 500(全てWacker Chemie AG)、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジアルキルエーテル、例えばジブチルエーテル、ジオクチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、両方の鎖末端でエーテル末端若しくはエステル末端の又はエーテル末端及びエステル末端混成のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールコポリマー、C4〜C30脂肪酸のエステル又はC4〜C30ジカルボン酸のジエステル、殊C8〜C22脂肪酸又はC8〜C22ジカルボン酸のエステル、例えば、メチル−、エチル−、n−プロピル−、イソプロピル−、n−ブチル−、s−ブチル−、イソブチル−、t−ブチル−、n−ペンチル−、n−ヘキシル−、n−ヘプチル−、n−オクチル−、フェニル−、ベンジルエステル若しくはブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、エイコサン酸、ドコサン酸、コハク酸、アジピン酸若しくはコルク酸のC8〜C22−アルキルエステル、グリセリンのトリエステル、例えばグリセロールトリアセテート若しくはグリセロールトリブチレート、又はフタル酸のジエステル、例えばフタル酸ジブチルエステル、フタル酸ジオクチルエステル、フタル酸ジノニルエステル若しくはフタル酸ジジイソノニルエステルである;上記の溶媒の中で、炭化水素及びシリコーン油が特に有利な溶媒に属する。更なる溶媒は、Directory of Solvents,(B.P.Whim,P.G.Johnson,editors),First Edition 1996,Blackie Academic & Professional(Chapman & Hall,London,Weinheim,New York,Tokyo,Melbourne,Madras),ISBN 0−7514−0245−1に見られる。
使用された溶媒、HS−LMの沸点条件を満たす溶媒も、反応及び蒸留処理工程の条件下で、関与した反応物、触媒、生成物及び場合により更なる添加物に対して不活性である必要は必ずしもない。
不活性ではないものの、それにも関わらず、方法において使用可能であり得る溶媒の例は、アルコール官能基、シラノール官能基又はカルボン酸官能基を有する化合物である。そうして、アルコールは、一般式I若しくは一般式IIIのシラン中の基R3の少なくとも1つが加水分解性基を表す場合、R3を、アルコールに相当するアルコキシ基と交換しながら、例えばシランと反応することができ、その際、R3−Hが放出される。カルボン酸は、例えば、基R3の少なくとも1つがアルコキシ基を表す場合、このアルコキシ基と、相応するカルボン酸エステルとシロキサンを形成しながら反応することができるか、又はそれらは一般式IIのカルボン酸とプロトン移動を行うことができる。シラノール基を有するシリコーン油は、基R3の少なくとも1つが加水分解性基を表す場合、一般式I又は一般式IIIのシランと反応し、かつ相応するシラン末端シリコーン油を形成することができ、その際、R3−Hが放出される。プロトン性化合物が、カルボン酸塩を溶媒和し、かつ反応速度に影響を及ぼし得る;予備試験において、プロトン性溶媒が反応速度に悪影響を及ぼすこと、すなわち、反応を制止することが明らかになると、好ましくは他の溶媒が代わりに用いられる。不活性でない溶媒が用いられる場合、不活性でない溶媒中及び一般式I及びIIIのシラン中の反応性基の数は、好ましくは、例えば上記の反応によって、好ましくは架橋が起こらないように調節される。不活性でない溶媒の反応によって、これらの溶媒の沸点は変わり得るので、場合により、HS−LMの沸点条件を満たす溶媒を現場で調製してよい。不活性でない溶媒は、方法において発生する他の成分との反応によって、場合により不活性溶媒に変えられることができる。例えば、アルコール官能基又はシラノール官能基を有する溶媒は、一般式I又はIIIのシランによって、これらが加水分解性基R3を有する場合にシリル化されることができ(一般に、R3−Hの脱離下で)、そのため溶媒中のシリル化されたアルコール官能基又はシラノール官能基は反応条件下で不活性である。溶媒中、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレングリコール−co−プロピレングリコール)、モノアルキル化若しくはモノエステル化されたグリコール又はオリゴエチレングリコール(例えばBrij 35、52、56、72、76、92 V、93、96 V、97、98、78 P、58、700)又はシラノール官能性シリコーン油中での官能基の濃度が少ない場合、係る溶媒との加水分解可能な基R3の反応によって失われる一般式I若しくはIIIのシランの規模は僅かであり、そのため許容可能であることができる。一般に、溶媒は再循環されることで、方法においてもともと不活性でない溶媒が不活性溶媒に変えられた場合、そのように作製された再循環された溶媒は不活性溶媒として用いられることができる。
さらになお、例えば、リン酸のトリエステル、例えばリン酸トリブチル若しくはリン酸トリオクチル、又はホスホン酸のジエステルが、溶媒として、例えばHS−LMとして用いられることができ、その際、これらの溶媒は、反応操作及び蒸留処理工程の適用された条件に応じて、エステル基若しくはアルコキシ基を一般式Iのシランと交換するか、若しくはアルコキシ基を一般式IIIのシランと交換することができる。
用いられた溶媒は、例えば、それらが、触媒、一般式IIのカルボン酸塩、一般式I若しくはIIIのシランの互いの溶解性又は他の用いられた溶媒中での溶解性を高めることによって、相溶化剤としても作用することができる。このために、例えば、直鎖状ポリエーテル、例えばポリエチレングリコール若しくはポリプロピレングリコール又はそれらのコポリマー、一方の鎖末端若しくは両方の鎖末端でエステル末端若しくはエーテル末端のポリエチレングリコール若しくはポリプロピレングリコール、例えばポリエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル若しくは−ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル若しくは−ジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル又はテトラエチレングリコールジメチルエーテルが適切であり得る。一般式IIのカルボン酸塩の溶解性の増大が達成されるべき場合、ここでは、好ましくは、80℃を上回る温度、有利には120℃を上回る温度、特に有利には160℃を上回る温度が用いられる。
用いられた溶媒は、ハロゲン化、例えば塩素化されていてよい。好ましくは、ハロゲン化された溶媒は、出発原料に対して、方法の条件下で反応性ではなく、有利には、ハロゲン化された溶媒のハロゲン官能基は、一般式IIのカルボン酸塩中のカルボキシレートに対して、方法の条件下で反応性でない。好ましくは、全ての用いられた溶媒の合計を基準として、用いられた溶媒の50%未満、有利には20%未満、殊に5%未満の割合がハロゲン化されている。特に有利な実施形態において、ハロゲン化された溶媒は方法において用いられない。
溶媒は、本発明による方法において効果的に使用されることを保証するために、室温で液状である必要はない。そうして、例えば、約70℃の融点を有することができるパラフィンが、それが沸点条件を満たす場合には、例えばHS−LMとして十分使用可能である。より融点の高い溶媒も、溶媒として、かつ、それが沸点条件を満たす場合には、HS−LMとしても使用可能であり、それがHS−LMとして使用されるべき場合、それは単に蒸留処理工程の条件下で液化しなければならない。実際的な理由(ラインの溶融及び加熱は行われないか又は軽減される)から、溶媒若しくは溶媒混合物は、好ましくは、30℃を下回る、有利には20℃を下回る、特に有利には10℃を下回る融点若しくは溶融範囲を有する。高融点の溶媒又は溶媒混合物は、例えば、他の溶媒又は溶媒混合物と混合することによって、低融点の溶媒混合物、例えば共融混合物に変えられることができる。
溶媒は単独で用いられることができるか、又は2つ、3つ若しくはそれより多くの溶媒であって、その内の1つ、2つ、3つ若しくはそれより多くがHS−LMに当てはまる沸点条件を満たす溶媒が方法において用いられることができる。方法において任意に、沸点条件を満たさない、すなわち、蒸留処理工程の条件下で一般式Iのシランの沸点と同じ沸点か又は該シランの沸点を下回る沸点を有する溶媒を付加的に添加してもよい。係る溶媒は、蒸留処理工程において、分離性能、沸点の位置及び場合によってはあり得る共沸混合物の発生に応じて、一般式Iのシランを含有するフラクションの前に留出させられるか又は該フラクションと留出させられる。好ましくは、方法において、一般式Iのシランの沸点と同じ沸点か又は該シランの沸点を下回る沸点を有する溶媒が、方法において使用された全ての溶媒の合計を基準として質量%において計算して、80%未満、有利には50%未満、殊に20%未満で用いられ、その際、沸点は、蒸留処理工程(その際、留出物は、一般式Iの少なくとも1種のシランを含有する)が行われる圧力で測定される。有利には、方法において、その沸点が一般式Iのシランの沸点と同じであるか又は該シランの沸点を下回る溶媒、殊に、式Iのシランの沸点と同じ沸点を有する溶媒は用いられず、その際、沸点は、上述の蒸留処理工程が行われる圧力で測定される。
上で定義したHS−LMの沸点条件を満たす少なくとも1種の溶媒は、方法に際して、少なくとも1つの処理工程において、場合によりまた複数の処理工程において、しかしながら遅くとも、下で記載する蒸留処理工程の過程で添加される;方法のより早い時点で添加してもよい。
好ましくは、方法に際して、一般式Iのシランと二成分共沸混合物を形成するか又は一般式Iのシラン及び更なる物質と混合物の形で三元、四元若しくはより高次の共沸混合物を形成する、一般式Iのシランの理論収量を基準として質量%において、10%未満の溶媒、有利には1%未満、特に有利には0.1%未満の溶媒が添加される。特に有利な実施形態において、この種の共沸混合物を形成する溶媒は添加されない。好ましくは、一般式Iのシランより10K未満低い沸点を有する溶媒の合計の割合は、全ての用いられた溶媒の合計を基準として、好ましくは10%より小さく、有利には5%より小さく、特に有利には1%より小さい;一般式Iのシランより20K未満低い沸点を有する溶媒の合計の割合は、全ての用いられた溶媒の合計を基準として、好ましくは20%より小さく、有利には10%より小さく、特に有利には2%より小さい;一般式Iのシランより30K未満低い沸点を有する溶媒の合計の割合は、全ての用いられた溶媒の合計を基準として、40%より小さく、有利には20%より小さく、特に有利には5%より小さく、その際、沸点は、上述の蒸留処理工程が行われる圧力で測定される。好ましくは、方法に際して、一般式Iのシランより10K未満低い沸点を有する溶媒、有利には一般式Iのシランより20K未満低い沸点を有する溶媒、特に有利には一般式Iのシランより30K未満低い沸点を有する溶媒は使用されず、その際、沸点は、上述の蒸留処理工程が行われる圧力で測定される。
溶媒混合物の挙動は、純粋な溶媒の挙動とは異なり得る。同様に、方法の反応成分、例えば一般式I又はIIIのシランの存在は、使用された溶媒の沸騰挙動に影響を及ぼす可能性があり、逆もまた然りである。そうして、例えば、場合によってはあり得る共沸混合物の形成を予測することは困難である。しかしながら、どの溶媒が単独又は混合物の形で高沸点溶媒HS−LMとして適切であり得るかは、当業者であれば適切な予備試験によって簡単に突き止めることができ、例えば、方法において行われる反応(式II+III → I)の混合物に所望の溶媒を混ぜ、そして混合物中での沸騰挙動をテストすることによって行うことができる。このために、まず一般式Iのシランの沸点を、あとで蒸留処理工程が行われるべき圧力で突き止めることが目的に適っている。沸騰挙動のテストのために、少なくとも1種の溶媒がテスト混合物に加えられ、それは、この圧力での純物質としてのその沸点を基準として、一般式Iのシランより高い沸点を有する(すなわち、HS−LMの沸点条件を満たす溶媒)。別記しない限り、圧力として、100mbar、20mbarの圧力又は1mbarの圧力が用いられる。特に有利な溶媒が、蒸留処理工程の圧力で一般式Iのシランより明らかに高い沸点を有する(少なくとも30Kの沸点差)HS−LMとして用いられる場合、一般に予備試験は行わないでよい。
好ましくは、方法において用いられた溶媒は、10000ppm未満の含水量、有利には1000ppm未満の含水量、特に有利には100ppm未満の含水量を有する。用いられた溶媒は、本発明による方法における使用中に又は好ましくは使用前に乾燥させられることができ、例えば、水を連行する他の溶媒と共沸させることによって、溶媒自体が水共留剤として作用する場合には共沸させることによって、初めにストリッピングすることによってか若しくは初めに蒸留することによって、加熱することによって、真空を作ることによって、乾燥剤により貯蔵乾燥させるか若しくは乾燥剤から蒸留することによって、又はこれらの方法の組合せによって行われることができる。
好ましくは、沸点条件を満たす高沸点溶媒HS−LMは合計で、一般式IIIの用いられたシランの合計の質量の20分の1〜20倍、有利には10分の1〜5倍、特に有利には5分の1〜2倍に相当する量で用いられる。
好ましくは、方法に際して、健康に有害なものとして、有毒性、非常に有毒性、発癌性、突然変異誘発性、生殖毒性、悪臭性、刺激性又は腐食性として見なされない溶媒が用いられる。
沸点条件を満たす、方法において用いられた溶媒、殊に高沸点溶媒HS−LMは、出発原料及び生成物及び触媒の1つ以上と及び互いに混和し得えないか、部分的若しくは完全に混和し得うるか、又は互いに溶解し得ないか、部分的若しくは完全に溶解し得る。方法を成し遂げるには、一般に、一般式IIのカルボン酸塩からのカルボキシレートの少なくとも一定割合が、一般式IIIのシランの少なくとも一定割合と、界面又は好ましくは均一相内で互いに接触することで十分である。動的な多相平衡により、出発原料は、個々の時点で一定割合しか互いに接触しない場合でも、徐々に完全に反応することができる。
方法は、好ましくは、不活性雰囲気下で、好ましくは、アルゴン雰囲気若しくは窒素雰囲気下で行われる。該雰囲気は、好ましくは10000ppm未満、有利には1000ppm未満、特に有利には100ppm未満の水を含有する。該雰囲気は、好ましくは10000ppm未満、有利には1000ppm未満、特に有利には100ppm未満の酸素を含有する。
一般式IIのカルボン酸塩と一般式IIIのシランとの反応は、冷却しながら、周囲温度で若しくは高められた温度で、好ましくは少なくとも0℃で、有利には少なくとも30℃で、特に有利には少なくとも50℃で、かつ好ましくはせいぜい300℃で、有利にはせいぜい250℃で、特に有利にはせいぜい200℃で行われることができる。
冷却は、例えば、ジャケット−、攪拌機−若しくは蒸発冷却によって、加熱は、例えば、ジャケット−若しくは攪拌機加熱によって行ってよく、熱伝達は、例えば、電気的に、塩水、油、水、場合により過熱された蒸気を用いてか又はせん断/摩擦によって行ってよい。
反応は、一般に雰囲気圧力±50kPaで行われることができる;好ましくは、反応は、0.1Pa〜100MPaで、有利には100Pa〜10MPaで、特に有利には10kPa〜1MPaで行われることができる。反応は、例えば、バッチ式反応として、不連続的に、連続的に、カスケード的に、滞留時間反応器、滞留時間管又はミキサー(例えば動的若しくは静的)中で行われることができる。
反応は、溶媒なしで又は1種以上の溶媒の存在下で行われることができる。溶媒は、例えば、HS−LMの基準に適合し得る。好ましくは、用いられた溶媒は、10000ppm未満の含水量、有利には1000ppm未満の含水量、特に有利には100ppm未満の含水量を有する。
反応混合物は、例えば対流又は攪拌によって、好ましくは混ぜられる。反応は、単相若しくは多相の混合物中で、例えば単相、二相若しくは三相の混合物、例えば固/液、気/液、液/液、固/液/液の混合物中で行われることができる。そうして、例えば、溶媒が、場合により反応物の溶解分を含有する液相を形成し、触媒/シラン混合物が、一般式IIのカルボン酸塩の溶解分を含有し、かつ場合により溶媒を含有する第二の液相を形成し、かつカルボン酸塩が、第三の−例えば固体の−相を形成し得る。
一般式IIのカルボン酸塩、一般式IIIのシラン、場合により触媒、溶媒、場合により安定化剤の添加の順序は、原則的に任意であり、かつ当業者が適応試験によって見定め得る実際的な観点によって決められる。例えば、全ての成分が装入され、かつ加熱されることができるか、又は1種以上の成分が装入され、かつ、その他の成分が計量供給されることができるか、又は全ての成分が同時に計量供給され、かつ、例えば少量ずつ若しくは連続的に混ぜられる。
有利な第一の実施形態においては、少なくとも1種の一般式IIのカルボン酸塩が装入され、かつ少なくとも1種の一般式IIIのカルボン酸塩が、場合により加熱して計量供給される。
有利な第二の実施形態においては、少なくとも1種の一般式IIIのシランが装入され、かつ少なくとも1種の一般式IIのカルボン酸塩が、場合により加熱して計量供給される。
有利な第三の実施形態においては、第一の若しくは第二の実施形態と同じように行い、かつ付加的に少なくとも1種の触媒を装入する。
有利な第四の実施形態においては、第一の若しくは第二の実施形態と同じように行い、かつ付加的に少なくとも1種の触媒を計量供給する。
有利な第五の実施形態においては、第一、第二、第三の若しくは第四の実施形態と同じように行い、かつ、有利にはHS−LMの基準に適合する少なくとも1種の溶媒を付加的に装入する。有利な第六の実施形態においては、第一、第二、第三の若しくは第四の実施形態と同じように行い、かつ、有利にはHS−LMの基準に適合する少なくとも1種の溶媒を付加的に計量供給する。
好ましくは、反応は、一般式IIIのシランが、一般式IIのカルボン酸塩中のカルボキシレートアニオンの物質量に対して、ほぼ又は正確に化学量論的に用いられるように行われる。一般式IIIのシランが複数の置換可能な脱離基Xを有する場合か、又は複数種の異なる一般式IIIのシランが用いられる場合、この化学量論は、一般に脱離基Xの合計を基に計算される。複数種の異なる一般式IIのカルボン酸塩が用いられる場合、この化学量論は、一般にカルボキシレートイオンの合計を基に計算される。ほぼ化学量論的とは、一般式IIのシラン中の基X対一般式IIIのカルボン酸塩のカルボキシレートイオンの物質量比が、好ましくは、2.0:1.0〜1.0:2.0、有利には1.5:1.0〜1.0:1.5、特に有利には1.2:1.0〜1.0:1.2の比で用いられることを意味する。特に有利な実施形態において、この比は1.0:1.0である。好ましくは、反応は、一般式IIの用いられたカルボン酸塩又は一般式IIの用いられたシランの少なくとも80%、有利には少なくとも90%、殊に少なくとも95%が変換されるように行われ、その際、これらの百分率値は、一般式IIのカルボン酸塩が一般式IIのシランに対して正確には化学量論比で用いられない(すなわち、上記比1.0:1:0ではない)場合、過小量で用いられた出発原料に基づいている。変換は、より長い反応時間、触媒の添加によってか又はより高い温度によって高められることができるか若しくは促進されることができる。
一般式IIIのシランが複数の置換可能な脱離基Xを有する場合か、又は脱離基Xを有する複数の異なる一般式IIIのシランが用いられる場合であり、かつ、その際、脱離基Xが異なる反応性を有する場合、一般式IIのカルボン酸塩はまた、例えば、最も反応性の(全てではない)基Xの合計のみに相当する量で用いられることができ、そうしてシラン中の脱離基Xの目的に合致した部分置換が可能となる。他の実施形態において、全ての脱離基Xの置換は、一般式IIのカルボン酸塩の少なくとも相応する物質量の使用によって達成されることができる。
一般式IIIのカルボン酸塩が複数種の異なるカルボキシレートイオンを有する場合か、又は一般式IIの複数種の異なるカルボン酸塩が用いられる場合であり、かつ、その際、カルボキシレートイオンが異なる反応性を有する場合、一般式IIIのシランは、例えば、その中に含まれた脱離基Xが、最も反応性の(全てではない)カルボキシレートイオンの合計に相当する量でも用いられることができ、そうして最も反応性のカルボキシレートイオンの目的に合致した部分変換が可能となる。他の実施形態において、全てのカルボキシレートイオンの反応は、一般式IIIのシランの少なくとも相応する物質量の使用によって達成されることができる。
反応の間、同時に蒸留を行ってよい。それによって、例えば、低沸点溶媒、易揮発性生成物又は過剰の出発原料が分離されることができる。
反応の前、間又は後に、1種以上の安定化剤を添加してよい。これは、例えば、酸捕捉剤若しくは塩基捕捉剤(すなわち、例えば塩基、酸、緩衝剤、両性界面活性剤)又はラジカル捕捉剤であってよい。ラジカル抑制剤として、例えば、フェノール誘導体、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)又は2,6−ジ−t−ブチルフェノール、チオール、例えばドデシルメルカプタン、又はスルフィド、例えばフェノチアジンを添加してよい。酸素は、例えば、僅かな酸素分圧、例えばp(O2)=1Pa〜1000Paを調整することによって、抑制剤として、場合により更なるラジカル捕捉剤と組み合わせて用いられることができる。
方法は、少なくとも1つの蒸留処理工程を含む。その際、少なくとも1種の一般式Iのシランが、蒸留処理工程の条件下で一般式Iのシランより高い沸点を有する高沸点溶媒HS−LMから部分的又は完全に蒸留により分離される。この場合、部分的とは、HS−LMに対する一般式Iのシランの質量比が、蒸留前の粗混合物中より留出物中の方が高いことを意味する。一般式Iのシランは、HS−LMより容易く留出物に変わる;一般式Iのシランは留出物中に蓄積し、かつHS−LMは塔底物中に蓄積する。好ましくは、蒸留されなかった粗混合物中に存在する一般式Iのシランの量の80%より多くが混合物から留出させられ、有利には90%より多くが、特に有利には95%より多くが留出させられる。高沸点溶媒HS−LMからの一般式Iのシランの完全な分離が、例えば、蒸留中のより高い温度、減少された圧力、効率的なカラム又は一般式Iのシランに対する大きい沸点差を有する(特に有利には、蒸留処理工程の条件下で、一般式Iのシランの沸点を30K上回る)HS−LMを用いることによって達成されることができる。有利な実施形態において、蒸留は、一般式Iのシランが完全に留去され、かつ主としてHS−LMを含有するか又はHS−LMから成る流しか頂部で留出しなくなるまで引き続き行われる。方法は、複数の、例えば2つ又は3つの蒸留処理工程も含んでよい。
一般に、蒸留処理工程は、早ければ、反応に際して一般式IIのカルボン酸塩及び/又は一般式IIIのシランの所望の変換に達している場合に開始される。不完全な反応操作に際しては、蒸留処理工程が行われる間も、さらに反応が継続されてよく、しかしながら、これは、一般式IIIのシランが、一般に蒸留中に反応混合物から蒸留により除去される(これは、一般に塔底物に留まる一般式IIのカルボン酸塩との更なる反応を妨げる)ことによって頻繁に制限される。しかしながら、一般式IIIのシランが一般式Iのシランより高い沸点を有する場合、蒸留処理工程はまた、有利かつ好ましくは、反応と同時に行われるか又は時間的に少なくとも部分的に反応と重なってよい。その際、蒸留処理工程における圧力、温度及び分離性能は、一般式Iのシランと一般式IIIのシランが還流若しくは塔底物中に留まるように調整され、そこで、それはさらに一般式IIのカルボン酸塩と反応することができる。この実施形態は、一般に、基Xが極性であり、かつ/又は高いモル質量を有する場合、例えば、Xが、アルキル基又はアリールスルホネート基、例えばメタンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート、ベンゼンスルホネート、p−トルエンスルホネート、p−クロロベンゼンスルホネートから選択され、かつ同時に基R1が無極性であり、かつ/又は低いモル質量を有する場合、例えば、R1が、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ビニル、1−メチルビニル又は2−メチルビニルから選択される場合に好結果が得られる。
蒸留処理工程は、例えば、バッチ式蒸留として、連続的に、流下膜式蒸留、短行程式蒸留又は薄膜式蒸留として、分離性能を有する塔、例えば不規則充填塔又は多孔板塔で行ってよい。蒸留されるべき粗混合物は、その際、例えば、水、油、場合により過熱蒸気によってか若しくは電気的に加熱され、かつ留出物は、空気−、水若しくは塩水冷却された冷却器で凝縮される。好ましくは、蒸留処理工程は、30〜300℃、有利には40〜260℃、特に有利には60〜220℃の塔底温度若しくは薄膜温度若しくはフィルム温度、及び好ましくは20〜260℃、有利には30〜220℃、特に有利には40〜180℃の塔頂温度(凝縮の少し手前の移行部で測定して)で行われる。好ましくは、蒸留処理工程は、塔底ポット内で若しくは薄膜蒸発の上方で若しくは蒸発フィルムの上方で測定して、2Pa〜500kPa、有利には10Pa〜130kPa、特に有利には20Pa〜90kPaの圧力で行われる。好ましくは、蒸留処理工程は、凝縮の少し手前の留出物の移行部で測定して、1Pa〜400kPa、有利には5Pa〜120kPa、特に有利には10Pa〜80kPaの圧力で行われる。
その際、高沸点溶媒HS−LMは、それが、例えば反応の前、間又は後に添加された場合には、蒸留処理工程の最初からすでに混合物中に存在していてよい;蒸留処理工程の前又は間に添加してもよい。例えば、一般式Iのシランは混合物から留出させられることができ、かつ塔底物はその間に十分な量のHS−LMの添加によって攪拌可能かつ蒸留可能に保たれる。
反応混合物は、例えば、発生するように蒸留処理工程に供されることができる。一般に、反応混合物は、部分的に又は完全に溶解しなかった塩[Ma+]X- aを含有する。溶解した塩[Ma+]X- aは、例えば、温度操作若しくは蒸留が原因となって生じた混合物の濃縮が沈殿を助長する場合、蒸留処理工程が行われる間に析出分離する可能性があり、又は溶解しなかった塩[Ma+]X- aは、例えば、温度操作が溶解性を促進する場合か若しくは高沸点溶媒HS−LM、例えばスルホランが用いられ、かつ無極性生成物が留出されて、蒸留塔底物が蒸留の過程で極性になる場合、蒸留処理工程が行われる間に溶解する可能性がある。類似の溶解/沈殿プロセスが、場合により、蒸留の間に存在していてよい一般式IIのカルボン酸塩に、例えば、それが過剰量で用いられた場合か又はそれが不完全に反応する場合に該当させられることができる。
有利には、一般式IIのカルボン酸塩と一般式IIIのシランとの反応に由来する混合物は、更なる処理工程、例えば濾過又は相分離なしに、蒸留処理工程に直接供給される。しかしながら、蒸留されるべき混合物の相は、任意に、蒸留処理工程が行われる前に分離されることができる。そうして、例えば、固体が、濾過、遠心分離、沈降、傾瀉又は吸引によって分離されることができる。一般に、生ずる固体は、塩[Ma+]X- a、場合により一般式IIのカルボン酸塩又は触媒であってもよい。好ましくは、濾過ケーク、沈降物若しくは遠心分離ペレットは、有利には高沸点溶媒HS−LMで後洗浄され、そして洗浄液は、好ましくは生成物溶液と一緒に蒸留処理工程に供給される。固体が触媒を含有する場合、濾過ケークの後洗浄に際しての溶媒は、例えば、初めの洗浄プロセスにおいて、付着性の反応生成物(これは、好ましくは蒸留処理工程に供給される)のみが溶液として洗い流されるように選択されることができ、かつ更なる洗浄プロセスにおいて、他の適切な溶媒の選択によって、他の塩が目立って溶解せずに触媒は洗い流されることができ、そのようにして洗い流された触媒は、場合により溶媒の分離後に、好ましくは再循環に供給されることができる。複数の液相が、蒸留処理工程の実施前に、場合により分離されることができる。好ましくは、最も高い生成物濃度を有する相が、蒸留処理工程に供給される。触媒が、溶媒、出発原料及び生成物も含有してよい液相を形成することができる。係る触媒相が、好ましくは蒸留物に、又は好ましくは再循環に直接供給されることができるか否かは、その生成物含有量と、触媒相が蒸留処理工程において妨げとなるか否か(これは、当業者であれば予備試験によって簡単に確かめられることができる)に依存する。
溶媒は、触媒、出発原料及び生成物も含有してよい液相を形成することができる。係る溶媒相が、好ましくは蒸留物に、又は好ましくは再循環に直接供給されることができるか否かは、その生成物含有量と、触媒相が蒸留処理工程において妨げとなるか否か(これは、当業者であれば予備試験によって簡単に確かめられることができる)に依存する。溶媒相が高沸点溶媒HS−LMであるか、又はこれが50%を超えてHS−LMから成る場合には、これらの相は、好ましくは蒸留物に供給される。
蒸留の前、間又は後に、1種以上の安定化剤を添加してよい。安定化剤は上に記載しており、これらは、蒸留処理工程においても用いられることができる。
一般式Iの少なくとも1種のシランと場合により更なる化合物を含有する留出物は、例えば、一般式Iの種々のシランの互いの若しくは一般式IIIのシランからの精製又は分離が所望されている場合に再蒸留されることができる。好ましくは、有利には、若しくは特に有利には用いられる蒸留条件は上記したのと同じである。留出物が複数の相、例えば一般式Iのシランと混合しない溶媒相を有する場合、留出物は、例えば、相分離及び場合により再蒸留によってさらに後処理されることができる。
好ましくは、溶媒、触媒及び安定化剤は回収され、かつ再循環に供給され、すなわち、本発明による方法においてか又は他のプロセスにおいて再利用される。これは、蒸留処理工程の前又は後に行われることができる。
一般式Iのシランより低い沸点を有する溶媒が、初期フラクションとして取得されることができる;一般に、それは更なる後処理なしに再び使用可能である。
一般式Iのシランより高い沸点を有する溶媒、つまり、HS−LMが、蒸留処理工程に際して蒸留塔底物として生ずる(か若しくは薄膜式蒸留、流下膜式蒸留又は短行程式蒸留の場合は蒸発しなかった流出物として生ずる)。それらは変化させずに再び用いられることができるか、例えば、濾過、沈降及び吸引、傾瀉、蒸留、押出、初期ストリッピング又は乾燥又は係る方法の組合せによって後処理されることができる。再利用が精製工程を含めて行われか又は含まずに行われるかは、溶媒の不純物プロファイルに依存する。そうして、例えば、高い塩含有量(概して10%を上回る塩)を有する溶媒が、再利用の前に、好ましくは濾過されるか、又は、HS−LMが完全には水と混合しない場合には、場合により、例えば相分離を改善する更なる成分の添加下で、相補的な極性の溶媒で、例えば水(HS−LMに無極性溶媒が選択された場合)で抽出される。抽出工程が求められる場合、HS−LMに、好ましくは、完全には水と混合しない無極性の溶媒、例えば、少なくとも4つの炭素原子を有するエーテル、エステル、炭化水素、クロロ炭化水素−有利には炭化水素−又は係る溶媒の混合物が選択され、かつ抽出溶媒として、好ましくは水が用いられる。触媒が、HS−LMから切り離された相を形成する場合、触媒相は、好ましくは抽出工程から分離され、このことは、触媒固相においては、例えば、濾過、沈降及び吸引又は傾瀉によって行われることができ、かつ液相若しくは溶解された触媒においては、相分離によって行われることができる。HS−LMが水中に留まる場合、これは、例えば、初期ストリッピング、共沸、吸着又は無極性低沸点溶媒(沸点、好ましくは<150℃、有利には<120℃、特に有利には<100℃)による抽出及び相分離によって除去されることができ、その際、低沸点溶媒の残分が、引き続き、初期ストリッピングによって水相から簡単に除去されることができる。
HS−LMが触媒を含有する場合、これは、好ましくはHS−LMと一緒に、同じ物質流中で再循環に供給されることができる。HS−LMが再利用の前に濾過される場合、溶解されなかった触媒が、溶解性に応じてHS−LM又は濾過ケーク中に留まる可能性がある;濾過分離された触媒は、適切な溶媒によって濾過ケークから溶出され、かつ場合により溶媒の分離後に再び用いられることができる。HS−LMが再利用の前に蒸留される場合、触媒は、例えば、塔底物から適切な溶媒で溶出されるか又は濾過され、かつ再び用いられることができる。触媒が、HS−LMから切り離された相を形成する場合、触媒相は簡単に分離されることができ、このことは、触媒固相においては、例えば、濾過、沈降及び吸引又は傾瀉によって行われることができ、かつ液体触媒においては、相分離によって行われることができる。HS−LMが再利用の前に抽出される場合、触媒が、HS−LM又は抽出溶媒中に留まる可能性がある。HS−LM中に留まった触媒は、HS−LMと一緒に再利用されることができる。抽出溶媒中に留まった触媒は、例えば、逆抽出され、かつ場合により逆抽出溶媒の分離後に、例えば、エーテル、エステル、炭化水素、クロロ炭化水素、ケトン又はアルコールによる逆抽出によって再び用いられることができる。
塩が触媒として用いられた場合、これは、方法の過程で、アニオン交換反応若しくはカチオン交換反応することができ、そのため、例えば、相間移動触媒として用いられたアンモニウム塩若しくはホスホニウム塩が、そのアニオンをX-若しくは用いられたカルボキシレートアニオンR1−C(=O)−O-と交換することができるか、又は活性的に用いられた臭化物若しくはヨウ化物がそのカチオンを[Ma+]と交換することができた。触媒関連のイオン(相間移動触媒の場合はカチオン、活性化臭化物若しくはヨウ化物の場合はアニオン)がなお存在している限り、触媒塩は、一般になお活性であり、ひいては方法及び再循環において依然として使用可能である。
前出の式の前出の全ての記号は、それぞれ互いに無関係に各々の意味を有する。別記しない限り、前出の%値は、質量パーセントを意味する。別記しない限り、理論値(%d.Th.)の%における収率値は、用いられたシランの物質量に基づいている。全ての式中において、ケイ素原子は四価である。別記しない限り、全ての圧力値は、絶対圧値である。別記しない限り、"ヘテロ原子"との定義は、炭素及び水素を除く全ての元素を包含する。
実施例
別記しない限り、記載した処理工程は、雰囲気圧力及び室温(20〜25℃)で実施する。
実施例1.(カプリラトメチル)トリメトキシシランの合成
(MeO)3SiCH2Cl+NaOC(O)−n−C715 → (MeO)3SiCH2OC(O)−n−C715+NaCl
ビス(2−エチルヘキシル)フタレート(=HS−LM)775mL、テトラブチルホスホニウムブロミド(=相間移動触媒)11.46g(33.8mmol)及びカプリル酸ナトリウム302.6g(1.82mol)からの混合物を、120〜125℃に加熱した。攪拌しながら、(クロロメチル)トリメトキシシラン282.5g(166mol)を計量供給した。この混合物を、同じ温度でさらに2時間攪拌した。ガスクロマトグラム(FID検出器)が、1:948の出発原料(クロロメチル)トリメトキシシラン対生成物(カプリラトメチル)トリメトキシシラン(=一般式Iのシラン)のピーク面積比を示した。生成物を、ビグリューカラムで、1.1〜1.3mbar(頂部)、122〜134℃(頂部)及び141〜211℃(ポット部)にて蒸留し、生成物(カプリラトメチル)トリメトキシシラン349g(1.25mol、理論値の76%)を、若干黄色がかった液体;純度86%(GC面積%)として得た。溶媒、塩化ナトリウム、過剰のカプリル酸ナトリウム、及びテトラブチルホスホニウムの塩化物塩、臭化物塩及びカプリレート塩の形態における相間移動触媒が塔底物に留まった。生成物を、不規則充填塔(20cm)で、1.8〜2.2mbar(頂部)、129〜131℃(頂部)及び151〜155℃(塔底部)にて再蒸留し、再蒸留後に僅かに黄色の色相が生成物中に残った;93.2%(GC面積%)。
実施例2.(アセトキシメチル)トリメトキシシランの合成
(MeO)3SiCH2Cl+NaOC(O)Me → (MeO)3SiCH2OC(O)Me+NaCl
Hydroseal G 400 H(=HS−LM、Total社の製造元データによれば815kg/m3の密度、304〜349℃の沸騰範囲及び0.01%の芳香族化合物含有率を有するC17〜C21−炭化水素混合物)と酢酸ナトリウム100kg(1.22kmol)からの混合物を、150℃/1mbarで1時間加熱した(乾燥)。加熱を止め、真空を窒素で破り、かつテトラブチルホスホニウムブロミド(=相間移動触媒)7.51kg(22.2mol)を添加し、そして温度を120℃に調整した。攪拌しながら、(クロロメチル)トリメトキシシラン189.2kg(1.11kmol)を2.5時間にわたり計量供給した。この混合物を、同じ温度でさらに4時間攪拌した。冷却された試料が3相に分離した(1つの固相、2つの液相)。固相は、主として塩化ナトリウムと酢酸ナトリウムを含有し、下方の液相は、主として(アセトキシメチル)トリメトキシシラン(=式Iのシラン)とテトラブチルホスホニウムの塩化物塩、臭化物塩及び酢酸塩の形態における相間移動触媒を含有し、かつ上方の液相は、主として溶媒と低い濃度の(アセトキシメチル)トリメトキシシランを含有していた。シラン相のガスクロマトグラム(FID検出器)が、1:5605の出発原料(クロロメチル)トリメトキシシラン対生成物(アセトキシメチル)トリメトキシシランのピーク面積比を示した。生成物を、多孔板塔で蒸留した;10mbar(頂部)、60〜61℃(頂部)及び89〜125℃(ポット部)にて、非常に純粋な中間留分が得られ(171.1kg、純度99.6%;初期留分(10mbar(頂部)、26〜60℃(頂部)、89〜94℃(ポット部);5.3kg、純度94.9%)、かつ後期留分(10 → 1mbar(頂部)、61 → 40℃(頂部)、125〜160℃(ポット部);26.7kg、純度98.1%)を混ぜ合わせ、そして再蒸留(再蒸留:多孔板塔、24mbar(頂部)、79〜81℃(頂部)、100〜110℃(ポット部))し、その際、さらに生成物31.0kgを得た(純度99.1%);GC面積%における純度値。そうして、計202.1kg(1.04kmol、理論値の94%)の生成物(アセトキシメチル)トリメトキシシランを無色の液体として得た。溶媒、塩化ナトリウム、過剰の酢酸ナトリウム、及びテトラブチルホスホニウムの塩化物塩、臭化物塩及び酢酸塩の形態における相間移動触媒が塔底物に留まった。
実施例3.(アセトキシメチル)トリメトキシシランの合成
(MeO)3SiCH2Cl+NaOC(O)Me → (MeO)3SiCH2OC(O)Me+NaCl
実施例2と同じように行い、その際、出発原料として酢酸ナトリウム(312g、3.81mol)及び(クロロメチル)トリメトキシシラン(563g、3.30mol)を、触媒としてテトラブチルホスホニウムブロミド(22.46g、66.2mmol)を、そして溶媒としてメチルラウレート(525mL)を使用した。シランの添加前に、その他の成分を混合し、かつ116℃/4mbarにて初めにストリッピングした(乾燥、留出物16g)。シランを120℃で2時間にわたり計量供給し、この混合物を、120℃でさらに4時間加熱し、次いで不規則充填塔(20cm)で、10〜11mbar(頂部)、74〜76℃(頂部)及び88〜122℃(ポット部)にて蒸留した。留出物中で(アセトキシメチル)トリメトキシシラン608g(31.3mol、理論値の95%);純度98.6%(GC面積%)を得た。すぐあとに、3.1mbar(頂部)、113℃(頂部)及び128℃(ポット部)で溶媒が留出し始めた。少量(約10g)の溶媒を留出させることによって、生成物(アセトキシメチル)トリメトキシシランを完全に塔底物から抜き出すことができた。その他の溶媒、塩化ナトリウム、過剰の酢酸ナトリウム、及び(テトラブチルホスホニウムの臭化物塩、塩化物塩及び酢酸塩の形態における)相間移動触媒が塔底物に留まった。
実施例4.(アセトキシメチル)ジメトキシメチルシランの合成
(MeO)2MeSiCH2Cl+KOC(O)Me → (MeO)2MeSiCH2OC(O)Me+KCl
実施例2と同じように行い、その際、出発原料として酢酸カリウム(405g、4.13mol)及び(クロロメチル)ジメトキシメチルシラン(535g、3.46mol)を、触媒としてテトラブチルホスホニウムブロミド(35.0g、10.3mmol)を、そして溶媒としてジエチレングリコールジブチルエーテル(525mL)を使用した。生成物を、反応後に不規則充填塔(20cm)で、10mbar(頂部)、61〜70℃(頂部)及び80〜119℃(ポット部)にて蒸留した。留出物中で(アセトキシメチル)ジメトキシメチルシラン560g(3.14mol、理論値の91%);純度98.0%(GC面積%)を得た。すぐあとに、10mbar(頂部)、118℃(頂部)及び124℃(ポット部)で溶媒が留出し始めた;約10gの溶媒を留出させることによって、生成物(アセトキシメチル)ジメトキシメチルシランを完全に塔底物から抜き出すことができた。溶媒、塩化ナトリウム、過剰の酢酸カリウム、及び(テトラブチルホスホニウムの臭化物塩、塩化物塩及び酢酸塩の形態における)相間移動触媒が塔底物に留まった。
実施例5.(アセトキシメチル)ジメトキシメチルシランの合成、蒸留残留物の水系後処理と触媒及び高沸点物溶媒の再利用(再循環)
(MeO)2MeSiCH2Cl+NaOC(O)Me → (MeO)2MeSiCH2OC(O)Me+NaCl
実施例5a:反応及び後処理
Hydroseal G 400 H(=HS−LM、C17〜C21−炭化水素混合物、上記参照)10.7Lと酢酸ナトリウム5.97kg(72.8mol)からの混合物を、150℃/2mbarにて1時間加熱した(乾燥)。加熱を止め、真空を窒素で破り、かつテトラブチルホスホニウムブロミド(=相間移動触媒)450g(1.32mol)を添加し、そして温度を120℃に調整した。攪拌しながら、(クロロメチル)ジメトキシメチルシラン(式IIのシラン)10.24kg(66.2mol)を2時間にわたり計量供給した。この混合物を、同じ温度でさらに3時間攪拌した。生成物を、多孔板塔で留出させた;53〜54mbar(頂部)、70〜73℃(頂部)及び100〜125℃(ポット部)にて、留出物中で生成物(アセトキシメチル)ジメトキシメチルシラン(10.8kg、60.6mol、理論値の92%;純度99.5%(GC面積%))を無色の液体として得た。溶媒、塩化ナトリウム、過剰の酢酸ナトリウム、及びテトラブチルホスホニウムの塩化物塩、臭化物塩及び酢酸塩の形態における相間移動触媒が塔底物に留まった(計18.5kg)。
実施例5b:溶媒及び触媒の回収
実施例5aからの蒸留塔底物から963g(1042mL)の試料を、該試料が液体と固体の代表的な一定量を含有するように攪拌しながら取り出した。依然として高温の試料(80℃)に、塩を溶解するのにちょうど十分な量の水(19℃の温度で水633mL)を攪拌しながら混ぜた。その後、混合物の温度は44℃となった。放置すると、混合物は3つの透明な液相に素早く分離することが観察された。上方、Hydrosealに富んだ相(880mL、857g)、黄色;中間、触媒に富んだ相(テトラブチルホスホニウムの塩化物塩、臭化物塩及び酢酸塩の形態における触媒;60mL、95,4g)、暗褐色;下方、溶解したナトリウム塩(塩化物、臭化物、酢酸)を有する水相、黄色。誘導結合プラズマ発光分光分析法(inductively coupled plasma/optical emission spectroscopy、ICP−OES;分析した元素:リン)により、初めに用いていた相間触媒について、取り出した一定量におけるテトラブチルホスホニウムイオンの物質量を基に計算して、4%がHydroseal相に、18%が水相に、そして残分が中間相にあることを突き止めた。中間相の核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance、核:31P、202.5MHz、δ=33.4ppm、溶媒d6−アセトン)によって、触媒は反応後に依然としてテトラブチルホスホニウム塩の形態にあることを確認した。
n−ブタノール300mLを添加し、かつ、この混合物を攪拌した。放置し、相分離した後、ICP−OES試験(元素;リン)に従って、初めに用いていた触媒の14%が上方のHydroseal相(919mL、733g)に、0.4%が下方の水相(720mL、856g)に、そして残分が中間の触媒相(200mL、175g)にあった。n−ブタノールは、主として触媒相にあった;6.8gが水相に、そして0.5gがHydroseal相(1H NMR検査、内部標準:ナフタレン(C66、上方のHydroseal相;d6−アセトン、中間の触媒相)若しくは3−トリメチルシリル−2,2,3,3−d4−プロピオン酸ナトリウム塩(D2O、下方の水相))にあった。
水相を分離し、かつ水相の10分の1を、350ミリバール(頂部)、66〜73℃(頂部)及び75〜80℃(ポット部)を留去することによって、n−ブタノールを水相から蒸留により除去した(二相の留出物、主としてn−ブタノールと水から成る);この共沸蒸留によって、検出限界値の範囲内で、ブタノール−及び炭化水素不含の(1H−NMR検査、D2O)水相が得られた。
上方のHydroseal相と中間の触媒相をいっしょにし、そして含有されたn−ブタノールを蒸留により除去した(300 → 20mbar(頂部)、75℃まで(頂部)若しくは95℃(ポット部)まで)。留まった混合物から、乾燥のために少量の溶媒(約10mLのHydroseal G 400 H)をビグリューカラム(80cm)で留去した(1〜2mbar(頂部)、120〜135℃(頂部)、150〜160℃(ポット部))。
実施例5c:溶媒及び触媒の回収
実施例5bと同じように行ったが、しかしながら、n−ブタノール150mLのみを使用した。すぐあとに、水相は、実施例5aからの用いた塔底物の一定量を基準として、初めに用いていた触媒の0.3%を含有し、Hydroseal相はその12%を含有していた。更なる後処理は、実施例5bと同じように行った。
実施例5d:溶媒及び触媒の回収
実施例5bと同じように行ったが、しかしながら、水系後処理の直後に水相を残りの相から分離し、その後にn−ブタノールによる抽出を実施した。水相のみをn−ブタノールで抽出した;抽出後、水相はなお、実施例5aからの用いた塔底物の一定量を基準として、初めに用いていた触媒の0.4%を含有していた。n−ブタノールは、水相から抽出された触媒を含有していた。抽出された水相の更なる後処理は、実施例5bと同じように行った。Hydroseal相と触媒相を、抽出に由来するn−ブタノール相(触媒含有)といっしょにした;後処理及び再利用は、実施例5eと同じように行った(下記参照)。任意に、再循環工程におけるHydroseal相と触媒相からのn−ブタノールと水の留去は、酢酸ナトリウムの添加後(添加前ではなく、実施例5eを参照)も行うことができる。
実施例5b、c及びdは、本発明による方法の生成物が、唯一の時間を浪費する濾過工程なしに、いかに後処理されることができるのか、溶媒と触媒が、水系後処理によって、いかに回収されることができるのか;そして、その際に生ずる水相から、触媒と溶媒をいかに除くことで、塩負荷分を、後処理された水相の形態で廃棄処理に供給することができるのかを示す。
実施例5e:溶媒及び触媒の再利用(再循環)
実施例5bからの上方のHydroseal相と中間の触媒相に、酢酸ナトリウム180g(2.2mol)を混ぜ、そして懸濁液を、ビグリューカラム(80cm)で、10mLのHydroseal G 400 Hを留去することよって乾燥させた(1〜2mbar(頂部)、120〜135℃(頂部)、150〜160℃(ポット部))。懸濁液を130℃に冷却し、次いで(クロロメチル)ジメトキシメチルシラン308g(2.00mol)を47分間にわたり計量供給した。生成物を、ビグリューカラム(80cm)で留出させた;30mbar(頂部)、71〜73℃(頂部)及び73〜80℃(ポット部)にて、留出物中で生成物(アセトキシメチル)ジメトキシメチルシラン(334g、1.87mol、理論値の94%;純度99.1%(GC面積%))を無色の液体として得た。溶媒、塩化ナトリウム、過剰の酢酸ナトリウム、及びテトラブチルホスホニウムの塩化物塩、臭化物塩及び酢酸塩の形態における相間移動触媒が塔底物に留まった。
実施例5eは、回収された溶媒と回収された触媒が本発明による方法において再利用され得ることを示す。
実施例6.(ホルモキシメチル)トリメトキシシランの合成
(MeO)3SiCH2Cl+NaOC(O)H → (MeO)3SiCH2OC(O)H+NaCl
ギ酸ナトリウム(53.6kg、788mmol)と高沸点溶媒のジメチルプロピレン尿素(DMPU、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジン)(400mL)からの混合物にトルエン100mLを混ぜた。この混合物を乾燥させるために、トルエンを留去し(47mbar(頂部)、26〜29℃(頂部)、68〜90℃(ポット部))、次いで僅かばかりのDMPUが留出するまで(1.2mbar(頂部)、89℃(頂部)、110℃(ポット部);約10gのDMPU留出物)真空の度合いを強めた。留まった混合物を100℃に冷却し、5分間にわたり(クロロメチル)トリメトキシシラン(128g、750mmol)を計量供給し、結果生じる混合物を100℃で30分間及び115℃でさらに2.5時間攪拌した。反応監視により、(クロロメチル)トリメトキシシランの完全な変換並びに所望の生成物(ホルモキシメチル)トリメトキシシラン及び副生成物としてギ酸メチル、テトラメトキシシラン及び形成されたシランのシロキサンが示された。生成物を100℃の温度(ポット部)で蒸留し、その際、真空の度合いを15mbarからゆっくりと3mbarに強めた(沸点59〜91℃(頂部))。留出物中で(ホルモキシメチル)トリメトキシシラン(純度73.6%(GC面積%))66.9gを得た;留出物は、純度を基に計算して、(ホルモキシメチル)トリメトキシシラン61.7g(342mmol、理論値の46%)を含有していた。溶媒、塩化ナトリウム及び過剰のギ酸ナトリウムが塔底物に留まった。
実施例7.(ホルモキシメチル)メトキシジメチルシランの合成
(MeO)Me2SiCH2Cl+NaOC(O)H → (MeO)2SiCH2OC(O)H+NaCl
ギ酸ナトリウム(5.00kg、73.5mol)とHydroseal G 400 H(14.9L)からの混合物を、1mbarで1時間のあいだ150℃に加熱した(乾燥)。真空を窒素で破り、かつ混合物を120℃に冷却し、次いで触媒としてテトラブチルホスホニウムブロミド(450g、1.34mol)を添加した。2時間にわたり(クロロメチル)メトキシジメチルシラン(9.27kg、66.8mol)を計量供給し、かつ結果生じる混合物を120℃で3時間攪拌した。ガスクロマトグラム(FID検出器)が、1:274の出発原料(クロロメチル)メトキシジメチルシラン対生成物(ホルモキシメチル)メトキシジメチルシランのピーク面積比を示した。生成物は、155mbar(頂部)、73〜76℃(頂部)及び100〜151℃(ポット部)で蒸留した。溶媒、塩化ナトリウム、過剰の酢酸ナトリウム、及び(テトラブチルホスホニウムの臭化物塩、塩化物塩及びギ酸塩の形態における)相間移動触媒が塔底物に留まった。留出物中で(ホルモキシメチル)メトキシジメチルシラン9.41kgを99.1%の純度で得て、これは(クロロメチル)メトキシジメチルシランをなお0.5%含有していた;(クロロメチル)メトキシジメチルシランは生成物より低い沸点を有し、かつ生成物745gを多孔板塔で留去する(198mbar(頂部)、87℃(頂部)、99℃(ポット部)、その際、(ホルモキシメチル)メトキシジメチルシランが99.7%の純度でポット部に留まった(GC面積%での純度値))ことによって分離することができた。
実施例8.(クロトナトメチル)トリメトキシシランの合成(cis/trans−混合物)
KOH+trans−HOC(O)CH=CHMe → trans−KOC(O)CH=CHMe+H2
クロトン酸(75.0kg、871mol)を、攪拌槽内で90Lの水に懸濁させた。53%の水酸化カリウム水溶液を、pH7.1に達するまで、1時間にわたり計量供給した。その際、温度は、20℃から52℃に上昇した。さらに1時間攪拌した(pH7.25)。水の主要量を、190 → 130mbar及び65 → 60℃(ポット部)で留去した。次いで残留物をコニカルドライヤーに移し、その他の水を、160 → 130mbar及び65 → 60℃(ポット部)で留去した(留出物53.3kg)。水の留去に際して、クロトン酸777g(用いた量の1%)が水とともに留出していた(留去された水の定量的なHPLC監視)。残留物を、0.5barの過熱蒸気(約106℃)相対圧(1.5barの絶対圧)による加熱及び9〜15mbarで1時間乾燥させ、次いで1.5barの過熱蒸気(約120℃)(2.5barの絶対圧)及び3〜4mbarで3時間乾燥させた。生成物クロトン酸カリウムを、99%の収率において無色の微結晶薄片の形態で得て、HPLC監視によれば、それは異性体として純粋であった(trans);水(10mL)に溶解した試料(1g)のpH値は、7〜7.5(Neutralit試験紙)であった。
溶媒:Hydroseal G 400 Hからの高沸点分
Hydroseal G 400 H(炭化水素混合物、上記参照)を、真空中で部分的に分別した。溶媒の約30%を、真空中で、3mbar(頂部)、19〜23mbar(ポット部)、120〜130℃(頂部)及び175〜206℃(ポット部)にて留去した。より高沸点の蒸留残留物を、次の工程で使用した。
(MeO)3SiCH2Cl+trans−KOC(O)CH=CHMe →
cis/trans−(MeO)3SiCH2OC(O)CH=CHMe+KCl
trans−クロトン酸カリウム(4.97kg/40.0mol)、フェノチアジン(安定化剤;3.99g、20.0mmol)、テトラブチルホスホニウムブロミド(270g、79.6mmol)及びHydroseal G 400 Hの高沸点分(先の工程からの蒸留残留物;13.2L)からの混合物を、3mbarで1時間のあいだ120℃に加熱した(乾燥)。真空を窒素で破り、かつ混合物を130℃に加熱し、次いで1時間45分にわたり(クロロメチル)トリメトキシシラン(6.83kg、40.0mol)を計量供給した。混合物を130℃で4時間攪拌し、次いで2,6−ジーt−ブチル−4−メチルフェノール(BHT、安定化剤;4.41g、20.0mmol)を添加した。生成物を、1〜3mbar(頂部)、71〜73℃(頂部)及び108〜158℃(ポット部)にて留出させた。留出物中で生成物(クロトナトメチル)トリメトキシシラン(7.53kg、34.2mol、理論値の85%)をcis/trans−混合物(cis 82.6%、trans 13.5%)の形態で得た;さらになお、生成物は構造異性体の3.1%(ブタ−3−エノアトメチル)トリメトキシシランを含有していた;純度99.2%(cis−、trans−及びブタ−3−エノアト−異性体);それに加えて、留出物は、0.13%の(クロロメチル)トリメトキシシランを含有していた(GC面積%における含有量値/純度値)。溶媒、塩化カリウム、微量の未反応のクロトン酸カリウム及び(テトラブチルホスホニウムの臭化物塩、塩化物塩及びクロトン酸の形態における)相間移動触媒が塔底物に留まった。(クロロメチル)トリメトキシシランは、生成物の5%を、2mbar(頂部)、57〜71℃(頂部)及び93〜97℃(ポット部)で留去させることによって分離することができ、その際、(クロロメチル)トリメトキシシランは留出し、かつ反応生成物の最大部分が残留物中に留まった。
実施例9.(アセトキシメチル)メトキシジメチルシランの合成
(MeO)Me2SiCH2Cl+NaOC(O)H → (MeO)Me2SiCH2OC(O)Me+NaCl
表1に記載の高沸点溶媒20mL、酢酸ナトリウム(無水)13.5g(165mmol)及び表1に示した量の相間移動触媒(用いたシランの物質量を基準としたMol%における量値)からの混合物を、表1に示した温度に加熱し、かつ10mbarの真空下で、この温度にて30分の間乾燥させた。引き続き真空をアルゴンで破り、かつ、この温度で攪拌しながら(クロロメチル)メトキシジメチルシラン(20.8g/150mmol)を30分にわたり計量供給した。混合物を、さらにこの温度で、ガスクロマトグラム(FID検出器)若しくは1H−NMRスペクトルが99%を超えるシランの変換率を示すまで(このために必要な反応時間は表1に記している)攪拌した。引き続き生成物を、Widmerカラムで、10〜90mbar(頂部)、50〜90℃(頂部)及び70〜120℃(ポット部)にて留去し、その際、>99%(GC面積%)の純度を有する無色の液体としての(アセトキシメチル)メトキシジメチルシランの表1に示した収率を得た。溶媒、塩化ナトリウム、過剰の酢酸ナトリウム及び相間移動触媒がその塩化物塩及び酢酸塩(並びに、臭化物が用いられた場合は臭化物塩)の形態で塔底物に留まった。
Figure 0005319026
実施例10.(アセトキシメチル)メトキシジメチルシランの合成、濾過による蒸留残留物の後処理
(MeO)Me2SiCH2Cl+NaOC(O)Me → (MeO)Me2SiCH2OC(O)Me+NaCl
Hydroseal G 400 H 61.1kgと酢酸ナトリウム50kg(609.4mol)からの混合物を、150℃/2mbarで1.5時間加熱した(乾燥)。120℃より下に冷却後、真空を窒素で破り、テトラブチルホスホニウムブロミド3.76kg(11.1mol)を添加し、かつ温度を120℃に調整した。それから、2.5時間にわたり、この温度で攪拌しながら(クロロメチル)メトキシジメチルシラン73.2kg(528mol)を計量供給した。引き続きこの混合物を、同じ温度でさらに4時間攪拌した。次いで生成物を、カラムで20mbar(頂部)、46〜55℃(頂部)及び73〜145℃(ポット部)にて留出させ、その際、蒸留の間の攪拌性を確保するために、Hydroseal G 400 H 36.7kgを計量供給した。生成物(アセトキシメチル)メトキシジメチルシラン(80.4kg、495.5mol、理論値の94%;純度99.4%(GC面積%))を無色の液体として得た。溶媒、塩化ナトリウム、過剰の酢酸ナトリウム及びテトラブチルホスホニウムの塩化物塩、臭化物塩及び酢酸塩の形態における相間移動触媒が塔底物に留まった。フィルター反転型遠心分離機を用いた濾過による塔底物の後処理の結果、濾液(Hydroseal)93kg及び固形分(NaCl、NaOAc、Bu4PBr;部分的に交換されたアニオン及びカチオン)41kgが得られた。濾過ケークを、キシレン(異性体混合物、2×20L)で洗浄し、かつ再び同じ方法に従って濾過した。濾液は、キシレンに可溶性の相間移動触媒を、テトラブチルホスホニウムの塩化物塩、臭化物塩及び酢酸塩の形態で含有し、濾過ケークは、なかでも塩化物のナトリウム塩、部分的に酢酸及び臭化物のナトリウム塩も含有していた。そのようして再回収された溶媒と再回収された触媒は、再び用いられることができ、その際、キシレンは任意に留去するか又は共に用いてよい。
実施例11.(アセトキシメチル)メトキシジメチルシランの合成、加水分解による蒸留残留物の後処理
(MeO)2MeSiCH2Cl+NaOC(O)Me → (MeO)2MeSiCH2OC(O)Me+NaCl
実施例11a:反応及び精製
Hydroseal G 400 H 61.1kgと酢酸ナトリウム50kg(609.4mol)からの混合物を、150℃/2mbarで1時間加熱した(乾燥)。112℃に冷却後、真空を窒素で破り、テトラブチルホスホニウムブロミド3.76kg(11.1mol)を添加し、かつ温度を120℃に調整した。それから、1時間にわたり、この温度で攪拌しながら(クロロメチル)メトキシジメチルシラン76.8kg(554mol)を計量供給した。引き続きこの混合物を、同じ温度でさらに6時間攪拌した。次いで生成物を、カラムで20mbar(頂部)、50〜56℃(頂部)及び70〜145℃(ポット部)にて留出させ、その際、蒸留の間の攪拌性を確保するために、Hydroseal G 400 H 36.7kgを計量供給した。生成物(アセトキシメチル)メトキシジメチルシラン(89.0kg、548.5mol、理論値の99%;純度99.5%(GC面積%))を無色の液体として得た。溶媒、塩化ナトリウム、過剰の酢酸ナトリウム及びテトラブチルホスホニウムの塩化物塩、臭化物塩及び酢酸塩の形態における相間移動触媒が塔底物に留まった。
実施例11b:溶媒及び触媒の回収
蒸留塔底物に、80℃に冷却後、塩を溶解するのにちょうど十分な量の水(100リットル)を攪拌しながら混ぜた。放置すると、3つの透明な液相より成る混合物の分離が観察された;上方、Hydrosealに富んだ相(100kg)、黄色;中間、触媒に富んだ相(テトラブチルホスホニウムの塩化物塩、臭化物塩及び酢酸塩の形態における触媒;4kg)、暗褐色;下方、溶解したナトリウム塩(塩化物、臭化物、酢酸塩;134kg)を有する水相、黄色。水相を分離し、n−ブタノール25Lを混ぜ、かつ1時間攪拌した。相分離後、水相に存在するn−ブタノールは、水相の1/10を、98〜105℃(塔底部)で雰囲気圧力にて(およそ1barの絶対圧)留去することによって除去した(2相の留出物、主としてn−ブタノールと水から成る);共沸蒸留によって、検出限界値の範囲内で(1H−NMR検査、D2O)ブタノール−及び炭化水素不含の水相を得た。
実施例11c:溶剤及び触媒の再利用(再循環)
実施例11bに従って再回収された溶媒と再回収された触媒は、実施例5a(Hydroseal相と触媒相からのn−ブタノールの除去)、実施例5e(乾燥)と実施例11a(反応)とを組み合わせることで、(アセトキシメチル)メトキシジメチルシランの製造のために再び使用可能であった。
実施例11は、本発明による方法の生成物が、唯一の時間を浪費する濾過工程なしに、いかに後処理されることができるのか、溶媒と触媒が、水系後処理によって、いかに回収されることができるのか;そして、その際に生ずる水相から、触媒と溶媒をいかに除くことで、塩負荷分を、後処理された水相の形態で廃棄処理に供給することができるのかを示す。
実施例12.(アセトキシメチル)メトキシジメチルシランの合成
蒸留中に初めて行う溶媒添加
(MeO)Me2SiCH2Cl+NaOC(O)Me → (MeO)Me2SiCH2OC(O)Me+NaCl
(クロロメチル)メトキシジメチルシラン230.4kg(1.662kmol)とテトラブチルホスホニウムブロミド11.8kg(34.8mol)からの混合物を90℃に加熱し、かつ温度が114℃を超えて上昇しないように、3時間にわたり酢酸ナトリウム(無水)150kg(1.828kmol)を25kgずつ6回に分けて混ぜた。引き続きこの混合物を、付加的な加熱なしに1時間攪拌し、次いで115〜122℃でなお2時間攪拌した。すぐあとに、生成物を、カラムで18〜30mbar(頂部)、50〜53℃(頂部)及び84〜120℃(ポット部)にて留出させ、その際、蒸留の間の攪拌性を確保するために、Hydroseal G 400 H 150kgを塔底物に計量供給した。生成物(アセトキシメチル)メトキシジメチルシラン(249.2kg、1.536kmol、理論値の94%;純度99.4%(GC面積%))を無色の液体として得た。溶媒、塩化ナトリウム、過剰の酢酸ナトリウム及びテトラブチルホスホニウムの塩化物塩、臭化物塩及び酢酸塩の形態における相間移動触媒が塔底物に留まった。

Claims (9)

  1. 一般式II
    [R1−C(=O)−O]a[Ma+] (II)
    のカルボン酸の少なくとも1種の塩を、
    一般式III
    X−R2−SiR3 3 (III)
    の少なくとも1種のシランと反応させることによって、一般式I
    1−C(=O)−O−R2−SiR3 3 (I)
    のシランを製造する方法であって、
    その際、該方法が、少なくとも1つの蒸留処理工程を有し、該蒸留処理工程に際して、留出物は、一般式Iの少なくとも1種のシランを含有し、かつ少なくとも1種の高沸点溶媒が存在しており、
    その際、前記高沸点溶媒は、該蒸留処理工程が実施される圧力で測定して、一般式Iのシランより高い沸点を有し、かつ、上記式中、
    Xは、カルボキシレートによって置換可能である脱離基であり、
    は、置換されていない又は1つ若しくはそれより多い基Qで置換された、1つ若しくはそれより多いヘテロ原子によって中断されていてよい、一価のC〜C18炭化水素基、又は水素原子であり、
    Qは、それがsp3混成炭素原子に結合されている場合には、炭化水素オキシ基、アシルオキシ基、炭化水素カルボニル基、カルボニル基、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素スルフィド基、アシルスルフィド基、シアノ基及びニトロ基から選択され、
    かつ、それがsp2混成炭素原子又はsp混成炭素原子に結合されている場合には、炭化水素オキシ基、アシルオキシ基、炭化水素カルボニル基、カルボニル基、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素スルフィド基、アシルスルフィド基、シアノ基及びニトロ基から及びXの意味から選択され、
    は、置換されていない又は1つ若しくはそれより多い基Qで置換された、1つ若しくはそれより多いヘテロ原子によって中断されていてよい、二価のC1〜C18炭化水素基であり、
    は、水素、置換されていない又は1つ若しくはそれより多い基Qで置換された、1つ若しくはそれより多いヘテロ原子によって中断されていてよい、一価のC1〜C18炭化水素基、C1〜C18炭化水素オキシ基、Si1〜Si4シラン基又はSi1〜Si4シロキシ基であり、
    a+は、a価の正に耐電したカチオンであり、かつ
    aは、1以上の整数であり、
    前記一般式IIのカルボン酸塩と前記一般式IIIのシランとの反応に由来する混合物を、濾過工程なしに、前記蒸留処理工程に直接供給する、上記一般式Iのシランの製造法。
  2. 前記Rを、−CH2−又は−CH2CH2CH2−から選択する、請求項1記載の方法。
  3. 前記一般式IIのカルボン酸塩と前記一般式IIIのシランとの反応に由来する混合物を、更なる処理工程なしに、蒸留処理工程に直接供給する、請求項1または2に記載の方法。
  4. 触媒の存在下で実施する、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
  5. 前記触媒が相間移動触媒である、請求項4に記載の方法。
  6. 前記触媒が、臭化物又はヨウ化物の塩であり、かつ前記一般式IIIのシラン中の基X−R2を、臭化物又はヨウ化物によるXの置換によって活性化する、請求項4に記載の方法。
  7. 前記蒸留処理工程において前記一般式Iのシランの沸点と同じ沸点か又は前記シランの沸点を下回る沸点を有する溶媒を、前記方法において用いられた全ての溶媒の合計を基準として質量%で計算して、80%未満で用い、その際、前記沸点は、前記蒸留処理工程が実施される圧力で測定する、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
  8. 前記方法において用いられた全ての溶媒の合計を質量%において基準とした、前記高沸点溶媒の基準に適合する溶媒の割合が、少なくとも20%である、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
  9. 前記一般式Iのシランの沸点と同じ沸点か又は前記シランの沸点を下回る沸点を有する溶媒を用いず、その際、前記沸点は、前記蒸留処理工程が実施される圧力で測定する、請求項又は8に記載の方法。
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