JP5317526B2 - 複合クッション体及びその製造方法 - Google Patents
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該クッション材は、表面強度が低いので、織物層と単繊維からなる不織布層を積層一体化した補強材により、表面構造を改良して、支持フレームとの摩擦を改善する提案などがなされている(特許文献1)。
この特許文献2によるシートパッドでは、シートパッドのサイド部は、ウレタンを含浸させることで高硬度となったハーフニードルパンチを施したポリエステル綿で構成されることになり、その上に大きい張力でカバーが張られてもその張力に負けることがなく、コーナー部の形状がシャープで見栄えのよいものとすることができるとされている。
しかし、特許文献3〜5に記載の繊維構造体によるクッション材は、ウェブ化の工程や、吹き込み成型用の専用の型が必要であるため高コストであり、また、得られる繊維固綿も、圧縮に対してへたり易いことや、あるいは、表皮材を取り付けるための係合素子を成型時に一体的に取着できない等の基本的な問題点を有している。
すなわち、本発明は、
(1)係止部材および繊維集積体を配置した発泡体成形型内に成形用樹脂組成物を充填し、該成形用樹脂組成物を発泡させて得られる複合クッション体であって、合成樹脂発泡体からなるクッション層と、該合成樹脂発泡体の内部に完全に被包された状態、又はその表面の一部が合成樹脂発泡体の表面に露出した状態の繊維集積体とを含み、該繊維集積体と合成樹脂発泡体が一体化され、かつ繊維集積体の周面から1〜10mmは該成形用樹脂組成物が繊維集積体側へ浸入して、合成樹脂含浸層が殻として形成されており、さらに該合成樹脂発泡体の表面に該係止部材が露出した状態で固定されてなることを特徴とする複合クッション体、
(2)前記繊維集積体が、前記合成樹脂発泡体の内部に完全に被包された状態又はその表面が合成樹脂発泡体の裏面に露出した状態として、前記係止部材が固定された合成樹脂発泡体の表面と繊維集積体との間に、開口を有する複数の連通孔を設けてなる前記(1)に記載の複合クッション体、
(3)発泡体成形型の底面から上部に延在する突起の上面に設けた凹部に係止部材を配置し、さらに該発泡体成形型の底面の所定の位置に繊維集積体を配置した後、蓋で封鎖した発泡体成形型に、成形用樹脂組成物を充填し、該成形用樹脂組成物を発泡させて成形する工程を含むことを特徴とする複合クッション体の製造方法、
(4)発泡体成形型の底面から上部に延在する突起の上面に設けた凹部に係止部材を配置し、成形用樹脂組成物を型内に一定量導入した後、内側面に繊維集積体を付設した成形型の蓋を成形型に装着し、さらに成形用樹脂組成物を成形型に充填して、該成形用樹脂組成物を発泡させて成形する工程を含むことを特徴とする複合クッション体の製造方法、
(5)発泡体成形型の底面から上部に延在する突起の上面に設けた凹部に係止部材を配置し、成形用樹脂組成物を型内に一定量導入した後、成形型の底面又は成形型の蓋の内面に設けられた複数の支持体で支持された繊維集積体を配置し、さらに成形用樹脂組成物を成形型に充填して、該成形用樹脂組成物を発泡させて、繊維集積体を発泡体で完全に被包する工程、又はその表面が合成樹脂発泡体の裏面に露出した繊維集積体とする工程を含むことを特徴とする複合クッション体の製造方法、
(6)前記支持体が合成樹脂発泡体からなるクッション層と同一の発泡体で成形されてなる前記(5)に記載の複合クッション体の製造方法、
(7)繊維集積体を含んでなる複合クッション体を成形した後、該複合クッション体の係止部材を固定した表面側と、発泡体で完全に被包された繊維集積体、又はその表面が合成樹脂発泡体の裏面に露出した繊維集積体との間に、開口した複数の連通孔を機械的に開設する前記(4)〜(6)のいずれかに記載の複合クッション体の製造方法、及び
(8)前記支持体が、成形用樹脂組成物が浸入しない樹脂成形体又は金属成形体であり、成形用樹脂組成物を発泡成形した後、該支持体を除去することによって、係止部材を固定した表面側と、発泡体で完全に被包された繊維集積体、又はその表面が合成樹脂発泡体の裏面に露出した繊維集積体との間に、開口した複数の連通孔を設ける前記(5)に記載の複合クッション体の製造方法、
を提供するものである。
また、繊維集積体のみによるクッション材では、表皮材取り付けのための係合素子を一体的に取り付けることは難しいが、本願発明の複合クッション材では、従来の発泡体成形に採用されている、いわゆるモールドイン成形が可能なので、所望の位置に係合素子を配置した成形型を用いることにより、クッション材の多岐なデザインに合わせた、係合素子付き複合クッション体を得ることができる。
合成樹脂発泡体からなるクッション層として、ポリウレタン樹脂の発泡体が汎用されているが、ウレタンだけから成るクッション材は均質である反面、シート用クッション材において、中央や側部などの各部位に対応してその柔軟性、換言すれば硬度を調整することが難しい。長時間使用するクッション材においては、中央部と側部での柔軟性の調整は重要である。クッション材の底部中央には、最大重量がかかり、クッション材のへたりが激しく、その回復も困難となるので、高い硬度が望まれる。他方、側部には重量がかかることは少ないので、むしろ高い柔軟性が好ましいことが多い。
本発明では、合成樹脂発泡体の表面、中央、裏面などの任意の部位に、繊維集積体を複合一体化して、繊維集積体の柔軟性・硬度を調整することにより、複合クッション体全体の柔軟性を高範囲に調整するようにするのである。また、必要に応じては、発泡体より柔軟な繊維集積体を埋設して、発泡体だけのクッション材よりも柔軟性の高い構造とすることもできる。
ポリウレタン系樹脂組成物としては、従来公知の発泡性ポリウレタン系組成物が好適に使用できる。その硬化物の硬度も公知技術の範囲内で調整可能である。
より具体的な発泡ポリウレタンについて説明すると、発泡ポリウレタンは、ポリオールや、ポリオール中でアクリロニトリルやスチレンをラジカル重合させて得られたポリマー粒子が分散したポリマーポリオール、発泡剤としての水、シリコーン系界面活性剤等の整泡剤、アミンや錫化合物等の触媒、必要により架橋剤等と、難燃剤、顔料、各種安定剤等と有機ポリイソシアネートを混合することにより製造される。ポリオールとしては、ポリグリセリンにプロピレンオキサイドやエチレンオキサイドを付加させた平均分子量が400〜10000、好ましくは1500〜6000のポリエーテルポリオールが代表例として挙げられ、またポリイソシアネートとしては、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネートなどが代表例として挙げられる。また、アミンとしては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルエタノールアミン等の三級アミン類が挙げられ、錫化合物としては、ジブチルチンラウレートが代表例として挙げられる。
なお、市販されている発泡ウレタン用の原料液は、上記ポリオールに水や触媒等が予め添加された液とイソシアネートからなる液の二液からなり、この二液を金型に注入する直前に撹拌混合し、混合液を直ちに金型内に注入して発泡と同時に重合・成形を行う方法が用いられる。
部分融着をすることにより、繊維集積体の長期間荷重による体積減少いわゆるへたりを改善することができる。すなわち、繊維集積体層に部分融着構造を存在させることにより、繊維集積体内に、線状又は面状の融着部分を構成することができ、融着結合部分の繊維同士の移動が制限されて、荷重に抗する構造となる。
繊維集積体の繊維の具体例としては、ポリエステル系,ポリアミド系,ポリオレフィン系,ポリビニルアルコール、鞘成分を低融点ポリマーとした芯鞘型熱融着性複合繊維等の合成繊維、綿,羊毛などの天然繊維、及びそれらの混合物を挙げることができる。
また、該繊維集積体にポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体系等の湿熱融着性繊維を混入して、その内部に任意の空隙、ボイドを形成することもできる。かかるボイドにより、繊維集積体の硬度、重量、吸湿性、通気性などをさらに調節することができる。
弾力性、嵩高性、耐久性、ポリウレタンとの密着性などの点からは、ポリエステル系繊維が好ましい。また、水分の拡散、吸放湿性を高めるには親水性ポリエステル繊維が特に好ましい。
係止部材が露出した状態で固定とは、係止部材の係合素子が、表面外方に向かって、事後に取り付ける表皮材などに取り付けられた相手側の係合素子等と係合可能に取着されている状態を言い、当該係止部材の裏面側と合成樹脂発泡体とが接着、又は、係止部材の裏面に突設された部材を埋設した状態で、合成樹脂発泡体に固着することをいう。
複合クッション体における繊維集積体の配置位置によって、座り心地を調整することができる。また、係止部材が固定された合成樹脂発泡体の表面と繊維集積体との間に、開口を有する複数の連通孔を設けることによって、座面の身体から発散される汗等が、連通孔を通じて吸湿機能を有する繊維集積体に吸湿され、不使用時には、繊維集積体に吸湿した湿気を、連通孔を通じて開口から放湿できるので、座席シートを不快な湿気から開放できる。
連通孔の孔径や数は、合成樹脂発泡体の硬度等に応じて適宜設定される。
成形型の底面の所定の位置に繊維集積体を配置するには、底面に繊維集積体を係止できるピン状突起を設け、当該ピン状突起に繊維集積体を突刺さす等の方法を採用できる。
成形型の蓋の内側の所定の位置に繊維集積体を配置するには、蓋の内側に、繊維集積体を係止できるピン状突起を設け、当該ピン状突起に繊維集積体を突刺さす等の方法が採用できる。
より具体的には、成形型の底面側から繊維集積体を保持するため、繊維集積体を成形型の底面側から所定の位置で保持できる、発泡性樹脂組成物が浸入しない合成樹脂成形体又は金属成形体によるピン状の支持体を所要本数立設した支持具を成形型の底面の所定位置に配置する方法等が採用できる。
・係止部材:ポリプロピレン製の幅10mmの帯状の成形フックファスナー(クラレファスニング社製、X6323−3)を用いた。
(1)通気度の測定:JIS L 1096 A法(フラジール法)に準じて測定した。
(2)クッション体の硬さの測定:JIS K 6401法に準じて測定した。
(3)着用試験
(i)蒸れ防止性:28±1℃、65±5%RHの環境下の人工気候室内に複合クッション体又は発泡クッション材を置き、その上に体重65〜70kgの4人の男性が60分間着座した後、蒸れ感を下記の点数で官能評価し、4人の平均点を求めた。
3点:蒸れ感がない。
2点:蒸れ感をやや感じる。
1点:蒸れ感を非常に感じる。
(ii)クッション性及び座り心地:前記蒸れ試験時に、着座時の沈み込み及び1時間着座間の座り心地を下記の点数で官能評価し、4人の平均点を求めた。
3点:着座時の沈み込みがなく良好。座り心地良好。
2点:着座時の沈み込みがやや大きい。座り心地やや劣る。
1点:着座時の沈み込みが大きい。座り心地劣る。
先ず、太さ15dtexのポリエステル繊維と、太さ6dtexで芯部の融点が160℃以上で、鞘部の融点が130℃以下の芯鞘型ポリエステル系バインダー繊維とを60:40の質量比率で混綿及びニードリング絡合し、150℃で1分間熱処理された厚さ50mm、密度0.045g/cm3の繊維集積体を準備した。
なお、本実施例1では、冒頭記載の繊維集積体及び係止部材を用い、図1(A−1)に示すように、成形フックファスナー3を成形型凹部2にウレタン液がフック表面に染み込まないように嵌めこんだ。
得られた複合クッション体10の中央部の厚さは80mmで、複合クッション体中の繊維集積体の質量比は40%であった。また、得られた複合クッション体の密度は0.043g/cm3であった。
なお、成形型蓋部1'の中央部表面には図2(A)に示すように、繊維集積体と係合可能なピン7を配置し、図1(A)、(B)に示すように繊維集積体5を蓋部1'に仮留めして実施した。
得られた複合クッション体の中央部の硬さはJIS K 6401法で測定した値は90Nであった。周辺部の硬さは硬度80Nであった。通気度は、30cm3/(cm2・sec)であった。
また、得られた複合クッション体を切断して断面を観察したところ、図3(D)に示すように繊維集積体層5側へ発泡性樹脂が、繊維集積体層5の周表面約5mmの部分迄移行し、発泡性樹脂含浸層8が形成されていた。
本実施例で得られた複合クッション体に、ポリエステル加工糸ニットからなる表皮材を被覆して、4名のパネラーにより着用試験をした結果、蒸れ感もなく、着座時の沈み込みも少なく良好であった。
なお、着座時の沈み込みが少ないのは、発泡性樹脂含浸層が、繊維強化発泡樹脂による殻状を呈しており、複合クッション体への圧縮負荷に対して、圧力を当該殻状の発泡性樹脂含浸層8の全体で受ける作用があり、着座時の沈み込みを抑制していることが考えられる。
結果をまとめて表1に示す。
実施例1において、繊維集積体を用いることなく、ポリウレタンフォームのみからなるクッション体を得た。得られたクッション体の密度は、0.042g/cm3、中央部の硬さは85N、周辺部の硬さは84Nで、通気度は3cm3/(cm2・sec)で、蒸れ感が大で長時間着座していると座り心地が悪いものであった。
結果をまとめて表1に示す。
また、本発明の複合クッション体の製造方法は、前記の有用な複合クッション体を、従来公知の発泡体の金型成形やモールドイン成形法を改良した方法で得ることが出来、クッション材の簡便かつ製造コストを低減できる製造方法として利用できる。
1' 発泡体成形型の蓋
2 凹部
3 係止部材
4 発泡性樹脂
5 繊維集積体
6 連通孔
7 ピン
8 発泡性樹脂含浸層
10 複合クッション体
F 発泡体クッション層
Claims (8)
- 係止部材および繊維集積体を配置した発泡体成形型内に成形用樹脂組成物を充填し、該成形用樹脂組成物を発泡させて得られる複合クッション体であって、合成樹脂発泡体からなるクッション層と、該合成樹脂発泡体の内部に完全に被包された状態、又はその表面の一部が合成樹脂発泡体の表面に露出した状態の繊維集積体とを含み、該繊維集積体と合成樹脂発泡体が一体化され、かつ繊維集積体の周面から1〜10mmは該成形用樹脂組成物が繊維集積体側へ浸入して、合成樹脂含浸層が殻として形成されており、さらに該合成樹脂発泡体の表面に該係止部材が露出した状態で固定されてなることを特徴とする複合クッション体。
- 前記繊維集積体が、前記合成樹脂発泡体の内部に完全に被包された状態又はその表面が合成樹脂発泡体の裏面に露出した状態として、前記係止部材が固定された合成樹脂発泡体の表面と繊維集積体との間に、開口を有する複数の連通孔を設けてなる請求項1に記載の複合クッション体。
- 発泡体成形型の底面から上部に延在する突起の上面に設けた凹部に係止部材を配置し、さらに該発泡体成形型の底面の所定の位置に繊維集積体を配置した後、蓋で封鎖した発泡体成形型に、成形用樹脂組成物を充填し、該成形用樹脂組成物を発泡させて成形する工程を含むことを特徴とする複合クッション体の製造方法。
- 発泡体成形型の底面から上部に延在する突起の上面に設けた凹部に係止部材を配置し、成形用樹脂組成物を型内に一定量導入した後、内側面に繊維集積体を付設した成形型の蓋を成形型に装着し、さらに成形用樹脂組成物を成形型に充填して、該成形用樹脂組成物を発泡させて成形する工程を含むことを特徴とする複合クッション体の製造方法。
- 発泡体成形型の底面から上部に延在する突起の上面に設けた凹部に係止部材を配置し、成形用樹脂組成物を型内に一定量導入した後、成形型の底面又は成形型の蓋の内面に設けられた複数の支持体で支持された繊維集積体を配置し、さらに成形用樹脂組成物を成形型に充填して、該成形用樹脂組成物を発泡させて、繊維集積体を発泡体で完全に被包する工程、又はその表面が合成樹脂発泡体の裏面に露出した繊維集積体とする工程を含むことを特徴とする複合クッション体の製造方法。
- 前記支持体が合成樹脂発泡体からなるクッション層と同一の発泡体で成形されてなる請求項5に記載の複合クッション体の製造方法。
- 繊維集積体を含んでなる複合クッション体を成形した後、該複合クッション体の係止部材を固定した表面側と、発泡体で完全に被包された繊維集積体、又はその表面が合成樹脂発泡体の裏面に露出した繊維集積体との間に、開口した複数の連通孔を機械的に開設する請求項4〜6のいずれかに記載の複合クッション体の製造方法。
- 前記支持体が、成形用樹脂組成物が浸入しない樹脂成形体又は金属成形体であり、成形用樹脂組成物を発泡成形した後、該支持体を除去することによって、係止部材を固定した表面側と、発泡体で完全に被包された繊維集積体、又はその表面が合成樹脂発泡体の裏面に露出した繊維集積体との間に、開口した複数の連通孔を設ける請求項5に記載の複合クッション体の製造方法。
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