JP5317416B2 - 電解質膜−触媒電極接合体および直接液体型燃料電池 - Google Patents

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Description

本発明は、直接液体型燃料電池に使用する電解質膜−触媒電極接合体に関する。
固体高分子型燃料電池は、燃料と酸化剤とを連続的に供給し、これらが反応した時の化学エネルギーを電力として取り出すクリーンで高効率な発電システムであり、近年、低温作動や小型化の観点から自動車用途、家庭用や携帯用途としてその重要性を増している。
固体高分子型燃料電池は、一般的に電解質として作用する固体高分子の隔膜(プロトン伝導性電解質膜)の両面に、触媒が坦持された電極層(触媒電極層)を接合して電解質膜−触媒電極接合体を作成し、該電解質膜−触媒電極接合体の一方の触媒電極層が存在する側の室(燃料室)に燃料である水素ガスやメタノール等の液体燃料を、他方の触媒電極層が存在する側の室(酸化剤室)に酸化剤である酸素や空気等の酸素含有ガスをそれぞれ供給し、両触媒電極層間に外部負荷回路を接続することにより、燃料電池として作用させる。中でも、メタノール等を直接燃料として用いる直接液体型燃料電池は、燃料が液体であることからその取り扱いやすさに加え、安価な燃料ということで、特に携帯機器用の比較的小出力規模の電源として期待されている。
こうした直接液体型燃料電池の基本構造を図1に示す。図中、(1)は電池隔壁、(2)は燃料流通孔、(3)は酸化剤ガス流通孔、(4)は燃料室側触媒電極層、(5)は酸化剤室側触媒電極層、(6)はプロトン伝導性電解質膜を示す。この直接液体型燃料電池において、燃料室(7)では、供給されたメタノール等の燃料からプロトン(水素イオン)と電子が生成し、このプロトンはプロトン伝導性電解質膜(6)内を伝導し、他方の酸化剤室(8)に移動し、空気又は酸素ガス中の酸素と反応して水を生成する。この時、燃料室側触媒電極層(4)で生成した電子が、外部負荷回路を通じて酸化剤室側触媒電極層(5)へと移動することにより電気エネルギーが得られる。
このような構造の直接液体型燃料電池において、上記プロトン伝導性電解質膜には、通常、カチオン交換膜が使用されるが、該カチオン交換膜においては、電気抵抗が小さく、物理的な強度が強いばかりでなく、メタノールなどの燃料の透過性が低いといった特性が要求される。例えば、メタノールなどの燃料の透過性が高いカチオン交換膜を燃料電池用隔膜として使用した際には、燃料室の燃料が酸化剤室側に透過することを十分に抑えることができず、大きな電池出力が得られなくなる。
従来、燃料電池用隔膜として使用されるカチオン交換膜としては、例えば、ポリオレフィン系やフッ素系樹脂製多孔質膜を使用して、これに、カチオン交換基を導入可能な官能基を有する重合性単量体および架橋性重合性単量体からなる重合性組成物を充填させ重合し、該カチオン交換基を導入可能な官能基に係るカチオン交換基を導入する方法により得た、カチオン交換基を有する架橋重合体からなる膜が、比較的安価に製造できる他、電気抵抗が小さく、前記液体燃料の透過性も小さく、膨潤等による変形も少ないため好適なものとして知られている(例えば、特許文献1、2)。
一方前記の通り、直接液体型燃料電池においては、メタノール等の燃料から電気を取り出すための燃料室側触媒電極層及び酸化剤室側触媒電極層(以下、これらを併せて単に触媒電極層とも言う)の存在が不可欠である。通常、該触媒電極層は、燃料の酸化反応や酸素の還元反応を促進するための白金等の電極触媒、導電性カーボン等の反応で生じた電子が移動することの可能な導電性無機粒子、及び陽イオン交換樹脂等のプロトンが移動することの可能なプロトン伝導性樹脂で形成されている。
従来、前記触媒電極層のプロトン伝導性樹脂としては、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂(例えばデュポン社製Nafion(商品名))が広く用いられており、前記燃料室側触媒電極層および酸化剤室側触媒電極層の両方で同時に使用されている。パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂は、優れたプロトン伝導性と高い耐薬品性を併せ持つが、一方で、メタノールなどの液体燃料を用いる場合にはメタノールなどへの溶解性が問題であり、さらにパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂は高価であった。
これらの問題を解決するために、固体高分子型燃料電池の触媒電極層用に炭化水素系プロトン伝導性樹脂の提案も盛んである。特許文献3では、スチレン系エラストマーに陽イオン交換基を導入したプロトン伝導性樹脂が提案され、メタノールに対する溶解耐性や炭化水素系電解質膜に対する接着性に優れるものとされている。しかしながら、該プロトン伝導性樹脂は、燃料室側触媒電極層と酸化剤室側触媒電極層の両方に使用されており、両触媒電極層のプロトン伝導性樹脂をそれぞれ異なったものにすることによるメタノール透過性の抑制については全く開示されていない。
また、特許文献4や特許文献5では、プロトン伝導性樹脂としてパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂に変えて廉価なスルホン化ポリアリーレン樹脂が提案されており、燃料室側触媒電極層に該スルホン化ポリアリーレン樹脂を用い、酸化剤室側触媒電極層にパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂を用いると高電流密度域での発電性能に優れ、逆に、燃料室側触媒電極層にパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂を用い、酸化剤室側触媒電極層に前記スルホン化ポリアリーレン樹脂を用いると低湿度での発電性能に優れるとされている。しかしながら、これら特許文献では水素やメタノールガスが用いられていて直接液体燃料については開示されておらず、前記スルホン化ポリアリーレン樹脂のメタノールへの溶解耐性についての記述もない。もちろん、前記した両触媒電極層のプロトン伝導性樹脂を異なったものにすることによるメタノール透過性の抑制についても全く開示されていない。
特開2001−135328号公報 特開平11−310649号公報 特開2002−164055号公報 特開2002−298858号公報 特開2002−298857号公報
前記した架橋型の炭化水素系カチオン交換膜は、直接液体型燃料電池用隔膜として用いた場合に、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂膜に比べて相当にアルコール等の液体燃料の非透過性に優れるものの、その透過性は未だ十分に抑えられておらず、そのため、酸化剤室側への液体燃料の拡散が生じ、電池性能が低下するという問題があった。これを改善するためには、カチオン交換樹脂を重合するための重合性組成物において、架橋性重合性単量体の含有量を高めて、親水性のカチオン交換基の導入量を相対的に低下させて膜の疎水性を高め、且つ膜の架橋度も高めて緻密な膜とすれば、ある程度に有効であるが、これらの方法の場合、一方で膜の電気抵抗が増大して電池出力が低下する問題が引き起こされ、実用上満足できる前記燃料電池用隔膜は得られていなかった。
直接液体型燃料電池においては、実用上、用いる電解質膜−触媒電極接合体においてアルコール等の透過性を抑制すれば良いが、前記した透過性の抑制が充分でない電解質膜を用いて作成した電解質膜−触媒電極接合体では、当然、アルコール等の液体燃料の非透過性は充分ではなかった。さらに、前述の通り、触媒電極層のプロトン伝導性樹脂の材質を変えて作成した電解質膜−触媒電極接合体においてもアルコール等の液体燃料の透過性は充分に抑制されていなかった。
以上の背景にあって本発明は、直接液体型燃料電池に用いられる電解質膜−触媒電極接合体において、液体燃料の非透過性、特にメタノール非透過性に極めて優れ、しかも、膜の電気抵抗が低く維持されているため、高い電池出力を安定して得ることができる電解質膜−触媒電極接合体を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記の課題に鑑み、鋭意研究を行い、電解質膜を通したアルコール等の液体燃料の透過性に関する次の知見を得た。
すなわち、前記説明した構造の燃料電池において、カチオン交換膜からなるプロトン伝導性電解質膜(6)では、燃料室(7)側の面近傍は、該面が、アルコール水溶液等の水を多量に含む液体燃料に接していることから吸水して湿潤な状態になりやすく、他方、酸化剤室(8)側の面近傍は、該面が、取り込まれた大気等と接していることから比較的乾いた状態になりやすい。そうして、このような両面の接する環境が全く異なるプロトン伝導性電解質膜(6)では相対的に、湿潤な燃料室(7)側の面近傍ではプロトン伝導性が高く、液体燃料も透過し易い状態にあり、これと反対に、乾いている酸化剤室(8)側の面近傍ではプロトン伝導性は低く、液体燃料も透過し難い状態にあり、膜全体としての上記液体燃料の非透過性の性状は、これら両面近傍の異なる性状が合わさって値が決まってくると考えられる。つまり、直接液体型燃料電池の隔膜として使用されるカチオン交換膜において、該液体燃料の非透過性は、酸化剤室(8)側の面近傍をいかに乾き易くしてその非透過性を高く発揮させ、湿潤な状態にある燃料室(7)側の面から多量に透過してくる液体燃料の流れを遮断するかが大きなカギとなる。一方で、プロトン伝導性は、燃料室(7)側の面近傍をいかに湿潤しやすくしてプロトン伝導性を高めるかが重要となる。
しかして、このような電解質膜の両面近傍の乾き易さ、湿潤し易さは、必ずしも電解質膜の性状によるだけではなく、電解質膜の両面に接合される燃料室側触媒電極層、酸化剤室側触媒電極層のそれぞれの性状によっても影響されることが分かった。すなわち、酸化剤室側の触媒電極層に、含水率の低いプロトン伝導性樹脂を用いれば、電解質膜の酸化剤室側の面近傍を乾き易い状態にすることができ、一方で、燃料室側の触媒電極層に、含水率の高い炭化水素系プロトン伝導性樹脂を用いれば、電解質膜の燃料室側の面近傍を湿潤し易い状態にできることを見出し、本発明の完成に至った。
すなわち、本発明は、電極触媒が担持された導電性無機粒子およびプロトン伝導性樹脂を含んでなる、燃料室側触媒電極層と酸化剤室側触媒電極層とが、架橋型の炭化水素系カチオン交換樹脂により形成されてなるプロトン伝導性電解質膜の夫々の面に接合されてなる、直接液体型燃料電池に用いる電解質膜−触媒電極接合体であって、該燃料室側触媒電極層に含まれるプロトン伝導性樹脂は、液体燃料に難溶性であり、かつ相対湿度100%(25℃)における含水率が45質量%以上である、スルホン化されたスチレン系エラストマーであり、他方、該酸化剤室側触媒電極層に含まれるプロトン伝導性樹脂は、相対湿度50%(25℃)における含水率が14質量%以下のプロトン伝導性樹脂であることを特徴とする電解質膜−触媒電極接合体である。
また、本発明は、上記した電解質膜−触媒電極接合体を用いた、直接液体型燃料電池をも提供する。
本発明の電解質膜−触媒電極接合体においては、直接液体燃料と接する燃料室側触媒電極層に含水率の高いプロトン伝導性樹脂を用いるため、電解質膜の燃料室側の表面近傍が湿潤しやすい状態にあり、従って高プロトン伝導性を示す領域が形成される。一方で、大気等の酸化剤含有ガスと接する酸化剤室側触媒電極層に低含水率のプロトン伝導性樹脂を用いるため、電解質膜の酸化剤室側の表面近傍が乾きやすい状態にあり、従ってアルコール等の燃料の透過性が高度に抑制された領域が形成される。
これら両性状を示す領域が同時に形成された電解質膜から構成される本発明の電解質膜−触媒電極接合体を用いた直接液体型燃料電池では、電解質膜の抵抗が低いため高い出力を得ることができ、しかもアルコール等の燃料の透過性が抑制されているため、高い燃料濃度まで出力を高く維持できる。さらに、燃料室側触媒電極層のプロトン伝導性樹脂はアルコール等の燃料に対し高い溶解耐性を有するため、長期にわたり安定して高い出力を得ることが可能となる。
本発明の電解質膜−触媒電極接合体は、プロトン伝導性電解質膜のそれぞれの面に、燃料室側触媒電極層および酸化剤室側触媒電極層が接合されて構成される。
ここで、上記燃料室側触媒電極層は、電極触媒が担持された導電性無機粒子およびプロトン伝導性樹脂を含む。
燃料室側触媒電極層のプロトン伝導性樹脂には、液体燃料に難溶性であり、かつ相対湿度100%(25℃)における含水率が45質量%以上である、スルホン化されたスチレン系エラストマーが使用される。
この炭化水素系プロトン伝導性樹脂は、メタノール等の液体燃料や水に難溶性であるため、これを用いて形成した燃料室側触媒電極層は、燃料電池の発電中において、メタノール水溶液を燃料とする直接メタノール型燃料電池に用いた場合にも、触媒電極層がメタノール水溶液に溶解したり、極度に膨潤して触媒電極層が脱離するなどの問題が生じ難く、長期にわたり安定して高い出力を得ることができる。該プロトン伝導性樹脂は、20℃のメタノールに対する溶解度は1質量%未満、好適には0.8質量%未満である。また、該プロトン伝導性樹脂は、通常、20℃の水に対する溶解度は1質量%未満、好適には0.8質量%以下である。メタノールや水に対してこれらの溶解度を持つものであれば、直接液体型燃料電池で使用される液体燃料においても、燃料室側触媒電極層が溶解したり、膨潤による脱離することなく安定して使用できるのが一般的である。
さらに、本発明において、燃料室側触媒電極層に用いる前記炭化水素系プロトン伝導性樹脂は、相対湿度100%(25℃)における含水率が45質量%以上、さらに好適には60質量%以上を示す。
これらの含水率を持つことで、該プロトン伝導性樹脂を用いて作成した燃料室側触媒電極層は電池作動中において燃料室の液体燃料で湿潤し易い状態になり、しかして、該触媒電極層が接合された電解質膜の該表面近傍の含水状態が高まり、高いプロトン伝導性を示す領域が形成可能となる。プロトン伝導性樹脂の含水率が45質量%未満では、前記した電解質膜の燃料室側の表面近傍の湿潤状態が不十分となり、このためプロトン伝導性が低くなる。
通常、前記炭化水素系プロトン伝導性樹脂の上記相対湿度100%(25℃)における含水率は、250質量%以下、より一般的には180質量%以下である。
ここで、燃料室触媒電極層のプロトン伝導性樹脂にパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂を用いた場合には、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂は液体燃料へ溶解し易いため、該触媒電極層から樹脂が溶出したり、触媒電極層そのものの形状が崩れたりして安定して出力を得ることが困難になる。さらに、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂の含水率は低く、電解質膜の燃料室側表面近傍を湿潤し易くするのに必要な前記の含水率を達成することは困難である。
燃料室触媒電極層の炭化水素系プロトン伝導性樹脂は、炭化水素系電解質膜との馴染みが良く、さらに、上記の液体燃料への溶解性や含水率を得やすい点で、スチレン系エラストマーが使用される。通常、該スチレン系エラストマーは、25℃においてヤング率が1〜300(MPa)、好ましくは3〜100(MPa)にある。
ここで、スチレン系エラストマーとは、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体、又は該ブロック共重合体の共役ジエン部分を水素添加することによって、主鎖中の2重結合を部分的に又は全て飽和化させたブロック共重合体の総称である。ブロックの形態としては、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体、ラジアルブロック共重合体、マルチブロック共重合体等が挙げられ、これらの中ではトリブロック共重合体が好ましく用いられる。
ブロック共重合体中の芳香族ビニル化合物単位の含有率は特に限定されないが、陽イオン交換基を導入した後の電気的特性、機械的特性の点から5〜70質量%、より好ましくは10〜50質量%が好ましい。なお、得られるブロック共重合体の重量均分子量は7千〜30万、好ましくは1.5万〜15万、最も好ましくは1.5万〜5万の平均分子量になるような重合条件で重合されたものが好ましい。
こうしたスチレン系エラストマーは、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とを、アニオン重合、カチオン重合、配位重合、ラジカル重合等の公知の方法によってブロック共重合したものが制限なく採用される。これら製造条件は、特に限定されるものではないが、リビングアニオン重合によって製造されたものが、好適に使用される。
また、上記ブロック共重合体の共役ジエン部分を水素添加する場合には、水素添加率が95%以上になるよう水素を添加するのが好ましい。
上記スチレン系エラストマーの具体例としては、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロック共重合体(SBS)、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体(SIS)、また、SBS、SISをそれぞれ水素添加した、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体(SEBS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレントリブロック(SEPS)共重合体が挙げられ、特にイオン交換基を導入する工程での安定性の点、さらには燃料電池として使用する際の化学的安定性の点から、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体(SEBS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレントリブロック共重合体(SEPS)が好ましく、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体(SEBS)が最適である。
上述のスチレン系エラストマーに導入されるカチオン交換基には、プロトン伝導性に優れる強酸性基であり、導入も容易であることからスルホン酸基が採択される
スチレン系エラストマーへのスルホン酸基の導入方法は、例えば、スチレン系エラストマーの芳香族炭化水素基に、濃硫酸、発煙硫酸、二酸化硫黄、クロロスルホン酸などのスルホン化剤を常法に従って反応させる方法が挙げられる。
スチレン系エラストマーが有するカチオン交換基であるスルホン酸基の量は、前記した液体燃料への耐溶解性と含水率を得るために、通常0.3〜3.0mmol/g、より好ましくは0.5〜2.5mmol/g、更に好ましくは0.8〜2.0mmol/gであるのが好適である。カチオン交換基量が少ないほど含水率とプロトン伝導性が低くなり、0.3mmol/g未満では本発明で必要な含水率を得難くなり、さらには、燃料室側触媒電極層のプロトン伝導性が低く充分な出力を得難くなる。一方、カチオン交換基量が多いほど水やメタノールに対する溶解耐性は低下し、樹脂の構造や分子量にもよるが、3.0mmol/gを超えると充分な溶解耐性が得難くなる。
以上により得られたスルホン化されたスチレン系エラストマーは、単独で、または2種類以上を組み合わせて燃料室側触媒電極層の炭化水素系プロトン伝導性樹脂として用いることができる。もちろんこの場合には、2種類以上を組み合わせた後に、前記した溶解耐性と含水率を示せば良い。
本発明の電解質膜−触媒電極層接合体の燃料室側触媒電極層に用いる電極触媒が担持された導電性無機粒子としては、公知の燃料電池、特に直接液体型燃料電池の燃料室側触媒層で使用されるものが、何ら制限なく使用可能である。
ここで、電極触媒としては、水素、メタノールなどの液体燃料の酸化反応を促進する金属粒子であれば特に制限されるものではない。例えば、白金、金、銀、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、スズ、鉄、コバルト、ニッケル、モリブデン、タングステン、バナジウム、あるいはそれらの合金が挙げられる。これらの触媒の中では、液体燃料に対する触媒活性が優れている点で白金とルテニウムの合金が好適である。
上記触媒となる金属粒子の粒径は、通常、0.1〜100nm、より好ましくは0.5〜10nmである。粒径が小さいほど触媒性能は高くなるが、0.5nm未満のものは、作製が困難であり、100nmより大きいと十分な触媒性能が得にくくなる。
上記触媒の含有量は、燃料室側触媒電極層をシートとした状態で、通常0.1〜10mg/cm、より好ましくは0.5〜6.0mg/cmである。触媒の含有量が0.1mg/cm未満では液体燃料の酸化反応が充分に促進されず、10mg/cmを超えて坦持しても性能は飽和する。
これら電極触媒は、その使用量を少なくできて、かつ燃料室側触媒電極層の電子導電性を高くできるため、予め導電性無機粒子に担持させてから使用される。導電性無機粒子としては、電子導電性物質であれば特に限定されるものではないが、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、活性炭、黒鉛等を単独または混合して使用するのが一般的である。
この場合、電極触媒の導電性無機粒子への担持量は、電極触媒が担持された導電性無機粒子の全質量に対して、10質量%〜90質量%、好適には30質量%〜80質量%であるのが好ましい。10質量%未満では、電極触媒の活性が不充分となり、一方、90質量%を超えては、電極触媒が大量に必要となり、さらに、触媒電極層の電子導電性が不充分になることがある。
本発明の燃料室側触媒電極層における、前記した炭化水素系プロトン伝導性樹脂と電極触媒が担持された導電性無機粒子の配合割合は、質量比で5:95〜60:40、好適には15:85〜40:60が好ましい。炭化水素系プロトン伝導性樹脂が5質量%未満では、触媒電極層の湿潤性が不充分となり、さらに、触媒電極層のプロトン伝導性が不充分となる。他方、60質量%を超えると、触媒電極層の触媒活性が不充分となり、さらには、触媒電極層の電子導電性が不足する。
本発明の燃料室側触媒電極層には、上記した炭化水素系プロトン伝導性樹脂、電極触媒を担持された導電性無機粒子の他に、結着剤、電極触媒が担持されていない導電剤等が含まれていても良い。結着剤としては、各種熱可塑性樹脂が一般的に用いられるが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、スチレン・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体等が挙げられる。該結着剤の含有量は、燃料室側触媒電極層の湿潤し易い性状を妨げないよう、触媒電極層の0〜25質量%であることが好ましい。また、結着剤は、単独で使用しても良いし、2種類以上を混合して使用しても良い。電極触媒が担持されていない導電剤としては、上記した電極触媒を担持させる導電性無機粒子として例示されたものが使用可能である。
本発明では、上述した炭化水素系プロトン伝導性樹脂、電極触媒を担持された導電性無機粒子、および必要に応じて結着剤や導電剤から燃料室側触媒電極層を形成する方法は特に制限なく、当該分野で公知の方法が採用される。
例えば、電極基材に支持された、電極触媒が担持された導電性無機粒子と結着剤等との混合物の層に、炭化水素系プロトン伝導性樹脂を含む溶液を塗布してその内部に浸透させた後乾燥して触媒電極層を形成し、これをカチオン交換膜に接合して形成させる方法が挙げられる。また、炭化水素系プロトン伝導性樹脂を含む溶液に、電極触媒が担持された導電性無機粒子を配合して、触媒電極層を形成するためのペーストを調製し、これを電極基材に塗布して乾燥させ、これをカチオン交換膜に接合して形成させる方法も挙げられる。この他、上記のペーストをポリテトラフルオロエチレン製などの剥離シートに塗布して乾燥させ、これをカチオン交換膜に熱圧着して転写する方法や、前記ペーストをカチオン交換膜へ直接塗布して乾燥させ、その後必要に応じて熱プレスする方法なども挙げられる。触媒電極層の全体により均一に炭化水素系プロトン伝導性樹脂を含有させ易いということから、炭化水素系プロトン伝導性樹脂を含む溶液に、電極触媒が担持された導電性無機粒子を配合して、触媒電極層を形成するためのペーストを調製した後製造する方法がより好ましい。
これらの方法で、前記した炭化水素系プロトン伝導性樹脂を含む溶液を作成する溶媒には特に制限はなく、炭化水素系プロトン伝導性樹脂を溶液とすることができる溶媒が使用可能である。ここで、上記炭化水素系プロトン伝導性樹脂を含む溶液とは、目視により実質的に均一液相と確認される状態をいう。溶媒として、具体的には、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン等のケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、ブチルアセテート、ヘプチルアセテート等のアセテート類、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−エトキシエタノール等の1価アルコール類、エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン等、及び、これらの2種以上の混合有機溶媒が挙げられる。
前記本発明で炭化水素系プロトン伝導性樹脂として使用するスルホン化されたスチレン系エラストマーには、テトラヒドロフランと該テトラヒドロフランと相溶性を有する、沸点が80〜250℃の有機溶媒との質量比95:5〜65:35の混合溶媒が好適に使用される。
テトラヒドロフランは、スルホン化されたスチレン系エラストマーに対して特異的に溶解性が高く、溶液を簡単に製造する観点からは、該テトラヒドロフランを溶媒の主成分とすることが好適である。一方で、該テトラヒドロフランと相溶性を有する沸点が80〜250℃の有機溶媒を併用することで、触媒電極層には微細空隙が発達して形成され、また、微細クラックが形成され難くなる。
ここで、テトラヒドロフランと相溶性を有する有機溶媒とは、25℃下で、テトラヒドロフランと任意の割合で混ざり合う有機溶媒をいう。このようにテトラヒドロフランに対して良好な相溶性を有する有機溶媒でないと、触媒電極層の製造時において、該テトラヒドロフランが早期に蒸発していき、ペースト中においてこれら混合溶媒に相分離が生じ易くなり好ましくない。
また、このテトラヒドロフランと相溶性を有する有機溶媒の沸点が80℃より低い場合、触媒電極層に微細空隙が十分に発達して形成されなくなり、微細クラックも形成され易くなる。一方、この有機溶媒の沸点が250℃より高い場合、触媒電極層の製造において、該有機溶媒の乾燥に長時間が必要になり製造効率が悪化する。この有機溶媒の沸点は、好ましくは80〜200℃、特に好ましくは80〜150℃である。
このテトラヒドロフランと相溶性を有する有機溶媒の配合量は、該テトラヒドロフランに対する質量比で95:5〜65〜35、好ましくは95:5〜75:25である。95:5よりも少ない場合、触媒電極層の微細空隙の形成が未発達となったり、微細クラックの発生を充分に防止できなくなり、一方、65:35を超える場合には、前記したスルホン化されたスチレン系エラストマーの溶解性が不十分となる。
このテトラヒドロフランと相溶性を有する有機溶媒は、1種または2種以上の混合物であっても良い。2種以上の混合有機溶媒である場合、該混合有機溶媒の添加量は、前記したテトラヒドロフランに対する質量比である。
本発明において、上記テトラヒドロフランと混合する有機溶媒の具体例を挙げると、メチルエチルケトン等のケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、ブチルアセテート、ヘプチルアセテート等のアセテート類、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−エトキシエタノール等の1価アルコール類、エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン等、及び、これらの2種以上の混合有機溶媒が挙げられる。
さらに、前記したテトラヒドロフランと相溶性を有する有機溶媒は、25℃下の誘電率で好ましくは12〜50、より好ましくは15〜40を有することが好適である。この範囲の誘電率を有することにより、触媒電極層の製造時において、テトラヒドロフランが早期に蒸発してペースト中の該テトラヒドロフランと相溶性を有する有機溶媒の濃度が高まっても、スルホン化されたスチレン系エラストマーが極度に相分離を起こすことなく、分散性の高い触媒電極層の製造が可能となる。
炭化水素系プロトン伝導性樹脂の溶液の作成は、樹脂を溶媒に混合し攪拌すれば良いが、炭化水素系プロトン伝導性樹脂としてスルホン化されたスチレン系エラストマーを用いる場合には、先に、テトラヒドロフランのみを用いて該スルホン化されたスチレン系エラストマーの溶液を作成し、その後、この溶液に必要量の前記他の有機溶媒を配合して調整しても良い。
炭化水素系プロトン伝導性樹脂の濃度は1〜20質量%、好適には1〜15質量%の範囲が好ましい。炭化水素系プロトン伝導性樹脂の濃度が1質量%より小さい場合には、電極触媒が担持された導電性無機粒子等の配合量にもよるが、触媒電極層中のプロトン伝導性が不十分となることがあり、他方、20質量%を超える場合には、炭化水素系プロトン伝導性樹脂と電極触媒が担持された導電性無機粒子等との分散性が悪くなる。
次いで、上記炭化水素系プロトン伝導性樹脂の溶液に、前記した電極触媒が担持された導電性無機粒子等を、好適には前述の配合比率となるように添加して燃料室側触媒電極層形成用ペーストが作成される。該ペーストには、触媒坦持量の調整や電極触媒層の膜厚を調整するため、暫時前記炭化水素系プロトン伝導性樹脂の溶液に使用されている溶媒と同様の溶媒を、ペースト調整時にさらに添加して、その粘度調整を行なっても良い。さらに、必要に応じて、電極触媒と有機溶媒の接触による発熱等を防止する目的で、電極触媒が担持された導電性無機粒子に水を混合し、これを前記した炭化水素系プロトン伝導性樹脂の溶液に混合しても良い。
前記した炭化水素系プロトン伝導性樹脂の溶液と電極触媒が担持された導電性無機粒子等の混合物は、スターラー、ボールミル、混練器等による攪拌、あるいは超音波分散などの方法で1〜24時間処理されて燃料室側触媒電極層形成用ペーストが形成される。
該ペーストを電極基材に印刷して燃料室側触媒電極層を形成する場合の電極基材には、多孔質のものが使用され、具体的には、カーボン繊維の織布や不職布、カーボンペーパー等が使用される。その厚みは、50〜300μmが好ましい。また、その空隙率は、50〜90%が好ましい。
また、前記ペーストを、一旦、剥離シートに印刷乾燥し、シート上に得られた触媒電極層を電解質膜に転写する場合のシートには、剥離性に優れ、表面が平滑な樹脂製シートが好ましく用いられる。特に、ポリテトラフルオロエチレン製、ポリエチレンテレフタレート製などの、厚さ50〜200μmのシートが好ましい。
電解質膜上に直接、前記ペーストを印刷、乾燥して触媒電極層を形成する場合には、電解質膜は乾燥後、印刷を行う湿度に平衡させ、減圧吸引などによって電解質膜を固定して印刷することが好ましい。電解質膜を塗工装置のロール間で張力をかけて印刷することも好ましい。
いずれの方法においても、前記ペーストは、スクリーン印刷、グラビア印刷、スプレー印刷などの方法で印刷し、その後、用いた溶媒にもよるが、通常0.1〜24時間程度室温で乾燥させる。必要に応じて、減圧下で0.1〜5時間程度乾燥させても良い。印刷は、乾燥後の触媒電極層の厚みが、通常、5〜50μmとなるように行われる。上記電極基材に支持させる場合には、その空隙内及び陽イオン交換膜との接合側表面に前記の厚みになるよう充填及び付着されて触媒電極層が構成される。
これら触媒電極層は、触媒電極層を前記した電極基材に支持させる場合や、一旦触媒電極層を剥離シートに形成させ、これを電解質膜に転写する場合には、該電解質膜と触媒電極層との接合は、通常、熱圧着により実施する。この熱圧着は、加圧、加温できる装置を用いて実施され、一般的には、ホットプレス機、ロールプレス機等により行われる。プレス温度は一般的には80℃〜200℃である。プレス圧力は、使用する触媒電極層の厚み、硬度に依存するが、通常0.5〜20MPaである。
また、触媒電極層を直接電解質膜上に形成させる場合も、必要に応じて、電解質膜と触媒電極層を、前記と同様の条件で熱圧着することも好ましい。
本発明の電解質膜−触媒電極接合体において、もう一方の酸化剤室側触媒電極層は、電極触媒が担持された導電性無機粒子と、相対湿度50%(25℃)における含水率が14質量%以下のプロトン伝導性樹脂を含んでなる。
酸化剤室側触媒電極層が上記含水率のプロトン伝導性樹脂を有することで、該触媒電極層は乾き易い性状になり、しかして、該触媒電極層と接する電解質膜の酸化剤室側表面近傍の含水率が低減して、メタノールなどの液体燃料の高い非透過性を達成可能となる。
液体燃料の高い非透過性を達成するため、前記プロトン伝導性樹脂の相対湿度50%(25℃)の含水率は14質量%以下であり、好適には12質量%以下であることが好ましい。
一方で、前記プロトン伝導性樹脂の相対湿度50%(25℃)における含水率が極端に低い場合、該プロトン伝導性樹脂を含んで構成される酸化剤室側触媒電極層のプロトン伝導性が不充分となり出力が低下することがある。酸化剤室側触媒電極層のプロトン伝導性を高めるため、プロトン伝導性樹脂の含水率は、5質量%以上が好ましく、さらには8質量%以上がより好ましい。
本発明における酸化剤室側触媒電極層のプロトン伝導性樹脂は、上記した含水率を満たすものであれば、何ら制限なく使用可能である。該プロトン伝導性樹脂は、酸化剤室側触媒電極層で発生する水への耐溶解性を勘案すると水に難溶性であることが求められ、通常、20℃の水に対する溶解度は1質量%未満、好適には0.8質量%以下である。
酸化剤室側触媒電極層のプロトン伝導性樹脂において、上記含水率のものは、例えば、燃料室側触媒電極層のプロトン伝導性樹脂として例示された炭化水素系プロトン伝導性樹脂を、炭化水素系樹脂の構造やカチオン交換容量を調整させることにより得ることが可能である。この場合、炭化水素系樹脂の構造によっても異なるが、前記炭化水素系プロトン伝導性樹脂のカチオン交換容量は、通常、0.1〜1.5mmol/gであり、好適には0.1〜1.2mmol/gが好ましい。
酸化剤室側触媒電極層のプロトン伝導性樹脂としては、特に、カチオン交換容量を極端に小さくすることなく上記の含水率のものを得ることが容易である点で、フッ素系のプロトン伝導性樹脂が好ましい。さらに、フッ素系のプロトン伝導性樹脂としては、炭化水素系樹脂の水素原子が部分的にフッ素原子で置換された部分フッ素系のプロトン伝導性樹脂でも良いが、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂が最も好適に使用される。
該パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂は、燃料電池の触媒電極層のプロトン伝導性樹脂として広く知られており、これらを制限なく使用できる。また、Nafion(デュポン社製)、Flemion(旭硝子社製)、Aciplex(旭化成ケミカルズ社製)として商業的にも入手可能である。
これらのパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂の中では、耐久性の観点から分子量は5000以上のものが好ましい。また、触媒電極層のプロトン伝導性を充分なものとし、かつ、上記の含水率を得るために、前記パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂のカチオン交換容量は、通常、0.7〜1.1mmol/g、好適には0.8〜1.0mmol/gであることが好ましい。
上記のパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂は、例えば、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン等のケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、ブチルアセテート、ヘプチルアセテート等のアセテート類、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、2−エトキシエタノール等の1価アルコール類、エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン等、及びこれらの2種以上の混合有機溶媒、さらにはこれらの有機溶媒と水の混合物に溶解させて用いることができる。特には、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類の単独もしくは2種以上の混合物に、水を添加した混合溶媒系が好ましく用いられる。
上記溶液中におけるパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂の濃度は、通常、1〜25質量%、好適には3〜20質量%が好ましい。1質量%に満たない場合、酸化剤室側触媒電極層のプロトン伝導性が不充分になり、一方、25質量%を超える場合には、後述の電極触媒を担持した導電性無機粒子の分散性が悪くなることがある。
本発明における酸化剤室側触媒電極層は、上記のプロトン伝導性樹脂の溶液に、電極触媒が担持された導電性無機粒子が配合された触媒電極層形成用ペーストを用いて形成されるのが好ましい。
ここで、電極触媒としては、酸素の還元反応に触媒作用を有するものであれば良く、具体的には、燃料室側触媒電極層の電極触媒として挙げられたものが例示される。電極触媒が担持される導電性無機粒子の種類や、該導電性無機粒子への電極触媒の担持量も、燃料質側と同様のものを好適に使用可能である。
酸化剤室側触媒電極層における、前記プロトン伝導性樹脂と電極触媒が担持された導電性無機粒子との配合割合は、通常、質量比で10:90〜50:50であり、好適には20:80〜40:60である。プロトン伝導性樹脂の配合割合が10質量%に満たない場合には、酸化剤室側触媒電極層のプロトン伝導性が不充分になり、一方で50質量%を超える場合には、触媒電極層の活性が不充分になるとともに乾燥し易い性状も不充分になる。
前記した触媒電極層形成用ペーストの作成方法や、該ペーストからの酸化剤室側触媒電極層形成の方法にも特に制限はなく、燃料室側触媒電極層と同様の方法が好適に使用できる。
本発明において、上述した燃料室側触媒電極層および酸化剤室側触媒電極層と接合されるプロトン伝導性電解質膜は、架橋型の炭化水素系カチオン交換樹脂により形成されてなるカチオン交換膜が特に限定されずに使用される。こうした架橋型の炭化水素系カチオン交換膜と、本発明の燃料室側触媒電極層および酸化剤室側触媒電極層を接合することによって、燃料室側表面近傍が湿潤しやすくなり酸化剤室側表面近傍が乾き易くなるという本発明の効果が発揮される。
しかしながら、前記した本発明の効果が発揮され易く、かつ、高濃度の液体燃料を用いた際の液体燃料の透過性が本来低い、炭化水素系の電解質膜が好ましく、さらには架橋型の炭化水素系カチオン交換膜がより好ましく、機械的強度を始めとした種々の利点があることから、基材である多孔質膜の空隙に架橋型の炭化水素系カチオン交換樹脂が充填されてなるカチオン交換膜が特に好ましい。
ここで、前記炭化水素系カチオン交換樹脂は、既に説明したような炭化水素系樹脂にカチオン交換基が導入された構造を有する。カチオン交換基としては、具体的にはスルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基等が挙げられ、中でも、得られるカチオン交換膜の電気抵抗を低くできる等の観点から、強酸性基であるスルホン酸基が特に好ましい。
さらに、架橋型の炭化水素系カチオン交換樹脂とは、共有結合による架橋を一定程度には有する架橋重合体、即ち、炭素−炭素結合、炭素−酸素結合などの共有結合性の架橋点を一定程度には有する樹脂である。すなわち、非架橋の重合体やイオン結合性の架橋のみの重合体では、一般に、メタノール等の液体燃料や水に対して膨潤しやすく、極端な場合には溶解してしまうため、少なくとも、これらの性状が付与される程度には共有結合により架橋されているのが好ましい。他方、共有結合による架橋の密度が高くなると、メタノール等の液体燃料の非透過性は向上するが、高くなりすぎると、得られるカチオン交換膜の電気抵抗が高くなりすぎて好ましくない。
本発明において上記カチオン交換膜は、カチオン交換容量が、通常0.1〜4.0mmol/g、より好適には0.3〜3.0mmol/gの範囲にあり、含水率が、通常5〜90%、より好適には10〜80%であり、さらに、電気抵抗が40℃、湿潤状態における交流インピーダンス法による電気抵抗であらわして通常0.25Ω・cm以下、より好適には0.20Ω・cmである。また、液体燃料の透過性は、例えば、25℃において30質量%のメタノールに接触している場合のカチオン交換膜を通したメタノールの透過率は通常1500g/m・hr以下、好適には10〜1100g/m・hrの範囲、より好適には10〜600g/m・hrの範囲であるのが好ましい。
さらに膜厚は、電気抵抗を低く抑える観点及び支持膜として必要な機械的強度を付与する観点から、通常10〜200μmの厚みを有するものが好ましく、より好ましくは20〜150μmを有するものが好ましい。
以上の、本発明で用いられるカチオン交換膜は、公知の如何なる方法により製造したものであっても良い。多孔質膜の空隙に架橋型の炭化水素系カチオン交換樹脂が充填されてなるカチオン交換膜である場合、好適な製造方法を例示すると以下の方法が挙げられる。
すなわち、カチオン交換基の導入に適した官能基を有する重合性単量体またはカチオン交換基を有する重合性単量体、架橋性重合性単量体、および重合開始剤を含む重合性組成物を、多孔質膜に接触させて、該重合性組成物を多孔質膜の有する空隙部に充填させた後重合硬化させ、次いで、必要に応じてカチオン交換基を導入するカチオン交換膜の製造方法である。
ここで、前記多孔質膜の形態は特に限定されず、多孔質フィルム、織布、不織布、紙、無機膜等が制限なく使用でき、材質としても熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、あるいは無機物でも又はそれらの混合物でも構わず使用できる。製造が容易であるばかりでなくカチオン交換樹脂との密着強度が高いという観点から、熱可塑性樹脂であることが好ましい。当該熱可塑性樹脂としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘプテン等のα−オレフィンの単独重合体または共重合体等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−オレフィン共重合体等の塩化ビニル系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフロオロエチレン−ペルフロオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体等のフッ素径樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂等が例示される。これらのなかでも特に、機械的強度、化学的安定性、耐薬品性に優れ、炭化水素系イオン交換樹脂との馴染みがよいことからポリオレフィン樹脂を用いるのが好ましい。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン又はポリプロピレン樹脂が特に好ましく、ポリエチレン樹脂が最も好ましい。
さらに後述の平均細孔径を有すものの入手が容易で、かつ強度に優れる点でポリオレフィン樹脂製の多孔質フィルムであることが好ましく、ポリエチレン樹脂製の多孔質フィルムであることが特に好ましい。
該多孔質フィルムは、平均細孔径が、通常0.005〜10μm、より好適には0.01〜5μmであり、空隙率が10〜70%、より好適には20〜50%である。なお、本発明において、上記多孔質フィルムの空孔の平均孔径は、JIS K 3832に従ったバブルポイント方により測定した値をいう。
フィルム厚は、得られるカチオン交換膜を前記厚さとするため、通常10〜200μm、好適には20〜150μmである。
さらに、透気度(JIS P−8117)は1500秒以下が好ましく、1000秒以下がより好ましい。表面平滑性は、粗さ指数で表して10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。
上記の多孔質膜が有する空隙部に充填させる重合性組成物として、カチオン交換基を導入可能な官能基を有する重合性単量体としては、特に制限されること無く該機能を有する公知のものが使用できるが、カチオン交換基を導入可能な官能基として、前記した好適なカチオン交換基であるスルホン酸基を導入容易な基であることから、スチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、α−メチルスチレン、アセナフチレン、ビニルナフタリン、α−ハロゲン化スチレン、α,β,β’−トリハロゲン化スチレン等のなどの芳香族炭化水素基を有するラジカル重合性単量体が好ましく使用できる。また、これらの芳香族炭化水素基を有するラジカル重合性単量体は、スチレン等の該芳香族炭化水素基にビニル基が直結している構造のものが、(メタ)アクリル基が結合する構造のものよりも、加水分解を受け難い等の理由により好ましい。
カチオン交換基を有する重合性単量体としては、スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリル酸エステル、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、;さらには、α−ハロゲン化ビニルスルホン酸、α,β,β’−ハロゲン化ビニルスルホン酸、マレイン酸、イタコン酸、スチレンホスホニル酸、ビニルリン酸などのエステル類及びこれらに対応する塩類等の酸性基含有ラジカル重合性単量体が好適に使用される。
さらに、架橋性重合性単量体としては、上記のような各重合性単量体と共重合して架橋型の高分子を生成する公知の如何なる架橋剤でも良く、例えば、ジビニルベンゼン類、ジビニルスルホン、ブタジエン、クロロプレン、ジビニルビフェニル、トリビニルベンゼン類、ジビニルナフタレン、ジアリルアミン、ジビニルピリジン類等のジビニル化合物が用いられる。
カチオン交換基の導入に適した官能基を有する重合性単量体またはカチオン交換基を有する重合性単量体100モルに対する、架橋性重合性単量体の配合量は、通常0.5〜40モル%、より好適には1〜30モル%が好ましい。前述したとおり、架橋性重合性単量体の配合量が小さくなり0.5モル%を下回ると、イオン交換樹脂の耐溶剤性が劣り、かつメタノール等の液体燃料の非透過性が不充分となり、逆に40モル%を超えるほど大きくなると、カチオン交換膜の電気抵抗が高くなりすぎて好ましくない。
以上の重合性単量体成分に配合させる重合開始剤としては、上記重合性単量体を重合させることが可能な化合物であれば特に限定されるものではないが、有機過酸化物であることが好ましく、例えば、オクタノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシド等が挙げられる。
重合開始剤の配合量としては、上記機能を発するに必要な有効量であれば良いが、通常は、使用する全重合性単量体成分の合計100質量部に対して0.1〜20質量部(好適には0.5〜10質量部)用いるのが一般的である。
本発明で使用される重合性組成物には、得られるカチオン交換膜の液体燃料の非透過性を更に高めるため、カチオン交換膜に導入されてなるカチオン交換基とイオンコンプレックス形成可能な3級アミノ基を有する重合性単量体を用いることも有効である。これら、3級アミノ基を有する重合性単量体の種類や配合量については、WO2006/028292に記載された手法を採用することができる。
なお、重合性組成物には、上記各成分の他に、機械的強度や重合性等の物性を調節するために、必要に応じて他の成分が配合されてもよい。このような他の成分としては、例えば、アクリロニトリル、アクロレイン、メチルビニルケトン等の重合性単量体や、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジメチルイソフタレート、ジブチルアジペート、トリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、ジブチルセバケート等の可塑剤類が挙げられる。
重合性組成物と多孔質膜との接触方法は、重合性組成物が多孔質膜の有する空隙部に浸入できる方法であれば特に限定されず、例えば、重合性組成物を多孔質膜に塗布やスプレーしたり、あるいは、多孔質膜を重合性組成物中に浸漬する方法などが例示される。浸漬による場合に、その浸漬時間は多孔質膜の種類や懸濁液の組成にもよるが、一般的には0.1秒〜十数分である。
重合方法も特に限定されず、用いた重合性単量体及び重合開始剤に応じて適宜公知の方法を採用すればよい。重合開始剤として前記したような有機過酸化物を用いた場合には加熱による方法(熱重合)が一般的である。この方法は、その操作が容易で、また比較的均一に重合させることができ、他の方法よりも好ましい。重合に際しては、酸素による重合阻害を防止し、また表面の平滑性を得るため、ポリエステル等のフィルムにより覆った後に重合させることがより好ましい。さらにフィルムで覆うことにより、過剰の重合性組成物が取り除かれ、薄く均一な燃料電池隔膜とすることができる。また、熱重合により重合させる場合の重合温度は特に制限されず、公知の条件を適宜選択して適用すればよいが、一般的には50〜150℃程度、好ましくは60〜120℃程度である。また重合時間としては10分〜10時間程度である。
このような重合により得られる膜状高分子体に、前記したようなカチオン交換基の導入方法によってカチオン交換基が導入されて、本発明で使用されるカチオン交換膜が得られる。
以上に記述した、プロトン伝導性電解質膜、燃料室側触媒電極層および酸化剤室側触媒電極層により構成される本発明の電解質膜−触媒電極接合体は、通常、図1に示したような構造の直接液体型燃料電池において使用される。こうした直接液体型燃料電池の液体燃料としては、メタノールが最も一般的であり、本発明の効果も最も顕著に発揮されるものであるが、その他、エタノール、エチレングリコール、ジメチルエーテル、ヒドラジン等においても同様の優れた効果が発揮される。これらの液体燃料は、通常は、1〜99質量%の水溶液として使用されるが、本発明の効果が顕著に発揮され易く、かつ液体燃料の体積を含めて電池そのものをコンパクトにできる点で、15質量%以上の水溶液として使用されるのが好ましい。
以下、本発明を更に詳細に説明するため実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
尚、実施例および比較例に示すプロトン伝導性樹脂、プロトン伝導性電解質膜、電解質膜−触媒電極接合体の特性は、以下の方法により測定した。
1)カチオン交換容量、含水率の測定
プロトン伝導性樹脂の溶液を、乾燥後の厚さ10μmとなるようにガラス板上にキャストし、室温で24時間、50℃で5時間乾燥して、プロトン伝導性樹脂のフィルムを得た。
プロトン伝導性樹脂フィルム、または電解質膜を1mol/L−HCl水溶液に10時間以上浸漬し、水素イオン型とした後、1mol/L−NaCl水溶液でナトリウムイオン型に置換させ、遊離した水素イオンを水酸化ナトリウム水溶液を用いて電位差滴定装置(COMTITE−900、平沼産業株式会社製)で定量した(Amol)。次に、同じプロトン伝導性樹脂フィルム、または電解質膜を25℃で、1mol/L−HCl水溶液に4時間以上浸漬し、イオン交換水で十分水洗した後に取り出しティッシュペーパー等で表面の水分を拭き取り湿潤時の重さ(W100g)を測定し、これを相対湿度100%RH(25℃)における含水質量とした。W100の測定後、フィルムまたは膜を温度25℃、相対湿度50%RHに設定した恒温恒湿槽中に設置し、一晩放置した後に相対湿度50%RH(25℃)における重さ(W50g)を測定した。さらに60℃で5時間減圧乾燥させその質量を測定した(Dg)。上記測定値に基づいて、プロトン伝導性樹脂フィルム、または電解質膜の、カチオン交換容量および含水率を次式により求めた。
カチオン交換容量=A×1000/D[mmol/g−乾燥質量]
相対湿度100%RH(25℃)における含水率=100×(W100−D)/D[%]
相対湿度50%RH(25℃)における含水率=100×(W50−D)/D[%]
2)プロトン伝導性樹脂の重量平均分子量
プロトン伝導性樹脂の0.1質量%テトラヒドロフラン溶液を調整し、テトラヒドロフランを移動相とするゲルパーミエーションクロマトグラフィーで、重量平均分子量を測定した。重量平均分子量は、昭和電工製スタンダードポリスチレンで換算して求めた。
3)プロトン伝導性樹脂の溶解度
プロトン伝導性樹脂0.5gを10mlの水、またはメタノールに浸漬し、攪拌しながら25℃で24時間放置した。その後、未溶解のプロトン伝導性樹脂を定性ろ紙でろ過し、50℃で3時間乾燥後の質量を測定した。溶解した樹脂質量から、上記溶媒に対する溶解度(質量%)を算出した。
4)多孔質膜の平均細孔径
ASTM−F316−86に準拠し、ハーフドライ法にて測定した。
5)多孔質膜の空隙率
多孔質膜の体積(Vcm)と質量(Ug)を測定し、多孔質膜の材質であるポリエチレンの樹脂密度を0.9(g/cm)として、下記の式により算出した。
空隙率=[(V−U/0.9)/V]×100[%]
6)電解質膜の電気抵抗
線幅0.3mmの白金線5本を互いに離して平行に配置した絶縁基板を用い、前記白金線に純水に湿潤した2.0cm幅の短冊状の電解質膜を押し当てた。40℃の恒温恒湿槽中で電解質膜を常に湿潤状態に保持し、白金線間に1kHzの交流を印加したときの交流インピーダンスを測定した。
白金線間距離を0.5〜2.0cmに変化させたときのそれぞれの交流インピーダンスを測定し、白金線間距離に対してプロットしたインピーダンスの勾配(抵抗極間勾配)から電解質膜の比抵抗を算出することで、白金線と電解質膜との間に生じる接触抵抗の影響を除外した。白金線間距離とインピーダンス測定値との間には良い直線関係が得られた。抵抗極間勾配と膜厚から下式により電解質膜の電気抵抗を算出した。
R={S×(L×2.0)}×L
R :膜抵抗[Ω・cm
L :膜厚[cm]
S :抵抗極間勾配[Ω/cm]
7)メタノール透過率
電解質膜を1mol/L−HCl水溶液に10時間以上浸漬し、水素イオン型とした後、室温で24時間以上乾燥した。
この電解質膜、または電解質膜−触媒電極接合体を燃料電池セル(透過面積1cm)の中央に取り付け、一方の室にメタノール濃度30質量%の水溶液を液体クロマトグラフ用ポンプで供給し、反対側の室にアルゴンガスを300ml/minで供給した。測定は25℃の恒温槽内で行った。隔膜の反対側の室から流出するアルゴンガスの一定量をガスサンプラによりガスクロマトグラフ装置(島津製作所製GC14B)に直接導入し、アルゴンガス中のメタノール濃度を測定し、透過したメタノール量を求めた。
8)メタノール燃料型での燃料電池出力電圧
電解質膜−触媒電極接合体を図1に示す構造の燃料電池セルに組み込んだ。次いで、燃料電池セル温度を30℃に設定し、燃料室側に15質量%、または30質量%のメタノール水溶液を、酸化剤室側に相対湿度80%の大気圧の空気を200ml/min.で供給して発電試験を行ない、電流密度0A/cm、0.1A/cmにおけるセルの端子電圧を測定した。
9)耐久性評価
上記出力電圧の測定後、30℃、0.1A/cmで連続発電試験を行い、250時間後の出力電圧を測定し、電極接合体の耐久性を評価した。
製造例1
スチレン90モル%、ジビニルベンゼン10モル%からなる重合性単量体組成物に、全単量体100質量部に対し5質量部となるように重合開始剤t−ブチルパーオキシエチルヘキサノエートを加え、これに多孔質フィルム(重量平均分子量25万のポリエチレン製、膜厚25μm、平均孔径0.03μm、空隙率37%)を5分間浸漬した。次いで、この多孔質フィルムを重合性単量体組成物中から取り出し、厚さ100μmのポリエステルフィルムを剥離材として多孔質フィルムの両側を被覆した後、0.3MPaの窒素加圧下、80℃で5時間加熱重合した。 得られた膜状物を98%濃硫酸と純度90%以上のクロロスルホン酸の1:1の混合物中に40℃で60分間浸漬してベンゼン環をスルホン化し、カチオン交換膜を得た。得られたカチオン交換膜の膜特性を表1に示す。
製造例2
表1に示す重合性単量体組成物と多孔質フィルムを用いた以外は、製造例1と同様にしてカチオン交換膜を得た。得られたカチオン交換膜の膜特性を表1に示した。
Figure 0005317416
製造例3
ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体(重量平均分子量5万、スチレン含有量30質量%)を1質量%の濃度でクロロホルムに溶解し、5〜10℃に冷却した。得られた溶液を激しく撹拌しながら、樹脂の含有するスチレンユニットと等モルのクロロスルホン酸を、クロロホルム溶液(クロロスルホン酸10体積%)にしてゆっくり滴下し、60分間反応させた。その後、反応溶液をイオン交換水中へ投入して2時間攪拌し、残存クロロスルホン酸の分解と生成物の加水分解反応を完結させた。次いで、クロロホルムを減圧留去して沈殿した生成物を濾別し、これをイオン交換水で洗浄後、30℃で20時間乾燥させることにより炭化水素系プロトン伝導性樹脂を得た。得られたプロトン伝導性樹脂の物性を測定した結果を表2に示した。
製造例4
原料となるスチレン系エラストマーと、クロロスルホン酸基量を表2に示すものに変えた以外は製造例3と同様にしてプロトン伝導性樹脂を作成した。得られたプロトン伝導性樹脂の、物性を測定した結果を表2に示した。
製造例5
ポリエーテルエーテルケトン(Victrex社製450PF)を25℃の98%硫酸中で55時間スルホン化した。得られたスルホン化ポリエーテルエーテルケトンを含む溶液をイオン交換水中に注いでスルホン化ポリエーテルエーテルケトンを沈殿させ、さらにイオン交換水で2回洗浄した後、50℃で10時間減圧乾燥して、炭化水素系プロトン伝導性樹脂を得た。得られたプロトン伝導性樹脂の物性を表2に示した。
Figure 0005317416
実施例1
(燃料室側触媒電極層の作成)
製造例3の炭化水素系プロトン伝導性樹脂を、テトラヒドロフランに5質量%となるように溶解させプロトン伝導性樹脂の溶液を得た。ここに、白金とルテニウム合金触媒(ルテニウム50mol%)を50重量%担持させたカーボンブラックを、前記プロトン伝導性樹脂30質量%に対して70質量%となるように加え、その後、スターラーで充分に攪拌して燃料室側触媒電極層形成用ペーストを作製した。次いで、該ペーストを、厚さ100μm、空孔率80%のカーボンペーパー上に、乾燥後に前記合金触媒が4mg/cmとなるようにブレード法にて塗布し、室温で24時間、さらに60℃で4時間減圧乾燥し、燃料室側触媒電極層とした。
(酸化剤室側触媒電極層の作成)
表2に物性を示したパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂a(アルドリッチ社製ナフィオン溶液、カチオン交換容量0.9mmol/g)を、水20質量%、イソプロピルアルコール40質量%およびエタノール40質量%からなる混合溶媒に5質量%の濃度で分散させた溶液に、白金触媒を50質量%担持させたカーボンブラックを、前記パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂30質量%に対して70質量%となるように加え、その後、スターラーなどで充分に攪拌して酸化剤室側触媒電極層形成用ペーストを作成した。該ペーストを用い、燃料室側触媒電極層と同様にして酸化剤室側触媒電極層を形成した。前記白金触媒は、3mg/cmとなるようにした。
(電解質膜−触媒電極接合体の作成)
製造例1で得た電解質膜を、1mol/L−HCl水溶液に浸漬して水素イオン型とした。
次に、該電解質膜の一方の面に上記の燃料室側触媒電極層を、他方の面に上記の酸化剤室側触媒電極層を重ね、100℃、圧力5MPaの加圧下で100秒間熱プレスした後、室温で2分間放置して、本発明の電解質膜−触媒電極接合体を得た。得られた電解質膜−触媒電極接合体の特性を評価した結果を表3に示した。
実施例2〜4,比較例1
燃料室側触媒電極層の作成材料、酸化剤室側触媒電極層の作成材料、および電解質膜に表3に示すものを用い、実施例1と同様にして本発明の電解質膜−触媒電極接合体を得た。得られた電解質膜−触媒電極接合体の特性を評価した結果を表3に示した。
比較例2
電解質膜として市販のパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂膜(膜特性は表1に示す)を用いた以外は、実施例1と同様にして、本発明の電解質膜−触媒電極接合体を得た。得られた電解質膜−触媒電極接合体の特性を評価した結果を表3に示した。
比較例3、5、8
燃料室側触媒電極層、酸化剤室側触媒電極層の両方にプロトン伝導性樹脂として、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂aを用い、実施例1、2、比較例2と同様にして電解質膜−触媒電極接合体を作成した。得られた電解質膜−触媒電極接合体の特性を評価した結果を表3に示した。
比較例4、6、9
燃料室側触媒電極層、酸化剤室側触媒電極層の両方に、製造例3で作成した炭化水素系プロトン伝導性樹脂を用い、実施例1、2、比較例2と同様にして電解質膜−触媒電極接合体を作成した。得られた電解質膜−触媒電極接合体の特性を評価した結果を表3に示した。
比較例
燃料室側触媒電極層にパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂aを用い、酸化剤室側触媒電極層に製造例3で作成した炭化水素系プロトン伝導性樹脂を用いて、実施例2と同様にして電解質膜−触媒電極接合体を作成した。得られた電解質膜−触媒電極接合体の特性を評価した結果を表3に示した。
Figure 0005317416
図1は固体高分子型燃料電池の基本構造を示す模式図である。
符号の説明
1;電池隔壁
2;燃料流通孔
3;酸化剤ガス流通孔
4;燃料室側触媒電極層
5;酸化剤室側触媒電極層
6;プロトン伝導性電解質膜
7;燃料室
8;酸化剤室

Claims (4)

  1. 電極触媒が担持された導電性無機粒子およびプロトン伝導性樹脂を含んでなる、燃料室側触媒電極層と酸化剤室側触媒電極層とが、架橋型の炭化水素系カチオン交換樹脂により形成されてなるプロトン伝導性電解質膜の夫々の面に接合されてなる、直接液体型燃料電池に用いる電解質膜−触媒電極接合体であって、該燃料室側触媒電極層に含まれるプロトン伝導性樹脂は、液体燃料に難溶性であり、かつ相対湿度100%(25℃)における含水率が45質量%以上である、スルホン化されたスチレン系エラストマーであり、他方、該酸化剤室側触媒電極層に含まれるプロトン伝導性樹脂は、相対湿度50%(25℃)における含水率が14質量%以下のプロトン伝導性樹脂であることを特徴とする電解質膜−触媒電極接合体。
  2. 酸化剤室側触媒電極層のプロトン伝導性樹脂が、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂からなることを特徴とする、請求項1記載の電解質膜−触媒電極接合体。
  3. 直接液体型燃料電池が、燃料濃度が15質量%以上の液体燃料を用いる直接液体型燃料電池である請求項1または請求項2に記載の電解質膜−触媒電極接合体。
  4. 請求項1〜のいずれか一項に記載の電解質膜−触媒電極接合体を使用した直接液体型燃料電池。
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