JP4836666B2 - 触媒電極層用プロトン伝導性付与剤溶液 - Google Patents

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Description

本発明は、固体高分子型燃料電池に使用する触媒電極層を製造するためのプロトン伝導性付与剤溶液に関する。
燃料電池は、燃料と酸化剤とを連続的に供給し、これらが反応した時の化学エネルギーを電力として取り出す発電システムである。燃料電池は、これに用いる電解質の種類によって、動作温度が比較的低いリン酸型および固体高分子型と、高温で動作する溶融炭酸塩型および固体電解質型とに大別される。
これらの中で、固体高分子型燃料電池は、電解質として作用する固体高分子の隔膜の両面に、触媒が坦持された電極層(触媒電極層)を接合し、一方の触媒電極層が存在する側の室(燃料室)に燃料である水素ガスやメタノール等の液体燃料を、他方の触媒電極層が存在する側の室に酸化剤である酸素や空気等の酸素含有ガスをそれぞれ供給し、両触媒電極層間に外部負荷回路を接続することにより、燃料電池として作用させる。
こうした固体高分子型燃料電池の基本構造を図1に示す。図中、(1)は電池隔壁、(2)は燃料流通孔、(3)は酸化剤ガス流通孔、(4)は燃料室側触媒電極層、(5)は酸化剤室側触媒電極層、(6)は固体高分子電解質膜を示す。この固体高分子型燃料電池において、燃料室(7)では、供給された燃料からプロトン(水素イオン)と電子が生成し、このプロトンは固体高分子電解質(6)内を伝導し、他方の酸化剤室(8)に移動し、空気又は酸素ガス中の酸素と反応して水を生成する。この時、燃料室側触媒電極層(4)で生成した電子は、外部負荷回路を通じて酸化剤室側触媒電極層(5)へと移動することにより電気エネルギーが得られる。
このような構造の固体高分子型燃料電池において、上記電解質膜には、陽イオン交換膜が使用される。そして、この陽イオン交換膜としては、化学的な安定性に優れることから、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂膜が主に使用されている。一方、該パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂膜の隔膜と接合される触媒電極層は、触媒である白金等の金属粒子とカーボンブラック等の導電剤とが分散する混合物の層が、そのまま、或いは多孔性材料からなる電極基材により支持されたものが使用される。
しかして、これら陽イオン交換膜と触媒電極層とは、熱圧着することにより一体に接合される。このとき、上記触媒電極層は、そのまま陽イオン交換膜と接合したのでは、反応サイトが陽イオン交換膜との接合界面のみに局限されるので、実質的な作用面積が小さくなる問題があった。そのため、触媒電極層の接合面にパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂の有機溶液を塗布してその内部に浸透させたり、或いは該触媒電極層の形成用ペーストに該パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂を配合させることにより、触媒電極層の内部にまで、上記パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂を存在させてプロトン伝導性を付与し、反応サイトの三次元化を図ることが行われている。
上記パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂膜は、化学的安定性が高く優れた陽イオン交換膜であるが、保水力において充分ではなく、物理的な強度も低いため薄膜化による電気抵抗の低減が困難であり、さらに高価でもあるため、近年、前記固体高分子型燃料電池の電解質膜として、このような性状面において優れる炭化水素系陽イオン交換膜を用いることが検討されている。しかして、このように炭化水素系陽イオン交換膜を用いた場合において、上記触媒電極に含ませるプロトン伝導性付与剤としては、該炭化水素系陽イオン交換膜と馴染みが良く、また、燃料電池とした際における水やメタノールへの溶解耐性等の観点から、スチレン系エラストマーに陽イオン交換基を導入した陽イオン交換樹脂が優れたものとして知られている(特許文献1)。この陽イオン交換基を有するスチレン系エラストマーは、上記性状を有しながら、柔軟性に富むため、プロトン導電性付与剤として使用すると、触媒電極層と炭化水素系陽イオン交換膜との接合強度が向上し、燃料電池の長期使用時における耐久性も大きく改善できるため、優れた材料である。
特開2002−164055号公報
上記陽イオン交換基を有するスチレン系エラストマーを、触媒電極層に含ませるプロトン伝導性付与剤として使用する場合、これは、低融点の極性溶媒(具体的には、メタノール、メチルエチルケトン、アセトニトリル等の20℃以下の融点を有し、誘電率が15以上の極性溶媒)を用いて有機溶液として触媒電極層の製造に供するとされている。また、陽イオン交換基を有するスチレン系エラストマーの陽イオン交換基の含有量が比較的少ない場合には、その溶解性を高めるため、上記極性溶媒と、1,2−ジクロルメタン、トリクロルエタン、トルエン,キシレン等の非極性溶媒との混合溶媒を用いて溶液として使用するのが好ましいとされている。しかしながら、上記極性溶媒を用いても、その溶解性〔或いは、微細粒子状態での分散性〕は今一歩十分ではなく、該陽イオン交換基を有するスチレン系エラストマーを室温下でそのまま、上記極性溶媒と混合しても均一性に優れた液相には通常ならず、そのため、係る溶液を用いて調製した触媒電極層を製造するためのペーストも均質なものは得難かった。
こうした状況から、本発明者らは、上記陽イオン交換基を有するスチレン系エラストマーの良溶媒をさらに調査したところ、テトラヒドロフランが特異的に溶解性が高い知見を得た。したがって、このテトラヒドロフランを、前記プロトン伝導性付与剤を溶解させるための溶媒として使用すると、均質性に優れるペーストが簡単に得られ、出力特性や、陽イオン交換膜と該触媒電極層との接合強度において優れた効果が得られる結果を得た。
ところが、上記テトラヒドロフランを用いて製造した触媒電極層においては、電極層内部の微細空隙の形成が未発達で、含有されるカーボンブラック等の導電剤の、該微細空隙に対して露出する比表面積が、今一歩十分でなかった。したがって、このような触媒電極層では、燃料室側の層であれば水素ガスや液体燃料の該導電剤に担持された金属粒子への供給流路が十分に確保できなくなり、他方、酸化剤室側の層であれば酸素含有ガスの上記金属粒子への供給流路が十分に確保できなくなり、いずれにせよ、燃料電池では高度な電池性能が発揮できなくなる。
そして、さらに、別の問題として、前記テトラヒドロフランを用いて製造した触媒電極層では、前記ペーストから、テトラヒドロフランを気化させて層を形成させる際に、その表面や内部に微細クラックが形成され易かった。このように触媒電極層に微細クラックが形成されると、触媒電極層内での電導性が低下して電池出力が低下したり、触媒電極の一部が脱離して長期間安定して出力が得られなくなるなどの問題を生じることがあった。
以上から、上記陽イオン交換基を有するスチレン系エラストマーをテトラヒドロフランに溶解させた触媒電極層用のプロトン伝導性付与剤溶液は、該プロトン伝導性付与剤の溶解性については優れるものの、得られる電極層内部の微細空隙の形成をさらに向上させ、また、電極層表面への微細クラックの発生を抑制させる点に関して、さらに改善の余地があった。
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を続けてきた。その結果、陽イオン交換基を有するスチレン系エラストマーを溶解させるテトラヒドロフランに、該テトラヒドロフランと相溶性を有する沸点が80〜250℃の有機溶媒を特定量混合させて使用することにより、上記の課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、陽イオン交換基を有するスチレン系エラストマーが、テトラヒドロフランと該テトラヒドロフランと相溶性を有する沸点が80〜250℃の有機溶媒との質量比95:5〜65:35の混合溶媒に溶解されてなる、固体高分子型燃料電池における触媒電極層用プロトン伝導性付与剤溶液である。
陽イオン交換基を有するスチレン系エラストマーは、本発明で使用するテトラヒドロフランを主成分とする混合溶媒に対して良好に溶解するため、本発明のプロトン伝導性付与剤溶液は簡単に製造できる。そして、これを用いることにより、均質な触媒電極層を形成することができる。
こうして製造した触媒電極層の内部には微細空隙が高度に発達して形成されており、含有される導電剤の該微細空隙に対して露出する比表面積は大きくなっている。また、該触媒電極層の形成過程において、その表面や内部に微細クラックが形成されることも高度に抑制させることができる。
したがって、このような本発明のプロトン伝導性付与剤溶液を用いて触媒電極層を形成した固体電解質型燃料電池では、燃料室側触媒電極層においては、水素ガスや液体燃料の反応性を高めることができ、酸化剤室側触媒電極層においては、酸素含有ガスの反応性を高めることができ、効率的な発電を行うことができる。
本発明において、触媒電極層用のプロトン伝導性付与剤として使用する陽イオン交換樹脂は、陽イオン交換基を有するスチレン系エラストマーである。この陽イオン交換樹脂は、炭化水素系陽イオン交換膜と馴染みが良く、柔軟性に富むため、これを用いて形成した触媒電極層は、炭化水素系陽イオン交換膜との接合強度に優れるものになる。通常、該陽イオン交換基を有するスチレン系エラストマーは、25℃においてヤング率が1〜300(MPa)、好ましくは3〜100(MPa)、特に好ましくは10〜70(MPa)にある。
また、この陽イオン交換樹脂は、水やメタノールに対する溶解耐性にも優れる。このため、これを用いて形成した触媒電極層は、燃料電池の発電中において、燃料に含まれる水や酸化剤室で生成する水により、このプロトン伝導性付与剤が電池系外へ徐々に溶出していくような問題が発生し難い。さらに、メタノール水溶液を燃料とする直接メタノール型燃料電池に用いた場合にも、触媒電極層がメタノール水溶液に溶解したり、極度に膨潤して触媒電極層が脱離するなどの問題が生じ難い。通常、該陽イオン交換基を有するスチレン系エラストマーは、20℃の水に対する飽和溶解度は1質量%以下、好適には0.8質量%以下であり、20℃のメタノールに対する飽和溶解度は1質量%以下、より一般的には0.8質量%以下である。
ここで、スチレン系エラストマーとは、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体、又は該ブロック共重合体の共役ジエン部分を水素添加することによって、主鎖中の2重結合を部分的に又は全て飽和化させたブロック共重合体の総称である。ブロックの形態としては、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体、ラジアルブロック共重合体、マルチブロック共重合体等が挙げられ、これらの中ではトリブロック共重合体が好ましく用いられる。
ブロック共重合体中の芳香族ビニル化合物単位の含有率は特に限定されないが、陽イオン交換基を導入した後の電気的特性、機械的特性の点から5〜70質量%、より好ましくは10〜50質量%が好ましい。なお、得られるブロック共重合体の重量均分子量は7千〜30万、好ましくは1.5万〜15万、最も好ましくは1.5万〜5万の平均分子量になるような重合条件で重合されたものが好ましい。
こうしたスチレン系エラストマーは、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とを、アニオン重合、カチオン重合、配位重合、ラジカル重合等の公知の方法によってブロック共重合したものが制限なく採用される。これら製造条件は、特に限定されるものではないが、リビングアニオン重合によって製造されたものが、好適に使用される。
また、上記ブロック共重合体の共役ジエン部分を水素添加する場合には、水素添加率が95%以上になるよう水素を添加するのが好ましい。
上記スチレン系エラストマーの具体例としては、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロック共重合体(SBS)、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体(SIS)、また、SBS、SISをそれぞれ水素添加した、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体(SEBS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレントリブロック(SEPS)共重合体が挙げられ、特にイオン交換基を導入する工程での安定性の点、さらには燃料電池として使用する際の化学的安定性の点から、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体(SEBS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレントリブロック共重合体(SEPS)が好ましく、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体(SEBS)が最適である。
これらのスチレン系エラストマーは、陽イオン交換基が導入されて、本発明のプロトン伝導性付与剤として使用される。陽イオン交換基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基等の公知のものが制限なく挙げられるが、陽イオン交換性に優れる強酸性基であり、導入も容易であることからスルホン酸基であるのが好ましい。これら陽イオン交換基のスチレン系エラストマーへの導入は、公知のスルホン化、ホスホニウム化、加水分解等の処理を施せばよい。例えば、スルホン基を導入する場合であれば、スチレン系エラストマーの芳香族炭化水素基に、濃硫酸、発煙硫酸、二酸化硫黄、クロロスルホン酸などのスルホン化剤を常法に従って反応させる方法が挙げられる。
スチレン系エラストマーが有する陽イオン交換基の量は、通常0.3〜3.0mmol/g、より好ましくは0.5〜2.5mmol/g、更に好ましくは0.8〜2.0mmol/gであるのが好適である。陽イオン交換基量が少ないほどプロトン伝導性が低くなり、0.3mmol/g未満では触媒電極層のプロトン伝導性が低く充分な出力を得難くなる。一方、陽イオン交換基量が多いほど水やメタノールに対する溶解耐性は低下し、樹脂の構造や分子量にもよるが、3.0mmol/gを超えると充分な溶解耐性が得難くなる。
本発明において、上記陽イオン交換基を有するスチレン系エラストマーは、テトラヒドロフランと該テトラヒドロフランと相溶性を有する沸点が80〜250℃の有機溶媒との質量比95:5〜65:35の混合溶媒に溶解して溶液とされる。ここで、上記陽イオン交換樹脂の溶液とは、目視により実質的に均一液相と確認される状態をいう。上記混合溶媒のうち、テトラヒドロフランは、上記陽イオン交換基を有するスチレン系エラストマーの溶解性を向上させるために必要な成分である。すなわち、前記したとおりテトラヒドロフランは、上記陽イオン交換樹脂に対して特異的に溶解性が高く、溶液を簡単に製造する観点からは、該テトラヒドロフランを溶媒の主成分とすることが重要である。
上記のとおり、陽イオン交換基を有するスチレン系エラストマーの溶媒としてテトラヒドロフランは優れたものであるが、該テトラヒドロフランのみを用いて溶解させたのでは、この溶液を用いて触媒電極層を製造すると、該得られる触媒電極層は、内部の微細空隙の形成が未発達になる。その結果、この触媒電極層では、含有されるカーボンブラック等の導電剤の、該微細空隙に対して露出する比表面積を大きくできず、燃料室側の触媒電極層であれば水素ガスや液体燃料の該導電剤に担持された金属粒子への供給流路が十分に確保できなくなり、他方、酸化剤室側の触媒電極層であれば酸素含有ガスの上記金属粒子への供給流路が十分に確保できなくなる。また、このようにテトラヒドロフランの実質的な単一溶媒で、上記陽イオン交換樹脂を溶解させて使用すると、触媒電極層の形成過程で、その表面や内部に微細クラックが形成され易くなる。
これに対して、本発明は、上記陽イオン交換基を有するスチレン系エラストマーの溶媒として、上記テトラヒドロフランだけでなく、該テトラヒドロフランに対する質量比で95:5〜65:35の範囲で、このものと相溶性を有する沸点が80〜250℃の有機溶媒を混合して用いて、上記の各問題点を大きく改善したことに最大の特徴を有する。すなわち、上記テトラヒドロフランと相溶性を有する高沸点な有機溶媒の併用により、触媒電極層には微細空隙が発達して形成され、また、微細クラックも形成され難くなる。
本発明において、このような効果が発揮される理由は、テトラヒドロフランは沸点が66℃であり低沸点であるため、これを用いて調整したペーストにより触媒電極層を製造すると、その製造中における該テトラヒドロフランの蒸発は激しく、この急激なる乾燥が前記触媒電極層への微細空隙の形成に悪影響し、また、その表面や内部に微細クラックを形成させてしまう原因になるところ、上記高沸点の有機溶媒の混入により、この現象が改善されるからではないかと推測される。
ここで、テトラヒドロフランと相溶性を有する有機溶媒とは、25℃下で、テトラヒドロフランと任意の割合で混ざり合う有機溶媒をいう。このようにテトラヒドロフランに対して良好な相溶性を有する有機溶媒でないと、触媒電極層の製造時において、該テトラヒドロフランが早期に蒸発していき、ペースト中においてこれら混合溶媒に相分離が生じ易くなり好ましくない。
また、このテトラヒドロフランと相溶性を有する有機溶媒の沸点が80℃より低い場合、触媒電極層に微細空隙が十分に発達して形成されなくなり、微細クラックも形成され易くなる。一方、この有機溶媒の沸点が250℃より高い場合、触媒電極層の製造において、該有機溶媒の乾燥に長時間が必要になり製造効率が悪化する。また、テトラヒドロフランが早期に蒸発してペースト中の該テトラヒドロフランと相溶性を有する有機溶媒の濃度が高まることで、陽イオン交換基を有するスチレン系エラストマーが極度に相分離を起こしてしまい、均質な触媒電極層を形成できない。本発明の前記効果をより良好に発揮させるためには、この有機溶媒の沸点は、好ましくは80〜200℃、特に好ましくは80〜150℃である。
このテトラヒドロフランと相溶性を有する有機溶媒の配合量は、該テトラヒドロフランに対する質量比で95:5〜65〜35、好ましくは90:10〜75:25である。95:5よりも少ない場合、触媒電極層の微細空隙の形成が未発達となったり、微細クラックの発生を充分に防止できなくなり、一方、65:35を超える場合には、前記した陽イオン交換基を有するスチレン系エラストマーの溶解性が不十分となる。
このテトラヒドロフランと相溶性を有する有機溶媒は、1種または2種以上の混合物であっても良い。2種以上の混合有機溶媒である場合、該混合有機溶媒の添加量は、前記したテトラヒドロフランに対する質量比である。
本発明において、上記テトラヒドロフランと混合する有機溶媒の具体例を挙げると、メチルエチルケトン等のケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、ブチルアセテート、ヘプチルアセテート等のアセテート類、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−エトキシエタノール等の1価アルコール類、エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン等、及び、これらの2種以上の混合有機溶媒が挙げられる。
さらに、前記したテトラヒドロフランと相溶性を有する有機溶媒は、25℃下の誘電率で好ましくは12〜50、より好ましくは15〜40を有することが好適である。この範囲の誘電率を有することにより、触媒電極層の製造時において、テトラヒドロフランが早期に蒸発してペースト中の該テトラヒドロフランと相溶性を有する有機溶媒の濃度が高まっても、陽イオン交換基を有するスチレン系エラストマーが極度に相分離を起こすことなく、分散性の高い触媒電極層の製造が可能となる。
前記の有機溶媒のうち誘電率の点で好ましい有機溶媒はメチルエチルケトン等のケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、1−プロパノール、2−プロパノール、2−エトキシエタノール等の1価アルコール類、エチレングリコール等の多価アルコール類、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン等、及び、これらの2種以上の混合有機溶媒等が挙げられる。
上記混合溶媒への陽イオン交換基を有するスチレン系エラストマーの溶解は、両者を混合し攪拌すればよいが、テトラヒドロフランへの前記他の有機溶媒の配合により、上記陽イオン交換樹脂の溶解性が操作に影響を与えるほどに低下した場合には、先に、テトラヒドロフランのみを用いて該陽イオン交換樹脂を溶解させ、その後、この溶液に必要量の前記他の有機溶媒を配合して調整しても良い。
本発明のプロトン伝導性付与剤溶液は、通常、炭化水素系陽イオン交換膜を用いた固体高分子型燃料電池の触媒電極層の形成に使用される。このプロトン伝導性付与剤溶液により形成される触媒電極層は、炭化水素系陽イオン交換膜の両面に各熱圧着等により接合されて使用されるのが好ましいが、いずれか一方の面のみに使用しても良い。
本発明のプロトン伝導性付与剤溶液を用いて燃料電池の触媒電極層を形成する方法は、特に制限されるものではないが、例えば、電極基材に支持された、触媒の金属粒子とカーボンブラック等の導電剤との混合物の層に、該プロトン伝導性付与剤溶液を塗布してその内部に浸透させた後乾燥して触媒電極層を形成し、これを陽イオン交換膜に接合して形成させる方法が挙げられる。また、該プロトン伝導性付与剤溶液に、触媒の金属粒子と導電剤とを配合して、触媒電極層を形成するためのペーストを調製し、これを電極基材に塗布して乾燥させ、これを陽イオン交換膜に接合して形成させる方法も挙げられる。この他、上記のペーストをポリテトラフルオロエチレン製などの剥離シートに塗布して乾燥させ、これを陽イオン交換膜に熱圧着して転写する方法や、前記ペーストを陽イオン交換膜へ直接塗布して乾燥させ、その後必要に応じて熱プレスする方法なども挙げられる。触媒電極層の全体により均一にプロトン導電性付与剤を含有させ易いということから、プロトン伝導性付与剤溶液に、触媒の金属粒子と導電剤とを配合して、触媒電極層を形成するためのペーストを調製した後製造する方法がより好ましい。
なお、いずれの製造方法においても、上記触媒電極層製造時における混合溶媒の気化は、前記高沸点の有機溶媒の含有により遅くなり、その影響により、触媒電極層には微細空隙が高度に形成され、その表面や内部に微細クラックが発生し難いものになり、本発明の効果は良好に発揮される。
触媒の金属粒子とカーボンブラック等の導電剤との混合物の層に、プロトン伝導性付与剤溶液を塗布して浸透させる方法の場合、プロトン導電性付与剤の濃度は1〜20質量%、好適には3〜15質量%の範囲が好ましい。プロトン導電性付与剤の濃度が1質量%より小さい場合には、触媒電極層中に充分な量で含有させ難くなり、他方、プロトン導電性付与剤の濃度が20質量%より大きい場合には、この溶液の塗布性や触媒電極層内の細部への浸透性が低下し、電極内において該プロトン導電性付与剤が偏在し易くなる。プロトン伝導性付与剤溶液に、触媒の金属粒子と導電剤とを配合して、触媒電極層を形成するためのペーストを調製した後製造する方法に用いるプロトン伝導性付与剤溶液の場合も、プロトン導電性付与剤の濃度は、前記濃度とするのが好ましい。プロトン導電性付与剤の濃度が1質量%より小さい場合には、触媒の金属粒子や導電剤の配合量にもよるが、触媒電極層中のプロトン伝導性が不十分となったり、前記ペースト粘度が低くなりすぎ、ペーストの塗布性が悪くなる。他方、20質量%を超える場合には、プロトン電導性付与剤と触媒の金属粒子や導電剤との分散性が悪くなる。なお、この方法の場合、触媒電極層を形成するためのペーストには、触媒坦持量の調整や電極触媒層の膜厚を調整するため、暫時前記プロトン導電性付与剤溶液に使用されている混合溶媒と同様の混合溶媒を、ペースト調整時にさらに添加して、その粘度調整を行なっても良い。
本発明において、触媒電極層と接合される炭化水素系陽イオン交換膜は、従来公知である炭化水素系陽イオン交換膜が特に限定されずに使用される。膜を構成する陽イオン交換樹脂は、既に説明したような陽イオン交換基を有する炭化水素系高分子からなるものであり、密に架橋されて水に対して不溶性を呈している。
一般には、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ジビニルベンゼン−塩化ビニル等の共重合体をスルホン化、クロルスルホン化、ホスホニウム化、加水分解等の処理により所望の陽イオン交換基を導入した膜が挙げられる。
これらの陽イオン交換樹脂は、一般的には、熱可塑性樹脂製の織布、布織布、多孔膜等を基材により支持されている。水素ガスやメタノール等の燃料透過性が低く、薄膜化が可能な点から、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン)、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂等の熱可塑性樹脂製多孔膜からなる基材が好適に使用される。
こうした炭化水素系イオン交換膜の膜厚は、電気抵抗を低く抑える観点及び支持膜として必要な機械的強度を付与する観点から、通常5〜200μmの厚みを有するものが好ましく、より好ましくは20〜150μmを有するものが好ましい。
本発明において、プロトン導電性付与剤を含有させる触媒電極層は、固体電解質型燃料電池に使用される公知のものが特に制限なく適用可能である。一般的には、触媒の金属粒子及び導電剤が分散する混合物の層からなり、このものはそのまま触媒電極層とすれば良く、必要に応じて多孔性材料からなる電極基材により支持された構造とすることもできる。
ここで、触媒としては、燃料極側では、水素、メタノールなどの液体燃料の酸化反応、酸化剤極側では酸素の還元反応を促進する金属粒子であれば特に制限されるものではない。両極側共に、例えば、白金、金、銀、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、スズ、鉄、コバルト、ニッケル、モリブデン、タングステン、バナジウム、あるいはそれらの合金が挙げられる。これらの触媒の中で、触媒活性が優れている白金が多くの場合両極側に用いられ、メタノールを燃料とする場合には、燃料極側に白金とルテニウムの合金、酸化剤側に白金が用いられることが多い。
上記触媒となる金属粒子の粒径は、通常、0.1〜100nm、より好ましくは0.5〜10nmである。粒径が小さいほど触媒性能は高くなるが、0.5nm未満のものは、作製が困難であり、100nmより大きいと十分な触媒性能が得にくくなる。
上記触媒の含有量は、触媒電極層をシートとした状態で、通常0.01〜10mg/cm、より好ましくは0.1〜6.0mg/cmである。触媒の含有量が0.01mg/cm未満では触媒の性能が充分に発揮されず、10mg/cmを超えて坦持しても性能は飽和する。なお、これら触媒は、予め導電剤に担持させてから使用しても良い。
導電剤としては、電子導電性物質であれば特に限定されるものではないが、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、活性炭、黒鉛等を単独または混合して使用するのが一般的である。
また、触媒電極層には、上記触媒、導電剤の他に、結着剤等が含まれていても良い。結着剤としては、各種熱可塑性樹脂が一般的に用いられるが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、スチレン・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体等が挙げられる。該結着剤の含有量は、上記触媒電極層の5〜25質量%であることが好ましい。また、結着剤は、単独で使用しても良いし、2種類以上を混合して使用しても良い。
これら成分からなる触媒電極層を電極基材に支持させる場合、電極基材には、多孔質のものが使用され、具体的には、カーボン繊維織布、カーボンペーパー等が使用される。その厚みは、50〜300μmが好ましい。また、その空隙率は、50〜90%が好ましい。
触媒電極層の厚みは、通常、5〜50μmである。上記電極基材に支持させる場合には、その空隙内及び陽イオン交換膜との接合側表面に前記の厚みになるよう充填及び付着されて触媒電極層が構成される。
これら触媒電極層は、陽イオン交換膜に前記したペーストを直接塗布して乾燥させて形成させても良いが、触媒電極層を前記した電極基材に支持させる場合や、一旦触媒電極層を剥離シートに形成させ、これを陽イオン交換膜に転写する場合には、該陽イオン交換膜と触媒電極層との接合は、通常、熱圧着により実施する。この熱圧着は、加圧、加温できる装置を用いて実施される。一般的には、ホットプレス機、ロールプレス機等により行われる。プレス温度は一般的には80℃〜200℃である。プレス圧力は、使用する触媒電極層の厚み、硬度に依存するが、通常0.5〜20MPaである。
このようにして熱圧着された陽イオン交換膜/触媒電極層接合体が得られる。この陽イオン交換膜/触媒電極層接合体は、前記した図1に示すような基本構造の固体電解質型燃料電池に装着されて使用される。
以下、本発明を更に詳細に説明するため実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
尚、実施例および比較例に示すプロトン伝導性付与剤の特性は、以下の方法により測定した。
1)プロトン伝導性付与剤の陽イオン交換容量
プロトン伝導性付与剤を1mol/L−HCl水溶液に10時間以上浸漬し、水素イオン型とした後、1mol/L−NaCl水溶液でナトリウムイオン型に置換させ、遊離した水素イオンを水酸化ナトリウム水溶液を用いて電位差滴定装置(COMTITE−900、平沼産業株式会社製)で定量した(Amol)。次に、同じプロトン伝導性付与剤を60℃で5時間減圧乾燥させその質量を測定した(Dg)。上記測定値に基づいて、次式により陽イオン交換容量を求めた。
陽イオン交換容量=A×1000/D[mmol/g−乾燥質量]
2)プロトン伝導性付与剤の重量平均分子量
プロトン伝導性付与剤の0.1質量%テトラヒドロフラン溶液を調整し、テトラヒドロフランを移動相とするゲルパーミエーションクロマトグラフィーで、重量平均分子量を測定した。重量平均分子量は、昭和電工製スタンダードポリスチレンで換算して求めた。
3)プロトン伝導性付与剤のヤング率
プロトン伝導性付与剤をテトラヒドロフランに溶解させ、10質量%濃度の均一な溶液を得た。この溶液を、乾燥後の膜厚がおよそ30μmとなるように、ポリテトラフルオロエチレン製シート上にキャストし、25℃で24時間、次いで
60℃で5時間減圧乾燥してからポリテトラフルオロエチレンシートを剥離して、プロトン伝導性付与剤の薄膜を作成した。該薄膜から幅1cmの短冊状試料を切り出し、強度試験機(島津製作所製EZ−test)を用いて、25℃、相対湿度50%で応力−歪曲線を測定し、該曲線の初期直線部の傾きから、プロトン伝導性付与剤のヤング率を求めた。
4)触媒電極層外観
平均粒子径2nmの白金が50質量%担持されたカーボンブラックに、本発明のプロトン伝導性付与剤溶液(プロトン伝導性付与剤濃度5質量%)を1:5の質量割合で混合した。得られたペーストを、白金量が0.5mg/cmとなるように、厚みが200μmであり空孔率が80%であるカーボンペーパー上に塗布し、次いで、大気圧下25℃で15時間、更に80℃で4時間減圧乾燥してカーボンペーパーを支持体とする触媒電極層を作成した。触媒電極層中のプロトン導電性付与剤の含有量は20質量%である。
作成した触媒電極層の外観を目視にて評価し、クラックの発生がないものを(◎)、クラックが微量に発生しているものを(○)、全体的にクラックが多数発生しているものを(×)とした。
5)触媒電極層のBET比表面積
上記3)により作成したカーボンペーパーを支持体とする触媒電極層を短冊状にカットし、カーボンペーパーを除く触媒電極層量がおよそ5mgとなるように測定セルに投入して、ガス吸着測定装置(Quantachrome社製Chembet−3000)を用いて窒素ガスの吸着面積を測定した。得られた窒素ガス吸着面積から、支持体であるカーボンペーパーのみを用いて得たガス吸着面積を差し引き、触媒電極層の窒素ガス吸着面積とした。別に質量測定によってカーボンペーパー上の触媒電極層質量を求め、前記触媒電極層の窒素ガス吸着面積を、触媒電極層の単位質量当たりに換算して、空隙量の指標となる触媒電極層のBET比表面積を求めた。
6)触媒電極層の触媒露出面積
上記(3)により作成したカーボンペーパーを支持体とする触媒電極層を短冊状にカットし、カーボンペーパーを除く触媒電極層量がおよそ5mgとなるように測定セルに投入して、ガス吸着測定装置(Quantachrome社製Chembet−3000)を用いて、パルス吸着法により水素ガス吸着面積を測定した。得られた水素ガス吸着面積から、支持体であるカーボンペーパーのみを用いて得た水素ガス吸着面積を差し引き、触媒電極層の水素ガス吸着面積とした。別に質量測定によってカーボンペーパー上の触媒電極層質量を求め、前記触媒電極層の水素ガス吸着面積を触媒電極層の単位質量当たりに換算し、これを触媒電極層の触媒露出面積とした。
7)水素燃料型での燃料電池出力電圧
スチレン90モル%、ジビニルベンゼン10モル%からなる重合性単量体組成物に、全単量体100質量部に対し5質量部となるように重合開始剤t−ブチルパーオキシエチルヘキサノエートを加え、これに多孔質フィルム(重量平均分子量25万のポリエチレン製、膜厚25μm、平均孔径0.03μm、空隙率37%)を5分間浸漬した。次いで、この多孔質フィルムを重合性単量体組成物中から取り出し、厚さ100μmのポリエステルフィルムを剥離材として多孔質フィルムの両側を被覆した後、0.3MPaの窒素加圧下、80℃で5時間加熱重合した。 得られた膜状物を98%濃硫酸と純度90%以上のクロロスルホン酸の1:1の混合物中に40℃で60分間浸漬してベンゼン環をスルホン化し、陽イオン交換膜を得た。
得られた陽イオン交換膜の膜厚は28μm、陽イオン交換容量は2.4mmol/g、含水率は28%、3mol/L−硫酸水溶液中における膜抵抗は0.07Ω・cmであった。
この陽イオン交換膜の両面に、上記(3)により作成したカーボンペーパーを支持体とする触媒電極層をセットし、120℃、圧力5MPaの加圧下で100秒間熱プレスした後、室温で2分間放置した。得られた陽イオン交換膜/触媒電極層接合体を図1に示す燃料電池セルに組み込んだ。次いで、燃料電池セル温度を30℃に設定し、30℃イオン交換水を通して加湿した大気圧の水素と空気をそれぞれ200ml/min、500ml/minの流量で供給して発電試験を行ない、電流密度0A/cm、0.2A/cmにおけるセルの端子電圧を測定した。
8)メタノール燃料型での燃料電池出力電圧
燃料極側の触媒電極層には白金‐ルテニウム合金触媒(ルテニウム50モル%)を50質量%担持したカーボンブラックを用い、酸化剤極側の触媒電極層には白金触媒を50質量%担持したカーボンブラックを用いて、触媒量が3mg/cmとなるように塗布してカーボンペーパーを支持体とする各触媒電極層を形成した以外は6)水素燃料型での燃料電池出力電圧で説明した測定方法と同様にして、陽イオン交換膜/触媒電極層接合体を作成した。
この陽イオン交換膜/触媒電極層接合体を図1に示す構造の燃料電池セルに組み込んだ。次いで、燃料電池セル温度を30℃に設定し、燃料室側に20質量%のメタノール水溶液を、酸化剤室側に相対湿度80%の大気圧の空気を200ml/min.で供給して発電試験を行ない、電流密度0A/cm、0.1A/cmにおけるセルの端子電圧を測定した。
製造例1
ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体(重量平均分子量3万、スチレン含有量30質量%)を1質量%の濃度でクロロホルムに溶解し、5〜10℃に冷却した。得られた溶液を激しく撹拌しながら、樹脂の含有するスチレンユニットと等モルのクロロスルホン酸を、クロロホルム溶液(クロロスルホン酸10体積%)にしてゆっくり滴下し、60分間反応させた。その後、反応溶液をイオン交換水中へ投入して2時間攪拌し、残存クロロスルホン酸の分解と生成物の加水分解反応を完結させた。次いで、クロロホルムを減圧留去して沈殿した生成物を濾別し、これをイオン交換水で洗浄後、30℃で20時間乾燥させることによりプロトン伝導性付与剤を得た。
得られたプロトン伝導性付与剤の、陽イオン交換容量、重量平均分子量、およびヤング率を測定した結果を表1に示した。また、20℃における、水、メタノールへの飽和溶解度を測定した。これら結果も表1に示した。
製造例2〜5
原料となるスチレン系エラストマーと、クロロスルホン酸基量を表1に示すものに変えた以外は製造例1と同様にしてプロトン伝導性付与剤を作成した。得られたプロトン伝導性付与剤の、陽イオン交換容量、重量平均分子量、ヤング率、および水、メタノールへの飽和溶解度(20℃)を測定した結果を表1に示した。
Figure 0004836666
実施例1
製造例1のプロトン伝導性付与剤を、表2に示す混合有機溶媒に5質量%の濃度で溶解し、本発明のプロトン伝導性付与剤溶液とした。
このプロトン伝導性付与剤溶液を用いて陽イオン交換膜/触媒電極接合体を作成し、触媒電極層の外観、BET比表面積、触媒露出面積、燃料電池出力電圧を評価した。結果を表3に示した。
実施例2〜12
プロトン伝導性付与剤、溶解させる有機溶媒を表2に示すものに変えた以外は実施例1と同様にして、本発明のプロトン伝導性付与剤溶液を得た。
得られたプロトン伝導性付与剤溶液を用いて陽イオン交換膜/触媒電極接合体を作成し、触媒電極層の外観、BET比表面積、触媒露出面積、燃料電池出力電圧を評価した結果を表3に示した。
比較例1
製造例1のプロトン伝導性付与剤を、5質量%となるようにテトラヒドロフランのみに溶解してプロトン伝導性付与剤溶液を作成した。
得られたプロトン伝導性付与剤溶液を用いて陽イオン交換膜/触媒電極接合体を作成し、触媒電極層の外観、BET比表面積、触媒露出面積、燃料電池出力電圧を評価した結果を表3に示した。
比較例2
製造例1のプロトン伝導性付与剤をテトラヒドロフランに溶解させ、5質量%の濃度になるように、テトラヒドロフランと同じ質量の2−エトキシエタノールを添加した。得られた混合液中にはプロトン伝導性付与剤が析出し、均一なプロトン伝導性付与剤溶液とすることができなかった。
比較例3
製造例1のプロトン伝導性付与剤を、テトラヒドロフランを含まない、1−プロパノールと1、2−ジクロロエタンの等質量混合溶媒に5質量%の濃度で溶解させ、プロトン伝導性付与剤溶液を作成した。
得られたプロトン伝導性付与剤溶液を用いて陽イオン交換膜/触媒電極接合体を作成し、触媒電極層の外観、BET比表面積、触媒露出面積、燃料電池出力電圧を評価した結果を表3に示す。
比較例4
製造例1のプロトン伝導性付与剤をテトラヒドロフランに溶解させた後、プロトン伝導性付与剤が5質量%となり、テトラヒドロフランに対する質量比が80:20となるようにグリセリンを添加してプロトン伝導性付与剤溶液を作成した。
得られたプロトン伝導性付与剤溶液を用いて陽イオン交換膜/触媒電極接合体を作成したが、触媒電極層のクラック発生が非常にひどく、その他の特性を評価することができなかった。
Figure 0004836666
Figure 0004836666
図1は固体高分子型燃料電池の基本構造を示す模式図である。
符号の説明
1;電池隔壁
2;燃料流通孔
3;酸化剤ガス流通孔
4;燃料室側拡散電極
5;酸化剤室側ガス拡散電極
6;固体高分子電解質
7;燃料室
8;酸化剤室

Claims (3)

  1. 陽イオン交換基を有するスチレン系エラストマーが、テトラヒドロフランと該テトラヒドロフランと相溶性を有する沸点が80〜250℃の有機溶媒との質量比95:5〜65:35の混合溶媒に溶解されてなる、固体高分子型燃料電池における触媒電極層用プロトン伝導性付与剤溶液。
  2. 陽イオン交換基を有するスチレン系エラストマーが、陽イオン交換基を有するポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体、または陽イオン交換基を有するポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレントリブロック共重合体である請求項1記載の触媒電極層用プロトン伝導性付与剤溶液。
  3. テトラヒドロフランと相溶性を有する沸点が80〜250℃の有機溶媒が、誘電率が15〜50のものである請求項1または請求項2記載の触媒電極層用プロトン伝導性付与剤溶液。
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