以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態による流量制御弁を適用したコモンレール式燃料噴射システムを示した構成図である。図2は、コモンレール式燃料噴射システムに設けられるサプライポンプにおける燃料系統を示した構成図である。
本実施形態による流量制御弁が適用される燃料噴射システムは、多気筒ディーゼルエンジンなどの内燃機関(以下、単にエンジンという)用の燃料噴射システムであって、高圧燃料を蓄圧するコモンレールを有するコモンレール式燃料噴射システムである。
本実施形態のコモンレール式燃料噴射システムは、四気筒のエンジンに燃料を噴射する。この燃料噴射システムは、図1に示すように、燃料タンク30より汲み上げた燃料を加圧するサプライポンプ10、サプライポンプ10にて加圧された高圧燃料を蓄圧するコモンレール21、コモンレール21に蓄圧されている高圧燃料を各気筒の燃焼室に噴射するインジェクタ23およびサプライポンプ10、インジェクタ23を制御する制御装置40などから構成されている。
サプライポンプ10は、内蔵されているフィードポンプにて燃料タンク30内の燃料を吸い上げ、内蔵されている高圧ポンプにて吸い上げた燃料を加圧し、加圧した燃料を燃料配管33を介してコモンレール21に送る。サプライポンプ10は、ポンプを駆動するポンプ駆動軸11を有している。このポンプ駆動軸11は、エンジンのクランク軸またはカム軸にて回転駆動される。
なお、サプライポンプ10のフィードポンプの吸入口と燃料タンク30とを接続する燃料配管32の途中には、フィードポンプが吸い上げる燃料中に含まれている異物を捕捉するフィルタ31が設けられている。制御装置40は、コモンレール21内の燃料圧力がエンジンの運転に最適な圧力となるように、高圧ポンプから送り出される燃料量を制御する。
コモンレール21は、サプライポンプ10から燃料配管33を介して送られた高圧燃料を蓄圧する蓄圧容器である。コモンレール21は、燃料配管34を介して蓄圧された高圧燃料を各気筒に設置されているインジェクタ23に分配する。
また、コモンレール21には、プレッシャリミッタ22が設けられている。プレッシャリミッタ22は、燃料タンク30に通じるリターン配管35が接続されており、コモンレール21内の圧力が異常高圧となったときに作動し、コモンレール21内の圧力を、リターン配管35を通じて逃がす。
インジェクタ23は、エンジンの各気筒に対応して搭載され、コモンレール21内に蓄圧されている高圧燃料を、燃焼室内に霧状に噴射する。インジェクタ23は、先端に設けられている噴孔からの燃料噴射を制御する電磁弁26を備えている。制御装置40は、噴孔から噴射される燃料の噴射時期、噴射量、噴射率がエンジンの運転状態に応じたものとなるように電磁弁26を制御する。
一例として、インジェクタ23は、噴孔を開閉する弁体を内蔵する噴射ノズル部24と、弁体を開閉駆動する駆動部25とから構成されている。電磁弁26は駆動部25に内蔵されている。噴射ノズル部24は、燃料配管34から送られる高圧燃料を蓄圧するとともに、噴孔と連通する燃料溜り部を有している。燃料溜り部には弁体の噴孔側の端部が収容されている。弁体は燃料溜り部内の燃料圧力により開弁方向に付勢されている。
駆動部25は、弁体の開閉駆動を制御するコマンドピストンを有している。駆動部25には、コマンドピストンの弁体とは反対側の端部にコマンドピストンを介して弁体を閉弁方向に付勢する燃料圧力を蓄圧する圧力制御室が設けられている。圧力制御室には、燃料配管34より高圧燃料が送られるようになっている。駆動部25に設けられている電磁弁26は、開閉動作することにより圧力制御室に蓄圧された燃料圧力を増減させる。
電磁弁26が閉弁し、圧力制御室内の燃料圧力がコモンレール21内の燃料圧力とほぼ同じとなっている状態では、コマンドピストンは弁体を閉弁する方向に付勢する。このとき、弁体は噴孔を閉弁するため、噴孔より燃料は噴射されない。
電磁弁26が開弁して、圧力制御室内の燃料圧力が減少すると、コマンドピストンが弁体を付勢する力が弱まるため、弁体はコマンドピストンとともに開弁方向に移動する。これにより、噴孔より燃料が噴射される。電磁弁26が再び閉弁すると、圧力制御室内の燃料圧力はコモンレール21内の燃料圧力とほぼ同じ圧力にまで回復するため、コマンドピストンは弁体を閉弁方向に付勢する。これにより、噴孔からの燃料噴射は停止する。
なお、インジェクタ23には、電磁弁26が開弁動作するときに圧力制御室から排出される燃料などを燃料タンク30に戻すためのリターン配管36が接続されている。また、サプライポンプ10にも、コモンレール21に送り出さなかった余剰燃料を燃料タンク30に戻すためのリターン配管37が接続されている。これらのリターン配管36、37は上述したプレッシャリミッタ22に接続されているリターン配管35と途中で合流している。
制御装置40は、エンジンの運転状態などを検出する各種センサからの信号に基づきエンジン運転に最適な噴射時期、噴射量、噴射率、コモンレール21内の燃料圧力を算出し、その算出した結果に基づきサプライポンプ10やインジェクタ23の電磁弁26を制御する制御信号を生成するエンジン制御ユニット(以下、ECUという)、およびECUにて生成したインジェクタ23の電磁弁26への制御信号に応じた、当該電磁弁26を高速駆動させるための高電圧を発生する駆動ユニット(以下、EDUという)を備えている。
ECUは、制御処理、演算処理を行う中央演算ユニット(CPU)、各種プログラムおよび制御データを保存する記憶装置(ROM、RAMなどのメモリ)、入力回路、出力回路などの機能を含んで構成される周知の構造のマイクロコンピュータ、および出力回路に接続され、生成されたサプライポンプ10を制御する制御信号に応じた電気信号を発生し、その電気信号をサプライポンプ10に送る駆動回路を有している。
ECUの入力回路には、カム軸のカム角度を検出するカムポジションセンサ、エンジンのクランク軸のクランク角度を検出するクランクポジションセンサ、エンジンに吸入される空気流量を検出するエアフロメータ、エンジンに吸入される空気の温度を検出する吸気温センサ、エンジンに吸入される空気の圧力を検出する吸気圧センサ、エンジン冷却水の温度を検出する水温センサ、アクセルペダルの開度を検出するアクセルポジションセンサ、コモンレール圧力センサ38などの各種センサが電気的に接続されており、ECUはこれらのセンサからの電気信号を受信し、上記噴射時期、噴射量、噴射率、コモンレール21内の燃料圧力を算出する。
EDUは、ECUの出力回路に接続され、ECUにて生成されたインジェクタ23の電磁弁26を制御する制御信号に応じて動作する高電圧発生装置を有する。EDUは、高電圧発生装置にて高電圧を発生し、短時間に電磁弁26に大きな電流を流す。EDUは、電磁弁26に高電圧を加えることにより、インジェクタ23を高速駆動させる。
なお、本実施形態では、一つの制御装置40内にECUとEDUとが搭載されている例を示しているが、ECUとEDUは別搭載されていても良い。
以上、図1を用いてコモンレール式燃料噴射システムの全体構成を説明した。次に、図2を用いてサプライポンプ10における燃料系統を説明する。
図2に示すように、サプライポンプ10は、フィードポンプ12、高圧ポンプ15、流量制御弁50(以下、吸入調量弁という)などから構成されている。これらの要素12、15、50は一つのポンプハウジングに組み込まれている。
フィードポンプ12は、燃料タンク30内の燃料を吸い上げて所定の圧力にて高圧ポンプ15に向けて吐出する。このフィードポンプ12はトロコイド式ポンプである。フィードポンプ12は、外周側に向かって突出する外歯を複数個有するインナロータ13と、インナロータ13の外周側に設けられ、内周側に、当該外歯とかみ合い、かつ当該外歯との間に容積室が形成されるような複数の内歯を有するアウタロータ14から構成されている。
フィードポンプ12がポンプ駆動軸11にて駆動されると、インナロータ13、アウタロータ14が回転駆動され、上述した容積室の容積が増減する。この容積室の増減を利用して、吸引部より燃料を吸い込み、吐出部より高圧ポンプ15の加圧室16に向けて燃料を送り出す。
また、フィードポンプ12には、加圧室16に送り出す燃料圧力を安定させるレギュレートバルブ90が設けられている。このレギュレートバルブ90により、フィードポンプ12の吐出部より送り出される燃料の脈動を小さくすることができる。本実施形態では、フィードポンプ12から送り出される燃料の圧力は約0.7MPaとなっている。
高圧ポンプ15は、フィードポンプ12から送られた燃料を加圧し、加圧した燃料をコモンレール21に向けて送りだす。高圧ポンプ15は、ポンプ駆動軸11の回転軸に対し、偏心して取付けられた円柱状の偏心カム17、偏心カム17の外周壁と摺動自在に支持され偏心カム17の回転に追従してポンプ駆動軸11の回転軸の周囲を公転する外径形状が略四角形状となっているカムリング18、およびカムリング18の公転運動に追従して往復運動するプランジャ19、プランジャ19を往復運動自在に支持するシリンダ20などから構成されている。
本実施形態では、サプライポンプ10は、カムリング18を挟んで二つのプランジャ19を有している。プランジャ19は、図示しない付勢手段により常にカムリング18の外周壁に押し付けられている。二つのプランジャ19は、ポンプハウジングに形成された二つのシリンダ20にそれぞれ収容されている。各プランジャ19のカムリング18とは反対側の端部および各シリンダ20の内周壁にて加圧室16が一つずつ画定されている。
それぞれの加圧室16には、フィードポンプ12の吐出部から送り出される燃料を各加圧室16に導く燃料吸入流路93が接続されている。そして、それぞれの加圧室16と燃料吸入流路93との接続部には、加圧室16から燃料吸入流路93への燃料の逆流を防ぐ吸入弁91が設けられている。
また、それぞれの加圧室16には、燃料配管33に接続されている燃料吐出流路94が接続されている。それぞれの加圧室16と燃料吐出流路94との接続部には、燃料吐出流路94から加圧室16への逆流を防ぐ吐出弁92が設けられている。
ポンプ駆動軸11が回転し、偏心カム17が回転すると、カムリング18はポンプ駆動軸11の回転軸を中心に公転運動する。すると、プランジャ19はカムリング18の公転運動に追従してシリンダ20内を往復運動し、加圧室16の容積を変化させる。
プランジャ19が加圧室16の容積を増大させる吸入行程時、加圧室16の燃料圧力は燃料吸入流路93および燃料吐出流路94内の燃料圧力よりも低下するため、燃料吸入流路93から加圧室16に燃料が吸入される。
そして、プランジャ19が加圧室16の容積を減少させる圧送行程時、加圧室16の燃料圧力は燃料吸入流路93内の燃料圧力よりも上昇するため、燃料吸入流路93への燃料の逆流は吸入弁91にて阻止される。そして、加圧室16内の燃料圧力が所定の圧力を超えると、吐出弁92が開弁し、加圧室16より燃料吐出流路94へ燃料が吐出される。その後、燃料吐出流路94へ吐出された燃料は、燃料配管33を通じてコモンレール21に送られる。
ここで、図2に示すように、燃料吸入流路93の途中に吸入調量弁50が設けられている。吸入調量弁50は、加圧室16に吸入される燃料量を制御する弁であり、制御装置40からの電気信号にて制御される。吸入調量弁50が加圧室16に吸入される燃料量を制御することにより、高圧ポンプ15からコモンレール21へ送り出される燃料量が制御される。
本実施形態では、コモンレール21へ送り出される燃料量を制御することにより、コモンレール21内の燃料圧力を制御している。吸入調量弁50は制御装置40より送られる電気信号の電流量に応じて加圧室16に吸入される燃料量を制御できるように構成されている。
なお、本実施形態では、フィードポンプ12と高圧ポンプ15とが一つのポンプハウジングに組み込まれているが、フィードポンプ12および高圧ポンプ15は別体のポンプハウジングに組み込まれるようなものであっても良い。このとき、吸入調量弁50は、フィードポンプ12のポンプハウジングか、高圧ポンプ15のポンプハウジングのいずれかに組み込まれていれば良い。
以上、図2を用いてサプライポンプ10における燃料系統を説明した。次に、図3を用いて、吸入調量弁50の構造を詳細に説明する。図3は、吸入調量弁50の全体構造を示す断面図である。図3に示すように、吸入調量弁50は、弁部51および弁部51を駆動する電磁アクチュエータ部63から構成されている。
弁部51は上記燃料吸入流路途中に設けられ、内部に形成される通路を通過する燃料の流量を制御する。電磁アクチュエータ部63は弁部51に取付けられ、供給される電流量に応じて発生する動力が変化するアクチュエータであって、変化する動力にて弁部51内の通路断面積を変化させる。弁部51は、弁ボデー52と、ダイヤフラム61などから構成されている。
弁ボデー52は、ダイヤフラム61を支えるとともに内部に弁室54、弁室54と接続されている入口側通路55および弁室54と接続されている出口側通路56を有している。弁ボデー52は、入口側通路55がフィードポンプ12側の燃料吸入流路93と連通し、出口側通路56が加圧室16側の燃料吸入流路93と連通するようにポンプハウジングに取付けられている。
弁ボデー52は、金属材料よりなり筒状に形成されている本体部53と、金属材料よりなり筒状に形成され本体部53と同軸上に設置され、ダイヤフラム61の外周縁部を本体部53との間で挟み込む支持部59と、から構成されている。
本体部53には、入口側通路55および弁室54が本体部53の軸線に沿って形成されている。出口側通路56は、本体部53の軸線と垂直な方向に、本体部53の対向する側壁を貫通するように形成されている。本体部53の入口側通路55の周囲には、燃料吸入流路93との隙間をシールするOリング60が装着されている。
入口側通路55と弁室54とを接続する接続部は、弁室54に向かうにしたがい内径が漸増する円錐面57となっている。この円錐面57上にダイヤフラム61が着座する弁座58が形成されている。
ダイヤフラム61は弾性材料より円盤状に形成され、弁室54を画定する弾性薄膜体である。本実施形態では、ダイヤフラム61はゴム製である。ダイヤフラム61は、円錐面57に対向して設置されている。
ダイヤフラム61の弁座58側の表面には、ダイヤフラム61が弾性変形して弁座58側に撓んだときに弁座58に着座する当接部62が形成されている。当接部62は、環状に形成されている。
ダイヤフラム61が弁座58方向に変位し、当接部62が弁座58に着座すると、入口側通路55と出口側通路56との連通が遮断される。ダイヤフラム61が電磁アクチュエータ部63側に撓み、当接部62が弁座58から離座すると、入口側通路55と出口側通路56とが連通し、入口側通路55から出口側通路56へ燃料が流通する。
なお、入口側通路55から出口側通路56への燃料の流量は、当接部62と弁座58との距離の距離に応じて変化する。ダイヤフラム61の当接部62が弁座58に着座した状態では、ダイヤフラム61には、弁座58から離座する方向、つまり電磁アクチュエータ部63側に向かう方向の復元力が発生している。
電磁アクチュエータ部63は、コイル64、ステータ65、ハウジング78、アーマチャ79およびロッド80などから構成されている。
コイル64は、円筒状に形成されている樹脂製のボビンに導電性を有する電線を巻装することによって形成されている。コイル64には、電線に電流を供給するためのターミナル83が設けられている。コイル64は、ターミナル83を介してコイル64の電線に供給される電流量に応じた磁束を発生する。
ステータ65は、例えばステンレス鋼などの磁性材料により筒状に形成されており、一部がコイル64の内周側に設置されている。ステータ65の内部には、軸線に沿った方向に延びる収容部66が形成されている。収容部66は、アーマチャ79およびロッド80を軸方向に沿って往復移動可能に収容するとともに、弁ボデー52の支持部59を支持している。
ステータ65は、弁ボデー52側に設置されている第一ステータ部67と、第一ステータ部67の弁ボデー52の反対側に設置されている第二ステータ部74とから構成されている。第一ステータ部67は、筒状に形成され、内周側の壁面にてアーマチャ79を軸方向に往復移動可能に支持するとともに弁ボデー52の支持部59を支持する。第一ステータ部67の弁ボデー52側の端部には、弁ボデー52の出口側通路56と連通する貫通穴68が形成されている。
第一ステータ部67の弁ボデー52側の端部にはかしめ部69が形成されており、弁ボデー52の一部を第一ステータ部67に挿入させた後、かしめ部69と本体部53の段差部とをかしめることによって、第一ステータ部67に弁ボデー52が組み付けられる。
また、第一ステータ部67の中央部には、径方向に突出するフランジ部70が形成されている。フランジ部70には締結穴71が形成されており、図示しないボルト等の締結手段が挿入されることによりポンプハウジングと締結される。
第二ステータ部74は、筒状に形成され、アーマチャ79およびロッド80の弁ボデー52とは反対側の端部を軸方向に往復移動可能に支持する。第二ステータ部74はロッド80の弁ボデー52とは反対側の端部82が当接することによりロッド80の移動を規制するストッパ部75を有している。
第一ステータ部67と第二ステータ部74は、向かい合う両ステータ部67、74の端部72、76の間に所定の隙間が形成されるように設置されている。この隙間により第一ステータ部67と第二ステータ部74とが磁気的に短絡するのを抑制する。第一ステータ部67の端部72の外周には、第一ステータ部67の中心軸に向かって傾斜するテーパ面が形成されている。
コイル64の外周側には、例えばステンレス鋼などの磁性材料より筒状に形成され、第一ステータ部67と第二ステータ部74とを磁気的に接続するハウジング78が設置されている。また、電磁アクチュエータ部63には、ハウジング78とコイル64との隙間や、ターミナル83の一部を覆う樹脂ハウジング84が設置されている。
ステータ65の収容部66に収容されているアーマチャ79は、例えばステンレス鋼などの磁性材料より円筒状に形成され、内周側にロッド80を支持している。ロッド80におけるアーマチャ79よりも弁ボデー52側の外周壁が、テフロン(登録商標)製のブッシュ73を介して支持部59の内周壁に往復移動可能に支持されている。また、ロッド80におけるアーマチャ79よりも弁ボデー52とは反対側の外周壁が、テフロン(登録商標)製のブッシュ77を介して第二ステータ部74の内周壁に往復移動可能に支持されている。
ロッド80の弁ボデー52側の端部81の表面は球面となっており、ダイヤフラム61と当接可能となっている。また、ロッド80の外径は、弁室54側の円錐面57の内径よりも小さく、入口側通路55側の円錐面57の内径よりも大きい。
ダイヤフラム61はロッド80のもう一方の端部82が第二ステータ部74のストッパ部75に当接している状態で撓んでおり、ロッド80を弁ボデー52とは反対側に付勢している。このダイヤフラム61の付勢力は、ロッド80が弁ボデー52側に変位するほど大きくなる。付勢力は、図3に示すように、ダイヤフラム61の当接部62が弁座58に当接している状態が最も大きい。なお、図3に示すように、当接部62が弁座58に当接している状態のとき、支持部59とアーマチャ79とは離れている。
以上のように構成されている電磁アクチュエータ部63において、コイル64の電線に制御装置40より電流が供給されると、コイル64は供給された電流量に応じた磁束を発生する。発生した磁束は、第一ステータ部67、ハウジング78、第二ステータ部74、アーマチャ79、第一ステータ部67の端部72を巡回する。これらの各要素67、78、74、79によって磁気回路が形成される。このような磁気回路が形成されることにより、第一ステータ部67の端部72とアーマチャ79との間にアーマチャ79を端部72に引き付ける磁気吸引力が発生する。この磁気吸引力は、供給される電流量に応じた力となる。
次に、吸入調量弁50の作動について説明する。
コイル64に制御装置40より電流が供給されていない状態では、ロッド80はダイヤフラム61の付勢力により端部82がストッパ部75に当接する位置まで変位する。このとき、ダイヤフラム61の当接部62は弁座58より離座している。このため、入口側通路55から弁室54に流入した燃料は、出口側通路56および貫通穴68を通り、燃料吸入流路93へ流れる。このときの燃料の流量は、円錐面57とダイヤフラム61の表面との隙間の大きさに応じた流量となっている。
コイル64に制御装置40より電流が供給されると、第一ステータ部67、ハウジング78、第二ステータ部74、アーマチャ79にて磁気回路が形成され、第一ステータ部67の端部72とアーマチャ79との間に供給された電流量に応じた磁気吸引力が発生する。
このため、ロッド80はアーマチャ79とともに弁ボデー52側に変位しようとする。ロッド80は、両者67、79の間に発生した磁気吸引力とダイヤフラム61がロッド80を付勢する付勢力が釣り合うところで停止する。これにより、円錐面57とダイヤフラム61の表面との隙間が通電前の状態に比べ狭くなる。このため、この隙間を通過する燃料の流量が少なくなる。
コイル64に供給される電流量をさらに大きくすると、磁気吸引力はさらに大きくなり、ロッド80はさらに弁ボデー52側に変位する。このため、円錐面57とダイヤフラム61の表面との隙間はさらに狭くなり、通過する流量がさらに少なくなる。
コイル64に供給される電流量が所定量を超えると、ダイヤフラム61の当接部62が弁座58に着座する。このとき、入口側通路55と出口側通路56との連通が遮断され、吸入調量弁50を通過する燃料はなくなる。
次に、本実施形態の吸入調量弁50の特徴を図5に示す比較例と比較しながら説明する。図4は、吸入調量弁50の特徴部分の構造を示す断面図である。図5は、本実施形態の吸入調量弁50と比較する比較例による図4に図示する特徴部分に対応する構造を示す断面図である。図6は、本実施形態による吸入調量弁50と、比較例による吸入調量弁50aのそれぞれのロッドの変位量と弁座とダイヤフラムとの間に形成される隙間の面積(開口面積)との関係を比較したグラフである。なお、図5および図6では、中心線よりも左側に閉弁時の状態を示し、中心線よりも右側にロッドが所定量変位したときの状態を示している。
図4に示すように、弁座58が設けられている面は、入口側通路55から弁室54に向かうにしがたい内径が漸増するような円錐面57となっている。本実施形態では、ロッド80にてダイヤフラム61を弾性変形させ、ダイヤフラム61の当接部62を弁座58に着座させることにより、入口側通路55と出口側通路56との連通を遮断している。また、コイル64へ供給する電流量を調整してロッド80の変位量を調整することにより、円錐面57とダイヤフラム61の表面との隙間が調整され、流量が制御される。
一方、図5に示す比較例による吸入調量弁50aの弁座58aは、入口側通路55の軸線に対して垂直に交わる平面上に形成されている。平面上に弁座58aが形成されている点が、図4に示す構造と異なっている。他の部分に対しては図4に示す構造と同じとしているため、符号も本実施形態と同じ符号を付すこととする。
ダイヤフラム61aは図4と同様、弁座58aに対向して設置されており、ダイヤフラム61aの表面には弁座58aに着座する当接部62aが形成されている。ロッド80aは図4と同様、軸方向に変位することによりダイヤフラム61を弁ボデー52側に押し込み、当接部62aを弁座58aに離着座させられるように構成されている。
この構造によっても、コイル64へ供給する電流量を調整してロッド80aの変位量を調整することにより、平面とダイヤフラム61aの表面との隙間が調整され、流量が制御される。
本実施形態と比較例との相違点をさらに詳しく説明する。ダイヤフラム61、61aの当接部62、62aが弁座58、58aに当接している状態からのロッド80、80aの変位量を変化させたときのダイヤフラム61、61aの表面と、対向する円錐面57または平面57aとの隙間の変化を比較する。
図4および図5に示す吸入調量弁50、50aの入口側通路55の通路径をD1(mm)とし、図4に示す吸入調量弁50の円錐面57の角度をα(°)および弁座58部分の直径をD2(mm)とした場合、双方のロッド80、80aの着座状態からの変位量をH(mm)としたときの、弁座58、58aとダイヤフラム61、61aにて形成される隙間を比較する。
図5に示すような形態の弁座58aである場合、弁座58aとダイヤフラム61aとの間に形成される燃料が流れる隙間の断面積(開口面積)は、入口側通路55を底面とする円柱の側面の面積とほぼ同じとなる。ロッド80aの変位量がH(mm)である場合、直径D1(mm)の円を底面とする高さH(mm)の円柱の側面の面積が開口面積となる。
一方、図4に示すような形態の弁座58である場合、弁座58とダイヤフラム61との間に形成される燃料が流れる隙間の断面積(開口面積)は、弁座58部分を底面とし、頂角が180−α(°)となる円錐における側面の一部の面積とほぼ同じとなる。ロッド80の変位量がH(mm)である場合、直径D2(mm)の円を底面とし、頂角が180−α(°)となる円錐における底面から高さH(mm)部分の側面の面積が開口面積となる。
以上、説明したような図4と図5に示す吸入調量弁50、50aのロッド80、80aを着座状態から変位させると、図6に示すようにロッド80、80aの単位変位量に対する開口面積の変化量が異なる。
図6によれば、図4に示す本実施形態による吸入調量弁50のロッド80の単位変位量に対する開口面積の変化量は、図5に示す比較例の場合に比べ小さい。開口面積は、図5の比較例による吸入調量弁50aに対して相対的になだらかに変化する。開口面積の変化量が相対的に小さいため、制御する流量の変化量も小さくなる。よって、本実施形態のように、円錐面57上に弁座58を有しているものの方が、平面57a上に弁座58aが形成されている場合に比べ、流量の制御性が良好となる。
また、本実施形態では、ダイヤフラム61は弾性変形することにより、常にロッド80を弁ボデー52側とは反対側に付勢しているため、ロッド80を付勢する付勢手段を別途設置する必要がなく、吸入調量弁50の構造を簡単にすることができる。また、部品点数が減らせるため吸入調量弁50の価格の上昇を抑制することができる。
また、ダイヤフラム61は、弁室54を画定するように弁ボデー52に設置されているため、弁室54から電磁アクチュエータ部63への燃料の侵入を抑制することができる。このため、燃料に異物が混入していたとしても、ロッド80とブッシュ73、77との間や、アーマチャ79とステータ65の収容部66との間に異物が侵入することを抑制することができ、吸入調量弁50の性能低下を抑制することができる。
さらに、本実施形態では、ダイヤフラム61がゴム製となっているため、燃料吸入流路93を流れる燃料が脈動を起こしていても、このダイヤフラム61にて効果的に脈動を低減させることができる。
また、ロッド80の外径は、弁室54側の円錐面57の内径よりも小さく、入口側通路55側の円錐面57の内径よりも大きくなっている。このため、ダイヤフラム61の当接部62を確実に円錐面57上に形成されている弁座58に着座させることができる。また、ロッド80の端部81は球面となっているため、ダイヤフラム61への負荷を軽減することができ、ダイヤフラム61を長寿命化することができる。
なお、本実施形態では、ダイヤフラム61が特許請求の範囲に記載の「弾性薄膜体」に相当し、ロッド80が特許請求の範囲に記載の「棒部材」に相当し、電磁アクチュエータ部63が特許請求の範囲に記載の「駆動手段」に相当する。また、入口側通路55が特許請求の範囲に記載の「特定通路」に相当する。
(その他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明した。本発明は、上記実施形態に限定して解釈されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態に適用することができる。
例えば、出口側通路56と弁室54との接続部を円錐面57とし、その円錐面57上に弁座58を形成するようにしても良い。このとき、ダイヤフラム61は円錐面57に対向して設けられるとともに、ロッド80もダイヤフラム61の当接部62を弁座58に着座させられるように設置する必要がある。
また、上記実施形態では、ロッド80の変位量を制御しているが、コイル64、ステータ65、ハウジング78およびアーマチャ79などからなるリニアソレノイドにてロッド80の変位量を制御しているが、ステータ、ロータなどから構成される回転機と、回転機の回転運動を直動運動に変換する変換機構とからなる手段にてロッド80の変位量を制御するように吸入調量弁を構成しても良い。