===開示の概要===
本明細書の記載、及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかとなる。
即ち、(1)媒体にインクを吐出する複数のノズルが所定方向に並んだノズル列と、(2)前記ノズル列を前記媒体に対して、前記所定方向と交差する方向に移動する移動機構と、(3)前記媒体を前記ノズル列に対して、前記所定方向に搬送する搬送機構と、(4)前記移動機構によって前記交差する方向の一方側から前記ノズル列を移動させながら前記ノズル列からインクを吐出させた後に、前記搬送機構によって前記媒体を前記所定方向に所定の搬送量にて搬送させて、前記交差する方向の他方側から前記ノズル列を移動させながら前記ノズル列からインクを吐出させる吐出動作と、前記媒体を前記所定方向に前記所定の搬送量よりも大きい搬送量にて搬送させる搬送動作と、を交互に繰り返させる制御部であって、先の前記吐出動作にて形成される第1の画像の端部と後の前記吐出動作にて形成される第2の画像の端部とが重複するように前記搬送動作において前記媒体を搬送させて、前記第1の画像の端部を形成するために前記ノズルから吐出させるインク量と、前記第2の画像の端部を形成するために前記ノズルから吐出させるインク量と、を異ならせる制御部と、(5)を有することを特徴とする印刷装置である。
このような印刷装置によれば、画像の端部が重複する領域とそれ以外の領域とにおけるインクの着色剤の沈み込み量の差を小さくすることができ(特に往復移動するヘッドの折り返し側)、重複する領域とそれ以外の領域との濃度むらを低減できる。
かかる印刷装置であって、前記第1の画像の端部を形成するために前記ノズルから吐出させるインク量を、前記第2の画像の端部を形成するために前記ノズルから吐出させるインク量よりも多くすること。
このような印刷装置によれば、濃度むらをより低減することができる。
かかる印刷装置であって、前記ノズルから吐出されるインクは顔料インクであること。
このような印刷装置によれば、濃度むらを低減することができる。
かかる印刷装置であって、前記制御部は、前記媒体に普通紙が選択された場合に、前記第1の画像の端部を形成するために前記ノズルから吐出させるインク量と、前記第2の画像の端部を形成するために前記ノズルから吐出させるインク量と、を異ならせること。
このような印刷装置によれば、普通紙に印刷する場合には、画像の端部が重複する領域とそれ以外の領域との濃度むらを低減することができ、普通紙以外の媒体に印刷する場合には搬送誤差が生じた時などの画質劣化をより抑制できる。
かかる印刷装置であって、前記第1の画像の端部と前記第2の画像の端部とが重複する領域では、前記交差する方向にドットが並んだ複数のドット列が前記所定方向に並び、前記制御部は、各前記ドット列を形成するために、先の前記吐出動作にて吐出させるインク量と後の前記吐出動作にて吐出させるインク量を異ならせること。
このような印刷装置によれば、搬送誤差が生じた時などの画質劣化を抑制できる。
かかる印刷装置であって、前記制御部は、前記複数のドット列において、先の前記吐出動作と後の前記吐出動作のうちの吐出するインク量が少ない方の前記吐出動作にて形成されるドットの前記交差する方向の位置を異ならせること。
このような印刷装置によれば、搬送誤差が生じた時などの画質劣化を抑制できる。
また、媒体にインクを吐出する複数のノズルが所定方向に並んだノズル列を前記所定方向と交差する方向の一方側から移動させながら前記ノズル列からインクを吐出させた後に、前記媒体を前記所定方向に所定の搬送量にて搬送させて、前記交差する方向の他方側から前記ノズル列を移動させながら前記ノズル列からインクを吐出させる吐出動作と、前記媒体を前記所定方向に前記所定の搬送量よりも大きい搬送量にて搬送させる搬送動作と、を交互に繰り返す印刷方法であって、先の前記吐出動作にて形成される第1の画像の端部と後の前記吐出動作にて形成される第2の画像の端部とが重複するように前記搬送動作において前記媒体を搬送させて、前記第1の画像の端部を形成するために前記ノズルから吐出させるインク量と、前記第2の画像の端部を形成するために前記ノズルから吐出させるインク量と、を異ならせることを特徴とする印刷方法である。
このような印刷方法によれば、画像の端部が重複する領域とそれ以外の領域とにおけるインクの着色剤の沈み込み量の差を小さくすることができ(特に往復移動するヘッドの折り返し側)、重複する領域とそれ以外の領域との濃度むらを低減できる。
===インクジェットプリンターの構成===
以下、印刷装置をインクジェットプリンターとし、また、インクジェットプリンターの中のシリアル式プリンター(プリンター1)を例に挙げて実施形態を説明する。
図1Aは、本実施形態のプリンター1の全体構成ブロック図であり、図1Bは、プリンター1の一部の斜視図である。外部装置であるコンピューター60から印刷データを受信したプリンター1は、コントローラー10により、各ユニット(搬送ユニット20、キャリッジユニット30、ヘッドユニット40)を制御し、用紙S(媒体)に画像を形成する。また、プリンター1内の状況を検出器群50が監視し、その検出結果に基づいて、コントローラー10は各ユニットを制御する。
コントローラー10は、プリンター1の制御を行うための制御ユニットである。インターフェース部11は、外部装置であるコンピューター60とプリンター1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU12は、プリンター1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー13は、CPU12のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。CPU12は、ユニット制御回路14により各ユニットを制御する。
搬送ユニット20(搬送機構に相当)は、用紙Sを印刷可能な位置に送り込み、印刷時に搬送方向(所定方向に相当)に所定の搬送量で用紙Sを搬送させるためのものである。
キャリッジユニット30(移動機構に相当)は、ヘッド41を搬送方向と交差する方向(以下、移動方向という)に移動させるためのものである。
ヘッドユニット40は、用紙Sにインクを吐出するためのものであり、ヘッド41有する。ヘッド41の下面にはインク噴射部であるノズルが複数設けられている。また、各ノズルに対応付けられたピエゾ素子を駆動することによって、ノズルからインクが吐出される。なお、本実施形態のプリンター1では、ヘッド41が移動方向の一方側から移動する際にも他方側から移動する際にも、ヘッド41からインクが吐出され、双方向印刷が行われる。
図2は、ヘッド41の下面におけるノズル配列を示す図である。180個のノズル(#1〜#180)が所定のノズルピッチ(180dpi)にて搬送方向に並んだノズル列が形成されている。ヘッド41には4つのノズル列が形成され、それぞれ異なる色のインクを吐出する。本実施形態のヘッド41は、イエローインクを吐出するイエローノズル列Yと、マゼンタインクを吐出するマゼンタノズル列Mと、シアンインクを吐出するシアンノズル列Cと、ブラックインクを吐出するブラックノズル列Kと、を有する。
このような構成のシリアル式のプリンター1では、キャリッジユニット30によって移動方向に移動するヘッド41からインクを断続的に噴射させて用紙S上にドットを形成するドット形成動作と、搬送ユニット20によって用紙Sを搬送方向に搬送する搬送動作と、を交互に繰り返す。その結果、先のドット形成動作により形成されたドットの位置とは異なる位置にドットを形成することができ、用紙上に2次元の画像を形成することが出来る。
===比較例の部分オーバーラップ印刷について===
図3Aは、バンド印刷の様子を示す図である。説明の簡略のため、1つのノズル列が有するノズルの数を12個とする。本来プリンター1ではヘッド41に対して媒体が搬送方向に搬送されるが、図中ではヘッド41を搬送方向に移動させて描いている。バンド印刷は、ヘッド41の移動方向への1回の移動(以下、パスとも呼ぶ)によりバンド画像を印刷する画像形成動作と、バンド画像の端部に位置するドット同士の間隔がノズルピッチ(180dpi)となるように用紙を所定の搬送量F1にて搬送する搬送動作と、を交互に繰り返す印刷方法である。
図3Aでは、先のパスにて白丸(○)のドットで構成されるバンド画像が形成され、後のパスにて黒丸(●)のドットで構成されるバンド画像が形成されている。1つのバンド画像は、複数のドットが移動方向に並んだドット列(以下、ラスタライン)が、ノズルピッチ(180dpi)おきにノズル数分だけ搬送方向に並んで構成される。また、先のパスのバンド画像(○)における最上流側のラスタラインと後のパスのバンド画像(●)における最下流側のラスタラインとの間隔がノズルピッチ180dpiとなるように、用紙の搬送量F1が決定される。このように、バンド印刷では、先のパスにて印刷されたラスタラインの間(又はドットの間)に、後のパスのラスタライン(又はドット)が形成されない。
図3Bは、バンド印刷の搬送動作において搬送誤差が発生した時のドット形成の様子を示す図である。先のパスにてバンド画像(○)が印刷された後に、所定の搬送量F1よりも多い搬送量F1+αにて用紙が搬送されたとする。そうすると、先のパスの最上流側のラスタラインと後のパスの最下流側のラスタラインとの間隔がノズルピッチよりも大きくなり(180dpi+α)、画像上に移動方向に沿った白スジが現れてしまう。逆に、所定の搬送量F1よりも少ない搬送量にて用紙が搬送されると(不図示)、先のパスのバンド画像の端部と後のパスのバンド画像の端部が重なり、画像上に移動方向に沿った濃いスジが現れてしまう。このように、バンド印刷では搬送誤差などが発生すると、画像上にスジが現れて画質が劣化してしまう。
また、バンド印刷にて形成された画像では、ラスタラインが搬送方向にノズルピッチと等しい間隔(180dpi)で並ぶ。そのために、搬送方向の印刷解像度をノズルピッチ(180dpi)よりも高くすることが出来ず、ノズルピッチが広いプリンター1では高解像度な画像を印刷することが出来ない。
図4Aは、比較例のマイクロフィード印刷の様子を示す図である。マイクロフィード印刷では、まず、ヘッド41を移動方向の左側から右側へ移動させて(パス1)、ヘッド41からインクを吐出させる。その結果、ラスタライン(○)がノズルピッチ間隔(180dpi)で搬送方向に並んで形成される。次に、用紙をヘッド41に対して微小搬送量F2(半ノズルピッチ・360dpi)で微小送りし、その後、ヘッド41を移動方向の右側から左側へ移動させる際に(パス2)、ヘッド41からインクを吐出させる。その結果、パス1にて形成されたラスタラインの間に、パス2のラスタライン(△)が形成される。即ち、2回のパスにより、ノズルピッチの半分の間隔(360dpi)で搬送方向に並ぶラスタラインから構成される画像(以下、擬似バンド画像とも呼ぶ)が形成される。このように、パスの間で用紙を微小送りすることで、搬送方向の印刷解像度をノズルピッチよりも高くすることが出来る。
パス2の後は、用紙をヘッド41に対して大搬送量F3で大送りする。そして、ヘッド41を左側から右側へ移動させる際に(パス3)、ヘッド41からインクを吐出させてラスタライン(●)を形成する。その後、用紙を微小搬送量F2で微小送りして、ヘッド41を右側から左側へ移動させる際に(パス4)、ヘッド41からインクを吐出させる。その結果、パス3で形成されたラスタラインの間にパス4のラスタライン(▲)が形成され、擬似バンド画像を形成することが出来る。
擬似バンド画像の繋ぎ目領域では、パス1及びパス2にてノズル列の上流側の端部ノズル(図中では#9〜#12)にて形成されたドット(○または△)と、次のパス3及びパス4にてノズル列の下流側の端部ノズルにて形成されたドット(●または▲)とが、移動方向に並ぶように印刷する。図4Aでは、パス1で形成されたドット(○)とパス3で形成されたドット(●)が移動方向に並び、パス2で形成されたドット(△)とパス4で形成されたドット(▲)が移動方向に並んでいる。
即ち、マイクロフィード印刷では、パス1及びパス2にて形成された擬似バンド画像の端部と、パス3及びパス4にて形成された擬似バンド画像の端部とが重複するように印刷が行われる。そのために、パス1の端部ノズル#9〜#12(又はパス2の端部ノズル)が対向した用紙上の領域に、パス3の端部ノズル#1〜#4(又はパス4の端部ノズル)が対向するように、大搬送量F3が決定されている。
以下の説明のため、用紙の微小送り前後の2回のパスのみ(パス1とパス2、又は、パス3とパス4)で形成された画像を「通常領域」と呼び、用紙の大送り前後の4回のパス(パス1〜パス4)で形成された画像「重複領域」と呼ぶ。重複領域が擬似バンド画像端部の繋ぎ目に相当する。また、用紙を大搬送量F3にて大送りする前の2パス(パス1・パス2)を「先行パス」と呼び、用紙を大搬送量F3にて大送りした後の2パス(パス3・パス4)を「後行パス」と呼ぶ。また、用紙を微小送りする前のパス(パス1又はパス3)を「先のパス」と呼び、用紙を微小送りした後のパス(パス2又はパス4)を「後のパス」と呼ぶ。
図4Bは、比較例のマイクロフィード印刷において搬送誤差が生じた様子を示す図である。図中では、所定の大搬送量F3よりも多い搬送量F3+αで用紙が搬送された場合を示し、パス3及びパス4にて形成されるドット(●・▲)が搬送誤差α分だけ搬送方向の上流側にずれて形成されている。しかし、マイクロフィード印刷では、擬似バンド画像の繋ぎ目である重複領域を4つのパスにて印刷するため、パス3及びパス4のドットがずれて形成されたとしても、パス1及びパス2のドット(○・△)は搬送方向に所定の間隔で形成される。
そのため、バンド印刷(図3B)では搬送誤差が生じた場合に画像上にスジが生じてしまうが、比較例のマイクロフィード印刷(図4B)では画像上にスジが生じてしまうことを防止できる。このようにマイクロフィーフド印刷では、擬似バンド画像の繋ぎ目である重複領域を4つのパスにて印刷するため、搬送誤差による画質劣化を緩和することが出来る。
また、マイクロフィード印刷では、通常領域のラスタラインは1つのノズルにより形成されるのに対して、重複領域のラスタラインは2つのノズルにより形成される。更に、この比較例のマイクロフィード印刷(図4A)における重複領域では、パス1のドット(○)とパス3のドット(●)が移動方向に交互に並んだラスタラインと、パス2のドット(△)とパス4のドット(▲)が移動方向に交互に並んだラスタラインとが、搬送方向に並ぶ。
そのため、比較例のマイクロフィード印刷における重複領域では、パス1〜パス4の各ドット数が等しく、パス1〜パス4でそれぞれ重複領域に対して吐出されるインク量が等しい。言い換えれば、比較例のマイクロフィード印刷では、印刷データ上において、重複領域に対応する画素が、パス1〜パス4のノズルに25%ずつ割り当てられている。
===インクの着色材の沈み込みについて===
図5A及び図5Bは、顔料インクを用紙Sに吐出する様子を示す図である。本実施形態のプリンター1のヘッド41からは、着色剤が顔料である「顔料インク」が吐出されるとする。顔料は溶媒(例えば水分)に溶け込まないため、図中では「黒い四角(■)」にて顔料を示す。また、用紙Sは普通紙とする。
図5Aでは、まず、印刷データ上の2つの画素に対応する用紙上の2つの画素領域のうちの、一方の画素領域に対して所定量の顔料インクが吐出される。ノズルから吐出された顔料インク滴が用紙S上に着弾すると、顔料インクの溶媒成分などが用紙Sの繊維内に浸透する。この時、大部分の顔料成分は用紙Sの繊維内に浸透せずに用紙Sの表面に留まる。そうして、用紙Sの表面に留まる顔料成分でドットが形成され、用紙Sの表面に留まる顔料成分により人は用紙上の色を認識する。
また、図5Aでは、一方の画素領域に顔料インクを吐出してから暫くの時間が経過した後に、他方の画素領域に顔料インクを吐出している。この時、一方の画素領域に吐出された顔料インクの溶媒成分などは既に用紙S内部に浸透し、顔料成分は用紙S上に留まって定着している。そのため、他方の画素領域に顔料インク滴を吐出しても、一方の画素領域の顔料成分は用紙S上に留まったままである。また、他方の画素領域に吐出された顔料インクも同様に、顔料インクの溶媒成分などは用紙Sの繊維内部に浸透するが、顔料成分は用紙Sの表面に留まる。こうして、図5Aの2つの画素領域には大部分の顔料成分が用紙S上に留まり、発色性が良く、人に濃く視認される。
図5Bでは、用紙上の2つの画素領域に対してそれぞれ所定量の顔料インクを同時に吐出している。隣接する画素領域に同時にインク滴を吐出すると、用紙S上に着弾した2つの顔料インク滴が互いに影響を及ぼし合う。そのため、図5Aのように2回に分けて顔料インク滴が吐出される場合に比べて、1つの画素領域上の顔料インク量が多くなる。そうすると、顔料インクの溶媒成分などが用紙Sの繊維内に浸透する際に、着弾した顔料インク滴の下方に位置する顔料成分が他の顔料成分などの重みにより用紙Sの繊維内に沈み込んでしまう。最終的に、一部の顔料成分は用紙Sの表面に留まるが、一部の顔料成分は用紙Sの繊維内に沈み込んでしまう。そのため、図5Bの2つの画素領域では、用紙S上に留まる顔料成分量が少なく、発色性が悪く、人に淡く視認される。
このように、図5Aと図5Bでは、2つの画素領域に対して同じ量の顔料インクを吐出したにも関わらず、時間間隔を空けて2回に分けて顔料インクを吐出した図5Aの方が用紙Sの表面に留まる顔料成分が多く、同時に顔料インクを吐出した図5Bの方が用紙Sの表面に留まる顔料成分が少ない。顔料成分が用紙の繊維内に沈み込むと、用紙表面の顔料成分が少なくなり、発色性が悪くなる。そのため、図5Aのように2回に分けて顔料インクが吐出された画像の方が、図5Bのように1回で顔料インクが吐出された画像よりも、濃い画像となる。
なお、図5Bでは、2つの画素領域に対して同時に顔料インク滴を吐出している場合の現象を示しているが、一方の画素領域に顔料インク滴が吐出されたすぐ後に、隣接する画素領域に顔料インク滴が吐出された場合にも、図5Bと同様の現象が発生する。即ち、一方の画素領域に顔料インク滴が着弾してからその顔料インク滴が用紙に定着する前までの比較的に短い時間の間に、隣接する画素領域に顔料インク滴が吐出された場合には、お互いに影響を及ぼして、図5Bに示すように顔料成分が用紙S内部に沈み込んでしまう。即ち、ある領域に対して短い時間間隔でインクを吐出すると、顔料成分が用紙内部に沈み込み易く、発色性が悪くなる。
以上をまとめると、単位領域(図5では2つの画素領域)に対して同量の顔料インクを吐出する場合であっても、比較的に長い時間を空けて顔料インクを吐出する場合には(図5A)、顔料成分が用紙内部に沈み込み難く、画像の濃度が濃くなり(発色性が良くなり)、同時または比較的に短い時間間隔で顔料インクを吐出する場合には(図5B)、顔料成分が用紙内部に沈み込み易く、画像の濃度が淡くなる(発色性が悪くなる)。
なお、媒体として、表面がコーティングされた専用紙(例えばコート紙、光沢紙)やフィルム(例えばOHPシート)などを使用する場合には、顔料成分が媒体内部に沈み込み難いため、このような現象は発生し難い。また、媒体として普通紙を使用する場合に限らず、顔料成分が媒体内部に沈み込む場合には、このような現象が発生する。
また、顔料インクに限らず、着色剤が染料である染料インクにおいても同様の現象が発生する。そのため染料インクを使用するプリンター1であっても以下に説明する印刷方法を実施するとよい。ただし、染料は溶媒に溶け込み易いのに対して顔料は溶媒に溶け込まないため、顔料インクの方が、図5Aおよび図5Bに示す現象が発生し易いと考えられる。
図6Aは、比較例のマイクロフィード印刷(図4A)において通常領域のドットが形成される順番を示す図である。図中では1つのラスタラインが8個のドットから構成される。パス1では移動方向の左側から右側へ移動するヘッド41によってラスタライン(○)が形成され、パス2では移動方向の右側から左側へ移動するヘッド41によってラスタライン(△)が形成されるとする。
ドット(○・△)に記された数字はドットが形成された順番、即ち、あるノズル列が用紙上の画素領域と対向する順番を示す。そのため、ヘッド41が左から右へ移動するパス1で形成されたラスタライン(○)では、移動方向の左側のドットほど小さい番号(1〜)が記され、移動方向の右側のドットほど大きい番号(〜8)が記されている。一方、ヘッド41が右から左へ移動するパス2で形成されたラスタライン(△)では、移動方向の右側のドットほど小さい番号(9〜)が記され、移動方向の左側のドットほど大きい番号(〜16)が記されている。
図6Aによって、ある画素領域にパス1のドット(○)が形成されてから、ある画素領域の近傍の画素領域にパス2のドット(△)が形成されるまでの時間が分かる。例えば、移動方向の右端の画素領域では、パス1にてドット(8番)が形成された直後に、近傍の画素領域(搬送方向に並ぶ画素領域)にパス2にてドット(9番)が形成される。これに対して、移動方向の左端の画素領域では、パス1にてドット(1番)が形成されてから、暫くの時間が経過した後に、近傍の画素領域にパス2にてドット(16番)が形成される。
このことから、通常領域の右端領域では、パス1のドットとパス2のドットが短い時間の間に(図中の時間差1で)形成されるのに対して、通常領域の左端領域では、パス1のドットが形成されてからパス2のドットが形成されるまでの時間が長い(図中の時間差15)。
また、移動方向の中央部では、パス1のドット(例えば4番)が形成されてから近傍の画素領域にパス2のドット(13番)が形成されるまでの時間(時間差9)が、移動方向の右端領域(時間差1)よりは長いが、移動方向の左端領域(時間差15)よりは短い。このことから、パス1にてドットが形成されてから搬送方向に並ぶ画素領域にパス2にてドットが形成されるまでにかかる時間は、移動方向の左側の領域ほど長くなり、移動方向の右側の領域ほど短くなることが分かる。
つまり、マイクロフィード印刷の通常領域では、ある画素領域に先のパス(パス1)でドットが形成されてから、ある画素領域の近傍の画素領域(搬送方向に並ぶ画素領域)に後のパス(パス2)でドットが形成されるまでの時間が、移動方向の右側の領域ほど短く、移動方向の左側の領域ほど長い。なお、通常領域のラスタラインは1つのノズルで形成されるため、移動方向に並ぶ画素領域にドットが形成される時間間隔は短い(図中の時間差1)。
ところで、前述のように、単位領域に対して同量の顔料インクを吐出する場合であっても、比較的に長い時間を空けて顔料インクを吐出する場合には、顔料成分が用紙内部に沈み込み難く、画像の濃度が濃くなり、比較的に短い時間間隔で顔料インクを吐出する場合には、顔料成分が用紙内部に沈み込み易く、画像の濃度が淡くなる。
そのため、マイクロフィード印刷の通常領域では、移動方向の左側の領域ほど顔料成分が用紙内部に沈み込み難く、移動方向の右側の領域ほど顔料成分が用紙内部に沈み込み易い。即ち、移動方向の左側の画像ほど濃度は濃くなり、移動方向の右側の画像ほど画像濃度が淡くなり、通常領域では移動方向に濃度差が生じる。特に、2回のパス、即ち、ヘッド41が一方側から他方側へ移動するパスとヘッド41が他方側から一方側へ移動するパスで、画像が形成される場合に、他方側の画像が一方側の画像よりも濃度が淡くなる。
図6Bは、比較例のマイクロフィード印刷において重複領域のドットが形成される順番を示す図である。重複領域には、ヘッド41が移動方向の左から右へ移動するパス1のドット(○)と、ヘッド41が右から左へ移動するパス2のドット(△)と、ヘッド41が左から右へ移動するパス3のドット(●)と、ヘッド41が右から左へ移動するパス4のドット(▲)が形成される。また、比較例のマイクロフィード印刷の重複領域では(図4A)、パス1(○)とパス3(●)によって1つのラスタラインが形成され、パス2(△)とパス4(▲)によって1つのラスタラインが形成され、そして、パス1のドット(○)とパス4のドット(▲)が搬送方向に並び、パス2のドット(△)とパス3のドット(●)が搬送方向に並ぶ。
図6Bでは、移動方向の右端の画素領域では、パス3で形成されたドット(24番)と移動方向に並ぶドット(7番)はパス1で形成され、搬送方向に並ぶドット(9番)はパス2で形成されている。即ち、右端の画素領域と移動方向に並ぶ画素領域にドット(7番)が形成されてから比較的に長い時間(図中の時間差17)が経過した後に、右端の画素領域にドット(24番)が形成され、また、右端の画素領域と搬送方向に並ぶ画素領域にドット(9番)が形成されてから比較的に長い時間(時間差15)が経過した後に、右端の画素領域にドット(24番)が形成されている。
そのため、重複領域における移動方向の右端領域では、ある画素領域にドットが形成されてから近傍の画素領域にドットが形成されるまでの時間が長く、顔料成分が用紙内部に沈み込み難いので、濃い画像が形成される。
また、移動方向の左端の画素領域では、パス1で形成されたドット(1番)と移動方向に並ぶドット(18番)はパス3で形成され、搬送方向に並ぶドット(32番)はパス4で形成されている。即ち、左端の画素領域にドット(1番)が形成されてから移動方向に並ぶ画素領域にドット(18番)が形成されるまでの時間は比較的に長く(図中の時間差17)、また、左端の画素領域にドット(1番)が形成されてから搬送方向に並ぶ画素領域にドット(32番)が形成されるまでの時間も比較的に長い(図中の時間差32)。同様に、移動方向の中央部においても、ある画素領域にドットが形成されてから、その画素領域の近傍にドットが形成されるまでの時間が長い。
そのため、移動方向の左端領域も中央部の領域も、右端領域と同様に、ある画素領域にドットが形成されてから近傍の画素領域にドットが形成されるまでの時間が長く、顔料成分が用紙内部に沈み込み難いので、濃い画像が形成される。
つまり、マイクロフィード印刷の重複領域では、移動方向の全域に亘って、顔料成分が用紙内部に沈み込み難く、濃度が濃くなり、移動方向に濃度差が生じない。
ここで、通常領域(図6A)と重複領域(図6B)を比較すると、通常領域では移動方向の右側の領域ほど顔料成分の沈み込み量が多く濃度が淡くなるのに対して、重複領域では移動方向の右側の領域であっても顔料成分が沈み込み難く濃度が濃い。そのため、比較例のマイクロフィード印刷では、比較的に淡い通常領域の右側画像と比較的に濃い重複領域の右側画像が搬送方向に並び、濃度むらが目立ち、画質が劣化してしまう。
なお、本実施形態のプリンター1では、最初のパスにおいてヘッド41が左側から右側に移動するとしているため、通常領域の右側の画像が淡くなる。しかし、これに限らず、最初のパスにおいてヘッド41が右側から左側へ移動する場合には、通常領域の左側の画像が淡くなる。
以上をまとめると、比較例のマイクロフィード印刷であって、双方向印刷を行う場合には、通常領域の画像は、ヘッド41が移動方向の一方側から他方側へ移動した後に他方側から一方側に戻ってくることによって(2パスで)形成されるため、他方側の領域にドットが形成される時間間隔が短く、顔料成分の沈み込み量が多く、濃度が淡くなるのに対して、一方側の領域ではドットが形成される時間間隔が長く、顔料成分の沈み込み量が少なく、濃度が濃くなる。一方、重複領域の画像は4つのパスで形成される各ドットが交互に並ぶため、移動方向の他方側の領域だけドットが形成される時間間隔が短くなることはなく、移動方向の全域に亘って濃い画像となる。その結果、通常領域の淡い領域と重複領域の濃い領域が搬送方向に並び、濃度むらが目立ってしまう。
そこで、本実施形態では、マイクロフィード印刷を行う際に、着色剤(顔料成分)の沈み込みの違いにより発生する通常領域と重複領域の濃度むら(特に、往復移動するヘッドの折り返し側)を低減することを目的とする。
===本実施形態のマイクロフィード印刷について===
<印刷方法について>
通常領域の移動方向右側の画像の淡さと重複領域の画像の濃さによる濃度むらを解消するために、本実施形態のマイクロフィード印刷では、重複領域の移動方向右側の領域において、通常領域と同様に、顔料成分の沈み込み量を多くして、画像濃度を淡くする。そうすることで、画像全体において、移動方向の左側では濃い通常領域と濃い重複領域とが搬送方向に並び、移動方向の右側では淡い通常領域と淡い重複領域とが搬送方向に並ぶため、濃度むらが低減される。
そのために、本実施形態のマイクロフィード印刷では、重複領域を印刷する4つのパスのうち、用紙を大搬送量F3で大送りする前の2つのパス1・2(先行パス)にて重複領域に吐出するインク量と、用紙を大搬送量F3で大送りした後の2つのパス3・4(後行パス)にて重複領域に吐出するインク量と、を異ならせる。
つまり、本実施形態のマイクロフィード印刷では、ヘッド41を移動方向の一方側から移動させながらヘッド41からインクを吐出させた後に、用紙を搬送方向に微小搬送量F2にて搬送させて(微小送り)、移動方向の他方側からヘッド41を移動させながらヘッド41からインクを吐出させて擬似バンド画像を形成する画像形成動作(吐出動作に相当)と、用紙を搬送方向に大搬送量F3にて搬送させる大搬送動作(搬送動作に相当)と、を交互に繰り返す。このとき、先の画像形成動作(先行パス)にて形成される擬似バンド画像(第1の画像に相当)の端部と後の画像形成動作(後行パス)にて形成される擬似バンド画像(第2の画像に相当)の端部とが重複するように、大搬送量F3にて用紙を大送りさせ、先の画像形成動作(先行パス)で重複領域に吐出させるインク量と、後の画像形成動作(後行パス)で重複領域に吐出させるインク量と、を異ならせる。
図7Aは、本実施形態のマイクロフィード印刷を示す図であり、図7Bは、本実施形態のマイクロフィード印刷における重複領域のドットが形成される順番を示す図である。ここでは、先行パス(パス1及びパス2)で重複領域に吐出するインク量を、後行パス(パス3及びパス4)で重複領域に吐出するインク量よりも多くする。即ち、比較例のマイクロフィード印刷(図4A)では先行パスで形成されるドット数と後行パスで形成されるドット数が同じであるのに対して、本実施形態では、先行パスで形成されるドット数(○・△)を、後行パスで形成されるドット数(●・▲)よりも多くする。図7では、1つのラスタラインが8個のドットから構成されており、重複領域に属する8つのラスタラインは、それぞれ、先行パスの7個のドット(○・△)と、後行パスの1個のドット(●・▲)で構成される。
このように、先行パスで重複領域に吐出するインク量を後行パスで重複領域に吐出するインク量よりも多くするということは、重複領域の大部分のドットが先行パスにて形成されることになる。先行パスで大部分のドットが形成されるとは、図6Aの通常領域のように、ヘッド41が左から右へ移動するパス1とヘッド41が右から左へ移動するパス2によって、重複領域の大部分のドットが形成されるということである。
そのため、図7Bに示すように、移動方向の右端の画素領域では、殆どのラスタラインにおいて、パス1にてドット(8番)が形成された前後に、近傍の画素領域(移動方向及び搬送方向に並ぶ画素領域)にドット(7番・9番)が形成される。この結果、重複領域も、通常領域と同様に(図6A)、移動方向の右端領域において、ある画素領域にドットが形成されてから、その画素領域の近傍の画素領域にドットが形成されるまでの時間が比較的に短く、用紙内部に沈み込む顔料成分の量が多くなり、画像濃度が淡くなる。その結果、濃度が淡い通常領域の右側画像と、濃度が淡い重複領域の右側画像が、搬送方向に並ぶため、濃度むらを低減できる。
また、移動方向の右端の一部の画素領域には、後行パスのドット(例えば25番)が形成され、その一部の画素領域の周辺では顔料成分の沈み込み量が少なくなるが、先行パスのドットに比べて後行パスのドットは少ないため、画像を巨視的に見た際に、重複領域の右側領域は、通常領域の右側領域と同様に、濃度が淡く視認される。
また、移動方向の左端の画素領域においても、殆どのラスタラインにおいて、パス1にてドット(1番)が形成されてから、比較的に長い時間が経過した後に、近傍の画素領域(搬送方向に並ぶ画素領域)にドット(15番)が形成される。このため、重複領域も、通常領域と同様に、用紙内部に沈み込む顔料成分の量は少なく、画像濃度が濃くなる。その結果、濃度が濃い通常領域の左側画像と、濃度が濃い重複領域の左画像が、搬送方向に並ぶため、濃度むらを低減できる。なお、移動方向の左端の一部の画素領域にも、後行パスのドット(例えば17番)が形成されるため、その一部の画素領域では顔料成分の沈み込み量が増えるが、後行パスのドットは少ないので問題はない。
同様に、移動方向の中央部においても、通常領域と同様に、ある画素領域にドットを形成してから、その画素領域の近傍領域にドットが形成されるまでの時間を、右側の領域よりも長く、左側の領域よりも短くしているので、重複領域と通常領域の濃度差を低減できる。
このように、先行パス(パス1・パス2)、又は、後行パス(パス3・パス4)の何れか一方のパスにて重複領域に吐出するインク量を少なくすることで、重複領域のドット形成方法(図7B)を通常領域のドット形成方法(図6A)に近づけることができる。即ち、通常領域では2回のパス(先行パス又は後行パスの何れか)でドットが形成されるため、重複領域においても2回のパス(先行パス又は後行パス)で多くのドットを形成する。そうすることで、重複領域における移動方向の左右の濃度差(顔料成分の沈み込み量の差)を、通常領域における移動方向の左右の濃度差(顔料成分の沈み込み量の差)と同じにすることができ、通常領域と重複領域の濃度むら、特に移動方向の右側(往復移動するヘッド41の折り返し側)の濃度むらを解消することが出来る。
そのため、先行パスで重複領域に吐出するインク量と後行パスで重複領域に吐出するインク量の差を大きくする方が、重複領域のドット形成方法(図7B)が通常領域のドット形成方法(図6A)により近づき、濃度むらをより解消することが出来る。
また、本実施形態のマイクロフィード印刷では、先行パス(パス1・パス2)で形成される擬似バンド画像と、後行パス(パス3・パス4)で形成される擬似バンド画像の繋ぎ目部分に相当する重複領域に対して、先行パスと後行パスの両方でインクが吐出される。そのため、先行パスと後行パスの間の用紙の大送りの際に搬送誤差が生じたとしても、図3Bに示すバンド印刷のように画像の繋ぎ目に隙間が生じてしまうことを防止できる。
<濃度むらの測定結果について>
図8Aは、本実施形態のマイクロフィード印刷(図7A)を行って形成した画像において輝度値を測定した場所を説明する図であり、図8Bは、本実施形態のマイクロフィード印刷を行って形成した画像の表面側(印刷面側)から輝度値(L値、単位面積当たりの明るさ)を測定した結果を示す表であり、図8Cは、図8Bの測定結果をグラフにした図である。なお、輝度値を測定した画像は普通紙に顔料インクで印刷された画像であり、シアンC、マゼンタM、イエローY、ブラックKのインク吐出量の比は、28%,17%,5%,64%であり、通常領域を2パスで印刷し、重複領域を4パスで印刷した画像である。
図8Aに示すように、通常領域の左側の領域を「画像A」とし、通常領域の右側の領域を「画像B」とし、重複領域の左側の領域を「画像C」とし、重複領域の右側の領域を「画像D」とする。図8Bには、先行パス(パス1・パス2)で重複領域に吐出するインク量と後行パス(パス3・パス4)で重複領域に吐出するインク量の比率を種々変更して印刷した画像における輝度値の測定結果が示されている。また、図8Bには、画像Aを表側から測定した輝度値から画像Cを表側から測定した輝度値の差「A−C」と、画像Bを表側から測定した輝度値から画像Dを表側から測定した輝度値の差「B−D」と、画像Aを表側から測定した輝度値から画像Bを表側から測定した輝度値の差「A−B」と、画像Cを表側から測定した輝度値から画像Dを表側から測定した輝度値の差「C−D」が示されている。例えば、図8Bの1番の結果では、重複領域に吐出するインク量のうち、先行パス(パス1・パス2)のインク吐出量を6.25%とし、後行パス(パス3・パス4)のインク吐出量を93.75%として画像を印刷した時に、画像Aと画像Cの表面の輝度値の差が「0.09」であることを示している。
通常領域の右側の画像Bでは短時間の間に多くのドットが形成されるため、顔料成分が用紙内部に沈み込み、画像表面の濃度が淡くなる。そのため、画像Bの表面の輝度値は高くなる。逆に、通常領域の左側の画像Aでは長い時間の経過後にドットが形成されるため、顔料成分が用紙内部に沈み込み難く、画像濃度が濃くなる。そのため、画像Aの表面の輝度値は低くなる。即ち、顔料成分の沈み込み量が多く、画像濃度が淡い領域ほど輝度値が高くなる。
図8Cにおいて、まず、画像A(通常領域の左側)と画像C(重複領域の左側)の輝度値の差の結果「A−C(グラフ中の●)」をみる。そうすると、画像Aと画像Cの輝度値の差はゼロに近い。このことから、通常領域の左側の画像Aと重複領域の左側の画像Cの濃度差は小さく、顔料成分の沈み込み量がほぼ同等であることが分かる。
次に、画像B(通常領域の右側)と画像D(重複領域の右側)の輝度値の差の結果「B−D(グラフ中の■)」をみる。そうすると、重複領域に対する先行パスと後行パスのインク吐出量の差が小さい時に(例えば8番結果〜10番結果)、画像Bと画像Dの輝度値差が大きく、画像Bと画像Dの濃度差が大きいことが分かる。前述の比較例のマイクロフィード印刷(先行パスと後行パスのインク吐出量比が50%)にて形成された画像の輝度値の結果は、8番結果に相当する。この結果から、先行パスで重複領域に吐出するインク量と後行パスで重複領域に吐出するインク量を同じにすると、移動方向の右側における通常領域と重複領域の濃度差が大きく、画質が劣化することが分かる。
そして、先行パスのインク吐出量を後行パスのインク吐出量よりも多くするにつれて(番号が大きい結果ほど)、画像Bと画像Dの輝度値の差が小さくなり、画像Bと画像Dの濃度むらが低減される。また、後行パスのインク吐出量を先行パスのインク吐出量よりも多くするにつれて(番号が小さい結果ほど)、画像Bと画像Dの輝度値の差が小さくなり、画像Bと画像Dの濃度むらが解消される。この結果から、本実施形態のマイクロフィード印刷のように(図7A)、先行パスで重複領域に吐出するインク量と後行パスで重複領域に吐出するインク量を異ならせ、更に、その差を大きくすることによって、移動方向の右側における通常領域と重複領域の濃度むらを低減できることが分かる。
次に、画像A(通常領域の左側)と画像B(通常領域の右側)の輝度値の差の結果「A−B(グラフ中の▲)」をみる。画像Aよりも画像Bの方が、輝度値が高く、画像Bの濃度が淡いことが分かる。この結果からも、通常領域では移動方向の右側ほど(ヘッド41が往復印刷する時の折り返し側ほど)、顔料成分の沈み込み量が多くなり、画像濃度が淡くなることが分かる。
そして、画像C(重複領域の左側)と画像D(重複領域の右側)の輝度値の差の結果「C−D(グラフ中の×)」をみる。例えば、比較例のマイクロフィード印刷のように、重複領域に対する先行パスと後行パスのインク吐出量が同じである画像(8番結果)では、画像Cと画像Dの輝度値の差が小さく、重複領域の左右の濃度差が小さいことが分かる。この場合、通常領域と重複領域の濃度むら、特に移動方向の右側の濃度むらが目立ってしまう。
そこで、本実施形態のマイクロフィード印刷のように、先行パスで重複領域に吐出するインク量と後行パスで重複領域に吐出するインク量を異ならせ、更に、その差を大きくすることによって(番号が大きい結果と番号が小さい結果)、画像Cの輝度値よりも画像Dの輝度値を大きくしている。即ち、移動方向の左側の画像Cの濃度よりも移動方向の右側の画像Dの濃度を淡くしている。そうすることで、通常領域においても重複領域においても移動方向の右側の濃度が淡くなり、通常領域と重複領域の濃度むらを低減することが出来る。グラフの結果によれば、重複領域に対する先行パスと後行パスのインク吐出量の差を大きくすることによって、通常領域における移動方向の左右の濃度差の結果「A−B(▲)」と重複領域における移動方向の左右の濃度差の結果「C−D(×)」を近づけ、通常領域と重複領域の濃度むらを低減する。
また、図8Bの結果から、先行パスで重複領域に吐出するインク量と後行パスで重複領域に吐出するインク量の比率を「93.75%と6.25%」の比率にして形成した画像の結果(15番結果)において、通常領域右側の画像Bの輝度値と重複領域右側の画像Dの輝度値の差を最小「0.14」にすることが出来る。この結果から、先行パスで重複領域に吐出するインク量を後行パスで重複領域に吐出するインク吐出量よりも多くするとよい(第1の画像の端部を形成するためにノズルから吐出させるインク量を第2の画像の端部を形成するためにノズルから吐出させるインク量よりも多くする)。そうすることで、移動方向の右側(往復移動するヘッド41の折り返し側)における通常領域と重複領域の濃度差を最も小さくすることができ、濃度むらをより改善することが出来る。具体的には、重複領域に吐出するインク量のうち、94%のインク量を先行パスにて吐出させ、残りの6%のインク量を後行パスにて吐出させるとよい。
<印刷データの作成処理について>
図9は、本実施形態のマイクロフィード印刷を行うための印刷データの作成フローを示す図である。本実施形態の印刷システムでは、プリンター1に印刷させるための印刷データを、コンピューター60のメモリーに記憶されたプリンタードライバーに従って、コンピューター60が行うとする。そして、コンピューター60に作成された印刷データはプリンター1に送信され、プリンター1のコントローラー10はその印刷データに従って印刷動作を制御する。そのため、本実施形態では、コンピューター60とプリンター1が接続された印刷システムが「印刷装置」に相当し、コンピューター60とプリンター1のコントローラー10が「制御部」に相当する。
また、プリンターに接続されたコンピューター60によって印刷データが作成されるに限らず、例えば、プリンター1のコントローラー10が、印刷データを作成し、先行パスにて重複領域に吐出するインク量と後行パスにて重複領域に吐出するインク量を異ならせてもよい。この場合、プリンター1単体が印刷装置に相当し、プリンター1のコントローラー10が制御部に相当する。
まず、解像度変換処理(S001)では、コンピューター60の各種アプリケーションプログラムから出力された画像データを、用紙に印刷する際の解像度に変換する。なお、解像度変換処理後の画像データは、RGB色空間により表される多階調のデータ(RGBデータ)である。次の色変換処理(S002)では、RGBデータを、プリンター1のインクに対応したCMYK色空間により表されるCMYKデータに変換する。
そして、ハーフトーン処理(S003)では、多階調数のデータをプリンター1が形成可能な階調数のデータに変換する。本実施形態のプリンター1は1種類のサイズのドットを形成するとし、この場合は、1つの画素が「ドットを形成する」「ドットを形成しない」の2階調にて表現される。
その後、コンピューター60は画像データに基づく印刷が「普通紙」で行われるか否かを判断する。もし、ユーザーによって「普通紙」が選択されている場合には(S004→YES)、本実施形態の部分オーバーラップ印刷(図7)を行うように印刷データを作成する。ユーザーによって普通紙以外が選択されている場合には(S004→NO)、比較例の部分オーバーラップ印刷(図4A)を行うように印刷データを作成する。
前述のように、媒体の種類によって顔料成分(着色剤)の沈み込み易さが異なる。普通紙のように、単位領域に対して短時間の間に多量のインクが吐出された時に顔料成分が沈み込んでしまう媒体を使用する場合には、先行パス(パス1・パス2)で重複領域に吐出するインク量と後行パス(パス3・パス4)で重複領域に吐出するインク量を異ならせる(即ち、図7の本実施形態のマイクロフィード印刷を行う)。そうすることで、重複領域の移動方向右側の顔料成分の沈み込み量を増やし、通常領域の移動方向右側と重複領域の移動方向右側の濃度むらを解消することが出来る。なお、図9のフローでは、S004にて普通紙を判断基準にしているが、これに限らず、顔料成分が内部に沈み込み易い媒体を使用する場合には、本実施形態のマイクロフィード印刷を行うようにするとよい。
また、普通紙以外が選択された場合には、比較例のマイクロフィード印刷(図4A)のように、先行パスで重複領域に吐出するインク量と後行パスで重複領域に吐出するインク量を同等にするとよい(先行パスのノズルに割り当てる画素数と後行パスのノズルに割り当てる画素数を同等にする)。そうすることで、搬送誤差が生じた時の画質劣化をより抑制できる。例えば、図4Bに示すように搬送誤差が大搬送量F3よりも大きい場合に、後行パスのドット(●・▲)が搬送方向の上流側にずれて形成されたとしても、画像の繋ぎ目部分に先行パスの比較的に多くのドット(本来形成されるべきドットの半分のドット、○・△)が形成されるため、搬送誤差による画質劣化をより抑制できる。また、普通紙以外の媒体であって、顔料成分が内部に沈み込み難い媒体であれば、重複領域に吐出するインク量を先行パスと後行パスで50%ずつにしても、顔料成分の沈み込みの違いによる濃度むらが発生しない。
そして、普通紙が選択されている場合には(S004→YES)、重複領域に対応する画素のうちのドットを形成する画素(以下、吐出画素)を、先行パスのノズルに割り当てるのか、それとも後行パスのノズルに割り当てるのかを決定する(S005)。ここでは、重複領域に対応する吐出画素のうち、94%の画素を先行パスのノズルに割り当て、6%の画素を後行パスのノズルに割り当てる。そうすることで、「先行パスで重複領域に吐出するインク量と後行パスで重複領域に吐出するインク量」の比率を「94対6」にすることができ、顔料成分の沈み込みの違いによる濃度むらを低減することが出来る。
図7Aおよび図7Bに示すように、重複領域が複数のラスタラインから構成される場合には、ラスタラインごとに(交差する方向にドットが並んだドット列ごとに)、所定の比率(ここでは6%と94%)で、先行パス(パス1またはパス2)で形成するドット数と後行パス(パス3またはパス4)で形成するドット数を異ならせるとよい。そのために、コンピューター60は、データ上の移動方向に対応する方向に並ぶ複数の画素(以下、画素列)の中の吐出画素を、所定の比率で、先行パスのノズルと後行パスのノズルに割り当てる。そうすることで、一方のパスで重複領域に吐出するインク量を少なくしたとしても(図7では後行パス)、各ラスタラインにおいて一方のパスのドット(●か▲)が存在する。そのため、搬送誤差が生じたとしても、図3Bのバンド印刷のように画像上に白スジが発生してしまうことを防止できる。
具体的には、図7では、先行パスのパス1の上流側端部ノズル(例えば#9)と後行パスのパス3の下流側端部ノズル(例えば#1)にて1つのラスタラインが形成され、先行パスのパス2の上流側端部ノズルと後行パスのパス4の下流側端部ノズルにて1つのラスタラインが形成される。そのため、1つの画素列の中の吐出画素のうち、94%の吐出画素をパス1のノズルに割り当て、6%の吐出画素をパス3のノズルに割り当てる場合と、94%の吐出画素をパス2のノズルに割り当て、6%の吐出画素をパス4に割り当てる場合と、がある。
また、図7では、1つのラスタラインを8個としているため、後行パスのノズルにて形成されるドット数が少ないが、実際には、1つのラスタラインは多数のドットから構成されるため、後行パスのノズルにて形成されるドット数も複数となる。このとき、重複領域の1つのラスタラインにおいて、インク量を少なくする後行パスのドット(●・▲)が移動方向に複数の画素領域おきに配置されるとよい。即ち、後行パスのドットが偏って位置せずに移動方向にバランスよく配置されるとよい。例えば、重複領域(のラスタライン)に吐出するインク量のうち、94%のインク量を先行パスに分配し、6%のインク量を後行パスに分配する場合、約16個のドットのうちの1個のドットが後行パスにて形成される。そこで、16個のドットおきに後行パスのドットを配置してもよい。
また、重複領域に属するラスタラインが複数である場合、インク吐出量を少なくする方のパスのドットを、異なるラスタラインにおいて、移動方向に分散して配置させてもよい。即ち、インク吐出量を少なくする方のパスにて形成されるドットの移動方向の位置を異ならせる。
そうすることで、搬送誤差が生じたときの画質劣化をより抑制できる。また、もし、インク吐出量を少なくする後行パスのドットが、例えば移動方向の右側に多く形成されてしまったとすると、右側の領域において、近傍の画素領域にドットが形成される時間間隔が長くなる箇所が増えてしまう。そうすると、先行パスと後行パスとで重複領域に吐出するインク量を異ならせたにも関わらず、通常領域のドット形成方法(図6A)に近づかず、濃度むらが改善され難くなってしまう。そのため、インク吐出量を少なくする方のパス(ここでは後行パス)で形成するドットを、移動方向にバランスよく配置するとよい。
そうして、重複領域に対応する吐出画素が先行パスのノズルと後行パスのノズルに割り振られた後は、コンピューター60は、ラスタライズ処理(S006)として、マトリクス状の画素データをプリンター1に転送すべきデータ順に並べ替える。これらの処理を経て生成された印刷データは、印刷方式に応じたコマンドデータ(搬送量など)と共にプリンター1に送信される。
このように印刷データを作成することで、先行パスで重複領域に吐出するインク量と後行パスで重複領域に吐出するインク量を異ならせることができ、通常領域と重複領域の濃度むら(特に移動方向の右側の濃度むら)を低減することが出来る。
なお、図9の印刷データ作成フローのように、重複領域に対応する画素の中の吐出画素を、所定の比率で、先行パスのノズルと後行パスのノズルに割り当てることで、先行パスで重複領域に吐出するインク量と後行パスで重複領域に吐出するインク量を確実に所定の比率にすることが出来る。しかし、これに限らず、データ上において重複領域に対応する画素を、吐出画素であるか不吐出画素であるかに関わらず、所定の比率で、先行パスのノズルと後行パスのノズルを割り当ててもよい。
そうすることで、例えば、先行パスのノズルに割り当てられる画素数を多くすれば、確率的に先行パスのノズルから重複領域に吐出するインク量を多くすることができ、後行パスのノズルに割り当てられる画素数を少なくすれば、後行パスのノズルから重複領域に吐出するインク量を少なくすることができる。その結果、先行パスと後行パスで重複領域に吐出するインク量を異ならせることができ、通常領域と重複領域の濃度むらを低減することができる。また、図9の印刷データ作成フローに比べて、コンピューター60が印刷データを作成する処理を容易にすることが出来る。
また、重複領域の多くの画素が吐出画素である場合ほど(例えばベタ塗り印刷の場合ほど)、ある画素領域の近傍画素領域にドットが形成される確率が高いので、先行パスのインク吐出量と後行パスのインク吐出量を異ならせて、ある画素領域のドット形成時間と近傍画素領域のドット形成時間の間隔を調整すること(顔料成分の沈み込み量を調整すること)が必要となる。しかし、重複領域の吐出画素数が少ない場合には、もともと、ある画素領域の近傍画素領域にドットが形成される確率が低いため、ある画素領域のドット形成時間と近傍画素領域のドット形成時間を調整することがなくなり、故意に先行パスのインク吐出量と後行パスのインク吐出量を異ならせる必要性が低くなる。そこで、コンピューター60は、重複領域に形成されるドット数(吐出画素数)が、例えば閾値よりも多い場合に、本実施形態のマイクロフィード印刷(図7A)を行うようにしてもよい。
<変形例>
図10A及び図10Bは、重複領域のラスタラインを形成するノズルを異ならせた時のドット形成の様子を示す図である。前述の実施例では、図7Aに示すように、パス1の端部ノズル(○)とパス3の端部ノズル(●)で1つのラスタラインを形成し、パス2の端部ノズル(△)とパス4の端部ノズル(▲)で1つのラスタラインを形成している。しかし、これに限らず、図10Aに示すように、用紙の大送りを調整し、パス1の端部ノズル(○)とパス4の端部ノズル(▲)で1つのラスタラインを形成し、パス2の端部ノズル(△)とパス3の端部ノズルで1つのラスタラインを形成してもよい。
このような場合であっても、先行パス(パス1・パス2)で重複領域に吐出するインク量と後行パス(パス3・パス4)で重複領域に吐出するインク量を異ならせることで、移動方向の右側の領域ではドットが形成される時間間隔が短くなり、移動方向の左側の領域ではドットが形成される時間間隔が長くなる。その結果、重複領域においても、通常領域と同様に、移動方向の右側領域では顔料成分が沈み込み易く、濃度が淡くなり、移動方向の左側領域では顔料成分が沈み込み難く、濃度が濃くなる。そのため、通常領域と重複領域の濃度むらを低減できる。
なお、この変形例の印刷方法では(図10)、パス1で形成されるドットとパス4で形成されるドットで構成されるラスタラインと、パス2で形成されるドットとパス3で形成されるドットで構成されるラスタラインを有する。即ち、インク吐出の時間間隔が比較的に長いラスタラインとインク吐出の時間間隔が比較的に短いラスタラインから構成される。この時間間隔の違いによって、ドットの広がり具合(濃度の出方)が異なり易い。そのため、変形例の印刷方法では、ラスタラインごとに濃度の出方が異なり易い。これに対して、前述の印刷方法(図7)では、パス1で形成されるドットとパス3で形成されるドットで構成されるラスタラインと、パス2で形成されるドットとパス4で形成されるドットで構成されるラスタラインを有する。そのため、重複領域の全てのラスタラインにおいて、インク吐出の時間間隔が等しくなり、ラスタラインごとの濃度の出方が等しくなり易い。このように2つの印刷方法によって、ラスタラインの濃度の出方を調整できる場合がある。ただし、どちらの印刷方法であっても、重複領域と通常領域の濃度むら(特に移動方向の右側に発生する濃度むら)を解消することができる。
図11Aは、先行パスで重複領域に吐出するインク量と後行パスで重複領域に吐出するインク量の比率をラスタラインごとに異ならせた場合のドット形成の様子を示す図である。前述の実施例では、重複領域のラスラインにおける先行パスのインク量と後行パスのインク量の比率が、全てのラスタラインにおいて94%と6%としているが、これに限らない。重複領域のラスタラインごとに、先行パスで吐出するインク量と後行パスで吐出するインク量の比率を異ならせてもよい。
例えば、図11Aでは、先行パス(パス1・パス2)で重複領域に吐出するインク量を後行パス(パス3・パス4)で重複領域に吐出するインク量よりも多くするものの、後行パスの通常領域側(搬送方向の上流側)に近いラスタラインでは、後行パスで吐出するインク量の比率を高めている。
具体的には、重複領域に属するラスタラインのうち、搬送方向の最上流側(後行のパス3・パス4の通常領域側)の2つのラスタラインでは、先行パスと後行パスのインク吐出量の比率を「81%と19%」とし、次に下流側の3つのラスタラインでは、先行パスと後行パスのインク吐出量の比率を「87%と13%」とする。そして、重複領域に属するラスタラインのうち、搬送方向の最下流側(先行のパス1・パス2の通常領域側)に位置する3つのラスタラインでは、先行パスと後行パスのインク吐出量の比率を「94%と6%」とする。
このように、重複領域に属するラスタラインごとに先行パスと後行パスのインク吐出量の比率を異ならせ、更に、一方のパス(後行パス)のインク吐出量を他方のパス(先行パス)のインク吐出量よりも少なくする場合であっても、一方のパスの画像側のラスタラインでは、一方のパスのインク吐出量の比率を他のラスタラインに比べて高くするとよい(一方のパスのドット数を増やすとよい)。そうすることで、先行パスの擬似バンド画像と後行パスの擬似バンド画像の繋ぎ目(重複領域)をより目立ち難くすることが出来る。
図11Bは、同じ重複領域内において先行パスで重複領域に吐出するインク量を多くするラスタラインと後行パスで重複領域に吐出するインク量を多くラスタラインを混在させた様子を示す図である。前述の実施例では、重複領域の全てのラスラインにおいて、先行パス(パス1・パス2)のインク量を後行パス(パス3・パス4)のインク量よりも多くしているが、これに限らない。図8の測定結果から、先行パスのインク量を多くする場合であっても、後行パスのインク量を多くする場合であっても、通常領域と重複領域の濃度むらを低減できる効果が得られる。
そこで、重複領域のラスタラインのうち、先行パスの通常領域側(搬送方向の下流側)に近いラスタラインでは先行パスのインク量を後行パスのインク量よりも多くし、後行パスの通常領域側(搬送方向の上流側)に近いラスタラインでは後行パスのインク量を先行パスのインク量よりも多くしてもよい。そうすることで、先行パスの画像から後行パスの画像への移行を滑らかにすることができ、先行パスの画像と後行パスの画像の繋ぎ目(重複領域)をより目立ち難くすることが出来る。
===その他の実施の形態===
上記の各実施形態は、主としてインクジェットプリンターを有する印刷システムについて記載されているが、濃度むら補正方法等の開示が含まれている。また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
<印刷装置について>
インクの吐出方式は、駆動素子(ピエゾ素子)に電圧をかけて、インク室を膨張・収縮させることによりインクを吐出するピエゾ方式でもよいし、発熱素子を用いてノズル内に気泡を発生させ、その気泡によってインクを吐出させるサーマル方式でもよい。