===開示の概要===
本明細書の記載、及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかとなる。
媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、第1の流体を噴射する第1ノズルが前記搬送方向に並んだ第1ノズル列と、第2の流体を噴射する第2ノズルが前記搬送方向に並んだ第2ノズル列と、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列を前記媒体に対して前記搬送方向と交差する移動方向に移動する移動機構と、前記移動機構によって前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列を前記移動方向に移動させながら前記第1ノズル及び前記第2ノズルから流体を噴射させて画像を形成する画像形成動作と、前記搬送機構によって媒体を前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列に対して前記搬送方向に搬送させる搬送動作と、を実行させ、或る前記画像形成動作において、前記第1の流体及び前記第2の流体により第1画像を形成させた後に、前記或る前記画像形成動作とは別の前記画像形成動作において、前記第1画像上に前記第2の流体により第2画像を形成させる制御部と、を有する流体噴射装置である。
このような流体噴射装置であれば、第1の流体及び第2の流体による第1画像の上に、第2の流体により第2画像を形成するので、背景画像となる第1画像の色味を調整できる。
媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、第1の流体を噴射する第1ノズルが搬送方向に並んだ第1ノズル列と、第2の流体を噴射する第2ノズルが前記搬送方向に並んだ第2ノズル列と、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列を前記媒体に対して前記搬送方向と交差する移動方向に移動する移動機構と、前記移動機構によって前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列を前記移動方向に移動させながら前記第1ノズル及び前記第2ノズルから流体を噴射させて画像を形成させる画像形成動作と、前記搬送機構によって媒体を前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列に対して前記搬送方向に搬送させる搬送動作と、を実行させ、或る前記画像形成動作において、前記第1の流体により第1画像を形成させた後に、前記或る前記画像形成動作とは別の前記画像形成動作において、前記第1画像上に前記第1の流体及び前記第2の流体により第2画像を形成させる制御部と、を有する流体噴射装置。
このような流体噴射装置であれば、第2の流体による第2画像の上に、第1の流体及び第2の流体による第1画像を形成するので、背景画像となる第1画像の色味を調整できる。
かかる流体噴射装置であって、前記第1の流体は白インクであり、前記第2のインクはカラーインクであること。
このような流体噴射装置であれば、白インクとカラーインクにより所望の白色の背景画像を印刷することができる。
かかる流体噴射装置であって、前記第1の流体はメタリックインクであり、前記第2のインクはカラーインクであること。
このような流体噴射装置であれば、背景画像の色味を調整することができる。
また、搬送機構によって媒体を前記搬送方向に搬送する搬送動作と、第1の流体を噴射する第1ノズルが前記搬送方向に並んだ第1ノズル列と、第2の流体を噴射する第2ノズルが前記搬送方向に並んだ第2ノズル列と、を前記搬送方向と交差する移動方向に移動しながら前記第1ノズル及び前記第2ノズルから流体を噴射して画像を形成する画像形成動作と、を実行する流体噴射装置の流体噴射方法であって、或る前記画像形成動作において、前記第1の流体及び前記第2の流体により第1画像を形成した後に、前記或る前記画像形成動作とは別の前記画像形成動作において、前記第1画像上に前記第2の流体により第2画像を形成する流体噴射方法である。
このような流体噴射方法であれば、第1の流体及び第2の流体による第1画像の上に、第2の流体により第2画像を形成するので、背景画像となる第1画像の色味を調整できる。
また、本発明の流体噴射は、媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、第1の流体を噴射する第1ノズルが前記搬送方向に並んだ第1ノズル列と、第2の流体を噴射する第2ノズルが前記搬送方向に並んだ第2ノズル列と、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列を前記媒体に対して前記搬送方向と交差する移動方向に移動する移動機構と、前記移動機構によって前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列を前記移動方向に移動させながら前記第1ノズル及び前記第2ノズルから流体を噴射させて画像を形成する画像形成動作と、前記搬送機構によって媒体を前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列に対して前記搬送方向に搬送させる搬送動作と、を実行させ、或る前記画像形成動作において、前記第1の流体及び前記第2の流体により第1画像を形成させた後に、前記或る前記画像形成動作とは別の前記画像形成動作において、前記第1画像上に前記第2の流体により第2画像を形成させる制御部と、を有し、前記制御部は、前記搬送方向において、前記第1ノズル列のうち、前記第1画像を形成するために流体を噴射させる前記第1ノズル及び前記第2ノズルと、前記第2画像を形成するために流体を噴射させる前記第2ノズルと、の間に位置する前記第1ノズル、及び、前記搬送方向において、前記第2ノズル列のうち、前記第1画像を形成するために流体を噴射させる前記第1ノズル及び前記第2ノズルと、前記第2画像を形成するために流体を噴射させる前記第2ノズルと、の間に位置する前記第2ノズル、を、流体を噴射しない乾燥用ノズルとすることを特徴とする流体噴射装置であってもよい。
===印刷システムについて===
以下、流体噴射装置をインクジェットプリンターとし、また、インクジェットプリンターの中のシリアル式プリンター(以下、プリンター1)を例に挙げて実施形態を説明する。
図1は、プリンター1の全体構成ブロック図である。図2Aは、プリンター1の斜視図であり、図2Bは、プリンター1の断面図である。外部装置であるコンピューター60から印刷データを受信したプリンター1は、コントローラー10により、各ユニット(搬送ユニット20、キャリッジユニット30、ヘッドユニット40)を制御し、媒体S(用紙やフィルムなど)に画像を形成する。また、プリンター1内の状況を検出器群50が監視し、その検出結果に基づいて、コントローラー10は各ユニットを制御する。
コントローラー10(制御部)は、プリンター1の制御を行うための制御ユニットである。インターフェース部11は、外部装置であるコンピューター60とプリンター1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU12は、プリンター1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー13は、CPU12のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。CPU12は、メモリー13に格納されているプログラムに従ったユニット制御回路14により各ユニットを制御する。
搬送ユニット20(搬送機構)は、媒体Sを印刷可能な位置に送り込み、印刷時には搬送方向(所定方向)に所定の搬送量で媒体Sを搬送させるものであり、給紙ローラー21と、搬送ローラー22と、排紙ローラー23とを有する。給紙ローラー21を回転させ、印刷すべき媒体Sを搬送ローラー22まで送る。コントローラー10は搬送ローラー22を回転させて媒体Sを印刷開始位置に位置決めする。
キャリッジユニット30(移動機構)は、ヘッド41を搬送方向と交差する方向(以下、移動方向という)に移動させるためのものであり、キャリッジ31を有する。
ヘッドユニット40は、媒体Sにインクを噴射するためのものであり、ヘッド41を有する。ヘッド41はキャリッジ31によって移動方向に移動する。ヘッド41の下面には、インク噴射部であるノズルが複数設けられ、各ノズルには、インクが入ったインク室(不図示)が設けられている。
図3は、ヘッド41の下面のノズル配列を示す図である。ヘッド41の下面には、180個のノズルが搬送方向に所定の間隔(ノズルピッチd)で並んだノズル列が5列形成されている。図示するように、ブラックインクを噴射するブラックノズル列K・シアンインクを噴射するシアンノズル列C・マゼンタインクを噴射するマゼンタノズル列M・イエローインクを噴射するイエローノズル列Y・白インクを噴射するホワイトノズル列Wが、移動方向に順に並んでいる。なお、各ノズル列が有する180個のノズルに対して、搬送方向の下流側のノズルから順に小さい番号を付す(#1〜#180)。
このようなプリンター1では、移動方向に沿って移動するヘッド41からインク滴を断続的に噴射させて媒体上にドットを形成するドット形成処理と、媒体をヘッド41に対して搬送方向に搬送する搬送処理(搬送動作に相当)とを繰り返す。そうすることで、先のドット形成処理により形成されたドットの位置とは異なる媒体上の位置にドットを形成することができ、媒体上に2次元の画像を印刷することができる。なお、ヘッド41がインク滴を噴射しながら移動方向に1回移動する動作(1回のドット形成処理・画像形成動作に相当)を「パス」と呼ぶ。
===2つの画像を重ねて印刷する方法===
<印刷物について>
2つの画像を重ねた印刷物として、白色の背景画像上に、4色のインク(YMCK)によるカラー画像を形成する印刷物を例に挙げて説明する。このような印刷物によれば、透明フィルム上に画像を印刷する場合であっても、印刷物の反対側が透けてしまうことを防止できる。また、発色性の良い画像を印刷することが出来る。
ところで、白色の背景画像を白インクのみで形成しようとすると、その白インクの色によって背景画像の色が決まってしまう。しかし、同じ白インクと呼ばれるインクであっても色が相違することがあり、白インクのみでは所望の白色の画像を印刷できない場合がある。
そこで、本実施形態では、白色の背景画像のうちのカラー画像と重なる領域(以下、重複白領域と呼ぶ)は白インクのみにより背景画像を印刷し、白色の背景画像のうちのカラー画像と重ならない領域(以下、非重複白領域と呼ぶ)は、白インクの他に4色のカラーインクYMCKを適宜使用して、所望の白色の背景画像を印刷する。そうすることで、白色の背景画像が見える部分、即ち、非重複白領域、を所望の白色にすることができる。なお、重複白領域は印刷面側から見えないため、白インクのみによって印刷する。そうすることで、インク消費量を削減できる。ただし、これに限らず、重複白領域に相当する背景画像も、白インクとカラーインクを混ぜて印刷を行ってもよい。
なお、本明細書において「白色」とは、可視光線のすべての波長を100%反射する物体の表面色である厳密な意味での白色に限らず、いわゆる「白っぽい色」のように、社会通念上、白色と呼ばれる色を含むものとする。以下の説明では、白インクに他色のインクを混ぜて白色を調整することを「白調色」と呼び、白調色により生成された白色(調整された白色)を「調色白」と呼ぶ。
つまり、2つの画像を重ねて印刷する場合、媒体上の同じ領域に対して、先のパスにてホワイトノズル列W(第1ノズル列に相当)および4色のインクのノズル列YMCK(第2ノズル列に相当)により調色白の背景画像を印刷し、後のパスにて4色のインクのノズル列YMCKにより背景画像上にカラー画像を印刷する。こうすることで、背景画像上にカラー画像を印刷することができる。以下、4色のインクのノズル列YMCKを合わせて「カラーノズル列Co」と呼ぶ。
<乾燥パスを設けない印刷方法>
図4は、背景画像の乾燥時間が短い印刷方法を示す図である。図中では説明の簡略のため1つのノズル列に属するノズル数(#1〜#24)を減らして描いている。調色白の背景画像を印刷するためのノズルを、図4の左図に示すように、ホワイトノズル列Wの中の白丸(○)とカラーノズル列Co(=YMCK)の中の斜線の丸で示す。そして、カラー画像を印刷するためのノズルを、カラーノズル列Coの中の黒丸(●)で示す。また、図4の右図では、背景画像を印刷するノズル(○)とカラー画像を印刷するノズル(●)を同じノズルで描き、各パスのインク噴射ノズルの位置関係を示す。なお、背景画像を印刷するための白インクのノズル位置とカラーインクのノズル位置は同じであるため、背景画像を印刷するためのノズルをホワイトノズル(○)で代表して描く。
通常、媒体の上端部や下端部を印刷する場合、インク滴を噴射するノズル数を変動させたり、媒体の搬送量を変動させたりするが、図4では媒体の端部以外の印刷時である通常印刷時(パスX〜パスX+9)の様子を示す。そのため、インク滴を噴射するノズルの数および媒体の搬送量は一定である。
媒体上の同じ領域に対して、背景画像を形成した後のパスでカラー画像を形成するために、ホワイトノズル列Wでは、搬送方向上流側の半分のノズル(#13〜#24)を、インク滴を噴射するノズル(以下、噴射ノズル)とし、搬送方向下流側の半分のノズル(#1〜#12)を、インク滴を噴射しないノズル(以下、非噴射ノズル)とする。一方、カラーノズル列Coでは、搬送方向下流側の半分のノズル(#1〜#12)を、カラー画像を印刷するための噴射ノズルとし、搬送方向上流側の半分のノズル(#13〜#24)を、背景画像を印刷するための噴射ノズルとする。
このように各ノズル列Co,Wの噴射ノズルを設定することで、まず、媒体上の或る領域はホワイトノズル列W及びカラーノズル列Coの上流側の噴射ノズル(#13〜#24)と対向し、調色白の背景画像が印刷される。その後、媒体上の或る領域は、搬送動作によって下流側に搬送され、カラーノズル列Coの下流側の噴射ノズル(#1〜#12)と対向し、背景画像上にカラー画像を印刷することができる。
また、図4では、背景画像とカラー画像を重ねた印刷物をオーバーラップ印刷方式により印刷する。オーバーラップ印刷とは、1つのラスターライン(移動方向に沿うドット列)を複数のパス(即ち、複数のノズル)で形成する。そのため、各ノズルの特性の影響を小さくでき、高画質な画像を印刷できる。背景画像及びカラー画像をそれぞれ形成する1ノズル列あたりの噴射ノズル数は12個であり、各画像をそれぞれ3回のパスで形成するとした場合、1回の搬送動作における媒体の搬送量は、4個のノズルにより形成される画像幅、即ち、ノズルピッチdの4倍の長さ「4d」となる。なお、図4に示す1マス(各ノズルが納まっているマス目)の搬送方向の長さはノズルピッチ「d」に相当する。図4では、1回の搬送動作を4dとしているため、あるパスのノズル位置と次のパスのノズル位置は4マスずつずれている。
このように、ホワイトノズル列W及びカラーノズル列Coの上流側の12個の噴射ノズルとカラーノズル列Coの下流側の12個の噴射ノズルによって画像を形成する動作と、媒体をノズルピッチdの4倍の長さ(4d)だけ搬送する動作と、を交互に繰り返すことで、先の3回のパスで背景画像を印刷し、後の3回のパスで背景画像上にカラー画像を印刷することができる。
図4の右図において、移動方向に並ぶ6個のノズルが1つのラスターラインを形成するノズルである。また、図中の太枠で示すように、1回の搬送動作ごとに4個のラスターラインの印刷が完成する。この図からも背景画像及びカラー画像が各3回のパスで完成することが分かる。例えば、太枠内のノズルによって形成される4つのラスターラインでは、先の3回の「パスX〜パスX+2」によって背景画像用のドットが形成され、後の3回の「パスX+3〜パスX+5」によってカラー画像用のドットが形成される。
ところで、図4ではノズル列に属する全てのノズル(#1〜#24)を噴射ノズルとし(画像を形成するノズルとし)、カラー画像用の噴射ノズル(Coの#1〜#12)と背景画像用の噴射ノズル(W,Coの#13〜#24)の間にインク滴を噴射しないノズルを設けていない。そのため、媒体上の或る領域に対して、背景画像の印刷が終了すると、その次のパスでカラー画像の印刷が開始する。図4右図の太枠内のノズルからも分かるように、背景画像の印刷が終了するパスX+2の次のパスX+3から、カラー画像の印刷が開始する。そのため、背景画像の印刷が終了してからカラー画像を印刷するまでの時間、即ち、背景画像の乾燥時間は、比較的に短く、1回の搬送動作に要する時間だけとなる。
詳細は後述するが、ノズル列において、カラー画像用の噴射ノズルと背景画像用の噴射ノズルとの間に、インク滴を噴射しないノズル(以下、乾燥用ノズル)を設けることで、背景画像の印刷が終了してからカラー画像が印刷されるまでの間に、画像を形成しないパス(以下、乾燥パス)を設けることができる。ただし、先に噴射する白インク及びカラーインクの乾燥性が良かったり、媒体のインクの吸収性が良かったりする場合、背景画像は乾燥し易いため、背景画像の乾燥時間を長くする必要がない。このような場合には、図4に示すように、カラー画像用の噴射ノズルと背景画像用の噴射ノズルの間に乾燥用ノズルを設けないとする。そうすることで、ノズル列に属するノズルを有効に利用することができる。また、画像を形成しない乾燥パスを設けないため(言い換えれば画像を形成するノズル数が多い為)、印刷時間を短縮することができる。
<乾燥パスを設ける比較例の印刷方法>
先に噴射する白インク及びカラーインクの乾燥性が悪かったり、媒体のインクの吸収性が悪かったりする場合、背景画像が乾燥し難い。この場合、図4に示す印刷方法のように、背景画像の印刷が終了したパスの次のパスでカラー画像の印刷を開始すると、画像が滲んでしまう。そこで、背景画像が乾燥し難い場合は、背景画像を印刷してからカラー画像の印刷を開始するまでの間に、画像を形成しない「乾燥パス」を設けるとよい。以下、乾燥パスを設ける比較例の印刷方法について説明する。
図5は、乾燥パスを設ける比較例の印刷方法を説明する図である。図5では、1ノズル列に属するノズル数を22個とし、調色白の背景画像を印刷するためのノズルを、ホワイトノズル列W及びカラーノズル列Coの搬送方向上流側の9個のノズル(#14〜#22)に設定し、カラー画像を印刷するためのノズルを、カラーノズル列Coの搬送方向下流側の9個のノズル(#1〜#9)に設定する。そして、背景画像およびカラー画像をそれぞれ印刷するパス数を3回とし、1回の搬送動作における媒体の搬送量を3個のノズルにて形成される画像幅、即ち、ノズルピッチdの3倍の長さ「3d」とする。
そして、カラー画像用(カラーノズル列Co)の噴射ノズル(#1〜#9)よりも搬送方向上流側に位置するノズルであり、背景画像用(ホワイトノズル列W及びカラーノズル列Co)の噴射ノズル(#14〜#22)よりも搬送方向下流側に位置するノズルである4個のノズル(#10〜#13)を、インク滴を噴射しない「乾燥用ノズル(×)」とする。言い換えれば、1つのノズル列(#1〜#22)において、カラー画像用の噴射ノズル(#1〜#9)と調色白の背景画像用の噴射ノズル(#14〜#22)の間のノズル(#10〜#13)を乾燥用ノズルとする。そうすることで、背景画像の印刷が終了してからカラー画像が印刷されるまでの間に、画像を形成しない「乾燥パス」を設けることができる。その結果、背景画像とカラー画像の滲みを防止できる。
具体的に説明すると、媒体上の或る領域は、まず、搬送方向上流側のホワイトノズル列W及びカラーノズル列Coの噴射ノズル(白丸・斜線丸)と対向し、背景画像が印刷される。次に、媒体上の或る領域は搬送動作によって下流側に搬送されて乾燥用ノズル(×)と対向するため、背景画像上にインク滴は噴射されない。この間に背景画像を乾燥させることができる。その後、媒体上の或る領域は搬送動作によって更に下流側に搬送されて、搬送方向下流側のカラーノズル列Coの噴射ノズル(黒丸)と対向し、背景画像上にカラー画像が印刷される。
比較例の印刷方法では、搬送動作ごとに3個のラスターラインの印刷が完成し、図5の右図の太枠で囲われたノズルが、搬送動作ごとに完成する3つのラスターラインを形成するノズルである。図5の右図において、移動方向に並ぶノズルが1つのラスターラインを形成するノズルであり、白丸(○)が背景画像を印刷するノズルであり、黒丸(●)がカラー画像を印刷するノズルである。太枠内のノズルによる3つのラスターラインの全てにおいて、ホワイトノズル列W及びカラーノズル列Coの各3種類のノズル(3回のパス)により背景画像用のドットが形成され、カラーノズル列Coの3種類のノズル(3回のパス)によりカラー画像用のドットが形成される。
しかし、図5の右図の太枠内において、搬送方向の最下流側のノズルで形成されるラスターラインでは、パスX〜パスX+2にて背景画像が印刷され、パスX+5〜パスX+7にてカラー画像が印刷され、乾燥パスが2回となる。これに対して、太枠内の上流側のノズルで形成される2つのラスターラインでは、パスX+1〜パスX+3にて背景画像が印刷され、パスX+5〜パスX+7にてカラー画像が印刷され、乾燥パスが1回となる。このように、比較例の印刷方法では、ラスターラインによって乾燥パスの回数が異なる。即ち、比較例の印刷方法では、同じ画像の印刷中に、背景画像の乾燥時間にばらつきが生じてしまう。背景画像の乾燥時間にばらつきが生じると、カラー画像を印刷する際の背景画像(白インク及びカラーインク)の乾き具合が異なるため、背景画像とカラー画像の滲み具合が異なる。その結果、画像に濃度むらが発生してしまう。
比較例の印刷方法では、1回の搬送動作における媒体の搬送量を、3個のノズルにて形成される画像幅、即ち、ノズルピッチdの3倍の長さ「3d(3マス)」としているのに対して、乾燥用ノズルを4個とし、乾燥用ノズルが属する領域の搬送方向の長さをノズルピッチdの4倍の長さ「4d(4マス)」としているため、ラスターラインによって乾燥パスの回数が異なってしまう。つまり、乾燥用ノズルが属する領域の搬送方向の長さ(画像を形成しないノズル列長さ)「4d」を、媒体の搬送量「3d」の非整数倍(4/3倍)としているため、ラスターラインによって乾燥パスの回数が異なってしまう。
図5では、乾燥用ノズルが属する領域の搬送方向の長さ(4d)を媒体の搬送量(3d)の非整数倍とし、更に、乾燥用ノズルの数(4個)を1回の搬送動作で媒体との位置関係がずれるノズル数(3個)よりも多くしている。そのため、媒体上の或る領域に背景画像が印刷された後、媒体上の或る領域は搬送動作によって下流側に搬送されて4個の乾燥用ノズルと対向することになる。次の搬送動作によって媒体が3ノズル分(3d)だけ下流側に搬送されると、4個の乾燥用ノズルのうちの下流側の3個のノズルと対向していた媒体部分はカラー画像用のカラーノズル列Coの噴射ノズルと対向するが、4個の乾燥用ノズルのうちの最上流側の1個のノズルと対向していた媒体部分は再び乾燥用ノズルと対向することになる。その結果、あるラスターライン(下流側の3個の乾燥用ノズルと対向していた媒体部分)では乾燥パスが1回となるのに対して、別のラスターライン(最上流側の1個の乾燥用ノズルと対向していた媒体部分)では乾燥パスが2回となり、ラスターラインによって乾燥パスの回数にバラツキが生じてしまう。
また、図示しないが、乾燥用ノズルの数を1回の搬送動作で媒体との位置関係がずれるノズル数よりも少なくする場合(例えば、乾燥用ノズルが属する領域の搬送方向の長さを搬送量の1/3倍や2/3倍にする場合)にも、ラスターラインによって乾燥パスの回数(背景画像の乾燥時間)にバラツキが生じてしまう。例えば、乾燥用ノズルの数を2個とし、1回の搬送動作で媒体との位置関係がずれるノズル数を3個とする。この場合、背景画像が印刷された媒体上の或る領域が搬送動作によって3ノズル分だけ下流側に搬送されると、媒体上の或る領域の上流側部分は2個の乾燥用ノズルと対向できるが、媒体上の或る領域の下流部分は乾燥用ノズルと対向せずに、カラー画像用のカラーノズル列Coの噴射ノズルと対向してしまう。そのため、同じ画像内において、乾燥パスが設けられて印刷された部分と乾燥パスが設けられずに印刷された部分とが存在し、濃度むらが発生してしまう。
つまり、比較例の印刷方法では、乾燥用ノズルが属する領域の搬送方向の長さ(又は乾燥用ノズルの数)を、媒体の搬送量(又は1回の搬送動作で媒体との位置関係がずれるノズル数)の非整数倍としているため、背景画像の乾燥時間(乾燥パスの回数)にばらつきが生じ、画像に濃度むらが発生してしまう。
そこで、本実施形態では、媒体上の或る領域に対して、背景画像の印刷が終了してからカラー画像の印刷が開始するまでの時間(背景画像の乾燥時間、乾燥パスの回数)を一定にすることを目的とする。
<乾燥パスを設ける本実施形態の印刷方法>
図6は、乾燥パスを設ける本実施形態の印刷方法を説明する図である。図6では、1ノズル列に属するノズル数を21個とし、調色白の背景画像を印刷するための噴射ノズルを、ホワイトノズル列W(白丸)及びカラーノズル列Co(斜線の丸)の搬送方向上流側の9個のノズル(#13〜#21)に設定し、カラー画像を印刷するための噴射ノズルを、カラーノズル列Co(黒丸)の搬送方向下流側の9個のノズル(#1〜#9)に設定する。そして、背景画像およびカラー画像をそれぞれ印刷するパス数を3回とし、1回の搬送動作における媒体の搬送量を3個のノズルにて形成される画像幅、即ち、ノズルピッチdの3倍の長さ「3d」とする。
そして、背景画像の印刷が終了してからカラー画像が印刷されるまでの間に乾燥パスを設けるために、カラー画像を印刷するためのカラーノズル列Coの噴射ノズル(#1〜#9)よりも搬送方向上流側に位置するノズルであり、背景画像を印刷するためのホワイトノズル列W及びカラーノズル列Coの噴射ノズル(#13〜#21)よりも搬送方向下流側に位置するノズルである3個のノズル(#10〜#12)を、インク滴を噴射しない「乾燥用ノズル」とする。即ち、乾燥用ノズルが属する領域の搬送方向の長さは、3ノズル分であり、ノズルピッチdの3倍の長さ3d(3マス)である。即ち、本実施形態の印刷方法では、乾燥用ノズルが属する領域の搬送方向の長さ3dは、1回の搬送動作における媒体の搬送量3dの1倍(整数倍)となっている。言い換えると、乾燥用ノズルの数(3個)が、1回の搬送動作で媒体との位置関係がずれるノズル数(3個)の整数倍(1倍)となっている。
本実施形態の印刷を具体的に説明すると、例えば、媒体上の或る領域(3つのラスターラインが形成される領域)は、搬送動作によって下流側に3ノズル分ずつ搬送されながら、背景画像用の噴射ノズル(#13〜#21)とパスごとに3ノズルずつ対向し、3回のパスで背景画像の印刷が完成する。そして、次の搬送動作によって媒体上の或る領域は下流側に搬送されて3個の乾燥用ノズル(#10〜#12)と対向する。この間に背景画像を乾燥させることができる。その後、搬送動作によって媒体上の或る領域は更に下流側に搬送されて、カラー画像用の噴射ノズル(#1〜#9)とパスごとに3ノズルずつ対向し、3回のパスでカラー画像の印刷が完成する。こうすることで、媒体上の或る領域では、背景画像とカラー画像を印刷する間の乾燥パスを一定の1回にすることができる。即ち、ラスターラインによって乾燥パスの回数にバラツキが生じてしまうことを防止できる。
例えば、図6の右図の太枠内で移動方向に並ぶノズルは、背景画像用の3個の噴射ノズル(○、WとCo)と1個の乾燥用ノズル(×)とカラー画像用の3個の噴射ノズル(●、Co)から構成されている。このことから、太枠内のノズルにて形成されるラスターラインは、3回のパス(パスX〜パスX+2)で背景画像用のドットが形成され、1回の乾燥パス(パスX+3)が設けられた後、3回のパス(パスX+4〜パスX+6)でカラー画像用のドットが形成され、乾燥パスの回数が1回であることが分かる。また、太枠内のノズルに限らず、他の移動方向に並ぶノズルも、背景画像用の3個の噴射ノズル(○)と1個の乾燥用ノズル(×)とカラー画像用の3個の噴射ノズル(●)から構成されている。そのため、全てのラスターラインが、3回のパスで背景画像用のドットが形成され、1回の乾燥パスが設けられた後、3回のパスでカラー画像用のドットが形成され、乾燥パスの回数が一定(1回)であることが分かる。つまり、1つの画像の印刷中に、背景画像の後の乾燥時間(乾燥パス数)を一定にすることが出来ている。
このように本実施形態の印刷方法では、乾燥用ノズルが属する領域の搬送方向の長さ3d(又は乾燥用ノズル数)を、媒体の搬送量3d(又は1回の搬送動作で媒体との位置関係がずれるノズル数)の整数倍(図6では1倍)に設定することで、同じ画像内における背景画像の乾燥時間(乾燥パスの回数)を一定にすることができ、濃度むらを抑制できる。
図7は、背景画像(又はカラー画像)を形成するパス数が変動する印刷方法を示す図である。図7では、乾燥用ノズル(#11〜#13)を3個とし、1回の搬送動作における媒体の搬送量をノズルピッチdの3倍とする。即ち、乾燥用ノズルが属する領域の搬送方向の長さ3dが、媒体の搬送量3dの整数倍(1倍)となっている。そのため、図中の移動方向に並ぶノズルを見ると、背景画像用ノズル(○、W,Co)とカラー画像用ノズル(●、Co)の間に乾燥用ノズル(×)が1個ずつ設けられており、全てのラスターラインを形成する際の乾燥パスの回数を一定(1回)にすることが出来ている。
ところで、図6では、背景画像(又はカラー画像)を形成する噴射ノズルが属する領域の搬送方向の長さ「9d(9マス)」を、媒体の搬送量3d(3マス)の整数倍(3倍)としている。言い換えれば、画像(背景画像又はカラー画像)を形成する1ノズル列あたりの噴射ノズル数(9個)を、1回の搬送動作で媒体との位置関係がずれるノズル数(3個)の整数倍(3倍)としている。そのため、同じ画像内において、背景画像(又はカラー画像)を印刷するパス数(3回)を一定にすることが出来ている。
これに対して、図7では、ホワイトノズル列W及びカラーノズル列Coの搬送方向上流側の10個の噴射ノズル(#14〜#23)によって背景画像を印刷し、カラーノズル列Coの搬送方向下流側の10個の噴射ノズル(#1〜#10)によってカラー画像を印刷する。即ち、画像(背景画像又はカラー画像)を形成する噴射ノズルが属する領域の搬送方向の長さ「10d(10マス)」を、媒体の搬送量3d(3マス)の非整数倍(10/3倍)としている。
その結果、図7に示すように、ラスターラインによって、背景画像又はカラー画像を形成するパス数が3回になったり4回になったりしてしまう。例えば、図7に示すラスターラインL1を形成するノズル群(移動方向に並ぶノズル)は3つの背景画像用ノズル(○)と3つのカラー画像用ノズル(●)から構成され、背景画像及びカラー画像が共に3回ずつのパスで形成される。これに対して、ラスターラインL2を形成するノズル群は3つの背景画像用ノズル(○)と4つのカラー画像用ノズル(●)から構成され、背景画像は3回のパスで形成されるのに対して、カラー画像は4回のパスで形成される。即ち、カラー画像を形成するパス数が異なっている。
例えば、3つのラスターラインが形成される媒体上の或る領域が、搬送動作によって下流側に3ノズル分ずつ搬送されながら、3回のパスに亘って背景画像用の噴射ノズル(○、W,Co)と対向する。ただし、その次の搬送動作によって、媒体上の或る領域の下流側部分は乾燥用ノズル(×)と対向するが、媒体上の或る領域の上流側部分は再び背景画像用の噴射ノズル(○)と対向してしまう。即ち、媒体上の或る領域の下流側部分は3回のパスで背景画像が印刷されるのに対して、媒体上の或る領域の上流側部分は4回のパスで背景画像が印刷されてしまう。このように、画像を形成する噴射ノズルが属する領域の搬送方向の長さを、媒体の搬送量の非整数倍にすると、ラスターラインによって、各画像(背景画像又はカラー画像)を印刷するパス数にばらつきが生じてしまう。
ラスターラインによって画像を印刷するパス数にばらつきが生じると、印刷データを作成する際に、ラスターラインを構成するドットをパス(ノズル)に割り当てる処理が複雑になってしまう。
また、仮に、図7のラスターラインL2を形成するノズル群において、カラー画像を形成する4個のノズルのうちのパスX+5のノズルからインク滴を噴射しないとする。そうすると、乾燥パス(パスX+4,パスX+5)が2回となり、他のラスターラインを形成する際の乾燥パス数(1回)と異なってしまう。その結果、画像に濃度むらが生じてしまう。
また、乾燥パスの回数が変動しないように、例えば、図7のラスターラインL2を形成するノズル群において、パスX+8のノズルからインク滴を噴射しないとする。そうすると、上端印刷や下端印刷でないにも関わらず、噴射ノズル数が変動し、印刷制御処理が複雑になってしまう。
そのため、乾燥用ノズルが属する領域の搬送方向の長さに限らず、背景画像又はカラー画像をそれぞれ形成する噴射ノズルが属する領域の搬送方向の長さも、媒体の搬送量の整数倍にすることが好ましい。そうすることで、各画像を形成するパス数を一定にできる。
図8は、乾燥時間を更に長くする印刷方法を説明する図である。図8では、背景画像を印刷するためにホワイトノズル列W及びカラーノズル列Coの搬送方向上流側の9個のノズルを噴射ノズル(#16〜#24)とし、カラー画像を印刷するためにカラーノズル列Coの搬送方向下流側の9個のノズルを噴射ノズル(#1〜#9)とする。そして、背景画像およびカラー画像をそれぞれ印刷するパス数を3回とし、1回の搬送動作における媒体の搬送量をノズルピッチdの3倍の長さ3dとする。
そして、図6に示す印刷方法よりも背景画像の乾燥時間を長くするために、図8に示す印刷方法では、背景画像用の9個の噴射ノズル(#16〜#24)とカラー画像用の9個の噴射ノズル(#1〜#9)の間に、6個の乾燥用ノズル(#10〜#15)を設ける。即ち、乾燥用ノズルが属する領域の搬送方向の長さ6d(又は乾燥用ノズル数=6個)を、媒体の搬送量3d(又は1回の搬送動作で媒体との位置関係がずれるノズル数=3個)の2倍に設定する。
そうすると、図8の右図の太枠内で移動方向に並ぶノズルにて示されるように、背景画像用の3個の噴射ノズル(○)とカラー画像用の3個の噴射ノズル(●)の間に2個の乾燥用ノズル(×)が設けられ、乾燥パスが2回となる。ゆえに、図8の印刷方法では、乾燥パス数が1回である図6の印刷方法に比べて、乾燥時間を2倍にすることができ、背景画像の乾燥時間を長くすることができる。
複数の画像を重ねて印刷する場合、先に噴射するインクの乾燥性や媒体のインクの吸収性などによって、背景画像を乾燥させるために必要な時間が異なってくる。そのため、インクや媒体の特性(即ち、媒体に形成される画像の乾燥性)に応じて乾燥用ノズルの数を変動させ、例えば、背景画像の乾燥時間を長くしたい場合には乾燥用ノズルの数を増やし、乾燥パスの回数を増やすとよい。言い換えれば、インクや媒体の特性に応じて、乾燥用ノズルが属する領域の搬送方向の長さ(図8では6d)と媒体の搬送量(3d)との比率を変更するとよい。
このように、乾燥用ノズルの数を増やすことで、背景画像の乾燥時間を長くし、画像の滲みを確実に防止できる。ただし、ノズル列に属するノズル数は決まっているので(図3では180個)、乾燥用ノズルの数を増やし過ぎると、画像を形成するための噴射ノズルの数が少なくなり、印刷時間が長くなってしまう。逆に言えば、画像を形成するための噴射ノズルの数を確保するために、ノズル列に属するノズル数を増やさなければならない。
図9は、乾燥用ノズルがノズル列の中央部に位置しない場合の印刷方法を示す図である。ここまで(図6,図8)、背景画像及びカラー画像をそれぞれ形成するための噴射ノズル数を等しくし、背景画像及びカラー画像をそれぞれ形成するパス数を等しくしている。そのため、背景画像用の噴射ノズルとカラー画像用の噴射ノズルとの間に設けられる乾燥用ノズルは、ノズル列の中央部に位置している。例えば、図6では、1ノズル列を構成する21個のノズルのうちの10番目から12番目に乾燥用ノズルが位置する。しかし、これに限らず、背景画像及びカラー画像をそれぞれ形成するパス数を異ならせ、そのために、背景画像及びカラー画像をそれぞれ形成するための噴射ノズルの数を異ならせてもよい。
例えば、図9では、ホワイトノズル列W及びカラーノズル列Coの搬送方向上流側の6個の背景画像用噴射ノズル(#16〜#21)とカラーノズル列Coの搬送方向下流側の12個のカラー画像用噴射ノズル(#1〜#12)との間に、3個の乾燥用ノズル(#13〜#15)を設ける。そうすると、背景画像は2回のパスで形成され、カラー画像は4回のパスで形成され、その間に、1回の乾燥パスが設けられる。この場合、ノズル列の中央部よりも搬送方向の上流側に乾燥用ノズルが位置する。なお、各画像を形成する噴射ノズルの数が異なっても、乾燥用ノズルが属する領域の搬送方向の長さ(3d)を、媒体の搬送量(3d)の整数倍(1倍)に設定することで、背景画像の乾燥時間を一定にすることができ、画像の濃度むらを抑制できる。
===3つの画像を重ねて印刷する方法===
図10は、乾燥パスを設けずに3つの画像を重ねて印刷する方法を示す図である。異なるパスで形成した3つの画像を重ねて印刷する印刷物として、例えば、白インク及びカラーインクによる調色白の背景画像上にカラー画像を印刷し、最後に、画像全面にクリアインクを噴射する印刷物が挙げられる。なお、図3に示すヘッド41では、4色インクのノズル列YMCK(=カラーノズル列Co)とホワイトノズル列Wだけしか形成されていないが、図10に示すヘッド41ではクリアインクノズル列Clも形成されている。
図10では、1つのノズル列に属するノズル数を24個とし、3つの各画像を形成する噴射ノズル数を1ノズル列あたり8個ずつとする。また、各画像を形成するパス数を2回ずつとするため、1回の搬送動作における媒体の搬送量をノズルピッチdの4倍の長さ「4d」とする。そして、最初に印刷する背景画像用の噴射ノズルをホワイトノズル列W及びカラーノズル列Coの搬送方向上流側の8個のノズル「#17〜#24」とし、次に印刷するカラー画像用の噴射ノズルをカラーノズル列Coの中央部の8個のノズル「#9〜#16」とし、最後に印刷するクリアインク画像用の噴射ノズルをクリアインクノズル列Clの搬送方向下流側の8個のノズル「#1〜#8」とする。
こうすることで、先の2回のパスで背景画像が印刷され、次の2回のパスでカラー画像が印刷され、最後の2回のパスでクリア画像が印刷される。なお、図10では、各画像を形成するための噴射ノズルの間に「乾燥用ノズル」を設けていないため、各画像の印刷間に乾燥パスは設けられていない。先に吐出するインクの乾燥性が良かったり、媒体の吸収性が良かったりして、背景画像及びカラー画像の乾燥時間が短くても良い場合には、図10に示す印刷方法を実施するとよい。
図11は、乾燥パスを設けて3つの画像を重ねて印刷する方法を示す図である。図11では、1ノズル列に属するノズル数を24個とし、ホワイトノズル列W及びカラーノズル列Coの搬送方向上流側の4個のノズル(#21〜#24)を背景画像用の噴射ノズルとし、それよりも下流側のカラーノズル列Coの4個のノズル(#9〜#12)をカラー画像用の噴射ノズルとし、クリアインクノズル列Clの最下流側の4個のノズル(#1〜#4)をクリアインク画像用の噴射ノズルとする。各画像を形成するパス数を1回ずつとし、1回の搬送動作における媒体の搬送量をノズルピッチdの4倍の長さ「4d」とする。
ここでは、背景画像の方がカラー画像よりも乾燥し難いとする。そのため、背景画像の乾燥時間をカラー画像の乾燥時間よりも長く設定したいとする。言い換えれば、媒体上の或る領域に対して、背景画像の印刷が終了してからカラー画像が印刷されるまでの乾燥パスの回数を、カラー画像の印刷が終了してからクリアインク画像が印刷されるまでの乾燥パスの回数よりも多くしたいとする。
この場合、背景画像用の噴射ノズル(白丸と斜線の丸)とカラー画像用の噴射ノズル(黒丸)の間の乾燥用ノズルの数「8個(=8マス)」を、搬送量4dに相当するノズル数「4個(=4マス)」の「2倍」とし、カラー画像用の噴射ノズル(黒丸)とクリア画像用の噴射ノズル(三角)の間の乾燥用ノズルの数「4個(=4マス)」を、搬送量に相当するノズル数「4個」の「1倍」にするとよい。即ち、背景画像用の噴射ノズルとカラー画像用の噴射ノズルの間の乾燥用ノズルの数を、カラー画像用の噴射ノズルとクリアインク画像用の噴射ノズルの間の乾燥用ノズルの数よりも多くする。
そうすることで、媒体上の或る領域は、背景画像の印刷後の2回のパスにて乾燥用ノズルと対向し、カラー画像の印刷後の1回のパスにて乾燥用ノズルと対向し、背景画像の印刷後の乾燥パス数「2回」を、カラー画像の印刷後の乾燥パス数「1回」よりも多くできる。このことは、図11の右図の太枠内において移動方向に並ぶノズル群が、背景画像用の1個の噴射ノズル(○、W,Co)と、2個の乾燥用ノズル(×)と、カラー画像用の1個の噴射ノズル(●、Co)と、1個の乾燥用ノズル(×)と、クリアインク画像用の1個の噴射ノズル(△、Cl)から構成されていることからも分かる。
図5の比較例の印刷方法のように同じ画像(図5では背景画像)を印刷した後の乾燥時間(乾燥パス数)にばらつきが生じると、画像に濃度むらが発生してしまう。しかし、3つ以上の画像を重ねて印刷する場合に、或る画像(例えば背景画像)を印刷した後の乾燥時間と、別の画像(例えばカラー画像)を印刷した後の乾燥時間を、各画像の乾燥性に応じて異ならせたとしても、画像に濃度むらは発生しない。また、各画像の乾燥性に応じて乾燥時間を変動させることで、乾燥性の悪い画像に合わせて乾燥時間を長くする必要が無く、印刷時間を短縮でき、また、乾燥性の良い画像に合わせて乾燥時間を短くする必要がなく、画像の滲みを確実に防止することができる。
===4つの画像を重ねて印刷する方法===
図12は、乾燥パスを設けずに4つの画像を重ねて印刷する方法を示す図である。異なるパスで形成した4つの画像を重ねて印刷する印刷物として、例えば、白インク及びカラーインク(YMCK)による調色白の背景画像上に3色のカラーインク(YMC)による3色カラー画像を印刷し、その上に、ブラックインク(K)によるテキスト画像を印刷し、最後に、画像全面にクリアインクを噴射する印刷物が挙げられる。
図12では、1つのノズル列に属するノズル数を24個とし、4つの各画像を形成する噴射ノズル数を1ノズル列あたり6個ずつとする。また、各画像を形成するパス数を2回ずつとするため、1回の搬送動作における媒体の搬送量をノズルピッチdの3倍の長さ「3d」とする。そして、最初に印刷する背景画像用の噴射ノズルをホワイトノズル列W及びカラーノズル列Co(=YMCK)の搬送方向上流側の6個のノズル「#19〜#24」とし、次に印刷する3色カラー画像用の噴射ノズルを3色のノズル列(YMC)の6個のノズル「#13〜#18」とし、3番目に印刷するテキスト画像用の噴射ノズルをブラックノズル列Kの6個のノズル「#7〜#12」とし、最後に印刷するクリアインク画像用の噴射ノズルをクリアインクノズル列Clの6個のノズル「#1〜#6」とする。このように設定することで、媒体上の或る領域に対して、先の2回のパスで背景画像が印刷され、次の2回のパスで3色カラー画像が印刷され、次の2回のパスでテキスト画像が印刷され、最後の2回のパスでクリア画像が印刷される。
図13は、乾燥パスを設けて4つの画像を重ねて印刷する方法を示す図である。図13では、1つのノズル列に属するノズル数を24個とし、1回の搬送動作における媒体の搬送量を「3d」とし、ホワイトノズル列W及びカラーノズル列Co(=YMCK)の各3個のノズル「#22〜#24」と、3色ノズル列(YMC)の3個のノズル「#13〜#15」と、ブラックノズル列Kの3個のノズル「#10〜#12」と、クリアインクノズル列Clの3個のノズル「#1〜#3」と、を噴射ノズルとする。
ここでは、背景画像及びテキスト画像の乾燥性は悪く、カラー画像の乾燥性は良いとする。そこで、ホワイトノズル列W及びカラーノズル列Co(YMCK)の背景画像用の噴射ノズルと3色ノズル列(YMC)の3色カラー画像用の噴射ノズルとの間、及び、ブラックノズル列Kのテキスト画像用の噴射ノズルとクリアインクノズル列Clのクリアインク画像用の噴射ノズルとの間には、それぞれ6個の乾燥用ノズルを設けるとする。
そして、3色カラー画像用の噴射ノズルとテキスト画像用の噴射ノズルとの間には、乾燥用ノズルを設けないとする。即ち、3色カラー画像用の噴射ノズル(●)のうちの最下流側のノズルと、テキスト画像用の噴射ノズル(■)のうちの最上流側のノズルと、の間隔をノズルピッチとしている。そうすることで、媒体上の或る領域に対して、背景画像の印刷後、及び、テキスト画像の印刷後に、2回の乾燥用パスが設けられ、3色カラー画像の印刷後には乾燥用パスが設けられずにテキスト画像が印刷される。なお、図13においても、乾燥用ノズルが属する領域の搬送方向の長さ(6d)を、媒体の搬送量(3d)の整数倍(2倍)としているため、乾燥用パスの数を一定にすることができ、画像の濃度むらを抑制できている。
このように、(3つ以上の)画像を重ねて印刷する場合に、各画像の乾燥性に応じて、或る画像(例えば背景画像,テキスト画像)を印刷した後には乾燥パスを設けるが、別の画像(例えばカラー画像)を印刷した後には乾燥パスを設けなくともよい。そうすることで、印刷時間を出来る限り短縮でき、また、画像の滲みを確実に防止することができる。
===調色白の背景画像について===
ここまで、白インクとカラーインク(YMCK)による調色白の背景画像上にカラーインクによるカラー画像を印刷する際に、背景画像用の噴射ノズルとカラー画像用の噴射ノズルの間に乾燥用ノズルを設けることについて説明した。次に、白インクにカラーインクを混ぜて、所望の白色を印刷するための調色白の指定処理、及び、調色白の背景画像を印刷するための印刷データの作成処理について説明する。以下の処理は、プリンター1に外部接続されたコンピューター60にインストールされたプリンタードライバーによって実施されるとする。
<調色白の指定処理について>
図14は、調色白指定用のウィンドウの一例を示す説明図である。プリンタードライバーは、各種アプリケーションプログラムから調色白の(背景)画像を含む画像データを受信すると、図14に示す調色白指定用のウィンドウW1をユーザーに対して表示する。調色白指定用のウィンドウW1は、サンプル画像表示エリアSaと、2つのスライダーバーSl1,Sl2と、ab平面表示エリアPlと、印刷順指定欄Se1と、値入力ボックスBo1と、測定ボタン(Measurement)B1と、OKボタンB2と、が含まれている。
図14に示した調色白指定用のウィンドウW1において、サンプル画像表示エリアSaは、指定された調色白のサンプル画像を表示するための領域である。サンプル画像表示エリアSaは、左右に2分割されており、左側が白色背景(White Backing)における調色白を示す領域(白色背景エリア)であり、右側が黒色背景(Black Backing)における調色白を示す領域(黒色背景エリア)である。なお、サンプル画像表示エリアSaの最外周領域は、背景色(白色または黒色)を示す領域(背景色領域)であり、背景色領域の内側の領域が調色白を示す「白画像領域」である(即ち、調色白の背景画像を印刷した時の色を示す)。また、サンプル画像表示エリアSaの中央付近にはカラー画像(図中の「A」の画像)が表示されている。
ウィンドウW1において値入力ボックスBo1は、L*a*b*表色系における表色値(L*値(以下、単に「L値」とも表す)、a*値(以下、単に「a値」とも表す)、b*値(以下、単に「b値」とも表す))およびT値を入力することによって「調色白」を指定するための部分である。L値は、調色白の明るさを示す値であり、調色白の画像を印刷する際の黒インク(K)の量に相関する。a値およびb値は、調色白の赤−緑軸および黄−青軸に沿った色度を表す値であり、調色白の画像を印刷する際のカラーインク(YMC)の量に相関する。T値は、濃度を示す値であり、調色白の画像を印刷する際の単位面積あたりのインク量に相関する。すなわち、T値は、背景色の透過度に相関する。なお、スライダーバーSl1,Sl2およびab平面表示エリアPlによっても、Lab値およびT値に対応した調色白を指定できる。
ウィンドウW1の印刷順指定欄Se1は、各種アプリケーションプログラムにより設定された印刷順の指定を示す部分である。なお、説明の簡略のため、2つの画像を重ねて印刷する場合の印刷順を指定する指定欄を例に挙げる。また、ここまで、白インク及びカラーインク(YMCK)によって調色白の背景画像を印刷し、その上にカラーインクによってカラー画像を印刷する印刷物(所謂、表刷り印刷、図中の「W−C Print」)を例に挙げているがこれに限らない。例えば、透明フィルムなどの媒体上に、カラー画像を印刷し、その上に背景画像を印刷する印刷物(所謂、裏刷り印刷、図中の「C−W Print」)であって、媒体の印刷面とは反対側から画像を見る印刷物であってもよい。すなわち、印刷順指定欄Se1では、調色白の画像を先に印刷するのか、それともカラー画像を先に印刷するのか、が示される。
ユーザーが値入力ボックスBo1に値を入力すると、サンプル画像表示エリアSaの色が入力値により特定される色(調色白)に変更される。例えば、ユーザーが、a値やb値を変更するとサンプル画像表示エリアSaの白画像領域の色(調色白)の色味が変更され、L値を変更すると白画像領域の色の明るさが変更される。なお、T値を変更した場合には背景色の透過度が変更されるため、サンプル画像表示エリアSaの黒色背景エリアにおける白画像領域の色の明るさが変更されるが、白色背景エリアにおける白画像領域の色は変更されない。そのため、T値(濃度値)の変化に応じた色の変化を、サンプル画像表示エリアSaの黒色背景エリアと白色背景エリアとを対比することで容易に確認することができ、ユーザーは調色白をより正確にかつより容易に指定することができる。そして、サンプル画像表示エリアSaの白画像領域がユーザーの所望の白色と一致した時に、ユーザーによってOKボタンが操作される。
こうして、プリンタードライバーは、ユーザーが所望する調色白画像の色に関する値(Lab値およびT値)を取得することができる。なお、ユーザーが指定した値(Lab値やT値)に基づき、実際に調色白の画像を印刷し、印刷画像を測色(Measurement)してもよい。この測色結果に基づいて、ユーザーは、調色白画像の色に関する値(Lab値およびT値)をより正確にかつより容易に調整することができる。
<印刷データの作成処理について>
次に、プリンタードライバーは、調色白画像に関して、色変換処理と、インク色分版処理と、ハーフトーン処理を実行する。まず、プリンタードライバーは、調色白指定処理により設定された「Lab値」を「YMCK値」に色変換する。色変換は、調色白画像用ルックアップテーブルLUTw1(不図示)を参照して実行される。調色白画像用ルックアップテーブルLUTw1には、予め設定されたLab値とYMCK値との対応関係が規定されている。なお、調色白画像用ルックアップテーブルLUTw1において、YMCKの各階調値は0以上100以下の範囲の値(比較的に淡い値)として規定されている。
次にプリンタードライバーは、調色白画像のLab値から色変換した「YMCK値」と調色白指定処理により設定された「T値」との組み合わせを、インクの色別の階調値に変換する「インク色分版処理」を行う。本実施形態のプリンター1は、シアンC、マゼンタM、イエローYと、ブラックKと、ホワイトW、の合計5色のインクが印刷に使用可能である。従って、インク色分版処理では、YMCK値およびT値の組み合わせが、5つのインク色(YMCKW)のそれぞれの階調値に変換される。
インク色分版処理も、別の調色白画像用ルックアップテーブルLUTw2(不図示)を参照して実行される。調色白画像用ルックアップテーブルLUTw2には、予め設定されたYMCK値およびT値の組み合わせと、各インク(YMCKW)の階調値と、の対応関係が規定されている。なお、調色白画像用ルックアップテーブルLUTw2において、各インク(YMCKW)の階調値は、0以上255以下の範囲の値として(256階調値で)規定されている。
次にプリンタードライバーは、高階調のデータ(256階調データ)をプリンターが表現可能なドットのON・OFFデータ(以下、ドットデータ)に変換するハーフトーン処理を実行する。ハーフトーン処理方法として、例えば、プリンタードライバーは、1画素のインク色別階調値(高階調データ)を取り出し、インク色毎にディザパターンを参照して、低階調のデータ(ドットデータ)に変換する。
同様にして、プリンタードライバーは、カラー画像(YMCK画像)に対しても、インク色分版処理と、ハーフトーン処理を実行する。プリンタードライバーは、カラー画像用ルックアップテーブル(不図示)を参照し、カラー画像データを、プリンター1で使用可能なインク色(YMCK)のそれぞれの階調値に変換する。プリンタードライバーがアプリケーションプログラムから受信したカラー画像データが例えばRGBデータであれば、プリンタードライバーは、インク色分版処理によりYMCKデータに変換する。そして、プリンタードライバーは、カラー画像用のYMCKデータに対してハーフトーン処理を実行し、高階調データをドットデータに変換する。
以上の処理により、プリンタードライバーは、調色白の(背景)画像を印刷するためのドットデータ(YMCKW)と、カラー画像を印刷するためのドットデータ(YMCK)を取得する。こうして取得したドットデータを、プリンタードライバーは、他のコマンドデータ(インク種別や印刷順など)と共に、プリンター1に送信する。
<プリンター1の処理について>
図15は、ラスターバッファーおよびヘッドバッファーの詳細構成を示す説明図である。本実施形態のプリンター1はラスターバッファーを有している。コントローラー10は、プリンター1がプリンタードライバーから受信したドットデータの一部(例えば1パス分のデータ)を、ラスターバッファーに格納する。また、ラスターバッファーは、カラー画像用ラスターバッファー132cと、白画像用(調色白画像用)ラスターバッファー132wの2つの領域を含んでいる。なお、図15の上段にはカラー画像用のラスターバッファー132cを示しており、中段には白画像用(調色白画像用)のラスターバッファー132wを示している。また、ヘッドユニット40は、ヘッドバッファーを有している。ヘッドバッファーは上流用ヘッドバッファー142uと下流用ヘッドバッファー142lを含んでいる。
コントローラー10は、カラー画像に関するドットデータは、カラー画像用のラスターバッファー132cに格納し、白画像(調色白画像・背景画像)に関するドットデータは、白画像用のラスターバッファー132wに格納する。また、図15に示すように、ラスターバッファーは、インク別(YMCKW)に領域が割り当てられている。そのため、コントローラー10は、受信したドットデータの一部を、インク別に、対応するラスターバッファーへ格納する。なお、ここでは、ラスターバッファーの各領域のX方向(ヘッド41の移動方向に相当)のサイズは画像幅(ヘッド41の移動距離)のサイズとなっており、各領域のY方向(搬送方向に相当)のサイズはノズル列長さの2分の1以上のサイズとなっている。
図15の下段にはヘッドバッファーを示している。図15に示すように、ヘッドバッファーは、ヘッド41が有するノズル列ごと(YMCKW)に領域が割り当てられている。即ち、ヘッドバッファーは、イエロー用の領域と、マゼンタ用の領域と、シアン用の領域と、ブラック用の領域と、ホワイト用の領域との集合として構成されている。ヘッドバッファーの各領域のX方向(移動方向)のサイズはヘッド41の移動距離のサイズであり、各領域のY方向(搬送方向)のサイズはノズル列を構成するノズル数に対応するサイズである。
また、ヘッドバッファーの各領域は、上流用142uと下流用142lとに2分されている。図3に示すように、本実施形態のプリンター1のヘッド41に設けられたノズル列は180個のノズルから構成される。ここで、搬送方向下流側の半分のノズル(#1〜#90)を「下流ノズル群」と呼び、搬送方向上流側の半分のノズル(#91〜#180)を「上流ノズル群」と呼ぶ。図15に示す上流用ヘッドバッファー142uは、上流ノズル群(#91〜#180)に対応するヘッドバッファーであり、下流用ヘッドバッファー142lは、下流ノズル群(#1〜#90)に対応するヘッドバッファーである。
コントローラー10は、画像データのうちの或る領域(例えば1パス分の領域)を印刷するために、まず、或る領域に対応するドットデータをインクの色ごとにラスターバッファーに格納する。その後、コントローラー10は、ラスターバッファーに格納したドットデータを印刷のタイミングに合わせてヘッドバッファーに転送する。そうして、ヘッドバッファーに格納されたドットデータに基づいて、ヘッド41の各ノズル列(YMCKW)からインク滴を噴射し、画像を印刷する。なお、ヘッドバッファーにドットデータを送信した後、コントローラー10は、全てのドットデータによる印刷が終了するまで、ラスターバッファーに新たなドットデータを格納する。
ところで、本実施形態では、白インク(W)とカラーインク(YMCK)を混ぜた調色白の背景画像上に、カラーインク(YMCK)によってカラー画像を印刷する。例えば、図6に示すように、ホワイトノズル列W及びカラーノズル列Coの搬送方向上流側のノズルによって調色白の背景画像を印刷し、カラーノズル列Coの搬送方向下流側のノズルによってカラー画像を印刷する。そのため、(通常印刷時には)コントローラー10は、図15に示すように、カラー画像用ラスターバッファー132cに格納されたドットデータを下流用ヘッドバッファー142lに転送し、白画像用ラスターバッファー132wに格納されたドットデータを上流用ヘッドバッファー142uに転送する。これにより、カラーノズル列Coの搬送方向下流側のノズルによってカラー画像を印刷することができ、カラーノズル列Co及びホワイトノズル列Wの搬送方向上流側のノズルによって背景画像を印刷することができる。
また、媒体(透明フィルム)の上に、先にカラー画像を印刷し、その上に調色白の背景画像を印刷する場合もある。この場合、通常印刷時において、カラーノズル列Coの搬送方向上流側のノズルによって先にカラー画像を印刷し、ホワイトノズル列W及びカラーノズル列Coの搬送方向下流側のノズルによってカラー画像上に背景画像が印刷される。そのため、コントローラー10は、カラー画像用ラスターバッファー132cに格納されたドットデータを上流用ヘッドバッファー142uに転送し、白画像用ラスターバッファー132wに格納されたドットデータを下流用ヘッドバッファー142lに転送する。
===その他の実施の形態===
上記の各実施形態は、主としてインクジェットプリンターを有する印刷システムについて記載されているが、濃度むらの補正方法等の開示が含まれている。また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
<印刷物について>
前述の実施形態では、白インクとカラーインクによって調色白の背景画像を印刷する印刷物を例に挙げているが、これに限らない。例えば、背景画像を白インク以外のインク(例えばカラーインクやメタリックインクなど)で印刷し、背景画像上の画像を形成するインクによって、背景画像の色味を調整してもよい。また、調色白の背景画像上に、画像の色再現性を高めるために、カラーインク(YMCK)と白インクによってカラー画像を印刷してもよい。
また、例えば、白インクのみによって背景画像を印刷し、その上に、白インクとカラーインク(YMCK)によってカラー画像を印刷してもよい。この場合、例えば、通常印刷時には、ホワイトノズル列Wの搬送方向上流側のノズル(例えば図6のノズル#13〜#21)にて背景画像を印刷し、カラーノズル列Co及びホワイトノズル列Wの搬送方向下流側のノズル(図6のノズル#1〜#9)にてカラー画像を印刷することになる。この場合にも、背景画像用の噴射ノズルとカラー画像用の噴射ノズルの間の乾燥用ノズルが属する領域の搬送方向の長さを、媒体の搬送量の整数倍に設定するとよい。
<印刷方法について>
前述の実施形態では、オーバーラップ印刷を例に挙げているがこれに限らない。他の印刷方法(例えばインターレース印刷のようにノズルピッチ間隔で並ぶラスターラインの間に異なるパスにて複数のラスターラインを形成する印刷方法)であってもよい。また、バンド印刷のように1パスで形成される画像幅分だけ媒体を搬送させる印刷方法では、例えば、ホワイトノズル列W及びカラーノズル列Coの上流側の1/3のノズルを噴射ノズルとし、カラーノズル列Coの下流側の1/3のノズルを噴射ノズルとする。この場合、1回の搬送動作における媒体の搬送量がノズル列の1/3の長さになるため、ノズル列の中央部の1/3のノズルを乾燥用ノズルとすればよい。
<流体噴射装置について>
前述の実施形態では、流体噴射装置としてインクジェットプリンターを例示していたが、これに限らない。流体噴射装置であれば、プリンターではなく、様々な工業用装置に適用可能である。例えば、布地に模様をつけるための捺染装置、カラーフィルター製造装置や有機ELディスプレイ等のディスプレイ製造装置、チップへDNAを溶かした溶液を塗布してDNAチップを製造するDNAチップ製造装置等であっても、本件発明を適用することができる。
また、流体の噴射方式は、駆動素子(ピエゾ素子)に電圧をかけて、インク室を膨張・収縮させることにより流体を噴射するピエゾ方式でもよいし、発熱素子を用いてノズル内に気泡を発生させ、その気泡によって液体を噴射させるサーマル方式でもよい。
また、ヘッド41から噴射するインクは、紫外線を照射すると硬化する紫外線硬化型インクであってもよい。この場合、紫外線硬化型インクを噴射するヘッドと紫外線硬化型インクに紫外線を照射する照射器をキャリッジ31に搭載するとよい。また、ヘッドから粉体を噴射してもよい。