JP5315943B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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本発明は電動パワーステアリング装置に関する。さらに詳しくは、アウターチューブとこのアウターチューブ内に圧入されたインナーチューブとの軸方向の摺動により衝撃吸収を行う電動パワーステアリング装置に関する。
コラム型の電動パワーステアリング装置では、車両の衝突時の衝撃吸収を目的として、当該電動パワーステアリング装置を構成するチューブの収縮機能を備えているものがある。具体的には、アウターチューブ内にインナーチューブが圧入されており、衝突時には両チューブが軸方向に収縮しながら衝撃を吸収し、ある一定長さ以上のストロークを確保している。
前記アウターチューブおよびインナーチューブのうち一方のチューブは、軸方向に移動しない固定チューブであり、他方のチューブは軸方向に移動し得る可動チューブである。そしてこの可動チューブは、通常時は、ブラケットを介して車体側に取り付けられているが、衝突により当該可動チューブが収縮する際、前記ブラケットが車体側から離脱することで可動チューブが所定のストロークだけ収縮できるようになっている。
このように、ブラケットを車体側に離脱可能に取り付ける取付部材として、例えば特許文献1に記載のものがある。特許文献1に記載されている取付部材30は、図4に示されるように、当該取付部材30を車体側の部材に固定するための取付ボルト(図示せず)を挿通させる長孔31が形成された直方体形状の本体部32と、この本体部32の両側面それぞれに設けられた上下一対の支持部33とで構成されている。
ブラケット34の両端部(図4では、一方の端部だけが図示されている)には、前記取付部材30を装着するために、ステアリングホイール側に開口された切欠部35が設けられている。また、ブラケット34には、切欠部35の両側に複数の小孔36が形成されている。一方、取付部材30の支持部33には、当該取付部材30をブラケット34に装着した際に、前記小孔36と位置が一致する複数の小孔37が形成されている。
前記取付部材30は、ブラケット34を上下一対の支持部33で挟むように当該ブラケット34の切欠部35に装着されている。その際、ブラケット34と取付部材30とは、それぞれに形成された小孔36と小孔37に合成樹脂を充填することによって形成されたピンにより一体化される。これにより、ドライバーとステアリングホイールとの衝突時に生じる衝撃が、前記ブラケット34が取り付けられたチューブから作用したとき、前記小孔36、37に充填された合成樹脂製のピンがせん断されることにより、前記ブラケット34が車体側から離脱する。
特開2002−331942号公報
ところで、電動パワーステアリング装置がチルト動作可能なものである場合、前記可動チューブは、当該可動チューブに固定された固定ブラケットと、前記ブラケット(車体側に固定されるブラケット)とを貫通するチルトボルトをレバーにより回動操作することで、ブラケットに固定されたり、またはブラケットへの固定から解除されたりするように構成されている。すなわち、チルトボルトを一方向へ回動操作することで、固定ブラケットとブラケットとが締め付けられ、可動チューブはブラケットを介して車体側に固定され、この状態ではチルト操作を行うことができない。一方、チルトボルトを逆の方向へ回動操作すると、固定ブラケットとブラケットとの締め付けが解除され、可動チューブはチルト方向へ移動可能となる。この場合、ブラケットにはチルト方向に沿った長孔が形成されており、チルトボルトはこの長孔に沿ってチルト方向に移動する。
以上の構成を備えた電動パワーステアリング装置において、前述したチューブの所定長の収縮ストロークを確保できない場合がある。すなわち、電動パワーステアリング装置のチューブは、車種により程度は異なるが鉛直方向に対して斜めに配設されている。このような電動パワーステアリング装置のステアリングホイールにドライバーが衝突すると、前記チューブをチルト方向に跳ね上げるような力が作用する。通常の運転時には、レバーの回動操作により、チューブがチルト方向に移動できないようにロックされているが、チューブに対しチルト方向に衝撃力が加わると、このロックが強制的に解除されることがある。
一方、ドライバーのステアリングホイールへの衝突により、前記チルト方向の力とともに、チューブの軸方向への力も作用する。この軸方向の力によりチューブは収縮し、前記ブラケットが取付部材から離脱するが、このときに前記のようにチルトロックが解除されていると、ブラケットはフリーな状態になりチルトボルト廻りに回転する。ブラケットが回転すると、その先端部分が、チューブのロア側に配設されているハウジング(トルクセンサや減速機などを収容するハウジング)と干渉する結果、チューブの収縮が邪魔されて所定長の収縮ストロークを確保することができない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、可動チューブに設けられた車体への固定用ブラケットの回転を防止して、当該可動チューブの所定長の収縮ストロークを確保することができる電動パワーステアリング装置を提供することを目的としている。
本発明の電動パワーステアリング装置は、アウターチューブとこのアウターチューブ内に圧入されたインナーチューブとの軸方向の摺動により衝撃吸収を行う電動パワーステアリング装置であって、
両チューブのうち可動側のチューブは、車体側に離脱可能に取り付けられる第1のブラケット、および、当該可動側のチューブに固定され且つ前記第1のブラケットに当接可能な第2のブラケットを備えており、
この第2のブラケットは、離脱した第1のブラケットの回転を防止する突起を有しており、
前記第1のブラケットは、中央の平板部と、この平板部の両側部から延設された側板部とを備えており、
前記第1のブラケットの一方の側部から保持板が斜め方向に延設されており、
この保持板と前記第1のブラケットの側板部との間に、側方から見てチルト方向に沿ったスリットが形成され、
このスリット内に前記突起を位置させることで、前記離脱した第1のブラケットの回転を防止するように構成したことを特徴としている。
本発明の電動パワーステアリング装置は、可動側のチューブに固定された第2のブラケットが、離脱した第1のブラケットの回転を防止する突起を有しているので、衝撃により当該第1のブラケットが車体側から離脱するとともに、当該可動側のチューブのチルトロックが解除された場合であっても、前記第1のブラケットが回転してハウジングと干渉することが防止される。その結果、可動側のチューブの所定長の収縮ストロークを確保することができる。
前記突起が、第2のブラケットを構成する板材にプレス加工を施して形成される膨出部であるのが好ましい。この場合、部材点数を増加させることなく、また、専用の工程を設定することなく、前記突起を第2のブラケットの成形加工と同時に形成することができる。
本発明の電動パワーステアリング装置によれば、可動チューブに設けられた車体への固定用ブラケットの回転を防止して、当該可動チューブの所定長の収縮ストロークを確保することができる。
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の電動パワーステアリング装置の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る電動パワーステアリング装置Sの要部の平面説明図であり、図2は図1に示される電動パワーステアリング装置のA−A線断面説明図である。電動パワーステアリング装置Sは、車室の内部において略上下に傾斜支持された筒型形状のステアリングコラム1と、このステアリングコラム1の内部に回転自在に支持されたステアリング軸2とを備えている。ステアリング軸2はステアリングコラム1を軸方向に貫通しており、当該ステアリング軸2の軸方向上端部2aには操舵部材であるステアリングホイール(図示せず)が固定される。また、ステアリングコラム1の下部に突出するステアリング軸2の下端部2bには、例えばラックピニオン式のステアリングギヤが連結され、ステアリングホイールの操舵によって図示しない車輪が操舵される。ステアリング軸2は、アウターチューブ11およびインナーチューブ12で構成されるチューブ内にて既知のスプラインなどによって、その軸方向に伸縮可能に連結されているシャフトを有している。
ステアリングコラム1は、可動側チューブとしてのアウターチューブ11および固定側チューブとしてのインナーチューブ12が同軸的に摺動自在に嵌め合わされて構成される二分割タイプのものである。前記アウターチューブ11には、当該アウターチューブ11と自動車のダッシュボードなどに設けられた車体側部材3(図2〜3参照)とを一体的に固定するためのアッパー側のブラケットであるワンウェイブラケット4が設けられている。このワンウェイブラケット4は、取付部材5を介して前記車体側部材3に離脱可能に固定されている。この取付部材5は、当該取付部材5を車体側部材3に固定するための取付ボルト6を挿通させる孔7が形成された直方体形状の本体部8と、この本体部8の両側面それぞれに設けられた上下一対の支持部9とを備えている。ワンウェイブラケット4の両端部には、前記取付部材5に装着するために、ステアリングホイール側に開口された切欠部が設けられており、前記取付部材5の支持部9で当該切欠部の縁部を挟み込むようにしてワンウェイブラケット4が取付部材5に装着される。そして、図4に示される取付部材30と同様に、前記支持部9およびワンウェイブラケット4にそれぞれ形成された小孔9aおよび4aに合成樹脂を充填することで形成されたピン10によって、当該ワンウェイブラケット4と支持部9とが一体化されている。これにより、ドライバーとステアリングホイールとの衝突時に生じる衝撃が、前記ワンウェイブラケット4が取り付けられたアウターチューブ11から作用したとき、前記小孔9a、4aに充填された合成樹脂製のピン10がせん断されることにより、当該ワンウェイブラケット4が車体側から離脱する。
ステアリング軸2のロア側には、当該ステアリング軸2によって伝達されるトルク(操舵力)を検出するためのトルクセンサや、所望のトルクを得るための減速ギヤを有する減速機などを収容するハウジング13がインナーチューブ12と一体的に設けられている。このハウジング13は、操舵補助力を発生させるためのモータ14を支持している。なお、モータ14は、前記トルクセンサで検出されたトルクに基づきその回転動作が制御されて、その回転力を操舵補助力として前記ステアリングギヤに伝達する。これにより、ドライバーによるステアリングホイールの操舵動作を最適にアシストすることができる。
可動側のチューブであるアウターチューブ11は、車体側に離脱可能に取り付けられる第1のブラケットであるチューブブラケット16、および、当該アウターチューブ11に固定され且つ前記チューブブラケット16に当接可能な第2のブラケットである固定ブラケット17を備えている。チューブブラケット16は、前記ワンウェイブラケット4に溶接などにより固定される中央の平板部16aと、この平板部16aの両側部から延設された側板部16bとを備えた、断面略コの字の部材である。また、チューブブラケット16の一方の側部(後述するチルトレバー20が設けられる側と反対側の側部)には、電線ハーネスを固定するための保持板16cが斜め方向に延設されている。
固定ブラケット17も中央の平板部17aと、この平板部17aの両側部から延設された側板部17bとを備えた、断面略コの字の部材であり、前記チューブブラケット16の対向する側板部16bの内側において、前記側板部17bの先端部がアウターチューブ11の外周面に溶接などによって固定されている。
前記チューブブラケット16および固定ブラケット17をチルトボルト18が貫通しており、このチルトボルト18の一端側であって当該チューブブラケット16の外側部分にチルトボルト18を回動操作するためのチルトアーム19が連結されている。また、このチルトアーム19の先端にはドライバーにより操作されるチルトレバー20が設けられている。チューブブラケット16の側板部16bには、図3に示されるように、チルト動作を許容するための長孔21が形成されている。そして、チルトボルト18に設けられた既知のカム機構により、チルトアーム19の回動操作によってチューブブラケット16と固定ブラケット17とが締め付けられたり、または、この締め付けが解除されたりするように構成されている。チューブブラケット16と固定ブラケット17とが締め付けられた状態では、前記ハウジング13を含む電動パワーステアリング装置S全体をチルト中心軸T(図1参照)を中心としてチルト方向(図1において略紙面貫通方向であり、図2において略上下方向)に移動させることができないが、この締め付けを解除した状態では電動パワーステアリング装置S全体をチルト方向に移動させることができる。このとき、チルトボルト18は、前記チューブブラケット16の側板部16bに形成された長孔21に沿って移動する。
図2〜3に示されるように、前記固定ブラケット17の両側板部17bの内一方の側板部17bの外側面の上部付近には、突起22が設けられている。この突起22は、チューブブラケット16の側板部16bと保持板16cとの間に形成された、側方から見てチルト方向に沿ったスリット23内に位置するように設けられている。また、突起22は、固定ブラケット17をプレス加工により成形する際に同時に形成された膨出部からなっている。この場合、部材点数を増加させることなく、また、専用の工程を設定することなく、突起22を固定ブラケット17の成形加工と同時に形成することができる。なお、本発明においては、スリット23の代わりに突起22に当接する当接部23aを備えていれば良く、チルトボルトよりも上側に突起22と当接部23aとが設けられていることが望ましい。
図3は、図1に示される電動パワーステアリング装置のブラケット(チューブブラケット16および固定ブラケット17)付近の側面説明図であり、(a)は衝撃吸収前の状態、(b)は衝撃吸収後の状態を示している。図3の(a)に示される通常の運転時は、チューブブラケット16により固定ブラケット17が締め付けられており、前述したハウジング13を含む電動パワーステアリング装置S全体のチルト方向への移動はできないようになっている。図3の(a)において、ΔLはアウターチューブ11とインナーチューブ12との間の吸収ストロークであり、ΔL´はワンウェイブラケット4とハウジング13との間の干渉距離である。通常、電動パワーステアリング装置Sを小型化して車両への搭載性を向上させると、ΔL´が小さくなりΔLを100%利用できなくなる。
この状態において、車両の衝突などによりドライバーがステアリングホイールに衝突して当該ステアリングホイールに衝撃力が加えられると、アウターチューブ11がチルト方向に跳ね上げられることがある。そうすると、前記カム機構により保持されていたチルトロックが強制的に解除される。また、ドライバーのステアリングホイールへの衝突によって、アウターチューブ11に軸方向の衝撃力も作用し、この衝撃力によってアウターチューブ11はロア側に収縮する(図3の(b)参照)。これにより、ワンウェイブラケット4もロア側に急激に移動し、前記合成樹脂製のピン10がせん断され、当該ワンウェイブラケット4は前記取付部材5から離脱する。このとき、前述したようにチルトロックが強制的に解除されているので、チューブブラケット16およびワンウェイブラケット4はチルトボルト18を中心にして回転しようとするが、突起22がチューブブラケット16のスリット23の内縁23aに当接するので、かかるチューブブラケット16およびワンウェイブラケット4の回転は阻止される。その結果、ワンウェイブラケット4の先端部が、例えば前記ハウジング13の角部13aと干渉するのを防ぐことができる。すなわち、ワンウェイブラケット4が回転することで当該ワンウェイブラケット4とハウジング13との干渉距離が吸収ストロークよりも小さくなるのを防ぐことができる。これにより、アウターチューブ11とインナーチューブ12との吸収ストロークを無駄なく使用することができ、ドライバーの安全性を向上させることができ、また、小型化と搭載性とを両立させることができる。また、突起22と当接部23aとがチルトボルト18よりも上側に設けられている場合には、ワンウェイブラケット4の回転量を更に低減できるので、ハウジング13の角部13aとの干渉を更に効果的に防ぐことができる。
なお、前記突起22は固定ブラケット17の両側板部17bのそれぞれの外側面に形成することができる。また、突起22としては、前述したプレス加工による膨出部に限定されるものではなく、例えば、側板部17bに略コの字状のスリットを形成し、ついでこのスリットで囲まれた部分を起立させることで得られる起立片を用いることができる。また、別体の突起体を側板部17bの外側面に固着することで突起を形成することもできる。
本発明の電動パワーステアリング装置の一実施の形態の要部平面説明図である。 図1に示される電動パワーステアリング装置のA−A線断面説明図である。 図1に示される電動パワーステアリング装置のブラケット付近の側面説明図であり、(a)は衝撃吸収前の状態、(b)は衝撃吸収後の状態を示している。 ブラケットを車体側に取り付ける取付部材の斜視説明図である。
符号の説明
1 ステアリングコラム
2 ステアリング軸
3 車体側部材
4 ワンウェイブラケット
5 取付部材
11 アウターチューブ
12 インナーチューブ
13 ハウジング
16 チューブブラケット
17 固定ブラケット
18 チルトボルト
19 チルトアーム
20 チルトレバー
21 長孔
22 突起
23 スリット
23a 当接部(内縁)
30 取付部材
31 長孔
32 本体部
33 支持部
34 ブラケット
35 切欠部
36 小孔
37 小孔
S 電動パワーステアリング装置

Claims (3)

  1. アウターチューブとこのアウターチューブ内に圧入されたインナーチューブとの軸方向の摺動により衝撃吸収を行う電動パワーステアリング装置であって、
    両チューブのうち可動側のチューブは、車体側に離脱可能に取り付けられる第1のブラケット、および、当該可動側のチューブに固定され且つ前記第1のブラケットに当接可能な第2のブラケットを備えており、
    この第2のブラケットは、離脱した第1のブラケットの回転を防止する突起を有しており、
    前記第1のブラケットは、中央の平板部と、この平板部の両側部から延設された側板部とを備えており、
    前記第1のブラケットの一方の側部から保持板が斜め方向に延設されており、
    この保持板と前記第1のブラケットの側板部との間に、側方から見てチルト方向に沿ったスリットが形成され、
    このスリット内に前記突起を位置させることで、前記離脱した第1のブラケットの回転を防止するように構成したことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  2. 前記保持板は電線ハーネスを固定する請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
  3. 前記突起が、第2のブラケットを構成する板材にプレス加工を施して形成される膨出部である請求項1または2に記載の電動パワーステアリング装置。
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