特許文献1〜3に記載のステアリングコラム装置に取り付けられた電動チルト機構は、チルト作動によりステアリングコラム本体が傾動すると、その傾動に伴ってステアリングコラム本体を支持しているブラケットも傾動する構成である。このためブラケットは車体に対して傾動可能なようにヒンジ部材を介して車体に固定されている。特許文献1〜3に記載のステアリングコラム装置はこのようにヒンジ部材を設けているので、電動チルト機構を構成する部品点数が多くなるという問題がある。また、ステアリングコラム本体と車体との間にヒンジ部材を設けるためにステアリングコラム装置が大型化するという問題がある。
本発明は、上記問題に対処するためになされたもので、部品点数の低減が可能であり、且つ小型化に寄与し得る電動チルト機構を有するステアリングコラム装置を提供することを目的とする。
本発明に係るステアリングコラム装置は、ステアリングコラム本体と、ロアブラケットと、電動チルト機構と、アッパブラケットとを備える。ステアリングコラム本体は、操舵ハンドルに連結したステアリングメインシャフトと、このステアリングメインシャフトを回転可能且つ軸方向移動不能に支持する支持部材を有する。ロアブラケットは、車体に固定されているとともにステアリングコラム本体を車体に対して上下方向へ傾動可能に支持するものである。電動チルト機構は、ステアリングコラム本体をロアブラケットによる支持点を中心に車体に対して上下方向へ傾動させる機構である。アッパブラケットは、車体に取り付けられているとともにステアリングコラム本体の上記傾動を許容するように、上記ロアブラケットによる支持位置よりも車両後方側にてステアリングコラム本体を支持するものである。
また、本発明に係るステアリングコラム装置において、上記電動チルト機構は、チルトスクリュと、電動アクチュエータと、チルトアジャストナットとを備える。チルトスクリュは、ステアリングコラム本体のコラム軸方向に対して直交または傾斜する方向に延びて形成され、外周に雄ネジが設けられるとともにアッパブラケットに回転可能且つ軸方向移動不能に支持されている。ここで、チルトスクリュは、ステアリングコラム本体が傾動可能な平面である傾動平面に平行な平面内にてコラム軸方向に直交または傾斜する方向に延びて形成されているとよい。電動アクチュエータは、上記チルトスクリュを回転駆動するものであり、例えば電動モータが一例として挙げられる。チルトアジャストナットは、雌ネジが内周に設けられたネジ穴部を有しており、チルトスクリュに螺合している。そして、上記支持部材にはチルトアジャストナットが挿入される第1凹部が形成され、上記チルトアジャストナットは上記第1凹部内にてステアリングコラムの傾動平面に直交する軸回りに回転可能に支持部材に連結している。
上記構成を有する本発明のステアリングコラム装置によれば、電動アクチュエータの駆動によりチルトスクリュが回転すると、この回転によりチルトスクリュに螺合したチルトアジャストナットがネジ送りされる。これによりチルトアジャストナットはチルトスクリュの軸方向に、すなわちステアリングコラム本体のコラム軸方向(ステアリングメインシャフトの軸方向に平行な方向)に直交する方向あるいは傾斜する方向に移動する。このときチルトアジャストナットは第1凹部にて支持部材に連結しているので、支持部材はチルトアジャストナットの上記移動に伴いチルトアジャストナットと共に移動する。支持部材の移動により、ステアリングコラム本体はロアブラケットによる支持点を中心に車体に対して上下方向に傾動する。これによりステアリングコラム本体のチルト作動がなされる。
上記のチルト作動により、ステアリングコラム本体がアッパブラケットに対して傾動し、この傾動によりアッパブラケットによるステアリングコラム本体の支持角度(傾動角度)が変化する。ここで、チルトアジャストナットは支持部材の第1凹部内にてステアリングコラム本体の傾動平面に直交する軸回り(傾動軸と平行な軸回り)に回転可能とされている。したがって、ステアリングコラム本体の傾動に併せてチルトアジャストナットが第1凹部内で回転することにより、上記支持角度の変化が許容される。つまり、チルトアジャストナット自身がヒンジ部材のような役割を果たすことによってステアリングコラム本体の傾動を許容する。このため従来のようにヒンジ部材が必要となることがなく、ステアリングコラム装置の部品点数を低減することができる。さらに、ヒンジ部材の取付空間を確保する必要もないので、装置のコンパクト化に寄与する。
上記第1凹部は、ステアリングコラム本体の傾動平面(電動チルト機構によるチルト作動によってステアリングコラムが傾動する平面)に直交する方向に延びて形成されているとよい。さらに第1凹部は上記方向を軸とする円柱形状を呈しているとよりよい。このような第1凹部の形状に合わせて、チルトアジャストナットの外径はネジ穴部の軸方向に直交する方向を軸とする円柱形状または円筒形状に形成され、この円柱形状(円筒形状)のチルトアジャストナットが円柱形状の第1凹部内に挿入されている態様であるとよい。さらに第1凹部は、その中心軸がステアリングコラム本体のコラム軸から径方向且つ車体に対して側方側(車体側方側)に延びるように形成されているとよい。また、上記支持部材は、ステアリングコラム本体の傾動平面に直交する方向に筒状に延びて形成された筒状部を有し、この筒状部に第1凹部が形成されているとよい。この筒状部は支持部材の車体側方側に形成されているとよい。このような構成とすることにより、上記作用効果を奏する本発明を確実に実施することができる。
また、上記筒状部は第1凹部に直交する方向に貫通形成された第2凹部を有し、上記チルトスクリュが第2凹部を挿通しているものであるとよい。これによれば、チルトスクリュを筒状部の第2凹部に挿通するように配置することによりチルトスクリュをステアリングコラム本体のより近くに配置することができる。よって、ステアリングコラム装置のコンパクト化を達成し得るとともに、ステアリングコラム本体とチルトスクリュとを組み付けた際の剛性を向上させることができる。この場合、第2凹部はステアリングコラム本体のコラム軸方向にも直交する方向に延びて形成されているとよい。
ここで、第2凹部はチルト作動により傾動するステアリングコラム本体(支持部材)側に形成されているために、ステアリングコラム本体の傾動とともにこの第2凹部も傾動する。一方、チルトスクリュはアッパブラケットに取り付けられていてチルト作動時には変位しない。このためチルト作動に伴って第2凹部がチルトスクリュに対して傾動していく。このとき上記第2凹部はチルトスクリュに対し、チルトスクリュの径方向に隙間を有するように形成されているのがよい。上記隙間の存在により、第2凹部の傾動によりチルトスクリュが第2凹部を形成する筒状部の内壁面に干渉することを防止することができる。この場合、上記第2凹部は、ステアリングコラムのコラム軸方向を長径とする長穴形状であるのがよい。
また、上記第1凹部と上記第2凹部は、それぞれが筒状部内で交差しているものであるのがよい。これによれば、第2凹部が第1凹部に交差することにより第1凹部の軸方向長さを長く取ることができる。よって、チルトアジャストナットと筒状部との軸方向における嵌め合い長さも長くとることができ、これらを組み付けた際の剛性を向上させることができる。
上記支持部材は、ステアリングメインシャフトの外周を覆うように筒状に形成され、ステアリングメインシャフトを回転可能且つ軸方向移動不能に支持するコラムチューブと、コラムチューブの外周を覆うように配置し、コラムチューブを軸方向移動可能に支持するとともに、チルトスクリュの軸方向に移動可能且つ傾動可能であってコラムチューブの軸方向に移動不能にアッパブラケットに取り付けられたチューブガイドブラケットとを有するものであるのがよい。そして、このチューブガイドブラケットに支持部材の筒状部が形成されているものであるのがよい。これによれば、コラムチューブはチューブガイドブラケットに軸方向移動可能に支持されるため、コラムチューブおよびステアリングメインシャフトを軸方向移動させることによりテレスコピック作動をなすことができる。したがって、テレスコピック機構を有するステアリングコラム装置にも本発明を適用することが可能となる。
また、上記チルトアジャストナットは、ネジ穴部に連通し且つこのネジ穴部の軸方向に直交する方向に沿って形成された抑え穴部を有し、この抑え穴部には、ネジ穴部にてチルトアジャストナットと螺合したチルトスクリュをその径方向に押圧する押圧手段が配設されているものであるとよい。これによれば、抑え穴部に配設された押圧手段によりチルトスクリュが押圧されることにより、チルトスクリュはネジ穴部の壁面に押し付けられる。このためチルトスクリュの雄ネジがネジ穴部の雌ネジと確実に接触するようになり、チルトスクリュとチルトアジャストナットとの間のがたつきを防止することができる。
また、上記アッパブラケットは、車体に取り付けられる取付部と、チルトスクリュをチルトアジャストナットとの螺合部位よりも上方にて回転可能且つ軸方向移動不能に支持する上方支持部と、前記チルトスクリュを前記チルトアジャストナットとの螺合部位よりも下方にて回転可能且つ軸方向移動不能に支持する下方支持部とを有し、上方支持部は上記取付部よりも上方側に位置し、下方支持部は上記取付部よりも下方側に位置しているのがよい。つまり、上方支持部と下方支持部は、取付部を挟んで位置しているとよい。
通常、アッパブラケットはその最も上部にて車体側の部材に取り付けられている。このアッパブラケットがブレークアウエイブラケットとして機能する場合において、衝突時などにおける車両後方側からの入力が所定の離脱荷重以上になると、上記取付部分が破断してアッパブラケットが車体から離脱する。このとき、アッパブラケットが電動チルト機構のチルトスクリュを支持しており、このチルトスクリュを介してステアリングコラム本体に連結されている場合は、ステアリングコラム本体に作用する力はチルトスクリュを介してアッパブラケットに伝達される。したがって、チルトスクリュを支持している位置が上記取付部分と異なった位置にある場合は、ステアリングコラム本体側からの入力によりアッパブラケットに回転モーメントが作用する。特に従来のステアリングコラム装置においては、アッパブラケットはチルトスクリュの上下端をベアリングなどを介して支持しており、両端の支持部位が上記取付部分よりも下方側に位置している。したがって、車両後方側からステアリングコラムに作用する力によりアッパブラケットは下側から突き上げられる方向に回転する回転モーメントが作用していた。この回転モーメントが離脱荷重に影響し、例えば設定した離脱荷重を超えた入力がステアリングコラムに作用しても上記回転モーメントの影響によって車体との固定が解除されないなど、離脱荷重が不安定になるという問題があった。
これに対して上記発明によれば、アッパブラケットは、チルトスクリュの上方支持部が車体との取付部位よりも上方側に位置し、チルトスクリュの下方支持部が上記取付部位よりも下方側に位置している。したがって、車両後方側からステアリングコラムに作用する力がチルトスクリュを介してアッパブラケットに伝達される場合において、上記下方支持部からは下方から突き上げるように作用する回転モーメントが、上記上方支持部からは上方から押し倒すように作用する回転モーメントが同時にアッパブラケットに働く。このため回転モーメントが相殺される。回転モーメントの相殺によりアッパブラケットに作用する回転モーメントの正味の大きさが減少し、回転モーメントが離脱荷重に影響する度合が減少する。上記発明はこのようにして回転モーメントの大きさを減少することにより、離脱荷重の安定化を図ることができるという効果を奏する。
以下、本発明の実施形態に係るステアリングコラム装置について図面を用いて説明する。図1は、本実施形態に係るステアリングコラム装置の側面図、図2は平面図、図3は図2のA−A断面図である。図に示す通り、ステアリングコラム装置1は、ステアリングコラム本体(以下、コラム本体)10と、ロアブラケット20と、アッパブラケット30とを有する。
コラム本体10は、ステアリングメインシャフト11とコラムチューブ12とを備える。ステアリングメインシャフト11は図1および図3に示すように、後方端にて図示省略の操舵ハンドルに連結されたアッパシャフト111と、前方端にて図示省略のユニバーサルジョイントにより中間軸(図示省略)に連結されたロアシャフト112とを備える。アッパシャフト111は筒状に形成され、ロアシャフト112は棒状に形成される。アッパシャフト111の図示前方部はロアシャフト112の図示後方部にスプライン嵌合しており、これによって両シャフト111,112は一体回転可能且つ軸方向相対移動可能に連結している。
コラムチューブ12はチューブ本体部121とヨーク部122とに分かれていて、これらが一体動作可能に連結している。チューブ本体部121はアッパシャフト111の外周を覆うように筒状に形成されており、その内周側にてベアリングBr1およびベアリングBr2を介してアッパシャフト111を回転可能且つ軸方向相対移動不能に支持している。ヨーク部122はチューブ本体部121の前方側の端部に連結されており、図に示す状態ではロアシャフト112の外周を覆うように筒状に形成され、その前方側には図2に示すようにアーム部122aがロアシャフト112の両側に延びている。このアーム部122aにはコラム本体10のコラム軸方向に沿って横長にスリット孔122bが両側方に形成されている。
ロアブラケット20は、図1に示すように、コラム本体10の前方側に配置している。ロアブラケット20は、コラム本体10の上方にてコラム軸方向と直交する左右方向(図2参照)に長く延びて形成され車体に取付けられる部位である上部取付部21と、この上部取付部21の両端側からコラムチューブ12(ヨーク部122)を挟むように垂下した一対の支持部22,22とを備えている。
図10は、図1のF−F線に沿って切断した断面図であり、ロアブラケット20付近の組み付け状態を示している。図10に示すように、支持部22,22には、左右方向に延びた一対のチルトセンタピン23,23の一端側がそれぞれ回動可能に取り付けられている。一対のチルトセンタピン23の他端は、ヨーク部122のアーム部122aに形成されたスリット孔122bを通過してロアシャフト112の外周に配されたベアリングケース132に螺合している。ベアリングケース132は内部にベアリングBr3を擁し、このベアリングBr3によってロアシャフト112が軸回りに回転可能且つ軸方向移動不能にベアリングケース132に連結されている。したがって、ロアシャフト112はベアリングケース132およびチルトセンタピン23を介して回転可能且つ軸方向移動不能にロアブラケット20に支持される。また、チルトセンタピン23がロアブラケット20に対して軸回りに回転することにより、ロアシャフト112およびヨーク部122が一体となってチルトセンタピン23を中心に上下方向に傾動する。このようにして、コラム本体10はロアブラケット20に車体に対して上下方向に傾動可能に支持される構造とされる。なお、チルトセンタピン23の外周にはくさび状の部材23aが取付けられており、このくさび状の部材23aはスリット孔122bにテーパ状に嵌合しているとともに板バネおよびワッシャにより嵌合方向に付勢されている。ヨーク部122はこのくさび状の部材23aを摺接しながらロアブラケット20に対して軸方向移動可能とされている。
アッパブラケット30はコラム本体10をロアブラケット20よりも車両後方側にて支持するものである。図4は、図1のB−B断面図であり、アッパブラケット30とコラム本体10との組み付け構造を示す図である。図4に示すように、アッパブラケット30は、チューブ本体部121の上方に配置されてコラム本体10を跨ぐように左右方向に延びている上板部31と、この上板部31からチューブ本体部121を挟むように垂下した対の側壁部32,33と、対の側壁部32,33をコラム本体10の下方で連結する底面部34とを有し、チューブ本体部121を四方から取り囲むように配置している。図1および図4に示すように、側壁部32,33には、上下方向に延びたガイド孔32a,33aが形成されている。
また、図4に示すように、チューブ本体部121のアッパブラケット30に囲まれている部分には、チューブガイドブッシュ41を介してチューブガイドブラケット42が取り付けられている。コラム本体10は、このチューブガイドブッシュ41やチューブガイドブラケット42および後述するチルトガイドピン424b、チルトアジャストナット53、チルトガイドブッシュ424c,53c等を介してアッパチューブ30に支持される。
チューブガイドブッシュ41は、チューブ本体部121の軸方向の所定の長さに亘り、チューブ本体部121の外周を取り巻くように略円筒形状に形成され、軸方向に切り欠かれたスリット41aが形成されて断面が略C字状とされている。このチューブガイドブッシュ41の外周側にチューブガイドブラケット42が配置している。
図5はチューブガイドブラケット42を示す図であり、図5(a)は車両の後方側から見たチューブガイドブラケットの正面図、図5(b)は左側面図、図5(c)は右側面図、図5(d)は底面図、図5(e)は図5(c)のG−G断面図である。図4および図5に示すように、チューブガイドブラケット42は、ガイド部421と、チルト用筒状部422と、テレスコ支持部423と、取付用筒状部424と、締め付け部425とを備えて構成されている。図5(e)に示すようにガイド部421は断面がリング状とされた部分であり、このガイド部421の周方向の異なった位置にその他の部位(チルト用筒状部422、テレスコ支持部423、取付用筒状部424および締め付け部425)が形成されている。
ガイド部421は、チューブガイドブッシュ41の外周を覆っており、チューブガイドブッシュ41と同じように略円筒形状を呈し、軸方向に延びたスリット421aが形成されて断面が略C字状とされている。締め付け部425は図4および図5(e)に示すようにガイド部421の下方に位置しており、スリット421aを形成するガイド部421の両縁部から垂下して対面した対の突片425a,425bを備えて構成されている。この対の突片425a、425bを締結ボルト43で締め付けることにより、ガイド部421に周方向に沿った締結力が加えられる。この締結力によりチューブ本体部121がチューブガイドブッシュ41を介して締め付けられて、チューブ本体部121がチューブガイドブラケット42に連結される。この締結力を調整することで、後述するテレスコピック作動におけるチューブガイドブッシュ41とチューブ本体部121との間の摺動荷重およびガタを調整することができる。また、適正な締結力が得られる状態において締結ボルト43を緩み止め剤や芋ねじ等で固定することにより、締結力の安定化を図ることができる。なお、ガイド部421の内周側に周方向に所定の長さの円弧状の突部を複数設けて、この突部がチューブ本体部121に面当たりするようにしてもよい。コラムチューブ12、チューブガイドブッシュ41およびチューブガイドブラケット42は、本発明において、ステアリングメインシャフト11を回転可能且つ軸方向移動不能に支持する支持部材に相当する。
チルト用筒状部422は、図4に示す組み付け状態においてガイド部421の右方側の側周から右方に延びて立設され、左右方向に軸を持つ円筒形状に形成されている。図5(e)に示すチルト用筒状部422の円筒軸L1の方向は、図4に示す組み付け状態において左右方向に平行な方向となる。この方向はチルトセンタピン23の軸方向と同一方向である。コラム本体10はチルトセンタピン23の軸回りに傾動するため、チルト用筒状部422は組み付け状態においてコラム本体10がチルトセンタピン23を支持中心として傾動するときの傾動平面に直交する方向すなわち傾動軸と平行な方向に延びていることになる。また、チルト用筒状部422の内部には、第1凹部422aおよび第2凹部422bが形成されている。
第1凹部422aはチルト用筒状部422内にて軸方向に沿って、すなわち組み付け状態においてコラム本体10の傾動平面に直交する方向に沿って貫通形成されている。第2凹部422bは上記第1凹部422aの軸方向およびガイド部421の軸方向の双方に直交する方向(図5(e)における軸L2に沿った方向)に延びて貫通形成されている。軸L2に沿った方向は、図4に示す組み付け状態においては上下方向となる。図5(e)に示すように、第1凹部422aと第2凹部422bとは、チルト用筒状部422内にて交差している。また、第2凹部422bは、図5(d)に示すように、ガイド部421の軸方向(L3方向)を長径とする長穴とされている。ガイド部421はコラム本体10に組み付けられた状態ではコラム本体10と同軸配置するので、第2凹部422bはコラム本体10のコラム軸方向を長径とする長穴とされる。
テレスコ支持部423は、図4においてガイド部421の左下側に配置した部分であり、図5(d)および図5(e)に示すように下方に開口してくり抜かれた断面方形状の凹部423aを有している。その凹部423aには後述するテレスコアジャストナット63が開口した側から挿入され、ずれ防止用の弾性体(ゴム)423bを介してテレスコ支持部423に弾性支持されている。さらにテレスコ支持部423には、組み付け時にコラム軸方向に沿った方向に貫通孔423cが形成されている。この貫通孔423cには後述するテレスコスクリュ62が挿通される。取付用筒状部424はガイド部421を挟んでチルト用筒状部422に対称の位置に配され、ガイド部421の図4において左方側の側周から左方に延びて立設され、組み付け状態において左右方向に軸を持つ円筒状に形成されている。取付用筒状部424は内部に軸方向に沿ったネジ穴424aが設けられている。このネジ穴424a内には、図4に示すようにチルトガイドピン424bが螺合される。チルトガイドピン424bの頭部には方形状のチルトガイドブッシュ424cが組み付けられていて、チルトガイドピン424bは回転可能にこのチルトガイドブッシュ424cに固定されている。チルトガイドブッシュ424cは図1に示すようにアッパブラケット30の側壁部32に形成されたガイド孔32aに側片が摺接する状態で嵌め込まれており、図1の上下方向に移動可能且つ前後方向(コラム軸方向)に移動不能にアッパブラケット30に組み付けられている。
また、本実施形態のステアリングコラム装置1は、電動チルト機構50および電動テレスコピック機構60を備えており、電動モータの駆動により自動的にチルト作動およびテレスコピック作動がなされるようにされている。電動チルト機構50は、チルト用電動モータ51と、チルトスクリュ52と、チルトアジャストナット53とを備えて構成されている。
図7は、図1のC−C線に沿って切断した部分断面図である。図1〜図3、図7に示すように、チルト用電動モータ51は、アッパブラケット30に連結固定されている。このチルト用電動モータ51にはウォームシャフトやウォームホイールからなるウォーム減速機などの減速機構54を介してチルトスクリュ52が連結している。チルトスクリュ52は外周に雄ネジが設けられており、図4に示すようにアッパブラケット30の上板部31に固定されたベアリングBr4および、底面部34にてベアリングケース35およびロックナット36により固定されたベアリングBr5を介して回転可能且つ軸方向移動不能にアッパブラケット30に支持されている。このチルトスクリュ52の軸方向は、図3に示すような状態すなわち中立状態にあってはコラム本体10の傾動平面(紙面に平行な平面)にてコラム本体10のコラム軸方向に直交する方向とされている。なお、チルトスクリュ52は、少なくともコラム軸方向に直交する上下方向成分を有していればよく、コラム軸に対して傾斜した状態で配置していてもよい。また、図4に示すようにチルトスクリュ52は、チルトガイドブラケット42のチルト用筒状部422の第2凹部422bを挿通している。
チルトアジャストナット53は図4に示すようにチルトスクリュ52に螺合しているナット部材であって、チルトスクリュ52の回転によりネジ送りされる。図6はチルトアジャストナット53を示す図であり、図6(a)が正面図、図6(b)が断面図である。
図6に示すように、チルトアジャストナット53は外径が円柱状であって、内部には、軸方向に直交し、且つ軸芯を通るように側周面を貫通して形成されたネジ穴部53aと、軸方向に平行な方向であって上記ネジ穴部53aに直交して形成された抑え穴部53bを有している。ネジ穴部53aには雌ネジが形成されており、この雌ネジがチルトスクリュ52に形成された雄ネジと螺合する。また、抑え穴部53bはネジ穴部53aに連通しており、一端側がチルトアジャストナット53の一端面から開口している。また、チルトアジャストナット53の他端面は閉塞している。
このような形状のチルトアジャストナット53は、図4に示すようにチューブガイドブラケット42のチルト用筒状部422内に形成された円柱状の第1凹部422a内に挿入されている。そして、チルトアジャストナット53は第1凹部422a内にて軸回りに回転可能にチューブガイドブラケット42に連結している。組み付け状態においてチルトアジャストナット53の回転軸方向は第1凹部422aの軸方向と同一とされる。第1凹部422aの軸方向はコラム本体10の傾動平面に直交する軸方向(図4において左右方向)と平行であるから、チルトアジャストナット53は第1凹部422a内にてコラム本体10の傾動平面に直交する軸回り(傾動軸と平行な軸回り)に回転可能に支持部材であるチューブガイドブラケット42に連結していることになる。
また、チルトアジャストナット53は、そのネジ穴部53aがチルト用筒状部422の第2凹部422bに軸方向に重ね合わされるようにチルト用筒状部422に挿入されている。この挿入状態において、第2凹部422bを挿通したチルトスクリュ52は、ネジ穴部53aにてチルトアジャストナット53に螺合する。第2凹部422bは上述のように長穴状に形成されており、チルトスクリュ52が挿通した状態において、チルトスクリュ52の径方向に隙間を有している。
また、チルトアジャストナット53の抑え穴部53bには、押圧ホルダ55および押圧バネ56が配設されている。押圧バネ56は抑え穴部53b内に軸方向に沿って配設されている。押圧バネ56は、その一端が抑え穴部53bの開口縁に取り付けられたボルト57に固定され、他端が押圧ホルダ55に固定されている。押圧ホルダ55はチルトスクリュ52の側周に対面配置しており、チルトスクリュ52の外径形状に合うような断面円弧状の曲面がチルトスクリュ52に面する側に形成されている。また、押圧バネ56は図4に示した状態で伸張力を発揮する状態とされている。したがって、押圧バネ56の伸張力により押圧ホルダ55はチルトスクリュ52を付勢する。これによりチルトスクリュ52は押圧ホルダ55とは反対側のネジ穴部53aの内周壁に押し付けられる。ネジ穴部53aの内周壁には雌ネジが形成されているので、この押し付けによりチルトスクリュ52の雄ネジとネジ穴部53aの雌ネジとが確実に螺合する。したがって、上記の付勢力によりチルトスクリュ52とチルトアジャストナット53との間のガタを取り除くことができる。
図4に示すように、チルトアジャストナット53は第1凹部422aに挿入されるが、その右方部分は第1凹部422aから突出する。その突出した部分には、外周を覆うようにチルトガイドブッシュ53cが取り付けられている。このチルトガイドブッシュ53cは、チルトガイドピン424bの頭部に取り付けられたチルトガイドブッシュ424cと同様に外形が方形状とされ、アッパブラケット30の側壁部33に形成されたガイド孔33aに嵌め込まれており、その側片をガイド孔33aにガイドされて、上下方向に移動可能且つ前後方向(コラム軸方向)に移動不能とされている。チルトガイドブッシュ424c,53cが側壁部32,33のガイド孔32a,33aにて面受けされることにより、チューブガイドブラケット42およびチルトアジャストナット53などを介してコラム本体10の全体がその両側方からアッパブラケット30に支持されている構造とされている。
電動テレスコピック機構60は、テレスコ用電動モータ61と、テレスコスクリュ62と、テレスコアジャストナット63とを備えて構成されている。図8は図1のE−E線に沿って切断した断面図、図9は図1のD−D線に沿って切断した断面図であり、いずれも電動テレスコピック機構60の取付け状態を示す図である。図1、図8、図9によく示すように、テレスコ用電動モータ61は、コラムチューブ12のヨーク部122に固定されている。このテレスコ用電動モータ61は、ウォームシャフトおよびウォームホイールからなるウォーム減速機などの減速機構64を介してテレスコスクリュ62に連結している。テレスコスクリュ62は、コラム本体10のコラム軸方向に延びて形成されており、外周に雄ネジが形成されている。また、テレスコスクリュ62は、図8に示すように、その図示左方側がヨーク部122にベアリングBr6,Br7を介して回転可能且つ軸方向移動不能に支持されており、その図示右方側がチルトガイドブラケット42のテレスコ支持部423に形成された凹部423cを挿通している。また、テレスコスクリュ62の外周には、チューブガイドブラケット42との当接により、コラムチューブ12のチューブガイドブラケット42に対するコラム軸方向の移動量を規定する前後一対のストッパ65,65が組み付けられている。
テレスコアジャストナット63は、テレスコ支持部423の凹部423a内に挿入されており、上述のようにずれ防止用の弾性体423bを介してテレスコ支持部423に移動不能に弾性支持されている。テレスコアジャストナット63の内部には、内周に雌ネジを有するネジ穴部63aが形成されている。ネジ穴部63aは、テレスコアジャストナット63が凹部423a内に取り付けられた状態においてコラム本体10のコラム軸方向に延びて形成されている。そして、テレスコ支持部423を挿通するテレスコスクリュ62がネジ穴部63aにてテレスコアジャストナット63と螺合する。また、テレスコアジャストナット63の内部には、さらに抑え穴部63bが形成されている。この抑え穴部63bはネジ穴部63aに直交するように凹部423aの開口端側から図4において上方に延びて形成されており、その先端がネジ穴部63aに連通している。そして、この抑え穴部63bには押圧ホルダ65および押圧バネ66が配設されているとともに、抑え穴部63bの開口端にはボルト67が固定されている。これらの押圧ホルダ65、押圧バネ66およびボルト67によりテレスコスクリュ62とテレスコアジャストナット63との間のガタを取り除くことができる。押圧ホルダ65、押圧バネ66およびボルト67の具体的構成は、上記説明した押圧ホルダ55、押圧バネ56およびボルト57の構成と同様であるのでその具体的説明は省略する。
図4に示すように、アッパブラケット30の上板部31は、チルトスクリュ52の図示上方端を支持するベアリングBr4が固定された部位を有する上方支持部31aと、上方支持部31aから図示左右方向に水平に突出した部分である一対の取付部31b、31bとを有する。取付部31b、31bにはそれぞれスリット孔31c、31cが形成されている。スリット孔31c,31cは、二次衝突時にアッパブラケット30の車両前方側への移動離脱を可能とするものであり、各取付部31b,31bの略中央から車両後方側に延びて後方端にて開口している。スリット孔31c,31cには左右一対のカプセル31d,31dが取り付けられている。
このカプセル31d,31dが左右一対のエネルギー吸収プレート37,37とともに左右一対の連結ボルト(図示省略で車体側に予め溶接で固着したナットに螺着される)を介して車体の一部に組み付けられている。また、取付部31b、31bは、所定値以上の荷重(車両前方への衝撃荷重)でせん断されるピン(図示省略)あるいは上記所定値程度の弾性力を発揮している板バネなどによってカプセル31d,31dに連結されていて、アッパブラケット30に上記所定値以上の荷重が作用すると、アッパブラケット30が両カプセル31d、31dに対して車両前方に向けて離脱する。各エネルギー吸収プレート37,37は、一端にて各カプセル31d、31dとともに連結ボルト(図示省略)で車体の一部に固着されていて、アッパブラケット30が両カプセル31d、31dから離脱して車両前方に向けて移動するとき、アッパブラケット30に組み付けた各扱きピン38,38(図1参照)によって扱かれることにより衝撃エネルギーを吸収する。
上記構成のステアリングコラム装置1において、テレスコ用電動モータ61が駆動すると、減速機構64を介してテレスコ用電動モータ61に連結したテレスコスクリュ62が回転する。このときテレスコスクリュ62に螺合したテレスコアジャストナット63がテレスコ支持部423に移動不能に弾性支持されているので、テレスコスクリュ62は回転しながら軸方向に移動する。
テレスコスクリュ62の軸方向移動により、テレスコスクリュ62を支持しているヨーク部122、ヨーク部122に連結するチューブ本体部121、チューブ本体部121に支持されるアッパシャフト111が移動する。これにより、ロアシャフト112を残してコラム本体10がコラム軸方向である車両前後方向に移動してテレスコピック作動がなされる。このときアッパシャフト111はロアシャフト112に対して軸方向移動する。また、ロアブラケット20およびアッパブラケット30は車体側に固定されているので、上記テレスコピック作動によっては移動しない。また、チルトガイドブッシュ424c,53cがアッパブラケット30のガイド孔32a,33aに嵌り込んでいてコラム軸方向への移動が規制されているため、チルトガイドブッシュ424c、53cが組み付けられたチューブガイドブラケット42およびチューブガイドブッシュ41もテレスコピック作動によってコラム軸方向へ移動しない。このためテレスコピック作動中、チューブ本体部121は、締め付けボルト43によるチューブガイドブラケット42との間で発生する締結力(摺動抵抗)に抗してチューブガイドブッシュ41を摺接しながら軸方向移動する。また、テレスコピック作動時にロアブラケット20に取り付けられたチルトセンタピン23がヨーク部122のアーム部122aに形成されたスリット孔122b内をコラム軸方向に移動することによりロアブラケット20に対するコラムチューブ12の軸方向移動が許容される。
また、チルト用電動モータ51が駆動すると、減速機構54を介してチルト用電動モータ51に連結したチルトスクリュ52が回転する。チルトスクリュ52はアッパブラケット30に回転可能且つ軸方向移動不能に支持されているので、チルトスクリュ52の回転によりチルトスクリュ52に螺合したチルトアジャストナット53がネジ送りされて、チルトスクリュ52の軸方向に沿って移動する。チルトアジャストナット53の移動により、チルトアジャストナット53に連結したチューブガイドブラケット42およびチューブガイドブッシュ41も移動し、さらにチューブガイドブラケット42に締結されたチューブ本体部121も移動する。これによりチューブ本体部121、ヨーク部122、アッパシャフト111およびロアシャフト112を含むコラム本体10は、ロアブラケット20にチルトセンタピン23を介して支持された点(支持点)を中心に、車体に対して上下方向に傾動し、チルト作動がなされる。このときチルトガイドブッシュ424cおよび53cは、アッパブラケット30の側方アーム部32,33に形成されたガイド孔32a,33aをその軸方向(図1、図4において上下方向)に移動する。
また、上記チルト作動によりコラム本体10が傾動すると、アッパブラケット30に対するコラム本体10およびチューブガイドブラケット42の傾動角度が変化する。この傾動角度の変化に伴って、チューブガイドブラケット42に取り付けられたチルトアジャストナット53が第1凹部422a内にてコラム本体10の傾動平面に直交する軸回り(傾動軸と平行な軸回り)に回転する。チルトアジャストナット53が回転することにより、チューブガイドブラケット42はコラム本体10のチルト作動に伴って傾動平面内で傾動可能とされる。すなわち、チルトアジャストナット53が回転することによって、アッパブラケット30およびそれに固定された部品(チルトスクリュ52やチルトアジャストナット53)に対するコラム本体10およびそれと一体にチルト作動する部品(チューブガイドブラケット42やチューブガイドブッシュ41)の傾動が許容(吸収)される。
従来は、チルト作動に伴うアッパブラケットに対するコラム本体の傾動を許容するために、アッパブラケットをヒンジ部材を介して傾動可能に車体側の部材に取り付けていた。このためヒンジ部材を設ける必要があったので、部品点数の増加によるコスト増加やステアリングコラム装置の大型化などの問題が発生していた。これに対して上記実施形態では、チルトアジャストナット53をチルト作動により傾動する側の部材に傾動平面に直交する軸回りに回転可能に連結し、チルト作動時にチルトアジャストナット53を回転させることによりチルトアジャストナット53自身をヒンジ部材のように使用している。このため別途ヒンジ部材を設ける必要がないので部品点数の増加を防ぎ、且つコンパクト化を図ることができる。
なお、上記チルト作動によってコラム本体10はロアブラケット20のチルトセンタピン23による支持点を中心に揺動(傾動)するのに対し、チルトアジャストナット53はチルトガイドブッシュ53cに移動にしたがってアッパブラケット30のガイド孔33aの軸方向に沿って直線的に移動する。このためチルト作動の前後において、上記支持点からチルトアジャストナット53までの距離がコラム本体10の軸方向に変化する。この軸方向の変化は、アッパシャフト111(およびコラムチューブ12)がロアシャフト112に対して軸方向に移動することにより、すなわちテレスコピック作動時と同様にチルトセンタピン23がヨーク部122のスリット孔122bを軸方向に移動することにより許容(吸収)される。
以上のように、本実施形態のステアリングコラム装置1によれば、ステアリングメインシャフト11を支持する支持部材としてのチューブガイドブラケット42に第1凹部422aが形成されており、チルトアジャストナット53はこの第1凹部422a内に挿入され、コラム本体10の傾動平面に直交する軸回りに回転可能に連結している。したがって、チルト作動によりコラム本体10がアッパブラケット30に対して傾動し、この傾動によりアッパブラケット30に対するコラム本体10の傾動角度が変化した場合においても、コラム本体10の傾動に併せてチルトアジャストナット53が第1凹部422a内で回転することにより傾動角度の変化が許容される。つまり、チルトアジャストナット53自身がヒンジ部材のような役割を果たすことによってコラム本体10の傾動を許容する。このため従来のようにヒンジ部材が必要となることがなく、ステアリングコラム装置1の部品点数を低減することができるとともに、ステアリングコラム装置1のコンパクト化を図ることができる。
また、チューブガイドブラケット42に形成されたチルト用筒状部422は第1凹部422aに直交する方向に貫通形成された第2凹部422bを有し、チルトスクリュ52がこの第2凹部422bを挿通している。このためチルトスクリュ52をコラム本体10のより近くに配置することができる。よって、ステアリングコラム装置1のより一層の小型化を達成し得るとともに、コラム本体10とチルトスクリュ52とを組み付けた際の剛性を向上させることができる。また、上記第1凹部422aと上記第2凹部422bは、それぞれがチルト用筒状部422内で交差している。このため第1凹部422aの軸方向長さを長く取ることができる。よって、チルトアジャストナット53とチルト用筒状部422との軸方向における嵌め合い長さも長くとることができ、これらを組み付けた際の剛性を向上させることができる。
また、ガイド部421には軸方向に延びたスリット421aが形成されており、チューブガイドブラケット42はスリット421aを挟んだガイド部421の両縁部にて対面した対の突片425a,425bを備えていて、これらの突片が締結ボルト43により締め付け可能に構成されている。このため締結ボルト43による締結力(締め付けトルク)を調整・管理することにより、チューブガイドブラケット42とコラムチューブ12(チューブ本体部121)との間のガタ(例えば寸法誤差による隙)を詰め、あるいはテレスコピック作動を行う際における摺動荷重を設定することができる。
また、上記チルトアジャストナット53は、チルトスクリュ52に螺合するネジ穴部53aを有するとともに、このネジ穴部53aに連通し且つネジ穴部53aの軸方向に直交する方向に沿って形成された抑え穴部53bを有する。そして、この抑え穴部53bに押圧ホルダ55と押圧バネ56からなる押圧手段が配設されている。このためチルトスクリュ52は押圧手段によりネジ穴部53aの壁面に押し付けられ、これによりチルトスクリュ52とチルトアジャストナット53との間のがたつきが防止される。同様に、テレスコアジャストナット63にも押圧手段が配設されている。このためテレスコスクリュ62とテレスコアジャストナット63との間のがたつきをも防止することができる。
ところで、上記構成のステアリングコラム装置1において、車両後方側から二次衝突による衝撃力が作用した場合には、その衝撃力がコラム本体10に入力され、さらにチューブガイドブラケット42、チルトアジャストナット53、チルトスクリュ52を介してアッパブラケット30に伝達される。そして、伝達された衝撃力のうちコラム軸方向に作用する力が設定荷重を超えた場合に、アッパブラケット30がカプセル31dから離脱してコラム本体10とともに軸方向に移動する。
この場合において、電動チルト機構を備えるステアリングコラム装置、特に電動チルト機構としてアッパブラケットに支持されたチルトスクリュを有するステアリングコラム装置において、二次衝突時における衝撃力は、コラム本体からチルトスクリュを介してアッパブラケットに伝達される。このとき、従来のステアリングコラム装置にあっては、アッパブラケットによるチルトスクリュの上端支持点および下端支持点がアッパブラケットとカプセルとの離脱点(取付部)よりも下方に位置している。このため上記衝撃力によって、離脱点にアッパブラケットを下方から突き上げるような回転モーメントが作用する。この回転モーメントの影響によりアッパブラケットの離脱荷重が不安定となるおそれがある。
これに対し、本実施形態のステアリングコラム装置1によれば、図4に示すように、チルトスクリュ52の上端部がベアリングBr4を介してアッパブラケット30に支持される部分である上端支持点(すなわち上板部31の上方支持部31aの上下方向位置)がアッパブラケット30の離脱点(すなわち上板部31の取付部31bの上下方向位置)よりも上方に位置し、チルトスクリュ52の下端部がベアリングBr5を介してアッパブラケット30に支持される部分(下端支持点)はアッパブラケット30の離脱点よりも下方に位置している。つまり、上端支持点と下端支持点は離脱点を挟んだ位置とされている。したがって、チルトスクリュ52を介して衝撃力がアッパブラケット30に伝達される場合、チルトスクリュ52の下端支持点側からは、下から突き上げる方向に働く回転モーメントがアッパブラケット30に作用する一方、上端支持点側からは、上から押し倒すように働く回転モーメントがアッパブラケット30に作用する。このように上端支持点および下端支持点からそれぞれ反対方向に回転モーメントがアッパブラケット30に作用するため、アッパブラケット30に作用する回転モーメントが相殺される。これによりアッパブラケット30に作用する正味の回転モーメントが減少するため、アッパブラケット30の離脱荷重の安定化を図ることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるべきものではない。例えば、上記実施形態においては、テレスコピック可能なステアリングコラム装置において本発明を適用する例を説明したが、テレスコピック機構が取付けられていないステアリングコラム装置においても本発明を適用することができる。なお、この場合は、コラム本体に軸方向移動可能に取り付けられるチューブガイドブラケットを設ける必要が無いので、チルトアジャストナットはコラム本体(コラムチューブ)に直接取付けるように、具体的にはコラムチューブの側方に突き出た筒状部を形成し、この筒状部内に第1凹部を形成し、この第1凹部にチルトアジャストナットを直接挿入する構成とすればよい。その他、要旨を逸脱しない限りにおいて本発明は他の実施形態にも適用可能である。
1…ステアリングコラム装置、10…コラム本体(ステアリングコラム本体)、11…ステアリングメインシャフト、111…アッパシャフト、112…ロアシャフト、12…コラムチューブ(支持部材)、121…チューブ本体部、122…ヨーク部、122a…アーム部、122b…スリット孔、20…ロアブラケット、21…上部取付部、22…支持部、23…チルトセンタピン、30…アッパブラケット、31…上板部、31a…上方支持部、31b…取付部、31c…スリット孔、31d…カプセル、32,33…側方アーム部、32a,33a…ガイド孔、34…底面部(下方支持部)、42…チューブガイドブラケット(支持部材)、421…ガイド部、421a…スリット、422…チルト用筒状部(筒状部)、422a…第1凹部、422b…第2凹部、423…テレスコ支持部、423a…凹部、423b…弾性体、424…取付用筒状部、424a…ネジ穴、424b…チルトガイドピン、424c…チルトガイドブッシュ、425…締め付け部、425a,425b…突片、43…締結ボルト、50…電動チルト機構、51…チルト用電動モータ(電動アクチュエータ)、52…チルトスクリュ、53…チルトアジャストナット、53a…ネジ穴部、53b…抑え穴部、53c…チルトガイドブッシュ、55,65…押圧ホルダ(押圧手段)、56,66…押圧バネ(押圧手段)、57,67…ボルト(押圧手段)、60…電動テレスコピック機構、61…テレスコ用電動モータ、62…テレスコスクリュ、63…テレスコアジャストナット、63a…ネジ穴部、63b…抑え穴部