以下に図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。まず、保護帽の構成について説明する。図1は、保護帽10の外観を示す図であり、図2は、保護帽10の構成を示す断面図である。保護帽10は、保護帽本体12と、保護帽本体12の内側に装着される衝撃吸収ライナ14と、保護帽本体12に取り付けられるハンモック、ヘッドバンド、環ひも等の保護帽内装体(図示せず)と、を備えている。
まず、保護帽本体12の構成について説明する。
保護帽本体12は、強化繊維で熱硬化性樹脂を強化した繊維強化複合材料(FRP)で、略半球殻状に形成される。保護帽本体12は、例えば、略2mmの肉厚を有している。
強化繊維には、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維等の高強度繊維を用いることが好ましい。強化繊維には、加工性や製造コスト等の点からガラス繊維を用いることがより好ましい。ガラス繊維には、E−ガラス、S−ガラス、AR−ガラス等のガラス繊維を用いることができる。ガラス繊維は、短繊維、長繊維、クロス織物、テープ、チョップ等の形態で用いられる。勿論、強化繊維には、上記強化繊維に限定されることなく、他の繊維を用いてもよい。
繊維強化複合材料を構成する熱硬化性樹脂には、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の合成樹脂を用いることが好ましい。勿論、熱硬化性樹脂は、上記合成樹脂に限定されることなく、他の合成樹脂を用いてもよい。
保護帽本体12は、遮熱材料が含有された繊維強化複合材料で形成される。遮熱材料には、赤外線領域、特に、近赤外線領域(700nmから2500nm)の反射率が高く、赤外線遮蔽能を有する材料が使用される。赤外線の反射性能をより高めることにより、例えば、炎天下の屋外等での使用時に熱線を反射し保護帽10の温度上昇を抑えることができる。
遮熱材料には、一般的に白色顔料として使用される酸化チタンよりも大きい平均粒子径を有する酸化チタン(TiO2等)が用いられる。白色顔料として使用される酸化チタンには、平均粒子径が0.5μmより小さく、0.2μm程度の可視光反射特性に優れた酸化チタンが使用されるが、白色顔料として使用される酸化チタンよりも大きい平均粒子径を有する酸化チタンを用いることで、近赤外線領域波長の赤外線反射性能をより高めることができる。遮熱材料に用いられる酸化チタンには、ルチル形またはアナターゼ形の結晶構造を有する酸化チタンを用いることができるが、ルチル形の酸化チタンを用いることが好ましい。なお、遮熱材料に用いられる酸化チタンは、保護帽本体12を白色に着色する場合に使用されることがより好ましい。
遮熱材料に用いられる酸化チタンの平均粒子径は、0.5μmから3.0μmが好ましい。遮熱材料に用いられる酸化チタンの平均粒子径が0.5μmより小さい場合には、十分な赤外線反射特性が得られないからである。また、遮熱材料に用いられる酸化チタンの平均粒子径が3.0μmより大きい場合には、保護帽本体12中により均一に分散させることが難しくなるからである。遮熱材料に用いられる酸化チタンの平均粒子径は、1.0μmから1.5μmがより好ましく、最も好ましいのは1.0μmである。
遮熱材料に用いられる酸化チタンの平均粒子径は、例えば、電子顕微鏡等による画像解析で測定することができる。このような画像解析装置には、例えば、株式会社ニレコ製の小型汎用画像解析装置「LUZEX AP」等を用いることができる。
遮熱材料には、三酸化二鉄(Fe2O3)系材料、四酸化三鉄(Fe3O4)系材料、オキシ水酸化鉄(FeOOH)系材料またはコバルト−アルミニウム複合酸化物(CoAl2O3)系材料等の無機反射材料を用いてもよい。これらの無機反射材料は、赤外線領域の反射率が高く、赤外線反射特性に優れているので、熱線を反射し保護帽10の温度上昇を抑えることができる。無機反射材料には、例えば、平均粒子径2μm以下の材料が使用される。
三酸化二鉄(Fe2O3)系材料は赤褐色を有しており、四酸化三鉄(Fe3O4)系材料は黒色を有しており、オキシ水酸化鉄(FeOOH)系材料は黄褐色を有しており、コバルト−アルミニウム複合酸化物(CoAl2O3)系材料は青色を有しているので、赤褐色に着色された保護帽本体12を成形する場合には、三酸化二鉄(Fe2O3)系材料を用いることが好ましく、黒色に着色された保護帽本体12を成形する場合には、四酸化三鉄(Fe3O4)系材料を用いることが好ましく、黄褐色に着色された保護帽本体12を成形する場合には、オキシ水酸化鉄(FeOOH)系材料を用いることが好ましく、青色に着色された保護帽本体12を成形する場合には、コバルト−アルミニウム複合酸化物(CoAl2O3)系材料を用いることが好ましい。
また、遮熱材料には、上述した遮熱材料に用いられる酸化チタンと、上述した無機反射材料とを組み合わせて用いることもできる。酸化チタンは白色のため、上述した無機反射材料と組み合わせて使用されることにより、淡色を作り出すことができる。例えば、灰色に着色された保護帽本体12を成形する場合には、遮熱材料は、上述した遮熱材料に用いられる酸化チタンと、四酸化三鉄(Fe3O4)系材料と、を組み合わせた材料を使用することが好ましい。
上述したように保護帽本体12は、遮熱材料である平均粒子径が0.5μm以上3.0μm以下の酸化チタン等を含む繊維強化複合材料で形成されているので、遮熱塗料を塗布して形成された塗膜のように保護帽本体から衝撃等により剥離することがない。そのため、より長期間の使用においても保護帽10の遮熱効果を維持することができるので、保護帽10の遮熱性をより向上させることができる。また、遮熱塗料により形成される塗膜は、一般的に、薄く形成されているのに対して、保護帽本体12を遮熱材料を含む繊維強化複合材料で形成することにより遮熱層を保護帽本体の肉厚と略同じとすることができるので、遮熱層を塗膜よりも厚く形成して保護帽10の遮熱性をより向上させることができる。
次に、衝撃吸収ライナ14の構成について説明する。
衝撃吸収ライナ14は、保護帽本体12の内側に装着され、頭部への衝撃を吸収する機能を有している。衝撃吸収ライナ14は、例えば、保護帽本体12と着装体(図示せず)とに挟持または接着等されて取り付けられる。衝撃吸収ライナ14は、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体で形成され、着用者の頭部を覆う略半球殻状に形成されたライナ本体16と、ライナ本体16に設けられ、保護帽本体12側に突出し、保護帽本体12の内周面と当接する少なくとも4つの突起部と、を有している。図3は、衝撃吸収ライナ14の構成を示す図であり、図3(a)は、衝撃吸収ライナ14の上面図であり、図3(b)は、衝撃吸収ライナ14の断面図である。
衝撃吸収ライナ14は、発泡スチロール材や発泡ポリエチレン材より耐熱温度の高いポリ乳酸系樹脂発泡成形体で形成される。ポリ乳酸系樹脂発泡成形体を構成するポリ乳酸系樹脂は、化1の化学式で示されるように、D−乳酸及びL−乳酸をモノマーとして共重合させるか、D−乳酸又はL−乳酸の何れか一方をモノマーとして重合させるか、或いは、D−ラクチド、L−ラクチド及びDL−ラクチドからなる群より選ばれた一又は二以上のラクチドを開環重合させることによって得ることができ、何れのポリ乳酸系樹脂であってもよい。
ポリ乳酸系樹脂を製造するに際して、モノマーとしてD体とL体とを併用した場合においてD体若しくはL体のうちの少ない方の光学異性体の割合が5モル%未満である場合、又は、モノマーとしてD体若しくはL体のうちの何れか一方の光学異性体のみを用いた場合、即ち、上記ポリ乳酸系樹脂が、その構成モノマー成分としてD体及びL体の双方の光学異性体を含有し且つD体又はL体のうちの少ない方の光学異性体の含有量が5モル%未満であるか、或いは、構成モノマー成分としてD体又はL体のうちの何れか一方の光学異性体のみを含有している場合は、得られるポリ乳酸系樹脂は、その結晶性が高くなる一方、モノマーとしてD体とL体とを併用した場合においてD体又はL体のうちの少ない方の割合が5モル%以上である時は、少ない方の光学異性体が増加するにしたがって、得られるポリ乳酸系樹脂は、その結晶性が低くなり、やがて非結晶となる。
従って、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体では、耐熱性に優れたものとするために、構成モノマー成分としてD体及びL体の双方の光学異性体を含有し且つD体又はL体のうちの少ない方の光学異性体の含有量が5モル%未満であるポリ乳酸系樹脂か、或いは、構成モノマー成分としてD体又はL体のうちの何れか一方の光学異性体のみを含有しているポリ乳酸系樹脂を用いることが好ましい。
構成モノマー成分としてD体及びL体を含有するポリ乳酸系樹脂は、D体又はL体のうちの何れか少ない方の光学異性体の割合が少なくなればなる程、ポリ乳酸系樹脂は、その結晶性のみならず融点も上昇する。従って、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の耐熱性も向上し、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体は、高い温度であってもその形態を維持することができる。
ライナ本体16は、頭部への衝撃を吸収するために、衝撃吸収性を有する発泡材料で略半球殻状に形成される。ライナ本体16は、上述したポリ乳酸系樹脂発泡成形体で頂部の肉厚が周縁部の肉厚より厚くなるように形成される。ライナ本体16は、例えば、略半球殻形状にキャビティが形成された金型等を用いてポリ乳酸系樹脂を発泡成形させることにより、略半球殻状のライナ形状に成形される。
突起部は、ライナ本体16の保護帽本体12側に突出して少なくとも4つ形成され、保護帽本体12の内周面と当接するように設けられる。ライナ本体16の保護帽本体12側に突出させて、例えば、突起部20a〜20kを設けることにより、衝撃吸収ライナ14と、保護帽本体12の内周面と、が略全面接触している従来の保護帽と比較して、衝撃吸収ライナ14と、保護帽本体12の内周面と、の接触面積をより低減することができる。保護帽本体12からライナ本体16への熱伝達は突起部20a〜20kを経由して行われるため、保護帽本体12の温度が上昇した場合でも保護帽本体12からライナ本体16への熱伝達が抑制されライナ本体16の温度上昇が抑えられる。
また、突起部20a〜20kを設けることにより、ライナ本体16と保護帽本体12との間に空間ができ空気が流動できるので、保護帽本体12から衝撃吸収ライナ14への熱伝達が抑えられ、また、保護帽体12、突起部20a〜20k又は衝撃吸収ライナ14の温度上昇を抑えられるので、衝撃吸収ライナ14が熱収縮し、変形するのを抑えることができる。
また、保護帽本体12の温度が上昇した場合には、まず、ライナ本体16に設けられた突起部20a〜20kが温度上昇により熱収縮して変形するため、ライナ本体16の熱収縮による変形が抑制される。
突起部は、ライナ本体16の保護帽本体12側に複数に設けられることが好ましい。保護帽本体12からの熱伝達により突起部20a〜20kの1つが熱収縮により変形した場合でも、他の突起部によりライナ本体16と、保護帽本体12の内周面と、の接触面積の増加を抑えられるので、保護帽本体12からの熱伝達によるライナ本体16の温度上昇を抑えることができる。
突起部は、略半球殻状のライナ本体16の周方向に所定間隔で設けられることが好ましい。図3(a)に示すように、突起部20b〜20eと、突起部20f〜20kとは、ライナ本体16の略同一円周上に所定間隔で設けられる。このように、突起部20b〜20eと、突起部20f〜20kとをライナ本体16の周方向に所定間隔で設けることにより、保護帽本体12からライナ本体16に流入する熱をより分散させてライナ本体16の温度上昇を抑えることができる。
また、突起部20b〜20eと、突起部20f〜20kとを略半球殻状のライナ本体16の周方向に所定間隔で設けることにより、一側方向から保護帽本体12が輻射熱等で加熱されて、一側方向側に配置された突起部が熱収縮して変形した場合でも、例えば、一側方向に対して反対側に配置された他の突起部により、ライナ本体16と、保護帽本体12の内周面と、の接触面積の増加を防止できる。例えば、突起部20bが保護帽本体12からの熱伝達により熱収縮して変形した場合でも、他の突起部20c、20d、20eにより、ライナ本体16と、保護帽本体12の内周面と、の接触面積の増加を防止できる。なお、突起部20b〜20eと、突起部20f〜20kとは、略半球殻状のライナ本体16の周方向に略等間隔で設けられることがより好ましい。
保護帽本体12の頂部上方から輻射熱等で加熱される環境で使用される保護帽10の場合には、突起部は、ライナ本体16の周縁部に設けられることが好ましい。図3(a)では、突起部20f〜20kがライナ本体16の周縁部に設けられている。保護帽本体12の頂部上方から加熱される環境で使用される保護帽10の場合には、保護帽本体12の頂部よりも保護帽本体12の周縁部の方が保護帽本体12の温度が低くなる。そのため、ライナ本体16の周縁部に突起部20f〜20kを設けることにより、保護帽本体12の頂部に突起部を設けるよりも保護帽本体12からの熱伝達による突起部20f〜20kの熱収縮等による変形を防止できる。
また、保護帽本体12の側方または周縁部が輻射熱等で加熱される環境で使用される保護帽10の場合には、突起部は、ライナ本体16の頂部に設けられることが好ましい。図3(a)では、突起部20aが、ライナ本体16の頂部に設けられている。保護帽本体12の側方または周縁部が加熱される環境で使用される保護帽10の場合には、保護帽本体12の側方または周縁部よりも、保護帽本体12の頂部の方が保護帽本体12の温度が低くなる。そのため、ライナ本体16の頂部に突起部20aを設けることにより、保護帽本体12の周縁部に突起部を設けるよりも保護帽本体12からの熱伝達による突起部20aの熱収縮等による変形を防止できる。
したがって、図3に示すように、突起部20a〜20kをライナ本体16の周方向と経線方向にバランス良く配置することがより好ましい。これにより、保護帽本体12の何れの領域が加熱された場合でも、ライナ本体16の熱収縮を防止することができる。なお、図3に示す衝撃吸収ライナ14では、ライナ本体16の頂部に1個の突起部20aが配置され、ライナ本体16の周縁部に4個の突起部20f〜20kが配置され、ライナ本体16の頂部と周縁部との間に4個の突起部20b〜20eが配置され、合計で9個の突起部20a〜20kが設けられているが、ライナ本体16に設けられる突起部は、少なくとも4つ形成されていればよく、9個に限定されることはない。また、図3に示す衝撃吸収ライナ14では、突起部20aと、突起部20bと、突起部20dと、突起部20fと、突起部20hとは、略同一経線上に配置されているが、略同一経線上の配置に限定されることはない。また、突起部20aと、突起部20cと、突起部20eと、突起部20gと、突起部20kとについても同様に、略同一経線上の配置に限定されることはない。
突起部20a〜20kは、例えば、略円柱状に形成される。勿論、突起部20a〜20kの形状は、略円柱状に限定されることなく、略円錐状、角柱状、角錐状、半球状等でもよい。突起部20a〜20kの頂面は、保護帽本体12の内周面よりも大きい表面粗さで形成されることが好ましい。保護帽本体12の内周面と当接する突起部20a〜20kの頂面を保護帽本体12の内周面よりも粗く形成することにより、保護帽本体12の内周面と突起部20a〜20kとの接触面積を更に低減できるので、保護帽本体12からライナ本体16への熱伝達を更に抑えることができる。
次に、ライナ本体16に4つの突起部を設けた衝撃吸収ライナ22について説明する。図4は、衝撃吸収ライナ22の構成を示す図であり、図4(a)は、衝撃吸収ライナ22の上面図であり、図4(b)は、衝撃吸収ライナ22の断面図である。4つの突起部24a〜24dの配置場所は、突起部24a〜24dによって衝撃吸収ライナ22が保護帽本体12に上下左右当接され、ずれないよう固定される必要があることから、外周面に3つ、頭頂部に1つ設ける。具体的には、輻射熱を受けやすい保護帽本体12の前面付近に近いライナ部に設けると熱が伝わりやすくなり、突起部が熱収縮しやすくなる。そのため、ライナ本体16の上面から見て、ライナ下端部の後方に1個の突起部24a、その突起部24aから左右の120度の位置に各1個の突起部24b、24cの計3個を外周面に設け、頭頂部に1つの突起部24dを設ける。この構成によれば、ライナ本体16は、作業時の振動により、上下左右に揺れることは無く、ライナ本体16がずれることはないため、衝撃吸収性を損なうことは無い。また保護帽本体12の輻射熱を多く受ける部分である前方部付近のライナ本体16に突起部を設けないため、突起部の熱収縮を抑えられ、またライナ本体16の熱収縮も抑えられる。
また、衝撃吸収ライナ22は、ライナ本体16に5つの突起部を有することが好ましい。突起部の配置場所としては、図4に示すように、ライナ本体16の上面から見て、ライナ下端部の後方に1個の突起部24a、その突起部24aから左右の120度の位置に各1個の突起部24b、24cの計3個を外周面に設け、頭頂部に1つの突起部24dを設ける。残りの1つについては任意の場所に設ける。5つの突起部が上記のように配置されることにより、ライナ本体16が上下左右にずれない。また、突起部の1つが熱収縮で変形したとしても、残りの4つの突起部により、ライナ本体16と保護帽本体12の接触する面積の増加を防止することができ、ライナ本体16の熱収縮を抑えられる。
再び、図3に戻り、突起部20a〜20kの外径は、10mm以上20mm以下であることが好ましい。突起部20a〜20kの外径が10mm以上であるのは、突起部20a〜20kの外径が10mmより小さいと突起部20a〜20kの強度が低くなり、通常動作時の振動により突起部が変形するおそれがあるためである。また、突起部20a〜20kの外径が20mm以下であるのは、突起部20a〜20kの外径が20mmより大きいとライナ本体16と保護帽本体12との間の空間が狭くなり通気性が低下し、熱がライナ本体16と保護帽本体12との間に熱が滞留することにより、ライナ本体16が温度上昇しやすくなるからである。
突起部20a〜20kの断面積の合計は、所定面積範囲内とすることが好ましい。突起部20a〜20kの断面積の合計がより小さい場合には、突起部20a〜20kの強度が低くなるので、突起部20a〜20kが通常の動作時による振動により変形する場合があるからである。また、突起部20a〜20kの断面積の合計がより大きい場合には、ライナ本体16と保護帽本体12との間の空間が狭くなり通気性が低下し、熱がライナ本体16と保護帽本体12との間に熱が滞留することにより、ライナ本体16が温度上昇しやすくなるからである。
突起部20a〜20kの高さは、2mm以上10mm以下であることが好ましい。突起部20a〜20kの高さが2mm以上であるのは、突起部20a〜20kの高さが2mmより小さいと突起部20a〜20kが熱収縮により少し変形した場合でも、ライナ本体16と保護帽本体12の内周面との接触面積が増加してしまい、保護帽本体12からライナ本体16への熱流量が増加し、ライナ本体16が熱収縮し、変形する場合があるからである。また、突起部20a〜20kの高さが10mm以下であるのは、突起部20a〜20kは、10mmの高さを有していれば十分であり、突起部20a〜20kの高さをそれ以上高くした場合には、ライナ本体16と保護帽本体12とのバランスのため、保護帽本体12を大きくしなければならず、その結果保護帽10の重量が増加するため、作業者の作業効率が低下するからである。
突起部20a〜20kは、ライナ本体16と一体としてポリ乳酸系樹脂発泡成形体で形成されることが好ましい。このように突起部20a〜20kをライナ本体16と一体として形成することにより、衝撃吸収ライナ14の製造コストを低減することができる。勿論、他の条件次第では、突起部20a〜20kは、ライナ本体16と別体として形成され、接着剤等で接着してライナ本体16に取り付けられてもよい。また、突起部20a〜20kをライナ本体16と別体として形成する場合には、ライナ本体16と異なる材料で形成してもよい。例えば、突起部20a〜20kを、ライナ本体16を形成するポリ乳酸系樹脂発泡成形体よりも高い耐熱性を有する材料で形成することができる。
このように、衝撃吸収ライナは、略半球殻状に形成されたライナ本体と、ライナ本体に設けられ、保護帽本体側に突出し、保護帽本体と当接する少なくとも4つの突起部と、を有しているので、保護帽本体と衝撃吸収ライナとの接触面積を低減することができる。それにより、保護帽本体から衝撃吸収ライナへの熱伝達が抑えられるので、衝撃吸収ライナの温度上昇を抑制して衝撃吸収性能を保持できる。突起部は、略半球殻状のライナ本体の周方向に所定間隔で複数配置されるので、保護帽本体からライナ本体に流入する熱を分散させて衝撃吸収ライナの温度上昇を抑えることができる。また、突起部を設けることにより、ライナ本体と保護帽本体との間に空間ができ、ライナ本体と保護帽本体との間を空気が流動することにより、ライナ本体の温度上昇が抑えられる。また、すくなくとも5つの突起部を有する構成であれば、一側方向から保護帽本体が加熱されて一側方向側に配置された突起部が熱収縮により変形した場合でも、他の突起部によりライナ本体と保護帽本体の内周面との接触面積の増加を防止することができるので、衝撃吸収ライナの温度上昇を抑制して衝撃吸収性能を保持できる。
突起部20a〜20kと保護帽本体12との間には、保護帽本体12からの熱伝達を抑える断熱部材30が設けられることが好ましい。図5は、衝撃吸収ライナ14の突起部23と、保護帽本体12の内周面と、の間に断熱部材30を設けた構成を示す断面図である。突起部20dと保護帽本体12との間に断熱部材30を設けることにより、保護帽本体12からの熱伝達が断熱部材30で抑制される。そのため、保護帽本体12から突起部20dへの熱の流入が抑えられるので、ライナ本体16の温度上昇が抑制される。なお、図5は、代表的に突起部20dについて示したものであり、他の突起部20a〜20c、20e〜20kについても保護帽本体12の内周面との間に断熱部材30を設けることが好ましい。
断熱部材30には、ポリエスエル繊維等の合成樹脂繊維で形成された織物や不織布、ガラス繊維で形成されたグラスウールを用いることが好ましい。これらの繊維材料は、所定形状に容易に成形加工することができるからである。勿論、断熱部材30には、合成樹脂繊維で形成された織物やグラスウール等に限定されることなく、熱伝導性の低い無機材料で形成されたセラミックスシート等を用いてもよい。
断熱部材30は、例えば、シート状に形成され、突起部20a〜20kの頂面と略同じ大きさかまたは若干大きくなるように形成されることが好ましい。断熱部材30は、例えば、突起部20a〜20k及び保護帽本体12の内周面と、例えば接着剤等で接着されて取り付けられる。接着剤には、保護帽本体12の温度より高い耐熱性を有する高温タイプの接着剤が用いられる。勿論、接着剤等を用いないで、保護帽本体12の内周面と突起部20a〜20kとで断熱部材30を挟持して保持するようにしてもよい。
このように、衝撃吸収ライナの突起部と、保護帽本体と、の間に断熱部材が設けられることにより、保護帽本体から突起部を経由してライナ本体へ流入する熱を抑えることができるので、衝撃吸収ライナの温度上昇を抑制できる。
突起部20a〜20kと断熱部材30との間には、放熱部材40が設けられることが好ましい。図6は、衝撃吸収ライナ14の突起部20dと、断熱部材30と、の間に放熱部材40を設けた構成を示す断面図である。突起部20dと断熱部材30との間に放熱部材40を設けることにより、保護帽本体12から断熱部材30を経由して流入した熱が放熱部材40で放熱されて突起部23への熱伝達が抑えられる。このように、保護帽本体12から突起部23への熱の流入が抑えられるので、ライナ本体16の温度上昇が抑制される。
放熱部材40は、突起部23の頂面と断熱部材30とより大きく形成され、放熱部材40の周縁部を突起部20dの頂面と断熱部材30とより突出させて設けられる。放熱部材40の周縁部を保護帽本体12とライナ本体16との間に形成される空間34へ突出させることにより、断熱部材30から流入した熱を保護帽本体12とライナ本体16との間に形成される空間34へ放熱して突起部20dへの熱伝達が抑えられる。このように、保護帽本体12から突起部23への熱の流入が抑えられるので、ライナ本体16の温度上昇が抑制される。なお、図6は代表的に突起部20dについて示したものであり、他の突起部20a〜20c、20e〜20fについても断熱部材30との間に放熱部材40を設けることが好ましい。
放熱部材40には、金属シートを用いることが好ましい。金属材料は、熱伝導特性に優れているので断熱部材30から流入した熱を効率的に放熱することができる。また、金属シートには、アルミニウムシート、アルミニウム合金シート、銅シート、または銅合金シートを用いることが好ましい。アルミニウムや銅は、他の金属材料よりも熱伝導性に優れているため、放熱部材40の放熱特性が更に向上するからである。なお、金属シートには、軽量化の点からアルミ箔や銅箔等の金属箔を用いることが好ましい。
放熱部材40は、突起部20a〜20k及び断熱部材30と、例えば接着剤等で接着されて取り付けられる。接着剤には、保護帽本体12の温度より高い耐熱性を有する高温タイプの接着剤が用いられる。勿論、接着剤等を用いないで、突起部20a〜20kと断熱部材30とで放熱部材40を挟持して保持するようにしてもよい。
このように、衝撃吸収ライナの突起部と、断熱部材と、の間に、周縁部を保護帽本体とライナ本体との間に突出させた金属箔等の放熱部材を設けることにより、保護帽本体と断熱部材とを経由して流入した熱を放熱部材で放熱させてライナ本体へ流入する熱を抑えることができるので、衝撃吸収ライナの温度上昇を抑制できる。
次に、保護帽10の製造方法について説明する。
保護帽10の製造方法は、略半球殻状の保護帽本体12を形成する保護帽本体形成工程と、保護帽本体12の内側に設けられ、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体で形成され、略半球殻状に形成されたライナ本体16と、ライナ本体16に設けられ、保護帽本体12側に突出し、保護帽本体12の内周面と当接する少なくとも4つの突起部と、を有する衝撃を吸収する衝撃吸収ライナ14を形成する衝撃吸収ライナ形成工程と、を備えている。
まず、保護帽本体12を形成する保護帽本体形成工程について説明する。
図7は、保護帽本体12の形成方法を示す図である。保護帽本体12の形成方法は、強化繊維で略半球殻状の繊維プリフォーム40を形成する繊維プリフォーム形成工程と、繊維プリフォーム40に熱硬化性樹脂と硬化剤とを含む樹脂組成物44を塗布または含浸する樹脂組成物含浸工程と、繊維プリフォーム40に塗布または含浸された樹脂組成物44を加熱硬化する樹脂硬化工程と、を備えている。
繊維プリフォーム形成工程は、図7(a)に示すように、強化繊維で、略半球殻状に繊維プリフォーム40を形成する工程である。強化繊維には、上述したガラス繊維等が用いられる。ガラスロービング等のガラス繊維をカッタ等で所定の繊維長に切断しガラス短繊維とした後、ガラス短繊維を用いて略半球殻状の芯材を形成する。
次に、ガラス短繊維で形成した略半球殻状の芯材にバインダをスプレーガン等でスプレーし、ガラス短繊維間を固着させて繊維プリフォーム40が形成される。繊維プリフォーム40の重量は、保護帽本体12の重量の略30%が好ましいが、特に、限定されることはない。
樹脂組成物含浸工程は、繊維プリフォーム40に、熱硬化性樹脂と、硬化剤と、を含む樹脂組成物44を塗布または含浸する工程である。まず、繊維プリフォーム40に塗布または含浸される樹脂組成物44について説明する。
樹脂組成物44は、熱硬化性樹脂と、硬化剤と、遮熱材料と、を含んで構成される。熱硬化性樹脂は、保護帽本体12を形成する繊維強化複合材料のマトリックス樹脂となる液状の合成樹脂であり、上述した不飽和ポリエステル樹脂等が用いられる。不飽和ポリエステル樹脂には、一般的な、ジャパンコンポジット株式会社製の商品名ポリホープ、昭和高分子株式会社製の商品名リゴラック、日本ユピカ株式会社の商品名ユピカ、ディーエイチマテリアル株式会社の商品名サンドーマ等を使用することができる。
硬化剤は、熱硬化性樹脂を硬化させる材料であり、例えば、不飽和ポリエステル樹脂の場合には、有機過酸化物等が用いられる。不飽和ポリエステル樹脂用の硬化剤には、一般的な、化薬アクゾ株式会社の商品名カヤメック、日本油脂株式会社の商品名パーキュアー等を使用することができる。硬化剤は、例えば、熱硬化性樹脂100重量部に対して1重量部以上2重量部以下の割合で添加されることが好ましい。
遮熱材料には、上述した平均粒子径0.5μm以上3.0μm以下の酸化チタン等が用いられる。ここで、樹脂組成物44は、熱硬化性樹脂100重量部に対して遮熱材料を5.4重量部より多く45.0重量部より少ない割合で含有することが好ましい。熱硬化性樹脂100重量部に対して遮熱材料の割合が5.4重量部以下の場合には、十分な赤外線反射特性が得られないからである。また、熱硬化性樹脂100重量部に対して遮熱材料の割合が45.0重量部以上の場合には、樹脂組成物44の粘度が高くなることにより成形性が悪くなり、保護帽本体12の機械的強度が低下するからである。
樹脂組成物44は、熱硬化性樹脂100重量部に対して遮熱材料を11.3重量部以上25.8重量部以下の割合で含有させることがより好ましい。熱硬化性樹脂100重量部に対して遮熱材料の割合が11.3重量部以上25.8重量部以下の範囲では、保護帽本体12の赤外線反射特性と機械的強度とを満足させることができるからである。なお、樹脂組成物44は、熱硬化性樹脂100重量部に対して遮熱材料を11.3重量部の割合で含有させることが最も好ましい。
樹脂組成物44には、熱硬化性樹脂と、硬化剤と、遮熱材料とに加えて、内部離型剤と、顔料と、充填剤等とを添加してもよい。
ここで、遮熱材料に平均粒子径0.5μm以上3.0μm以下の酸化チタンを用いる場合においても、酸化チタン等の白色顔料を用いることが好ましい。白色顔料に使用される酸化チタンは、その平均粒子径が遮熱材料に用いられる酸化チタンの平均粒子径より小さいので、白色顔料に使用される酸化チタンの可視光領域反射特性は、遮熱材料に用いられる平均粒子径の大きい酸化チタンより高くなる。そのため、酸化チタン等の白色顔料を合わせて用いることにより、保護帽本体12の着色効果をより向上させることができる。
樹脂組成物44は、熱硬化性樹脂と、硬化剤と、遮熱材料と、内部離型剤と、顔料等と、をミキサ等でより均一となるように攪拌混合して、例えば、ペースト状に調製される。そして、繊維プリフォーム40は、図7(b)に示すように金型の下型42にセットされた後、図7(c)に示すように樹脂組成物44が塗布または含浸される。なお、樹脂組成物44の塗布または含浸には、一般的な合成樹脂液の塗布方法または含浸方法を用いることができる。
樹脂硬化工程は、繊維プリフォーム40に塗布または含浸された樹脂組成物44を加熱硬化する工程である。図7(d)に示すように、樹脂組成物44が塗布または含浸された繊維プリフォーム46に上型48がセットされて加熱されることにより、繊維プリフォーム40に塗布または含浸された樹脂組成物44が加熱されて樹脂硬化する。
加熱温度は、熱硬化性樹脂や硬化剤等の種類に基づいて所定温度に定められる。また、樹脂組成物44が塗布または含浸された繊維プリフォーム46の加熱時には所定圧力で加圧することが好ましい。繊維プリフォーム40に塗布または含浸された樹脂組成物44の加熱硬化処理には、例えば、熱プレス装置等が使用される。
そして、図7(e)に示すように加熱硬化後に金型の上型48と下型42とが外されて保護帽予備本体50が取り出された後、保護帽予備本体50のバリ等が除去されて保護帽本体12の形成が完了する。
次に、保護帽本体について、遮熱性能試験と、衝撃吸収性試験と、耐貫通試験とを行い、保護帽本体の遮熱特性と機械的特性について評価した。まず、保護帽本体実施例1から保護帽本体実施例4における保護帽本体の形成方法について説明する。
繊維プリフォーム40には、ガラスロービングからカッタで所定長さに切断したガラス短繊維を用いて略半球殻状に形成されたガラス繊維プリフォームを用いた。ガラス繊維プリフォームの重量は、保護帽本体の重量の30%とした。保護帽本体実施例1から保護帽本体実施例4には、いずれも同じ条件で形成されたガラス繊維プリフォームを使用した。
次に、ガラス繊維プリフォームに含浸する樹脂組成物44を作製した。樹脂組成物44は、熱硬化性樹脂と、硬化剤と、遮熱材料と、内部離型剤と、顔料と、をミキサで攪拌混合してペースト状に調製された。図8は、保護帽本体実施例1から保護帽本体実施例4に使用した樹脂組成物の組成を示す図である。保護帽本体実施例1から保護帽本体実施例4に使用した樹脂組成物を構成する熱硬化性樹脂と、硬化剤と、遮熱材料と、内部離型剤と、顔料とは、いずれも同じ材料を使用した。
熱硬化性樹脂には、不飽和ポリエステル樹脂を用いた。不飽和ポリエステル樹脂には、保護帽の製造で使用される上述した一般的な市販品を使用した。また、硬化剤には、不飽和ポリエステル樹脂用の硬化剤に用いられる上述した一般的な市販品を使用した。
遮熱材料には、平均粒子径1.0μmの酸化チタンを用いた。平均粒子径1.0μmの酸化チタンには、テイカ株式会社製の酸化チタンJR−1000を使用した。使用した酸化チタンの結晶構造はルチル形であり、屈折率は2.72であり、比重は4.2である。なお、平均粒子径は、株式会社ニレコ製の小型汎用画像解析装置「LUZEX AP」により重量基準水平方向等分径を測定した値である。
なお、内部離型剤と顔料とには、保護帽の製造で使用される一般的な市販品を使用した。
保護帽本体実施例1に使用した樹脂組成物には、不飽和ポリエステル樹脂100重量部と、酸化チタン5.4重量部と、硬化剤1〜2重量部と、所定量の内部離型剤と、所定量の顔料と、を攪拌混合したものを用いた。
保護帽本体実施例2に使用した樹脂組成物には、不飽和ポリエステル樹脂100重量部と、酸化チタン11.3重量部と、硬化剤1〜2重量部と、所定量の内部離型剤と、所定量の顔料と、を攪拌混合したものを用いた。
保護帽本体実施例3に使用した樹脂組成物には、不飽和ポリエステル樹脂100重量部と、酸化チタン25.8重量部と、硬化剤1〜2重量部と、所定量の内部離型剤と、所定量の顔料と、を攪拌混合したものを用いた。
保護帽本体実施例4に使用した樹脂組成物には、不飽和ポリエステル樹脂100重量部と、酸化チタン45.0重量部と、硬化剤1〜2重量部と、所定量の内部離型剤と、所定量の顔料と、を攪拌混合したものを用いた。
そして、ガラス繊維プリフォームを金型の下型42に配置した後、上述した樹脂組成物をガラス繊維プリフォームに含浸した。
次に、樹脂組成物が含浸されたガラス繊維プリフォームを金型の上型48と下型42とで挟んで熱プレス機により熱プレスした。保護帽本体実施例1から保護帽本体実施例4では、いずれも同じ加熱加圧条件で樹脂硬化した。なお、加熱加圧条件には、一般的な不飽和ポリエステル樹脂の硬化条件を用いた。加熱硬化後、金型の上型48と下型42とを外して、樹脂硬化した保護帽本体を取り出した。そして、保護帽本体に保護帽装着品等を取り付けて保護帽とした。
次に、保護帽本体比較例1の形成方法について説明する。
保護帽本体比較例1に使用した繊維プリフォームには、保護帽本体実施例1から保護帽本体実施例4と同様方法で形成したガラス繊維プリフォームを使用した。
保護帽本体比較例1に使用した樹脂組成物は、不飽和ポリエステル樹脂100重量部と、硬化剤1〜2重量部と、所定量の内部離型剤と、所定量の顔料と、を攪拌混合してペースト状に調製したものを用いた。したがって、比較例1で用いた樹脂組成物には、酸化チタンJR−1000は含有されていない。なお、不飽和ポリエステル樹脂と、硬化剤と、内部離型剤と、顔料とには、保護帽本体実施例1から保護帽本体実施例4に使用した材料と同一の材料を使用した。
樹脂組成物をガラス繊維プリフォームに含浸し、ガラス繊維プリフォームに含浸された樹脂組成物を加熱硬化した。加熱硬化条件は、保護帽本体実施例1から保護帽本体実施例4で用いた加熱硬化条件と同様な条件とした。その後、遮熱性顔料を含むポリウレタン樹脂系の遮熱塗料を塗装し、保護帽装着品等を取り付けて保護帽とした。
次に、保護帽本体実施例1から保護帽本体実施例4、保護帽本体比較例1を各々用いた保護帽について遮熱性評価試験を実施した。
まず、遮熱性評価試験の試験方法について説明する。図9は、遮熱性評価試験方法を示す図である。遮熱性評価試験は、合成樹脂シート等で断熱性に優れた箱状容器(図示せず)を作製し、箱状容器内の鉛直方向下側に保護帽を装着した発泡人頭模型を配置し、保護帽の鉛直上方上側にハロゲンランプを配置して、ハロゲンランプで保護帽を照射することにより行われた。箱状容器(図示せず)のサイズを、高さ750mm、幅450mm、奥行き300mmとした。ハロゲンランプには、500Wランプ(発売元:株式会社高儀、品名:EM防雨タイプ作業用ハロゲン投光器WLG−500)を使用し、100Vの交流安定化電源を使用した。ハロゲンランプから保護帽の頂上までの距離を300mmとした。
次に、測温箇所に熱電対等の温度センサを設けて、ハロゲンランプを照射した後、20分間の温度測定を実施した。図10は、温度測定を行った測温箇所を示す図である。温度測定は、発泡人頭模型が装着される側である保護帽内表面と、発泡人頭模型の頭頂部と、発泡人頭模型が装着される側と反対側の保護帽外表面とについて行われた。なお、試験は室温25℃、湿度60%で行っているので、ハロゲンランプ照射前の温度は、いずれも25℃である。
図11は、遮熱性試験結果を示す図である。図11に示される保護帽外表面温度と、保護帽内表面温度と、人頭頭頂部温度とは、ハロゲンランプの照射開始から20分間経過後の測定温度である。
保護帽本体実施例1を用いた保護帽では、保護帽外表面温度66.3℃、保護帽内表面温度63.5℃、人頭頭頂部温度47.2℃であり、保護帽本体実施例2を用いた保護帽では、保護帽外表面温度62.6℃、保護帽内表面温度59.9℃、人頭頭頂部温度44.7℃であり、保護帽本体実施例3を用いた保護帽では、保護帽外表面温度61.0℃、保護帽内表面温度58.8℃、人頭頭頂部温度44.4℃であり、保護帽本体実施例4を用いた保護帽では、保護帽外表面温度61.3℃、保護帽内表面温度58.9℃、人頭頭頂部温度43.4℃であった。
これに対して、保護帽本体比較例1を用いた保護帽では、保護帽外表面温度64.3℃、保護帽内表面温度62.8℃、人頭頭頂部温度48.3℃であった。
保護帽本体実施例1から保護帽本体実施例4を用いた保護帽では、20分経過後の人頭頭頂部温度が保護帽本体比較例1の保護帽よりも低く、遮熱特性の向上が認められた。また、保護帽本体実施例2から保護帽本体実施例4を用いた保護帽では、20分経過後の人頭頭頂部温度が43.4℃から44.7℃と低く、保護帽本体比較例1を用いた保護帽に対して3.6℃から4.9℃の温度低下が認められ、他の保護帽より更に遮熱特性が向上した。
次に、保護帽本体実施例1から保護帽本体実施例4を用いた保護帽について衝撃吸収性試験を実施した。
まず、衝撃吸収性試験の試験方法について説明する。図12は、衝撃吸収性試験方法を示す図である。保護帽の衝撃吸収性試験は、労働安全衛生法規格検定による性能試験の衝撃吸収性I試験に準拠して行った。所定の曝露条件に保護帽を曝露した後、曝露後の保護帽を人頭模型に装着し、5kgの半球形ストライカを保護帽の鉛直上方1mの高さから保護帽の頂部に落下させることにより、人頭模型にかかる最大衝撃荷重を測定することにより行われた。
保護帽の曝露条件は、低温曝露(−10℃)と、高温曝露(50℃)と、水中浸漬曝露(21℃)と、の3条件について行い、人頭模型にかかる最大衝撃荷重が4.9kN以下を合格とした。半球形ストライカには、JIS G3101(一般構造用圧延鋼材)に規定されるSS40の規格に適合する鋼材を用い、かつ、半径48mmの半球形衝撃面を有するストライカを使用した。なお、衝撃吸収性試験では、低温曝露(−10℃)と、高温曝露(50℃)と、水中浸漬曝露(21℃)の曝露条件で曝露した後、1分間以内に半球形ストライカを保護帽に落下させて試験終了するようにした。
図13は、衝撃吸収性試験結果を示す図である。保護帽本体実施例1を用いた保護帽では、低温曝露(−10℃)では2.4kN、高温曝露(50℃)では2.2kN、水中浸漬曝露(21℃)では2.5kNであり、保護帽本体実施例2を用いた保護帽では、低温曝露(−10℃)では2.6kN、高温曝露(50℃)では2.2kN、水中浸漬曝露(21℃)では2.3kNであり、保護帽本体実施例3を用いた保護帽では、低温曝露(−10℃)では2.4kN、高温曝露(50℃)では2.2kN、水中浸漬曝露(21℃)では2.4kNであり、保護帽本体実施例4を用いた保護帽では、低温曝露(−10℃)では2.5kN、高温曝露(50℃)では2.1kN、水中浸漬曝露(21℃)では2.6kNであった。
このように衝撃吸収性試験の試験結果は、いずれの保護帽においても、低温曝露(−10℃)の最大衝撃荷重が2.4kN〜2.6kNであり、高温曝露(50℃)の最大衝撃荷重が2.1kN〜2.2kNであり、水中浸漬曝露(21℃)の最大衝撃荷重が2.3kN〜2.6kNであった。この試験結果から、保護帽本体実施例1から保護帽本体実施例4を用いた保護帽は、いずれも最大衝撃荷重が4.9kN以下を満足した。
次に、保護帽本体実施例1から保護帽本体実施例4を用いた保護帽について耐貫通性試験を実施した。
まず、耐貫通試験の試験方法について説明する。図14は、耐貫通試験方法を示す図である。保護帽の耐貫通試験は、労働安全衛生法規格検定による性能試験の耐貫通性試験(貫通I試験)に準拠して行った。耐貫通試験は、室温で、人頭模型に装着した保護帽に対して、先端60度の角度を有する円錐形で3kgの円錐形ストライカを、保護帽の鉛直上方1mの高さから、保護帽の頂部を中心とする直径10cmの円周内に自由落下させて行われた。そして、円錐形ストライカの落下後、円錐形ストライカの先端から人頭模型までの距離(余裕量)を測定した。余裕量は、保護帽の頂部を中心とする直径10cmの円周内の4箇所に円錐形ストライカを自由落下させて、それらの平均値を求めた。なお、円錐形ストライカの先端が人頭模型に接触しない保護帽をより好ましい保護帽とした。
図15は、耐貫通試験結果を示す図である。保護帽本体実施例1を用いた保護帽の余裕量は10mmであり、保護帽本体実施例2を用いた保護帽の余裕量は8mmであり、保護帽本体実施例3を用いた保護帽の余裕量は4mmであり、保護帽本体実施例4を用いた保護帽の余裕量は0mmであった。この結果から不飽和ポリエステル樹脂に対する酸化チタンJR−1000の割合が高くなるほど保護帽の耐貫通性が低下し、酸化チタンが45.0重量部含まれる保護帽本体実施例4を用いた保護帽では余裕量が0mmであることがわかった。
このように上述した保護帽本体の形成方法によれば、強化繊維で、略半球殻状の繊維プリフォームを形成する繊維プリフォーム形成工程と、繊維プリフォームに、熱硬化性樹脂と、硬化剤と、を含む樹脂組成物を塗布または含浸する樹脂組成物含浸工程と、繊維プリフォームに塗布または含浸された樹脂組成物を加熱硬化する樹脂硬化工程と、を備え、樹脂組成物は、遮熱材料である平均粒子径が0.5μm以上3.0μm以下の酸化チタンを含むので、保護帽本体の成形後に更に塗装等の余分な作業を省略することができる。そのため、保護帽の生産性がより向上し、保護帽の製造コストが抑えられる。また、保護帽本体には塗膜が形成されていないので、保護帽がより軽量化される。
また、上述した保護帽本体形成方法によれば、樹脂組成物は、熱硬化性樹脂100重量部に対して、遮熱材料である平均粒子径が0.5μm以上3.0μm以下の酸化チタンを5.4重量部より多く45.0重量部よりも少ない割合で含有しているので、保護帽の機械的強度を満足した状態で、保護帽の遮熱効果をより向上させることができる。
更に、上述した保護帽本体形成方法によれば、樹脂組成物は、熱硬化性樹脂100重量部に対して、遮熱材料である平均粒子径が0.5μm以上3.0μm以下の酸化チタンを11.3重量部以上25.8重量部以下の割合で含有しているので、保護帽の機械的強度を満足した状態で、保護帽の遮熱効果を更に高めることができる。
次に、衝撃吸収ライナ14を形成する衝撃吸収ライナ形成工程について説明する。
まず、衝撃吸収ライナ14を形成するポリ乳酸系樹脂発泡成形体の成形方法について説明する。ポリ乳酸系樹脂発泡成形体は、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を型内発泡成形して得られるが、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子は押出発泡によって製造されたものであることが好ましい。はじめに、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の成形に用いられるポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法について説明する。
先ず、上述したポリ乳酸系樹脂を押出機に供給して発泡剤の存在下にて溶融混練した後、押出機の先端に取り付けた金型から押出発泡させる。この押出発泡させて得られたポリ乳酸系樹脂押出発泡体の形態は、特に限定されず、ストランド状、シート状などが挙げられるが、ストランド状が好ましい。これらのポリ乳酸系樹脂押出発泡体を粒子状に切断することでポリ乳酸系樹脂発泡粒子が得られる。
発泡剤としては、従来から汎用されているものが用いられ、例えば、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ヒドラゾイルジカルボンアミド、重炭酸ナトリウムなどの化学発泡剤;プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサンなどの飽和脂肪族炭化水素、ジメチルエーテルなどのエーテル類、塩化メチル、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、モノクロロジフルオロメタンなどのフロン、二酸化炭素、窒素などの物理発泡剤などが挙げられ、ジメチルエーテル、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、二酸化炭素が好ましく、プロパン、ノルマルブタン、イソブタンがより好ましく、ノルマルブタン、イソブタンが特に好ましい。なお、発泡剤は単独で用いられてもよいし、二種以上が併用されてもよい。
押出機に供給される発泡剤量としては、少ないと、ポリ乳酸系樹脂押出発泡体を所望発泡倍率まで発泡させることができないことがある一方、多いと、発泡剤が可塑剤として作用することから溶融状態のポリ乳酸系樹脂の粘弾性が低下し過ぎて発泡性が低下し良好なポリ乳酸系樹脂発泡押出発泡体を得ることができない場合或いはポリ乳酸系樹脂押出発泡体の発泡倍率が高過ぎる場合があるので、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部が好ましく、0.2〜4重量部がより好ましく、0.3〜3重量部が特に好ましい。
押出機には気泡調整剤が添加されることが好ましいが、気泡調整剤の多くは、ポリ乳酸系樹脂押出発泡体の結晶核剤として作用するため、ポリ乳酸系樹脂の結晶化を促進しない気泡調整剤を用いることが好ましく、このような気泡調整剤としては、ポリテトラフルオロエチレン粉末、アクリル樹脂で変性されたポリテトラフルオロエチレン粉末が好ましい。そして、ポリテトラフルオロエチレン粉末、及び、アクリル樹脂で変性されたポリテトラフルオロエチレン粉末は、ポリ乳酸系樹脂の結晶化を殆ど促進することなく、ポリ乳酸系樹脂押出発泡体の気泡の微細化を図ることができる。
押出機に供給される気泡調整剤の量としては、少ないと、ポリ乳酸系樹脂押出発泡体の気泡が粗大となり、最終的に得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体の外観が低下することがある一方、多いと、ポリ乳酸系樹脂を押出発泡させる際に破泡を生じてポリ乳酸系樹脂押出発泡体の独立気泡率が低下することがあるので、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して0.01〜3重量部が好ましく、0.05〜2重量部がより好ましく、0.1〜1重量部が特に好ましい。
押出機には、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の物性を損なわない範囲内において、着色剤、滑剤、劣化防止剤、帯電防止剤、難燃剤などの添加剤を添加してもよい。
押出機としては、従来から汎用されている押出機であれば、特に限定されず、例えば、単軸押出機、二軸押出機、複数の押出機を連結させたタンデム型の押出機を用いることができ、タンデム型の押出機を用いることが好ましい。
そして、押出機内において発泡剤と共に溶融混練されて発泡剤が分散されたポリ乳酸系樹脂は、押出機の先端に取り付けられた金型から押し出されると直ちに発泡してポリ乳酸系樹脂押出発泡体となる。
押出機に取り付ける金型としては、特に限定されないが、ポリ乳酸系樹脂を押出発泡させて均一微細な気泡を形成できる金型が好ましく、このような金型としては、ノズル金型が好ましく、ノズルを複数有するマルチノズル金型がより好ましい。
マルチノズル金型のノズルの出口直径は、小さいと、押出圧力が高くなりすぎて押出発泡が困難となることがある一方、大きいと、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の径が大きくなって金型への充填性が低下するので、0.2〜2mmが好ましく、0.3〜1.6mmがより好ましく、0.4〜1.2mmが特に好ましい。
そして、押出機から押出発泡されたポリ乳酸系樹脂押出発泡体を冷却して、ポリ乳酸系樹脂押出発泡体の結晶化が進行するのを抑制する。
ポリ乳酸系樹脂押出発泡体の冷却方法としては、押出発泡されたポリ乳酸系樹脂押出発泡体の結晶化度の上昇を速やかに停止できる方法が好ましく、具体的には、押出機から押出発泡されたポリ乳酸系樹脂押出発泡体を水面に浮かせて冷却する方法、押出機から押出発泡されたポリ乳酸系樹脂押出発泡体に水などを霧状に吹き付ける方法、低温に温度調節された冷却板上に、押出機から押出発泡されたポリ乳酸系樹脂押出発泡体を接触させることによって冷却させる方法、押出機から押出発泡された押出発泡体に冷風などの冷却された気体を吹き付ける方法などが挙げられる。なお、ポリ乳酸系樹脂押出発泡体を水面に浮かせて冷却する場合は、水温は0〜45℃に調整することが好ましい。
ポリ乳酸系樹脂押出発泡体を粒子状に切断する切断機としては、ペレタイザやホットカット機などが用いられ、又、切断機の切断方法としては、ドラムカッタ式やファンカッタ式があるが、ポリ乳酸系樹脂押出発泡体の切断時にポリ乳酸系樹脂押出発泡体に割れや欠けが発生しにくいことから、ファンカッタ式の切断方法を用いることが好ましい。なお、上記では、ポリ乳酸系樹脂押出発泡体の冷却後に、ポリ乳酸系樹脂押出発泡体を切断する場合を説明したが、押出機から押出発泡させると同時にポリ乳酸系樹脂押出発泡体を切断して粒子状とした後に、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を冷却するようにしてもよい。
このようにして得られたポリ乳酸系樹脂発泡粒子の嵩密度は、小さいと、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の連続気泡率が上昇して、型内発泡成形における発泡時にポリ乳酸系樹脂発泡粒子に必要な発泡力を付与することができない虞れがある一方、大きいと、得られるポリ乳酸系樹脂発泡粒子の気泡が不均一となって、型内発泡成形時におけるポリ乳酸系樹脂発泡粒子の発泡性が不充分となることがあるので、0.04〜0.3g/cm3が好ましい。
なお、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の嵩密度は、JIS K6911:1995年「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定されたものをいう。即ち、JIS K6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定し、数1の式に基づいてポリ乳酸系樹脂発泡粒子の嵩密度が測定される。
ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の粒子径は、小さいと、型内発泡成形時にポリ乳酸系樹脂発泡粒子の発泡性が低下することがある一方、大きいと、型内発泡成形時に金型内へのポリ乳酸系樹脂発泡粒子の充填性が低下することがあるので、1.0〜5.0mmが好ましく、2.0〜4.0mmがより好ましい。
ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の結晶化度は、高いと、型内発泡成形時にポリ乳酸系樹脂発泡粒子同士の融着性が低下することがあるので、30%未満が好ましく、3〜28%がより好ましく、5〜26%が特に好ましい。
ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の結晶化度は、示差走査熱量計(DSC)を用いてJIS K7121に記載の測定方法に準拠して5℃/分の昇温速度にて昇温しながら測定された1mg当たりの発熱量及び1mg当たりの融解熱量に基づいて数2の式により算出することができる。
このように、得られるポリ乳酸系樹脂発泡粒子の結晶化度を30%未満に調整することによって、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の融着性を確保し、型内発泡成形時におけるポリ乳酸系樹脂発泡粒子同士の融着性を良好なものとすることができる。
次に、このポリ乳酸系樹脂発泡粒子を用いて型内発泡成形し、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体を成形する方法について説明する。
まず、上記のポリ乳酸系樹脂発泡粒子から更に高発泡倍率に発泡したポリ乳酸系樹脂発泡粒子を製造する。具体的には、上記ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を圧力容器内に供給し、この圧力容器内にガスを圧入してポリ乳酸系樹脂発泡粒子にガスを含浸させて、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子に高い発泡性を付与し、この発泡性を付与されたポリ乳酸系樹脂発泡粒子を攪拌しながら60〜80℃の熱風で加熱することで更に高発泡倍率に発泡したポリ乳酸系樹脂発泡粒子が得られる。なお、上記ガスとしては、例えば、二酸化炭素、窒素、空気などが挙げられ、二酸化炭素が好ましい。
ポリ乳酸系樹脂発泡粒子にガスを含浸させる際のガス圧は、低いと、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子に充分な発泡性を付与させることができない一方、高いと、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の発泡性が向上し過ぎて、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を加熱、発泡させた際に破泡を生じる虞れがあるので、ゲージ圧0.5〜3MPaが好ましく、ゲージ圧1.0〜2.0MPaがより好ましい。
ポリ乳酸系樹脂発泡粒子にガスを含浸させる時間は、1時間以上が好ましく、2時間以上がより好ましい。又、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子にガスを含浸させる温度は、0〜40℃が好ましく、10〜30℃がより好ましい。
又、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の加熱に際して、水蒸気や水分を多く含んだ熱風を用いると、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の結晶化度が上昇し易く、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の型内発泡成形時に、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子同士の融着性が低下する虞れがあるため好ましくない。
そして、このようにして得られた高発泡倍率のポリ乳酸系樹脂発泡粒子を雌雄金型間に形成され且つ密閉し得ないキャビティ内に充填して加熱し、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を発泡させることによって、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を発泡させて発泡粒子同士をそれらの発泡圧によって互いに融着一体化させると共にポリ乳酸系樹脂の結晶化度を上昇させて、融着性及び耐熱性に優れた所望形状を有するポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得ることができる。
なお、金型内に充填した高発泡倍率のポリ乳酸系樹脂発泡粒子の加熱媒体としては、特に限定されず、水蒸気の他に、熱風、温水などが挙げられるが、60〜100℃の水を用いることが好ましい。これは、水は、液体状であって比熱が大きいことから、温度が低くても金型内のポリ乳酸系樹脂発泡粒子に発泡に必要な高い熱量を充分に付与することができるからである。
金型内に充填した高発泡倍率のポリ乳酸系樹脂発泡粒子に60〜100℃の水を供給してポリ乳酸系樹脂発泡粒子を加熱する方法としては、特に限定されず、例えば、(1)従来から用いられている型内発泡成形機において水蒸気の代わりに60〜100℃の水を金型内に供給する方法、(2)ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を充填した金型を60〜100℃の水中に浸漬してポリ乳酸系樹脂発泡粒子に水を供給する方法などが挙げられ、複雑な形状の金型であっても金型全体、即ち、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を全体的に均一に加熱、発泡させることができることから、上記(2)の方法が好ましい。
金型内に充填した高発泡倍率のポリ乳酸系樹脂発泡粒子の加熱された水による加熱時間は、短いと、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の加熱が不充分となってポリ乳酸系樹脂発泡粒子同士の熱融着が不充分となり、或いは、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の結晶化度が充分に上昇せず、得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体の耐熱性が低下することがある一方、長いと、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の生産性が低下するので、20秒〜1時間が好ましい。
60〜100℃の水で高発泡倍率のポリ乳酸系樹脂発泡粒子を加熱して型内発泡成形を行った後、金型内に形成されたポリ乳酸系樹脂発泡成形体を冷却した上で金型を開放して所望形状を有するポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得ることができる。
得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体の結晶化度は、低いと、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の耐熱性が低下する一方、高いと、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体が脆くなることがあるので、好ましくは40〜65%、より好ましくは45〜64%、特に好ましくは50〜63%となるように型内発泡成形条件を調整するのがよい。なお、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の結晶化度の測定方法は、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の結晶化度の測定方法と同様であるのでその説明を省略する。
ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の融着率は、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。なお、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の融着率は、下記の要領で測定されたものをいう。先ず、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の表面に一対の長辺の中心同士を結ぶ直線に沿ってカッターナイフで深さ約3mmの切り込み線を入れた後、この切り込み線に沿って発泡成形体を手で二分割し、その破断面における発泡粒子について、粒子内で破断している粒子の数(a)と、粒子同士の境界面で破断している粒子の数(b)とを数え、数3の式に代入して融着率(%)が求められる。
なお、型内発泡成形するにあたっては、得られたポリ乳酸系樹脂発泡粒子に更にガスを含浸させてもよい。このようなガスとしては、例えば、二酸化炭素、窒素、空気などが用いられ、二酸化炭素が好ましい。ポリ乳酸系樹脂発泡粒子にガスを含浸させてポリ乳酸系樹脂発泡粒子の発泡性を向上させることにより、型内発泡成形時におけるポリ乳酸系樹脂発泡粒子同士の融着性が向上し、得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体は更に優れた機械的強度を有する。
ポリ乳酸系樹脂発泡粒子にガスを含浸させる際のガス圧は、低いと、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子に充分にガスを含浸させることができず、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の発泡力を充分に向上させることができない一方、高いと、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の発泡力が向上し過ぎて、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を発泡させた際に破泡を生じ或いは型内発泡成形時の冷却時間が延びる虞れがあるので、0.2〜2.0MPaが好ましく、0.5〜1.0MPaがより好ましい。
ポリ乳酸系樹脂発泡粒子にガスを含浸させる時間は、1時間以上が好ましく、2時間以上がより好ましい。又、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子にガスを含浸させる温度は、0〜40℃が好ましく、10〜30℃がより好ましい。
ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の150℃での加熱寸法変化率は、5%未満であることが好ましく、1%未満であることがより好ましい。
ポリ乳酸系樹脂発泡成形体における150℃での加熱寸法変化率は、JIS K6767に準拠して測定されたものをいう。具体的には、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体を、JIS K7100に規定された標準温湿度状態、即ち、23℃、相対湿度50%に維持された恒温恒湿室内に24時間に亘って放置した後、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体から縦150mm×横150mmで、厚さは発泡成形体の厚みのままの試験片を切り出す。
次に、上記試験片の上面中央部に、3本の直線を50mm間隔で互いに平行な状態に縦方向に沿って描くと共に、3本の直線を50mm間隔で互いに平行な状態に横方向に沿って描く。そして、試験片の上面中央部に描いた6本の直線の長さを測定し、6本の直線の長さの相加平均値を算出し、加熱前寸法L1 とする。
しかる後、上記試験片を150℃に保持した熱風循環式乾燥機内に水平状態に放置して22時間に亘って加熱した後に熱風循環式乾燥機から取り出し、続いて、試験片をJIS K7100に規定された標準温湿度状態、即ち、23℃、相対湿度50%に維持された恒温恒湿室内に1時間に亘って放置する。
次に、上記試験片の上面中央部に描いた6本の直線の長さを測定し、6本の直線の長さの相加平均値を算出し、加熱後寸法L2 とし、数4の式に基づいて、150℃での加熱寸法変化率を算出する。
衝撃吸収ライナ14は、発泡体密度が0.04g/cm3以上0.2g/cm3以下のポリ乳酸系樹脂発泡成形体で形成されることが好ましい。更に、衝撃吸収ライナ14は、発泡体密度が0.125g/cm3以上0.2g/cm3以下のポリ乳酸系樹脂発泡成形体で形成されることがより好ましい。なお、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の発泡体密度は、JIS K6767:1999「発泡プラスチック及びゴム−見掛け密度の測定」に記載の方法で測定されたものをいう。
ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の発泡体密度が0.2g/cm3以下であるのは、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の密度が0.2g/cm3より高い場合には、衝撃吸収ライナ14の重量が大きくなり保護帽10が重くなるからである。
また、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の発泡体密度が0.04g/cm3以上であるのは、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の発泡体密度が0.04g/cm3より低くなると、衝撃吸収ライナ14の耐貫通性が低下するからである。ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の発泡倍率(発泡倍率=樹脂密度/発泡体密度)が大きくなるほど発泡体密度が小さくなるため、例えば、労働安全衛生法の保護帽の規格で規定されている耐貫通性能に示されるように、円錐状ストライカを所定高さから自由落下させたときの貫通深さは、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の発泡倍率が大きくなるほど深くなる。そのため、発泡体密度が0.04g/cm3以上のポリ乳酸系樹脂発泡成形体で衝撃吸収ライナ14を成形することにより、現行品と略同程度の衝撃吸収ライナ14の耐貫通性能を得ることができる。
このように衝撃吸収ライナ14は、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子(発泡ビーズ)を衝撃吸収ライナ14の形状に型内発泡成形して得られる。これ以外にも、例えば、ブロック状のポリ乳酸系樹脂発泡成形体を衝撃吸収ライナ14の形状に切削加工することにより形成されてもよい。また、衝撃吸収ライナ14は、ブロック状のポリ乳酸系樹脂発泡成形体から所定形状に切り出された複数の部品を接着剤等で接着して形成されてもよい。
このように衝撃吸収ライナ14は、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体で形成されているので、発泡スチロール材や発泡ポリエチレン材で成形された衝撃吸収ライナより耐熱性がより向上する。そして、衝撃吸収ライナ14の高温曝露による加熱寸法安定性と衝撃吸収特性とが向上することにより、保護帽10の耐熱特性をより向上させることができる。また、衝撃吸収ライナに150℃での加熱寸法変化率が5%未満のポリ乳酸系樹脂発泡成形体を用いることにより、衝撃吸収ライナの耐熱性をより向上させることができる。更に、衝撃吸収ライナに発泡体密度が0.04g/cm3以上0.2g/cm3以下のポリ乳酸系樹脂発泡成形体を用いることにより、衝撃吸収ライナの軽量化と耐貫通性能とを満足させることができる。
2種類の衝撃吸収ライナを形成し耐熱特性を評価した。まず、ライナ実施例1の衝撃吸収ライナについてその形成方法を説明する。
(ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造)
一段目となる口径50mmの単軸押出機と二段目となる口径65mmの単軸押出機とを接続管を介して接続してなるタンデム型の押出機を用意した。
そして、上記タンデム型の押出機の一段目の押出機に、結晶性のポリ乳酸系樹脂(ユニチカ社製 商品名「TERRAMAC HV−6200」、融点:167.4℃、D体比率:1.5重量%、L体比率:98.5重量%、)100重量部及び気泡調整剤としてポリテトラフルオロエチレン粉末(旭硝子社製 商品名「フルオンL169J」)0.1重量部を供給して220℃にて溶融混練した。
続いて、第一押出機の途中から、イソブタン35重量%及びノルマルブタン65重量%からなるブタンをポリ乳酸系樹脂100重量部に対して0.7重量部となるように溶融状態のポリ乳酸系樹脂に圧入して、ポリ乳酸系樹脂中に均一に分散させた。
しかる後、溶融状態のポリ乳酸系樹脂を一段目の押出機から接続管を介して二段目の押出機に連続的に供給した。溶融状態のポリ乳酸系樹脂を二段目の押出機にて樹脂温度200℃に冷却した後、二段目の押出機の先端に取り付けたマルチノズル金型の各ノズルから押出発泡させてストランド状のポリ乳酸系樹脂押出発泡体を製造した。
続いて、ストランド状のポリ乳酸系樹脂押出発泡体を冷却水槽内の水面上に浮かせて冷却した。なお、冷却水槽内の水温は、20℃であった。
なお、マルチノズル金型は、出口直径が1.0mmのノズルが15個、配設されており、ランド部の長さは7mmであった。又、マルチノズル金型のノズルから押出発泡させた際の樹脂温度は、二段目の押出機の先端部と金型との間にブレーカープレートを挿入し、このブレーカープレートの中心部に熱電対を挿入することによって測定した。 そして、ストランド状のポリ乳酸系樹脂押出発泡体を充分に水切りした後、このポリ乳酸系樹脂押出発泡体をファンカッタ式のペレタイザーを用いて切断してポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得た。なお、得られたポリ乳酸系樹脂発泡粒子は、その嵩密度が0.17g/cm3 で、長さが平均3.5mm、直径が平均2.3mmで、結晶化度は17.2%であった。
(ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の製造)
得られたポリ乳酸系樹脂発泡粒子を10リットルの圧力容器内に入れ密閉し、この圧力容器内に二酸化炭素を1.0MPaの圧力にて圧入して25℃にて6時間に亘って放置してポリ乳酸系樹脂発泡粒子に二酸化炭素を含浸させた。
次いで、圧力容器から、二酸化炭素を含浸させたポリ乳酸系樹脂発泡粒子を取り出し、直ちに攪拌機付きの除湿熱風乾燥機に供給し、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を攪拌しながら65℃の熱風で180秒間に亘って加熱して発泡させて、高発泡倍率のポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得た。なお、得られた高発泡倍率のポリ乳酸系樹脂発泡粒子は、その嵩密度が0.048g/cm3 で、結晶化度は18.2%であった。
次に、高発泡倍率のポリ乳酸系樹脂発泡粒子を10リットルの圧力容器内に入れ密閉し、この圧力容器内に二酸化炭素を0.5MPaの圧力にて圧入して25℃にて2時間に亘って放置してポリ乳酸系樹脂発泡粒子に二酸化炭素を含浸させた。
続いて、圧力容器から、与圧されたポリ乳酸系樹脂発泡粒子を取り出し、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子をアルミニウム製の雌雄金型間に形成された衝撃吸収ライナ形状のキャビティ内に充填した。又、金型に、この金型のキャビティ内と金型外部とを連通させるために、直径が10mmの円形状の供給口を30mm間隔毎に合計146個、形成した。なお、各供給口には、開口幅が0.8mmの格子部を設けてあり、金型内に充填したポリ乳酸系樹脂発泡粒子がこの供給口を通じて金型外に流出しないように形成されている一方、金型の供給口を通じて金型外からキャビティ内に水を円滑に供給することができるように構成された。
そして、加熱水槽内に95℃に維持された水を溜め、この加熱水槽内の水中にポリ乳酸系樹脂発泡粒子を充填した金型を完全に5分間に亘って浸漬して、金型の供給口を通じて金型のキャビティ内のポリ乳酸系樹脂発泡粒子に加熱された水を供給し、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を加熱、発泡させてポリ乳酸系樹脂発泡粒子同士を熱融着して一体化させた。
次に、加熱水槽内から金型を取り出した。そして、別の冷却水槽に20℃に維持された水を溜め、この冷却水槽内に金型を完全に5分間に亘って浸漬して、金型内のポリ乳酸系樹脂発泡成形体を冷却した。
金型を冷却水槽から取り出して金型を開放して、衝撃吸収ライナ形状に成形されたポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得た。
このポリ乳酸系樹脂発泡成形体を40℃の恒温室にて24時間乾燥した後に発泡体密度を測定したところ、0.048g/cm3 であった。また、このポリ乳酸系樹脂発泡成形体の結晶化度は50%であった。
なお、上記の型内発泡成形と同様の要領で、縦300mm×横400mm×厚み30mmの直方体形状のキャビティを有する金型を用いてポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得た。このポリ乳酸系樹脂発泡成形体を40℃の恒温室にて24時間乾燥した後にJIS K6767に記載の方法で発泡体密度を測定したところ、0.048g/cm3であった。また、このポリ乳酸系樹脂発泡成形体の結晶化度は50%であった。このポリ乳酸系樹脂発泡成形体を用いて、150℃での加熱寸法変化率をJIS K6767に準拠して測定したところ、1.9%であった。
次に、ライナ比較例1の衝撃吸収ライナについて説明する。ライナ比較例1は、発泡スチロール材で形成された。発泡スチロール材には、発泡体の見掛け密度が0.033g/cm3のものを使用した。なお、発泡スチロール材で150℃での加熱寸法変化率をJIS K6767に準拠して測定したところ、大きく収縮変形し元の形状を留めていなかった。
次に、ライナ実施例1とライナ比較例1とについて耐熱特性を評価した。衝撃吸収ライナの耐熱特性評価は、加熱寸法安定性試験と、熱曝露後の衝撃吸収性能試験とにより行われた。ライナ実施例1の試験用供試体は、前記の型内発泡成形と同様の要領で作成した、縦300mm×横400mm×厚み30mmの直方体形状のポリ乳酸系樹脂発泡成形体から発泡スチロールカッタで縦方向70mm、横方向70mm、厚み方向30mmの直方体形状に切り出して作製された。ライナ比較例1の試験用供試体は、所定形状の発泡スチロール成形体から発泡スチロールカッタで縦方向70mm、横方向70mm、厚み方向30mmの直方体形状に切り出して作製された。
加熱寸法安定性試験は、試験用供試体を50℃と100℃の2温度条件で熱曝露することにより行われた。熱曝露は、50℃または100℃に加熱された雰囲気式加熱炉に試験用供試体を2時間保持して行われた。加熱前の試験用供試体の寸法(縦方向、横方向、厚み方向)と、熱曝露後の試験用供試体の寸法(縦方向、横方向、厚み方向)とを測定し、加熱前後における寸法変化を求めた。
図16は、加熱寸法安定性試験結果を示す図である。高温(50℃)の熱曝露試験では、ライナ実施例1及びライナ比較例1の試験用供試体には寸法変化がみられなかった。高温(100℃)の熱曝露試験では、ライナ比較例1の試験用供試体において、縦方向の寸法が70mmから66mmに収縮し、横方向の寸法が70mmから65mmに収縮し、厚み方向の寸法が30mmから27mmに収縮した。これに対して、ライナ実施例1の試験用供試体では寸法変化がみられなかった。この加熱寸法安定性試験結果から、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体で形成された衝撃吸収ライナは、発泡スチロール材で形成された衝撃吸収ライナより優れた加熱寸法安定性を有していることがわかった。
次に、衝撃吸収性能試験について説明する。衝撃吸収性能試験は、労働安全衛生法の保護帽の規格における衝撃吸収性能評価試験に準じて行われた。図17は、衝撃吸収性能評価試験方法を示す図である。試験用供試体60を高温処理(50℃、100℃)した後、人頭模型62に配置し、重量が5kgで、直径127mmの衝撃面を有する鋼製の平面形ストライカ64を、試験用供試体60における鉛直方向上方の所定のストライカ落下高さ(L)から自由落下させて最大衝撃値を計測した。なお、高温曝露条件で曝露した後、3分間以内に平面形ストライカ64を試験用供試体60に落下させて試験終了するように行った。なお、熱曝露は、加熱寸法安定性試験と同様にして、50℃または100℃に加熱された雰囲気式加熱炉に試験用供試体を2時間保持して行われた。
衝撃吸収性能試験におけるライナ実施例1の試験用供試体は、加熱寸法安定性試験と同様に、前記の型内発泡成形と同様の要領で作成した、縦300mm×横400mm×厚み30mmの直方体形状のポリ乳酸系樹脂発泡成形体から発泡スチロールカッタで縦方向70mm、横方向70mm、厚み方向30mmの直方体形状に切り出して作製された。また、ライナ比較例1の試験用供試体についても、加熱寸法安定性試験に用いた試験用供試体と同様に作製した。
図18は、衝撃吸収性能試験結果を示す図である。ライナ比較例1における試験用供試体の最大衝撃値は、室温試験(L=500mm)で2.1kNであり、室温試験(L=750mm)で3.0kNであり、室温試験(L=1000mm)で6.3kNであり、高温試験(50℃、L=1000mm)で5.6kNであり、高温試験(100℃、L=1000mm)で7.4kNであった。これに対して、ライナ実施例1における試験用供試体の最大衝撃値は、室温試験(L=750mm)で4.3kNであり、室温試験(L=1000mm)で4.5kNであり、高温試験(50℃、L=1000mm)で4.4kNであり、高温試験(100℃、L=1000mm)で3.8kNであった。
ライナ比較例1では、高温(50℃、100℃)に熱曝露された試験用供試体の最大衝撃値は、熱曝露されていない供試体の最大衝撃値より大きくなり、熱曝露されることにより衝撃吸収性能が低下した。これに対して、ライナ実施例1では、高温(50℃、100℃)に熱曝露された試験用供試体の最大衝撃値は、熱曝露されていない試験用供試体の最大衝撃値と略同じか小さくなり、熱曝露の影響はみられなかった。この試験結果から、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体で形成された衝撃吸収ライナは、発泡スチロール材で形成された衝撃吸収ライナより、100℃で熱曝露された場合でも優れた衝撃吸収性能を有していることがわかった。
そして、保護帽本体形成工程で保護帽本体12を形成し、衝撃吸収ライナ形成工程で衝撃吸収ライナ14を形成し、保護帽本体12に衝撃吸収ライナ14を装着した後、ハンモック、ヘッドバンド、環ひも等の保護帽内装体等を取り付けて保護帽10の製造が完了する。
以上、上記構成によれば、頭の上部を覆う保護帽は、略半球殻状に形成された保護帽本体と、保護帽本体の内側に設けられ、衝撃を吸収する衝撃吸収ライナと、を備え、保護帽本体は、ガラス繊維等の強化繊維でポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂を強化した繊維強化複合材料で形成され、繊維強化複合材料は、平均粒子径が0.5μm以上3.0μm以下の酸化チタンを含み、衝撃吸収ライナは、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体で形成され、略半球殻状に形成されたライナ本体と、ライナ本体に設けられ、保護帽本体側に突出し、保護帽本体の内周面と当接する少なくとも4つの突起部と、を有しており、保護帽本体が、遮熱材料を含有する繊維強化複合材料で形成され、衝撃吸収ライナが、発泡スチロール材や発泡ポリエチレン材より耐熱性を有するポリ乳酸系樹脂発泡成形体で形成され、更に、保護帽本体と衝撃吸収ライナとの接触面積を低減させて保護帽本体から衝撃吸収ライナへの熱伝達を抑えているので、保護帽の遮熱性と耐熱性とを更に向上させることができる。
上記構成における保護帽の製造方法は、頭の上部を覆う保護帽を製造する保護帽の製造方法であって、略半球殻状の保護帽本体を形成する保護帽本体形成工程と、前記保護帽本体の内側に設けられ、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体で形成され、略半球殻状に形成されたライナ本体と、前記ライナ本体に設けられ、前記保護帽本体側に突出し、前記保護帽本体の内周面と当接する少なくとも4つの突起部と、を有する衝撃を吸収する衝撃吸収ライナを形成する衝撃吸収ライナ形成工程と、を備え、前記保護帽本体形成工程は、強化繊維で、略半球殻状の繊維プリフォームを形成し、前記繊維プリフォームに、熱硬化性樹脂と、硬化剤と、平均粒子径が0.5μm以上3.0μm以下の酸化チタンと、を含む樹脂組成物を塗布または含浸し、前記繊維プリフォームに塗布または含浸された前記樹脂組成物を加熱硬化することを特徴としている。また、保護帽の製造方法において、前記樹脂組成物は、前記熱硬化性樹脂100重量部に対して、前記酸化チタンを5.4重量部より多く45.0重量部より少ない割合で含有することが好ましく、前記樹脂組成物は、前記熱硬化性樹脂100重量部に対して、前記酸化チタンを11.3重量部以上25.8重量部以下の割合で含有することがより好ましい。更に、保護帽の製造方法において、前記熱硬化性樹脂は、ポリエステル樹脂であり、前記強化繊維は、ガラス繊維であることが好ましい。このような保護帽の製造方法によれば、保護帽の遮熱性と耐熱性とを更に向上させることができる。