JP5312011B2 - ミシン - Google Patents
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Description
天秤は、縫い針を保持する針棒を上下動させる針棒駆動機構の伝達経路より派生して設けられている。
図17、図18に示すように、ミシン100は、ミシンモータに連結された上軸101と、この上軸101に固定された釣合錘102と、この釣合錘102の回転中心から偏心した位置で固定される棒状の針棒クランク103と、一端部が針棒クランク103に回動自在に連結され、他端部が針棒104を保持する針棒抱き105に回動自在に連結された針棒クランクロッド106と、一端部がミシンフレーム107に回動自在に支持された天秤クランク108と、この天秤クランク108に回動自在に連結され、糸を引き上げる天秤109と、を備えている。
ミシンはこのような機構を有していることから、何らかの要因によりミシン100の運転中に糸が切断されると、糸は天秤109によって引き上げられる。その結果、糸の端が針棒クランク103と針棒クランクロッド106との隙間Bに巻き付き、この状態のままミシン100の運転を継続すると、隙間Bへの糸の巻き付きが進行する。
ここで、糸Tの巻き付きはミシンフレーム107の内部で行われているため、作業者は気づきにくく、ミシンモータにかかるトルク異常等の警報により初めて気づくことが多い。しかし、ミシンモータのトルク異常が発生する頃には、すでにグリースが流出していることが多く、連結部120の焼き付きを未然に防ぐことは困難であった。
前記針棒クランク(4)は、前記針棒クランクロッド(5)側に突出する第1凸部(44)を有し、
前記針棒クランクロッド(5)は、前記針棒クランク(4)側に突出する第2凸部(54)を有し、
前記第2凸部(54)は、その先端部が前記第1凸部(44)の先端部よりも前記針棒クランク(4)側に突出するように設けられ、
前記針棒クランクロッド(5)と前記針棒クランク(4)との連結部(50)における回動中心から前記第2凸部(54)までの距離が、当該回動中心から前記第1凸部(44)までの距離よりも短くなるように各凸部(44,54)を設けたことを特徴とする。
このとき、針棒クランクロッドは針棒クランクに回動自在に連結されているので、針棒クランクが回転しても針棒クランクロッドは上下動するのみである。
そして、この状態から針棒クランクが回転すると、糸は第2凸部に当接しながらも第2凸部を通過しようと移動するので、針棒クランクの移動とともにやがて第二凸部により押し切られる。
すなわち、第2凸部は、第1凸部の回転軌跡の常に内側(連結部における回動中心側)にいることになるので、第1凸部と針棒クランクに糸が巻き付こうとしても針棒クランクが一回転するたびに糸に当接して糸を切断する。
よって、糸の巻き付きを防止し、糸の巻き付きによりリップが剥がれることによるグリースの流出を防止し、連結部の焼き付きを未然に防ぐことができる。
また、縫製に用いる糸が太い場合や丈夫な場合には、第2凸部では糸を切断できないこともある。この場合であっても、第2凸部が糸に接触することにより針棒クランクを回転させるためのミシンモータのトルクが増すので、作業者はミシンモータのトルクを監視しておけば、ミシンフレームを開けて確認しなくても、針棒クランクへの糸巻きが発生していることをすぐに認識することができる。よって、針棒クランクに糸Tが大量に巻き付く前に異常を発見することができ、天秤の駆動機構の損壊を防止することができる。
前記第2凸部(54a)は、その先端部が前記溝部(42d)に収容されるように形成されていることを特徴とする。
よって、糸が第1凸部と第2凸部との間をすり抜けて針棒クランクに絡まることを防止する効果をより高めることができる。
前記針棒クランクは、前記釣合錘に固定され、前記天秤を回転自在に支持する固定軸(41)と、前記クランクロッド軸受に挿通され、前記針棒クランクロッドを回転自在に支持する支持軸(43)と、前記固定軸と前記支持軸との間で両軸を支持する本体部(42)と、を有し、
前記本体部の外周の少なくとも一部には、前記クランクロッド軸受側に突出して前記本体部と前記クランクロッド軸受との隙間を覆う被覆部(42c)が設けられ、
前記被覆部は、前記針棒クランクロッドと前記針棒クランクとの連結部における回動中心からの距離が、当該回動中心から前記第2凸部までの距離よりも短くなるように設けられていることを特徴とする。
よって、糸が本体部とクランクロッド軸受との隙間に進入して針棒クランクに絡まることを防止する効果をより高めることができる。
前記針棒クランクは、前記釣合錘に固定され、前記天秤を回転自在に支持する固定軸(91)と、前記クランクロッド軸受に挿通され、前記針棒クランクロッドを回転自在に支持する支持軸(92)と、前記固定軸と前記支持軸との間で両軸を支持する本体部(93)と、を有し、
前記本体部は、
前記針棒クランクロッド側の端面が前記クランクロッド軸受に対向するように配置され、前記針棒クランクロッド側の端部から前記天秤側の端部に向かうにつれて前記支持軸の軸線側に傾斜する傾斜部(97)と、
前記天秤側の端面であって前記傾斜部の前記天秤側の端部側に設けられ、前記固定軸の軸線に沿って前記天秤側に突出する突起部(96)と、を有することを特徴とする。
よって、糸が本体部とクランクロッド軸受との隙間に進入して針棒クランクに絡まることを防止する効果をより高めることができる。
前記天秤は、前記針棒クランクを回動自在に支持するとともに前記針棒クランクロッド側の端面が前記針棒クランク側に突出するように設けられた天秤軸受(81)を有し、
前記針棒クランクは、前記天秤軸受に挿通されるとともに前記釣合錘に固定され、前記天秤を回転自在に支持する固定軸(91)と、前記クランクロッド軸受に挿通され、前記針棒クランクロッドを回転自在に支持する支持軸(92)と、前記固定軸と前記支持軸との間で両軸を支持する本体部(93)と、を有し、
前記クランクロッド軸受は、前記針棒クランク側の端面が前記針棒クランクロッドにおける前記針棒クランク側の端面に対して凹むように前記収容孔内に配置され、
前記本体部は、
前記針棒クランクロッド側の端部が前記収容孔に収容されるとともに、前記針棒クランクロッド側の端部から前記天秤側の端部に向かうにつれて前記固定軸の軸線側に傾斜する傾斜部(97)と、
前記天秤側の端面であって前記傾斜部の前記天秤側の端部側に設けられ、前記固定軸の軸線に沿って前記天秤側に突出する突起部(96)と、
前記天秤側の端部の外周の少なくとも一部に設けられ、前記天秤側に突出して前記針棒クランクと前記天秤軸受との隙間を覆う天秤軸受カバー部(98)と、
を有することを特徴とする。
よって、糸が本体部とクランクロッド軸受との隙間に進入して針棒クランクに絡まることを防止する効果をより高めることができる。
また、天秤軸受カバー部により、針棒クランクと天秤軸受との隙間を覆うことができる。これにより、糸が本体部と天秤軸受との間から進入して天秤軸受を押圧することがない。
よって、糸が本体部と天秤軸受との隙間に進入して針棒クランクに絡まることを防止する効果をより高めることができる。
前記針棒クランクは、前記釣合錘に固定され、前記天秤を回転自在に支持する固定軸(41)と、前記クランクロッド軸受に挿通され、前記針棒クランクロッドを回転自在に支持する支持軸(43)と、前記固定軸及び前記支持軸を支持する本体部(42)と、を有し、
前記クランクロッド軸受は、前記針棒クランク側の端面が前記針棒クランクロッドにおける前記針棒クランク側の端面に対して凹むように前記収容孔内に配置され、
前記支持軸には、前記クランクロッド軸受の前記針棒クランク側の端面を覆うと共に、前記収容孔に収容されるクランクロッド軸受カバー(46)が設けられていることを特徴とする。
よって、糸が本体部とクランクロッド軸受との隙間に進入して針棒クランクに絡まることを防止する効果をより高めることができる。
よって、糸の巻き付きを防止し、糸の巻き付きによりリップが剥がれることによるグリースの流出を防止し、連結部の焼き付きを未然に防ぐことができる。
また、縫製に用いる糸が太い場合や丈夫な場合には、第2凸部では糸を切断できないこともある。この場合であっても、第2凸部が糸に接触することにより針棒クランクを回転させるためのミシンモータのトルクが増すので、作業者はミシンモータのトルクを監視しておけば、ミシンフレームを開けて確認しなくても、針棒クランクへの糸巻きが発生していることをすぐに認識することができる。よって、針棒クランクに糸Tが大量に巻き付く前に異常を発見することができ、天秤の駆動機構の損壊を防止することができる。
[第1の実施形態]
<ミシンの構成>
図1は、ミシン1の先端付近の外観を示した斜視図である。ミシン1は、ミシンモータ(図示略)等の各部を収容するミシンフレーム10を備えている。ミシンフレーム10の先端の顎部からは針棒11が下方に突出するように設けられており、その下端部には、縫い針12が保持されている。ミシンフレーム10の正面側(オペレータに対向する面側)には、糸Tにかかる張力を調節する糸調子器13が設けられている。ミシンフレーム10の正面側には、天秤7(詳細は後述する)を上下動させるための天秤溝10aが上下方向に延びるように形成されており、この天秤溝10aからは天秤7の先端に形成された糸掛部7aが露出している。
図1〜図3に示すように、ミシン1は、駆動源となるミシンモータ(図示略)に連結され、ミシンモータの駆動とともに軸回りに回転する上軸2と、この上軸2に固定された釣合錘3と、この釣合錘3に固定される針棒クランク4と、一端部が針棒クランク4に回動自在に連結され、他端部が針棒11を保持する針棒抱き14に回動自在に連結された針棒クランクロッド5と、一端部がミシンフレーム10に回動自在に支持された天秤クランク6と、この天秤クランク6に回動自在に連結されるとともに、一端部が針棒クランク4に回動自在に連結され、他端部に糸Tを通す糸掛部7aが形成され、糸掛部7aに通された糸Tを引き上げる天秤7と、を備えている。
釣合錘3は、この上軸2の先端に止めねじ3aによって固定されている。これにより、釣合錘3は、上軸2の回転とともに回転する。
針棒クランク4は、釣合錘3に止めねじ3bによって固定されている。
針棒クランク4は、釣合錘3に挿入されて止めねじ3bにより固定される固定軸41と、この固定軸41が取り付けられる本体部42と、本体部42における固定軸41の取付面の裏面側(針棒クランクロッド5に対向する面側)に取り付けられ、針棒クランクロッド5の一端部を回動自在に支持する支持軸43と、本体部42における固定軸41の取付面の裏面側(針棒クランクロッド5に対向する面側)に取り付けられ、針棒クランクロッド5側に突出する第1凸部44と、を備えている。
また、固定軸41は、上軸2の軸線から偏心した位置で釣合錘3に挿入されて固定されている。支持軸43は、固定軸41の軸線から偏心した位置で本体部42に設けられている。第1凸部44は、固定軸41及び支持軸43の軸線から偏心した位置で本体部42に設けられている。ここで、図3に示すように、固定軸41に対する第1凸部44の偏心量は、固定軸41に対する支持軸43の偏心量よりも大きくなるように配置されている。
従って、上軸2の回転により釣合錘3が上軸2の軸線回りに回転すると、針棒クランク4は、上軸2の軸線回りに回転する。つまり、針棒クランク4は、その固定軸41が上軸2の周囲を円形状の軌跡を辿るように回転する。
また、固定軸41には、天秤7が挿通されている。すなわち、天秤7は、針棒クランク4の本体部42と釣合錘3との間で固定軸41に支持されている。
第2凸部54は、その先端部が針棒クランク4に設けられた第1凸部44の先端部よりも針棒クランク4側に突出するように設けられている。第2凸部54は、針棒クランクロッド5と針棒クランク4との連結部50における回動中心、言い換えると固定軸41の軸心から第2凸部54までの距離が、当該回動中心(固定軸41の軸心)から第1凸部44までの距離よりも短くなるように設けられている。
この針棒抱き14には、軸部14aと一体に形成された支持部14bが形成されている。この支持部14bに針棒11を通し、止めねじ5bで支持部14bを針棒11に向けて締め付けることで、針棒11を支持することができる。
天秤7は、図3に示すように、一端部に天秤軸受としてのボールベアリング71が設けられ、このボールベアリング71に固定軸41が挿通されている。天秤7は、その中程において針棒クランク4側に屈曲形成されており、他端部に形成された糸掛部7aが縫い針12の上方に位置するように形成されている。
このような構成を採用することにより、天秤クランク6は、天秤7の上下動範囲を一定の範囲内に規制する役割を有する。
次に、針棒クランク4と針棒クランクロッド5との連結部50への糸の巻き付きを防止する動作について説明する。なお、以下の説明においては、上軸2と天秤7の位相差が90°に設定されているものとする。
図4(a)に示すように、例えば、上軸2の回転角度が0°において糸Tが何らかの要因により切断されると、天秤7は、その糸Tを持ち上げようとする。このとき、糸Tは連結部50における針棒クランク4と針棒クランクロッド5との間にできるわずかな隙間Sには絡まっていない。
図4(b)に示すように、上軸2がR方向に回転すると、上軸2に固定されている釣合錘3もR方向に回転する。釣合錘3に固定されている針棒クランク4は、固定軸41を中心にR方向に回転する。これにより、本体部42に設けられている支持軸43及び第1凸部44は、固定軸41を中心として円弧状の軌跡を描くようにR方向に回転する。また、針棒クランク4に回動自在に連結されている針棒クランクロッド5は、一端部が針棒クランク4の固定軸41を中心に円弧状の軌跡を描くように回転する。これにより、第2凸部54は、針棒クランクロッド5の幅方向に揺動しつつ上下方向に移動する。
そして、上軸2の回転角度が15°になると、天秤7はさらに上昇するので、天秤7により引き上げられる糸Tは、天秤7の下方に位置する針棒クランク4及び針棒クランクロッド5に向けて導かれる。
図4(c)に示すように、上軸2の回転角度が30°になると、天秤7はさらに上昇し、連結部50の隙間Sにおいて最も外側にある第1凸部44に糸Tが絡まり始める。
図5(b)に示すように、上軸2の回転角度が180°になると、針棒クランク4はさらにR方向に回転するので、糸Tは下方に位置する支持軸43にも絡まり始める。
図5(c)に示すように、上軸2の回転角度が270°になると、糸Tは、第1凸部44から支持軸43の外周にわたって巻き付き、さらに天秤7の位置との関係もあって第1凸部44の方に折り返すように導かれる。
図5(d)に示すように、上軸2の回転角度が360°になると、糸Tは、第1凸部44と支持軸43との間で架け渡された状態となる。
これにより、第1凸部44と支持軸43とに2周目の糸Tが巻き付く前に糸Tは切断され、針棒クランク4への糸Tの巻き付きが防止される。
以上のように、何らかの要因により糸Tが切れた場合や、縫い針12から糸Tが抜けた場合に、天秤7の引き上げにより糸Tは縫い針12の上方のミシンフレーム10内に進入する。そして、連結部50における針棒クランクロッド5と針棒クランク4との隙間Sに進入しようとする糸Tは第1凸部44に引っ掛かる。第1凸部44に糸Tが引っ掛かったままミシン1の運転を継続すると、上軸2とともに回転する釣合錘3に固定された針棒クランク4も回転するので、第1凸部44と針棒クランク4の支持軸43にわたって糸が巻き付いていく。
このとき、針棒クランクロッド5は針棒クランク4に回動自在に連結されているので、針棒クランク4が回転しても針棒クランクロッド5は上下動するのみである。
そして、この状態から針棒クランク4が回転すると、糸Tは第2凸部54に当接しながらも第2凸部54を通過しようと移動するので、針棒クランク4の移動とともにやがて第2凸部54により押し切られる。
すなわち、第2凸部54は、第1凸部44の回転軌跡の常に内側(連結部50における回動中心側)にいることになるので、第1凸部44と針棒クランク4の支持軸43に糸Tが巻き付こうとしても針棒クランク4が一回転するたびに糸Tに当接して糸Tを切断する。
よって、糸Tの巻き付きを防止し、糸Tの巻き付きによりリップが剥がれることによるグリースの流出を防止し、連結部50の焼き付きを未然に防ぐことができる。また、これによって、ミシンの天秤回りの機構の耐用期間を長くすることができる。
また、第2の実施形態として、例えば、図7、図8に示すように、針棒クランク4における針棒クランクロッド5側の表面に、ミシンモータを駆動させて上軸2を回転させた場合に第2凸部54aが描く軌跡に対向する溝部42d(図8の斜線部参照)を形成し、第2凸部54aの先端部が溝部42dに収容されるように第2凸部54aを形成してもよい。
すなわち、第2凸部54aは、針棒クランクロッド5が上下動しながらも針棒クランクの回転により幅方向に揺動するので、円弧を描くような軌跡を辿るように移動する。そのため、針棒クランク4の表面にも第2凸部54aの先端部の移動軌跡を辿るような溝部42dが形成される。
溝部42dは、針棒クランク4の外縁から貫通するように形成され、その幅は、第2凸部54aの径よりも若干広くなるように形成されている。
よって、糸Tが第1凸部44と第2凸部54aとの間をすり抜けて針棒クランク4に絡まることを防止する効果をより高めることができる。
また、第3の実施形態として、例えば、図9に示すように、針棒クランク4における針棒クランクロッド5側の外周の少なくとも一部に、ボールベアリング51側に突出して針棒クランク4とボールベアリング51との隙間Vを覆う被覆部42cを設けてもよい。
被覆部42cは、針棒クランクロッド5におけるボールベアリング51の外周よりも外側に延びるように形成されている。従って、針棒クランク4が回転した場合において、糸Tが巻き付くのは、ボールベアリング51ではなく、被覆部42cに巻き付くことになる。
なお、被覆部42cは、針棒クランク4の外周の全域にわたって設けてもよいが、隙間Vに糸Tが進入しない程度に適当な間隔をおいて形成されていてもよい。
よって、糸Tが針棒クランク4とボールベアリング51との隙間Vに進入して針棒クランク4に絡まることを防止する効果をより高めることができる。
次に、図10〜図13を用いて、ミシンの第4の実施形態について説明する。なお、第4の実施形態が第1の実施形態と異なる点は、天秤、針棒クランク、針棒クランクロッドの連結構造であるため、この点について詳細に説明し、第1の実施形態と同じ構成については、同一符号を付して説明を省略する。
本体部93における固定軸91の取付面(天秤8側の端面)には、固定軸91の軸線に沿って天秤8側に突出する突起部96が設けられている。
本体部93における支持軸92近傍の外周には、本体部93の一端面となる針棒クランクロッド20側の端面から他端面となる天秤8側の端面に向かうにつれて、固定軸91(支持軸92)の軸線側に傾斜する傾斜部97が形成されている。
傾斜部97の天秤8側の端部近傍には、突起部96が設けられており、傾斜部97に沿って移動してきた糸が突起部96に導かれるように構成されている。
本体部93における天秤8側の端部の外周には、天秤8側に突出して針棒クランク9と軸受部材81との隙間を覆う天秤軸受カバー部98が形成されている。具体的には、天秤軸受カバー部98は、天秤8における針棒クランク9側の端面に対向する位置まで延びるように形成され、天秤8の収容孔8aから突出している軸受部材81を外側から覆うように形成されている。
針棒クランクロッド20の中間部23には、針棒クランク9と連結した際に針棒クランク9側に突出する糸切刃24が設けられている。糸切刃24は、止めねじ25によって中間部23に固定されている。糸切刃24は、その先端が糸保持軸94,95の間に突出するように形成されている。
すなわち、糸切刃24は、図13に示すように、糸保持軸94,95により保持された糸の間を通過するような軌跡で動作するので、糸Tに張力がかかった状態ですぐに切断することができる。このように、糸保持軸94,95を二つ設け、この間を糸切刃24に通過させる機構とすることで、糸切刃24が糸Tを切らないまま糸Tを引っ張り続けることが少なくなり、糸の切断効率を向上することができる。
よって、糸が本体部93とボールベアリング21との隙間に進入して針棒クランク9に絡まることを防止する効果をより高めることができる。
また、天秤軸受カバー部98により、針棒クランク9と軸受部材81との隙間を覆うことができる。これにより、糸が本体部93と軸受部材81との間から進入して軸受部材81を押圧することがない。
よって、糸が本体部93と軸受部材81との隙間に進入して針棒クランク9に絡まることを防止する効果をより高めることができる。
また、第5の実施形態として、例えば、図14〜図16に示すように、ボールベアリング51の針棒クランク4A側の端面を覆うクランクロッド軸受カバー46を支持軸43に設けるようにしてもよい。なお、第5の実施形態においては、第1の実施形態の構成と共通点が多いため、同一の構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
具体的には、図14に示すように、針棒クランクロッド5と針棒クランク4Aとの連結部50における針棒クランクロッド5の一端部の厚さをボールベアリング51よりも厚くなるように形成し、針棒クランクロッド5における連結部50にボールベアリング51の収容孔を形成する。そして、針棒クランクロッド5の針棒クランク4A側の端面とボールベアリング51の針棒クランク4A側の端面とに段差D(図15参照)ができるように構成する。そして、この段差Dにクランクロッド軸受カバー46を設ける。クランクロッド軸受カバー46は、ボールベアリング51の針棒クランク4A側の全域を覆うことができるよう、ほぼ同じ大きさの円板状に形成されている。クランクロッド軸受カバー46の中心には、支持軸43を挿通するための挿通孔46aが形成されている。クランクロッド軸受カバー46は、段差Dに設けられた際にボールベアリング51と針棒クランク4Aの本体部42とで挟まれた状態となる。
クランクロッド軸受カバー46の外周には、ボールベアリング51から針棒クランク4Aに向かうにつれて支持軸43の軸線に接近するような傾斜部46bが形成されている。
クランクロッド軸受カバー46は、段差Dに設けられた際に、一部が針棒クランク4A側に突出するように形成されている。これは、クランクロッド軸受カバー46と本体部42との間に隙間Sを形成するためである。
また、第4の実施形態と同様、本体部42には糸保持軸44,45が設けられ、針棒クランクロッド5には糸切刃58が設けられている。
よって、糸が本体部42とボールベアリング21との隙間Sに進入して針棒クランク4Aに絡まることを防止する効果をより高めることができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば、第1の実施形態において、第1凸部44は、針棒クランク4と一体に形成してもよいし、別個に形成してもよい。第2凸部54は、針棒クランクロッド5と一体に形成してもよいし、別個に形成してもよい。
また、第2凸部54は、円柱状に形成されているが、糸Tとの対向部に切断刃を設けてもよいし、その対向部を鋭利に形成してもよい。
また、上記実施形態においては、天秤の下方で糸の巻き付きが発生しやすいことから、針棒クランクと針棒クランクロッドとの間に形成される隙間に糸が進入して巻き付くことを防止するものであったが、針棒クランクと天秤との間に形成される隙間に糸が進入することを防止するためにも適用が可能である。
また、針棒クランクの本体部に傾斜部を形成するのは、本体部の針棒クランクロッド側だけに限らず、本体部の天秤側の端部から針棒クランクロッド側に向かうにつれて固定軸側に傾斜する傾斜部を形成し、この傾斜部の少なくとも一部を天秤内に挿入するように構成してもよい。このような構成をとることにより、天秤と針棒クランクの本体部との隙間に糸が進入するのを防止することができる。従って、針棒クランクの針棒クランクロッド側の端部及び天秤側の端部に傾斜部を形成し、それぞれの端部を針棒クランクロッド、天秤に挿入するように構成することも可能である。
2 上軸
3 釣合錘
4 針棒クランク
5 針棒クランクロッド
6 天秤クランク
7 天秤
8 天秤
9 針棒クランク
7a 糸掛部
10 ミシンフレーム
11 針棒
12 縫い針
14 針棒抱き
20 針棒クランクロッド
20a 収容孔
21 ボールベアリング(クランクロッド軸受)
24 糸切刃
41 固定軸
42 本体部
42c 被覆部
42d 溝部
43 支持軸
44 第1凸部
46 クランクロッド軸受カバー
51 ボールベアリング(クランクロッド軸受)
52 軸受部材(クランクロッド軸受)
54 第2凸部
54a 第2凸部
58 糸切刃
71 ボールベアリング(天秤軸受)
81 軸受部材(天秤軸受)
91 固定軸
92 支持軸
93 本体部
96 突起部
97 傾斜部
98 天秤軸受カバー部
Claims (6)
- ミシンモータにより軸回りに回転する上軸と、この上軸に固定された釣合錘と、この釣合錘に固定される針棒クランクと、一端部が前記針棒クランクに回動自在に連結され、他端部が針棒を保持する針棒抱きに回動自在に連結された針棒クランクロッドと、一端部がミシンフレームに回動自在に支持された天秤クランクと、この天秤クランクに回動自在に連結されるとともに、一端部が前記針棒クランクに回動自在に連結され、他端部に糸を通す糸掛部が形成され、前記糸掛部に通された糸を引き上げる天秤と、を備えるミシンにおいて、
前記針棒クランクは、前記針棒クランクロッド側に突出する第1凸部を有し、
前記針棒クランクロッドは、前記針棒クランク側に突出する第2凸部を有し、
前記第2凸部は、その先端部が前記第1凸部の先端部よりも前記針棒クランク側に突出するように設けられ、
前記針棒クランクロッドと前記針棒クランクとの連結部における回動中心から前記第2凸部までの距離が、当該回動中心から前記第1凸部までの距離よりも短くなるように各凸部を設けたことを特徴とするミシン。 - 前記針棒クランクにおける前記針棒クランクロッド側の表面には、前記ミシンモータを駆動させた場合に前記第2凸部が描く軌跡に対向する溝部が形成され、
前記第2凸部は、その先端部が前記溝部に収容されるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のミシン。 - 前記針棒クランクロッドは、前記針棒クランクを回動自在に支持するクランクロッド軸受を有し、
前記針棒クランクは、前記釣合錘に固定され、前記天秤を回転自在に支持する固定軸と、前記クランクロッド軸受に挿通され、前記針棒クランクロッドを回転自在に支持する支持軸と、前記固定軸と前記支持軸との間で両軸を支持する本体部と、を有し、
前記本体部の外周の少なくとも一部には、前記クランクロッド軸受側に突出して前記本体部と前記クランクロッド軸受との隙間を覆う被覆部が設けられ、
前記被覆部は、前記針棒クランクロッドと前記針棒クランクとの連結部における回動中心からの距離が、当該回動中心から前記第2凸部までの距離よりも短くなるように設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のミシン。 - 前記針棒クランクロッドは、前記針棒クランクを回動自在に支持するクランクロッド軸受を有し、
前記針棒クランクは、前記釣合錘に固定され、前記天秤を回転自在に支持する固定軸と、前記クランクロッド軸受に挿通され、前記針棒クランクロッドを回転自在に支持する支持軸と、前記固定軸と前記支持軸との間で両軸を支持する本体部と、を有し、
前記本体部は、
前記針棒クランクロッド側の端面が前記クランクロッド軸受に対向するように配置され、前記針棒クランクロッド側の端部から前記天秤側の端部に向かうにつれて前記支持軸の軸線側に傾斜する傾斜部と、
前記天秤側の端面であって前記傾斜部の前記天秤側の端部側に設けられ、前記固定軸の軸線に沿って前記天秤側に突出する突起部と、を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のミシン。 - 前記針棒クランクロッドは、前記針棒クランクを回動自在に支持するクランクロッド軸受と、前記針棒クランク側に開口され、前記クランクロッド軸受を収容する収容孔と、を有し、
前記天秤は、前記針棒クランクを回動自在に支持するとともに前記針棒クランクロッド側の端面が前記針棒クランク側に突出するように設けられた天秤軸受を有し、
前記針棒クランクは、前記天秤軸受に挿通されるとともに前記釣合錘に固定され、前記天秤を回転自在に支持する固定軸と、前記クランクロッド軸受に挿通され、前記針棒クランクロッドを回転自在に支持する支持軸と、前記固定軸と前記支持軸との間で両軸を支持する本体部と、を有し、
前記クランクロッド軸受は、前記針棒クランク側の端面が前記針棒クランクロッドにおける前記針棒クランク側の端面に対して凹むように前記収容孔内に配置され、
前記本体部は、
前記針棒クランクロッド側の端部が前記収容孔に収容されるとともに、前記針棒クランクロッド側の端部から前記天秤側の端部に向かうにつれて前記固定軸の軸線側に傾斜する傾斜部と、
前記天秤側の端面であって前記傾斜部の前記天秤側の端部側に設けられ、前記固定軸の軸線に沿って前記天秤側に突出する突起部と、
前記天秤側の端部の外周の少なくとも一部に設けられ、前記天秤側に突出して前記針棒クランクと前記天秤軸受との隙間を覆う天秤軸受カバー部と、
を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のミシン。 - 前記針棒クランクロッドは、前記針棒クランクを回動自在に支持するクランクロッド軸受と、前記針棒クランク側に開口され、前記クランクロッド軸受を収容する収容孔と、を有し、
前記針棒クランクは、前記釣合錘に固定され、前記天秤を回転自在に支持する固定軸と、前記クランクロッド軸受に挿通され、前記針棒クランクロッドを回転自在に支持する支持軸と、前記固定軸及び前記支持軸を支持する本体部と、を有し、
前記クランクロッド軸受は、前記針棒クランク側の端面が前記針棒クランクロッドにおける前記針棒クランク側の端面に対して凹むように前記収容孔内に配置され、
前記支持軸には、前記クランクロッド軸受の前記針棒クランク側の端面を覆うと共に、前記収容孔に収容されるクランクロッド軸受カバーが設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のミシン。
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