JP5310112B2 - 平板スピーカ - Google Patents

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本発明は、住宅やオフィスビル等の居住空間の壁や天井に設置して使用される平板スピーカに関するものである。
近年、住宅やオフィスビル等の居住空間において、天井や壁のパネルをスピーカの振動板として用い、居住空間内の人物がスピーカの存在を感じずに音楽等を聴取可能となる天井や壁と一体型のスピーカの技術が提案されている。
しかしながら、この種のスピーカは、振動板と結合されたフレームに振動板の振動が固体伝播することでフレーム自身が振動して音を発生してしまい、この結果、フレームから発生した音が天井裏や壁裏といった空間へ放射され、上階や隣室といった、本来意図していない部屋へ音が漏れ出すという課題があった。
特に、マンションやオフィスビル等の省スペース化された建築物では近隣の部屋同士の天井と床、あるいは壁と壁との距離が極めて近く、上記の課題が特に問題視されていた。
この課題の解決方法としては、特許文献1のような方法が周知となっている。
特許文献1に記載の技術は、図4に示すように振動板としての面材101を振動用アクチュエータ102にて振動させることにより、天井から居住空間(特許文献1では浴室)に音楽等の音情報を出力するものである。そして、特許文献1に記載の技術では、隣接する部屋等へ音が漏れ出ることを防ぐために、面材101を覆うように遮音材103を配設している。
すなわち、スポンジ等の吸音材や防振ゴムと硬質板材とを交互に積層した制振部材などを用いて、面材から室外側(天井裏側)に発せられる音を遮音することにより、他の部屋へ音が漏れ出ることを防ごうというものであった。
特開2006−133639号公報
確かに、特許文献1に記載の技術によると、音や振動が他の部屋に漏れるのをある程度防止することは可能であった。
しかしながら、特許文献1のような吸音材や制振部材などの遮音材103を用いた方法は十分な量の吸音材や制振部材を用いないと効果が薄かった。
したがって、省スペース化された建築物の天井裏等に設けられたスピーカに対して特許文献1に記載の方法を用いようとしても、他の部屋への音漏れを防ぐための十分な量の吸音材や制振部材を設置するスペースを確保することは難しく、効果的に音漏れを防ぐことができないのが現状であった。
そこで、本発明はこのような課題を鑑みてされたものであり、平面スピーカの音声出力に伴う振動の影響を抑制し、他の部屋への音漏れを低減することを目的とするものである。
そして、この目的を達成するために本発明の平板スピーカは、開口部を有する皿状のフレームと、前記フレームの開口部に設けられた平板状の振動板と、前記フレーム内に設けられるとともに、前記振動板に結合され、前記振動板を振動させる駆動部と、前記振動板の音声出力方向とは逆側に設けられた制振装置とを備え、前記制振装置は制振対象となる振動に対し相殺振動を発生する構成とした。
上記構成により本発明の平板スピーカは、他の部屋への音漏れを低減することができる。
これは、本発明の平板スピーカが、制振装置を有していることによる。
すなわち、本発明の平板スピーカにおいては、制振装置が他の部屋への音漏れの原因となる振動に対して逆位相の振動を出力し、この音漏れの原因となる振動を相殺する構成となっている。
この結果、平面スピーカの音声出力に伴う振動の影響を抑制し、他の部屋への振動を含めた音漏れを低減することができる。
(実施の形態1)
以下、実施の形態1の平板スピーカ1の構成について、図面を用いて説明する。
図1は、天井や壁等に設置することを目的とした本実施の形態の平板スピーカ1の背面図であり、図2は平板スピーカ1の正面図である。また、図3は図2の破線A−Aに沿う断面図である。
図1の背面図に示すように、本実施の形態における平板スピーカ1の背面には、鉄製のフレーム2が取り付けられている。ここで背面とは、平板スピーカ1に音声出力方向と逆側の面を指す。このフレーム2は後に詳述する平板スピーカ1の各構成部材を支持する部材である。本実施の形態においてフレーム2は図1に示すように上面視において略正方形の形状とした。なお、フレーム2の略中央は突起2aが設けられており、この突起2aの内側において後に図3にて示す駆動部10等の各部材が収納されている。
なお、フレーム2の材質としては、鉄以外にもアルミ等の軽金属、樹脂、木等を用いても良い。その場合、スピーカ全体の重量が軽くなるという効果が得られる。
フレーム2上には、本発明のポイントである制振装置3が設置されている。この制振装置3は、振動検出部4、制御部5、および振動発生部6とを備えている。制御部5は、振動検出部4および振動発生部6とそれぞれコード7、コード8にて接続されている。
振動検出部4は、平板スピーカ1のフレーム2に2箇所設けられている。なお、本実施の形態では振動検出部4を2箇所設けたが、これに限らず1箇所のみであってもよいし、3箇所以上設けても良い。本実施の形態において、振動検出部4は圧電素子を用いた加速度センサにて構成されており、設置箇所で生じている振動を検出する。すなわち、本実施の形態の振動検出部4は、フレーム2の加速度の変化を基に、制振対象となるフレーム2の振動の周波数を検出している。なお、振動検出部4は加速度センサ以外にも角速度センサ、角加速度センサ、速度センサ、角変位センサ等、振動を検出可能なものであれば何でも良い。この振動検出部4が検出したフレーム2の振動情報はコード7を介し、信号として制御部5に入力される。
制御部5は、一般的なコンピュータにて構成される。制御部5は、入力された振動情報を基に、制振対象であるフレーム2で生じている振動を低減するための制振信号を生成する。そして、この制御部5にて生成された制振信号は必要に応じてアンプ(図示せず)にて増幅され、コード8を介して振動発生部6へ入力される。
なお、制御部5は、帯域フィルタを用いて特定の周波数成分の振動を抽出し、この抽出された周波数成分に対して制振信号を生成する構成としてもよい。一般的に、高域の周波数帯の振動は減衰が大きく、空間を伝わりにくく、また固体伝播もしにくい。したがって、高域の周波数帯の振動に対しては低減させる必要はさほどなく、中域以下(500Hz以下)の周波数帯の振動を制振対象の振動として絞り、これらの振動を低減させる構成とすると効率よく効果を奏し得る。このような理由から、制御部5は、帯域フィルタを用いて特定の周波数成分の振動を抽出する構成としてもよい。
振動発生部6は、フレーム2を加振することで制御対象となる振動を低減する装置である。すなわち、制御部5から制振信号が入力されると、振動発生部6は制御信号に基づいてフレーム2の振動と逆位相の振動を発生する。そして、この逆位相の振動を相殺振動として作用させることで、フレーム2の振動を低減する。
この振動発生部6は、フレーム2に2箇所設けられており、振動検出部4と近接して配置されている。なお、本実施の形態では振動発生部6を2箇所設けたが、これに限らず1箇所のみであってもよいし、3箇所以上設けても良い。特に、本実施の形態においては振動発生部6の設置箇所を、フレーム2の突起2aとフレーム2の外周端の略中央としている。本実施の形態のフレーム2は、突起2aのフレーム2の外周端の略中央は平面状となっており、この部分の強度は曲げ加工の施された周囲部分よりも弱く振動しやすいため、上階や隣室への漏れ出す振動や音の発生源となりやすい。したがって、このように平面状となった部分の振動を制振すると効率的に本発明の効果を奏することができるため、上記のような配置としている。
なお、振動発生部6は、内部に電磁石にて形成された重り(図示せず)と永久磁石(図示せず)とを備えており、この重りが励磁されて永久磁石と反応することでフレーム2に対して垂直な方向に振動し、振動を発生する仕組みとなっている。このように、本実施の形態の振動発生部6にはいわゆるムービング・コイル型のアクチュエータを用いたが、これに限らず超磁歪型や電歪型のアクチュエータ等、入力される制振信号に基づいて振動を発生可能なものであれば何でも良い。
次に、平板スピーカ1の正面図を図2に示す。
天井板や壁板を兼ねた薄い木でできた振動板9は、略平板状で、その形状は本実施の形態の場合、一辺が60cmの四角形としている。このように、本実施の形態の平板スピーカ1を正面、すなわち平板スピーカ1の使用者の居住空間内側から見た場合、その形状は単なる天井板あるいは壁板としてしか見えず、使用者はスピーカとしての存在を感じずに音楽等を楽しむことができる。
なお、振動板9として他の素材を用いてもよい。例えば、軽量硬質素材の樹脂板、発泡樹脂板、金属板等でも振動板9を形成することは可能である。その場合、振動板の材料毎に違った音質を楽しむことができる。
また、本実施の形態1では、振動板9の形状は四角形状であるが、円形や多角形等の他の形状であっても良い。その場合、スピーカのデザインの自由度が増すという効果を奏する。
次に、平板スピーカ1の断面図を図3に示し、平板スピーカ1を構成する各部材について説明する。
まず、前述したフレーム2は、図3および図1からわかるように皿状の形状を有している。フレーム2の開口部には前述の振動板9が取り付けられており、フレーム2の開口部は振動板9に合わせて四角形状となっている。なお、フレーム2の開口部は四角形状に限られることはなく、例えば振動板9の形状を四角形状以外の円形や多角形等の他の形状とした場合、フレーム2の開口部の形状もそれぞれの形状に合わせて変更してもよい。また、フレーム2と振動板9にて囲まれた空間は密閉状態となっている。
振動発生部6は、図3からもわかるように、フレーム2上に設けられている。また、図3には図示していないが、振動発生部6と同様に振動検出部4もフレーム2上に設けられている。すなわち、これら振動発生部6および振動検出部4は振動板9の音声出力方向とは逆側に設けられているものである。
駆動部10は、フレーム2と振動板9にて囲まれた空間内に設置されるとともに、フレーム2と振動板9のそれぞれと結合されている。この駆動部10は、フレーム2内底面と振動板9間の中央部に載置された磁気回路11と、ボイスコイル12が巻回されたボイスコイルボビン13とから構成されている。
磁気回路11は、フレーム2の底部中央にヨーク11aが固定され、その上にマグネット11bと上部プレート11cを設けて構成されている。なお、このヨーク11aと上部プレート11cの間には磁気ギャップ14が形成されている。
ボイスコイル12は、磁気回路11の磁気ギャップ14内に配挿されており、ボイスコイル12を巻回するボイスコイルボビン13は、振動板9に振動を伝達する振動伝達部としてのカプラー15を介して振動板9と連結されている。
ダンパー16は波打ったドーナツ状の形状を有しており、その内周側はボイスコイルボビン13と連結され、外周側はフレーム2内底面において突起2aの周縁と連結されて、ボイスコイルボビン13を支持している。
以下、本実施の形態における平板スピーカ1の動作について説明する。なお、以下において平板スピーカ1は天井に設置されたものとして説明を行うが、平板スピーカ1の設置箇所は天井に限られるものではない。
まず、外部から音声信号を付加した交流電流を流すと、駆動部10がこれに従って駆動し、ボイスコイルボビン13に連結された振動板9が上下振動を開始する。この結果、振動板9外部の空気が振動し、音が居住空間に向かって出力される。
一方、上述したように振動板9とフレーム2との間の空間は密閉状態となっているため、振動板9の上下振動に伴い、この密閉空間の空気圧が変動し始める。この空気圧の変化により、フレーム2も振動をしてしまう。あるいは、振動板9の振動が固体伝播によりフレーム2に伝わり、やはりフレーム2が振動してしまう。
このようにフレーム2が振動すると、この振動がフレーム2と接している天井裏の空間の空気を振動させ、この空気の振動が音となって振動とともに上階、もしくは隣室へと伝わる。
すなわち、フレーム2は振動源や音源としての役割を果たし、天井裏の空間に音が出力され、この結果、上階の部屋に振動や音が漏れてしまうのである。
そこで、本実施の形態の平板スピーカ1では、フレーム2に制振装置3を設けた構成としている。
フレーム2が振動すると、この振動を振動検出部4が制振対象の振動として検出し、特性を振動情報として制御部5に出力する。
制御部5は、振動検出部4から振動情報が入力されると、この振動情報を基に、フレーム2の振動を低減させるための制振信号を振動発生部6に出力する。すなわち、制御部5はフレーム2の振動に対して逆位相の振動を発生するように振動発生部6を制御する。
そして、制振信号が制御部5から入力された振動発生部6は、この制振信号に基づいて、フレーム2の振動に対して逆位相の振動を相殺振動として発生する。この相殺振動がフレーム2に加えられると、平板スピーカ1が音を出力したことに伴うフレーム2の振動と相殺振動とが打ち消しあい、結果としてフレーム2の振動が低減されることになる。
なお、振動発生部6から発生される相殺振動は、フレーム2の振動に対して逆位相であるとともに振幅が同等のものであることが望ましい。相殺振動の振幅がフレーム2の振動の振幅と近いほど、フレーム2の振動を適切に相殺できるからである。
以下、本実施の形態における平板スピーカ1の効果について説明する。
まず、本実施の形態の平板スピーカ1では、他の部屋への振動や音漏れを低減することができる。
すなわち、上述したように、平板スピーカ1から居住空間に向けて音を出力したことに伴ってフレーム2が振動したとしても、この振動を打ち消す相殺振動が制振装置3から出力されるため、天井裏等の空間にフレーム2を振動源や音源とする振動や音が出力されることを低減することができる。
このように本実施の形態の平板スピーカ1では、音声出力に伴う振動の影響を抑制し、他の部屋への音漏れを低減することができる。
したがって、本実施の形態における平板スピーカ1では他の部屋への振動や音漏れを低減することができるため、この平板スピーカ1を設置した居住空間の住人は上階や隣接する部屋の住人に迷惑をかける心配をすることなく音楽等を楽しむことが可能となる。
そして、本実施の形態における制振装置3は、振動検出部4、制御部5、および振動発生部6にて実現される。
振動発生部6から、フレーム2の振動に対して逆位相となる振動を出力することにより、フレーム2の振動を効果的に低減することができる。このことから、平板スピーカ1の使用者は、従来のスピーカに比べて居住空間に出力する音の制限を緩和することができ、より多様な音楽を大きな音量で楽しむことができる。
また、振動検出手段4はフレーム2に設けられることが望ましい。
振動することで天井裏等の空間に音を出力してしまう部材は、振動板9とフレーム2を接続する部材(図示せず)や平板スピーカ1と隣接した天井パネルのように他にも存在するが、その主たる振動源や音源となり得るのはフレーム2だからである。
したがって、フレーム2の振動を振動検出手段4にて検出し、この振動を低減させることが、他の部屋への振動や音漏れを防ぐという目的のためには最も効果的である。
同様の理由により、振動発生部6はフレーム2に設けられることが望ましい。
つまり、フレーム2の振動を振動発生部6からの相殺信号により低減させることが、他の部屋への振動や音漏れを防ぐという目的のためには最も効果的であり、このため何よりもフレーム2に振動発生部6を設けることが望ましい。
なお、図1に示したように本実施の形態において制御部5は、振動発生部6と別体の構成としたが、これに限ることなく制御部5を振動発生部6と一体のユニットとした構成としてもよい。
また、本実施の形態の平板スピーカ1においては、駆動部10はフレーム2と振動板9の中心部にそれぞれ結合されたものとしたが、これに限られることなく、中心部とずらして結合されてもよい。その場合、振動板9上で発生する分割共振を分散することができ、ピーク・ディップが抑制された周波数特性を得ることが可能となる。
また、駆動部10は動電型加振器、磁歪型加振器、電歪型加振器のいずれかを用いて構成されてもよい。
本発明にかかる平板スピーカは制振装置により、平板スピーカの音声出力に伴う振動を低減することが可能である。この結果、平板スピーカの振動や音漏れを低減することができ、上階や隣接する部屋の住人への迷惑を心配することなく使用者は音楽等を楽しむことができる。なお、本発明にかかる平板スピーカは、住宅、マンション、オフィスなどの部屋の天井板、壁板等を兼ねた音響機器として有用である。
実施の形態1における平板スピーカの背面図 実施の形態1における平板スピーカの正面図 実施の形態1における平板スピーカの(図2、破線A−Aにおける)断面図 従来の天井設置型スピーカの断面図
1 平板スピーカ
2 フレーム
2a 突起
3 制振装置
4 振動検出部
5 制御部
6 振動発生部
7 コード
8 コード
9 振動板
10 駆動部
11 磁気回路
11a ヨーク
11b マグネット
11c 上部プレート
12 ボイスコイル
13 ボイスコイルボビン
14 磁気ギャップ
15 カプラー
16 ダンパー

Claims (4)

  1. 開口部を有する皿状のフレームと、
    前記フレームの開口部に設けられた平板状の振動板と、
    前記フレーム内に設けられるとともに、前記振動板に結合され、前記振動板を振動させる駆動部と、
    前記振動板の音声出力方向とは逆側に設けられた制振装置とを備え、
    前記制振装置は、制振対象となる振動に対し相殺振動を発生するものであり、
    前記フレームの略中央に突起が設けられ、この突起の内側には前記駆動部が収納されていて、前記制振装置は、前記フレームの背面における前記突起以外の部分に設けられた平板スピーカ。
  2. 前記制振装置は、
    制振対象となる振動を検出する振動検出部と、
    前記振動検出手段から振動情報が入力され、この振動情報を基に制振信号を生成する制御部と、
    前記制御部から前記制振信号が入力される振動発生部とを備え、
    前記振動発生部は、入力された前記制振信号を基に、前記制振対象となる振動に対して逆位相である振動を前記相殺振動として発生する請求項1に記載の平板スピーカ。
  3. 前記振動検出手段は、前記フレームに設けられている請求項2に記載の平板スピーカ。
  4. 前記振動発生部は、前記フレームに設けられている請求項2に記載の平板スピーカ。
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