<通信システム及び通信モジュールの構成>
図1は実施の形態にかかる空気調和機の概念的な構成の一例を示している。図1に示される空気調和機10は室内機11と室外機12とを備えている。室外機12は通信システム20を備えている。なお、通信システム20は必ずしも空気調和機に用いられる必要はなく、任意のシステムに適用される。
通信システム20としてはいわゆるカレントループ方式を採用した通信システムが例示されている。通信経路50の一端は直流電源と接続され、他端は接地されている。かかる構成は、通信経路50がループ状の経路であることと等価である。通信経路50上には通信モジュール30,41〜44が相互に直列に設けられている。ただし、通信モジュール30,41〜44は例示であって、通信経路50上に設けられる通信モジュールの個数は任意である。以下では、説明を容易とするために、通信モジュール30を主モジュール30とも呼び、通信モジュール41〜44を副モジュール41〜44とも呼ぶ。
かかる通信システム20においては通信モジュール30,41〜44は通信経路50を流れるループ電流Iの変化を利用して情報の送受信、即ち通信を行う。通信動作の具体例については後述する。
主モジュール30は通信システム20において基幹的な役割を果たす。例えば主モジュール30は室内機11が有する制御部13との間で各種の情報を送受信する。かかる情報の送受信は有線であっても無線であっても構わない。また、主モジュール30は制御部13と副モジュール41〜44との間の情報の送受信を仲介する。そして、例えば制御部13及び副モジュール41〜44から受信した情報に基づいて所定の処理を行う。
副モジュール41〜44は主モジュール30との間でそれぞれ情報を送受信する。副モジュール41〜44には所定の装置261〜264がそれぞれ接続されており、装置261は副モジュール41を介した通信を利用して動作し、同様に装置262〜264はそれぞれ、自身に接続された副モジュール42〜44を介した通信を利用して動作する。
ここでは装置261,262として室外機12に設けられたファンを例示し、装置263,264として室外機12に設けられたコンプレッサを例示する。しかし、装置261〜264は当該例示に限定されない。また、かかる例示では室外機12は2台のファン261,262と2台のコンプレッサ263,364とを有する。即ち室外機12は同種の装置を複数台有しているが、室外機12の構成はかかる例示に限定されない。また装置261〜264の全てが異種の装置であってもよい。
コンプレッサ263,264は気体の冷媒を圧縮する装置であり、ここではコンプレッサ本体部と、コンプレッサ本体部の駆動を制御する制御部とを含む。また、ファン261,262は上記冷媒が流れる熱交換器(図示省略)に送風する装置であり、ここではファン本体部と、ファン本体部の駆動を制御する制御部とを含む。これらの装置261〜264の上記制御部には副モジュール41〜44がそれぞれ接続され、これによって上述したように装置261〜264は通信システム20を利用して動作することができる。
図2は主モジュールの概念的な構成の一例を示している。なお、図2では図1に例示した室内機11との接続を省略している。主モジュール30は、送信部120と、受信部130と、制御部150と、電源部110,160とを備えている。
電源部110は通信経路50に接続され、通信経路50に電流を流す電流源として機能する。例えば電源部110は定電流源113と、抵抗114と、ツェナーダイオード115とを備えている。抵抗114は通信経路50上に設けられている。定電流源113は抵抗114と共に定電流源を構成し、通信経路50を流れる電流を一定に保とうとする(但し、後述するように、信号を生成するために通信経路50が遮断しているときはこの限りではない)。ツェナーダイオード115は、そのアノード端子が定電流源113とは反対側の抵抗114の一端に、そのカソード端子が接地点にそれぞれ接続されており、通信経路50が遮断しているときに上記定電流源の電流経路となる。また、通信経路50へ電流が流れている時は通信経路50の電圧を保護する。
なお、電源部110は必ずしも定電流源として機能する必要はない。但し、通信経路50を流れる信号として、零以外の所定値と零との二値によって形成される電流信号を採用する場合には電源部110として定電流源を採用することが望ましい。通信経路50に設けられる通信モジュールの個数に依らず、所定値を一定とすることができるからである。これによって、電流信号の振幅を一定にでき、零との弁別が容易となる。なおここでは、電源部110が定電流源に限定されない態様を説明しつつも、より具体的な一例として、上記二値によって形成される電流信号を採用する態様、即ち電源部110として定電流源を採用することが望ましい態様についても説明する。
送信部120は通信経路50上に設けられ、制御部150と接続されている。送信部120は通信経路50を流れる電流を変化させて通信経路50へと信号を送出する。図2の例では送信部120はフォトカプラ121と、送信回路122とを備えている。
フォトカプラ121は入力部として発光素子の一例たるフォトダイオード72と、出力部として受光素子の一例たるフォトトランジスタ71とを備えている。フォトトランジスタ71は通信経路50上に設けられている。
送信回路122は、フォトダイオード72のアノード端子及びカソード端子と、制御部150とそれぞれ接続されている。送信回路122はフォトカプラ121を駆動するための回路である。送信回路122は制御部150からの制御信号に基づいてフォトダイオード72に流れる電流量、換言すればフォトダイオード72の発光量を調整する。フォトダイオード72の発光量に応じて、フォトトランジスタ71のコレクタ端子とエミッタ端子間に流れる電流量が調整される。かかる構成により、電流変化を利用した電流信号が、フォトトランジスタ71を介して送信部120から通信経路50へと送出される。
図2の例では、送信回路122はNPN形のトランジスタ73と、抵抗74とを備えている。トランジスタ73とフォトダイオード72と抵抗74とは直流電源111と接地点の間でこの順で相互に直列に接続されている。トランジスタ73のコレクタ端子は直流電源111側に、トランジスタ73のエミッタ端子は接地点側に接続されている。またトランジスタ73のベース端子が制御部150に接続されている。抵抗74はトランジスタ73及びフォトダイオード72に大電流が流れることを防止する。
かかる送信部120のより具体的な動作の一例について説明する。ここでは、トランジスタ73及びフォトトランジスタ72をスイッチ素子として機能させる。制御部150はトランジスタ73のベース端子へと制御信号を出力して、トランジスタ73の開閉を制御する。トランジスタ73が閉状態のときには直流電源111から送信回路122及びフォトダイオード72を介す経路に電流が流れ、フォトダイオード72が発光する。当該発光によって、フォトトランジスタ71が閉状態となる。またトランジスタ73が開状態のときには直流電源111から送信回路122及びフォトダイオード72を介す経路が遮断され、フォトダイオード72が消光する。当該消光によってフォトトランジスタ71が開状態となる。
制御部150は制御信号を送信部121に出力してフォトトランジスタ72を閉状態から開状態を介して閉状態へと遷移させる。つまり、ループ電流Iの値は零以外の所定値から零を経由して所定値へと変化する。かかる電流変化が電流信号として通信経路50を流れる。なお、この場合、電源部110として定電流源を採用することが望ましい。その理由は上述したとおりである。
またここでは、制御部150がマイクロコンピュータと記憶装置を含んで構成され、当該マイクロコンピュータがプログラムに記述された各処理ステップ(換言すれば手順)を実行し、また送信部120等を制御する場合を例示する。
かかる構成の制御部150によれば、マイクロコンピュータは処理ステップに対応する各種手段として機能し、又は、マイクロコンピュータによって処理ステップに対応する各種機能が実現される。なお制御部150によって実現される各種手段又は各種機能の一部又は全部をハードウェアによって実現することができる。
制御部150の上記記憶装置は、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、書き換え可能な不揮発性メモリ(EPROM(Erasable Programmable ROM)等)、ハードディスク装置などの各種記憶装置の1つ又は複数で構成可能である。当該記憶装置は、各種の情報やデータ等を格納し、また制御部150が実行するプログラムを格納し、また、プログラムを実行するための作業領域を提供する。
受信部130は通信経路50上で送信部120と直列に設けられ、制御部150と接続されている。受信部130は通信経路50を流れる電流の変化を検出して通信経路50から信号を受信して制御部150へと当該信号を送信する。図2の例では、受信部130はフォトカプラ131と、受信回路132とを備えている。
フォトカプラ131は入力部として発光素子の一例たるフォトダイオード75と、出力部として受光素子の一例たるフォトトランジスタ76とを備えている。フォトダイオード75は通信経路50上に設けられている。
受信回路132はフォトトランジスタ76のエミッタ端子及びコレクタ端子と、制御部150とに接続されている。フォトトカプラ131によれば、フォトダイオード75のアノード端子とカソード端子との間を流れる電流(即ちループ電流I)の量に応じてフォトダイオード75の発光量が変化し、当該発光量に応じてフォトトランジスタ75のコレクタ端子とエミッタ端子との間を流れる電流が変化する。受信回路132はこの電流の変化を制御部150へと伝達する回路である。
図2の例では、受信回路132は例えば抵抗77,78を備えている。抵抗77はフォトトランジスタ76のコレクタ端子と制御部150との間に接続されている。抵抗78は直流電源112とフォトトランジスタ76のコレクタ端子との間に接続されている。抵抗77,78はフォトトランジスタ76へと大電流が流れることを防止する。また直流電源112と抵抗78との間の点が制御部150に接続されている。フォトトランジスタ76のエミッタ端子は接地されている。
かかる受信部130のより具体的な一例について説明する。ここでは、フォトトランジスタ76をスイッチ素子として機能させる。例えば通信経路50を流れるループ電流Iの値が零以外の所定値であるとき、フォトダイオード75は発光する。当該発光によってフォトトランジスタ76は閉状態となる。これによって、直流電源112から受信回路132及びフォトトランジスタ76を介す経路に電流が流れる。制御回路150は当該電流を検知してループ電流Iが所定値であると認識する。また、ループ電流Iの値が零であるとき、フォトダイオード75は発光せず、フォトトランジスタ76は開状態となる。これによって、直流電源112から受信回路132及びフォトトランジスタ76を介す経路に電流が流れない。制御回路150は当該電流(零)を検知して、ループ電流Iの値が零であることを認識する。ループ電流Iが所定値から零を経由して所定値となることを制御回路150が認識して電流信号を受信する。
制御部150は、電源部160から電源の供給を受けて動作し、送信部120を介して信号を通信経路50に送出し、受信部130を介して通信経路50を流れる信号を受け取る。
図3は副モジュール41の概念的な構成の一例を示している。なお、ここでは副モジュール42〜44は副モジュール41と同一の構成を有しているものとする。以下では、副モジュール41〜44を代表して副モジュール40として説明する。
副モジュール40は、送信部200と、受信部210と、電源部240と、制御部250と、スイッチ部300と、スイッチ部400とを備えている。
送信部200は直流電源242と接続されて動作する。直流電源242は通信経路50とは独立した直流電源である。言い換えると、直流電源242は通信経路50とは接続されておらず、送信部200への供給電力を、通信経路50を流れるループ電流Iから取得する構成を採用していない。
送信部200は通信経路50上に設けられ、制御部250と接続されている。送信部200は通信経路50を流れるループ電流Iを変化させて通信経路50へと信号を送出する。図3の例では送信部200はフォトカプラ201と、送信回路202とを備えている。
フォトカプラ201は入力部として発光素子の一例たるフォトダイオード86と、出力部として受光素子の一例たるフォトトランジスタ85とを備えている。フォトトランジスタ85は通信経路50上に設けられている。
送信回路202は、フォトダイオード86のアノード端子及びカソード端子と、制御部250とそれぞれ接続されている。送信回路202はフォトカプラ202を駆動するための回路である。送信回路202は制御部250からの制御信号に基づいてフォトダイオード86に流れる電流量、換言すればフォトダイオード86の発光量を調整する。フォトダイオード86の発光量に応じて、フォトトランジスタ85のコレクタ端子とエミッタ端子間に流れる電流量が調整される。かかる構成により、電流変化を利用した電流信号が、フォトトランジスタ85を介して送信部200から通信経路50へと送出される。
図3の例では、送信回路202はNPN形のトランジスタ87と、抵抗88とを備えている。トランジスタ87とフォトダイオード86と抵抗88とは直流電源242と接地点の間でこの順で相互に直列に接続されている。なおトランジスタ87のコレクタ端子は直流電源242側に、トランジスタ87のエミッタ端子は接地点側に接続されている。またトランジスタ87のベース端子が制御部250に接続されている。抵抗88はトランジスタ87及びフォトダイオード86に大電流が流れることを防止する。なお、フォトトランジスタ85は、直流電源242からトランジスタ87へと流れる電流に応じて自身の抵抗値を変化させる可変抵抗と把握することもできるし、後述するように開閉するスイッチとしても把握できる。
かかる送信部200のより具体的な動作の一例について説明する。ここでは、トランジスタ87及びフォトトランジスタ85をスイッチ素子として機能させる。制御部250はトランジスタ87のベース端子へと制御信号を出力して、トランジスタ87の開閉を制御する。トランジスタ87が閉状態のときには直流電源242から送信回路202及びフォトダイオード86を介す経路に電流が流れ、以ってフォトトランジスタ85が閉状態となる。またトランジスタ87が開状態のときには直流電源242から送信回路202及びフォトダイオード86を介す経路が遮断され、以ってフォトトランジスタ85が開状態となる。
制御部250は制御信号を送信部200に出力してフォトトランジスタ85を閉状態から開状態を介して閉状態へと遷移させる。つまり、ループ電流Iの値は所定値から零を経由して所定値へと変化する。かかる電流変化が電流信号として通信経路50を流れる。
受信部210は直流電源241と接続されて動作する。直流電源241は通信経路50とは独立した直流電源である。言い換えると、直流電源241は通信経路50とは接続されておらず、受信部210への供給電力を、通信経路50を流れるループ電流Iから取得する構成を採用していない。
受信部210は通信経路50上で送信部200と直列に設けられ、制御部250と接続されている。受信部210は通信経路50を流れる電流の変化を検出して通信経路50から信号を受信して制御部250へと当該信号を送信する。図3の例では、受信部210はフォトカプラ211と、受信回路212とを備えている。
フォトカプラ211は入力部として発光素子の一例たるフォトダイオード81と、出力部として受光素子の一例たるフォトトランジスタ82とを備えている。フォトダイオード81は通信経路50上に設けられている。
受信回路212はフォトトランジスタ82のエミッタ端子及びコレクタ端子と、制御部250とに接続されている。フォトトカプラ211によれば、フォトダイオード81のアノード端子とカソード端子との間を流れる電流(即ちループ電流I)の量に応じてフォトダイオード81の発光量が変化し、当該発光量に応じてフォトトランジスタ82のコレクタ端子とエミッタ端子との間を流れる電流が変化する。受信回路212はこの電流の変化を制御部250へと伝達する回路である。
図3の例では、受信回路212は例えば抵抗83,84を備えている。抵抗84はフォトトランジスタ82のコレクタ端子と制御部250との間に接続されている。抵抗83は直流電源241とフォトトランジスタ82のコレクタ端子との間に接続されている。抵抗83,84はフォトトランジスタ82へと大電流が流れることを防止する。また直流電源241と抵抗83との間の点が制御部250に接続されている。フォトトランジスタ82のエミッタ端子は接地されている。
かかる受信部210のより具体的な一例について説明する。ここでは、フォトトランジスタ82をスイッチ素子として機能させる。例えば通信経路50を流れるループ電流Iの値が零以外の所定値であるとき、フォトダイオード81は発光する。当該発光によってフォトトランジスタ82は閉状態となる。これによって、直流電源241から受信回路212及びフォトトランジスタ82を介す経路に電流が流れる。制御回路250は当該電流を検知してループ電流Iが所定値であると認識する。また、ループ電流Iの値が零であるとき、フォトダイオード81は発光せず、フォトトランジスタ82は開状態となる。これによって、直流電源241から受信回路212及びフォトトランジスタ82を介す経路に電流が流れない。制御回路250は当該電流(零)を検知して、ループ電流Iの値が零であることを認識する。ループ電流Iの値が所定値から零を経由して所定値となることを制御回路250が認識して電流信号を受信する。
スイッチ部300は送信部200と並列に接続されている。スイッチ部300はその開閉制御が制御部250によって実行される。より具体的には、制御部250はスイッチ信号をスイッチ部300の制御端子へと印加することにより、スイッチ部300は開状態となる。またスイッチング部300は制御部250から上記制御信号が印加されない状態(無信号状態)で閉状態となる。つまり、スイッチング部300はいわゆる常閉型(ノーマリー・クローズド型とも呼ばれる)に構成されている。
ここではスイッチ部300が、いわゆるb接点リレーによって構成される場合を例示する(図3参照)。b接点リレーの場合、スイッチ部300を開状態にするためのスイッチ信号は励磁電圧に対応する。
スイッチ部400は電源部240と装置260との間に設けられている。スイッチ部400はその開閉制御が制御部250によって実行される。より具体的には、制御部250はスイッチ信号をスイッチ部300の制御端子へと印加することにより、スイッチ部300は閉状態となる。またスイッチング部300は制御部250から上記制御信号が印加されない状態(無信号状態)で開状態となる。つまり、スイッチング部300はいわゆる常開型(ノーマリー・オープン型とも呼ばれる)に構成されている。
ここではスイッチ部300が、いわゆるa接点リレーによって構成される場合を例示する(図3参照)。a接点リレーの場合、スイッチ部300を閉状態にするためのスイッチ信号は励磁電圧に対応する。
また図3の例示では、制御部250とスイッチ部300,400とが同じ端子に接続される。言い換えれば、スイッチ部300,400はいずれも同じスイッチ信号によって開閉制御される。よって、スイッチ部300,400をそれぞれ別の端子で制御部250と接続する場合に比べて回路規模を低減できる。
制御部250は、副モジュール40における各種の処理や制御を行う。例えば、制御部250は、送信部200を介して通信経路50へと信号を送出し、また受信部210を介して通信経路50から受信した信号に基づいて各種の処理を行う。例えば、図3に例示されるように制御部250と装置260が接続される場合、制御部230は装置260の運転状況に関する情報を当該装置260から取得し、取得した情報を送信部200を介して主モジュール30へと送信する。また、制御部250は主モジュール30から受信部210を介して受信した信号を装置260へと伝達する。なお、装置260として、ここでは上記のファン261,262とコンプレッサ263,264とのいずれか1つが例示される。
制御部250は電源部240に接続されている。これにより、制御部250は電源240からの電力供給によって動作する。ここでは電源部240は通信経路50とは接続されておらず、制御部250への電力供給をループ電流Iから取得する構成を有していない。
またここでは、制御部250がマイクロコンピュータと記憶装置を含んで構成され、当該マイクロコンピュータがプログラムに記述された各処理ステップ(換言すれば手順)を実行し、また送信部200等を制御する場合を例示する。但し、制御部250はこれに限らず、その機能をハードウェアで実現しても構わない。
かかる構成の制御部250によれば、マイクロコンピュータは処理ステップに対応する各種手段として機能し、又は、マイクロコンピュータによって処理ステップに対応する各種機能が実現される。なお制御部250によって実現される各種手段又は各種機能の一部又は全部をハードウェアによって実現することができる。
制御部250の上記記憶装置は、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、書き換え可能な不揮発性メモリ(EPROM(Erasable Programmable ROM)等)、ハードディスク装置などの各種記憶装置の1つ又は複数で構成可能である。当該記憶装置は、各種の情報やデータ等を格納し、また制御部250が実行するプログラムを格納し、また、プログラムを実行するための作業領域を提供する。
このような副モジュール40においては、送信部200及び受信部210が通信経路50とは独立した直流電源242,241をそれぞれ動作源としている。よって、送信部200及び受信部210が通信経路50を流れるループ電流Iから動作電力を得る態様と比べて、ループ電流Iの源となる電源部110の容量を低減することができる。なお、送信部200及び受信部210のいずれもが通信経路50とは独立した直流電源を動作源とする必要はなく、少なくとも何れか一方が通信経路50とは独立した直流電源を動作源とすればよい。また本実施の形態では、制御部250についての電源部240も通信経路50とは独立しているので、更に電源部110の容量を低減できる。
また、このような副モジュール40は、カレントループ通信において、副モジュール40を待機させる待機方法の実行に寄与する。以下において、まず、カレントループ通信における基本的な動作を概説し、続いて待機動作について説明する。なお、ここでいう待機とは、通信モジュールの機能の少なくとも一部を実現する構成要素において、電源から当該構成要素に流れる電流を遮断して、当該構成要素が果たす機能を停止させることを意味する。また、電源から、待機状態である構成要素に電流を流して、当該構成要素の機能が実行可能な状態とすることを復帰と呼ぶ。
<通信システムにおける基本的動作>
図4は通信システム20による基本的動作を概説するタイミングチャートの一例を示している。なお、かかる基本的動作において、制御部250はスイッチ部300へとスイッチ信号を出力し、スイッチ部300を開状態としている(図3を参照)。
図4には、主モジュール30及び副モジュール41,42が送出する電流信号と、通信経路50上を伝播する電流信号(換言すれば、各通信モジュール30,41〜44によって受信される電流信号)とが図示される。但し、各電流信号の波形は、図4の例に限定されるものではない。なお、副モジュール43,44が送出する電流信号は、図4では省略されているが、副モジュール41,42からの電流信号と同様に説明される。
通信モジュール30,41〜44は、ループ電流Iを異なる電流値Im,Is間で遷移させることにより、電流信号を生成する。具体的には、制御部150,250が、送信部120,200のフォトトランジスタ71,85(図2及び図3を参照)の開閉状態を、送信データに基づいてそれぞれ切り替える。これにより、ループ電流Iが電流値Im,Is間で遷移する(換言すれば電流値Im,Isの差を振幅とする)電流パルス列が送信信号として通信経路50へと送出される。
図4の例では、電流値Imが送信部120,200のフォトトランジスタ71,85が閉状態であるときに生じる電流値であり、ここでは主モジュール30に設けられた電源部110から供給される電流の電流値である。他方、電流値Isは、送信部120,200のフォトトランジスタ71,85が開状態であるときに生じる電流値であり、ここでは零である。電流値Imの一定性、ひいては電流信号の振幅の一定性は電源110の定電流源113によって保証される。なお、電流値Imを採るループ電流Iはマーク電流と呼ばれ、電流値Isを採るループ電流Iはスペース電流と呼ばれる場合がある。
なお、例えば、電流値Isを零以外の値に設定してもよい。かかる例では、電流値Im,Isのいずれの場合においてもフォトトランジスタ71,85が閉状態であるが、異なる電流値Im,Isを生成することが可能である。但し、この場合、電源部110として定電流源は採用されない。また、電流値Imは電源部110による設定値以外の値を採用してもよく、電流値Im,Isの2値だけでなく、3つ以上の電流値を利用して電流信号を生成してもよい。
図4の例示では、各通信モジュール30,41〜44の送信期間は互いにずれており、このため通信経路50上には各通信モジュール30,41〜44からの送信信号が順次、干渉しないように現れる。なお、送信期間の分離は一般的なカレントループ通信で採用されているため、ここでは詳しい説明は省略する。
通信経路50上を伝播する電流信号は、各通信モジュール30,41〜44によって受信可能である。例えば、各通信モジュール30,41〜44は、通信経路50を介して伝播された信号を全て受信部130,210で受信し、制御部150,250による解読によって、自身に関連した情報を選択的に取得する。例えば各通信モジュール30,41〜44は信号に宛先情報(例えば通信アドレス)を付与して送信し、通信モジュール30,41〜44は受信した信号の宛先情報を解読し、自身に設定された宛先情報と同一であれば当該信号に付与された情報を取得する。
<待機動作及び復帰動作>
図5は副モジュール40の待機動作の一例を示すフローチャートである。まず、ステップS11にて制御部250は通信経路50を介して待機指令を受信したかどうかを判断する。待機指令は例えば主モジュール30(より具体的には制御部150)によって通信経路50を介して副モジュール40へと送信される。例えば制御部150は、所定の装置260を動作させる必要がないと判断したときに、当該所定の装置260に接続された副モジュール40に対して待機指令を送信する。
ステップS11にて待機指令を受信しないと判断したときは処理を終了する。ステップS11にて待機指令を受信したと判断したときは、ステップS12にて制御部250はスイッチ部300,400へと与えるスイッチ信号の出力を停止する。スイッチ部300は常閉型のスイッチであるので、スイッチ部300は閉状態となる。スイッチ部400は常開型のスイッチであるので、スイッチ部400は開状態となる。これによって、電源部240から装置260へと与えられる電力が遮断されるので、装置260での消費電力を低減できる。なお、装置260への電力供給を遮断することは必須の要件ではない。
次にステップS13にて制御部250は直流電源242から送信部200へ流れる電流を遮断して、送信部200の機能を停止させる。例えば具体的には、制御部250がトランジスタ87へと制御信号(例えば電圧値が零)を送信してこれを閉状態にさせる。これによって、直流電源242からトランジスタ87、フォトダイオード86及び抵抗88へと流れる電流が遮断される。従って、送信部200で消費される電力(その大部分はフォトダイオード86と抵抗88とで消費される電力)を低減することができる。
また、このときフォトトランジスタ85が開状態となるものの、送信部200と並列接続されたスイッチ部300が閉状態であるので、通信経路50が遮断されない。しかも制御部250は、待機指令を受信したとしても、直流電源241から受信部210へ流れる電流を遮断しない。言い換えると受信部210の機能を停止させない。これによって、副モジュール40の送信部200が待機中であっても、通信経路50を流れる信号を受信することができる。より具体的には主モジュール30からの復帰指令(待機状態を解除する指令)を受信することができる。
図6は副モジュール40の復帰動作の一例を示すフローチャートである。まずステップS21にて制御部250は通信経路50を介して復帰指令を受信したかどうかを判断する。復帰指令は例えば主モジュール(より具体的には制御部150)によって通信経路50を介して副モジュール40へと送信される。例えば制御部150は、待機状態にある所定の装置260を動作させる必要があると判断したときに、当該所定の装置260に接続された副モジュール40に対して復帰指令を送信する。
ステップS21にて復帰指令を受信しないと判断したときは処理を終了する。ステップS21にて復帰指令を受信したと判断したときは、ステップS22にて制御部250は直流電源242から送信部200に電流を流して、送信部200の機能を復帰させる。例えば具体的には、制御部250がトランジスタ87へと制御信号(例えば電圧値が零以外の所定値)を送信してこれを閉状態にさせる。これによって、直流電源242からトランジスタ87、フォトダイオード86及び抵抗88を介す経路に電流が流れる。これによって、フォトトランジスタ85が閉状態となる。
次に、ステップS23にて制御部250はスイッチ部300,400へスイッチ信号(例えば電圧値が零以外の所定値)を出力する。スイッチ部300は常閉型のスイッチであるので、スイッチ部300は開状態となる。スイッチ部400は常開型のスイッチであるので、スイッチ部400は閉状態となる。
ステップS22,S23の処理を実行することによって、制御部250は送信部200を介して通信経路50へと信号を送出することができる。また、装置260への電力供給を再開できる。なおステップS22,S23の処理はいずれを先に実行しても構わない。
<副モジュールのより具体的な構成例>
図7は副モジュールの概念的な構成の他の一例を示している。副モジュール40は、図3に示す副モジュール40と比較して、スイッチ部300の代わりにスイッチ部300Bを備えている。
スイッチ部300Bはスイッチ部300と同様に常閉型のスイッチ部であって、複数の回路素子で構成されている。より具体的には例えばスイッチ部300Bは、NPN形のトランジスタ311と、抵抗312と、フォトカプラ313と、駆動回路314とを備えている。フォトカプラ313は、入力部として発光素子の一例であるフォトダイオードと、出力部として受光素子の一例であるフォトトランジスタを備えている。
トランジスタ311は、コレクタ端子が送信部200と受信部210との間に、エミッタ端子が送信部200に対して受信部210とは反対側にそれぞれ接続されて、送信部200と並列に接続されている。トランジスタ311のベース端子は抵抗312を介してトランジスタ311のコレクタ端子に接続されている。
フォトカプラ313のフォトトランジスタは、コレクタ端子がトランジスタ311のベース端子に、エミッタ端子がトランジスタ311のエミッタ端子にそれぞれ接続されている。
駆動回路314は、フォトカプラ313のフォトダイオードのアノード端子およびカソード端子と、制御部250に接続されている。駆動回路314はフォトカプラ313を駆動するための回路である。駆動回路314は制御部250からのスイッチ信号に基づいてフォトカプラ313のフォトダイオードに流れる電流量、換言すれば発光量を調整する。当該発光量に応じて、フォトカプラ313のフォトトランジスタのコレクタ端子とエミッタ端子間に流れる電流量が調整される。
かかる駆動回路314によれば、制御部250からのスイッチ信号(例えば電圧値が零以外の所定値)を受けて、フォトカプラ313のフォトダイオードに電流を流して当該フォトトランジスタを発光させる。この発光によって、フォトカプラ313のフォトトランジスタが閉状態となり、以ってトランジスタ311のエミッタ端子及びコレクタ端子が当該フォトトランジスタを介して短絡される。よって、トランジスタ311のベース端子にはベース電流が流れ込まず、トランジスタ311は開状態となる。また、制御部250から駆動回路314へと出力される制御信号が停止すると、フォトカプラ313のフォトダイオードへと流れる電流を遮断し、以ってフォトカプラ313のフォトトランジスタを開状態とする。これによって、トランジスタ311のベース端子とエミッタ端子との間に所定の電圧が印加されて、トランジスタ311のベース端子へと電流が流れ、以ってトランジスタ311のコレクタ端子及びエミッタ端子が導通する。言い換えると、トランジスタ311が閉状態となる。
図7の例では、駆動回路314はNPN形のトランジスタ3141と、抵抗3142とを備えている。トランジスタ3141、フォトカプラ313のフォトダイオード及び抵抗3142は、直流電源243と接地点との間でこの順で相互に直列に接続されている。トランジスタ3141のコレクタ端子が直流電源234に、エミッタ端子がフォトカプラ313のフォトダイオードのアノード端子に、ベース端子が制御部250にそれぞれ接続されている。抵抗3142はフォトカプラ313のフォトダイオードのカソード端子と接地点との間でそれぞれ接続されている。
このような通信システムにおいて、待機動作及び復帰動作は上述した説明(図5,6を参照)と同一である。但し、待機動作において、ステップS12にて、制御部250はスイッチ部300Bへと与えるスイッチ信号を停止して、スイッチ部300B(より具体的にはトランジスタ311)を閉状態とする。このとき、トランジスタ3141が開状態であって、直流電源243からフォトカプラ313のフォトダイオード及び抵抗3142へと流れる電流が遮断される。言い換えると、直流電源243から駆動回路313へと流れる電流を遮断して駆動回路313を待機させている。これによって、スイッチ部300Bでの消費電力(その大部分はフォトカプラ313のフォトダイオード及び抵抗312,3142で消費される電力)を低減できる。
<異常判定>
図1乃至図3及び図7を参照して説明した通信システムは、以下で説明する、主モジュール30が通信経路50を介して副モジュール40の異常を検知する方法に寄与する。
例えば主モジュール30(より具体的には制御部150)が通信経路50を介して副モジュール40に返答を要求する信号を送信し、主モジュール30が、信号を送信した副モジュール40からの返答を受信しない場合について考慮する。
なお、ここでいう信号を送信するとは、正常に信号が送信されていることを意味する。正常に信号が送信されていることは例えば次の方法で確認される。主モジュール30及び副モジュール40の各々は通信経路50上で相互に直列接続された送信部と受信部とを有しているので、主モジュール30及び副モジュール40は自身が送信した電流信号を自身で受信することができる。主モジュール30あるいは副モジュール40は、自身が送信した電流信号と自身が受信した電流信号とを比較し、これらが一致するときに正常に電流信号が送信されたと判定する。
そして、主モジュール30が正常に信号を送信しているにもかかわらず、副モジュール40から返答を受信しないときは、主モジュール30は返答を送信しない副モジュール40に異常が発生していると判定する。
主モジュール30の具体的な動作の一例を図8に示す。まず、ステップS31にて、主モジュール30において、制御部150は送信部120を介して通信経路50へと信号を送出する。かかる信号には宛先情報として例えば副モジュール41の通信アドレスを含んでいる。また当該信号は返答を要求する情報も含んでいる。
次にステップS32にて、制御部150はステップS31にて送信した信号を、受信部130を介して受信する。
次にステップS33にて、制御部150はステップS31にて送信した信号とステップS32にて受信した信号とを比較して、これらが一致するかどうかを判断する。
ステップS33にて一致していないと判断されると、ステップS34にて制御部150は通信システムに異常が発生していると判定する。
ステップS33にて一致すると判断されると、ステップS35にて制御部150はステップS31にて送信した信号に対する返答を受信したかどうかを判断する。
ステップS35にて返答を受信した場合は処理を終了する。ステップS35にて返答を受信していない場合は、ステップS36にて制御部150はステップS31を実行してから所定期間が経過したかどうかを判定する。かかる時間の経過判定は例えば公知のタイマー回路を用いて実行できる。
ステップS36にて所定時間を経過していないときはステップS35を再び実行する。ステップS36にて所定時間を経過していると判断したときはステップS37にて制御部150は、ステップS31にて送信した信号に含まれる宛先情報が示す副モジュール41に、異常が生じていると判定する。
このような動作によれば、主モジュール30が正常に信号を送信できる状態、即ち、少なくとも通信経路50が遮断されていない状態であって、副モジュール41〜44のいずれかに異常が生じているときに、異常が生じた副モジュール40を特定することができる。
但し、本通信システムにおいて、上述した待機動作及び復帰動作が行われる場合、副モジュール40が待機状態であれば異常が生じていないにも関わらず、副モジュール40から信号が送信されない。かかる場合は異常が生じていると判定しないことが望ましい。
そこで、主モジュール30は副モジュール40が待機状態であるのか否かを認識する。例えば副モジュール40が主モジュール30から待機指令を受信したとき(図5のステップS11にて肯定的な判断を行ったとき)に、主モジュール30へと待機指令を受信した旨の返答を行い、主モジュール30がこの返答を受信したときに返答を送信した副モジュール40が待機状態であると認識する。また、例えば副モジュール40が復帰指令を受信したとき(図6のステップS21にて肯定的な判断を行ったとき)に、副モジュール40は主モジュール30へと復帰指令を受信した旨の返答を行い、主モジュール30がこの返答を受信したときに返答を送信した副モジュール40が待機状態ではないと認識する。
そして、主モジュール30は、待機状態ではない副モジュール40へと、返答を必要する信号を正常に送信し、副モジュール40からこの返答を受信しないときに、副モジュール40に異常が生じていると判定する。これによって、副モジュール40が待機状態であって返答しない場合に異常であると判定しないので、異常判定の精度を向上することができる。
図9は主モジュールの概念的な構成の一例を示している。図2に示す主モジュール30と比較して、本主モジュール30は、表示部170と、記録媒体180とを更に備えている。
表示部170は例えばLEDや液晶表示装置であって、制御部150に接続されている。制御部150は副モジュール40に異常が発生していると判定したときに、副モジュール40に異常が発生した旨を表示する。これによって、異常が発生していること、及び異常が発生している副モジュール40を知ることができ、以って作業員あるいはユーザに適切な対応を促すことができる。なお、表示部170に異常を表示する態様に限らず、例えば警告音もしくは音声で、副モジュール40に異常が発生したことを報知してもよい。
記録媒体180は例えばEEPROM(Electrically Erasable PROM)であって、制御部150に接続されている。制御部150は副モジュール40に異常が発生していると判定したときに、副モジュール40に異常が発生した旨を記録媒体180に記録する。副モジュールが待機状態であるか否かを記憶してもよい。なお、記録媒体150は例えば制御部50が有するものであってもよいし、制御部50とは別に設けられたものであってもよい。記録媒体180に異常が記録されるので、通信システムの故障解析に寄与する。