JP5309539B2 - 精製シリコンの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は精製シリコンの製造方法に関し、詳しくはアルミニウムを含む原料シリコン融液
を、鋳型内にて、温度勾配を一方向に設けた状態で冷却することにより凝固させる、いわ
ゆる方向凝固法により、精製シリコンを製造する方法に関する。
アルミニウムを含む原料シリコン融液(2)からアルミニウムを除去して精製シリコン(1)を
製造する方法として、図1に示すように、鋳型(3)内にて、原料シリコン融液(2)を、温度
勾配(T)を一方向に設けた状態で冷却することにより凝固させる、いわゆる方向凝固法が
知られている。かかる方法によれば、原料シリコン融液(2)は温度勾配(T)の低温側(21)
から高温側(22)にアルミニウムを偏析しながら凝固し、シリコン方向凝固物(4)となるこ
とから、このシリコン方向凝固物(4)は、凝固させる際の温度勾配(T)の低温側(21)にあ
りアルミニウム濃度(C)の比較的低い精製シリコン領域(41)と、温度勾配(T)の高温側(2
2)にありアルミニウム濃度(C)の比較的高い粗シリコン領域(45)との2つの領域からなる
ものである。このうち、粗シリコン領域(45)をシリコン方向凝固物(4)から切除すること
により、アルミニウム濃度(C)の比較的低い精製シリコン領域(41)として、目的の精製シ
リコン(1)を得ることができる〔特許文献1:特開2004−196577号公報〕。
かかる方向凝固法では、温度勾配(T)が大きいほど、また凝固速度(R)が遅いほど、高温
側(22)に、より多くのアルミニウムが偏析することから、最大アルミニウム濃度のよりい
精製シリコン(1)を、より多く得ることができることが知られているが、大きな温度勾配(
T)を設けるには設備が大掛かりとなり、凝固速度(R)を遅くすることは、生産速度の点
で不利である。このため、精製シリコン(1)の目標最大アルミニウム濃度(C10max)や、使
用した原料シリコン融液(2)の質量(M2)に対する前記精製シリコン(1)の質量(M1)の比(
1/M2)で示される歩留率の目標値(Y0)に応じて、温度勾配(T)および凝固速度(R)を
調整して、目的の精製シリコン(1)を製造している。
特開2004−196577号公報 「金属の凝固」(昭和46年12月25日、丸善株式会社発行)第121頁〜第134頁
しかし、従来、温度勾配(T)および凝固速度(R)と、得られる精製シリコン(1)の歩留率(
Y)および最大アルミニウム濃度(C1max)との関係は明確ではなかった。
このため、目標とする歩留率(Y0)で、目標最大アルミニウム濃度(C10max)以下のアルミ
ニウム濃度(C)の精製シリコン(1)を得るには、数多くの試行錯誤を繰り返して、最適な
温度勾配(T)および最適な凝固速度(R)を求めていた。
そこで本発明者は、数多くの試行錯誤を経ることなく、目標とする歩留率(Y0)で、アル
ミニウム濃度(C)が目標最大アルミニウム濃度(C10max)以下の精製シリコン(1)を製造し
うる方法を開発するべく鋭意検討した結果、本発明に到った。
すなわち本発明は、アルミニウムを含む原料シリコン融液(2)を、鋳型(3)内にて、温度勾
配(T)を一方向に設けた状態で冷却することにより、アルミニウム濃度(C)が目標最大ア
ルミニウム濃度(C10max(ppm))以下の精製シリコン領域(41)と、目標最大アルミニウ
ム濃度(C10max)を超える粗シリコン領域(45)とを含むシリコン方向凝固物(4)を得、
得られたシリコン方向凝固物(4)から粗シリコン領域(45)を切除してアルミニウム濃度(C
(ppm))が目標最大アルミニウム濃度(C10max)以下の精製シリコン(1)を得る方法であ
り、
目標最大アルミニウム濃度(C10max)と、使用した原料シリコン融液(2)の質量(M2)に対
する前記精製シリコン(1)の質量(M1)の比(M1/M2)で示される歩留率の目標値(Y0)と
から、あらかじめ、下式(1)を満足する基準温度勾配(T0(℃/mm))および基準凝固
速度(R0(mm/分))を求め、該基準温度勾配(T0)±0.1℃/mmの範囲の温度勾配(
T)を設けた状態で、該基準凝固速度(R0)±0.01mm/分の範囲の凝固速度(R)で凝
固するように原料シリコン融液(2)を冷却することを特徴とする精製シリコン(1)の製造方
法を提供するものである。
k={K1×Ln(R0)+K2
×{K3×exp[K4×R0×(K5×C0+K6)]}
×{K7×T0+K8}−K9 (1)
〔式中、kは、式(2)
10max=k'×C2×(1−Y0k'-1 (2)
(式中、C10maxは精製シリコンの目標最大アルミニウム濃度(ppm)を、k'はアルミニ
ウム実効分配係数を、C2は原料シリコン融液のアルミニウム濃度(ppm)を、Y0は歩留
率の目標値をそれぞれ示す。)
を満足するように求めたアルミニウム実効分配係数k'の0.9倍〜1.1倍の範囲から
選ばれる係数であり、
1は、1.1×10-3±0.1×10-3の範囲から選ばれる定数を、
2は、4.2×10-3±0.1×10-3の範囲から選ばれる定数を、
3は、1.2±0.1の範囲から選ばれる定数を、
4は、2.2±0.1の範囲から選ばれる定数を、
5は、−1.0×10-3±0.1×10-3の範囲からばれる定数を、
6は、1.0±0.1の範囲から選ばれる定数を、
7は、−0.4±0.1の範囲から選ばれる定数を、
8は、1.36±0.01の範囲から選ばれる定数を、
9は、2.0×10-4±1.0×10-4の範囲から選ばれる定数を、
0は基準凝固速度(mm/分)を、
0は基準温度勾配(℃/mm)をそれぞれ示す。〕



本発明の製造方法によれば、アルミニウムを含む原料シリコン融液(2)から、目標歩留率(
0)で、アルミニウム濃度(C)が目標最大アルミニウム濃度(C10max)以下の精製シリコ
ン(1)を製造するための基準温度勾配(T0)および基準凝固速度(R0)を求めることができ
るので、これらを基準とした上記の範囲の温度勾配(T)および凝固速度(R)で凝固するよ
うに原料シリコン融液(2)を冷却することにより、アルミニウム濃度(C)が目標最大アル
ミニウム濃度(C10max)以下の精製シリコン(1)を目標歩留率(Y0)で製造することができ
る。
以下、図1を用いて本発明の製造方法を説明する。
本発明の製造方法に用いられる原料シリコン融液(2)は、加熱により溶融状態となったシ
リコンであり、その温度はシリコンの融点(約1414℃)を超え、通常は1420℃〜1
580℃である。
原料シリコン融液(2)は、アルミニウムを含む。原料シリコン融液(2)におけるアルミニウ
ム濃度(C2)は通常10ppm〜1000ppm、好ましくは15ppm以下である。原
料シリコン融液のアルミニウム濃度(C2)が10ppm未満であると、さらにアルミニウムを除去することが難しく、1000ppmを超えると、精製シリコン(1)を得るために過大な温度勾配(T)と凝固速度(R)が必要となり、実用的ではない。
原料シリコン融液(2)は、アルミニウムのほか、少量、具体的には合計で1ppm以下で
あれば、シリコンおよびアルミニウムを除く他の不純物元素を含んでいてもよいが、とく
に、精製シリコン(1)が目標とする歩留率(Y0)のとおりの歩留率で得られる点で、ホウ素
、リンなどの含有量は少ないほど好ましく、具体的には、それぞれ0.3ppm以下、さ
らには0.1ppm以下であることが好ましい。
本発明の製造方法では、通常の方向凝固法と同様に、かかる原料シリコン融液(2)を鋳型(
3)内にて冷却する。鋳型(3)としては通常、原料シリコン融液(2)に対して不活性で、耐熱
性のものが使用され、具体的には黒鉛などの炭素、炭化ケイ素、炭化窒素、アルミナ(酸
化アルミニウム)、石英などのシリカ(酸化ケイ素)などで構成されたものが使用される
冷却は、原料シリコン融液(2)に温度勾配(T)を一方向に設けた状態で行われる。温度勾
配(T)は一方向に設けられていればよく、水平方向に設けられていて低温側(21)と高温側
(22)とが同じ高さとなっていてもよいし、重力方向に設けられていて低温側(21)が上にな
り高温側(22)が下になるように設けられてもよいが、通常は、図1に示すように、低温側
(21)が下になり、高温側(32)が上になるように温度勾配(T)が重力方向に設けられる。温
度勾配(T)は、過大な設備を要せず、実用的である点で、通常は0.2℃/mm〜1.5
℃/mm、好ましくは0.4℃/mm〜0.9℃/mm、さらに好ましくは0.7℃/m
m以上である。
温度勾配(T)は、例えばヒーター(6)を備え、下側が大気に開放された炉(7)内で、ヒータ
ー(6)により鋳型(3)の上方を加熱しつつ、炉(7)の下で鋳型の下方を冷却する方法により
、設けることができる。鋳型(3)の下方を冷却するには、大気中に放冷させる方法でもよ
いが、温度勾配(T)によっては、例えば炉(7)の下側に水冷プレート(8)を設け、この水冷
プレート(8)により冷却してもよい。
原料シリコン融液(2)は、例えば、これを収容した鋳型(3)を下方向に移動させ、下から炉
(7)の外に導くことにより、冷却することができる。このようにして原料シリコン融液(2)
を冷却することにより、原料シリコン融液(2)は低温側(21)から固相(24)を形成しながら
凝固し、シリコン方向凝固物(4)となる。
凝固速度(R)は、冷却により低温側(21)から形成される固相(24)と、高温側(22)で未だ凝
固していない液相(25)との界面(26)の移動速度として表わされ、鋳型(3)を炉(7)の外に移
動させる際の鋳型(3)の移動速度によって調整することができる。
このようにして原料シリコン融液(2)を冷却することにより凝固させる過程で、原料シリ
コン融液(2)に含まれるアルミニウムは、高温側(22)に偏析する。このため、凝固後のシ
リコン方向凝固物(4)は、温度勾配〔T〕の低温側(21)から高温側(22)に向けて一方向に
アルミニウム含有量(C)が増加したものとなる。この凝固物(4)のうち、冷却過程で温度
勾配(T)の低温側(21)であった領域がアルミニウム含有量の少ない精製シリコン領域(41)
となり、高温側(22)であった領域は、偏析したアルミニウムを多く含む粗シリコン領域(4
5)となっている。このようなシリコン方向凝固物(4)のうち、粗シリコン領域(45)を切除
することにより、目的とする精製シリコン(1)を得ることができる。粗シリコン領域(45)
を切断する方法は特に限定されるものではなく、例えばダイヤモンドカッターなどを用い
る通常の方法により切断して、粗シリコン領域(45)を切除すればよい。
本発明の製造方法では、温度勾配(T)が基準温度勾配(T0)±0.1℃/mmの範囲、好
ましくは基準温度勾配〔T0〕±0.05℃/mmの範囲であり、凝固速度(R)が基準凝
固速度(R0)が±0.01mm/分の範囲、好ましくは基準凝固速度(R0)±0.005m
m/分の範囲である。
基準温度勾配(T0)および基準凝固速度(R0)は、上記式(1)により求められる。式(1
)におけるアルミニウム実効分配係数kは、上記式(2)を満足するように求められる。
この式(2)は、使用した原料シリコン融液(2)のうち、原料シリコン融液(2)を冷却によ
り凝固させる過程において凝固して固相(23)となったものの割合を示す凝固率(f)と、直
前に固相(23)となった部分におけるアルミニウム濃度(C)との関係を示す式(2−1)
C=k'×C2×(1−f)k'-1 (2−1)
〔式中、Cは液相におけるアルミニウム濃度(ppm)を、k'はアルミニウム実効分配係
数を、C2は使用した原料シリコン融液(2)のアルミニウム濃度(ppm)を、fは凝固率を
、それぞれ示す。〕
から導かれるものである。この式(2−1)は、一般にシャイルの式と呼ばれている関係
式である〔非特許文献1:「金属の凝固」(昭和46年12月25日、丸善株式会社発行
)第121頁〜第134頁〕。
式(1)は、このようなアルミニウム実効分配係数(k)と、凝固速度および温度勾配との
関係を示す式であって、本発明者らが初めて見出したものである。そして本発明の製造方
法は、このような式(1)を満足する基準温度勾配(T0)および基準凝固速度(R0)を基準
とし、本発明で規定する範囲の温度勾配(T)および凝固速度(R)で凝固するように原料シ
リコン融液(2)を凝固させるものである。
本発明の方法により原料シリコン融液(2)を凝固させることにより得られるシリコン方向
凝固物(4)は、冷却過程における温度勾配(T)の低温側(21)が精製シリコン領域(41)であ
り、高温側(22)が粗シリコン領域(45)である。また、シリコン方向凝固物(4)における精
製シリコン領域(41)の割合は、目標歩留率(Y0)のとおりであるので、この目標歩留率(Y
0)に相当する部分で、シリコン方向凝固物(4)を切断することによって、粗シリコン領域(
45)を除去することことができ、これにより目的の精製シリコン(1)を得ることができる。
得られた精製シリコン(1)は、さらに酸洗する等の方法により精製してもよい。酸洗に用
いる酸として通常は塩酸、硝酸、硫酸などの鉱酸が用いられ、汚染防止の観点から通常は
金属不純物の少ないものが用いられる。得られた精製シリコン(1)を加熱溶融させて本発
明の製造方法の原料シリコン融液(2)として用いることにより、さらにアルミニウム含有
量の少ない精製シリコンを得ることもできる。
除去された粗シリコン(5)は、これよりもアルミニウム含有量の少ないシリコンと共に加
熱溶融して、再び本発明の原料シリコン融液(2)として使用することもできる。
本発明の製造方法により得られる精製シリコン(1)は、例えば太陽電池の原料などとして
好適に用いることができる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例によって限
定されるものではない。
参考例1〔式(1)の導出〕
実験1
図1に示す装置を用いて、アルミニウム濃度(C2)1000ppmの原料シリコン融液(2)
を、鋳型(3)内で、温度勾配(T)(0.9℃/mm)を設けた状態で、凝固速度(R)0.
4mm/分で凝固するように冷却してシリコン方向凝固物(4)を得た。得られたシリコン
方向凝固物(4)において、冷却の過程における凝固率(f)が0.18および0.38であ
った部分におけるアルミニウム濃度(C)をICP(誘導結合プラズマ)発光分析法または
ICP質量分析法により求めたところ、4.0ppm(f=0.18)および4.9pp
m(f=0.38)であった。この凝固率(f)およびアルミニウム濃度(C)から式(2−
1)を満足するアルミニウム実行分配係数(k)を求めたところ、3.1×10-3であった
。結果を第1表にまとめて示す。
実験2および実験3
実験1で用いた原料アルミニウム融液(2)に代えて、第1表に示すアルミニウム濃度(C2)
の原料シリコン融液(2)を第1表に示す温度勾配(T)を設けた状態で、第1表に示す凝固
速度(R)で凝固するように冷却し、得られたシリコン方向凝固物(4)において、冷却の過
程における凝固率(f)がそれぞれ第1表に示す値であった部分におけるアルミニウム濃度
(C)を求めた以外は、実験1と同様に操作して、それぞれアルミニウム実行分配係数(k)
を求めたところ、第1表に示すとおりであった。
第 1 表
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
実験 C2 T R f C k
ppm ℃/mm mm/分 ppm
──────────────────────────
1 1000 0.9 0.4 0.18 4.0 3.1×10-3
0.38 4.9
2 1000 0.9 0.2 0.17 2.8 2.5×10-3
0.38 4.2
3 1000 0.9 0.05 0.32 1.2 0.8×10-3
0.72 2.6
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
実験1〜実験3の結果より、凝固速度(R)と、アルミニウム実効分配係数(k)との関係を
求めたところ、式(1−1)
k={K1'×Ln(R)+K2'} (1−1)
〔式中、kはアルミニウム実効分配係数を、Rが凝固速度(mm/分)をそれぞれ示す。〕
を得た。式(1−1)において、K1'は1.1×10-3であり、K2'は4.2×10-3
ある。
実験1〜実験3における温度勾配(T)、凝固速度(R)およびアルミニウム実効分配係数(
k)は、式(1−1)を満足する。
実験4〜実験6
上記実験1〜実験3とは原料シリコン融液(2)の温度勾配(T)が一致するが、原料シリコン融液(2)のアルミニウム濃度(C2)が異なる実験4〜実験6を行った。原料アルミニウム融液(2)のアルミニウム濃度(C2)、温度勾配(T)、凝固速度(R)は第2表に示すとおりとした。得られたシリコン方向凝固物(4)において、冷却の過程における凝固率(f)がそれぞれ第2表に示す値であった部分におけるアルミニウム濃度(C)を求め、実験1と同様にして、それぞれアルミニウム実行分配係数(k)を求めたところ、第2表に示すとおりであった。
第 2 表
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
実験 C2 T R f C k
ppm ℃/mm mm/分 ppm
──────────────────────────
4 100 0.9 0.2 0.17 0.4 4.1×10-3
0.45 1.1
5 10 0.9 0.4 0.32 0.1 9.0×10-3
0.72 0.3
6 10 0.9 0.2 0.20 0.05 4.2×10-3
0.52 0.17
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
この実験4〜実験6は、実験1〜実験3とは原料シリコン融液(2)の温度勾配(T)が一致するが、原料シリコン融液(2)のアルミニウム濃度(C2)が異なる。この実験4〜実験6で求めたアルミニウム実効分配係数(k)は、上記式(1−1)を満足しない。
上記実験1〜実験3で求めたアルミニウム実効分配係数(k)を満足し、かつ、これら実験
4〜実験6で求めたアルミニウム実効分配係数(k)をも満足する式として、式(1−2)
k={K1'×Ln(R)+K2'}
×{K3'×exp[K4'×R×(K5'×C2+K6')]} (1−2)
〔式中、k、R、K1'およびK2'はそれぞれ前記と同じ意味を示す。C2は原料アルミニ
ウム融液のアルミニウム濃度(ppm)を示す。〕
を得た。式(1−2)において、K3'は1.2であり、K4'は2.2であり、K5'は−1
.0×10-3であり、K6'は1.0である。
実験1〜実験3および実験4〜実験6における温度勾配(T)、凝固速度(R)、用いた原料
アルミニウム融液(2)のアルミニウム濃度(C2)およびアルミニウム実効分配係数(k)は、
式(1−2)を満足する。
実験7
上記実験2とは原料シリコン融液(2)のアルミニウム濃度(C2)が一致するが、温度勾配(T)が異なる実験7を行った。原料アルミニウム融液(2)のアルミニウム濃度(C2)、温度勾配(T)、凝固速度(R)は第1表に示すとおりとした。得られたシリコン方向凝固物(4)において、冷却の過程における凝固率(f)がそれぞれ第3表に示す値であった部分におけるアルミニウム濃度(C)を求め、実験1と同様にして、それぞれアルミニウム実行分配係数(k)を求めたところ、第3表に示すとおりであった。
第 3 表
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
実験 C2 T R f C k
ppm ℃/mm mm/分 ppm
──────────────────────────
7 1000 0.4 0.2 0.17 3.1 3.0×10-3
0.52 6.7
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
この実験7は、実験2とは原料シリコン融液(2)のアルミニウム濃度(C2)が一致するが、温度勾配(T)が異なる。このため、実験7で求めたアルミニウム実効分配係数(k)は、上記式(1−1)および式(1−2)を満足しない。
上記実験1〜実験3および実験4〜実験6で求めたアルミニウム実効分配係数(k)を満足
し、かつ、実験7で求めたアルミニウム実効分配係数(k)をも満足する式として、式(1
−3)
k={K1'×Ln(R)+K2'}
×{K3'×exp[K4'×R×(K5'×C2+K6')]}
×{K7'×T+K8'}−K9' (1−3)
〔式中、k、R、C2、K1'、K2'、K3'、K4'、K5'およびK6'はそれぞれ前記と同じ
意味を示す。Tは温度勾配(℃/mm)を示す。〕
を得た。式(1−3)において、K7'は−0.4であり、K8'は1.36であり、K9'は
2.0×10-4である。
実験1〜実験3、実験4〜実験6および実験7における温度勾配(T)、凝固速度(R)、用
いた原料アルミニウム融液(2)のアルミニウム濃度(C2)およびアルミニウム実効分配係数
(k)は、式(1−3)を満足する。
上記で求めた式(1−3)における温度勾配(T)および凝固速度(R)に代えて基準温度勾
配(T0)および基準凝固速度(R0)をそれぞれ代入し、上記K1'〜K9'の値に基づいてK1
〜K9の値をそれぞれ上記式(1)のとおりとすると、上記式(1)を得る。
実施例1−1
原料シリコン融液(2)のアルミニウム濃度(C2)を1000ppm、目標最大アルミニウム
濃度(C10max)を4.0ppm、歩留率の目標値〔目標歩留率〕(Y0)を0.18として、
式(1)〔ただし、K1〜K9の値はそれぞれK1'〜K9'と同じ値とする。〕を満足する基
準温度勾配(T0)および基準凝固速度(R0)を求めると、基準温度勾配(T0)は0.9℃/
mm、基準凝固速度(R0)は0.4mm/分となる。
図1に示す装置を用いて、アルミニウム濃度(C2)1000ppmの原料シリコン融液(2)
を、鋳型(3)内で、温度勾配(T)0.9℃/mmを設けた状態で、凝固速度(R)0.4m
m/分で凝固するように冷却することにより、図2に示すようなシリコン方向凝固物(4)
を得る。
図2に示すように、得られたシリコン方向凝固物(4)を、冷却の過程における凝固率(f)
が0.18であった部分で切断し、温度勾配(T)の高温側(22)であった領域(45)を取り除
くことにより、精製シリコン(1)を得る。得られた精製シリコン(1)の最大アルミニウム濃
度(C1max)は、4.0ppmである。
実施例1−2および実施例2〜実施例7
原料シリコン融液(2)のアルミニウム濃度(C2)、目標最大アルミニウム濃度(C10max)、
目標歩留率(Y0)をそれぞれ第4表に示すとおりとする以外は実施例1と同様にして基準
温度勾配(T0)および基準凝固速度(R0)を得、得られた基準温度勾配(T0)と同じ温度勾
配(T)、得られた基準凝固速度(R0)と同じ凝固速度(R)とするほかは実施例1と同様に
操作して得られたシリコン方向凝固物(4)を得、冷却過程における凝固率(f)が目標凝固
率(Y0)と同じ値であった部分で切断して精製シリコン(1)を得る。この精製シリコン(1)
は、最大アルミニウム濃度(C1max)が第4表に示すとおりである。





第 4 表
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
実施例 C210max000 T R f C1max
ppm ppm ℃/mm mm/分 ℃/mm mm/分 ppm
────────────────────────────────────────
1−1 1000 4.0 0.18 0.9 0.4 0.9 0.4 0.18 4.0
1−2 4.9 0.38 0.38 4.9
2−1 1000 2.8 0.17 0.9 0.2 0.9 0.2 0.17 2.8
2−2 4.2 0.38 0.38 4.2
3−1 1000 1.2 0.32 0.9 0.05 0.9 0.05 0.32 1.2
3−2 2.6 0.72 0.72 2.6
4−1 100 0.4 0.17 0.9 0.2 0.9 0.2 0.17 0.4
4−2 1.1 0.45 0.45 1.1
5−1 10 0.1 0.32 0.9 0.4 0.9 0.4 0.32 0.1
5−2 0.3 0.72 0.72 0.3
6−1 10 0.05 0.20 0.9 0.2 0.9 0.2 0.20 0.05
6−2 0.17 0.52 0.52 0.17
7−1 1000 3.1 0.17 0.4 0.2 0.4 0.2 0.17 3.1
7−2 6.7 0.52 0.52 6.7
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
方向凝固法により原料シリコン融液からシリコン方向凝固物を得る過程を模式的に示す断面図である。 シリコン方向凝固物から精製シリコンを得る工程を模式的に示す断面図である。
符号の説明
1:精製シリコン
2:原料シリコン融液 21:温度勾配の低温側 22:温度勾配の高温側
24:固相 25:液相
26:界面
3:鋳型
4:シリコン方向凝固物 41:精製シリコン領域
45:粗シリコン領域
5:粗シリコン 6:ヒーター 7:炉
8:水冷板 T:温度勾配 Y0:目標歩留率

Claims (3)

  1. アルミニウムを含む原料シリコン融液(2)を、鋳型(3)内にて、温度勾配(T)を一方向に設
    けた状態で冷却することにより、アルミニウム濃度(C)が目標最大アルミニウム濃度(C1
    0max(ppm))以下の精製シリコン領域(41)と、目標最大アルミニウム濃度(C10max)を超
    える粗シリコン領域(45)とを含むシリコン方向凝固物(4)を得、
    得られたシリコン方向凝固物(4)から粗シリコン領域(45)を切除してアルミニウム濃度(C
    (ppm))が目標最大アルミニウム濃度(C10max)以下の精製シリコン(1)を得る方法であ
    り、
    目標最大アルミニウム濃度(C10max)と、使用した原料シリコン融液(2)の質量(M2)に対
    する前記精製シリコン(1)の質量(M1)の比(M1/M2)で示される歩留率の目標値(Y0)と
    から、あらかじめ、下式(1)を満足する基準温度勾配(T0(℃/mm))および基準凝固
    速度(R0(mm/分))を求め、該基準温度勾配(T0)±0.1℃/mmの範囲の温度勾配(
    T)を設けた状態で、該基準凝固速度(R0)±0.01mm/分の範囲の凝固速度(R)で凝
    固するように原料シリコン融液(2)を冷却することを特徴とする精製シリコン(1)の製造方
    法。
    k={K1×Ln(R0)+K2
    ×{K3×exp[K4×R0×(K5×C2+K6)]}
    ×{K7×T0+K8}−K9 (1)
    〔式中、kは、式(2)
    10max=k'×C2×(1−Y0k'-1 (2)
    (式中、C10maxは精製シリコンの目標最大アルミニウム濃度(ppm)を、k'はアルミニ
    ウム実効分配係数を、C2は原料シリコン融液のアルミニウム濃度(ppm)を、Y0は歩留
    率の目標値をそれぞれ示す。)
    を満足するように求めたアルミニウム実効分配係数k'の0.9倍〜1.1倍の範囲から
    選ばれる係数であり、
    1は、1.1×10-3±0.1×10-3の範囲から選ばれる定数を、
    2は、4.2×10-3±0.1×10-3の範囲から選ばれる定数を、
    3は、1.2±0.1の範囲から選ばれる定数を、
    4は、2.2±0.1の範囲から選ばれる定数を、
    5は、−1.0×10-3±0.1×10-3の範囲からばれる定数を、
    6は、1.0±0.1の範囲から選ばれる定数を、
    7は、−0.4±0.1の範囲から選ばれる定数を、
    8は、1.36±0.01の範囲から選ばれる定数を、
    9は、2.0×10-4±1.0×10-4の範囲から選ばれる定数を、
    0は基準凝固速度(mm/分)を、
    0は基準温度勾配(℃/mm)をそれぞれ示す。〕
  2. 歩留率の目標値(Y0)が0.9以下である請求項1に記載の製造方法。
  3. 目標最大アルミニウム濃度(C10max)が原料シリコン融液(2)のアルミニウム濃度(C2)の
    1/1000倍〜3/100倍である請求項1または請求項2に記載の製造方法。
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