JP5308217B2 - 靭性に優れた鍛鋼製冷間圧延ロール - Google Patents

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本発明は、自動車用鋼板や家電用鋼板などを冷間で圧延する冷間圧延装置に用いられる鍛鋼製冷間圧延ロールに関し、より詳しくは、高負荷環境時でも圧延時に割れが発生することがない靭性に優れた鍛鋼製冷間圧延ロールに関するものである。
近年、冷間圧延装置の冷間圧延ロールによって冷間圧延される薄鋼板は、自動車の高強度化に伴う薄鋼板の高強度化、或いはケイ素鋼板の集合組織制御による性能向上ニーズ等があって、強度が向上しており、また、冷間圧延ロールによる圧延率も上昇する傾向にある。これらの現状から、冷間圧延時に冷間圧延ロールにかかる荷重負荷は益々大きくなりつつある。
冷間圧延ロールには、前記したような高負荷環境時でも圧延時に割れ(例えばスポーリング割れ)が発生しないこと、また、ロール摩耗が発生したとしても冷間圧延に影響を与えない最小限であること、更には、ロールショップでの手入れの際に研磨性が良いこと等の特性が求められる。
それら冷間圧延ロールに求められる種々の特性の中でも、圧延時の割れに対する耐性は、非常に重要な特性である。すなわち、圧延時に一度割れが発生すると、冷間圧延ロールの取替え作業が必要になり、時には圧延製品に破損が発生することもあり、また、経済的な負担も小さくはなく、割れが発生しない靭性の確保は冷間圧延ロールにとって、非常に重要になっている。
この冷間圧延ロールの靭性の確保を図った技術、或いは、冷間圧延ロールの靭性の確保に関連する技術としては、特許文献1〜4に記載の技術が提案されている。
特許文献1は、高速度工具鋼製ロールの耐スポーリング性の確保を図るために提案された技術であり、ロール表層部の硬さをHRCで64〜72とし、芯部の硬さよりHRCで2以上低くして、ロールの耐スポーリング性を高くしたという高速度工具鋼製ロールとその製造方法に関する技術が記載されている。この特許文献1に記載された技術では、ロール表層部の硬さを確保するために、電子ビーム照射などの特殊な手段を採用しており、また、添加元素としてWやV、或いはREMといった高価なマイクロアロイを添加している。
特許文献2記載の技術は、主として熱間圧延に使用される圧延用ロールに関する技術であって、本発明が対象とする冷間圧延ロールに関する技術に提案ではないが、V等を添加することでVC系炭化物を生成して靭性を確保すること、Cr濃度をC量とのバランスで選択して生成する炭化物を制御して強度を確保することが記載されている。
特許文献3には、Siの含有量を0.1重量%未満とすることで、圧延用ロールの高靭性化を図った技術が記載されている。一般にSiは製鋼過程で脱酸材として使用されるため、通常の製鋼法では0.2重量%以上は含有させる必要がある。これに対し、特許文献3に記載の技術では、複雑な技術である真空カーボン法を用いることで、Siの含有量を0.1重量%未満に抑えている。しかしながら、この特許文献3に記載されたように、真空カーボン法を採用すると非常にコスト高になり、工業的には非常にデメリットが多い。
また、特許文献4には、Mo、V、Tiといった高価なマイクロアロイ等を複合添加することで、クラックの発生を抑えた冷間圧延用ワークロール材に関する技術が記載されている。
一方、靭性の確保に関連する技術ではないが、冷間圧延ロールの表層部の組織状態に着目した技術も提案されている。例えば、特許文献5として、光輝性を有する圧延板の製造に適した圧延ロールとして表層部の炭化物の粒径や面積率を制御する技術が提案されている。この技術では、炭化物の粒径や面積率の制御のしやすさに着目し、粉末焼結により圧延ロールの製造を行っているが、粉末焼結によって製造する場合には、製造物に酸素が含まれやすく、一般には500〜600ppm程度の酸素が含まれており、相当厳格な雰囲気制御を行ったとしてもせいぜい100ppm程度までしか酸素量を低減できない。しかし、酸素量が100ppm程度も含まれていると生成する酸化物が破壊の起点となるため、靭性の確保が困難となる。
特開2002−143909号公報 特開平6−192742号公報 特開平1−234548号公報 特開平2−182861号公報 特開昭60−12211号公報
本発明は、上記従来の問題を解消せんとしてなされたもので、高価なマイクロアロイ等の元素を使用したり、特殊な製法等を採用したりすることがなくても、優れた靭性を確保することができ、高負荷環境時でも圧延時に割れが発生することがない靭性に優れた鍛鋼製冷間圧延ロールを提供することを課題とするものである。
請求項1記載の発明は、質量%で、C:0.6〜1.2%、Si:0.4〜0.8%、Mn:0.4〜1.0%、Ni:0.4〜1.0%、Cr:3.0〜6.0%、Mo:0.2〜0.5%、O:50ppm以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鍛鋼製冷間圧延ロールであって、ロール表面から50mm以内のロール表層部の金属組織に分散した炭化物の平均粒径が1μm以下、且つ、分散した炭化物の面積率が5〜30%であることを特徴とする靭性に優れた鍛鋼製冷間圧延ロールである。
本発明の靭性に優れた鍛鋼製冷間圧延ロールによると、高価なマイクロアロイ等の元素を使用したり、特殊な製法を採用したりすることがなくても、優れた靭性を確保することができ、高負荷環境時においても圧延時に割れが発生することがない。
実施例での走査型電子顕微鏡(SEM)による組織観察結果を示し、(a)は比較例であるNo.1の組織写真を、(b)は本発明の実施例であるNo.3の組織写真を夫々示す。 冷間圧延ロールの製造工程の事例を示すグラフ図である。
以下、本発明を実施形態に基づいて更に詳細に説明する。
本発明者らは、従来の各種技術のように、高価な元素を使用したり、工業的に実施が困難な特殊な溶解等の手段を採用したりすることがなくても、単純なFe−C−Si−Mn−Ni−Cr−Moという成分系の鋼材を用いて、高負荷環境時においても圧延時に割れが発生することがない優れた靭性を確保した冷間圧延ロールに関する技術を開発するために、鋭意、検討、探求を重ねた。その結果、ロールの表層部の金属組織に分散したMをはじめとする炭化物のサイズとその面積率を適切に制御することで、所期の目的が達成されることを見出し、本発明の完成に至った。
まず、本発明が完成するまでの経緯について詳しく説明する。
圧延時の冷間圧延ロールの割れ(例えばスポーリング割れ)は、これまでの各種調査から、その亀裂進展経路として、主に結晶粒界(以下、粒界という。)を進むことが多いことが確認できている。そのため、冷間圧延ロールにおいて、優れた靭性を確保するためには、従来のように成分規定をする考え方だけではなく、仮に同じ成分であっても、結晶粒内(以下、粒内という。)と粒界の強度差を制御する炭化物の分散状態の設計指針があっても良いことに、本発明者らは着目した。
各種調査の結果、Fe−C−Si−Mn−Ni−Cr−Moという成分系の鋼材では、MC炭化物は生成されず、基本的にはMをはじめとする炭化物が生成することを確認した。このMをはじめとする炭化物は、組織観察の結果、粒界および粒内に生成することが分かったが、破壊試験を行った結果、それら炭化物が粒界により多く存在する場合に、サンプルが大きく破壊することが確認できた。
この破壊は粒界を進展するロールの割れと同様の現象で発生すると考えられ、このことから、Mをはじめとする炭化物を粒界に多く析出させると、粒内の強度に比較して粒界の強度が低減し、その結果、亀裂進展経路である粒界が脆弱となって、破壊が容易に発生することが明らかになった。
このことから、本発明者らは、Mをはじめとする炭化物を粒界ではなく、粒内に析出させることで、冷間圧延ロールの靭性を高めることができることを見出した。
一方で、Mをはじめとする炭化物の粒径について、そのサイズが小さい方が、割れが発生しにくいことも確認することができた。これは、炭化物のサイズが小さいほど、局所的に生じる応力集中を緩和できるためであると推察することができる。
また、炭化物の粒径が大きいほど、炭化物は粒界に多く分散する傾向があることも確認した。図1の(a)は、サイズが大きな炭化物が生成している事例であり、炭化物が生成した粒界に沿った割れが発生していることが分かる。一方、図1の(b)は、サイズが小さな炭化物が生成している事例であり、炭化物は主に粒内に生成しており、割れが発生していない。
技術的には、亀裂進展経路となる粒界に生成する炭化物の多少により組織規定すれば、靭性に優れた冷間圧延ロールを得ることができると考えられるが、粒界は組織観察の仕方で見え方が変化するため、現在の技術では粒界を定量的に定義することは難しい。
そこで、本発明では、粒径の大きな炭化物ほど粒界に多く生成する傾向があることを確認していることから、生成する炭化物の粒径を規定することで発明を定義することとした。
本発明では、実験の結果、表層部の金属組織に分散した炭化物の平均粒径が1μm以下であれば、割れが発生しないことを確認した。尚、ここで述べる表層部の金属組織とは、ロール表面から50mm以内のロール表層部の金属組織のことをいう。また、炭化物の平均粒径が1μm以下とは、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)で5000倍の視野観察を行い、無作為に撮影した20視野で観察される0.1μm以上の炭化物の相当円での平均粒径が1μm以下のことをいう。
一方、炭化物自体もある程度存在しないと、そもそも冷間圧延ロールに求められる耐摩耗性などの特性を確保することが難しいことから、表層部に生成する炭化物の量(面積率)も定義することとした。炭化物の面積率が5%未満では、表層部の硬度が低くなり、その結果、十分な耐摩耗性が得られない。また、その量が30%を超えると、硬度が高くなりすぎて十分な靭性の確保が困難となる。そのため、炭化物の面積率は5〜30%と定義した。
次に、本発明の靭性に優れた鍛鋼製冷間圧延ロール中の化学成分の含有量の範囲限定理由について、元素毎に詳細に説明する。尚、本明細書中に記載する%は全て質量%を示す。
C:0.6〜1.2%
Cは、焼き入れ性を高めると共に、炭化物を形成して耐摩耗性の必要特性を確保するのに必須の元素である。その含有量が0.6%未満ではその効果を十分に発揮することができず、逆に、1.2%を超えると残留オーステナイトの増加を招き、硬さの低下や耐摩耗性の低下を起こすので、Cの含有量の範囲は、0.6〜1.2%とした。また、その含有量の下限は0.8%であることがより好ましく、上限は1.0%であることがより好ましい。
Si:0.4〜0.8%
Siは、焼き戻し軟化抵抗を高める効果があり、また、脱酸元素としても作用する元素である。これらの効果を奏するために、その含有量の下限を0.4%とした。一方、0.8%を超えて過剰に添加すると靭性の低下を招くため、その含有量の上限を0.8%とした。また、その含有量の下限は0.5%であることがより好ましく、上限は0.7%であることがより好ましい。
Mn:0.4〜1.0%
Mnは、焼き入れ性を高めると共に、強度向上に寄与する元素である。十分な強度と焼き入れ性を確保するためには、少なくとも0.4%以上含有させる必要がある。一方、その含有量が過剰になると靭性劣化するので、その上限を1.0%とした。また、その含有量の下限は0.45%であることがより好ましく、上限は0.8%であることがより好ましい。
Ni:0.4〜1.0%
Niは、強度や靭性を高めると共に、焼き入れ性の向上にも有用な元素であり、少なくとも0.4%以上含有させる必要がある。しかし、Niは高価な元素であり、且つ、多量の添加は残留オーステナイトの増加を招き、硬さの低下や耐摩耗性の低下を引き起こすので、その上限を1.0%とした。また、その含有量の下限は0.5%であることがより好ましく、上限は0.9%であることがより好ましい。
Cr:3.0〜6.0%
Crは、焼き入れ性を高めると共に、炭化物を形成して耐摩耗性等の必要特性を確保するのに必要な元素である。その含有量が3.0%未満ではその効果を十分には発揮させることはできず、逆に6.0%を超えると炭化物析出量が増加する結果、焼き入れ性に寄与する固溶C量が低下する。従って、Crの含有量の範囲は、3.0〜6.0%とした。また、その含有量の下限は4.0%であることがより好ましく、4.5%であることが一層好ましい。一方、その上限は5.5%であることがより好ましい。
Mo:0.2〜0.5%
Moは、焼き入れ性を高める元素であり、0.2%以上は含有させる必要がある。一方、その含有量が0.5%を超えるとMo系の炭化物が析出し、焼き入れ性に寄与する固溶C量が低下するする。従って、Moの含有量の範囲は、0.2〜0.5%とした。また、その含有量の下限は0.25%であることがより好ましく、上限は0.45%であることがより好ましい。
O:50ppm以下
酸素が多量に含まれると過剰な酸化物が生成し、破壊の起点として作用して靭性を劣化させる。そのため、含有される酸素量は50ppm以下とする必要がある。より好ましくは30ppm以下である。尚、このような酸素含有量のレベルを達成するには、ロールの製造にあたって、鍛鋼を使用すれば良い。粉末焼結材と違って、鍛鋼は含有される酸素が少なく、50ppm以下の量とすることが容易である。本発明においては、酸素量は少なければ、少ないほど好ましいが、鍛鋼を使用したとしても、工業的には1ppm以上の酸素量となるのが一般的である。
本発明の鍛鋼製冷間圧延ロール用の鋼に添加させる添加元素の成分範囲の限定理由は以上の通りであり、残部はFeおよび不可避的不純物である。
次に、本発明の靭性に優れた鍛鋼製冷間圧延ロールの製造条件について説明する。
生成される炭化物を微細にし、更に粒界にできるだけ炭化物を析出させることなく、粒内に炭化物を析出させるための鍛鋼製冷間圧延ロールの製造方法には、いくつかの種類の製造条件があると考えられる。本発明者らはその一つの製造条件として以下に示す製造条件を見出した。
冷間圧延ロールは、ロール形状への鍛造後、球状化処理、軸部の特性確保のための焼入焼戻処理、胴部の焼入焼戻処理という工程を経て製造されるが、球状化処理温度(T1)や軸部の特性確保のための焼入加熱時の焼入温度(T2)を、低下させることで、炭化物を均一微細分散させることができ、粒界への炭化物析出も最小限に抑えることが可能であることを見出した。
例えば、球状化処理温度(T1)を980℃として、焼入温度(T2)を900℃とすると、980℃の球状化処理工程で固溶していたCrやCといった炭化物構成元素は、より低温の焼入処理工程で、その固溶限が低下するため、固溶していた炭化物構成元素が新たに炭化物として析出すると考えられる。その炭化物の析出は、より低温での析出であるため、粒内に比較的微細に析出され、所望の組織が得られると考えられる。
また、球状化処理温度(T1)、焼入温度(T2)のいずれかの温度を低下すれば、析出の駆動力が増加するため、炭化物の核生成が多くなり、炭化物が微細化すると考えられ、更に、温度低下により炭化物の成長も抑制されるため、炭化物の粗大化が生じにくくなり、炭化物の微細化が図れると考えられる。
一方で、球状化処理(T1での処理)、焼入処理(T2での処理)の後、後記するとおり、冷間圧延ロールの表面を硬化する目的の熱処理も行われるが、この熱処理(焼入れ焼戻し)が、冷間圧延ロールに施される最後の処理である。前記したように、炭化物の微細化が靭性の向上に有効であるが、この最後に施される熱処理において、オーステナイト温度域での保持時間が長すぎると炭化物が溶解消失してしまうことになる。そのため、この最後の熱処理についても条件を制御することが必要であり、具体的には、940℃以上の温度域に保持する時間を20分以下とする。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に含まれる。
本実施例では、表1に記載した3種のFe−C−Si−Mn−Ni−Cr−Mo成分系の鋼材を用いて、鍛鋼製冷間圧延ロールを製造した。尚、表1に記載した各元素(Oを除く)の含有量の単位は、質量%である。
Figure 0005308217
この鍛鋼製冷間圧延ロールの製造方法を図2に基づいて詳細に説明する。まず、鋼材をオーステナイト化する温度まで加熱して鍛造を行い、圧延ロール形状に成形する。次に、炭化物を球状化するための球状化焼鈍を施し、その後、圧延ロールの軸部(芯部)の強度靭性を確保するため、焼き入れ、焼き戻しを続いて行う。更に、圧延ロールの表面(胴部)が圧延時の荷重に耐えるようロール表面を硬化する目的で、ロール表面のみを急熱の後、水冷理して焼き入れを行う。更に、残留オーステナイト量を制御するためにサブゼロ処理を行った後、表面の硬化層を焼き戻して冷間圧延ロールを完成させる。
以上のような製造方法で、球状化加熱温度(T1)、最初の焼入温度(T2)、およびロール表面を硬化する目的の焼入処理(940℃以上の温度域での保持時間:t)の条件を変えることで、表2に示すNo.1〜8の鍛鋼製冷間圧延ロールを製造した。このNo.1〜8の鍛鋼製冷間圧延ロールを試料として、組織観察サンプルを採取し、炭化物の平均粒径の確認を行うと共に、組織観察サンプルを採取した位置の近傍から衝撃試験用サンプルを採取してシャルピー衝撃試験を実施した。
Figure 0005308217
炭化物の平均粒径の確認は、ロール表面から50mm以内のロール表層部から組織観察サンプルを採取し、走査型電子顕微鏡(SEM)で5000倍の視野観察を行い、無作為に撮影した20視野で観察される0.1μm以上の炭化物の相当円での平均粒径を確認した。その結果を表2に示す。
また、同じく、走査型電子顕微鏡(SEM)で5000倍の視野観察を行い、無作為に撮影した20視野での観察において炭化物の面積率を測定し、その平均値を当該サンプルの炭化物面積率とし、表2において、炭化物面積率が5〜30%の範囲にあったものを○として記載し、その範囲から外れたものを×として記載した。なお、炭化物面積率において×となったものは、No.8のみであるが、これは最後の熱処理において940℃以上の温度で60分も保持していたことから、炭化物が消失し、炭化物が認められなかった(面積率で1%未満)ものである。そのため、ロール材として、そもそも使用できるものではないと判断し、後記するシャルピー衝撃試験は行わなかった。
また、衝撃試験用サンプルもロール表面から50mm以内のロール表層部から採取して、シャルピー衝撃試験を実施した。シャルピー衝撃試験の結果は、試験で破壊した5mm以上の破片が3個以上であったか否かで示し、併せて、シャルピー衝撃試験での吸収エネルギーも示す。この吸収エネルギーが5J以上であれば、サンプルは通常のシャルピー衝撃試験での結果であると考えられる2つの破片となって割れ、3つ以上の破片が生じる大きな割れは発生しないと考えられる。
組織観察サンプルの観察結果も表2に示す。シャルピー衝撃試験では、炭化物の平均粒径が1μmを超えたNo.1,4,6では、吸収エネルギーが2J或いは3Jで、サンプルが3つ以上の破片となり、大きく破壊したのに対し、炭化物の平均粒径が1μm以下のNo.2,3,5,7では、吸収エネルギーが6J或いは7Jで、サンプルは2つの破片となって割れた。
尚、図1の(a)に比較例であるNo.1の組織写真を、図1の(b)に本発明の実施例であるNo.3の組織写真を示す。No.1では、サイズが大きな炭化物が数多く生成していることが分かる。一方、No.3では、サイズが小さな炭化物が生成していることが分かる。

Claims (1)

  1. 質量%で、
    C:0.6〜1.2%、
    Si:0.4〜0.8%、
    Mn:0.4〜1.0%、
    Ni:0.4〜1.0%、
    Cr:3.0〜6.0%、
    Mo:0.2〜0.5%、
    を含有し、
    残部がFe及び不可避的不純物からなる鍛鋼製冷間圧延ロールであって、
    ロール表面から50mm以内のロール表層部の金属組織に分散した炭化物の平均粒径が1μm以下、且つ、分散した炭化物の面積分率が5〜30%であることを特徴とする靭性に優れた鍛鋼製冷間圧延ロール。
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