<携帯電話機の全体構成>
図1は、本発明の実施形態に係る携帯電話機1の外観を開状態で示す斜視図である。図2は、携帯電話機1の外観を閉状態で示す斜視図である。
携帯電話機1は、いわゆる折り畳み式の携帯電話機として構成されている。すなわち、携帯電話機1は、回転軸RA回りに相対回転可能に連結された送話筐体3及び受話筐体5を有し、開状態と閉状態との間で遷移可能である。送話筐体3及び受話筐体5は、それぞれの端部が連結部6により連結されている。閉状態では、送話筐体3及び受話筐体5が重ね合わされる。開状態では、送話筐体3及び受話筐体5の閉状態において互いに対向していた面が離間して、送話筐体3及び受話筐体5は概ね並列に配置される。送話筐体3及び受話筐体5は、それぞれ概ね薄型直方体状に形成されており、閉状態では互いの輪郭が略一致する。
送話筐体3には、例えば、不図示の通話用のマイクロフォン、不図示のアンテナ、報知用のスピーカ85(図3参照)、ユーザの操作を受け付ける操作部7(図1)が設けられている。操作部7は、複数のキー35を含んで構成されている。受話筐体5には、例えば、通話用のスピーカ83(図6参照)、画像を表示する表示部9(図1)が設けられている。連結部6には、送話筐体3の電子部品と、受話筐体5の電子部品とを接続するフレキシブルプリント配線板(FPC)95(図10参照)が挿通されている。
なお、以下では、送話筐体3及び受話筐体5において、閉状態において互いに対向する側及びその背面側を、正面側及び背面側ということがある。
<送話筐体の構成及び密閉構造>
図3は、送話筐体3を正面側から見た分解斜視図である。また、図4は、送話筐体3を背面側から見た分解斜視図である。ただし、図3と図4とでは、分解されたパーツが異なっている。
携帯電話機1は、送話筐体3の正面側部分を構成するフロントケース11と、送話筐体3の内部側部分を構成するインナーケース13と、送話筐体3の背面側部分を構成するリアケース15及び蓋体17(図3)とを有している。
また、携帯電話機1は、送話筐体3内部において、フロントケース11側から順に積層的に配置された、メイン基板アセンブリ22、カメラユニット24(図4)、サブ基板アセンブリ25、及び、バッテリ27(図3)を有している。
インナーケース13は、概ね、フロントケース11側が開放された箱体状に形成されており、メイン基板23等の背面側に対向する基部13vと、基部13vの周縁においてフロントケース11側に立設された壁部13wとを有している。基部13vには、バッテリ27を出し入れするための開口部が形成されている。
フロントケース11は、概ね、インナーケース13側が開放された、インナーケース13よりも薄い箱体状に形成されている。フロントケース11は、インナーケース13に対して正面側から被せられ、インナーケース13の正面側を覆うとともに、壁部13wの正面側部分を囲む。
リアケース15は、概ね、インナーケース13側が開放された、インナーケース13よりも薄い箱体状に形成されている。リアケース15の背面側には、バッテリ27を出し入れするための開口部が形成されている。リアケース15は、インナーケース13に対して背面側から被せられ、インナーケース13の背面側を覆うとともに、壁部13wの背面側部分を囲む。
蓋体17は、リアケース15の背面側の開口と概ね同様の形状及び大きさを有する概ね板状に形成されている。蓋体17は、リアケース15の背面側の開口内に配置され、インナーケース13の基部13vの開口を塞ぐ。
このように、インナーケース13は、フロントケース11、リアケース15及び蓋体17によって包まれる。すなわち、フロントケース11、リアケース15及び蓋体17は、内包筐体であるインナーケース13を包む外装筐体10(図5)を構成している。
フロントケース11、インナーケース13、リアケース15及び蓋体17は、例えば、主として非導電性の樹脂によりそれぞれ成形されている。フロントケース11、インナーケース13及びリアケース15は、例えば、ネジ若しくは係合部又はその双方により互いに固定される。蓋体17は、係合部等によりインナーケース13若しくはリアケース15又はその双方に着脱可能に固定されている。
メイン基板アセンブリ22、カメラユニット24、サブ基板アセンブリ25及びスピーカ85は、フロントケース11及びインナーケース13によって、これらの部材の積層方向において挟持される。具体的には、これらの部材は、送話筐体3の長手方向の両側において、フロントケース11とインナーケース13の基部13vとにより挟持される。バッテリ27は、インナーケース13に嵌合するとともに、蓋体17によってインナーケース13からの脱落が防止される。
メイン基板アセンブリ22は、図3に示すように、リアケース15側から順に積層された、メイン基板23と、シールドケース21と、FPC43(図5参照)と、キーシート19とを有している。
メイン基板23は、例えば、硬質の樹脂をベースとしたリジッド式の回路基板により構成されている。メイン基板23には、複数の電子部品29が設けられている。
シールドケース21は、例えば金属により形成されている。又は、シールドケース21は、樹脂等の非導電性の基体の表面に金属層等の導電層が設けられて構成されている。シールドケース21は、メイン基板23のグランド層に接続されている。
サブ基板アセンブリ25は、図4に示すように、リアケース15側から順に積層された、サブ基板26と、フレーム28とを有している。
サブ基板26は、例えば、硬質の樹脂をベースとしたリジッド式の回路基板により構成されている。サブ基板26には、複数の電子部品29が設けられている。フレーム28は、例えば樹脂により構成されている。フレーム28は、サブ基板26、カメラユニット24及びスピーカ85の位置決めに供される。
スピーカ85は、不図示の放音面をインナーケース13の基部13vの内側面に対向させ、端子面85bをフロントケース11側に向けて配置される。基部13vには、スピーカ85の放音面に対向する位置に、スピーカ85の出力する音響をインナーケース13の外部へ放出するための放音口13g(図4)が形成されている。放音口13gは、スピーカ85により密閉される。なお、放音口13gは、遮水性及び通気性を有するシートにより塞がれてもよい。また、基部13vとスピーカ85との間には、これらの部材に密着し、放音口13gを囲む枠状の弾性部材が設けられてもよい。
図5(a)は、図1のVa−Va線における送話筐体3の模式的な断面図である。図5(b)は、図5(a)の領域Vbの拡大図である。図5(c)は、図5(a)の領域Vcの拡大図である。
図5(a)に示すように、FPC43には、例えば、複数のスイッチ41が設けられている。スイッチ41は、例えば、ドーム式の押圧スイッチである。キーシート19は、例えば、ゴム等の遮水性を有する(水を透さない)非導電性の弾性部材により構成されている。キーシート19は、複数のスイッチ41を覆っている。キーシート19は、ユーザの押圧力をスイッチ41上に集中させる押し子19gを有している。
送話筐体3は、防水機能を有するように構成されている。具体的には、以下のとおりである。
図5(b)に示すように、壁部13wのフロントケース11側の頂部には、壁部13wによって形成されるフロントケース11側の開口を囲む溝部13eが形成されている。一方、キーシート19は、外周縁に亘って延びるパッキン部19eを有している。パッキン部19eが溝部13eに圧入されることにより、キーシート19がインナーケース13に取り付けられるとともに、壁部13wの開口が密閉される。
また、図5(c)に示すように、インナーケース13には、蓋体17側に、インナーケース13の蓋体17側の開口を囲む溝部13fが形成されている。一方、蓋体17は、蓋体17の蓋体本体17aに固定され、蓋体本体17aの外周に沿って延びるパッキン部17fを有している。蓋体17は、パッキン部17fが溝部13fに圧入されることにより、インナーケース13に取り付けられるとともに、インナーケース13の基部13vに形成された開口を密閉する。
そして、インナーケース13、キーシート19及び蓋体17により形成された送話側空間S1には、FPC43、シールドケース21、メイン基板23、サブ基板アセンブリ25及びバッテリ27が収容されている。さらに、図5では不図示であるが、図3から理解されるように、スピーカ85は、送話側空間S1に収容されるとともに、送話側空間S1をバックキャビティとして利用可能に配置されている。
<受話筐体の構成及び密閉構造>
図6は、受話筐体5の要部の模式的な分解斜視図である。図7(a)は、図1のVIIa−VIIa線における模式的な断面図である。図7(b)は、図7(a)の領域VIIbにおける拡大図である。図7(c)は、図7(a)の領域VIIcにおける拡大図である。なお、図6及び図7では、回路基板等の各種の部品の図示は省略されるとともに、図示した部品についても細部の形状等の図示は省略されている。
受話筐体5は、種々の電子部品を収容する筐体本体55を有している。また、受話筐体5は、筐体本体55の正面側部分を覆って受話筐体5の正面側の外観を構成する透光板57及び化粧板59を有している。
筐体本体55は、筐体本体55の正面側部分を構成するフロントケース61と、背面側部分を構成するリアケース63とを有している。
フロントケース61及びリアケース63は、互いに対向して配置されるとともに、ネジ65(図6)等の固定部材により互いに固定される。なお、図6では、複数のネジ65のうち、フロントケース61に挿通され、リアケース63に螺合されるネジ65の一部を例示している。フロントケース61とリアケース63との間には、スピーカ83や表示側基板67(図11参照)等の種々の電子部品が収容される。
フロントケース61は、例えば、インサート成形により形成され、樹脂部69と、樹脂部69に埋設された板金部71とを有している。樹脂部69は、枠状に形成されており、板金部71は、樹脂部69の開口において露出している。フロントケース61の正面側には、表示部9を構成する表示装置73(図7(a))が収容される凹部61aが形成されている。なお、フロントケース61は、全体が樹脂により形成されていてもよい。リアケース63は、例えば、樹脂により構成されている。また、リアケース63は、例えば、フロントケース61側が開放された箱状に形成されている。
透光板57は、表示装置73の表示面を露出させつつ、表示装置73を保護するためのものである。透光板57は、例えば、透光性の樹脂やガラスにより形成されている。透光板57は、凹部61aの開口を塞ぐように、両面テープ75によってフロントケース61の樹脂部69に接着される。
化粧板59は、受話筐体5のデザイン性を向上させるためのものである。例えば、化粧板59は、透光板57とは異なる外観を構成したり、ネジ65や後述する通気孔等を隠したりすることにより、デザイン性を向上させる。化粧板59は、例えば、樹脂により構成されている。化粧板59は、両面テープ77によりフロントケース61の樹脂部69に接着される。
スピーカ83は、フロントケース61の内側面に放音面83aを対向させて配置されている。スピーカ83は、例えば、概ね直方体状に形成されている。ただし、円形等に形成されていてもよい。
表示装置73は、例えば、液晶表示装置や有機EL表示装置により構成されている。
表示側基板67(図11参照)は、例えば、硬質の樹脂をベースとしたリジッド式のプリント基板により構成されている。表示側基板67には、例えば、IC等の電子部品が実装されて、表示装置73を制御する電子回路が構成されている。
透光板57とフロントケース61との間の空間と、フロントケース61とリアケース63との間の空間とは、フロントケース61の板金部71に形成された挿通孔71a(図2)等により、連通されている。透光板57とフロントケース61との間の空間、及び、フロントケース61とリアケース63との間の空間により、受話側空間S2(符号は図7のみ示す)が構成されている。なお、挿通孔71aには、表示装置73と、表示側基板67とを接続する不図示のFPCが挿通される。
受話筐体5は、防水機能を有するように構成されている。具体的には、以下のとおりである。
フロントケース61とリアケース63との合せ目には、環状のパッキン79が配置される。これにより、フロントケース61とリアケース63との合せ目において気密性が維持される。より詳細には、例えば、図6に示すように、リアケース63には、電子部品が配置される領域を囲む溝部63bが形成されており、パッキン79は溝部63bに配置される。一方、フロントケース61の溝部63bと対向する部分には、図7(b)に示すように、溝部63bに挿入される突条部61bが形成されている。ネジ65が螺合されると、パッキン79が突条部61bと溝部63bとの間で押し潰される。
透光板57とフロントケース61とを接着する両面テープ75は、気密性を有する材料により構成されている。例えば、両面テープ75は、可撓性の樹脂やゴム等の両面に接着剤が塗布されて構成されている。そして、図7(c)に示すように、両面テープ75は、透光板57とフロントケース61とに密着する。また、図6に示すように、両面テープ75は、凹部61aを囲む枠状に形成されている。従って、透光板57とフロントケース61との合せ目において気密性が維持される。
ネジ65は、パッキン79に囲まれる領域の外側に配置される。これにより、ネジ65を挿通する孔部は、気密性に影響しない。ただし、ネジ65はパッキン79に囲まれる領域の内側に配置されていてもよい。この場合であっても、透光板57等によってネジ65を挿通する孔部の気密性を保つことが可能である。
<受話筐体の通気孔の構成>
受話筐体5には、通気性を確保して、受話筐体5の圧力変動(筐体内外の圧力差)を緩和するための通気孔が設けられている。具体的には、以下のとおりである。
図8は、図7の領域VIIIにおける模式的な分解斜視図である。また、図9は、図1のIX−IX線における模式的な断面図である。なお、図8では、図示の都合上、化粧板59やフロントケース61等を適宜に破断して示している。
フロントケース61には、スピーカ83の音響を筐体外部へ放音するための音孔87と、筐体本体55の通気性を確保するための通気孔89とが形成されている。両面テープ77には、音孔87及び通気孔89に接続される連通孔91が形成されている。化粧板59には、連通孔91に接続される外側孔93が形成されている。
音孔87は、例えば、長孔状に形成されている。通気孔89は、例えば、音孔87の長手方向において音孔87に隣接しており、また、円形状に形成されている。音孔87の開口面積は、通気孔89の開口面積よりも大きい。
外側孔93は、音孔87及び通気孔89の少なくとも一方と重ならない位置に配置されている。例えば、外側孔93は、音孔87と重なり、通気孔89に重ならない位置に設けられている。従って、通気孔89は、化粧板59によって隠され、音孔87から露出しない。
また、外側孔93は、開口面積が、音孔87及び通気孔89それぞれの開口面積以上となり、音孔87及び通気孔89の開口面積の和よりも小さくなるように形成されている。例えば、外側孔93は、音孔87及び通気孔89のうち大きい方の孔、すなわち、音孔87と同等の開口面積に形成されている。また、外側孔93は、音孔87と同様の形状に形成されている。
連通孔91は、音孔87及び通気孔89、並びに、外側孔93に重なるように形成されている。従って、音孔87及び通気孔89は、連通孔91によって、共に、外側孔93に接続される。具体的には、連通孔91は、音孔87及び外側孔93と重なり、音孔87及び外側孔93と同等以上の大きさを有する長孔状部分と、当該長孔状部分から通気孔89に延び、上記長孔状部分よりも細い部分とを有している。
受話筐体5では、これらの孔部においても、防水機能が得られるように構成されている。具体的には、以下のとおりである。
化粧板59とフロントケース61とを接着する両面テープ77は、両面テープ75と同様に、気密性を有する材料により構成されている。例えば、両面テープ77は、可撓性の樹脂やゴム等の両面に接着剤が塗布されて構成されている。フロントケース61には、両面テープ77と同等の厚さを有し、両面テープ77が収容される凹部61cが形成されている。両面テープ77は、凹部61cにおいて、化粧板59とフロントケース61とに密着する。
また、両面テープ77は、音孔87及び通気孔89に重なる連通孔91が形成されることにより、音孔87及び通気孔89を囲む枠状に形成されている。従って、音孔87及び通気孔89の周囲において、化粧板59とフロントケース61との合せ面において気密性が維持される。その結果、化粧板59とフロントケース61との合わせ面から侵入した水分が音孔87及び通気孔89に侵入することが抑制される。
音孔87及び通気孔89は、遮水性及び通気性を有する遮水シート81によって塞がれる。遮水シート81は、例えば、空気等の気体が通過可能且つ水等の液体が通過不可能な微細な複数の孔部が形成されたシートにより形成されている。遮水シートの材料は、例えば樹脂であり、また、水等をはじく材料であることが好ましい。遮水シート81は、例えば、フロントケース61の筐体内側面に対して、音孔87及び通気孔89の周囲において、接着剤により貼り付けられている。なお、遮水シートは、フロントケース61の外側に配置されていてもよい。
<連結部の構成>
図1及び図2に示すように、連結部6は、回転軸RAを軸とする円筒状に形成され、回転軸RA回りに互いに相対回転する第1外郭部51及び第2外郭部53を有している。第1外郭部51は、送話筐体3の一部であり、第2外郭部53は、受話筐体5の一部である。第1外郭部51は、例えば、回転軸RA方向において2つ設けられ、第2外郭部53は、2つの第1外郭部51間に配置されている。第1外郭部51及び第2外郭部53は、概ね同一径に形成されるとともに、同軸状に配置されており、全体として一つの円筒形状を構成している。
第1外郭部51及び第2外郭部53内には、不図示のヒンジユニットが配置され、送話筐体3及び受話筐体5の回転軸RA回りの相対回転を可能としている。例えば、特に図示しないが、ヒンジユニットは、送話筐体3に固定された第1パーツと、受話筐体5に固定され、第1パーツに対して回転軸RA回りに回転可能に連結された第2パーツとを有する。または、ヒンジパーツは、送話筐体3及び受話筐体5に対して回転軸RA方向に挿通される軸部材であり、送話筐体3及び受話筐体5の少なくとも一方に対して回転可能となっている。
図10(a)は、携帯電話機1の閉状態におけるFPC95を受話筐体5側から見た斜視図である。図10(b)は、携帯電話機1の閉状態においてFPC95を送話筐体3側から見た斜視図である。
FPC95は、連結部6に挿通され、送話筐体3の電子回路(電子部品)と、受話筐体5の電子回路(電子部品)とを接続するものである。FPC95は、概略、帯状に長く形成されている。FPC95の第1端部95a側は、送話筐体3内に配置される部分であり、第2端部95b側は、受話筐体5内に配置される部分である。第1端部95aと第2端部95bとの間の、連結部6に挿通される部分には、屈曲部95cが設けられている。屈曲部95cは、例えば、回転軸RA回りに螺旋状に形成されており、携帯電話機1の開閉に伴って巻き戻し又は巻き締めがなされる。
第1端部95aには、送話側コネクタ97A(図10(b))が設けられ、第2端部95bには、受話側コネクタ97B(図10(b))が設けられている(以下、単に「コネクタ97」といい、両者を区別しないことがある。)。
コネクタ97は、例えば、ボードツーボードのコネクタにより構成されている。送話側コネクタ97Aは、例えば、メイン基板23に設けられたコネクタ101(図3)に接続される。受話側コネクタ97Bは、例えば、表示側基板67に設けられたコネクタ103(図11参照)に接続される。
<連結部の周囲における密閉構造>
第1外郭部51と第2外郭部53との滑らかな相対移動を実現する観点から、第1外郭部51と第2外郭部53との間にパッキンを設けて連結部6内を密閉することは難しい。一方、FPC95は、送話側空間S1から、連結部6を経由して、受話側空間S2へ架け渡されなければならない。そこで、携帯電話機1では、以下のように、送話側空間S1及び受話側空間S2は、連結部6の内部から独立するように密閉されている。
FPC95の第1端部95a側には、送話側閉塞部材99Aが設けられ、FPC95の第2端部95bには、受話側閉塞部材99Bが設けられている(以下、単に「閉塞部材99」といい、両者を区別しないことがある。)。
図11は、図1のXI−XI線における断面図である。
受話側閉塞部材99Bは、樹脂等の硬質の部材により形成されたグロメット105と、グロメット105の外周に嵌合されたパッキン107とを有している。
グロメット105は、例えば、樹脂により形成されている。FPC95は、グロメット105に対して、密着した状態で挿通(埋設)されている。このようなグロメット105は、例えば、金型内にFPC95が挿通された状態で、金型内に樹脂が充填されることにより形成される。パッキン107は、ゴム等の弾性部材により形成された環状部材であり、グロメット105の外周面に形成された溝部に嵌合している。
受話側閉塞部材99Bは、受話筐体5に形成された、受話側空間S2とその外部とを連通する開口部109に圧入される。これにより、FPC95の第2端部95b側部分が受話側空間S2へ挿入され、且つ、受話側空間S2は密閉される。
なお、開口部109は、例えば、以下のように、フロントケース61に形成されている。リアケース63の溝部63b(パッキン79)は、連結部6側の一部において、両面テープ75よりも内周側に位置するように屈曲している。そして、開口部109は、パッキン79よりも外周側且つ両面テープ75よりも内周側において開口している。そして、連結部6から延びてきたFPC95は、フロントケース61とリアケース63との間から、開口部109を経由して、受話側空間S2に至る。
同様に、特に図示しないが、送話側閉塞部材99Aも、グロメット105及びパッキン107を有し、送話側空間S1に開口する開口部に圧入される。これにより、FPC95の第1端部95a側部分が送話側空間S1へ挿入され、且つ、送話側空間S1は密閉される。送話側閉塞部材99Aが圧入される開口部は、例えば、インナーケース13の壁部13wの、連結部6側部分に形成される。
<送話側空間と受話側空間との連通構造>
上述のように、受話側空間S2においては、通気孔89が設けられている。一方、送話側空間S1においては通気孔が設けられていない。そこで、携帯電話機1では、FPC95により受話側空間S2と送話側空間S1とを連通することにより、送話側空間S1における通気性を確保している。具体的には、以下のとおりである。
図12(a)は、図10(a)のXIIa−XIIa線における模式的な断面図である。図12(b)は、図10(a)のXIIb−XIIb線における模式的な断面図である。
FPC95は、例えば、電気信号を伝達するための導体層111と、導体層111を保護するための2つの絶縁層113とを有している。
導体層111は、例えば、銅箔(導体)により形成されている。導体層111には、基準電位に対して変動する信号(電気信号)が付与される。絶縁層113は、例えば、可撓性を有する絶縁性の樹脂により形成されている。2つの絶縁層113は、導体層111の両面側から導体層111に積層されている。
そして、送話側空間S1と受話側空間S2とを連通する連通路115が、導体層111と絶縁層113との隙間により構成されている。
具体的には、導体層111と絶縁層113とは、その両側部において接着部材117により接着されている。そして、接着部材117は、導体層111と絶縁層113とを所定の間隔で離間させるスペーサとして機能するとともに、導体層111と絶縁層113との隙間を密閉する密閉部材として機能している。これにより、連通路115が構成されている。
なお、FPC95では、導体層111の両面側に連通路115が形成されているが、導体層111の一方の面側にのみ、連通路115が形成されていてもよい。
接着部材117は、例えば、接着剤により構成されてよい。接着剤は、スペーサとして機能する所定の径の粒状物質を含んでいてもよい。また、接着部材は、例えば、加熱及び加圧されることにより、導体層111及び絶縁層113に接着される樹脂製のフィルムにより構成されてもよい。
連通路115の断面積(の総和)は、例えば、通気孔89の開口面積よりも小さい。例えば、通気孔89を直径1mmの円と仮定すると、通気孔89の開口面積は約0.8mm2である。これに対し、1つの連通路115の断面形状を、高さ30μm、幅5mmの矩形と仮定すると、2つの連通路115の断面積は、0.3mm2である。
連通路115は、FPC95の、閉塞部材99よりも第1端部95a(又は95b)側の部分において孔部116が形成されることにより、送話側空間S1及び受話側空間S2に連通される。孔部116は、例えば、FPC95の複数の層全体をその積層方向において貫通している。このような孔部116は、例えば、公知のスルーホールを形成する技術により形成可能である。なお、孔部116は、連通路115よりも外側の層のみ(実施形態では絶縁層113のみ)を貫通していてもよい。
以上の実施形態によれば、携帯電話機1は、受話側空間S2を有する受話筐体5と、密閉された送話側空間S1を有し、受話筐体5に対して移動可能に連結された送話筐体3とを有する。また、携帯電話機1は、受話側空間S2に配置される表示側基板67と、送話側空間S1に配置されるメイン基板23とを有する。そして、携帯電話機1は、受話側空間S2と送話側空間S1とを連通する密閉された連通路115を有し、表示側基板67とメイン基板23とを接続するFPC95を有する。
従って、送話側空間S1は、連通路115を介して受話側空間S2に連通されることになる。その結果、蓋体17の取り付け時等における送話側空間S1の気圧変動を受話側空間S2に発散させることができる。また、受話側空間S2において通気性が確保されているならば、送話筐体3に通気孔を設けることなく、送話側空間S1の通気性を確保することができる。このように、簡素な構成で、送話筐体3の圧力が調整可能となる。一般に、受話側空間S2は、仮に密閉されていないとしても、電子部品を保護するために、ある程度の防水性が確保されている。また、受話側空間S2に侵入した水分が、比較的狭く且つ長い連通路115を介して送話側空間S1まで到達することは稀であると考えられる。従って、送話側空間S1の通気性が確保されつつ、送話側空間S1の防水性は高く維持される。
受話側空間S2は、通気性及び遮水性を有する遮水シート81により塞がれた通気孔89により受話側空間S2の外部と連通されていることから、送話側空間S1の通気性が確保されるとともに、防水性が向上する。
携帯電話機1は、送話筐体3内に設けられ、送話側空間S1をバックキャビティとするスピーカ85を有し、連通路115の断面積(の総和)は、通気孔89の開口面積よりも小さい。従って、送話側空間S1は、通気性が確保されつつも、送話筐体3に通気孔が形成される場合に比較して、気密性が高い。その結果、スピーカ85は、高い音圧が確保され、音質が向上する。なお、通気性を確保するために必要な開口面積は、音圧が確保できなくなる開口面積よりも小さい。しかし、送話筐体3に通気孔を設けるとともに、その通気孔を小さく形成して、送話側空間S1の通気性を確保しつつ、高い音圧を確保することは難しい。これは、一般に、筐体の形成方法(例えば射出成形)において実現可能な最小の開口面積が、通気性を確保するために必要な開口面積よりも大きいことからである。
また、スピーカ85は、報知や音楽再生等に用いられ、比較的大音量の音響を出力するものであることから、音圧が高くされることが好ましい。一方で、通話用のスピーカ83は、ユーザが耳を近接させて使用されるものであり、比較的小音量の音響を出力するものであることから、近傍に通気孔89が形成され、音圧が低くなることが許容される。そして、通気孔89を通話用のスピーカ83に隣接させることにより、通気孔89と音孔87とで、両面テープ77や遮水シート81を共用することができる。
メイン基板23と表示側基板67とを接続するケーブルは、複数の層が積層されたFPC95であり、連通路115は、FPC95の層と層との隙間により構成されている。従って、FPC95の層間の隙間を確保する簡単な構成により、連通路115を構成することができる。
FPC95は、導体により構成された(導体を含む)導体層111と、導体層111に積層される絶縁層113と、導体層111と絶縁層113とを接着する接着部材117と、を有する。接着部材117は、導体層111及び絶縁層113の、FPC95の伸長方向に対する側方両側において導体層111と絶縁層113との隙間を密閉し、連通路115は、導体層111、絶縁層113及び接着部材117により構成されている。従って、接着部材を配置する位置を限定するだけの簡単な設計変更により、連通路115が構成される。
なお、以上の実施形態において、携帯電話機1は本発明の携帯電子機器の一例であり、受話筐体5は本発明の第1筐体の一例であり、受話側空間S2は本発明の第1空間の一例であり、送話筐体3は本発明の第2筐体の一例であり、送話側空間S1は本発明の第2空間の一例であり、表示側基板67は本発明の第1電子部品の一例であり、メイン基板23は本発明の第2電子部品の一例であり、FPC95は本発明のケーブル及びフレキシブル基板の一例であり、遮水シート81は本発明の遮水部材の一例である。
(第1変形例)
図13(a)は、第1変形例に係るFPC295の図12(a)に相当する断面図である。
FPC295は、導体層211の構成がFPC95の導体層111の構成と異なっている。導体層211は、絶縁性のベース層219と、ベース層219に形成された信号線221及びグランド部223とを有している。ベース層219は、例えば、可撓性を有する絶縁性の樹脂により形成されている。信号線221及びグランド部223は、それぞれ銅などの導体により構成されている。
信号線221は、送話側コネクタ97A及び受話側コネクタ97Bを介して表示側基板67とメイン基板23に接続され、基準電位に対して変動する電位が付与される。一方、グランド部223は、信号線221の側方両側において信号線221に沿って延びており、基準電位が付与される。
そして、接着部材117は、グランド部223と重なる位置において、導体層211と絶縁層113とを接着している。換言すれば、接着部材117は、グランド部223と重なり、信号線221に重ならない位置に配置されている。
変形例1においても、実施形態と同様の効果が奏される。また、この変形例では、携帯電話機1の開閉に伴ってFPC295が屈曲するときにおける、内側の層と外側の層との曲率半径の相違に起因して生じる内側の層と外側の層との相互間の力は、グランド部223に加えられる。一方、グランド部223の一部が破損したとしても、FPC295全体の機能には大きな影響は生じない。従って、FPC295の耐久性が向上する。また、グランド部223が信号線221の両側に配置されていることから、信号線221へのノイズの侵入又は信号線221からのノイズの放出が抑制される。
(第2変形例)
図13(b)は、第2変形例に係るFPC395の図12(a)に相当する断面図である。
FPC395は、接着部材317の構成がFPC95の接着部材117の構成と異なっている。すなわち、接着部材317は、従来のように、層の全面に配置されている。ただし、FPC395においても、実施形態と同様に、接着部材117が配置されてもよい。
また、FPC395は、シールド層325と、絶縁層327とを有している。シールド層325は、例えば、銅箔(導体)により構成され、導体層111の電気信号が付与される導体(この変形例では導体層111全体)を覆っている。シールド層325には、基準電位が付与される。絶縁層327は、例えば、可撓性を有する絶縁性の樹脂により形成されている。絶縁層327は、絶縁層113と同様に、接着部材によりシールド層325に接着されてもよいが、図13(b)では、絶縁層327がシールド層325に溶着されている場合を例示している。
シールド層325と絶縁層113とは、接着部材329により接着されている。そして、接着部材329が、実施形態の接着部材117と同様に配置されることにより、シールド層325と絶縁層113との間には、連通路115が構成されている。
変形例2においても、実施形態と同様の効果が奏される。また、変形例1と同様に、内側の層と外側の層との相互間の力がシールド層325(グランド部とも捉えられる)に加えられることから、FPC395の耐久性が向上する。また、シールド層325により、導体層111へのノイズの侵入や導体層111からのノイズの放出が抑制される。
なお、変形例2において、導体層111は、本発明の信号層の一例である。
(第3変形例)
図13(c)は、第3変形例に係るFPC495の図12(a)に相当する断面図である。
FPC495では、FPC495の伸長方向の側方両側だけでなく、その間(例えば中央)にも接着部材117が配置されている。換言すれば、接着部材117は、FPC495の伸長方向に直交する方向において、3個以上(図13(c)では3個)設けられている。
連通路115は、導体層111及び絶縁層113の変形により、導体層111と絶縁層113とが近接して狭くなるおそれがある。しかし、少なくとも、接着部材117に隣接する位置では、導体層111と絶縁層113とが当接することはない。従って、接着部材117の数を増やすことにより、層に変形が生じたときにおける連通路の断面積の確保が容易化される。
なお、このように、FPC495の伸長方向に直交する方向の複数位置にスペーサ(第3変形例では接着部材117)を配置する構成は、FPC495が閉塞部材99に挿通される位置において特に有効である。FPC495を金型に挿入した状態で、グロメット105を射出成形するときに、FPC495が圧縮されて連通路115が縮小されるおそれがあるからである。側方両側の2つの接着部材117の間に設けられる接着部材117は、FPC495の全長に亘って設けられてもよいが、グロメット105の位置のみ等の、FPC495の長手方向の一部においてのみ設けられてもよい。
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
携帯電子機器は、携帯電話機に限定されない。例えば、携帯電子機器は、ノートパソコン、PDA、ゲーム機、カメラであってもよい。また、携帯電子機器は、折り畳み式のものに限定されない。例えば、携帯電話機は、2つの筐体が互いに直線方向に平行移動する、いわゆるスライド式のものであってもよいし、2つの筐体が互いに回転方向にスライドする、いわゆるリボルバー式のものであってもよい。
ケーブルは、フレキシブル基板に限定されない。例えば、同軸ケーブルであってもよい。ケーブルがフレキシブル基板である場合、連通路は、いずれの層によって構成されてもよい。なお、接着部材も、連通路の側方を構成する部材としてではなく、連通路を構成する層として利用されてよい。
また、フレキシブル基板は、複数のフレキシブル基板(以下、「単位基板」という)が積層されて、一のフレキシブル基板として構成されたものであってもよい。この場合、複数の単位基板間の隙間により連通路を構成することが可能である。なお、これは、一のフレキシブル基板において、絶縁層と絶縁層との隙間により連通路が構成されていると捉えられることができる。
連通路の第1空間及び第2空間における開口(実施形態では孔部116)は、フレキシブル基板の層を積層方向に貫通するものに限定されない。例えば、実施形態において、接着部材117が、FPC95の長手方向の一部において省略されることにより、開口がFPCの側方に形成されてもよい。また、フレキシブル基板の層を積層方向に貫通する孔部が形成される場合、当該部分においては、信号線の断面積や数を確保するためにフレキシブル基板が拡幅されていてもよい。
実施形態及び変形例は、適宜に組み合わされてよい。例えば、変形例2において、導体層111は、変形例1の導体層211に置き換えられてもよい。