JP5307069B2 - 放射線硬化性半導体ウエハ表面保護用粘着テープ - Google Patents
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Description
近年の高密度実装技術の進歩に伴い、ウエハ裏面に対してプラズマエッチング、バックメタライジング、又はメタルスパッタ等の処理を行い、ウエハを薄膜化することが行われている。
ここでバックメタル工程とは、裏面電極形成工程とも呼ばれ、研削後の半導体ウエハの裏面に裏面電極を形成する工程である。裏面電極は、ディスクリート半導体(単機能半導体、個別半導体)を製造する際に必要な場合が多く、銅やアルミニウムなどの金属の薄膜を蒸着等により形成されることが多い。その際に、シリコンと金属との密着性を向上させるために、真空中で180℃程度の高温にまで加熱することが多い。
しかしながら、研削工程と、バックメタル工程との両方工程に一貫して使用できる耐熱性に優れた半導体ウエハ表面保護用粘着テープがないのが現状である。
そこで、上記の研削工程を行った後に、バックメタル工程を行う場合、研削工程時には研削性に優れる粘着テープを用い、この粘着テープを剥した後にバックメタルに対応できる耐熱性に優れるバックメタル加工用粘着テープへ貼り替えることにより、バックメタル工程に供されることが行われている。
しかし、研削工程で使用される表面保護用粘着テープから、バックメタル工程で使用される表面保護用粘着テープに貼り替えるのは煩雑であり、これらの両方の工程で一貫して使用できる表面保護用粘着テープの提供が望まれていた。
ダイシング・ダイボンドテープが半導体ウエハ裏面に貼合後、半導体ウエハ表面保護用粘着テープは剥離される。しかしダイシング・ダイボンドテープ貼合時の熱により、半導体ウエハ表面保護用粘着テープが溶融し、又は熱収縮することにより、半導体ウエハの破損や該粘着テープの半導体ウエハからの剥離不良等が生じることがある。
また本発明は、放射線を照射することにより粘着力を大きく低下させることができる一方で、保管時に例えば蛍光灯のような弱い光に暴露された場合でも粘着力の低下を抑制することができ、放射線を照射することにより粘着力を低下させることができる放射線硬化性半導体ウエハ表面保護用粘着テープを提供することを課題とする。
<1>基材樹脂フィルムと、該基材樹脂フィルム上に粘着剤層が形成された、半導体ウエハ表面保護用粘着テープであって、
該基材樹脂フィルムがポリエチレンナフタレートを主成分とする樹脂組成物で構成され、該粘着剤層が放射線硬化性炭素−炭素二重結合を有する化合物(A)、及びアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C−1)とアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤以外の光重合開始剤(C−2)とを含む2種類以上の光重合開始剤を含有する粘着剤組成物で構成されたことを特徴とする放射線硬化性半導体ウエハ表面保護用粘着テープ。
<2>前記光重合開始剤(C−2)が、チオキサントン系光重合開始剤及び/又はアセトフェノン系光重合開始剤であることを特徴とする<1>項記載の放射線硬化性半導体ウエハ表面保護用粘着テープ。
<3>前記放射線硬化性炭素−炭素二重結合を有する化合物100質量部に対して、前記アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を0.05〜5質量部含有することを特徴とする<1>又は<2>項記載の放射線硬化性半導体ウエハ表面保護用粘着テープ。
<4>前記放射線硬化性炭素−炭素二重結合を有する化合物100質量部に対して、重合抑制剤を0.001〜5質量部含有することを特徴とする<1>〜<3>のいずれか1項記載の放射線硬化性半導体ウエハ表面保護用粘着テープ。
図1は本発明の半導体ウエハ表面保護用粘着テープの好ましい一実施形態を示す概略断面図である。図1からわかるように、本発明の放射線硬化性半導体ウエハ表面保護用粘着テープ10には、基材樹脂フィルム1と、基材樹脂フィルム1上に粘着剤層2が形成されている。粘着剤層2上には、必要に応じて、表面が離型処理された剥離フィルム(図示せず)の離型処理面が粘着剤層2側に来るように積層されている。
本発明の放射線硬化性半導体ウエハ表面保護粘着テープの基材樹脂フィルムとしては、ポリエチレンナフタレートを主成分とする樹脂組成物が使用される。本発明においては、ポリエチレンナフタレートを主成分とするとは、基材樹脂フィルムに使用される樹脂組成物中、70質量%以上のものをいう。基材樹脂フィルム中の樹脂成分はポリエチレンナフタレートのみのものが好ましい。ポリエチレンナフタレートは、耐熱性が高く、放射線硬化性半導体ウエハ表面保護粘着テープが半導体ウエハに貼合された状態で、高温となる工程で使用されても、基材樹脂フィルムの溶融や熱収縮を低減することができ、放射線硬化性半導体ウエハ表面保護粘着テープの損傷を低減することができる。
一方、ポリエチレンナフタレートは放射線の波長域である、放射線の波長域である250〜380nmで、光の透過性は10〜20%と低い。
しかし後述の特定の放射線硬化性の粘着剤組成物を粘着剤層として使用することにより、基材樹脂フィルム側から放射線を照射しても放射線硬化性粘着剤層の粘着力の低下を得ることができる。このため、半導体ウエハの裏面研削などの加工終了後、放射線硬化性半導体ウエハ表面保護用粘着テープを剥離する場合に、問題なく剥離することができる。
基材樹脂フィルム1の粘着剤層2が設けられる側の表面には、粘着剤層や中間樹脂層との密着性を向上させるために、コロナ処理やプライマー層を設ける等の処理を適宜施してもよい。なお、基材樹脂フィルム1の粘着剤層2が設けられない側の表面をシボ加工もしくは滑剤コーティングすることが好ましく、これによって、本発明の放射線硬化性半導体ウエハ表面保護用粘着テープ保管時のブロッキング防止等の効果を得ることができる。
図2に示すように、本発明の半導体ウエハ表面保護用粘着テープは、基材樹脂フィルム1と粘着剤層2の間に中間樹脂層3を設けることができる。
図2に示す本発明の半導体ウエハ表面保護用粘着テープは、例えば、剥離フィルム上に中間樹脂層2を構成する組成物を塗布、乾燥して得られる中間樹脂層を、基材フィルム1上へ転写することや、中間樹脂層組成物を基材樹脂フィルム1へ直接塗布することで中間樹脂層3を形成し、その後、中間樹脂層3上へ同様にして粘着剤層2を転写することや、直接塗布することにより製造することができる。
常温での剛性をもたせるために中間樹脂層のDSCによるガラス転移点(Tg)の好ましい範囲は、−30℃〜50℃であり、より好ましくは−15℃〜20℃である。中間樹脂層は、例えば、粘着剤成分と硬化剤成分とを含む中間樹脂層組成物を基材フィルム上に塗工した後、硬化させることによって設けることができる。中間樹脂層組成物には、室温で1週間程度放置することによって徐々に硬化し、好ましい範囲の弾性率となるような材料を用いることが好ましい。中間樹脂層を硬くする方法としては、中間樹脂層組成物に使用される粘着成分のガラス転移点(Tg)を高くする、中間樹脂層組成物に添加される硬化成分量を多く配合する、中間樹脂層組成物に無機化合物フィラーを加える等の方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、中間樹脂層組成物に放射線照射によって硬化する材料を使用し、放射線照射によって硬化させて中間樹脂層の硬さを調整してもよい。中間樹脂層の厚さは、裏面研削工程でのクッション性の観点から、好ましくは10〜200μmであり、更に好ましくは20〜100μmであり、より好ましくは30〜80μmである。中間樹脂層が薄すぎると裏面研削工程時のクッション性が小さくなり、中間樹脂層が厚すぎると本発明の半導体ウエハ表面保護用粘着テープを剥離する際に問題が生じる場合があるため、好ましくない。なお、中間樹脂層は複数の層が積層された構成であってもよい。
図1からわかるように、本発明の放射線硬化性半導体ウエハ表面保護用粘着テープ10には、基材樹脂フィルム1上に粘着剤層2が形成されている。粘着剤層2上には、必要に応じて、表面が離型処理された剥離フィルム(図示せず)の離型処理面が粘着剤層2側に来るように積層されている。
本発明における粘着剤組成物は、放射線硬化性炭素−炭素二重結合を有する化合物、及びアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を含む2種類以上の光重合開始剤を含有する。
放射線硬化性炭素−炭素二重結合を有する化合物(A)は、放射線硬化性炭素−炭素二重結合を有している。本発明の粘着剤組成物においては、放射線照射により後述の光重合開始剤が活性化され、ラジカルやアニオン等を発生する。これらが上記化合物(A)の放射線硬化性炭素−炭素二重結合を攻撃することにより、粘着剤が3次元架橋する。これにより、放射線照射前と比較して粘着力が大きく低下する。
重合体(a)の放射線硬化性炭素−炭素二重結合の好ましい導入量は、ヨウ素価で0.5〜20、より好ましくは0.8〜10である。ヨウ素価をこの範囲内とすることにより、放射線照射後の粘着力の低減効果を得ることができ、化合物(a)そのものに安定性があり、製造が容易となる。上記化合物(a)は、ガラス転移点(Tg)が−70℃〜0℃であることが好ましい。ガラス転移点(Tg)がこの範囲内であれば、放射線照射に伴う熱に対する耐熱性を満足することができる。
上記のヨウ素価は、Wijs法に基づき算出したものであり、重量平均分子量は、テトラヒドロフランに溶解して得た1%溶液を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(ウオータース社製、商品名:150−C ALC/GPC)により測定した値をポリスチレン換算の質量平均分子量として算出したものである。また、水酸基価は、FT−IR法にて算出したものであり、酸価は、JIS K 5407の11.1に準じて算出したものである。
ポリイソシアネート類としては、特に制限がなく、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’−〔2,2−ビス(4−フェノキシフェニル)プロパン〕ジイソシアネート等を挙げることができる。
具体的には、市販品として、コロネートL(商品名、日本ポリウレタン(株)製)等を用いることができる。また、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂としては、具体的には、市販品として、ニカラックMX−45(商品名、三和ケミカル社製)、メラン(商品名、日立化成工業株式会社製)等を用いることができる。更に、エポキシ樹脂としては、TETRAD−X(三菱化学株式会社製)等を用いることができる。本発明においては、放射線硬化性炭素−炭素二重結合を有する化合物(A)として、主鎖の繰り返し単位に対して放射線硬化性炭素−炭素二重結合含有基を有する(メタ)アクリル系単量体部を有する残基を結合した重合体(以下、重合体(a)という。)を主成分とする樹脂を用いた場合には、ポリイソシアネート類を用いることが好ましい。架橋剤(B)の配合量としては、前記化合物(A)100質量部に対して0.1〜10質量部とすることが好ましく、0.2〜2質量部とすることがより好ましい。その量が少なすぎる場合は凝集力向上効果が十分でない場合があり、多すぎる場合は粘着剤の配合および塗布作業中に硬化反応が急速に進行し、架橋構造が形成される傾向があるため、作業性が損なわれるおそれがある。
ウレタンアクリレート系オリゴマーは、ポリエステル型またはポリエーテル型などのポリオール化合物と、多価イソシアナート化合物を反応させて得られる末端イソシアナートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシル基を有するアクリレートあるいはメタクリレートなどを反応させて得ることができる。
多価イソシアナート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、1,3−キシリレンジイソシアナート、1,4−キシリレンジイソシアナート、ジフェニルメタン4,4−ジイソシアナートを挙げることができる。
ヒドロキシル基を有するアクリレートあるいはメタクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレートまたは2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリ
コールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレートなどを挙げることができる。
本発明で好ましく用いられるウレタンアクリレート系オリゴマーの分子量は、1000〜50000、さらに好ましくは2000〜30000である。上記のウレタンアクリレート系オリゴマーは一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
ウレタンアクリレート系オリゴマーには、放射線重合性炭素−炭素二重結合を有する単量体を加えることができる。例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アダマンタン(メタ)アクリレートなどの脂環式化合物、フェニルヒドロキシプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノールエチレンオキシド変性アクリレートなどの芳香族化合物、もしくはテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、モルホリンアクリレート、N−ビニルピロリドンまたはN−ビニルカプロラクタムなどの複素環式化合物を加えることができる。
本発明は、粘着剤組成物中の光重合開始剤として、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C−1)およびアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤以外の光重合開始剤(C−2)を含む少なくとも2種類の光重合開始剤を含む。
本発明の放射線硬化性半導体ウエハ表面保護用粘着テープは、基材樹脂フィルムとしてポリエチレンナフタレートが使用される。ポリエチレンナフタレートは、波長250〜380nm付近の近紫外線領域の光の透過率が10〜20%と、低い。このため、この波長域では、通常、光重合開始剤の反応が進みにくく、その結果、粘着剤層の硬化反応が進みにくい。
本発明者が鋭意検討したところ、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤が長波長領域の光にも反応性を示し、ポリエチレンナフタレート基材樹脂フィルム側から放射線を照射しても、粘着剤層の粘着力を低減できることを見出した。
そこでさらに本発明者は鋭意検討した。放射線硬化性炭素−炭素二重結合を有する化合物(A)に対し、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤と、該光重合開始剤以外の光重合開始剤を含む2種類以上の光重合開始剤を含有する粘着剤組成物で構成された放射線硬化性半導体ウエハ表面保護用粘着テープが、基材樹脂フィルムとしてポリエチレンナフタレートを用いた場合でも、紫外線が遮断されていない蛍光灯等の弱い光の下で保管後に、半導体ウエハに貼合して、裏面加工終了後、放射線照射しても適度に所望の粘着力を低下させることができることを見出した。本発明はこの知見に基づきなされたものである。
化合物(C−1)としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリエチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリフェニルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキシド、2,6−ジメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキシド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド等のモノアシルフォスフィンオキサイドやビス(2,4,6,−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−メチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−エチルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド等が挙げられ、これらアシルフォスフィン系光重合開始剤は、2種以上を組み合わせて用いることができる。具体的な市販品では、モノアシルフォスフィンオキサイドとしてSPEEDCURE TPO(商品名、DKSHジャパン株式会社製)、ビスアシルフォスフィンオキサイドとしてIRGACURE 819(商品名、チバ・ジャパン株式会社製)等を用いることができる。化合物(C−1)の添加量としては、化合物(A)100質量部に対して、0.05〜5質量部とすることが好ましく、0.2〜2質量部とすることがより好ましい。アシルフォスフィン系光重合開始剤が少なすぎると紫外線を照射したときに十分で、安定的な粘着力の低下が得られない可能性があり、多すぎると、光安定性の低下や半導体ウエハ汚染の原因となる。
例えば、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、アクリジン系光重合開始剤、カルバゾール−フェノン系光重合開始剤、トリアジン系光重合開始剤及びオキシム系光重合開始剤の群から選ばれた少なくとも1種を挙げることができる。
また、チオキサントン系光重合開始剤としては、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−イソプロピルキサントン、4−イソプロピルチオキサントン等が挙げられる。
アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−1−[(4−メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2,2−ジメチル−2−ヒドロキシアセエトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。
ベンゾイン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルメチルケタール等が挙げられる。
ビスイミダゾール系開始剤としては、例えば、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラ(4−メチルフェニル)−1,2’−ビイミダゾール等が挙げられる。
アクリジン系光重合開始剤としては、例えば、1,7−ビス(9−アクリジル)ヘプタン等が挙げられる。
カルバゾール−フェノン系光重合開始剤としては、例えば、3,6−ビス(1−ケト−2−メチル−2−モルホリノプロピル)−9−オクチルカルバゾール等が挙げられる。
トリアジン系光重合開始剤としては、例えば、2,4,6−トリクロロ−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ピペロニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−スチリル−s−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(ピペロニル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル(4’−メトキシスチリル)−6−トリアジン等が挙げられる。
ベンゾエート系光重合開始剤としては、例えば、エチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエートが挙げられる。
その他、オキシム系光重合開始剤等が挙げられる。
本発明の粘着剤組成物には、蛍光灯等の弱い光の下で、粘着力が低下することをさらに抑制するために、重合抑制剤が配合されることが望ましい。アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤は紫外線の幅広い波長で高い反応性を有するという特徴から、蛍光灯のような弱い光が照射された場合、光重合開始剤としての働きが低下することが多く、放射線照射後の粘着力の低下しにくくなる傾向にある。そこで、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤と、該光重合開始剤以外の光重合開始剤を含む2種類以上の光重合開始剤に加えて、重合抑制剤を加えることにより、放射線照射前の弱い光による意図しない粘着力の低下をさらに抑制することができる。
重合抑制剤としてはメトキノンやハイドロキノン等を挙げることができる。重合抑制剤の添加量としては化合物(A)100質量部に対して、0.001〜5質量部とすることが好ましく、0.01〜1質量部とすることがより好ましい。少なすぎると、意図しない粘着力低下の抑制効果が弱く、多すぎると、半導体ウエハへの移行による汚染や、紫外線による粘着剤の硬化性を妨げる場合がある。
また、本発明の放射線硬化性半導体ウエハ表面保護用粘着テープには、必要に応じて剥離フィルムが粘着剤層上に設けられる。剥離フィルムは、セパレーターや剥離層、剥離ライナーとも呼ばれ、粘着剤層を保護する目的のため、また粘着剤を平滑にする目的のために、設けられる。剥離フィルムの構成材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルムや紙などが挙げられる。剥離フィルムの表面には粘着剤層からの剥離性を高めるため、必要に応じてシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理等の剥離処理が施されていても良い。また、必要に応じて、粘着剤層5が環境紫外線等意図しない紫外線の暴露によって反応してしまわないように、紫外線防止処理が施すことも好ましい。剥離フィルムの厚みは、通常10〜100μm、好ましくは25〜50μm程度である。
下記のように粘着剤組成物を調製し、以下の方法で放射線硬化性半導体ウエハ表面保護用粘着テープを作製し、その性能を評価した。
[粘着剤層組成物2A]
溶媒のトルエン400g中に、n−ブチルアクリレート128g、2−エチルヘキシルアクリレート307g、メチルメタアクリレート67g、メタクリル酸1.5g、重合開始剤としてベンゾイルペルオキシドの混合液を、適宜、滴下量を調整し、反応温度および反応時間を調整し、官能基をもつ共重合体(a1)の溶液を得た。次にこの共重合体溶液に、放射線硬化性炭素−炭素二重結合および官能基を有する化合物(a2)として、別にメタクリル酸とエチレングリコールから合成した2−ヒドロキシエチルメタクリレート2.5gを加え、反応温度および反応時間を調整して、放射線硬化性炭素−炭素二重結合を有する化合物(A)の溶液を得た。
化合物(A)の重量平均分子量、ガラス転移温度を以下の方法で測定したところ、重量平均分子量は70万、ガラス転移温度は−64℃、二重結合量は0.9であった。
(i)重量平均分子量
重合体(a)について、下記条件のGPC(ゲルーパーミエーション クロマトグラフ)で重量平均分子量を測定した。
GPC装置:HLC−8120GPC(商品名、東ソー社製)
カラム:TSK gel SuperHM−H/H4000/H3000/H2000、(商品名、東ソー社製)
流量:0.6ml/min、
濃度:0.3質量%、
注入量:20μl、
カラム温度:40℃
展開溶媒:テトラヒドロフロン
(ii)ガラス転移温度
示差走査熱量分析計(DSC)(DSC7(商品名)、PERKIN ELMER社製)の示差走査熱量分析計(DSC)を用いて、昇温速度5℃/分で測定した。
(iii)二重結合量
Wijs法により、ヨウ素価を求め、その値から二重結合量を算出した。
続いて、化合物(A)溶液中の化合物(A)100質量部に対してポリイソシアネート(B)としてコロネートL(日本ポリウレタン社製)を、2質量部、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としてSPEEDCURE TPO(DKSHジャパン株式会社製)を0.5質量部、および、アセトフェノン系光重合開始剤としてSPEEDCURE BKL(商品名、DKSHジャパン株式会社製)を5.0質量部、重合抑制剤としてメトキノンを0.1質量部及び溶媒として酢酸エチル150質量部を化合物(A)溶液に加えて混合して、紫外線硬化性の粘着剤層組成物2Aを調製した。
SPEEDCURE TPOを2.0質量部にした以外は粘着剤層組成物2Aと同様の方法にて調製した。
[粘着剤層組成物2C]
SPEEDCURE TPOを0.2質量部にした以外は粘着剤層組成物2Aと同様の方法にて調製した。
[粘着剤層組成物2D]
SPEEDCURE BKLを10部にした以外は粘着剤層組成物2Aと同様の方法にて調製した。
[粘着剤層組成物2E]
SPEEDCURE TPOの代わりに、アシルフォスフィンオキサイド系開始剤であるIRGACURE819を0.5質量部にした以外は、粘着剤層組成物2Aと同様の方法にて調製した。
[粘着剤層組成物2F]
SPEEDCURE BKLの代わりにSPEEDCURE DETXを2.0質量部にした以外は、粘着剤層組成物2Aと同様の方法にて調製した。
[粘着剤層組成物2G]
SPEEDCURE BKLの代わりにSPEEDCURE DETXを5.0質量部にした以外は、粘着剤層組成物2Aと同様の方法にて調製した。
[粘着剤層組成物2H]
メトキノンを用いなかった以外は、粘着剤層組成物2Aと同様の方法にて調製した。
[粘着剤層組成物2I]
メトキノンを1.0質量部にした以外は、粘着剤層組成物2Aと同様の方法にて調製した。
SPEEDCURE BKLを用いなかった以外は、粘着剤層組成物2Aと同様の方法にて調製した。
[粘着剤層組成物2K]
メトキノンを用いなかった以外は、粘着剤層組成物2Jと同様の方法にて調製した。
[粘着剤層組成物2L]
SPEEDCURE TPOを2.0質量部にした以外は、粘着剤層組成物2Jと同様の方法にて調製した。
[粘着剤層組成物2M]
SPEEDCURE TPOを4.0質量部にした以外は、粘着剤層組成物2Jと同様の方法にて調製した。
[粘着剤層組成物2N]
SPEEDCURE TPOの代わりに、TPO同様アシルフォスフィンオキサイド系開始剤であるIRGACURE819を0.5質量部にした以外は、粘着剤層組成物2Jと同様の方法にて調製した。
[粘着剤層組成物2O]
SPEEDCURE TPOを用いなかった以外は、粘着剤層組成物2Aと同様の方法にて調製した。
[粘着剤層組成物2P]
SPEEDCURE BKLの代わりに、アセトフェノン系光重合開始剤であるSPEEDCURE 184を5質量部にした以外は、粘着剤層組成物2Oと同様の方法にて調製した。
[中間樹脂組成物3A]
アクリル樹脂(メタクリル酸nブチル)100質量部、硬化剤としてイソシアヌレート型イソシアネート(旭化成ケミカルズ(株)製、商品名:TKA−100)をNCO/OH=1.5になるように混合して中間樹脂組成物3Aを得た。
放射線硬化性炭素−炭素二重結合を有する化合物(A)と同様の方法で、中間樹脂組成物3Aの重量平均分子量、ガラス転移温度を以下の方法で測定したところ、重量平均分子量は20万、ガラス転移温度は20℃であった。
[実施例1]
厚さ25μmのポリエチレンナフタレート基材樹脂フィルム(PEN)の片面に中間樹脂層組成物3Aを50μm(dry)の厚さで塗布、乾燥させた。更に、中間樹脂層上に粘着剤層組成物2Aを30μm(dry)の厚さで塗布乾燥させ、厚さ105μmの放射線硬化性半導体ウエハ表面保護用粘着テープを得た。
[実施例2]
粘着剤層組成物として2Bを用いた以外は、実施例1と同様の方法で放射線硬化性半導体ウエハ表面保護用粘着テープを得た。
[実施例3]
粘着剤層組成物として2Cを用いた以外は、実施例1と同様の方法で放射線硬化性半導体ウエハ表面保護用粘着テープを得た。
[実施例4]
粘着剤層組成物として2Dを用いた以外は、実施例1と同様の方法で放射線硬化性半導体ウエハ表面保護用粘着テープを得た。
[実施例5]
粘着剤層組成物として2Eを用いた以外は、実施例1と同様の方法で放射線硬化性半導体ウエハ表面保護用粘着テープを得た。
[実施例6]
粘着剤層組成物として2Fを用いた以外は、実施例1と同様の方法で放射線硬化性半導体ウエハ表面保護用粘着テープを得た。
[実施例7]
粘着剤層組成物として2Gを用いた以外は、実施例1と同様の方法で放射線硬化性半導体ウエハ表面保護用粘着テープを得た。
[実施例8]
粘着剤層組成物として2Hを用いた以外は、実施例1と同様の方法で放射線硬化性半導体ウエハ表面保護用粘着テープを得た。
[実施例9]
粘着剤層組成物として2Iを用いた以外は、実施例1と同様の方法で放射線硬化性半導体ウエハ表面保護用粘着テープを得た。
粘着剤組成物として2Jを用いた以外は、実施例1と同様の方法で放射線硬化性半導体ウエハ表面保護用粘着テープを得た。
[比較例2]
粘着剤組成物として2Kを用いた以外は、実施例1と同様の方法で放射線硬化性半導体ウエハ表面保護用粘着テープを得た。
[比較例3]
粘着剤組成物として2Lを用いた以外は、実施例1と同様の方法で放射線硬化性半導体ウエハ表面保護用粘着テープを得た。
[比較例4]
粘着剤組成物として2Mを用いた以外は、実施例1と同様の方法で放射線硬化性半導体ウエハ表面保護用粘着テープを得た。
[比較例5]
粘着剤組成物として2Nを用いた以外は、実施例1と同様の方法で放射線硬化性半導体ウエハ表面保護用粘着テープを得た。
[比較例6]
粘着剤組成物として2Oを用いた以外は、実施例1と同様の方法で放射線硬化性半導体ウエハ表面保護用粘着テープを得た。
[比較例7]
粘着剤組成物として2Pを用いた以外は、実施例1と同様の方法で放射線硬化性半導体ウエハ表面保護用粘着テープを得た。
実施例1〜6、比較例1〜6の放射線硬化性半導体ウエハ加工用粘着テープについて、特性評価試験を下記のように行った。
粘着力 JIS−Z0237に基づいて、放射線硬化性半導体ウエハ加工用粘着テープを280番の耐水研磨紙で研磨したSUS−304の板に貼合し、1時間貼合放置した後、基材樹脂フィルム面からの紫外線照射前後の90°剥離粘着力を測定した。この時、剥離速度は50mm/minで行った。また、紫外線は、80W/cmの高圧水銀灯を用いておよそ300mJ/cm2照射した。
紫外線照射前の粘着力が0.8N/mm以上で、かつ紫外線照射後の粘着力が0.2N/mm以下のものを合格とした。
放射線硬化性半導体ウエハ加工用粘着テープの基材樹脂フィルム面を上向きに平置きし、その50cm真上の位置に固定した37W/cmの蛍光灯から光を72時間照射した試験片を、紫外線照射量を500mj/cm2にした以外は前述の粘着力測定と同様の方法にて測定した。
紫外線照射前の粘着力が0.8N/mm以上で、かつ紫外線照射後の粘着力が0.2N/mm以下のものを合格とした。
直径8インチで400μm厚さのミラーウエハに、放射線硬化性半導体ウエハ加工用粘着テープを貼り合わせ、ウエハを100μm厚さまで研削した後、500mJ/cm2の紫外線照射を行い、剥離機(HR−8500−II(商品名、日東精機(株)製))を用いて、放射線硬化性半導体ウエハ加工用粘着テープをウエハから剥離させた。1評価サンプルあたり25枚の該操作を行い、剥離時のウエハ割れや剥離ミス等の剥離不良の枚数をカウントした。各サンプルについて、前述の方法における蛍光灯暴露前および蛍光灯暴露後のサンプルをそれぞれ評価した。
試験したウエハ25枚中の、剥離時のウエハ割れや剥離ミス等の剥離不良の枚数が0枚のものを合格とした。
また、重合抑制剤を加えることで、蛍光灯下に暴露した場合であっても紫外線照射前の粘着力の低下を防ぐことができた(実施例1と実施例8の比較)。
一方、表2に示すように、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤のみを用いた比較例1〜5については、蛍光灯下に放置した後に紫外線照射を行っても十分に粘着力を低下させることができなかった。これにより、放射線硬化性半導体ウエハ加工用粘着テープをウエハから剥離するときに、ウエハの割れや粘着テープの剥離不良が見られた。特にアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の配合量を多くした比較例4では、蛍光灯下放置により粘着力が大きく低下し、貼合することができなかった。
アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を用いない比較例6および比較例7についてはポリエチレンナフタレートを透過する紫外線に対して反応性が低いため、紫外線照射を行ったときに粘着力が十分に低下せず、半導体ウエハの割れや粘着テープの半導体ウエハからの剥離不良を発生した。
これらの実施例及び比較例からわかるように、本発明の放射線硬化性半導体ウエハ加工用粘着テープは、特にアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤及びアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤以外の光重合開始剤を併用することで、蛍光灯等の弱い光の下で放置しても、紫外線により十分に粘着力を低下させることができるという効果を奏する。これにより、放射線硬化性半導体ウエハ加工用粘着テープの保管状態について、詳細な条件設定をすることなく半導体ウエハを破損することなく、剥離できる粘着テープを提供することができる。
2 粘着剤層
3 中間樹脂層
10、20 放射線硬化性半導体ウエハ表面保護用粘着テープ
Claims (4)
- 基材樹脂フィルムと、該基材樹脂フィルム上に粘着剤層が形成された、半導体ウエハ表面保護用粘着テープであって、
該基材樹脂フィルムがポリエチレンナフタレートを主成分とする樹脂組成物で構成され、該粘着剤層が放射線硬化性炭素−炭素二重結合を有する化合物(A)、及びアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C−1)とアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤以外の光重合開始剤(C−2)とを含む2種類以上の光重合開始剤を含有する粘着剤組成物で構成されたことを特徴とする放射線硬化性半導体ウエハ表面保護用粘着テープ。 - 前記光重合開始剤(C−2)が、チオキサントン系光重合開始剤及び/又はアセトフェノン系光重合開始剤であることを特徴とする請求項1記載の放射線硬化性半導体ウエハ表面保護用粘着テープ。
- 前記放射線硬化性炭素−炭素二重結合を有する化合物100質量部に対して、前記アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を0.05〜5質量部含有することを特徴とする請求項1又は2項記載の放射線硬化性半導体ウエハ表面保護用粘着テープ。
- 前記放射線硬化性炭素−炭素二重結合を有する化合物100質量部に対して、重合抑制剤を0.001〜5質量部含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の放射線硬化性半導体ウエハ表面保護用粘着テープ。
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