JP5306870B2 - 嵌合型端子用錫めっき付き銅合金板材 - Google Patents
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Description
端子の嵌合作業において、雄端子は雌端子のインデント部に接触しながら挿入される。錫めっき付き銅合金板材を用いた端子では、錫めっきが非常に軟らかいことから、摺動部において、錫の凝着、堆積、脱落が繰返されるため、摺動抵抗が高くなり、挿入に要する力が大きくなる。
そのため、接続端子を小型多極化しても、挿入力低減が可能で、かつ電気的特性を確保できる嵌合型端子用の錫めっき付き銅合金板材の要求が高くなっている。
(錫めっき層)
通常の電気錫めっきによる小型端子の場合、錫めっきに発生するウィスカーによる短絡が問題になる。そのため、錫めっき付き銅合金板を錫の融点以上の温度に保持し、錫めっき層を溶融させるリフロー処理を施すことが望ましい。錫めっきからのウィスカーが問題とならない場合、コスト低減のため光沢電気錫めっきを行い、リフロー処理を施さない状態の銅合金板材でもよい。電気錫めっきの厚さは0.2〜2.0μm程度が望ましい。0.2μmに満たない場合、接触抵抗の経時変化が大きくなり、2.0μmを越えると摩擦係数が大きくなる。必要であれば、錫めっき前の銅合金板材の表面に下地処理として銅めっき層を形成した後、錫めっきを行ってもよい。銅めっき層の厚さは0.1〜0.5μm程度が望ましい。本発明において錫めっきは、純Snのみでなく、Cu、Ag、Bi、Pb、Zn等の群より選んだ1種以上の元素を1〜10質量%程度含む錫合金めっきを含む。
銅合金板材(めっき基材)は、端子に成形して使用することができるものであれば、どのような組成、特性のものを用いても良い。例えば、黄銅、りん青銅、Cu−Ni−Si系合金、Cu−Fe−P系合金、Cu−Ni−Sn−P系合金等を用いることができる。板厚は端子の用途、板材の導電率、機械的性質などに合わせて決めれば良いが、0.1〜2.0mm程度が一般に適当である。
表面に黒鉛粒子を付着させた錫めっき付き銅合金板材を用いて嵌合型端子を成形すると、黒鉛の潤滑性によって、該嵌合型端子の摺動部における摩擦係数が低下し、挿入力の低減が可能となる。黒鉛粒子の付着密度(単位面積当たりの付着数)が低いと摩擦係数低減の効果が小さく、また付着した黒鉛粒子の粒径が小さく揃った方が摩擦係数低減の効果が大きい。一方、粒径があまりに小さい黒鉛粒子は凝集しやすく、粒径0.1μm未満になると摩擦係数低減効果が飽和する。具体的には、粒径0.1μm以上の黒鉛粒子の付着量が100μm2あたり50個以上で、そのうち粒径0.1〜1μmの黒鉛粒子の数が80%以上、かつ最大粒径が3μm以下であることが望ましく、この条件で、特許文献2に記載された黒鉛粒子分散錫めっき付き銅合金板と同レベル以上の低い摩擦係数(0.1〜0.2程度)が得られる。
さらに望ましくは、粒径0.1μm以上の黒鉛粒子のうち粒径0.5μm以下の粒子の数が50%以上である。粒径0.1μm以上の黒鉛粒子の付着密度は100μm2あたり150個以上、さらに300個以上であることが望ましい。
黒鉛粒子の密度及び粒径は、黒鉛粒子が付着した錫めっき付き銅合金板材の表面をSEMにより観察して表面の画像を取得し、その画像を元に、画像解析ソフトを用いて求めることができる。粒径は画像に現れた粒子と同一面積の円の直径として求めた。
また、黒鉛粒子に代えて、黒鉛を含む粒子(例えば鉛筆の芯を粉末にしたもの)を用いても、黒鉛粒子と同等の効果をもたせることができる。
この錫めっき付き黄銅板材に黒鉛粒子を付着させていないもの(No.1)と、その表面に黒鉛粒子を付着させたものを供試材とし、摩擦係数と160℃×120時間加熱後の接触抵抗値を、下記要領にて測定した。粒径0.1μm以上の黒鉛粒子の付着数、そのうち粒径0.1〜1μmの黒鉛粒子の割合、最大粒径、摩擦係数、及び加熱後接触抵抗を、表3に示す。
端子嵌合時の挿入力の評価として、動摩擦係数を用いた。嵌合型端子の接点部の形状を想定して、供試材から切り出した板状の雄試験片を水平な台に固定し、その上に供試材を内径1.5mmで半球加工した雌試験片を置いて、黒鉛を付着させた錫めっき面同士を接触させ、雌試験片に荷重W(3.0N)をかけて雄試験片を押え、横型荷重測定機(アイコーエンジニアリング株式会社製Model−2152)を用いて、雄試験片を水平方向に引張り(摺動速度80mm/min)、摺動距離5mmまでの最大摩擦力Fを測定した。摩擦係数Fを下記式(1)により求めた。
摩擦係数=F/W・・・・(1)
加熱時の電気接点における信頼性の評価として、高温放置後の接触抵抗値を用いた。供試材に対し大気中にて160℃×120hrの熱処理を行った後、接触抵抗を4端子法により、開放電圧20mV、電流10mA、摺動の条件にて測定し、荷重が3Nの際の値を読み取った。
一方、No.3は、粒径1μm以下の黒鉛粒子の割合が不足するため、動摩擦係数の低下が大きくない。なお、動摩擦係数0.43は、特許文献1に開示された3層めっき材と同レベルかそれよりやや高いレベルである。
No.4は、粒径1μm以下の黒鉛粒子の割合が少なく、かつ最大粒径が大きいため、No.5は黒鉛粒子の付着量が少なく、かつ粒径1μm以下の黒鉛粒子の割合が少ないため、動摩擦係数の改善の程度はごく小さい。
Claims (2)
- 表面に錫めっき層が形成された銅合金板材であって、前記錫めっき層の表面に粒径0.1μm以上の黒鉛粒子が100μm2あたり50個以上付着しており、そのうち粒径0.1〜1μmの黒鉛粒子の数が80%以上であり、最大粒径が3μm以下であることを特徴とする嵌合型端子用錫めっき付き銅合金板材。
- 粒径0.1μm以上の黒鉛粒子のうち、粒径0.1〜0.5μmの黒鉛粒子の数が50%以上であることを特徴とする請求項1に記載された嵌合型端子用錫めっき付き銅合金板材。
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