以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
<実施例1>
[画像形成装置の全体構成及び動作]
図1に、本発明に係る画像形成装置の一実施例の概略構成を示す。本実施例の画像形成装置は、タンデム型の中間転写方式を採用した、4色フルカラー画像の形成が可能なカラーレーザービームプリンタ(以下、単に「画像形成装置」という。)1000である。
図1に示す画像形成装置は、それぞれ色の異なる4色(イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒色(ブラック:Bk))のトナー像を形成する4個の画像形成ユニットPY、PM、PC、PBkを並置して有する。
そして、これら画像形成ユニットを縦貫するようにして、中間転写体としての中間転写ベルト19が配置されている。
これら4個の画像形成ユニットY・M・C・Bkは、同様の構成であり、以下では、代表してイエローの画像形成ユニットYの構成を説明する。他の画像形成ユニットについては、画像形成ユニットYと同一の構成及び作用の部材には同じ番号を付し、各ユニットを示す添え字を変更する。
像担持体として、例えば表層がOPC(有機光半導体)からなる円筒型の電子写真感光体(以下「感光ドラム」という。)11Yは、図中矢印A方向へ回転駆動される。感光ドラム11Y表面を一様に帯電させる帯電手段としての帯電ローラ15Yは、交流電圧に直流電圧重畳された電圧が印加され、感光ドラム11Yと従動回転して、感光ドラム11Y表面を所定の電位に帯電する。帯電された感光ドラム11Yは、露光手段としての露光装置16Yによる露光光18Y(本実施例では、レーザ光)による露光が行われて、感光ドラム11Y上に入力原稿の色分解画像と対応した潜像(静電像)が形成される。
露光装置16Yとしては、半導体レーザを使用したスキャナータイプのものや、LEDに集光装置であるセルフォックレンズを介して像露光をおこなうもの、また、EL素子やプラズマ発光素子など、その他の光学系も使用することができる。本実施形態では半導体レーザとポリゴンミラーを使用したスキャナータイプのレーザ光学系を用いた。
本実施例の画像露光器では図16に示す様に、露光光18Yを感光ドラム11の回転方向に直交する方向(以降、「主走査方向」と称す)へ走査させながら、パルス幅変調(PWM)方式で変調された画像信号によって、露光光18Yの照射時間を段階的に変化させる。そして、画像信号に対応した面積階調による濃度変化によって1インチあたり600ドット(600dpi)の解像度で作像される。
次いで、現像装置12Yが、負極性に帯電したトナーを用いて現像を行い、静電潜像に対応したトナー像を感光ドラム11Yの表面に形成する。感光ドラム11Y上のトナー像は、感光ドラム11Yとほぼ同速度で回転している中間転写体としての中間転写ベルト19上に、トナーの帯電極性と反対の極性の転写電圧が印加された1次転写手段としての1次転写ローラ13Yによって1次転写される。
中間転写ベルト19は、駆動ローラ20、支持ローラ21、バックアップローラ22などの複数のローラに張架される。そして、各画像形成ユニットPY、PM、PC、PBkの各感光ドラム11Y、11M、11C、11Bkに接触しながら、駆動ローラ20の図中矢印B方向の回転によって駆動され、図中矢印C方向へ周回移動する。中間転写ベルト19は、1次転写ローラ13Y、13M、13C、13Bkと感光ドラム11Y、11M、11C、11Bkとの間に挟み込まれる。これにより、感光ドラム11Y、11M、11C、11Bkと、中間転写ベルト19との間に1次転写ニップ部(1次転写部)T1Yが形成される。
以上の動作を各画像形成ユニットPY、PM、PC、PBkにて行い、感光ドラム11Y、11M、11C、11Bk上に形成されたトナー像が、中間転写ベルト19上に順次多重転写される。ここで、中間転写ベルト19は、画像形成ユニットPY、PM、PC、PBkが形成したトナー像を搬送する像搬送体を構成する。
「フルカラーモード」の場合は、Y、M、C、Bkの順(色順は画像形成装置により任意)で、各色のトナー像が中間転写ベルト19上に1次転写され、中間転写ベルト19上に多重転写される。
本実施形態の画像形成装置は、「フルカラーモード」の他に、「ブラック単色モード」、「2色モード」、「3色モード」の実行が可能である。
「ブラック単色モード」では、画像形成ユニットPY・PM・PC・PBkの内、画像形成部PBkでトナー像が形成される。画像形成ユニットPY・PM・PC・感光ドラム11Y、M、Cの回転ななされるが、トナー像は形成されない。
また、「2色モード」および「3色モード」では、Y、M、C,Bkの中の任意の2色または3色が選択され、選択された色に対応する画像形成ユニットでトナー像が形成される。そして、「ブラック単色モード」と同様に、選択されなかった色の画像形成ユニットでは感光ドラム1の回転はなされるが、トナー像は形成されない。
上記の画像形成プロセスによって、Yの画像形成ユニットPY(第1画像形成ユニット)の感光ドラム1Yの周面にはフルカラー画像のイエロー成分像に対応するイエロートナー画像が形成される。Mの画像形成ユニット(第2画像ユニット)PMの感光ドラム1Mの周面にはフルカラー画像のマゼンタ成分像に対応するマゼンタトナー画像が形成される。Cの画像形成ユニットPC(第3画像形成ユニット)の感光ドラム1Cの周面にはフルカラー画像のシアン成分像に対応するシアントナー画像が形成される。Bkの画像形成ユニットPBk(第4画像形成ユニット)の感光ドラム1Bkの周面にはフルカラー画像のブラック成分像に対応するブラックトナー画像が形成される。
そして、中間転写ベルト19に多重転写された各色トナー像は、中間転写ベルト19に回転に伴って、中間転写ベルト19を介してバックアップローラ22と2次転写手段としての2次転写ローラ23とが当接する2次転写ニップ部(2次転写部)T2に搬送される。一方、記録材収納部としてのカセット25内から取り出された記録材Pがレジストローラ対24によって、中間転写ベルト19に搬送されるトナー像に同期して、2次転写ニップ部T2に供給される。
また記録材が厚紙や透明シートなどの特殊な基材な場合には、カセット25のレジストローラ対24によってスムーズにピックアップできない場合がある。その場合には、不図示の手差し給紙部に1枚毎に記録材を設定し、1枚毎に給紙する事も可能である。
中間転写ベルト19上のトナー像は、トナーの逆極性の2次転写電圧が印加された2次転写ローラ23により、記録材P上に2次転写される。ここで、画像形成ユニットPY、PM、PC、PBk、中間転写ベルト19、駆動ローラ20、支持ローラ21、バックアップローラ22、1次転写ローラ13Y、13M、13C、13Bk、2次転写ローラ23によって、トナー像形成手段が構成される。トナー像形成手段は、記録材Pへ未定着のトナー像を形成する。
トナー像が2次転写された記録材Pは、モータM1により回転駆動される搬送ベルトDによって定着手段としての定着装置26へ搬送される。定着装置26は、記録材P上のトナー像を加圧・加熱し、記録材Pにトナー像が定着される。
定着装置26は熱ローラ方式の定着装置を用いており、ヒータを内包する1対の熱ローラ261によって形成される定着ニップ部T3に記録材Pを通過させる事で、記録材P上のトナーを加熱溶融し加圧定着する。加熱定着中、熱ローラ261はモータM2によって回転駆動される。また、熱ローラ261の温度を検知する温度検知手段としてのサーミスタThが設けられる。そして、サーミスタThの検知結果に応じて、制御部122がヒータへの通電をON/OFFすることで、定着ローラ対261は所望の定着温度に調整される。
2次転写ニップ部T2と定着装置26の定着ニップ部T3との距離は450mmであり、この画像形成装置で給紙可能な記録材の最大サイズA3サイズの長さ420mmよりも長い。そのため、最大サイズ紙のA3用紙の後端が転写工程を完全に終えた後に、制御部122がモータM1及びM2を調整し、搬送ベルト28の搬送速度及び定着ローラ261の回転速度を切り替えることで、定着時の記録材Pの搬送速度が切り替えられる。
トナー像が定着された記録材Pは排紙パスDによって画像形成装置外へ排出される。
また、記録材の裏面(2面目)にトナー像を形成する場合には、定着装置26でトナー像が定着された記録材Pは、フラッパー29によって、反転パス27へ導かれる。反転パス27に導入された記録材Pは、スイッチバック経路Eによって表裏が反転されて、再搬送経路Fによって再度レジストローラ対24へ送られる。反転パス27を経てレジストローラ対24へ送られた記録材Pは、再度、2次転写部T2へ供給され、裏面にトナー像が2次転写される。
図2は本実施例の画像形成装置を示すブロック図である。大きく分けてコントローラ部Hとプリンタ部Iに分かれている。「入力IF部111」は入力インターフェス部(以下「入力IF部」と記載)であって、直接接続されたPCや、ネットワーク上で接続された端末から送られる画像情報や、外部スキャナーで読み取った画像情報をコントローラ部Hに取り込む。
「表示IF部112」は表示インターフェス部(以下表示IF部と記載)であって、タッチパネル方式の液晶画面やボタンからなる。ここでは、ユーザーによって画像形成を行う記録材の種類・厚さ、透明シートに形成される画像の光透過度等のプリント条件が設定され、また、画像形成装置の状態が表示される。
コントローラ部Hは、入力IF部111や表示IF部112に接続されている。そして、表示IF111で入力されたプリント条件や入力IF111から送られた画像情報を後述するプリンタ部Iに転送する前にCPUによって処理する情報処理部113と、情報処理に用いる情報を記録している記録部114を備える。またプリンタ部Iは、上述画像形成ユニットPY、PM、PC、PBk、中間転写ベルト19、定着装置26を備えて記録材Pへ画像を形成する画像形成部121と、画像形成部121を構成する各ユニットの動作をCPUによって制御する制御部122を有する。
次に図3を用いて記録材Pとして透明シートなどの透明な記録材を用い、光透過度が高い画像を透明シートへ形成する「透過モード」と光透過度が低い画像を形成する「非透過モード」を設定する方法について説明する。「透過モード」を選択することで、高光透過度(第2光透過度)の画像を透明シートに形成することができる。また、「非透過モード」を選択することで、低光透過度(第1光透過度)の画像を透明シートに形成することができる。
図3は表示IF部112の液晶表示パネル、もしくはPCやネットワーク上の端末上に表示される用紙設定画面である。
図3には記録材Pを供給する給紙部の設定として、図1のカセット25に対応する「カセット1」タブと、手差し給紙部に対応する「手差し」タブの2つのタブがある。この画面上のタブをタッチすると、各々の給紙部で設定可能な用紙の選択画面が表示される。
図3は手差し給紙部が選択された状態の画面である。用紙設定として更に「用紙サイズ」と「種類」を設定する。用紙サイズにはA3、B4、A4、A4R、B5、B5Rなどの定型サイズ以外に、任意のサイズを入力設定可能な不定形などが選択可能である。用紙の種類は、手差し給紙部からは普通紙、コート紙、フィルム、その他の4種類が選択可能である。そして、「普通紙」タブ112a、「コート紙」タブ112b、「フィルム」タブ112c、「その他」タブ112dによって選択可能である。ここで、「普通紙」タブ112a、「コート紙」タブ112b、「フィルム」タブ112c、「その他」タブ112dによって、モード設定手段が形成される。図3は透明シートが分類されている「フィルム」タブが選択された状態である。
「フィルム」タブ112cでは、更に、「記録材厚み」と「プリントモード」を設定する。記録材厚みは、フィルムの厚みを50μm〜200μmの範囲の3段階から1つ選択する。既に説明したように、プリントモードには透過モードと非透過モードとがあり、透過モードは、フィルム上の画像の光透過度が高く透明な状態の画像を出力する場合に選択するモードである。非透過モードは、フィルム上の画像の光透過度が低く不透明な状態の画像を出力する場合に選択するモードである。透過モードは、「透過モード」タブ1122a、非透過モードは「非透過モード」タブ1122bによって選択可能である。なお、「透過モード」タブ1122a、「非透過モード」タブ1122bによって、選択手段が構成される。
次に図4のフローチャートおよび表1のテーブルを用いて、コントローラ部Hでの制御フローを説明する。
(S101):表示IF部111に入力された記録材Pに関する情報から、情報処理部113は画像形成される記録材の種類を判定する。
(S102):画像形成される記録材の種類がフィルムでない場合には、普通紙、厚紙、コート紙のいずれかに合った定着条件がコントローラ部Hの情報処理部113によって、表1の条件設定テーブルに基づいて決定される。
表1に示す条件設定テーブルには、記録材の種類・厚さ、フィルムに形成するトナー像の光透過度に応じた定着条件が収められる。プリンタ部の制御部122にて設定される。表1は、本実施例の定着条件を示す条件設定テーブルである。そして、制御部122は、情報処理部113の決定した定着条件に従って、定着温度及び、定着ニップ部T3を通過する記録材Pの移動速度(以降、「定着速度」と称す。)を変更する。
(S103):画像形成される記録材Pの種類がフィルムの場合には、用紙設定時に設定したフィルムの厚みとプリントモードの情報を元に情報処理部113は表1の条件設定テーブルを参照して定着条件を決定する。そして、制御部122は、情報処理部113の決定した定着条件に従って、定着温度及び定着速度を変更する。
条件設定テーブルには、フィルム上のトナー像を定着するための条件として、フィルムの厚さ及び通紙モードに応じて、6種類の条件が収められている。
厚いフィルムは熱容量が大きく、トナーを溶融するために必要な熱量が大きくなる。そのため同じ透過モードであっても、フィルムの厚みが厚いほど定着速度を遅く設定している。また非透過モードでは、トナーの溶融状態を落とすことによって画像の光透過度を低く設定しているので、透過モードよりも定着速度が速く、定着温度を低く設定している。
図20は定着速度に対する光透過率を測定し、プロットした図である。例としてフィルムの厚みが50μmと200μmの2種、定着温度が180℃と195℃の2種を示す。例えばフィルム厚み50μmの場合には、定着温度が180℃の場合に、定着速度150mm/sec以上で、視覚上非透過画像であると感じられる光透過率25%以下の画像を得ることができる。好ましくは非透過画像としては、光透過率15%以下が理想的である。また定着速度を遅くして行くと、光透過度は上がって行くが、視覚上透過であると感じられる60%以上の透過率となるには、50mm/sec以下となる必要がある。一方で定着温度が195℃の場合には、180℃の場合よりも光透過度が高くなり、100mm/sec程度で透過率60%程度まで上昇する。定着速度を遅くすると、画像形成の生産性の低下となるため、定着速度が速くても、所望の透過率を得る事ができる195℃を透過モードにおける定着温度として設定した。また、定着速度を200mm/secまで速くしても、透過率は20%程度であった。これらの結果、透過モード時の生産性と、非透過モード時の光透過度の観点から定着温度と定着速度を設定した。
フィルムの厚みが200μmの場合でも、定着温度及び定着速度と光透過度の関係は基本的には厚さ50μmのフィルムと同じ傾向を示すため、厚さ50μmと同じようにして定着温度及び定着速度を設定した。但し、厚さ200μmのフィルムの熱容量は50μmのフィルムよりも大きく、厚さ50μmのフィルムと同等の光透過度とするためには、厚さ200μmのフィルムの定着速度は厚さ50μmの定着速度よりも遅くする必要がある。
図5は透過モード時と非透過モード時におけるトナーの断面状態を模式的に示した図である。図5−1は透明シートK上にある未定着状態のトナーQを示している。この状態ではトナーQの粒隗が孤立した状態で積み重なったおり、内部に空間も多く存在している。図5−2は厚み70μmの透明シートKを用いて、透過モードで通紙した定着後の状態である。この条件では表1の条件設定テーブルから、定着速度100mm/sec、定着温度195℃で定着されている。透明シートK上のトナーQは、十分な熱量で加熱・加圧定着されているので、トナー粒隗が完全に溶融結着し、個々の界面が無くなった状態で、表面も平滑な状態となっている。この状態では入射した光はトナーQの界面や表面で散乱される量が少なく、殆どの光が透過するので光透過度が高く、光透過率60%以上の画像となる。
なお、光透過率は照射光の光量に対する透過光の光量で表される。つまり、光透過率が高いほど、光透過度は高くなる。本実施形態では、光透過率は、日本分光株式会社製の分光光度計で計測した。
図5−3は同じく厚み70μmの透明シートKを用いて、非透過モードで画像形成した状態である。この条件では表1の条件設定テーブルから、定着速度200mm/sec、定着温度180℃に設定されて定着されている。透明シートK上のトナーは、十分な熱量で加熱・加圧定着されておらず、トナーまたトナー粒隗同士も溶融結着し始めた状態である。よって、トナーQ同士および透明シートKとは結着してはいるが、内部に空間や界面が未だ存在し、表面の平滑性もまだ低い状態である。この状態ではトナーQの表面やトナーQ同士の界面などでの散乱が多く、透過する光量が低下するので、光透過度が低く透過率15%以下の画像となる。
以上の事から、トナーの溶融状態が高いと、フィルム上のトナーが光透過度の高い状態となり、逆に溶融状態が低いと、フィルム上のトナーが光透過度の低い状態となる。しかし、十分な加熱時間と熱量をもって定着すると光透過度は高くなるが、溶融状態が進みすぎると、トナーの粘性が下がりすぎ定着器から排出する時にトナーがホットオフセットし、画像表面が荒れてしまい光透過度が低下する。また溶融状態を下げて行くと光透過度は低くなるが、トナー粒隗同士およびトナーとフィルムとの結着が少なすぎると、定着器から排出する時にコールドオフセットが発生してしまい、定着不良となってしまう。トナーに与える熱量を所望の値にすることで、トナーの状態を光透過度の高い状態と低い状態にコントロールする必要がある。しかし、定着器26ではトナーとフィルムとを同時に加熱するため、フィルムが吸収する熱量によってトナーの溶融状態が変わってしまう。本実施形態ではフィルムの厚みを3段階とし、フィルムが吸収する熱量にあわせてトナーの状態を光透過度の高い状態と低い状態にコントロールしている。
このようにして、透明シート上に光透過度の異なる画像を安定して形成することができる。
<実施例2>
本実施形態の画像形成装置は、基本構成は実施例1と同じ構成であって、画像処理方法によって透明シート上の画像の光透過度をコントロールするものである。ユーザーは実施例1と同じ様に図3に示す表示IF部112の設定画面より、通紙モードを、透過モードとするか非透過モードとするかを選択する。
次に、表2を参照しながら図6を用いて、本実施形態における、コントローラ部Hでの制御フローを説明する。
(S201):表示IF部112に入力された記録材Pに関する情報から、情報処理部113は画像形成される記録材の種類を判定する。
(S202):画像形成される記録材の種類がフィルムでない場合には、普通紙、厚紙、コート紙のいずれかに合った定着条件がコントローラ部Hの情報処理部113にて決定される。
表2は、本実施例の定着条件を示す条件設定テーブルである。情報処理部113は、表2のテーブルに従って定着条件を設定する。そして、制御部122は情報処理部113の決定に従って、定着温度、定着速度、画像処理方法を変更する。
(S203):画像形成される記録材Pの種類がフィルムの場合には、用紙設定時に設定したフィルムの厚みと通紙プリントモードの情報を元に、情報処理部113は表2の条件設定テーブルを参照して定着条件及び画像処理条件(トナー像形成条件)を決定する。
そして、制御部122は情報処理部113の決定に従って、定着温度、定着速度、画像処理方法を変更する。
条件設定テーブルには、フィルム上のトナー像を定着するための条件として、フィルムの厚さ及び通紙モードに応じて、6種類の条件が収められている。
実施例1と同じく記録材Pが厚いと熱容量が大きいため、トナーを溶融するために必要な熱量が大きくなる。そのため同じ透過モードであっても、フィルムの厚さが厚いほど定着速度が遅く設定している。本実施例では、同一の厚さのフィルムに対して、透過モードと非透過モードでは、画像処理の条件を変更して、定着前のトナー画像に凹凸をつけることで定着後の画像の溶融状態を変更し、画像の光透過度をコントロールしている。
透過モードでは、600dpiの画像に対し600線のスクリーン解像度(高解像度)で比較的均一なトナー状態となる画像を形成する。
ここで、図17を参照し、「600線」の内容を説明する。
600線とは画像形成時のスクリーン線数を表し、1インチあたり600本のスクリーン線(つまり40μm間隔を最小単位とする)を形成する事が可能な画像処理方法のことである。図17(A)は、トナー像が最大濃度となるベタ部の潜像を示し、電位V1の潜像が主走査方向に連続的に形成される。本実施例では、V1は−150Vである。また、図17中、電位V1は現像装置12に印加される現像電圧の電位を表す。この潜像を現像して得られるトナー象のトナー載り量は、電位V0と電位V1との差異に比例する。本実施例では、電位V0は−300Vである。尚、本明細書中、負極性の電位は、0Vに近い電位を「高い電位」、0Vとの差異の大きい電位を「低い電位」と称す。つまり、「−150V」は「−300V」よりも高い電位であると表現する。
図17(B)の実線はベタ部よりもトナー像濃度が薄い濃度80Hとなる領域に形成される潜像(スクリーン線)の模式的に示していている。電位V1よりも低い電位V1aの潜像が主走査方向で連続的に断続的に形成される。図17(C)の実線は、濃度80Hの領域よりも更に薄い濃度30Hとなる領域に形成される潜像を示している。V1aよりも更に低い電位V1bの潜像が主走査方向で、断続的に形成される。そして、個々の潜像の主走査方向における幅は、濃度80Hの領域に形成される電位V1aの潜像の主走査方向における幅よりも狭くなっている。このように、40μm毎に形成される潜像の幅を変えることによって、ベタ部よりも濃度の薄いハーフトーン部の濃度を調整している。
図16にはベタ部における露光光18の照射状態と、露光光18によって作像された潜像の電位を模式的に示す図である。この場合では露光光18の照射が均一なので、潜像の電位は均一に電位V1になる。
この状態の潜像をトナーで現像し、フィルムK上に転写した後トナーQの状態は、図7−1の模式図の様にトナー載り量が低めで均一な状態となる。
フィルムKの厚みに応じた定着速度で定着することで、図7−2に示す様にフィルムK上のトナーQが十分に溶融された状態で定着される。この状態では入射した光LはトナーQの界面や表面で散乱される量が少なく、殆どの光が透過するので、光透過度が高く透過率60%以上(日本分光製、分光光度計で計測)の画像となる。その結果、光透過度の高い画像を得る事が可能となる。
一方で非透過モードでは、露光光18のPWMの変調クロック数を半分にすることにより、600線の半分の300線によって形成する。更に300線毎の隣り合うライン線で、異なるガンマ特性を用いた300線ブレンドタイプの画像を形成する。
300線とは画像形成時のスクリーン線数を表し、一般的な300線スクリーンでは、図23のように1インチあたり300本のスクリーン線(つまり80μm間隔を最小単位とする)を形成する事が可能な画像処理方法のことである。この画像処理方法では、80μmピッチで形成される潜像(スクリーン線)の幅を変えることによって、画像のハーフトーン部を所望の濃度にしている。以降、この画像処理方法を「300線ノーマルタイプ」と呼ぶ
本実施例の300線ブレンドタイプではスクリーン線、即ち潜像は80μm毎に形成され、透過モードで画像形成する場合に用いる300線ノーマルタイプと同じであるが詳細の内容に関しては後述の様に異なっている。
図21にはコントローラ内の情報処理部113で行われる、入力IF部111から入力された画像信号の入力(Input信号)と、画像処理後に情報処理部113から出力される出力信号(Output信号)の関係を示すガンマ特性を示している。図21中の2401は、300線の主走査方向にカウントした偶数番目の潜像のガンマ特性であり、偶数番目の潜像は、入力と同じ出力特性を示す。図21中の2401は、300線の主走査方向にカウントした奇数番目の潜像のガンマ特性であり、奇数番目の線潜像は、偶数番目よりも低い出力信号をとなるように設定している。この様に、隣り合う2種類の線潜像ごとにガンマ特性を変える事によって、露光光18の形成する潜像に電位の高低差を設けることができる。
図18にはベタ部における露光光18の照射状態と、露光光18によって作像された潜像の電位を示す図である。この非透過モードでは、画像形成時のレーザーパワーを透過モード時よりも高くする。この状態で、レーザのPWM密度が高く、最小のドットを形成するために露光光18が照射される時間が長い高電位部と、レーザのPWM密度が低く、最小のドットを形成するために露光光18が照射される時間が短い低電位部が形成される。
上記高電位部の電位は、現像電圧の電位V0に対して電位V1よりも高い電位となる。上記低電位部の電位は、電位V0よりも高いが、電位V1よりも低い電位電位V2となる。高電位部と低電位部の主走査方向の長さは、300線に対応した80μmとなっている。
図19は本実施形態の300線ブレンドタイプで画像形成した場合に、ハーフトーン部における潜像の状態を説明するための図である。図19(A)は、ベタ部の潜像を表している。電位V3の潜像と電位V2の潜像が連続的に交互に形成される。
図19(B)は、濃度80Hの領域の潜像を表している。電位V3よりも低い電位V3aの潜像と、電位V2よりも低い電位V2aの潜像が断続的に交互に形成される。
図19(C)は、濃度30Hの領域の潜像を表している。電位V3aよりも低い電位V3bの潜像と、電位V2aよりも低い電位V2bの潜像が断続的に交互に形成される。主走査方向において、電位V3bの潜像の幅は、電位V3aよりも狭くなっている。同様に、電位V2bの潜像の幅は、電位V2aよりも狭くなっている。このように、300線に対応する80μmの間隔で潜像の電位を変更することで、潜像の電位に高低差を設けることができる。
ここで、比較のために図23に、上述の300線ノーマルタイプで潜像を形成した場合の、ベタ部及びハーフトーン部における潜像の状態を模式的に示す。なお、300線ノーマルタイプは、ブレンドタイプとは異なり、単一のガンマ特性を用いる。
図23(A)は、ベタ部の潜像を表している。電位V3よりも低い電位V1の潜像が主走査方向に連続的に形成される。
図23(B)は、濃度80Hの領域の潜像を表している。電位V1よりも低い電位V1cの領域が断続的に形成される。
図23(C)は、濃度30Hの領域の潜像を表している。電位V1cよりも低い電位V1dの潜像が断続的に交互に形成される。主走査方向において、電位V1dの潜像の幅は、電位V1cよりも狭くなっている。ブレドタイプのガンマ特性を用いる場合と異なり、ベタ部及びハーフトーン部に形成される潜像の電位はそれぞれ実質的に均一である。
図22の潜像にトナーQを現像し、フィルムK上に転写した後のトナーQの状態は、図8−1の模式図に示す様にトナー載り量に凹凸ある状態となる。トナー凹凸の間隔は300線に対応しており約80μm程度となっている。微小な領域のトナー載り量は、凸部Rはパワーの高いレーザで潜像が形成されたため透過モードの画像よりも多くなっている。一方、凹部Sでは反対にパワーの低いレーザで潜像が形成されたので、凸部Rと凹部Sのトナー載り量の平均値は、透過モードで形成されたトナー像のトナー載り量と略同等である。
図8−2はベタ部の定着後の画像断面を模式的に示す図である。凸部Rでは微小な領域で見ると、トナーの載り量が多く熱容量が増えるために、局所的にトナーの溶融状態が悪化する。また凹部Sでは定着ローラ261とトナーとの接触が十分ではないため、溶融不足の状態となっている。そのため、表面に微小な凹凸が残った状態であり、トナー粒隗も完全に平滑化されていない。この状態では入射した光は、トナーの表面でトナー同士の界面などで散乱されるため、光が透過する量が低下するので、光透過度は低く、ベタ部で透過率15%以下の画像となる。
図22は本実施例における透過モード(600線による画像形成部)と、非透過モード(300線ブレンドによる画像形成部)と、比較のための300線ノーマルタイプの画像の透過率を比較したグラフである。横軸は画像の占有率を示しており、ベタ部を100%としている。以下は入力される画像信号レベルでの、画像占有率に基づいて説明する。
実施例2の透過モード時は、600線による画像形成によって未定着時のトナーの凹凸が少ないため、透過率の高い画像が得られている。
また非透過モード時はトナーの載り量が少ない(画像占有率が低い)場合には透過率が高いが、画像占有率が50%以上の画像では非透過状態である透過率20%以下となる。従来例では、ハーフトーン部ではトナーに凹凸ができるので、600線よりも透過率が低い画像となるが、ベタ部に近づくにつれて、トナーの凹凸が小さくなるため、600線の画像と略同等の透過率となる。
<実施例3>
本実施例は、画像形成装置の基本構成は、実施例1と同じ構成をもちい、一枚のフィルム上に光透過度の高い画像と、光透過度の低い画像を作成する方法に関する。例えば図9のA部は光透過度を低くし、視認性を良くしたいが、B部はフィルムの下にある画像やパターンと調和させる目的で、光透過度を高くしたい場合に用いてもよい。これから図9のパターンを用いて、本実施例の動作を説明する。
図10は表示IF部112の液晶表示パネル、もしくはPCやネットワーク上の端末上に表示される用紙設定画面を示している。画面の左側はプレビュー表示画面1201であり、出力される画像データーのイメージを表示する画面である。プレビュー画面1201には図9のパターンが表示されている。図10では、画面に表示されている三角形のカーソル1202をマウス等で操作し、A部を取り囲む様に選択しようとしている状態である。このままマウスを操作し、A部を○で囲んだ状態で、非透過部設定ボタン1204をクリックする事で、○で囲んだA部が非透過部であることが設定される。同じようにBを○で囲んで選択し、透過部設定ボタン1203をクリックする事でB部のパターンは透過部であることが設定される。設定されなかった画像部は、透過か非透過かをあらかじめ設定しておいた状態で認識される。画像の設定がすべて終了すると、エンドボタン1205をクリックし、光透過度設定画面を閉じる。
次に画像形成部での処理について、図12、図13、表3を参照し、
図11のフロー図を用いて説明する。
(S301):情報処理部113は、始めに設定された画像データーから透過部と非透過部に画像データーを分解する。図12には分解された画像を示している。本実施例では、A部は非透過部であり、B部は透過部であるので図12のような2つの画像データーが作成される。
(S302):情報処理部113は次に実施例1のような用紙設定画面によって設定された、フィルムの厚みとプリントモードからテーブルを参照し、定着条件を決定する。本実施例では表3に示すようにプリントモードは透過部と非透過部を1枚のフィルムの中に混在させるモードであり、透過部を1面目画像とし、非透過部を2面目画像として作成する。更に透過部画像と非透過部画像では定着速度と定着温度が異なっており、また実施例1と同様にフィルムの厚みによって定着条件を3段階に設定されている。
(S303):次に、情報処理部113は透過部の画像を図13で示す様に、透過部画像データーを鏡映反転画像として反転する。
(S304):画像形成部121は、反転後の透過部画像データーに基づく画像を1面目としてフィルム上に形成し、表3のテーブルに示されるような溶融状態の高い定着条件で定着する。その結果図14−1記載の様に、フィルムK上のトナーQが、図14−2で示されるような溶融状態が高く、光透過度の高い状態で定着される。
(S305):次に、画像形成部121は、反転パス部27で反転されたフィルムKの2面目(裏面)に、非透過部画像データーに基づく画像を図14−3で示す様に形成し、表3のテーブルに示されるような溶融状態の低い定着条件で定着する。その結果図14−4で示される様に、2面目に形成されたA部は溶融状態が低く、光透過度の低い状態で定着され、かつ1面目に形成されたB部は溶融状態が高く、光透過度の高い状態で定着される。なお、本実施例においても、情報処理部113で決定された定着条件にもとづいて、制御部122が定着速度及び定着温度を変更する。
また、本実施例の画像形成装置にいても、透明シートの画像の全面を、「透過」または「非透過」とすることもできる。更に、本実施例の画像形成装置は、厚紙、普通紙、コート紙への画像形成もできる。その場合には、実施例1又は実施例2で示した方法を用いることができる。
本実施例では、2回定着される1面目に透過部の画像を先に形成し、かつ溶融状態の高い定着条件で定着することで光透過度の高い状態で定着している。また1回定着のみの2面目に非透過部の画像を形成し、かつ溶融状態の低い定着条件で定着することで光透過度の低い画像状態で定着している。
図15には本実施例で作成した画像を、格子状パターンで形成された下地画像の上に重ねておいた状態を示しておりに、非透過部の画像A部は下地の画像を透過せず、透過部の画像B部は下地の格子状パターンが透過されたフィルム上の画像ロゴパターンとなっている。本実施例と同じように、一枚のフィルム上に光透過度の高い画像と、光透過度の低い画像を同時に作成する方法として、透過部と非透過部とで実施例2と同じ画像処理を行う事で、透過部と非透過部との光透過度をコントロールすることも可能である。