以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図1は、本発明の光導波路の好適な一実施形態を示す概略縦断面図である。図1に示す光導波路10は、クラッド部11A及びコア部(導波路チャンネル)11Aを有するコア層11と、クラッド層12とを備え、2層のクラッド層12がコア層11を介して積層された構造のものである。
コア層11は、第1樹脂を含有し且つクラッド部11A及びコア部11Bを有する層である。
このような第1樹脂としては、光導波路のコア層11を形成させるために用いることが可能な公知の樹脂(ポリマー)を適宜用いることができ、例えば、環状オレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂等のポリマーや、これらのポリマーの1種又は2種以上を組み合わせたポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体、架橋体等が挙げられ、環状オレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリイミド樹脂が好ましい。このような第1樹脂は1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、このようなコア層11中の第1樹脂と後述するクラッド層12中の第2樹脂とは、同種の樹脂を含有していてもよいが、より容易に屈折率差を生じせしめることが可能であるという観点から、異なる種類のもの(主鎖が同一で側鎖の種類が異なるもの等も含む)であることが好ましい。
また、このような第1樹脂としては、後述する酸発生剤に由来する酸の作用により化学変化が生じて生成される樹脂であることが好ましい。すなわち、このような第1樹脂としては、後述するコア形成用ワニス中のコア層用ポリマーに由来して形成される樹脂(例えば、コア層用ポリマーそのもの、コア層用ポリマーどうしの反応物、コア層用ポリマーとコア形成用ワニス中のモノマーや架橋剤等とが反応して形成される樹脂等)であることがより好ましい。また、コア層11中の第1樹脂としては、優れた光伝送性能を有し且つ耐熱性と柔軟性を兼ね備えているという観点から、ノルボルネン系ポリマーであることが好ましい。
コア層11中の第1樹脂の含有量としては30.00〜99.99質量%であることが好ましく、60〜99.9質量%であることがより好ましい。このような含有量が前記下限未満では、コア層の機械強度が弱くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、パターニングがうまくいかなくなる傾向にある。なお、コア層11中の第1樹脂以外の成分としては、例えば、後述するコア形成用ワニス中の各成分又はその成分に由来して生成される成分のうちの第1樹脂以外の成分が挙げられる。
前記第1樹脂の重量平均分子量としては、特に限定されないが、1,000〜1,000,000が好ましく、5,000〜500,000がより好ましく、10,000〜200,000が特に好ましい。このような第1樹脂の重量平均分子量(Mw)が前記範囲内であると、耐熱性とコア表面の平滑性とのバランスがとれて、結果として光学特性に優れた光導波路を製造できる傾向にある。なお、「重量平均分子量」は、例えば、シクロヘキサン又はトルエンを有機溶剤とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算で評価することができる。
コア層11の平均厚さXとしては、その用途に応じてその設計を適宜変更できるものであり、特に限定されないが、1〜200μmであることが好ましく、5〜100μmであることがより好ましく、10〜60μmであることが更に好ましい。また、コア部11Bの横断面形状としては特に制限されないが、略正方形状又は略矩形(略長方形)であることが好ましい。このようなコア部11Bの幅Yとしては、その用途に応じてその設計を適宜変更できるものであり、特に限定されないが、1〜200μmであることが好ましく、5〜100μmであることがより好ましく、10〜60μmであることが更に好ましい。また、コア部11Bは、直線状であっても途中で湾曲、分岐等してもよく、目的とする用途に応じてその形状を適宜変更することができる。
また、コア層11中のコア部11Bは、クラッド部11Aよりも高い屈折率を有する。このようなコア部11Bとクラッド部11Aとの屈折率差としては特に限定されないが、0.3〜5.5%であることが好ましく、0.8〜2.2%であることがより好ましい。前記屈折率差が前記下限未満ではコア部により光を伝達する効果が低下する傾向にある。なお、本発明において「屈折率差」としては、クラッド部11Aの屈折率をnAとし、コア部11Bの屈折率をnBとしたときに下記式:
屈折率差(%)={(nB/nA)−1}×100
を計算して求められる値を採用する。
クラッド層12は、第2樹脂と、保護基を有する酸中和剤及び/又はその誘導体を含有する層である。ここで、酸中和剤の「誘導体」とは、保護基を有する酸中和剤から保護基が脱離して得られる前記酸中和剤に由来する成分、前記酸中和剤に由来する成分がクラッド層12中で熱等によって分解されることにより生成される化合物、又は、前記酸中和剤に由来する成分と酸との中和物(中和塩)をいう。
このような保護基を有する酸中和剤としては、保護基を有し且つ酸を中和することが可能なものであればよく、特に制限されるものではないが、使用時に、より効率よく酸を中和できるという観点から、保護基により保護されたアミノ基を有する化合物(アミノ基を有する化合物中の該アミノ基が保護基により保護されている化合物)が好ましい。また、このような保護基により保護されたアミノ基を有する化合物は、前記保護基が脱離することにより、アミン化合物を生成することが可能な化合物であることが好ましい。このような保護基が脱離することにより生成され得る、前記アミン化合物としては、特に制限されるものではないが、例えば、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、ペンチルアミン、tert−アミルアミン、シクロペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、セチルアミン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジペンチルアミン、ジシクロペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジドデシルアミン、ジセチルアミン、N,N−ジメチルメチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルテトラエチレンペンタミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリ−sec−ブチルアミン、トリペンチルアミン、トリシクロペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、トリドデシルアミン、トリセチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルテトラエチレンペンタミン、ジメチルエチルアミン、メチルエチルプロピルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、ベンジルジメチルアミン、アニリン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、N−プロピルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、4−メチルアニリン、エチルアニリン、プロピルアニリン、ジメチルアニリン、2,6−ジイソプロピルアニリン、トリメチルアニリン、2−ニトロアニリン、3−ニトロアニリン、4−ニトロアニリン、2,4−ジニトロアニリン、2,6−ジニトロアニリン、3,5−ジニトロアニリン、2− (ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N−ジメチルトルイジン、ジフェニル(p−トリル)アミン、メチルジフェニルアミン、トリフェニルアミン、フェニレンジアミン、ナフチルアミン、ジアミノナフタレン、ピロール、2H−ピロール、1−メチルピロール、2,4−ジメチルピロール、2,5−ジメチルピロール、N−メチルピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、4,5−ジフェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−ウンデシルイミダゾリン、2−ヘプタデシルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾール、2-ブチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリン、ベンズイミダゾール、1−シアノエチルイミダゾール、1−ビニルイミダゾール、ピロリン、2−メチル−1−ピロリン、ピロリジン、N−メチルピロリジン、ピロリジノン、N−メチルピロリドン、ピリジン、メチルピリジン、エチルピリジン、プロピルピリジン、ブチルピリジン、4−(1−ブチルペンチル)ピリジン、ジメチルピリジン、トリメチルピリジン、トリエチルピリジン、フェニルピリジン、3−メチル−2−フェニルピリジン、4−tert−ブチルピリジン、ジフェニルピリジン、ベンジルピリジン、メトキシピリジン、ブトキシピリジン、ジメトキシピリジン、1−メチル−2−ピリドン、4−ピロリジノピリジン、1−メチル−4−フェニルピリジン、2−(1−エチルプロピル)ピリジン、アミノピリジン、ジメチルアミノピリジン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルピリジン、4−(3−フェニルプロピル)ピリジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、インドール、キノリン、3−キノリンカルボニトリル、イソキノリン、カルバゾール、フェノチアジン、ジシアンジアミド、アミノ安息香酸、インドールカルボン酸、ニコチン酸、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、グリシルロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、リジン、3−アミノピラジン−2−カルボン酸、メトキシアラニン、3−ピリジンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム、2−ヒドロキシピリジン、アミノクレゾール、2,4−キノリンジオール、3−インドールメタノールヒドレート、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2,2’−イミノジエタノール、2−アミノエタノ−ル、3−アミノ−1−プロパノール、4−アミノ−1−ブタノール、4−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン、2−(2−ヒドロキシエチル)ピリジン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、1−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]ピペラジン、ピペリジンエタノール、1−(2−ヒドロキシエチル)ピロリジン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリジノン、3−ピペリジノ−1,2−プロパンジオール、3−ピロリジノ−1,2−プロパンジオール、8−ヒドロキシユロリジン、3−クイヌクリジノール、3−トロパノール、1−メチル−2−ピロリジンエタノール、1−アジリジンエタノール、N−(2−ヒドロキシエチル)フタルイミド、N−(2−ヒドロキシエチル)イソニコチンアミド、アミノトリアジンノボラック樹脂、ポリアクリルアミン樹脂、ポリアリルアミン樹脂等が挙げられる。
また、このような保護基としては、保護、脱保護の作業性の観点からカルボニル基、スルホニル基、トリアルキルシリル基が好ましく、カルボニル基がより好ましい。
また、このような保護基を有する酸中和剤としては、カルボニル基により保護されたアミノ基を有する化合物が好ましく、中でも、カルボニル基により保護されたアミノ基を有するアミド系化合物、カルボニル基により保護されたアミノ基を有するイソシアヌル系化合物、カルボニル基により保護されたアミノ基を有するウレタン系化合物、カルボニル基により保護されたアミノ基を有するイミド系化合物が好ましく、潜在性や耐熱性の観点から、カルボニル基により保護されたアミノ基を有するアミド系化合物、カルボニル基により保護されたアミノ基を有するウレタン系化合物、カルボニル基により保護されたアミノ基を有するイソシアヌル系化合物がより好ましく、特に、カルボニル基により保護されたアミノ基を有するアミド系化合物、カルボニル基により保護されたアミノ基を有するイソシアヌル系化合物がより好ましい。
このようなカルボニル基により保護されたアミノ基を有するアミド系化合物としては、例えば、アセトアニリド、ベンズアニリド、ダイアセトンアクリルアミド、ナイロン等が挙げられる。また、前記カルボニル基により保護されたアミノ基を有するイソシアヌル系化合物としては、イソシアヌル酸、イソシアヌル酸エステル、トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート等が挙げられる。更に、前記カルボニル基により保護されたアミノ基を有するウレタン系化合物としては、N−t−ブトキシカルボニルアミン、N,N−ジ(t−ブトキシカルボニル)アミン、N,N,N−トリ(t−ブトキシカルボニル)アミン、メチルカーバメート、エチルカーバメート等が挙げられる。また、前記カルボニル基により保護されたアミノ基を有するイミド系化合物としては、フタルイミド、スクシンイミド、マレイミド等が挙げられる。
また、クラッド層12が含有する前記第2樹脂としては、特に制限されず、光導波路中のクラッド層を形成させるために用いることが可能な公知のポリマーを適宜用いることができ、例えば、環状オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリベンゾオキサゾール系樹脂等のポリマーや、これらのポリマーの1種又は2種以上を組み合わせたポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体、架橋体等が好適なものとして挙げられる。なお、このような第2樹脂を含有するクラッド層12を備える光導波路において、コア部11Bを導光路として十分に機能させるためには、クラッド層12の屈折率をコア部11Bの屈折率よりも低くする必要がある。そのため、クラッド層12中の第2樹脂としては、コア層11Bを形成する材料よりも屈折率が低い第2樹脂を選択して用いることが好ましい。また、クラッド層12中の第2樹脂としては、クラッド層12とコア層11との密着性を向上するという観点からは、コア層11中の第1樹脂と同種類の樹脂(例えば、コア層中の樹脂がアクリル系の樹脂である場合にはクラッド層中の樹脂もアクリル系の樹脂である場合が相当し、コア層中の樹脂がエポキシ系の樹脂の場合にはクラッド層中の樹脂もエポキシ系の樹脂である場合が相当する。)を用いることが好ましい。
さらに、前記第2樹脂としては、可撓性、耐熱性、耐湿性の観点から、ノルボルネン系ポリマーであることが好ましい。また、クラッド層12中の第2樹脂は、後述するクラッド形成用ワニス中のクラッド層用ポリマーに由来して形成される樹脂(例えば、クラッド層用ポリマーそのもの、クラッド層用ポリマーどうしの反応物、クラッド層用ポリマーとクラッド形成用ワニス中のモノマーや架橋剤等とが反応して形成される樹脂等)であることが好ましい。
前記第2樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、1,000〜1,000,000が好ましく、5,000〜500,000がより好ましく、10,000〜200,000が特に好ましい。このような重量平均分子量(Mw)が前記範囲内であると、フィルム材料としての強靭性と精製の作業性を両立することが可能となる傾向にある。
クラッド層12中の前記保護基を有する酸中和剤及び/又はその誘導体の含有量としては0.01〜50質量%であることが好ましく、0.1〜20質量%であることがより好ましい。このような保護基を有する酸中和剤及び/又はその誘導体の含有量が前記下限未満では中和効果が薄くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとフィルム材料としての強靭性、耐熱性が低下する傾向にある。なお、このような酸中和剤及び/又はその誘導体の含有量は、例えば、熱分解ガスクロマトグラフ質量分析計(熱分解GC−MS)やパージアンドトラップガスクロマトグラフ質量分析計(パージアンドトラップGC−MS)で測定することができる。また、熱分解GC−MSによって前記酸中和剤の含有量を測定する場合には、下記のような測定条件を採用してもよい。
(分析装置)
熱分解装置;フロンティア・ラボ PY−2020iD型縦型加熱炉型熱分解装置
GC ;アジレントテクノロジー 6890N型ガスクロマトグラフ
MS ;アジレントテクノロジー 5975B型質量検出器
(分析条件)
GC注入口温度 ;300℃
GCオーブン温度 ;40℃で5分間保持後、40℃から10℃/分で300℃まで昇温し、300℃で9分間保持
MSインターフェイス温度;300℃
カラム ;アジレントテクノロジー HP−5MS
(5質量%フェニルポリジメチルシロキサン)
30m×0.25mmi.d.(膜厚:0.25μm)
注入方法 ;スプリット法(スプリット比:50/1)
キャリアガス流量 ;He 1mL/分(定流量モード)
MSイオン化方法 ;EI(電子衝撃)法
MS検出質量範囲 ;m/z=25〜800
サンプル加熱条件 ;300℃/10分。
クラッド層12中の前記第2樹脂の含有量としては40〜99.99質量%であることが好ましく、70〜99.9質量%であることがより好ましい。このような第2樹脂の含有量が前記下限未満ではフィルム材料としての強靭性、耐熱性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、クラッド層中において相対的な酸中和剤の量が少なくなるため、十分な中和効果を得ることが困難になる傾向にある。なお、クラッド層12中には前記第2樹脂、前記保護基を有する酸中和剤及びその誘導体以外の他の成分を含有していてもよく、このような他の成分としては、例えば、後述するクラッド層形成用ワニス中の各成分又はその成分に由来して生成される成分のうちの第2樹脂以外の成分が挙げられる。
また、クラッド層12の平均厚さZとしては特に限定されないが、1〜200μmであることが好ましく、5〜100μmであることがより好ましく、10〜60μmであることが更に好ましい。また、このようなクラッド層12の平均厚さZは、コア層11の平均厚さXの0.1〜1.5倍であることが好ましく、0.3〜1.25倍であることがより好ましい。クラッド層12の平均厚さZを前記範囲となるようにすることにより、光導波路10が不要に大型化(厚膜化)することを防止しつつ、クラッド層12としての機能がより十分に発揮される傾向にある。
また、このようなクラッド層12とコア部11Bとの屈折率差としては、クラッド層12の屈折率がコア部11Bの屈折率よりも低ければよく特に限定されないが、0.2〜20%であることが好ましく、0.5〜10%であることがより好ましい。前記屈折率差が前記下限未満ではコア部により光を伝達する効果が低下する傾向にある。
さらに、このような光導波路10の好適な用途としては、コア部11Bの材料の光学特性等によっても異なるものであるため一概には言えないが、例えば、600〜1550nm程度の波長領域の光を使用したデータ通信において使用することが好ましい。また、使用時においては、各種基板上に光導波路10を設置して使用してもよい。更に、このような光導波路10は、使用目的等に応じて導体層等を適宜設けて使用してもよい。
以上、本発明の光導波路の好適な一実施形態について説明したが、本発明の光導波路は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、光導波路の構造がコア層11の両面に2つのクラッド層12が積層された構造(クラッド層/コア層/クラッド層の3層構造)であったが、本発明の光導波路においては、コア層11とコア層11の少なくとも1方の面にクラッド層12が積層されていればよく、その構造は特に制限されず、例えば、クラッド層/コア層の2層構造、クラッド層/コア層/クラッド層/コア層の4層構造、クラッド層/コア層/クラッド層/コア層/クラッド層の5層構造等であってもよい。このように、本発明の光導波路においては、光導波路として機能させることが可能な公知の構造を適宜採用することができる。
また、図1に示す実施形態においては、コア層11中においてクラッド部11A及びコア部11Bの大きさ(幅)が同じとなっているが、本発明の光導波路においては、コア層11中におけるクラッド部11A及びコア部11Bの大きさや配置位置は特に制限されず、目的とする用途に応じて適宜その設計を変更することができる。
次に、このような本発明の光導波路を製造するための方法として好適に採用することが可能な、本発明の光導波路の製造方法について説明する。
本発明の光導波路の製造方法は、第1樹脂を含有し且つクラッド部及びコア部を有するコア層の少なくとも一方の面に、クラッド層用ポリマーと保護基を有する酸中和剤とを含有するクラッド層前駆体を積層した積層体を得た後、前記積層体を加熱して上記本発明の光導波路を得ることを特徴とする方法である。
先ず、前記積層体を製造する方法を説明する。このような積層体を製造する方法は、特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、コア層形成用ワニスによりフィルム状のコア層を形成し、これとは別に、クラッド層形成用ワニスによりフィルム状のクラッド層前駆体を形成し、前記コア層の少なくとも一方の面に前記クラッド層前駆体を積層せしめることにより積層体を得る方法(I)や、基材上にクラッド層形成用ワニスを塗布してクラッド層前駆体を形成した後、前記クラッド層前駆体の表面にコア層形成用ワニスを塗布し、コア層を形成せしめて積層体を得る方法(II)が挙げられる。以下、このような積層体を製造するための好適な方法として、上記方法(I)を説明する。
このような方法(I)に関して、先ず、図2及び図3を参照しながら、コア層形成用ワニスを用いたコア層の形成工程について説明する。
このようなコア層の形成工程においては、基材20上にコア層前駆体13を積層せしめた後、コア層前駆体13に、開口部を有するマスク21を介して選択的に活性エネルギー線Lを照射し(図2)、屈折率の異なるコア部11B及びクラッド部11A(具体的には、活性エネルギー線Lの未照射領域に形成される屈折率の高いコア部11Bと、活性エネルギー線82の照射領域に形成されるコア部11Bよりも屈折率の低いクラッド部11A)を形成してコア層を形成する(図3)。
図2は、基材上に形成されたコア層前駆体に対して活性エネルギー線Lを照射している状態を模式的に示す概略縦断面図である。このような基材20は、コア層前駆体13を支持することが可能なものであればよく特に制限されず、フィルム材料を形成する際に用いることが可能な公知の基材を適宜用いることができ、例えば、シリコン基板、二酸化ケイ素基板、ガラス基板、石英基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等が挙げられる。
コア層前駆体13は、基材20上にコア層形成用ワニスを塗布することにより形成することができる層(塗膜)である。このようなコア層形成用ワニスとしては、活性エネルギー線Lの照射により屈折率が変化する材料を含有するものであればよく特に制限されず、後述するマスク21を介した活性エネルギー線Lの照射により、コア部11B及びクラッド部11Aを形成させることが可能な公知の材料を含有するものを適宜用いることができる。
また、このようなコア層形成用ワニスは、酸発生剤と、コア層用ポリマーとを含有することが好ましい。このようなコア層形成用ワニスに含有させる前記酸発生剤としては、例えば、光酸発生剤、熱酸発生剤等が挙げられる。このような酸発生剤の中でも、活性エネルギー線Lの照射により、効率よく酸を放出させることができるという観点からは、光酸発生剤がより好ましい。
このような光酸発生剤としては、例えば、トリフェニルスルフォニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリス(4−t−ブチルフェニル)スルホニウム−トリフルオロメタンスルホネート、ジメチル(2−(2−ナフチル)−2−オキソエチル)スルホニウム−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどのスルホニウム塩類、p−ニトロフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェートなどのジアゾニウム塩類、アンモニウム塩類、ホスホニウム塩類、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、(トリキュミル)ヨードニウム−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどのヨードニウム塩類、キノンジアジド類、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタンなどのジアゾメタン類、1−フェニル−1−(4−メチルフェニル)スルホニルオキシ−1−ベンゾイルメタン、N−ヒドロキシナフタルイミド−トリフルオロメタンサルホネートなどのスルホン酸エステル類、ジフェニルジスルホンなどのジスルホン類、トリス(2,4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−4,6−ビス−(トリクロロメチル)−s−トリアジンなどのトリアジン類等が挙げられる。
また、このような光酸発生剤としては、市販の光酸発生剤を用いてもよい。このような光酸発生剤の市販品としては、例えば、Rhodia USA社から入手可能な「RHODORSIL(登録商標)PHOTOINITIATOR 2074(CAS番号第178233−72−2番)」、東洋インキ製造株式会社から入手可能な「TAG−372R((ジメチル(2−(2−ナフチル)−2−オキソエチル)スルフォニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート:CAS番号第193957−54−9番))、みどり化学株式会社から入手可能な「MPI−103(CAS番号第87709−41−9番)」、東洋インキ製造株式会社から入手可能な「TAG−371(CAS番号第193957−53−8番)」、東洋合成工業株式会社から入手可能な「TTBPS−TPFPB(トリス(4−tert−ブチルフェニル)スルフォニウムテトラキス(ペンタペンタフルオロフェニル)ボレート)」が挙げられる。なお、このような光酸発生剤としてRHODORSIL PHOTOINITIATOR 2074を用いる場合、紫外光の照射手段として、高圧水銀ランプ又はメタルハライドランプを用いることが好ましい。これにより300nm未満の十分なエネルギーの紫外光を供給することができ、RHODORSIL PHOTOINITIATOR 2074を効率よく分解して酸を発生させることが可能となる。
また、前記熱酸発生剤としては、例えば、2−ニトロベンジルトシレート等のニトロベンジルトシレート類、ベンジルアニリニウムスルホネート類、ビススルホニルジアゾメタン類、アリールスルフィン酸類、2−ブテニルテトラメチレンスルフォニウムヘキサフルオロアンチモネートや3−メチル−2−ブテニルテトラメチレンスルフォニウムヘキサフルオロアンチモネートなどヘキサフルオロアンチモネート類、トリフルオロメタンスルホネート類、トルフルオロ酢酸エステルなどのトリハロ酢酸等を例示できる。
また、前記コア層用ポリマーとしては、保管時の化学的安定性と使用時の反応性との両立をより確実に図ることができるという観点から、前記酸発生剤が放出する酸によって主鎖から離脱する離脱性基(離脱性ぺンダントグループ)を含有する側鎖を有するポリマーを用いることが好ましい。また、このような離脱性基を含有する側鎖を有するポリマーとしては、透明性が十分に高く(無色透明であり)、且つ、酸発生剤が放出する酸(好ましくはプロトン)の作用により離脱性基が側鎖から離脱(切断)して、その屈折率が変化(好ましくは低下)するポリマーが好ましい。
このような離脱性基としては、酸発生剤が放出する酸により比較的容易に離脱するという観点から、その分子構造中に、−O−構造、−Si−アリール構造及び−O−Si−構造のうちの少なくとも1つを有するものが好ましい。このような離脱性基の中でも、離脱によりポリマーの屈折率を低下させることが可能であるという観点から、−Si−ジフェニル構造(式:−Si(Ph)2[式中、Phはフェニル基を示す]で表される構造)及び−O−Si−ジフェニル構造(式:−O−Si(Ph)2[式中、Phはフェニル基を示す]で表される構造)のうちの少なくとも一方の構造を含む基が好ましい。
また、前記離脱性基を含有する側鎖としては、前記離脱性基を含有するものであればよく特に制限されないが、例えば、式:−(CH2)n−CH(CF3)2−O−Si(R1)3;−(CH2)n−CH(CF3)2−O−CH2−O−CH3;−(CH2)n−CH(CF3)2−O−C(O)−O−C(R1)3;−(CH2)n−C(CF3)2−OH;−(CH2)nC(O)NH2;−(CH2)nC(O)Cl;−(CH2)nC(O)OR1;−(CH2)n−OR1;−(CH2)n−OC(O)R1;−(CH2)n−C(O)R1;−(CH2)n−OC(O)OR1;−(CH2)nSi(R1)3;−(CH2)nSi(OR1)3;−(CH2)n−O−Si(R1)3;−(CH2)nC(O)OR2;で表される基などが挙げられる。なお、このような式中のnはそれぞれ0〜10の整数であることが好ましく、R1は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、直鎖又は分岐のC1−C20のアルキル基、直鎖又は分岐のC1−C20のハロゲン化又はパーハロゲン化アルキル基、直鎖又は分岐のC2−C10アルケニル基、直鎖又は分岐のC2−C10アルキニル基、C5−C12のシクロアルキル基、C6−C14のアリール基、C6−C14のハロゲン化又はパーハロゲン化アリール基及びC7−C24のアラルキル基のうちのいずれかであることが好ましく、R2は、式:−C(CH3)3;−Si(CH3)3;CH(R3)OCH2CH3;−CH(R3)OC(CH3)3;で表される基や環状基のうちのいずれかであることが好ましい。なお、式中:R3は水素原子または直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を示す。
また、このような離脱性基を含有する側鎖としては、酸により脱離性基をより効率よく脱離させることが可能となるという観点から、式:−(CH2)n−O−Si(R1)3又は式:−(CH2)n−Si(R1)3で表される基であることがより好ましい。なお、このような式中のn及びR1は前記したものと同義である。また、このような式で表される側鎖の中でも、式中のR1のうちの少なくとも2つがフェニル基であることが更に好ましい。なお、このような脱離性基を含有する側鎖を有するポリマーは、ポリマー中に前記脱離性基を含有する側鎖を有する繰り返し単位を少なくとも1種含有していればよく、前記脱離性基を含有する側鎖を有する繰り返し単位の2種以上を含有していているものであってもよい。
また、このようなコア層用ポリマーとしては、例えば、前記脱離性基を含有する側鎖を有する、ノルボルネン系樹脂やベンゾシクロブテン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリベンゾオキサゾール系樹脂が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて(ポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体等)用いることができる。また、前記コア層用ポリマーとしては、ポリシラン(例:ポリメチルフェニルシラン)、ポリシラザン(例:ペルヒドロポリシラザン)等のシラン系樹脂を用いてもよい。
また、このようなコア層用ポリマーとしては、前記脱離性基を含有する側鎖を有するノルボルネン系樹脂(ノルボルネン系ポリマー)を主として含有することが好ましい。このように、コア層用ポリマーとして前記脱離性基を含有する側鎖を有するノルボルネン系ポリマーを用いることにより、優れた光伝送性能や耐熱性を有する光導波路を得ることが可能となる。また、このようなノルボルネン系ポリマーにより、吸水による寸法変化等を生じ難い光導波路を得ることが可能となる。
さらに、このようなノルボルネン系ポリマーとしては、単独の繰り返し単位を有するもの(ホモポリマー)、2つ以上のノルボルネン系繰り返し単位を有するもの(コポリマー)のいずれであってもよい。このようなノルボルネン系ポリマーとしては、例えば、(1)ノルボルネン型モノマーを付加(共)重合して得られるノルボルネン型モノマーの付加(共)重合体、(2)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との付加共重合体、(3)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、および必要に応じて他のモノマーとの付加共重合体のような付加重合体、(4)ノルボルネン型モノマーの開環(共)重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、(5)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との開環共重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、(6)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、又は他のモノマーとの開環共重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加したポリマーのような開環重合体が挙げられる。これらの重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体等が挙げられる。
また、このようなノルボルネン系ポリマーとしては、前記離脱性基を有する側鎖を有するノルボルネンの繰り返し単位を有するものであればよいが、後述のクラッド層用ポリマーよりも相対的に屈折率が高いノルボルネン系ポリマーを用いることが好ましい。このように、クラッド層用ポリマーよりも相対的に屈折率が高いノルボルネン系ポリマーを用いることにより、コア部を形成した際に、コア部がより優れた光伝送性能を有するものとなる傾向にある。
また、このようなノルボルネン系ポリマーにおいては、前記離脱性基を有する側鎖を有するノルボルネンの繰り返し単位の他に、アルキル基を側鎖に有するノルボルネン(アルキルノルボルネン)の繰り返し単位を含有することが好ましい。
このようなアルキルノルボルネンの繰り返し単位中の側鎖のアルキル基は、直鎖状または分岐状のいずれであってもよく、また、置換基を有していてもよい。このようなアルキル基としては特に制限されないが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。また、前記アルキル基が有していてもよい置換基としては特に制限されないが、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。
また、このようなアルキルノルボルネンの繰り返し単位中の側鎖のアルキル基の炭素数は特に制限されないが1〜20(より好ましくは3〜12)であることがより好ましい。このような炭素数が前記下限未満では、ポリマーから可撓性が損なわれ、柔軟性を要求される用途への適用が困難になる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、ポリマーの耐熱性が低下する傾向にある。
また、このような離脱性基を有するノルボルネン系ポリマーとしては、下記一般式(1):
[式中、Rはアルキル基を表し、Zは前記離脱性基を含有する側鎖を示し、X及びYは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ70以下の整数を示す。]
で表される構造を有するノルボルネン系ポリマーがより好ましい。このようなRで表されるアルキル基は、前述のアルキルノルボルネンの繰り返し単位中の側鎖のアルキル基と同様のものである。
また、このようなノルボルネン系ポリマーは、その設計に応じて公知のノルボルネン系のモノマーから適宜モノマーを選択して用いて、開環メタセシス重合(ROMP)、ROMPと水素化反応との組み合わせ、ラジカル又はカチオンによる重合、カチオン性パラジウム重合開始剤を用いた重合、これ以外の重合開始剤(例えば、ニッケルや他の遷移金属の重合開始剤)を用いた重合等の公知の重合方法を採用して製造することができる。
さらに、前記コア層用ポリマーに主としてノルボルネン系ポリマーを用いる場合において、コア層用ポリマー中のノルボルネン系ポリマーの含有比率は80〜100質量%であることが好ましく、95〜100質量%であることがより好ましい。このような含有比率が前記下限未満では、ノルボルネン系ポリマーを用いることにより得られる効果が十分に得られなくなる傾向にある。
また、このようなコア層形成用ワニスにおいては、前記酸発生剤及び前記コア層用ポリマーの他に、モノマー、プロカタリスト、増感剤、酸化防止剤を更に含有させることが好ましい。
このようなモノマーとしては、前記コア層用ポリマーをマトリックスとして、活性エネルギー線Lの照射により反応して反応物を形成するような化合物が好ましい。このようなモノマーに由来する反応物としては、モノマーがコア層用ポリマー(マトリックス)中で重合して形成されたポリマー(重合体)、コア層用ポリマー同士を架橋する架橋構造、コア層用ポリマーに重合してクラッド層用ポリマーから分岐した分岐構造(ブランチポリマーや側鎖)等が挙げられる。
また、このようなモノマーとしては光導波路の形成に用いることが可能なものであればよく特に限定されないが、例えば、ノルボルネン系モノマー、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、エポキシ系モノマー、スチレン系モノマー等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、モノマーとしては、耐熱性及び柔軟性に優れる光導波路が得られるという観点から、ノルボルネン系モノマーを用いるのが好ましい。
このようなノルボルネン系モノマーは、ノルボルネン環に置換基が結合したものであってもよい。このような置換基としては特に制限されるものではないが、例えば、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基、直鎖状又は分岐鎖状のアルキニル基、直鎖状又は分岐鎖状のシクロアルキル基、直鎖状又は分岐鎖状のシクロアルケニル基、直鎖状又は分岐鎖状のアリール基、直鎖状又は分岐鎖状のアラルキル基であり、直鎖状又は分岐鎖状のアルキリデニル基、ハイドロカルビル基、ハロハイドロカルビル基、パーハロハイドロカルビル基等が挙げられる。このようなノルボルネン系モノマーとしては、例えば、プロピルノルボルネン、ヘキシルノルボルネン等を挙げられる。
また、このようなノルボルネン系モノマーは、複数のノルボルネン環が有機基を介して結合したものであってもよい。このような有機基としては、特に制限されないが、例えば下記式:−(CH2)n−;−(CH2)n−O−(CH2)n−;−Ar−;又は;−(CH2)n−O−Si(X)2−O−(CH2)n−[式中、nは1〜10の整数を示し、Arは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素を示し、Xは、置換基を有していてもよいアルキル基及び置換基を有していてもよい芳香族炭化水素のうちのいずれかを示す。]で表される基が挙げられる。なお、このような有機基を介して結合した複数のノルボルネン環は、それぞれ上記置換基を有していてもよい。また、このようなノルボルネン系モノマーとしては、例えば、ビス−ノルボルネンメトキシジメチルシラン、ビス−ノルボルネンメトキシジエチルシラン、ビス−ノルボルネンメトキシジフェニルシラン等が挙げられる。なお、このようなモノマーとしては、国際公開第2005/052641号パンフレットに記載されているモノマーを用いることができる。
また、前記プロカタリストは、前記モノマーの反応(重合反応、架橋反応等)を開始させ得る物質であり、活性エネルギー線の照射により活性化した酸発生剤の作用により、活性化温度が変化する物質である。このようなプロカタリスト(触媒前駆体ともいう)としては、活性エネルギー線の照射に伴って活性化温度が変化(上昇又は低下)するものであればよく、特に制限されないが、活性エネルギー線の照射に伴って活性化温度が低下するものがより好ましい。このようなプロカタリストによって、光導波路の調製時に他の層に不要な熱が加わるような加熱を施す必要がなくなり、調製時の加熱処理により光導波路の特性(光伝送性能)が低下することを十分に防止できる。
このようなプロカタリストとしては、下記一般式(Ia)及び(Ib)で表わされる化合物の少なくとも一方を含む(主とする)ものが好適に用いられる。
(E(R)3)2Pd(Q)2 ・・・(Ia)
[(E(R)3)aPd(Q)(LB)b]p[WCA]r ・・・(Ib)
前記一般式(Ia)及び(Ib)において、それぞれ、E(R)3は、第15族の中性電子ドナー配位子を表し、Eは、周期律表の第15族から選択される元素を表し、Rは、水素原子(又はその同位体の1つ)又は炭化水素基を含む部位を表し、Qは、カルボキシレート、チオカルボキシレート及びジチオカルボキシレートからなる群から選択されるアニオン配位子を表す。また、一般式(Ib)において、LBは、ルイス塩基を表し、WCAは、弱配位アニオンを表し、aは1〜3の整数を表し、bは0〜2の整数を表し、aとbとの合計は1〜3であり、p及びrは、パラジウムカチオンと弱配位アニオンとの電荷のバランスをとる数を表す。
前記一般式(Ia)に従う典型的なプロカタリストとしては、Pd(OAc)2(P(i−Pr)3)2、Pd(OAc)2(P(Cy)3)2、Pd(O2CCMe3)2(P(Cy)3)2、Pd(OAc)2(P(Cp)3)2、Pd(O2CCF3)2(P(Cy)3)2、Pd(O2CC6H5)3(P(Cy)3)2が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。ここで、Cpはシクロペンチル(cyclopentyl)基を表し、Cyはシクロヘキシル基を表す。
また、前記一般式(Ib)で表されるプロカタリストとしては、p及びrが、それぞれ1及び2の整数うちのいずれかである化合物が好ましい。前記一般式(Ib)に従う典型的なプロカタリストとしては、Pd(OAc)2(P(Cy)3)2が挙げられる。ここで、Cyはシクロヘキシル基を表し、Acはアセチル基を表す。
また、前記増感剤は、活性エネルギー線に対する酸発生剤の感度を増大して、その活性化(反応又は分解)に要する時間やエネルギーを減少させる機能や、その活性化に適する波長に紫外光の波長を変化させる機能を有するものである。このような増感剤としては、特に限定されないが、例えば、9,10−ジブトキシアントラセン(CAS番号第76275−14−4番)のようなアントラセン類、キサントン類、アントラキノン類、フェナントレン類、クリセン類、ベンツピレン類、フルオラセン類(fluoranthenes)、ルブレン類、ピレン類、インダンスリーン類、チオキサンテン−9−オン類(thioxanthen−9−ones)が挙げられる。増感剤の具体例としては、2−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、4−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、フェノチアジン(phenothiazine)が挙げられる。これらの増感剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、9,10−ジブトキシアントラセン(DBA)は、川崎化成工業株式会社から入手が可能である。
さらに、前記酸化防止剤はフリーラジカルの発生やポリマーの自然酸化を防止して得られた光導波路の特性の向上を図ることができるものである。このような酸化防止剤としては、Ciba Specialty Chemicals社から入手可能なCiba(登録商標)IRGANOX(登録商標)1076及びCiba IRGAFOS(登録商標)168が好適に用いられる。また、他の酸化防止剤として、例えば、Ciba Irganox(登録商標)129、Ciba Irganox 1330、Ciba Irganox 1010、Ciba Cyanox(登録商標)1790、Ciba Irganox(登録商標)3114、Ciba Irganox 3125を用いることもできる。
また、前記コア層形成用ワニスには、形成させるコア層の効果を損なわない範囲で、コア層を形成させる際に用いることが可能な公知の他の添加剤(例えば、架橋剤、消泡剤、密着助剤等)を適宜含有させてもよい。
また、このようなコア層形成用ワニスの製造方法としては特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、溶媒中にコア層形成用ワニスの材料(酸発生剤、コア層用ポリマー、モノマー、プロカタリスト、増感剤、酸化防止剤等)を溶解してコア層形成用ワニスを製造する方法が挙げられる。このような溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)等のエーテル系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;トルエン、キシレン、ベンゼン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化合物系溶媒;酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル等のエステル系溶媒;ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
さらに、このようなコア層形成用ワニス中の酸発生剤の含有量としては特に制限されないが、コア層用ポリマー100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、0.5〜5質量部であることがより好ましい。このような酸発生剤の含有量が前記下限未満では、十分に酸が発生せず、効率よく反応を進行させることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると導波路としての光の損失が増加する傾向にある。
また、前記コア層形成用ワニス中のコア層用ポリマーの含有比率としては特に制限されないが、5〜60質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。コア層用ポリマーの含有比率が前記下限未満では、ワニス粘度が低くなりすぎて均一な塗膜を得ることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとワニスの粘度上昇が著しく、ろ過が困難となる傾向にある。
さらに、前記コア層形成用ワニスの粘度(常温)は特に制限されず、後述する塗布法及び所望の膜厚に応じて適宜調整することができる。このようなコア層形成用ワニスの粘度(常温)としては100〜10000cPであることが好ましく、150〜5000cPであることがより好ましく、200〜3500cPであることが更に好ましい。
コア層形成用ワニスを基材20上に塗布する方法としては、特に限定されず、例えば、ドクターブレード法、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法等の方法が挙げられる。このようにして、基材20上にコア層形成用ワニスを塗布することでコア層前駆体13を形成することができる。
また、コア層前駆体13を形成する工程においては、基材20上にコア層形成用ワニスを塗布した後に、少なくとも一部の溶媒を除去し、乾燥せしめることが好ましい。このような溶媒を除去する工程(溶媒除去工程)としては、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、自然乾燥、加熱する方法、減圧下において放置する方法、不活性ガスを吹付ける(ブロー)方法、乾燥機を用いて溶媒を蒸発させる方法が挙げられる。
また、このようなコア層前駆体13に照射する活性エネルギー線Lの種類としては、例えば紫外線、電子線、X線、レーザー等を挙げることができる。また、このような活性エネルギー線Lとして紫外光を採用する場合、前記紫外光が200〜400nmにピーク波長を有することが好ましく、300〜400nmにピーク波長を有することがより好ましい。このような紫外光のピーク波長が前記下限未満では紫外光の照射時間が長くなり生産性に乏しくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、可視光領域で感光してしまうため、化学的安定性に乏しくなる傾向にある。更に、このような紫外光の照射量としては100〜9000mJ/cm2であることが好ましく、200〜6000mJ/cm2であることがより好ましい。前記紫外光の照射量が前記下限未満ではコア部とクラッド部とを十分に形成することが困難になる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとコア層中において化学的劣化が進行してしまう傾向にある。また、このような紫外光Lを照射するための光源としては特に制限されず、公知の光源(例えば高圧水銀ランプなど)を適宜用いることができる。
活性エネルギー線Lの照射の際に用いるマスク(マスキング)21としては、形成させるクラッド部11Aの形状(パターン)と等価な開口部(窓)が形成され且つ開口部以外の部分において活性エネルギー線L(例えば紫外光)を遮光できるものを用いる。このようなマスク21を用いることで、開口部から活性エネルギー線Lを透過させつつ、開口部(透過部)以外の部分で活性エネルギー線Lを遮光して、開口部の形状に由来したクラッド部11Bを製造することが可能となる。また、マスク21は、予め形成(別途形成)されたもの(例えばプレート状のもの)を用いてもよく、あるいは、コア層前駆体13上に例えば気相成膜法や塗布法により形成されたものを用いてもよい。
このようなマスク21としては、例えば、石英ガラスやPET基材等で作製されたフォトマスク、ステンシルマスク、気相成膜法(蒸着、スパッタリング等)により形成された金属薄膜等を適宜用いることができる。また、このようなマスク21の中でも、微細なパターンを精度良く形成できるとともにハンドリングがよく生産性が向上するという観点から、フォトマスクやステンシルマスクを用いることが特に好ましい。なお、このようなマスク21の構成材料としては特に制限されず、照射する紫外光Lのピーク波長により公知の材料の中から適宜選択すればよい。
ここで、活性エネルギー線Lの照射により、コア層前駆体13に屈折率の異なる部位が形成される理由としては、例えば、活性エネルギー線Lが照射された部分において酸発生剤に由来する酸が発生し且つコア層用ポリマーがその酸の作用により解裂あるいは架橋等して化学構造に変化が生じるものである場合には、コア層用ポリマーの化学構造の変化に伴って活性エネルギー線Lが照射された部分の屈折率が変化することが挙げられる。このような場合には、活性エネルギー線Lが照射された部分と、未照射の部分とでコア層前駆体13を構成する樹脂の化学構造が異なることとなり、屈折率が異なる部位が形成される。また、コア層形成用ワニス中に酸発生剤に由来する酸の作用により構造等が変化するモノマーが含まれている場合も、活性エネルギー線Lが照射された部分と、未照射の部分とでコア層前駆体13を構成する樹脂の化学構造に違いが生じ、それによって屈折率が異なる部位が形成される。
次いで、必要に応じて、フィルム状のコア層11に対して加熱処理を施してもよい。このような加熱処理により、ポリマーから離脱(切断)された離脱性基が、例えば、照射領域から除去され、あるいはポリマー内において再配列または架橋する。したがって、このような加熱処理を施すことにより、コア部11Bとクラッド部11Aとの間の屈折率差をより大きくすることができる。このような加熱処理における加熱温度は、特に限定されないが、70〜195℃程度であるのが好ましく、85〜150℃程度であるのがより好ましい。また、加熱時間は、照射領域から離脱(切断)された離脱性基を十分に除去し得るように設定すればよく、特に限定されないが、0.5〜3時間程度であることが好ましく、0.5〜2時間程度であることがより好ましい。
このようにして基材20上にコア層形成用ワニスを用いてコア層前駆体13を形成した後に、活性エネルギー線Lを選択的に照射することで、基材20上にコア層11が形成される。また、このようにして形成されたフィルム状のコア層11は、基材20から剥離して使用することができる。
次に、クラッド層形成用ワニスによりフィルム状のクラッド層前駆体を形成する工程について説明する。
クラッド層前駆体は、基材上にクラッド層形成用ワニスを塗布することにより形成することができる層(塗膜)である。このようなクラッド層形成用ワニスは、保護基を有する酸中和剤と、クラッド層用ポリマーとを含有するものが好ましい。このようなクラッド層形成用ワニスに含有させる前記保護基を有する酸中和剤は、上記本発明の光導波路において説明した前記クラッド層12中の成分である「保護基を有する酸中和剤」と同様のものである。
また、前記クラッド層用ポリマーとしては、クラッド層を形成させる際にクラッド層用ポリマーに由来して得られる第2樹脂の屈折率がコア部の屈折率よりも低くなるような樹脂を選択して用いればよく、特に限定されず、例えば、環状オレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂やベンゾシクロブテン系樹脂等を含む)、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、エポキシ樹脂系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリベンゾオキサゾール系樹脂が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて(ポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体等)用いてもよい。これらの中でも、ノルボルネン系樹脂(ノルボルネン系ポリマー)を主として含有するものが好ましい。また、このようなノルボルネン系ポリマーとしては特に制限されず、クラッド層を形成する際に用いることが可能な公知のノルボルネン系ポリマーを適宜用いることができる。
このようなノルボルネン系ポリマーは耐熱性と密着性とのバランスに優れる傾向にあるため、これをクラッド層12の構成材料として使用した場合には、光導波路に導体層等を形成する場合等に加熱してもクラッド層12が軟化して変形することが十分に防止される傾向にある。また、このようなノルボルネン系ポリマーは、高い疎水性を有するためクラッド層12の吸水による寸法変化等が生じ難くなる傾向にある。更に、このようなノルボルネン系ポリマーは、その原料であるノルボルネン系モノマーが比較的安価で入手が容易であることからも好ましい。
また、前記クラッド層形成用ワニスにおいてクラッド層用ポリマーに主としてノルボルネン系ポリマーを含有させることで、曲げ等の変形に対する耐性に優れ、繰り返し湾曲変形した場合でも、クラッド層12とコア層11との層間剥離が生じ難く、しかもクラッド層12の内部にマイクロクラックが発生することが十分に防止される傾向にある。また、コア層11にもノルボルネン系ポリマーを用いた場合には、クラッド層12とコア層11との密着性がより高度なものとなり、クラッド層12とコア層11との間における層間剥離をより十分に防止できる傾向にある。このようにノルボルネン系ポリマーを用いることによって、光導波路の光伝送性能を十分に維持しつつ耐久性に優れた光導波路を得ることが可能となる。
このようなノルボルネン系ポリマーとしては、例えば、(1)ノルボルネン型モノマーを付加(共)重合して得られるノルボルネン型モノマーの付加(共)重合体、(2)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との付加共重合体、(3)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、および必要に応じて他のモノマーとの付加共重合体のような付加重合体、(4)ノルボルネン型モノマーの開環(共)重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、(5)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との開環共重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、(6)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、または他のモノマーとの開環共重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加したポリマーのような開環重合体が挙げられる。これらの重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体等が挙げられる。また、このようなノルボルネン系ポリマーの中でも、耐熱性及び可撓性がより十分なものとなるという観点から、付加(共)重合体がより好ましい。
また、このようなノルボルネン系ポリマーは、その設計に応じて公知のノルボルネン系のモノマーからモノマーを適宜選択して用いて、開環メタセシス重合(ROMP)、ROMPと水素化反応との組み合わせ、ラジカル又はカチオンによる重合、カチオン性パラジウム重合開始剤を用いた重合、これ以外の重合開始剤(例えば、ニッケルや他の遷移金属の重合開始剤)を用いた重合等の公知の重合方法を採用して製造することができる。
また、このようなノルボルネン系ポリマーとしては、例えば、ブチルノルボルネンとメチルグリシジルエーテルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとメチルグリシジルエーテルノルボルネンとのコポリマー、デシルノルボルネンとメチルグリシジルエーテルノルボルネンとのコポリマー、ブチルノルボルネンブチルノルボルネンとアクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとアクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルとのコポリマー、デシルノルボルネンとアクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルとのコポリマー、ブチルノルボルネンとノルボルネニルエチルトリメトキシシランとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとノルボルネニルエチルトリメトキシシランとのコポリマー、デシルノルボルネンとノルボルネニルエチルトリメトキシシランとのコポリマー、ブチルノルボルネンとトリエトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとトリエトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、デシルノルボルネンとトリエトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、ブチルノルボルネンとトリメトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとトリメトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、デシルノルボルネンとトリメトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、ブチルノルボルネン、ヘキシルノルボルネンまたはデシルノルボルネンのいずれかと、アクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルと、ノルボルネニルエチルトリメトキシシラン、トリエトキシシリルノルボルネンまたはトリメトキシシリルノルボルネンのいずれかとのターポリマー、ブチルノルボルネン、ヘキシルノルボルネンまたはデシルノルボルネンのいずれかと、アクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルと、メチルグリシジルエーテルノルボルネンとのターポリマー、ブチルノルボルネン、ヘキシルノルボルネンまたはデシルノルボルネンのいずれかと、メチルグリシジルエーテルノルボルネン、ノルボルネニルエチルトリメトキシシラン、トリエトキシシリルノルボルネンまたはトリメトキシシリルノルボルネンのいずれかとのターポリマー、ブチルノルボルネンとジフェニルメチルノルボルネンメトキシシランとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとジフェニルメチルノルボルネンメトキシシランとのコポリマー、デシルノルボルネンとジフェニルメチルノルボルネンメトキシシランとのコポリマー、ブチルノルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー、デシルノルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー等が挙げられる。
更に、このようなノルボルネン系ポリマーとしては、重合性基を含有する側鎖を有するノルボルネンの繰り返し単位、アリール基を含有する側鎖を有するノルボンネンの繰り返し単位、及び、アルキル基を側鎖に有するノルボンネン(アルキルノルボルネン)の繰り返し単位のうちの少なくとも1種を含むものが好ましく、重合性基を含有する側鎖を有するノルボルネンの繰り返し単位を少なくとも1種含有するものがより好ましい。
このような重合性基を含有する側鎖を有するノルボルネンの繰り返し単位を含む場合には、クラッド層12中においてノルボルネン系ポリマー同士をその重合性基により直接または架橋剤を介して架橋させることや、コア層11に用いるポリマーの種類等によってはコア層11に用いるポリマーとノルボルネン系ポリマーとを架橋させること等が可能となり、クラッド層12自体の強度やクラッド層12とコア層11との密着性の更なる向上を図ることが可能となる。また、このような側鎖の重合性基としては、反応性の観点から、エポキシ基、(メタ)アクリル基、および、アルコキシシリル基のうちの少なくとも1種が好ましい。なお、前記ノルボルネン系ポリマーにおいては重合性基を側鎖に有するノルボルネンの繰り返し単位に関して、1種の繰り返し単位のみを含むものであってもよく、あるいは、それぞれ異なる重合成基を有する2種以上の繰り返し単位を含むものであってもよく、中でも、架橋密度をより向上させることができ、前記効果がより顕著となることから、それぞれ異なる重合性基を有する2種以上のノルボルネンの繰り返し単位を含むことが好ましい。
また、前記ノルボルネン系ポリマーがアリール基を含む側鎖を有するノルボンネンの繰り返し単位を含む場合には、アリール基は極めて高い疎水性を有するため、吸水によるクラッド層12の寸法変化等を防止できる傾向にある。また、アリール基は脂溶性(親油性)に優れるため、コア層11に用いられるポリマーとの親和性を向上させることができ、これによりクラッド層12とコア層11との間での層間剥離を防止することが可能となり、より耐久性に優れた光導波路を得ることが可能となる。
さらに、前記ノルボルネン系ポリマーがアルキルノルボルネンの繰り返し単位を含む場合には、600〜1550nm程度の波長領域(特に、850nm付近の波長領域)の光に対する透過率が優れる傾向にあるとともに、ノルボルネン系ポリマーの柔軟性が高くなってクラッド層12により高いフレキシビリティ(可撓性)を付与できる傾向にある。なお、このようなアルキルノルボルネンの繰り返し単位中の側鎖のアルキル基は、コア層用ポリマーにおいて説明したアルキルノルボルネン中のアルキル基と同様のものである。また、このようなアルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むことにより、比較的屈折率の高いアリール基を含む側鎖を有するノルボンネンの繰り返し単位を更に含む場合においてもクラッド層の屈折率の上昇を防止することが可能となる。
また、このようなノルボルネン系ポリマーの中でも、アルキル基を側鎖に有するノルボルネンの繰り返し単位(アルキルノルボルネンの繰り返し単位)と、重合性基を含有する側鎖を有するノルボルネンの繰り返し単位とを含有するものがより好ましく、中でも、アルキルノルボルネンの繰り返し単位とエポキシ基を含有する側鎖を有するノルボルネンの繰り返し単位と含有する下記一般式(2):
[式中、Rはアルキル基を表し、aは0〜3の整数を表し、bは1〜3の整数を表し、p及びqは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ20以下の整数を示す。]
で表される構造を有するノルボルネン系ポリマーがより好ましい。なお、式中、Rで表されるアルキル基は前記アルキルノルボルネンの繰り返し単位中の側鎖のアルキル基と同様のものである。
このような一般式(5)で表される繰り返し単位を有するノルボルネン系ポリマーの中でも、Rが炭素数4〜10のアルキル基であり、aおよびbがそれぞれ1である化合物(例えば、ブチルノルボルネンとメチルグリシジルエーテルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとメチルグリシジルエーテルノルボルネンとのコポリマー、デシルノルボルネンとメチルグリシジルエーテルノルボルネンとのコポリマー)がより好ましい。
また、クラッド層用ポリマーに主としてノルボルネン系ポリマーを用いる場合において、クラッド層用ポリマー中のノルボルネン系ポリマーの含有比率は80〜100質量%であることが好ましく、95〜100質量%であることがより好ましい。このような含有比率が前記下限未満では、ノルボルネン系ポリマーを用いることにより得られる効果が十分に得られなくなる傾向にある。
また、前記クラッド層形成用ワニスにおいては、前記酸中和剤及び前記クラッド層用ポリマーの他に、必要に応じて、酸発生剤、モノマー、プロカタリスト、増感剤、酸化防止剤を更に含有させてもよい。このような酸発生剤、モノマー、プロカタリスト、増感剤、酸化防止剤は、コア層形成用ワニスにおいて説明したものと同様である。また、前記クラッド層形成用ワニスには、形成させるクラッド層の効果を損なわない範囲で、クラッド層を形成させる際に用いることが可能な公知の他の添加剤(例えば、架橋剤、消泡剤、密着助剤等)を適宜含有させてもよい。
また、前記クラッド層形成用ワニスに前記酸発生剤を含有させる理由としてはいくつか考えられる。例としては、クラッド材の硬化触媒として酸を用いる目的やクラッド材から発生した酸によりコア層中のクラッド部の表面近傍から光が漏れる混線(クロストーク)を抑制する目的が挙げられる。後者の理由について少し詳しく説明する。すなわち、まれにコア層のクラッド部の表面近傍において低屈折率成分が蒸散等して屈折率が高くなってしまうと、クラッド部の表面近傍に光が漏れて混線(クロストーク)してしまい、光伝送性能が低下してしまう現象が生じる場合がある。これに対して、前記クラッド層形成用ワニス中に酸発生剤を含有させる場合には、コア層にクラッド層前駆体を積層した後に、そのクラッド層前駆体から酸を発生させて、コア層の表面近傍に存在する樹脂等に酸を作用させて反応させることが可能となり、コア層の表面近傍の屈折率を積層時よりも低下させることが可能となる。そのため、前記クラッド層形成用ワニス中に酸発生剤を含有させる場合には、クラッド部の表面近傍から光が漏れて混線(クロストーク)することを十分に抑制することが可能となる。
また、このようなクラッド層形成用ワニスの製造方法としては特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、前記酸発生剤の代わりに前記保護基を有する酸中和剤を必須成分として用い、コア層用ポリマーの代わりにクラッド層用ポリマーを用いる以外は前述のコア層形成用ワニスの製造方法と基本的に同様の方法を採用することができる。
このようなクラッド層形成用ワニス中の前記保護基を有する酸中和剤の含有量としては、コア層形成用ワニス中の酸発生剤の種類やその含有量にもよってもその好適な範囲が変わるものであり、一概には言えないが、クラッド層用ポリマー100質量部に対して0.01〜50質量部であることが好ましく、0.1〜20質量部であることが特に好ましい。このような保護基を有する酸中和剤の含有量が前記下限未満では、光導波路中に存在する酸を十分に中和することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、フィルム材料としての強靭性、耐熱性が低下する傾向にある。
また、前記クラッド層形成用ワニス中のクラッド層用ポリマーの含有比率としては特に制限されないが、5〜60質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。前記クラッド層用ポリマーの含有比率が前記下限未満では、粘度が低すぎるために所望の厚みのクラッド層を形成することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、粘度が高すぎて塗布時に泡を巻き込み易くなり製造効率が低下する傾向にある。
また、前記クラッド層形成用ワニス中に酸発生剤を含有させる場合には、酸発生剤の含有比率は、0.01〜10質量%とすることが好ましく、0.1〜5質量%とすることがより好ましい。このような酸発生剤の含有比率が前記下限未満では、酸発生剤を含有させることにより得られる効果が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、光導波路中の酸を前述の酸中和剤により完全に中和することが難しくなる傾向にある。
さらに、前記クラッド層形成用ワニスの粘度(常温)は特に制限されず、塗布法や所望の膜厚に応じて適宜調整することができる。このようなクラッド層形成用ワニスの粘度(常温)としては100〜10000cPであることが好ましく、150〜5000cPであることがより好ましく、200〜3500cPであることが更に好ましい。
また、このようなクラッド層形成用ワニスを用いてクラッド層前駆体を形成させる方法としては、例えば、コア層上にクラッド層形成用ワニスを塗布して、コア層上にクラッド層前駆体を形成する方法や、基材上にクラッド層形成用ワニスを用いてフィルム状のクラッド層前駆体を形成する方法等が挙げられる。なお、このような基材としては、コア層を形成する際に用いることができる基材と同様のものを用いることができる。
前記基材上にクラッド層形成用ワニスを塗布する方法としては、特に限定されず、例えば、ドクターブレード法、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法等の方法が挙げられる。
このようにしてクラッド層形成用ワニスを塗布することで、クラッド層前駆体を得ることができる。また、このようなクラッド層形成用ワニスを塗布することで形成される塗膜(クラッド層前駆体)の厚みとしては、光導波路の設計に応じて適宜変更できるものであり、特に限定されないが、乾燥前の状態で5〜200μm程度、好ましくは15〜125μm程度とすればよい。
また、クラッド層形成用ワニスを塗布した後に、少なくとも一部の溶媒を除去することが好ましい。このような溶媒を除去する工程(溶媒除去工程)としては、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、自然乾燥、加熱する方法、減圧下において放置する方法、不活性ガスを吹付ける(ブロー)方法、乾燥機を用いて溶媒を蒸発させる方法が挙げられる。また、このようにして得られたフィルム状のクラッド層前駆体は基材から剥離して用いてもよく、あるいは基材に積層させた状態で用いてもよい。
次いで、フィルム状のコア層とフィルム状のクラッド層前駆体との積層工程について説明する。このようなフィルム状の層の積層工程は特に制限されず、これらの層を積層させることが可能な公知の方法を適宜採用することができ、例えば、ラミネーターを用いてフィルム状のコア層の少なくとも一方の面にフィルム状のクラッド層前駆体を積層する方法を採用してもよい。
次に、前述のようにして得られる積層体を加熱して、上記本発明の光導波路を製造する工程について説明する。
このような積層体の加熱工程における条件は、積層体中に含まれる保護基を有する酸中和剤の種類や量、積層体中に含まれる酸の種類や量等によっても異なるものであり、一概に言えるものではなく、特に制限されないが、保護基を有する酸中和剤から保護基を脱離させて酸を中和するための成分を生成し、前記積層体中に存在する酸(前記酸発生剤に由来して発生する酸)を中和することを可能とする条件を採用することが好ましく、60〜280℃(より好ましくは100〜200℃)の温度条件で0.1〜10時間程度加熱することがより好ましい。このような加熱工程の温度及び時間が前記下限未満では中和が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、光導波路の性能が低下する傾向にある。すなわち、このような加熱工程により、保護基を有する酸中和剤から保護基を脱離させて酸を中和するための成分を生成することが可能となり、これにより積層体中に存在する酸(前記酸発生剤に由来して発生する酸)を捕捉し、中和することが可能となるため、酸に起因して光導波路が劣化することを十分に抑制することが可能となる。また、このようにして加熱することで、クラッド層中のポリマーやモノマー等を最終的に反応させることも可能となる。
また、このような積層体の加熱工程に際しては、予めクラッド層前駆体中のポリマーを硬化させるために低温での加熱する前処理加熱工程(低温キュア工程)を実施することが好ましい。このような前処理加熱工程における加熱条件としては、クラッド層前駆体中のポリマーやモノマー等を反応させて第2樹脂とすることが可能な条件であればよく、特に制限されないが、10〜60℃(より好ましくは20〜40℃)の温度条件で0.1〜10時間程度加熱することが好ましい。このような前処理加熱の温度及び時間が前記下限未満では硬化が不十分になる傾向にあり、他方、前記上限を超えると酸中和剤の働きでやはり硬化が不十分になる傾向にある。なお、このような低温キュア工程は、前記積層体を製造するために用いるフィルム状のクラッド層前駆体に予め実施してもよい。また、例えば、クラッド層前駆体中に熱酸発生剤を含有する場合には、このような低温キュア工程によって酸を発生させてクラッド層前駆体中のポリマーを硬化させることも可能となる。
また、前記クラッド層前駆体が酸発生剤を含有している場合には、前記前処理工程(低温キュア工程)及び前記加熱工程を施す前に、クラッド層前駆体に対して活性エネルギー線を照射することが好ましい。このように活性エネルギー線を照射することにより、クラッド層前駆体中に酸発生剤が含有されている場合には酸を発生させることが可能となり、これによりコア層とクラッド層とが接触している部位の近傍に存在するコア層中のコア層形成用ポリマーと、前記酸とを反応させることや、クラッド層中の樹脂どうしを反応させること等が可能となる。なお、このような活性エネルギー線としては、上述のコア層の形成工程において説明したものと同様のものを利用できる。
このように、前記積層体中の前記クラッド層前駆体が酸発生剤を含有する場合においては、前記積層体を加熱する前に、前記積層体中のクラッド層に対して活性エネルギー線を照射する工程及び/又は前記前処理工程(低温キュア工程)を実施することが好ましい。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
〈コア層用ポリマーの製造工程〉
先ず、コア層用ポリマーを製造した。すなわち、先ず、ヘキシルノルボルネン(HxNB)(8.94g、0.05mol)、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン (diphNB)(16.1g、0.05mol)、1−ヘキセン(4.2g、0.05mol)及びトルエン(142.0g)を、250mLのシーラムボトルで混合し、オイルバスで120℃に加熱して溶液を形成した。次に、前記溶液に、[Pd(PCy3)2(O2CCH3)(NCCH3)]テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(Pd1446)(5.8×10−3g、4.0×10−6mol)及びN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA)(3.2×10−3g、4.0×10−6mol)を、それぞれ濃縮ジクロロメタン溶液(1.0mL)の形態で添加して混合液を得た。次いで、前記混合液を120℃で6時間維持した後、勢いよく攪拌しながらメタノールを滴下して沈殿物を得た。その後、このようにして得られた沈殿物(共重合体)を濾過により集め、80℃のオーブン内で真空乾燥させ、乾燥質量12.0g(収率48%)の生成物(共重合体:コア層用ポリマー)を得た。
このような生成物(共重合体)の分子量をTHF溶媒中でGPCにより測定(ポリスチレン換算) したところ、Mwは16196であり、Mnは8448であった。また、このような生成物(共重合体)の組成を1H−NMRで測定したところ、54/46のHxNB/diPhNB系コポリマーであった。更に、このようなコポリマーの屈折率をプリズムカップリング法で測定したところ、波長633nmで、TEモードで1.5569であり、TMモードで1.5555であった。
〈コア層形成用ワニスの製造工程〉
先ず、上述のようにして得られた生成物(コア層用ポリマー)をメシチレンに溶解して30wt%の樹脂溶液を調製した。次に、前記樹脂溶液(10.0g)に、ビス−ノルボルネンメトキシジメチルシラン(SiX、CAS番号:第376609−87−9)(0.72g、0.00245mol)と、Pd(PCy3)2(OAc)2(Pd785)(4.94×10−4g、6.29×10−7mol、メチレンクロライド0.1mL中)と、RHODORSIL(登録商標)PHOTOINITIATOR 2074(CAS番号:第178233−72−2、ニュージャージー州クランベリーのRhodia Inc社から入手)(2.55×10−3g、2.516×10−6mol、メチレンクロライド0.1mL中)とを加えて均一に混合し、0.2ミクロンの細孔のフィルターでろ過し、コア層形成用ワニスを得た。
〈コア層形成工程〉
上記コア層形成用ワニスを、ドクターブレードによって離型処理PETフィルム上に均一に塗布して塗膜を形成した(乾燥前の厚み:150μm)。次に、前記塗膜をPETフィルムと共に乾燥機に入れて45℃の乾燥機に15分間投入して溶媒(メシチレン)を完全に除去した後、所定の開口パターンを有するフォトマスクを圧着し、前記塗膜に対して選択的に紫外線を照射した(照射量500mJ/cm2)。次に、圧着したマスクを取り去り、紫外線照射後の前記塗膜をPETフィルムと共に乾燥機に入れ、45℃で30分間加熱後に85℃で30分間加熱し、更に150℃で1時間加熱し、コア層を形成した。なお、このような加熱後においては、非常に鮮明な導波路パターンが形成されていることが確認された。次いで、得られたフィルム状のコア層を離型処理PETフィルムから剥離することにより、コア層を得た。
〈クラッド層形成用ワニスの製造〉
クラッド層用ポリマーとしての環状オレフィン系樹脂を含むノルボルネン系樹脂組成物(プロメラス社製の商品名「Avatrel2590」の20重量%2−ヘプタノン溶液、10g)に、保護基を有する酸中和剤としてのダイアセトンアクリルアミド(0.005g)と、光酸発生剤(東洋インキ製造社製、商品名「TAG−382」)(0.02g)を添加して均一に混合して、クラッド層形成用ワニスを得た。
〈クラッド層前駆体の形成工程〉
前記クラッド層形成用ワニスを100μmの厚みのPETフィルム上に均一に塗布してドクターブレードで均一に塗布して塗膜を形成した(乾燥前の厚み:50μm)。次に、前記塗膜を45℃の乾燥機に15分間投入して溶媒(2−ヘプタノン)を完全に除去して厚み20μmの乾燥塗膜を得た。このようにしてPETフィルム上にクラッド層前駆体を形成した。なお、このようなPETフィルム上にクラッド層前駆体が積層されたPET積層物は2枚準備した。
〈光導波路の製造〉
前述のようにして得られたコア層の両面に、クラッド層前駆体側の面が接触するようにして前記PET積層物を積層し、120℃に設定されたラミネータに投入して、PET/クラッド層前駆体/コア層/クラッド層前駆体/PETの順に積層した積層体を得た。次に、得られた積層体の両面に、波長365nm以下の紫外光を照射した(照射量500mJ/cm2)。次いで、前記積層体を45℃で0.5時間加熱した後、150℃で0.5時間加熱して、PET/クラッド層/コア層/クラッド層/PETの順に積層された光導波路を得た。このようにして積層された薄膜の状態を示す写真を図4に示す。図4に示す結果からも明らかなように、各コア層にそれぞれマスクパターンに応じたクラッド部及びコア部が形成されていることが分かる。なお、このような光導波路においては、熱分解GC−MSにより、クラッド層中にダイアセトンアクリルアミドに由来する成分が確認できる。
(実施例2)
クラッド層形成用ワニスの製造の際に、ダイアセトンアクリルアミドの代わりにアセトアニリドを0.01g用いた以外は、実施例1と同様にして、PET/クラッド層/コア層/クラッド層/PETの順に積層された光導波路を得た。このようにして積層された薄膜の状態を示す写真を図5に示す。図5に示す結果からも明らかなように、各コア層にそれぞれマスクパターンに応じたクラッド部及びコア部が形成されていることが分かる。なお、このような光導波路においては、熱分解GC−MSにより、クラッド層中にアセトアニリドに由来する成分が確認できる。
(実施例3)
クラッド層形成用ワニスの製造の際に、ダイアセトンアクリルアミドの代わりにTEPIC(トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート)を0.02g用いた以外は、実施例1と同様にして、PET/クラッド層/コア層/クラッド層/PETの順に積層された光導波路を得た。このようにして積層された薄膜の状態を示す写真を図6に示す。図6に示す結果からも明らかなように、各コア層にそれぞれマスクパターンに応じたクラッド部及びコア部が形成されていることが分かる。なお、このような光導波路においては、熱分解GC−MSにより、クラッド層中にTEPICに由来する成分が確認できる。
(比較例1)
クラッド層形成用ワニスとして環状オレフィン系樹脂を含むノルボルネン系樹脂組成物(プロメラス社製 Avatrel2590の20重量%2−ヘプタノン溶液、10g)をそのまま用い、クラッド層前駆体の形成工程においてPETフィルムの代わりにポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製、Upilex)を用い、クラッド層前駆体の形成工程において前記塗膜を45℃の乾燥機に15分間投入した後に更に乾燥機中で160℃で2時間加熱し、光導波路の製造工程において、ラミネータに投入して積層体を得た後に160℃、2時間の条件の熱処理のみを施した以外は、実施例1と同様にして、ポリイミド層/クラッド層/コア層/クラッド層/ポリイミド層の順に積層された光導波路を得た。
[実施例1〜3及び比較例1で得られた光導波路の特性の評価]
(光伝搬損失の評価)
波長850nmの光を用いて、実施例1〜3及び比較例1で得られた各光導波路の光伝搬損失(dB/cm)をカットバック法(カットバック長:7cm)にて測定した。なお、このような光伝搬損失の測定は、高温高湿処理前(初期)の各光導波路と、高温高湿処理後の各光導波路に対してそれぞれ行った。また、このような高温高湿処理としては、各光導波路を85℃/85%RHの恒温恒湿槽に投入して1000時間加熱する処理を行った。結果を表1に示す。
表1に示す結果からも明らかなように、実施例1〜3で得られた光導波路においては、高温高湿処理前後で光伝搬損失はほとんど変化していない(最大でも0.01dB/cmの変化しかない)ことが確認され、十分に高度な高温耐久性を有することが確認された。一方、比較例1で得られた光導波路においては、高温高湿処理前後で光伝搬損失が0.12dB/cmも変化しており、高温耐久性が低いことが分かった。また、実施例1〜3で得られた光導波路においては、高温高湿処理前後で外観がほとんど変化しなかったが、比較例1で得られた光導波路においては、高温高湿処理後に外観が僅かに黄色く着色し、パターンが若干不鮮明になっていた。このような結果から、本発明の光導波路(実施例1〜3)においては、高温耐久性が十分に高く、高温高湿処理(加速試験)後においても十分に高度な光伝送性能を有していることから、長期に亘って十分に高度な光伝送性能を発揮することができることが確認された。なお、上述のように、比較例1で得られた光導波路の高温耐久性が低い理由としては、光導波路中に酸が残存しており、その酸によって劣化が進行してしまったためであると本発明者らは推察する。