すなわち、この場合、トナー像形成の必要の有無に関わらず感光体108は回転駆動されるため、磨耗(感光体膜削れ)等により、感光体108の寿命が損なわれてしまう。また感光体108の回転駆動に連動して現像器111が駆動する場合、現像器111内のトナーが空転により磨耗劣化することで、現像器111の品質が低下してしまうという課題が生じる。かといって、前記の構成から搬送ベルト201を取り外し、かつ単色印刷時に用紙への転写の際にトナー像を形成する必要のない感光体(108a〜108dのいずれか、または複数個)を単純に転写ローラ101から離間させる場合、用紙(特に小サイズ紙)の搬送力は転写ローラ101のみから得られる状況となり、グリップ力不足により用紙不送り・スキューといった課題が生じる。
そこでこの発明は、前記従来の装置がもつ問題点を解決し、搬送ベルト(搬送部材)を搭載しない転写装置においても、不要な感光体(像担持体)を回転させることなく用紙(転写材)を搬送することができ、像担持体の長寿命化、トナーの経時劣化の抑制、転写材の非印字部へのトナーの転写(カブリ)の低減が可能な転写装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、像担持体と、前記像担持体に当接して相対配置される転写部材と、前記像担持体よりも転写材搬送方向上流で、前記転写部材及び前記像担持体に対して離間して配置される搬送部材とを有する転写装置であって、前記転写部材が、前記像担持体に当接しているポジションから、前記像担持体から離間して前記搬送部材に当接するポジションに移動可能、または前記像担持体が、前記転写部材に当接しているポジションから、前記転写部材から離間したポジションに移動し、かつ前記搬送部材が転写部材及び前記像担持体に対して離間したポジションから前記転写部材に当接するポジションに移動可能、に構成され、前記像担持体と前記転写部材とが離間している際には、前記搬送部材と前記転写部材とが当接しているポジションとなり、その当接ニップによって転写材を搬送することを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1において、搬送部材の鉛直方向上端は、像担持体及び転写部材のニップ中心点での前記像担持体の接線よりも上方に、かつ前記搬送部材の鉛直方向下端は、前記接線よりも下方に配置されることを特徴とする。請求項3に記載の発明は、請求項1又は2において、搬送部材は、回転駆動源を有することを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかにおいて、搬送部材は、転写部材及び像担持体と離間するポジションである場合には回転し、前記転写部材に当接する場合には逆回転することを特徴とする。請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかにおいて、搬送部材は、転写部材及び像担持体と離間するポジションである場合と転写部材に当接する場合とで回転速度が可変であることを特徴とする。請求項6に記載の発明は、請求項5において、搬送部材は、転写部材及び像担持体と離間するポジションである場合の方が、転写部材に当接する場合よりも回転速度が速いことを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかにおいて、搬送部材は、転写部材及び像担持体と離間するポジションにおいて、像担持体と転写部材のニップ上流の前記像担持体側に転写材を案内する転写材搬送ガイドを兼ねることを特徴とする。請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれかにおいて、搬送部材は、転写材を除電する機能を有していることを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、請求項1ないし8のいずれかにおいて、ジャム時、転写部材が像担持体から離間して搬送部材に当接するポジションに移動するか、又は像担持体が転写部材及び像担持体に対して離間したポジションに移動することを特徴とする。請求項10に記載の発明は、請求項1ないし8のいずれかにおいて、ジャム時、転写部材が像担持体に当接しているポジションからいずれの部材とも当接しないポジションに移動するか、又は搬送部材が転写部材及び像担持体に対して離間したポジションから転写部材に当接するポジションに移動しないことを特徴とする。請求項11に記載の発明は、請求項1ないし10のいずれかにおいて、像担持体が転写部材と当接しているポジション時の像担持体への転写部材の押し付け圧と、搬送部材が転写部材と当接しているポジション時の搬送部材への転写部材の押し付け圧が異なることを特徴とする。
請求項12に記載の発明は、請求項1ないし11のいずれかの転写装置を具えた画像形成装置であることを特徴とする。請求項13に記載の発明は、複数の転写装置が転写材搬送方向に設置されたタンデム型の画像形成装置において、転写材搬送方向最下流の転写装置以外の複数の転写装置の少なくとも1つが請求項1ないし11のいずれかに記載の転写装置であることを特徴とする。請求項14に記載の発明は、請求項13において、転写材搬送方向最下流の転写装置以外の複数の転写装置がカラー用の転写装置であり、転写材搬送方向最下流の転写装置がモノクロ用の転写装置であることを特徴とする。
請求項15に記載の発明は、請求項13又は14において、ポジションの移動は、複数の転写装置において少なくとも1つの転写装置は、他の転写装置のポジション移動に制限されることなく、独立に移動できることを特徴とする。請求項16に記載の発明は、請求項14において、ポジションの移動は、カラー用の転写装置にあってはそれぞれ同時に連動して移動できることを特徴とする。
請求項17に記載の発明は、請求項13ないし16のいずれかにおいて、少なくともポジション移動を行う複数の転写装置中の、最上流の転写装置の搬送部材の転写材搬送方向上流には、用紙搬送経路を変更することのできる機構を有することを特徴とする。請求項18に記載の発明は、請求項13ないし17のいずれかにおいて、少なくとも1つ以上の転写装置の搬送部材の転写材搬送方向上流に、2つ以上の転写材搬送ガイドがあり、少なくとも前記転写材搬送ガイドの1つはそれ以外の前記転写材搬送ガイドと高さ方向に異なる転写材搬送経路に対して転写材を搬送することを特徴とする。請求項19に記載の発明は、請求項13ないし18のいずれかにおいて、転写部材又は、像担持体及び搬送部材のポジション移動に、転写部材又は、像担持体及び搬送部材を支持する支持部材と、この支持部材を加圧する機構と、この加圧機構に抗して前記支持部材を揺動させるカム機構を用いていることを特徴とする。
この発明は、前記のようであって、請求項1に記載の発明によれば、転写部材が、像担持体に当接しているポジションから、像担持体から離間して搬送部材に当接するポジションに移動可能、または像担持体が、転写部材に当接しているポジションから、転写部材から離間したポジションに移動し、かつ搬送部材が転写部材及び前記像担持体に対して離間したポジションから転写部材に当接するポジションに移動可能、に構成され、前記像担持体と前記転写部材とが離間している際には、前記搬送部材と前記転写部材とが当接しているポジションとなり、その当接ニップによって転写材を搬送するので、モノクロ印刷時や任意の数の色重ね(2色印刷や3色印刷)カラー印刷時に、必要な色の像担持体にだけ転写材を接触させ、その他の像担持体を回転させないことにより、像担持体の長寿命化、トナーの経時劣化の抑制、用紙の非印字部へのトナーの転写(カブリ)の低減が可能になる。また、転写部材が汚れた際に、像担持体と離間して、搬送部材と転写部材が接触して回転して転写材を搬送することで、像担持体を回転させずに、転写部材をクリーニングすることができる。
請求項2に記載の発明によれば、カラー印刷時に転写材を像担持体側から接触させて通紙することで転写ニップ前の像担持体−転写材間の放電を防ぐことができ、転写性を確保することができるとともに、安定した搬送性を実現することができる。また、モノクロモードや任意の数の色重ね(2色印刷や3色印刷)カラー印刷時の転写部材及び像担持体が搬送部材と当接する構成が容易である。
請求項3に記載の発明によれば、搬送部材が駆動することで、カラーモード時に搬送部材が転写材搬送のブレーキとならずに安定して転写材の搬送を行うことができる。請求項4に記載の発明によれば、逆回転することで、カラーモード時などの像担持体もしくは転写部材と離間している時は、転写部へ転写材を搬送する機能を有し、転写部材と当接している場合は対となる該部材とで転写材を搬送することができる。
請求項5に記載の発明によれば、モノクロモードなど画像を書かない転写装置での転写材搬送速度を変えることで、各印刷モードにおける最良の生産性を確保することができる。請求項6に記載の発明によれば、モノクロモードなど画像を書かない転写装置での転写材搬送速度を速くすることで、生産性を向上することができる。
請求項7に記載の発明によれば、カラーモード時に搬送部材が像担持体への転写材の突入を制御する転写材搬送ガイドを兼ねることで転写ニップ前の像担持体−転写材間の放電を防ぐことができ、転写性を確保することができるとともに安定した転写材搬送を実現することができる。請求項8に記載の発明によれば、転写材は転写部を通過することで帯電していくため、帯電した転写材を搬送部材で除電することで、最上流から最下流まで安定した転写性を確保することができる。
請求項9に記載の発明によれば、ジャム処理時に、像担持体と転写部材が離間することで転写部材がトナーで汚れるのを防止することができ、その後の転写部材のクリーニングシーケンスをできる限り短くすることができる。請求項10に記載の発明によれば、ジャム処理時に、像担持体と転写部材が離間することで転写部材がトナーで汚れるのを防止することができ、かつ転写部材と搬送部材もまた離間するため、搬送部材が汚れるのを防止することができ、その後の転写部材のクリーニングシーケンスをできる限り短くすることができる。
請求項11に記載の発明によれば、転写部材の像担持体への押し付け圧と搬送部材への押し付け圧を変えることにより、転写時に転写不良の起こらない最適な転写圧と、搬送部材による搬送時に搬送不良の起こらない最適な圧を別々に設定することができる。請求項12に記載の発明によれば、前記のような転写装置を具えた画像形成装置を提供することができる。
請求項13に記載の発明によれば、転写材搬送方向最下流の転写装置以外の複数の転写装置の少なくとも1つが前記のような転写装置であるので、その転写装置を有効利用できる画像形成装置を提供することができる。請求項14に記載の発明によれば、モノクロモード時に搬送部材を汚すことなく用紙を搬送することができる。
請求項15に記載の発明によれば、各転写装置の転写部材または像担持体と搬送部材のポジション移動を各色独立に行えることにより、2色印刷時や3色印刷時に通したい色の像担持体のみに通紙することができる。請求項16に記載の発明によれば、カラー転写装置の転写部材または像担持体と搬送部材のポジション移動をカラー全色同時に連動させることで、モノクロモードとカラーモードの切り替え制御や切り替え機構を単純化することができる。
請求項17に記載の発明によれば、紙パスを変更する機構を有することで、像担持体と転写部材が接触しているときには搬送部材の上部を通るように、転写部材と搬送部材が接触しているときには搬送部材の下部を通るようにでき、ポジションによる最適な紙送りができる。請求項18に記載の発明によれば、各転写装置間に上流側の像担持体と転写部材のニップから次の像担持体と転写部材のニップにつなぐ転写材搬送ガイドと、上流側の転写部材と搬送部材のニップから次の転写部材と搬送部材のニップにつなぐ転写材搬送ガイドの2種類(以上)を有することで、搬送ガイドの切り替えなど無しに、カラー印刷時は常に像担持体と転写部材のニップをつなぐ搬送ガイドで搬送し、モノクロ印刷時は転写部材と搬送部材のニップをつなぐ搬送ガイドで搬送することができる。請求項19に記載の発明によれば、ポジションの切り替えを簡便化することができるとともに、安価に所望の構成を形成することができる。
以下、図面を参照しながら、この発明の一実施の形態に係る画像形成装置について、説明する。
図1は画像形成装置の概略断面図である。この画像形成装置は、一般的なタンデム型のカラー画像形成装置であり、その基本的な構成は、図13に示した従来の装置の構成と共通する部分が多い。すなわち、この画像形成装置の構成を概説すると、画像形成装置本体100を具え、該画像形成装置本体内にはカラー3色(例えば、イエロー、マゼンタ、シアン)とブラックの各プロセスカートリッジ102a〜102dが着脱自在に装着されている。また、画像形成装置本体100内には、露光装置103、転写ローラ101a〜101d(特に必要がなければ、以下では単に「転写ローラ101」と言う)、給紙トレイ104、定着装置106などが配設されている。なお、転写ローラ101は、感光体108及び搬送ローラ109と転写装置を構成し、この実施の形態では転写装置が複数(4個)、配設された構成となっている。そして、複数の転写装置は、転写材搬送方向上流から順にカラー3色用の転写装置が並べられ、最下流がモノクロ用の転写装置となっている。
プロセスカートリッジ102a〜102dは、画像形成装置本体100の所定の位置にセットされている。108a〜108dはトナー像を担持する像担持体である円筒形の感光体ドラムであり(特に必要がなければ、以下では単に「感光体108」と言う)、線速50〜200mm/sで回転している。感光体108の表面には帯電手段であるローラ形状の帯電器110が圧接され、感光体108の回転により従動回転しており、図示しない高圧電源によりDCあるいはDCにACが重畳されたバイアスが印加されることで感光体108は一様にほぼ均一な表面電位に帯電されている。
帯電に続いて、感光体108の表面には潜像形成手段である露光装置103により画像情報が露光され、静電潜像が形成される。この露光工程はレーザーダイオードを用いたレーザービームスキャナやLEDなどで行われる。111は現像手段である1成分接触現像器であり、図示しない高圧電源から供給される所定の現像バイアスによって、前記感光体108の静電潜像をトナー像として顕像化する。現像器111には初期的に1成分トナーが収納される。
プロセスカートリッジ102a〜102dは、並列に4個配設され、フルカラー画像形成時はイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの順で可視像を形成し、各色の可視像が、感光体108に対向配置される転写ローラ101に図示しない単独の高圧電源から供給される所定の転写バイアス(例えば+400〜+1000V)を印加させることで、転写電界を形成し、感光体108上のトナー像を転写材である用紙に順次転移させることで、フルカラー画像が形成される。また、転写後に感光体108上に残留した転写残トナーは、図示しないクリーニング手段によって回収され破棄される。なお、感光体108上にクリーニング手段を設けず、現像手段で転写残トナーを回収するクリーナレス方式もあり、種々の公知のクリーニング手段を採用できる。
転写ローラ101は、導電スポンジローラ、導電ソリッドローラが使用可能であり、導電スポンジローラの場合、SUS等の金属製芯金上に、導電性材料によって104〜1013Ωの抵抗値に調整された弾性体を被覆することで構成されている。その材料としては、イオン導電性ローラ(ウレタン+カーボン分散、NBR、ヒドリンゴム)や電子導電タイプのローラ(EPDM)等が用いられ、一般的にはアスカーC硬度35°〜60°である。また、転写ローラ101は、図示しない駆動モータにより回転駆動されるようになっており、転写材である用紙を搬送する搬送ローラも兼ねている。
転写材である用紙は、給紙トレイ104に保持されており、給紙ローラ105によって、レジストローラ対107まで搬送され、感光体108上のトナー像先端部が転写部に到達するタイミングに合わせて給紙され、転写部に入っていく。用紙上のトナー像は、各転写装置間の感光体108の搬送ガイド130に沿って搬送され、定着装置106によって熱と圧力により用紙に定着されたあと排紙される。ここで、搬送ガイド130は、例えばSUS板のような導電性材料で形成され、所定の電気抵抗を介して接地される等、所定の電位に制御されている。これは、搬送ガイド130と用紙が擦れることにより搬送ガイド130に電荷が溜まることを防止する効果や、感光体108から転写されたトナー像は、主に静電気的な力で用紙に保持されているため、トナー像の転写された用紙が搬送ガイド130上を通過する時に、この静電気力に悪影響を及ぼさないようにするためである。
各転写装置における、転写ローラ101の用紙搬送方向上流には、搬送ローラ109a〜109d(特に必要がなければ、以下では単に「搬送ローラ109」と言う)が配置され、転写ローラ101が感光体108もしくは搬送ローラ109に当接してニップを形成するように2通りに切り替えることができるようになっている。このモード切り替え構成により、転写材への転写の際にトナー像を形成する必要のない感光体(108a〜108dのいずれか、または複数個)を回転させることなく、ローラ対の当接ニップによって転写材を安定して搬送することができるようにしている。
前記のような画像形成装置に具えられている転写装置の主要構成部材としての感光体108と転写ローラ101と搬送ローラ109の各ポジションは図2に示すようになっている。すなわち、ポジションの移動には転写ローラ101が移動する場合と、感光体108と搬送ローラ109が移動する場合があり、前者の場合は、同図(A)に示すように転写ローラ101が、感光体108に当接している第2のポジションから、感光体108から離間して搬送ローラ109に当接する第3のポジションに移動し(このとき搬送ローラ109は第1のポジションのままである)、後者の場合は、同図(B)に示すように感光体108が、転写ローラ101に当接している第4のポジションから、転写ローラ101から離間した第5のポジションに移動し、かつ搬送ローラ109が第1のポジションから転写ローラ101に当接する第6のポジションに移動する(このとき転写ローラに101は第2のポジションのままである)。
図3は、カラー用の転写装置における、転写ローラのポジション移動機構を示す。図3では、第4のポジションにある感光体108a〜108dと、第2のポジションにある転写ローラ101a〜101dと、第1のポジションにある搬送ローラ109a〜109cが示されており、感光体108a〜108dと転写ローラ101a〜101dがそれぞれ当接し、感光体108a〜108c及び転写ローラ101a〜101cと離間した位置に搬送ローラ109a〜109cが配置されている。前記において、転写ローラ101a〜101cは、支持部材であるアーム152a〜152cによってその一端部に回動可能に支持されている。アーム152a〜152cは、中間部が装置本体100に軸153a〜153cで支持されているとともに、他端部が回転可能な偏心カム154a〜154c及び加圧バネ155a〜155cで支持されている。すなわち、アーム152a〜152cはその他端部の一側面が加圧バネ155a〜155cにより加圧され、他側面が偏心カム154a〜154cにより加圧バネ155a〜155cの付勢力に抗して押圧可能な構成とされ、これにより、アーム152a〜152cはその位置が規制される。したがって、偏心カム154a〜154cを図示しない駆動源により図中矢印で示す一方向に回転させると、アーム152a〜152cの他端部が加圧バネ155a〜155cの付勢力に抗して押圧され、これにより、アーム152a〜152cが軸153a〜153cを中心に揺動され、転写ローラ101a〜101cが実線のポジションから101’a〜101’cで示す点線のポジションへに移動する。モノクロ用の転写装置には前記のような転写ローラのポジション移動機構が設けられておらず、転写ローラ101dは感光体108dと当接したままである。
この実施の形態では、前記のように最下流の転写装置をモノクロ用とし、上流側の転写装置をカラー3色(マゼンタ、シアン、イエロー)用とした。用紙は図の左から右へ搬送される。そして、モノクロモード時や2色印刷時に転写ローラ101が第2のポジションから101'で示す第3のポジションに移動し、搬送ローラ109と当接する。また、ジャム時にも転写ローラ101が101'で示す第3のポジションに移動する。
図4は、カラー用の転写装置における、感光体108と搬送ローラ109のポジション移動の概要を示す。この実施の形態では、転写ローラ101は移動せずに、モノクロモード時や任意の数の色重ね印刷(2色印刷や3色印刷)時に感光体108が第4のポジションから108'で示す第5のポジションに移動して転写ローラ101と離間し、かつ搬送ローラ109が第1のポジションから109'で示す第6のポジションに移動することで転写ローラ101と当接する。
図5は、前記の感光体108と搬送ローラ109のポジション移動機構を示す。図5(A)は、感光体108のポジション移動機構を示し、図面では同じ構成のカラー用の転写装置のうち最上流側の1つを例示している。感光体108aは、軸161aが支持部材であるスライダ162aによって移動可能に支持されている。スライダ162aは一端部が加圧バネ163aに、他端部が回転可能な偏心カム164aに、それぞれ支持されて水平方向に移動可能になっている。すなわち、スライダ162aは上面に感光体108aの軸161aが移動するための水平面166aと傾斜面167aと水平面168aとを連接して有し、水平面166a側の一端部が加圧バネ163aにより右方向に加圧され、他端部が偏心カム164aにより加圧バネ163aの付勢力に抗して押圧可能な構成とされ、これにより、スライダ162aはその位置が規制される。169aは感光体108aの軸161aの移動用のガイドであり、装置本体100に取り付けられている。したがって、偏心カム164aを図示しない駆動源により図中矢印で示す一方向に回転させると、スライダ162aの他端部が加圧バネ163aの付勢力に抗して押圧され、これにより、スライダ162aが左方向に移動されて、感光体108aの軸161aが水平面166aを経て傾斜面167aに沿って矢印で示すように持ち上げられ水平面168aに至り、これにより、感光体108aが実線のポジションから108a’で示す点線のポジションへに移動する。
図5(B)は、搬送ローラ109のポジション移動機構を示し、この場合も感光体108のポジション移動機構と同様な機構となっている。搬送ローラ109aは、軸171aが支持部材であるスライダ172aによって移動可能に支持されている。スライダ172aは一端部が加圧バネ173aに、他端部が回転可能な偏心カム174aに、それぞれ支持されて水平方向に移動可能になっている。すなわち、スライダ172aは上面に搬送ローラ109aの軸171aが移動するための水平面176aと傾斜面177aと水平面178aとを連接して有し、水平面176a側の一端部が加圧バネ173aにより右方向に加圧され、他端部が偏心カム174aにより加圧バネ173aの付勢力に抗して押圧可能な構成とされ、これにより、スライダ172aはその位置が規制される。179aは搬送ローラ109aの軸171aの移動用のガイドであり、装置本体100に取り付けられている。したがって、偏心カム174aを図示しない駆動源により図中矢印で示す一方向に回転させると、スライダ172aの他端部が加圧バネ173aの付勢力に抗して押圧され、これにより、スライダ172aが左方向に移動されて、搬送ローラ109aの軸171aが水平面176aを経て傾斜面177aに沿って矢印で示すように持ち上げられ水平面178aに至り、これにより、搬送ローラ109aが実線のポジションから109a’で示す点線のポジションへに移動する。
図5(A)及び図5(B)ではカラー用の転写装置のうちの1つである、感光体108aと搬送ローラ109aのポジション移動機構について説明したが、感光体108b,108cと搬送ローラ109b,109cのポジション移動機構も同様な機構となっている。また、前記説明では感光体108のポジション移動機構と搬送ローラ109のポジション移動機構を別々としたが、連動して同時に移動するような機構にしてもよい。
図3及び図4,5のような構成とすることで、モノクロモード時や任意の数の色重ね印刷(2色印刷や3色印刷)時に、必要な色の感光体108にだけ用紙を接触させ、その他の感光体108を回転させない(感光体を接触させない)ことにより、感光体108の長寿命化、トナーの経時劣化の防止、用紙へのカブリの低減が可能になる。また、転写ローラ101がジャム等で汚れた際に、感光体108と離間して、搬送ローラ109と転写ローラ101が接触して回転して用紙を搬送することで感光体108を回転させずに、転写ローラ101をクリーニングすることができる。
また、図3の場合では転写ローラ101を移動することで少ない機構で切り替えを行うことができるとともに、切り替え時の位置精度を確保することが容易である。図4,5の場合では、感光体108と搬送ローラ109を移動することで、用紙搬送パスを変更することなく構成することができるため、搬送パスを切り替えるための切り替え部材等が必要ない。
また、図3,4,5は最下流の転写装置をモノクロ用としており、これによって、モノクロモード時に搬送ローラ109を汚すことなく用紙を搬送することができる。さらには、ジャム時に感光体108と転写ローラ101が離間することで転写ローラ101がトナーで汚れるのを防止することができ、その後の転写ローラ101のクリーニングシーケンスをできる限り短くすることができる。
図6において、搬送ローラ109は、感光体108と転写ローラ101とで形成するニップ中心点における感光体108の接線180に対して、搬送ローラ109の上端が上方に1mm出るように配置している。これによって、用紙が搬送ローラ109に沿って転写部に搬送され、用紙先端が感光体108側から突入することが可能になる。このように配置することで、カラーモード時に用紙を感光体108側から接触させて通紙することができ、転写ニップ前の感光体−用紙間の放電を防ぐことができ、転写性を確保することができるとともに安定した紙搬送を実現することができる。また、モノクロモード時や任意の数の色重ね印刷(2色印刷や3色印刷)時の転写ローラ101及び感光体108が搬送ローラ109と当接する構成に容易に切り替えることができる。また、搬送ローラ109は、装置本体のグランドに接続され同電位に保持されている。これは、用紙が各転写装置を通過することで帯電されるため、これを搬送ローラ109を通して除電することができるとともに、用紙が擦れることにより搬送ローラ109に電荷が溜まることを防止する効果もある。これによって、用紙抵抗による転写性のバラツキを抑えることや、帯電による用紙の挙動の乱れを抑えることができる。
図7において、搬送ローラ109は、カラーモード時の搬送ローラ109が感光体108及び転写ローラ101と離間している際に、駆動源であるモータ181により時計回りに回転駆動する。これによって、カラーモード時に搬送ローラ109が用紙搬送のブレーキとならずに安定して転写部へ用紙の搬送を行うことができる。また、この実施の形態では、搬送ローラ109を駆動させているが、転写ローラ101を駆動させてもよい。
図8において、モノクロモード時や任意の数の色重ね印刷(2色印刷や3色印刷)時に、搬送ローラ109が転写ローラ101'と当接し、駆動源であるモータ182により反時計周りに回転駆動し、用紙を搬送する。転写ローラ101'を駆動させた場合は、上記モードの切り替え時に上記のような逆回転の機構は必要としない。これによって、不要な感光体を停止させた状態で、搬送ローラ109と転写ローラ101'の対で用紙を搬送することができる。また、カラーモード時は、モータ182により搬送ローラ109が60mm/secで用紙を搬送するのに対し、モノクロモード時や任意の数の色重ね印刷(2色印刷や3色印刷)時には、その上流側に位置する搬送ローラ109及び給紙/レジスト部においては、用紙先端が画像形成を行う転写装置に到達するまで120mm/secで用紙を搬送する。これによって、モノクロモードや任意の数の色重ね印刷(2色印刷や3色印刷)時の生産性を大きく向上することができる。上記の搬送速度の変更に関しては、用紙後端が画像形成を行う最下流の転写装置を通過した後に速くしてもよい。
図9において、ジャム時に転写ローラ101が101”に移動することで、感光体108から離間し、かつ搬送ローラ109とも離間した位置に移動することで、転写ローラ101がトナーで汚れるのを防止することができ、かつ、転写ローラ101と搬送ローラ109もまた離間するため、搬送ローラ109が汚れるのを防止することができ、その後の転写ローラ101のクリーニングシーケンスをできる限り短くすることができる。
図9において、転写ローラ101a〜101cは、支持部材であるアーム183a〜183cによってその一端部に回動可能に支持されている。アーム183a〜183cは、中間部が装置本体100に軸184a〜184cで支持されているとともに、他端部が回転可能な偏心カム185a〜185c及び加圧バネ186a〜186cで支持されている。すなわち、アーム183a〜183cはその他端部の一側面が加圧バネ186a〜186cにより加圧され、他側面が偏心カム185a〜185cにより加圧バネ186a〜186cの付勢力に抗して押圧可能な構成とされ、これにより、アーム183a〜183cはその位置が規制される。したがって、偏心カム185a〜185cを図示しない駆動源により図中矢印で示す一方向に回転させると、アーム183a〜183cの他端部が加圧バネ186a〜186cの付勢力に抗して押圧され、これにより、アーム183a〜183cが軸184a〜184cを中心に揺動され、転写ローラ101a〜101cが実線のポジションから101’’a〜101’’cで示す点線のポジションへに移動する。この点線のポジションは転写ローラ101a〜101cが搬送ローラに当接しないで離間した位置となる。つまり、ジャム時における転写ローラ101’’a〜101’’cのポジションは、搬送ローラ109a〜109cに当接するポジションとは異なり、移動量がそれより小さく、感光体108a〜108c及び搬送ローラ109a〜109cとも離間しているポジションである。そのため、このような転写ローラ101’’a〜101’’cのポジションにおいてジャム処理を行うことが可能となる。
このように、偏心カム185を独立した駆動源から動かすことにより、任意の色の感光体108と転写ローラ101を離間することができ、任意の数の色合わせの転写をするときに不要な色の感光体108を回転することなく、感光体の長寿命化、トナーの経時劣化の防止、用紙へのカブリの低減が可能になる。
図10は、図3のようにカラー用の転写装置の各々を独自に移動するのではなく、同時に連動して移動する機構を示す。すなわち、スライダ188と偏心カム189を具えている。スライダ188はカラー用の転写装置間にわたる長さを有し、各装置のアームと対応する位置にアームの後端部に当接する起立部188a〜188cが長さ方向に設けられている。そして、偏心カム189に当接するスライダ188が、図示されていない駆動源により回転される偏心カム189により右方向に加圧バネ155a〜155cの抗して押されると、転写ローラ101a〜101cが3つ同時にポジションを変更する。このように、スライダ188を用いてカラー転写を行う転写ローラ101a〜101cを感光体108a〜108cからそれぞれ同時に離間させることにより、3つの転写ローラ101a〜101cを動かす駆動源がひとつになり、機構や制御の単純化が可能になる。
再び図3に戻り、この図において感光体108a〜108cと転写ローラ101a〜101cが当接しているときの互いの軸間距離、転写ローラ101a〜101cと搬送ローラ109a〜109cが当接しているときの互いの軸間距離は、前者の転写ローラ101a〜101cの感光体108a〜108cへの押圧力と、後者の転写ローラ101a〜101cの搬送ローラ109a〜109cへの押圧力とは異なるよう設定されている。このように、感光体108への押圧力と搬送ローラ109への押圧力が異なる構成とすることで、転写に最適な押圧力と搬送に最適な押圧力をそれぞれ設定することが可能となる。
図11に図3の最上流の感光体108aと転写ローラ101aの対と、最上流に配置された用紙搬送経路切り替え機構である板状の切り替えガイド191を示す。切り替えガイド191は軸192によって揺動可能に支持されており、感光体108aと転写ローラ101aが当接している場合には、実線の位置にあり、そのときの用紙搬送経路は193のようになる。転写ローラ101aと搬送ローラ109aが当接している場合には、切り替えガイド191は点線の位置に揺動し、そのときの用紙搬送経路は193'になる。切り替えガイド191を有することにより、転写ローラ101aと感光体108aのニップ部分に用紙を搬送することと、転写ローラ101aと搬送ローラ109aのニップ部分に用紙を搬送することとを選択することが可能となる。なお、切り替えガイド191は一例を示したもので、用紙搬送経路を切り替え可能であれば特にその形状や構造は任意である。
図12は転写材搬送ガイドの変形例を示す。すなわち、図1に示す転写材搬送ガイド130に代えて、図12に示すような転写材搬送ガイド195,196をカラー用の転写装置の各々の間に設けてもよい。図12はそのうちの最上流の感光体108aと用紙搬送方向に対して下流の感光体108bの間に転写材搬送ガイド195,196を設置したもので、該転写材搬送ガイドは上側用紙搬送ガイド195と下側用紙搬送ガイド196からなっている。上側用紙搬送ガイド195は感光体108と転写ローラ101が当接している場合に利用し、用紙搬送経路197を経て上流の感光体108aと転写ローラ101aのニップから排出された用紙を案内するガイドであり、次の転写装置の感光体108bと転写ローラ101bのニップに用紙が入るように搬送する。下側用紙搬送ガイド196は搬送ローラ109と転写ローラ101が当接されている場合に利用し、用紙搬送経路198を経て上流の搬送ローラ109aと転写ローラ101’aのニップから排出された用紙を案内するガイドであり、次の転写装置の搬送ローラ109bと転写ローラ101’bのニップに用紙が入るように搬送する。2つの用紙ガイド195,196を有することにより、用紙が上流の転写装置の感光体108aと転写ローラ101aのニップ部分から排出された場合、用紙が上流の転写装置の搬送ローラ109aと転写ローラ101’aのニップ部分から排出された場合のどちらの場合においても、用紙が搬送ガイド195,196に沿って移動する。
上記に記載したとおり、上記実施の形態においては、ポジション移動には加圧バネ104a〜104cとアーム102a〜102cを用いているが、このような加圧バネ104a〜104cとアーム102a〜102cを用いた構成にすることによって、省スペースかつ安価に転写ローラ101a〜101cのポジション移行の機能を実現することができる。
また、ポジション移動には偏心カム103a〜103cを用いているが、このような偏心カム103a〜103cを用いることによって、転写ローラ101a〜101cのポジションを移動するための動作が偏心カム103a〜103cを回転させるのみとなり、単純化できる。
上記の各実施の形態は、好ましい例を示したにすぎず、この発明は特許請求の範囲に記載した範囲内において、さらに異なる適宜の実施の形態をも含むものである。また、実施の形態で示した、感光体108、転写ローラ101、搬送ローラ109等の部材も、他の任意の部材に置き換えることが可能である。