JP5304088B2 - 遅延時間分布を解析する解析方法および解析装置 - Google Patents
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Description
しかし、全ての回路セルが最悪信号遅延時間を取ると想定したSTA解析を用いた設計手法では、信号遅延が過剰に見積もられてしまうため、LSIの微細化又は高集積化に伴い所望の性能を満たす設計が困難になってきた。
本発明は、SSTAを用い最適な設計マージンでLSI回路の設計を行うために、回路セルの遅延時間分布を求める遅延ばらつき解析装置及びその方法を提供することを目的とする。
上記方法は、上記回路の遅延時間分布が正規分布に従うとして、上記回路を伝播する信号の最大偏差遅延時間と、上記回路の基本遅延時間とを算出する遅延時間算出ステップと、上記回路の最大偏差遅延時間と上記回路の基本遅延時間との差分についてのN段の二乗平均を用いて、N段の回路の遅延ばらつき値を算出する遅延ばらつき算出ステップと、上記算出された遅延ばらつき値を用いて、上記N段の回路の遅延時間分布を正規分布として生成するステップと、を有する。
図1には、素子の遅延時間分布を用いて、複数の素子により構成される回路の信号遅延時間分布を簡易に算出する方法及びその装置の一例が示される。遅延ばらつき解析装置10は、処理部20、記憶部30、表示部42、入力部43を有し、これら装置10の構成要素は互いにバス接続される。なお、以下において「素子」を用いて説明した場合、「素子」の1つの例として「回路セル」も含まれる。
また、処理部20は、記憶部30に格納されたプログラム等の実行処理、各種データの記憶部30への入出力制御や、入力部43に入力された情報を記憶部30に記憶する制御や、遅延ばらつきの結果等を表示部42に表示する制御を行うことができる。
信号遅延時間算出部22は、回路に含まれる素子について信号遅延時間を計算することができる。遅延ばらつき算出部24は、信号遅延時間算出部22により算出された信号遅延時間を用いてN段の回路セルの遅延ばらつきや、その遅延ばらつきの確率分布(以下、「遅延時間分布」と言う)を算出することができる。統計的遅延解析部26は、遅延ばらつき算出部24により算出されたN段の回路セルの遅延時間分布を用いて、N段の回路セルを複数有する回路の遅延時間分布を統計的に算出する。タイミングチェック部28は、遅延ばらつき算出部24により出力されたN段の回路セルの遅延時間分布、又は、統計的遅延解析部26により算出された回路の遅延時間分布を表示部42等に出力することができる。
また、記憶部30は、例えば不揮発性の記憶デバイス(不揮発性半導体メモリ、ハードディスク装置、光ディスク装置、フラッシュメモリなど)や、ランダムアクセス可能な記憶デバイス(SRAM、DRAMなど)、読み出し専用メモリ等によって構成され得る。
N段の回路セル50は、NANDゲート素子A1、A2、・・・、ANや、図示しない他のOR等の論理ゲート素子、インバータ素子等を含む回路パス51Aを含む。信号は、回路パス51Aにおいて、入力部52AからNANDゲート素子等を通過して、出力部53Aへ伝播する。
プロセス特性データ60に示すように、プロセス特性として、例えば、NANDゲート素子A1のプロセス特性は、NANDゲート素子A1を構成するMOS(Metal Oxide Semiconductor)のゲート長L、ゲート幅W、スレッショルド電圧Vth、プロセスのばらつき特性データ等が規定される。
また、図示されないが、設計データ32には、複数の回路パスを規定した回路記述データが含められる。
まず、信号遅延時間算出部22は、設計データ32から図3に示される素子のプロセス特性情報を取得する(ステップS101)。設計者は、基本信号遅延時間を算出する場合は標準電圧値等のように信号遅延時間が平均値を示すときの典型的なプロセス特性、最悪信号遅延時間を算出する場合はプロセス特性±3σ、またシステマティックばらつきやランダムばらつき(後述)などの条件にも注意し適切なプロセス情報を選択し、信号遅延時間算出部22が計算に用いる設定値として設定する。
信号遅延時間算出部22は、上記したような典型的なプロセス特性の時の遅延時間を基本信号遅延時間X0、プロセス特性が±3σばらついたときの信号遅延時間を最悪信号遅延時間XNとみなし、信号遅延データ34として記憶部30に格納する。
遅延ばらつき算出部24は、基本信号遅延時間X0とシステマティックばらつきのプロセス特性から算出した最悪信号遅延時間XNとの差分値Yと、基本信号遅延時間X0を用いて、下記に示す式2にしたがって回路セル51Aのシステマティック遅延ばらつき値を求める(ステップS103)。なお、遅延ばらつき値とは、回路セルの最大偏差遅延時間と回路セルの基本遅延時間との差分が基本遅延時間にしめる割合を言う。
システマティックばらつきではプロセス特性は一様に変化するため、最悪信号遅延時間XNは、最大偏差信号遅延時間X3σとみなすことができる。また、遅延ばらつき算出部24は、基本信号遅延時間X0とランダムばらつきのプロセス特性から算出した最悪信号遅延時間XNと、基本信号遅延時間X0を用いて、下記に示す式9にしたがってN段の回路セル51Aのランダム遅延ばらつき値を求める(ステップS103)。図4では、システマティック遅延ばらつきと、ランダム遅延ばらつきとを合わせて「遅延時間分布」と称している。
式1は、ばらつき0の信号遅延時間つまり基本信号遅延時間X0とシステマティックにプロセスが3σばらついたときの最大偏差信号遅延時間X3σとの差分値YSを求める式である。上述したようにシステマティックばらつきではすべての素子の特性が一様に変化するため最悪信号遅延時間XNがシステマティックばらつきの傾向を適切に表現している。システマティック遅延ばらつき値VSは遅延時間差分値YSの基本信号遅延時間X0に対する割合、式2となる。
本実施例では、回路パスの信号遅延時間の差分値YRは、差分値Y1の二乗平均とするので、差分値YRは式7となる。式8はYRをX0とXNを用いてあらわしたものである。したがって、N段の素子を有する回路パス51Aのランダム遅延ばらつき値を式9のように導出することができる。
したがって、N値の算出方法としては遅延ばらつき値対象パスのゲート段数を数えることがのぞましいが、算出部24において、信号遅延時間算出部22で算出した回路パス51A内の基本信号遅延時間を、1段あたりの信号遅延時間の平均値で除算して段数Nを求めることができる。この場合、段数Nを一つ一つカウントせずにN段の回路セルの遅延ばらつき値を求めることができる。
また、遅延ばらつき算出部24は、設計データ32を用いて集積回路50又は回路パス51A内の全論理ゲート素子の基本遅延時間を算出し1段あたりの信号遅延時間とすることができる。この場合も、回路パス内の素子を一つ一つカウントせずにN段の回路セルの遅延ばらつきを求めることができ、集積回路50と回路パス51Aのどちらのデータを使用するかは設計者が決めることができる。例えば、設計者は、N段の回路セルの信号遅延時間の総和を、信号遅延時間の最も長い回路セル又は最も個数の多い種類の回路セルの信号遅延時間で除算して段数Nを決めることができる。
このように、本実施例によれば、N段の回路セルの遅延ばらつき値をより簡易に求めることもできる。
統計的遅延計算部26は、統計的遅延データ36を±3σの確率変数とする正規分布である遅延時間分布を生成する(ステップS104)。図5(b)に、遅延時間分布として、遅延ばらつきの確率密度関数の一例を示す。基本遅延時間が図5(b)の平均値に相当する。統計的遅延計算部26は設計データ32と信号遅延データ34と統計的遅延データ36を入力データとしSSTAを用いて集積回路50の遅延解析を行う。
従来、SSTAを行うためにはすべての回路セル又はすべての素子の確率分布を求めるためにモンテカルロ解析を行う必要があった。しかしながら、本実施例では、N段の回路セルの確率分布を簡易に生成することができるため、そのN段の回路セルの確率分布を用いてN段の回路セルを複数含む回路(例えば、集積回路等)のSSTAをより簡易に行うことができる。
SSTAの処理の一例として、図7にN段の回路セルが直列に接続する回路51A、回路51B及びその確率分布、図8に並列に接続する回路51C、回路51D及びその確率分布を示す。
図7(a)に示すように、回路51A、51Bが直列に接続される場合、2つの回路51A、51Bの遅延時間分布をそれぞれf1及びf2で表すと、回路50Aの遅延時間分布f3は、いわゆる統計的和と呼ばれる下記式10で示す演算により求めることができる。
一方、図8の(a)に示すように、回路51C、51Dが合流する場合は、2つの回路51C、51Dの遅延時間分布をそれぞれf4及びf5で表すと、回路50Bの遅延時間分布f6は、いわゆる統計的MAXと呼ばれる下記式11で示す演算で求めることができる。
タイミングチェック部28は、遅延時間分布f3又はf6において、±3σのときの遅延ばらつきに対応する遅延時間を±3σとする遅延時間の確率密度分布90を、タイミングレポートとして作成することができる(ステップS203)。この遅延時間の確率密度分布90は、タイミングチェック部28によって、記憶部30にタイミングレポート38として格納され、上記した算出処理を繰り返すことなく参照利用することもできる。
図9を用いることで、所望の遅延時間を満たした時の歩留まりを得ることができる。例えば、回路50の所望の遅延時間が、480psの場合、回路50の歩留まりはほぼ100%になる。
STAでは、ステップS101〜102で算出された回路セルの遅延時間を用いて回路全体のパスの遅延時間を算出する(ステップS301)。タイミングチェック部28は、ステップS301で算出されたすべてのパスの遅延時間を集計し所望の性能での動作確認を行う(ステップS302)。SSTAを用いたタイミングチェックとSTAを用いたタイミングチェックを併記したタイミングレポートが作成される(ステップS304)。
20 処理部
22 遅延時間算出部
24 ばらつき値算出部
26 統計的遅延解析部
28 タイミングチェック部
30 記憶部
42 表示部
43 入力部
Claims (12)
- 演算手段によって複数段の回路の遅延時間分布を解析する方法であって、
前記演算手段が、前記複数段の回路に含まれる各段の回路を伝播する信号の最大偏差遅延時間および基本遅延時間を算出する遅延時間算出ステップと、
前記演算手段が、前記複数段の回路の基本遅延時間の総和を算出するステップと、
前記演算手段が、前記複数段の回路の基本遅延時間の総和を、基本遅延時間の最も長い回路又は最も個数の多い種類の回路の基本遅延時間で除算して段数を求めるステップと、
前記演算手段が、前記複数段の回路に含まれる各段の回路の最大偏差遅延時間と前記複数段の回路に含まれる各段の回路の基本遅延時間との差分についての前記求められた段数分の二乗平均を用いて、前記複数段の回路の遅延ばらつき値を算出する遅延ばらつき算出ステップと、
前記演算手段が、前記算出された遅延ばらつき値を用いて、前記複数段の回路の遅延時間分布を正規分布として生成するステップと、
を有することを特徴とする解析方法。 - 前記遅延ばらつき算出ステップは、前記複数段の回路の最大偏差遅延時間と前記複数段の回路の基本遅延時間との差分を、前記複数段の回路の基本遅延時間と段数の平方根との積で除算することによって、前記複数段の回路の遅延ばらつき値を算出する請求項1に記載の解析方法。
- 前記遅延時間分布を用いて、前記複数段の回路を複数有する回路の遅延ばらつき値を算出するために、統計的タイミング解析を行うステップと、をさらに有する請求項1又は2に記載の解析方法。
- 演算手段によって複数段の回路の遅延時間分布を解析する方法であって、
前記演算手段が、前記複数段の回路に含まれる各段の回路を伝播する信号の最大偏差遅延時間および基本遅延時間を算出する遅延時間算出ステップと、
前記演算手段が、前記複数段の回路の基本遅延時間の総和を算出するステップと、
前記演算手段が、前記複数段の回路に含まれる各段の回路の基本遅延時間の平均値を算出し、前記複数段の回路の基本遅延時間の総和を前記平均値で除算して前記段数を求めるステップと、
前記演算手段が、前記複数段の回路に含まれる各段の回路の最大偏差遅延時間と前記複数段の回路に含まれる各段の回路の基本遅延時間との差分についての前記求められた段数分の二乗平均を用いて、前記複数段の回路の遅延ばらつき値を算出する遅延ばらつき算出ステップと、
前記演算手段が、前記算出された遅延ばらつき値を用いて、前記複数段の回路の遅延時間分布を正規分布として生成するステップと、
を有することを特徴とする解析方法。 - 前記遅延ばらつき算出ステップは、前記複数段の回路の最大偏差遅延時間と前記複数段の回路の基本遅延時間との差分を、前記複数段の回路の基本遅延時間と段数の平方根との積で除算することによって、前記複数段の回路の遅延ばらつき値を算出する請求項4に記載の解析方法。
- 前記遅延時間分布を用いて、前記複数段の回路を複数有する回路の遅延ばらつき値を算出するために、統計的タイミング解析を行うステップと、をさらに有する請求項4又は5に記載の解析方法。
- 複数段の回路の遅延時間分布を解析する解析装置であって、
前記複数段の回路に含まれる各段の回路を伝播する信号の最大偏差遅延時間および前記複数段の回路に含まれる各段の回路の基本遅延時間を算出する遅延時間算出部と、
前記複数段の回路の基本遅延時間の総和を算出する複数段遅延時間算出部と、
前記複数段の回路の基本遅延時間の総和を、基本遅延時間の最も長い回路又は最も個数の多い種類の回路の基本遅延時間で除算して段数を求める段数算出部と、
前記複数段の回路に含まれる各段の最大偏差遅延時間と前記複数段の回路に含まれる各段の基本遅延時間との差分についての前記求められた段数分の二乗平均を用いて、前記複数段の回路の遅延ばらつき値を算出する遅延ばらつき算出部と、
前記算出された遅延ばらつき値を用いて、前記複数段の回路の遅延時間分布を正規分布として生成する統計的遅延解析部と、
を有することを特徴とする解析装置。 - 前記遅延ばらつき算出部は、前記複数段の回路の最大偏差遅延時間と前記複数段の回路の基本遅延時間との差分を、前記複数段の回路の基本遅延時間と段数の平方根との積で除算することによって、前記回路の遅延ばらつき値を算出する請求項7に記載の解析装置。
- 前記統計的遅延解析部は、前記遅延時間分布を用いて、前記複数段の回路を複数有する回路の遅延ばらつき値を算出するために、統計的静的タイミング解析を行うタイミングチェック部と、をさらに有する請求項7又は8に記載の解析装置。
- 複数段の回路の遅延時間分布を解析する解析装置であって、
前記複数段の回路に含まれる各段の回路を伝播する信号の最大偏差遅延時間と、前記複数段の回路に含まれる各段の回路の基本遅延時間とを算出する遅延時間算出部と、
前記複数段の回路の基本遅延時間の総和を算出する複数段遅延時間算出部と、
前記複数段の回路に含まれる各段の回路の基本遅延時間の平均値を算出し、前記複数段の回路の基本遅延時間の総和を前記平均値で除算して前記段数を求める段数算出部と、
前記複数段の回路に含まれる各段の回路の最大偏差遅延時間と前記複数段の回路に含まれる各段の回路の基本遅延時間との差分についての前記求められた段数分の二乗平均を用いて、前記複数段の回路の遅延ばらつき値を算出する遅延ばらつき算出部と、
前記算出された遅延ばらつき値を用いて、前記複数段の回路の遅延時間分布を正規分布として生成する統計的遅延解析部と、
を有することを特徴とする解析装置。 - 前記遅延ばらつき算出部は、前記複数段の回路の最大偏差遅延時間と前記複数段の回路の基本遅延時間との差分を、前記複数段の回路の基本遅延時間と段数の平方根との積で除算することによって、前記複数段の回路の遅延ばらつき値を算出する請求項10に記載の解析装置。
- 前記統計的遅延解析部は、前記遅延時間分布を用いて、前記複数段の回路を複数有する回路の遅延ばらつき値を算出するために、統計的静的タイミング解析を行うタイミングチェック部と、をさらに有する請求項10又は11に記載の解析装置。
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