以下、本発明の詳細を説明する。
(エポキシ樹脂材料)
本発明に係るエポキシ樹脂材料は、樹脂組成物であるか、又は該樹脂組成物がフィルム状に成形されたBステージフィルムである。
上記樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、硬化剤と、充填剤とを含む。上記樹脂組成物に含まれている全固形分100重量%中、上記充填剤の含有量は70重量%以上である。
エポキシ樹脂を含む樹脂組成物及びBステージフィルムにおいて、硬化物の熱による寸法変化を小さくするためには、すなわち線膨張率を低くするためには、シリカなどの充填剤を多く配合する必要がある。しかしながら、硬化物の線膨張率を低くするためにシリカを多く配合すると、樹脂組成物及びBステージフィルムの溶融粘度が高くなる。この結果、樹脂組成物又はBステージフィルムが穴又は凹凸を有する部材に積層された場合に、穴埋め性又は凹凸追従性が低くなるという問題がある。特にシリカを70重量%以上含む樹脂組成物及びBステージフィルムでは、穴埋め性又は凹凸追従性がかなり低くなる。一方で、穴埋め性又は凹凸追従性を良好にするためにシリカを少なく配合すると、硬化物の線膨張率が高くなったり、硬化物のガラス転移温度が低くなったりする。
本発明の主な特徴は、上記樹脂組成物又は上記Bステージフィルムを構成する樹脂組成物において、エポキシ樹脂と硬化剤と充填剤とを用い、かつ該樹脂組成物100重量%中の充填剤の含有量を70重量%以上としたことに加えて、50〜150℃の温度領域でのエポキシ樹脂材料の最低溶融粘度を100Pa・s以下としたことである。この構成の採用により、硬化物の熱による寸法変化を小さくすることができ、更に硬化物のガラス転移温度を高くすることができ、かつエポキシ樹脂材料の各種パターンへの埋め込み追従性を良好にすることを可能とする。例えば、硬化物の0〜50℃での平均線膨張率を11ppm以下にすることができ、硬化物のガラス転移温度を175℃以上にすることができる。しかも、上記構成の採用により、エポキシ樹脂材料が穴又は凹凸を有する部材に積層された場合に、穴埋め性又は凹凸追従性を高めることができる。
従って、本発明に係るエポキシ樹脂材料は、ビルトアップ用絶縁層を形成する場合に特に有利である。ビルトアップ用絶縁層には、線膨張率が低く、耐熱性が高く、更に穴埋め性又は凹凸追従性が高いことが強く求められる。本発明に係るエポキシ樹脂材料は、ビルトアップ用絶縁層を形成するためのエポキシ樹脂材料であることが好ましい。また、本発明に係るエポキシ樹脂材料は、上記樹脂組成物がフィルム状に成形されたBステージフィルムであることが好ましい。該Bステージフィルムは、ビルトアップ用絶縁層を形成するためのBステージフィルムであることが好ましい。
本発明では、特にシリカの含有量が70重量%以上であるので、硬化物の熱による寸法変化が小さくなり、すなわち線膨張率が低くなる。例えば、硬化物の0〜50℃における線膨張係数を11ppm/℃以下にすることができる。この結果、リフロー工程などで硬化物が高温に晒されても、硬化物の寸法が大きく変化し難くなり、硬化物の剥離が生じ難くなる。硬化物の熱による寸法変化をより一層小さくし、かつ硬化物の剥離をより一層抑制する観点からは、本発明に係るエポキシ樹脂材料の硬化物の線膨張係数は、11ppm/℃以下であることが特に好ましい。
硬化物の耐熱性をより一層高める観点からは、本発明に係るエポキシ樹脂材料の硬化物のガラス転移温度は、好ましくは175℃以上、より好ましくは180℃以上である。上記ガラス転移温度は、DMA(SIIナノテクノロジー社製)を用いて測定できる。
硬化物の外観を良好にする観点からは、硬化物の算術平均粗さRa、並びに粗化処理又はデスミア処理された硬化物の表面の算術平均粗さRaはそれぞれ、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下である。上記算術平均粗さRaが上記上限以下であると、硬化物の外観を良好にすることができ、硬化物の平坦性を高めることができ、更に粗化処理又はデスミア処理された硬化物と金属層との密着性を高めることができる。また、硬化物の表面に設けられた配線における電気信号の伝送速度を高速化できる。算術平均粗さRaは、JIS B0601−1994に準拠した測定法により求められる。
近年、多層プリント配線板などでは配線密度が高くなっており、微細なパターンにエポキシ樹脂材料を埋め込む必要性が高まっている。穴又は凹凸を有する部材に積層された場合に、穴埋め性又は凹凸追従性を高めるために、本発明に係るエポキシ樹脂材料の50〜150℃の温度領域での最低溶融粘度は、100Pa・s以下であり、50Pa・s以下であることがより好ましい。なお、最低溶融粘度を規定した温度領域を50〜150℃としたのは、エポキシ樹脂材料が基板等の積層対象部材に積層される温度が、一般に50〜150℃であるためである。特に、Bステージフィルムは、50〜150℃で基板等の積層対象部材にラミネートされることが多い。50℃未満でBステージフィルムをラミネートすると、ラミネート装置が正常に稼働しないことがある。150℃を超える温度でBステージフィルムをラミネートすると、Bステージフィルムの硬化が進行しすぎることがある。
以下、上記樹脂組成物に含まれているエポキシ樹脂、硬化剤及び充填剤などの詳細を説明する。
[エポキシ樹脂]
上記樹脂組成物に含まれているエポキシ樹脂は特に限定されない。該エポキシ樹脂として、従来公知のエポキシ樹脂を用いることができる。該エポキシ樹脂は、少なくとも1個のエポキシ基を有する有機化合物をいう。エポキシ樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ樹脂、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
上記エポキシ樹脂は、ビスフェノールF型エポキシ樹脂又はビスフェノールS型エポキシ樹脂であることが好ましい。ビスフェノールF型エポキシ樹脂又はビスフェノールS型エポキシ樹脂の使用により、硬化物の熱による寸法変化をより一層小さくすることができる。
さらに、エポキシ樹脂材料の最低溶融粘度を大きく下げるために、上記樹脂組成物に含まれている上記エポキシ樹脂は、常温(23℃)で液状であるエポキシ樹脂であるか、又は常温(23℃)で固形である場合には軟化点が80℃以下であるエポキシ樹脂であることが好ましい。
上記エポキシ樹脂は、ビスフェノールS型エポキシ樹脂であることが好ましい。ビスフェノールS型エポキシ樹脂の使用により、硬化物の線膨張率をかなり低くすることができ、更にエポキシ樹脂材料の最低溶融粘度をより一層低くすることができる。また、ビスフェノールS型エポキシ樹脂の使用により、充填剤の含有量が比較的少なくても、線膨張率を十分に低くすることができる。さらに、ビスフェノールS型エポキシ樹脂を用いた場合には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いた場合と比較して、硬化物のガラス転移温度をより一層高くすることができる。
上記ビスフェノールS型エポキシ樹脂の市販品としては、DIC社製の「EXA−1514」及び「EXA−1517」、並びにJER社製の「YL7487」及び「YL7459」等が挙げられる。
ベンゼン環1個にエポキシ基を含む基1個が結合した構造単位を有するビスフェノールS型エポキシ樹脂では、一般に硫黄原子に対してエポキシ基を含む基がp位でベンゼン環に結合している。また、ベンゼン環1個にエポキシ基を含む基1個が結合した構造単位を有するビスフェノールS型エポキシ樹脂に関しては、硫黄原子に対してエポキシ基を含む基がp位でベンゼン環に結合した構造単位を有するビスフェノールS型エポキシ樹脂が一般的である一方で、硫黄原子に対してエポキシ基を含む基がo位又はm位でベンゼン環に結合した構造単位を有するビスフェノールS型エポキシ樹脂と、硫黄原子に対してエポキシ基を含む基がo位又はm位でベンゼン環に結合した構造単位と硫黄原子に対してエポキシ基を含む基がp位でベンゼン環に結合した構造単位とを有するビスフェノールS型エポキシ樹脂等も存在する。
硬化物の熱による寸法変化をより一層小さくし、かつ硬化物のガラス転移温度をより一層高くし、更に粗化処理又はデスミア処理された硬化物の表面の表面粗さをより一層小さくし、かつエポキシ樹脂材料の最低溶融粘度を低くする観点からは、上記ビスフェノールS型エポキシ樹脂は、2官能のビスフェノールS型エポキシ樹脂であることが好ましい。また、2官能のビスフェノールS型エポキシ樹脂は、ベンゼン環1個にエポキシ基を含む基1個が結合した構造単位を2個有し、上記構造単位の1個又は2個が、硫黄原子に対してエポキシ基を含む基がo位又はm位でベンゼン環に結合した構造単位であることが好ましい。上記構造単位の1個が、硫黄原子に対してエポキシ基を含む基がo位又はm位でベンゼン環に結合した構造単位であり、かつ上記構造単位の1個が、硫黄原子に対してエポキシ基を含む基がp位でベンゼン環に結合した構造単位であることがより好ましい。上記ビスフェノールS型エポキシ樹脂は、下記式(1)で表されるエポキシ樹脂であることが好ましい。このようなビスフェノールS型エポキシ樹脂の使用により、溶剤及び他の成分に対する相溶性をより一層高めることができる。この結果、硬化物の線膨張率がより一層低くなり、かつ硬化物のガラス転移温度がより一層高くなる。一方で、上記構造単位の2個が、硫黄原子に対してエポキシ基を含む基がp位でベンゼン環に結合している構造単位である場合には、溶剤及び硬化剤などの他の成分に対する相溶性が低くなる。
上記式(1)中、R1、R2及びR3の内の1個がエポキシ基を含む基であり、R1、R2及びR3のエポキシ基を含む基ではない基は水素原子を表し、R4、R5及びR6の内の1個がエポキシ基を含む基であり、R4、R5及びR6の内のエポキシ基を含む基ではない基は水素原子を表す。但し、R1及びR6の内の少なくとも1個の基は、エポキシ基を含む基ではない。
上記構造単位の1個又は2個が、硫黄原子に対してエポキシ基を含む基がo位又はm位でベンゼン環に結合した構造単位であるビスフェノールS型エポキシ樹脂の市販品としては、DIC社製の「EXA−1517」等が挙げられる。DIC社製の「EXA−1517」は、硫黄原子に対してエポキシ基を含む基がo位でベンゼン環に結合した構造単位と、硫黄原子に対してエポキシ基を含む基がp位でベンゼン環に結合した構造単位とを有する。
粗化処理又はデスミア処理された硬化物の表面の表面粗さをより一層小さくする観点からは、上記エポキシ樹脂のエポキシ当量は、90〜1000の範囲内であることが好ましい。該エポキシ当量は好ましくは100以上、好ましくは800以下、より好ましくは400以下である。
[硬化剤]
上記樹脂組成物に含まれている硬化剤は特に限定されない。該硬化剤として、従来公知の硬化剤を用いることができる。硬化剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記硬化剤としては、シアネートエステル樹脂(シアネートエステル硬化剤)、フェノール化合物(フェノール硬化剤)、アミン化合物、酸無水物及びジシアンジアミド等が挙げられる。なかでも、熱による寸法変化がより一層小さい硬化物を得る観点からは、上記硬化剤は、シアネートエステル樹脂又はフェノール化合物であることが好ましい。上記硬化剤は、シアネートエステル樹脂であることが好ましく、フェノール化合物であることも好ましい。上記硬化剤は、上記エポキシ樹脂のエポキシ基と反応可能な官能基を有することが好ましい。
上記シアネート樹脂の使用により、シリカの含有量が多いBステージフィルムのハンドリング性を良好にすることができ、硬化物のガラス転移温度をより一層高くすることができる。上記シアネートエステル樹脂は特に限定されない。該シアネートエステル樹脂として、従来公知のシアネートエステル樹脂を用いることができる。上記シアネートエステル樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記シアネートエステル樹脂としては、ノボラック型シアネート樹脂及びビスフェノール型シアネート樹脂等が挙げられる。上記ビスフェノール型シアネート樹脂としては、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂及びテトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等が挙げられる。
上記シアネートエステル樹脂の市販品としては、フェノールノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン社製「PT−30」及び「PT−60」)、並びにビスフェノールAジシアネートがトリアジン化され、三量体とされたプレポリマー(ロンザジャパン社製「BA230」、「BA200」及び「BA3000」)等が挙げられる。
上記最低溶融粘度を適度に低くし、エポキシ樹脂材料の硬化性を高め、粗化処理又は膨潤処理された硬化物の表面の表面粗さをより一層小さくする観点からは、上記シアネートエステル樹脂は、シアネート基を2個有するシアネートエステル樹脂、又は該シアネート基を2個有するシアネートエステル樹脂の多量体であることが好ましい。
上記フェノール化合物の使用により、硬化物のガラス転移温度を高くすることができ、更に硬化物と金属層との密着性をより一層高めることができる。また、上記フェノール化合物の使用により、例えば、硬化物の表面上に設けられた銅の表面を黒化処理又はCz処理することにより、硬化物と銅との密着性をより一層高めることができる。上記フェノール化合物としては、ノボラック型フェノール、ビフェノール型フェノール、ナフタレン型フェノール、ジシクロペンタジエン型フェノール、アラルキル型フェノール及びジシクロペンタジエン型フェノール等が挙げられる。
上記フェノール化合物の市販品としては、アミノトリアジン骨格を有するフェノール化合物(DIC社製「LA1356」及び「LA3018−50P」)等が挙げられる。
上記最低溶融粘度を適度に低くし、エポキシ樹脂材料の硬化性を高くし、粗化処理又は膨潤処理された硬化物の表面の表面粗さをより一層小さくする観点からは、上記フェノール化合物は、ノボラック型フェノール化合物又はトリアジン骨格を有するフェノール化合物であることが好ましい。
硬化物のガラス転移温度をより一層高くする観点からは、上記フェノール化合物は、フェノール性水酸基を含む構造単位を、繰り返し構造単位として2個以上有することが好ましい。
上記最低溶融粘度を適度に低くし、エポキシ樹脂材料の硬化性を高くし、粗化処理又は膨潤処理された硬化物の表面の表面粗さをより一層小さくする観点からは、上記フェノール化合物の水酸基当量は500以下、より好ましくは220以下である。硬化物のガラス転移温度をより一層高くする観点からは、上記フェノール化合物の水酸基当量は180以下であることがさらに好ましい。また、上記シアネートエステル樹脂のシアネート基当量は500以下であることが好ましい。
上記硬化剤は、シアネートエステル樹脂又はフェノール化合物であることが好ましい。シアネートエステル樹脂又はフェノール化合物の使用により、熱による寸法変化がより一層小さい硬化物を得ることができ、更に粗化処理又はデスミア処理された硬化物の表面の表面粗さをより一層小さくすることができる。
上記硬化剤は、酸無水物であってもよい。酸無水物の使用により、硬化物のガラス転移温度をより一層高くすることができる。該酸無水物としては、多脂環式骨格を有する酸無水物、及びテルペン系化合物と無水マレイン酸との付加反応により得られる脂環式骨格を有する酸無水物等が挙げられる。
上記硬化剤がフェノール化合物である場合に、該フェノール化合物の重量平均分子量は2000以下であることが好ましい。この場合には、エポキシ樹脂材料の最低溶融粘度を低くし、特に50〜150℃でのエポキシ樹脂材料の最低溶融粘度を低くし、更に硬化物のガラス転移温度を高くすることができる。
エポキシ樹脂材料の最低溶融粘度を低くし、特に50℃〜150℃でのエポキシ樹脂材料の最低溶融粘度を低くし、硬化物のガラス転移温度を高くし、更に200℃以下の硬化温度でエポキシ樹脂材料の硬化を完了させるために、上記シアネートエステル樹脂はシアネート基を2個有することが好ましい。シアネートエステル基を3個以上有するノボラックタイプのシアネートエステル樹脂では、硬化物のTgが高くなりすぎる傾向があり、200℃以下の硬化温度でエポキシ樹脂材料の硬化を完了させることは困難である。さらに、シアネートエステル基を3個以上有するノボラックタイプのシアネートエステル樹脂では、50℃〜150℃でのエポキシ樹脂材料の最低溶融粘度が高くなる傾向がある。このため、シアネートエステル基を2個有するシアネートエステル樹脂が好ましい。また、シアネート基を2個有するシアネートエステル樹脂の多量体(3量体)も好ましい。
層間絶縁材用途において、硬化温度が200℃を超えると、ガラスクロスを含む支持基板が熱により劣化する可能性があるので、200℃を超える高温でエポキシ樹脂材料を硬化させることができないことがある。このため、エポキシ樹脂材料の硬化温度は200℃以下であることが好ましい。
エポキシ樹脂と硬化剤との含有量は特に限定されない。硬化剤がフェノール化合物である場合、樹脂組成物中でのエポキシ樹脂のエポキシ基の数のフェノール化合物のフェノール性水酸基の数に対する比(エポキシ基の数/フェノール性水酸基の数)は、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.8以上、更に好ましくは1.0以上、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下、更に好ましくは2.0以下である。上記比(エポキシ基の数/フェノール性水酸基の数)が上記下限以上であると、エポキシ基の数が十分に多くなり、硬化物の耐熱性及び耐湿性がより一層高くなる。上記比(エポキシ基の数/フェノール性水酸基の数)が上記上限以下であると、フェノール性水酸基の数が十分に多くなり、エポキシ樹脂材料を充分に硬化させることができ、硬化物の耐熱性がより一層高くなる。
硬化剤が多量体(3量体)ではないシアネートエステル樹脂である場合、樹脂組成物中でのエポキシ樹脂のエポキシ基の数のシアネートエステル樹脂のシアネート基の数に対する比(エポキシ基の数/シアネート基の数)は、0.75〜2.0であることが好ましい。硬化剤がシアネートエステル樹脂の多量体である場合には、樹脂組成物中でのエポキシ樹脂のエポキシ基の数のシアネートエステル樹脂のシアネート基の数に対する比(エポキシ基の数/シアネート基の数)は、1.5〜4.0であることが好ましく、更に好ましくは3.0〜3.8である。上記比(エポキシ基の数/シアネート基の数)が上記下限以上であると、エポキシ基の数が十分に多くなり、硬化物が脆くなり難く、粗化処理又は膨潤処理前の硬化物の耐薬品性が高くなることで粗化処理又は膨潤処理で硬化物が荒れ難くなる。上記比(エポキシ基の数/シアネート基の数)が上記上限以下であると、シアネート基の数が十分に多くなり、硬化不足が生じ難く、硬化物の耐熱性がより一層高くなる。
[充填剤]
上記樹脂組成物に含まれている充填剤は特に限定されない。該充填剤として、従来公知の充填剤を用いることができる。上記充填剤としては、無機充填剤、有機充填剤及び有機無機複合充填剤等が挙げられる。なかでも、無機充填剤が好ましい。上記充填剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記無機充填剤としては、シリカ、タルク、クレイ、マイカ、ハイドロタルサイト、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム及び窒化ホウ素等が挙げられる。また、上記無機充填剤は、チタネートであってもよい。なかでも、シリカが好ましく、溶融シリカがより好ましい。シリカの使用により、粗化処理又はデスミア処理された硬化物の表面の表面粗さを効果的に小さくすることができる。シリカの形状は略球状であることが好ましい。
上記有機充填剤としては、ベンゾオキサジン樹脂、ベンゾオキサゾール樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂及びスチレン樹脂等により形成された粒子状物が挙げられる。
上記有機無機複合充填剤は、無機充填剤の表面に有機化合物が共有結合された化合物等が挙げられる。上記有機無機複合充填剤を構成する材料としては、例えばシリコン樹脂及びポリシルセスキオキサン等が挙げられる。
上記充填剤の平均粒子径は、0.1〜20μmの範囲内であることが好ましい。上記平均粒子径は、好ましくは0.2μm以上、好ましくは2μm以下である。上記充填剤の平均粒子径として、50%となるメディアン径(d50)の値が採用される。上記平均粒子径は、レーザー回折散乱方式の粒度分布測定装置を用いて測定できる。
上記充填剤は、表面処理されていることが好ましく、カップリング剤により表面処理されていることがより好ましい。これにより、エポキシ樹脂材料中での充填剤の分散性及び充填剤と他の成分との親和性が高くなる。
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記表面処理に用いるカップリング剤は、エポキシシラン、アミノシラン、ビニルシラン、メルカプトシラン、サルファーシラン、(メタ)アクリル酸シラン、イソシアネートシラン又はウレイドシランであることが好ましい。
樹脂組成物に含まれている全固形分(以下、全固形分Bと略記することがある)100重量%中、上記充填剤の含有量は70重量%以上である。上記充填剤の含有量が上記下限以上であると、熱による寸法変化が小さい硬化物を得ることができる。「全固形分B」とは、エポキシ樹脂と硬化剤と充填剤と必要に応じて配合される固形分との総和をいう。「固形分」とは、不揮発成分であり、成形又は加熱時に揮発しない成分をいう。
エポキシ樹脂材料の穴埋め性又は凹凸追従性を高くし、かつ粗化処理又はデスミア処理された硬化物の表面の表面粗さをより一層小さくする観点からは、上記全固形分B100重量%中、上記充填剤の含有量は、好ましくは95重量%以下、より好ましくは85重量%以下、特に好ましくは80重量%以下である。
硬化物の線膨張率をより一層低くするためには、上記全固形分B100重量%中、上記充填剤の含有量は好ましくは75重量%以上、更に好ましくは80重量%以上である。本発明における上記組成の採用により、充填剤の含有量が比較的多くても、エポキシ樹脂材料の穴埋め性又は凹凸追従性を高くし、硬化物の線膨張率を低くし、更に粗化処理又はデスミア処理された硬化物の表面の表面粗さをより一層小さくすることができる。
また、上記全固形分B100重量%中の充填剤の含有量が80重量%を超える場合と比較して、上記全固形分B100重量%中の充填剤の含有量が80重量%以下である場合には、回路基板などの部材上にエポキシ樹脂材料を積層し、硬化させたときに硬化物の表面の外観を良好にすることができ、また上記最低溶融粘度が比較的低くなるので、エポキシ樹脂材料の穴埋め性又は凹凸追従性をより一層良好にすることができ、更に硬化物において充填剤の脱離により形成された比較的大きな孔が形成され難くなる。
上記全固形分B100重量%中、上記エポキシ樹脂と上記硬化剤との合計の含有量は、30重量%以下である。エポキシ樹脂材料の穴埋め性又は凹凸追従性を高くし、かつ粗化処理又はデスミア処理された硬化物の表面の表面粗さをより一層小さくする観点からは、上記全固形分B100重量%中、上記エポキシ樹脂と上記硬化剤との合計の含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは15重量%以上、更に好ましくは20重量%以上である。硬化物の線膨張率をより一層低くするためには、上記全固形分B100重量%中、上記エポキシ樹脂と上記硬化剤との合計の含有量は、好ましくは25重量%以下、より好ましくは23重量%以下である。
[フェノキシ樹脂]
上記樹脂組成物は、フェノキシ樹脂を含んでいてもよい。該フェノキシ樹脂の使用により、エポキシ樹脂材料の回路の凹凸への追従性を高めることができ、更に粗化処理された硬化物の表面の表面粗さをより一層小さくすることができ、粗度を均一にすることができる。
上記フェノキシ樹脂は特に限定されない。該フェノキシ樹脂として、従来公知のフェノキシ樹脂を用いることができる。上記フェノキシ樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型の骨格、ビスフェノールF型の骨格、ビスフェノールS型の骨格、ビフェニル骨格、ノボラック骨格、及びナフタレン骨格などの骨格を有するフェノキシ樹脂等が挙げられる。上記フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、5,000〜100,000の範囲内であることが好ましい。上記フェノキシ樹脂の具体例としては、例えば、東都化成社製の「YP50」、「YP55」及び「YP70」、並びにジャパンエポキシレジン社製の「1256B40」、「4250」、「4256H40」、「4275」、「YX6954BH30」、「YX8100BH30」、「YL7600DMAcH25」及び「YL7213BH30」などが挙げられる。
硬化物の表面を粗化処理した後に、金属層を形成するためにめっき処理した場合に、硬化物と金属層との接着強度を高めることができるので、上記フェノキシ樹脂は、ビフェニル骨格又はビフェノール骨格を有することが好ましく、ビフェノール骨格を有することがより好ましい。
上記フェノキシ樹脂の含有量は特に限定されない。樹脂組成分に含まれている充填剤を除く全固形分(以下、上記全固形分Aと略記することがある)100重量%中、上記フェノキシ樹脂の含有量は0〜40重量%の範囲内であることが好ましい。上記全固形分A100重量%中、上記フェノキシ樹脂の含有量は、より好ましくは20重量%以下である。上記フェノキシ樹脂を用いなくてもよい。上記フェノキシ樹脂の含有量が上記上限以下であると、粗化処理又はデスミア処理された硬化物の表面の粗度をより一層均一にすることができる。「全固形分A」とは、エポキシ樹脂と硬化剤と必要に応じて配合される他の固形分との総和をいう。全固形分Aには、充填剤は含まれない。「固形分」とは、不揮発成分であり、成形又は加熱時に揮発しない成分をいう。
[他の成分及び樹脂組成物の詳細]
上記樹脂組成物は、必要に応じて硬化促進剤を含んでいてもよい。該硬化促進剤は特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。上記硬化促進剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール化合物、リン化合物、アミン化合物及び有機金属化合物等が挙げられる。
上記イミダゾール化合物としては、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2−フェニル−4−メチル−5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
上記リン化合物としては、トリフェニルフォスフィン等が挙げられる。
上記有機金属塩としては、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)及びトリスアセチルアセトナートコバルト(III)等が挙げられる。
硬化物の電気絶縁性を高める観点からは、上記硬化促進剤は、イミダゾール化合物であることが特に好ましい。硬化物の電気絶縁性を高める観点からは、上記硬化促進剤は、有機金属化合物を含まないことが好ましい。
上記硬化促進剤の含有量は特に限定されない。エポキシ樹脂材料を効率的に硬化させる観点からは、上記全固形分A100重量%中、上記硬化促進剤の含有量は0.01〜3重量%の範囲内であることが好ましい。
耐衝撃性、耐熱性、樹脂の相溶性及び作業性等の改善を目的として、樹脂組成物には、カップリング剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線劣化防止剤、消泡剤、増粘剤、揺変性付与剤及び上述した樹脂以外の他の樹脂等を添加してもよい。
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、ビニルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン及びエポキシシラン等が挙げられる。
上記カップリング剤の含有量は特に限定されない。上記全固形分A100重量%中、上記カップリング剤の含有量は0.01〜3重量%の範囲内であることが好ましい。
上記他の樹脂としては、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチラール樹脂、ジビニルベンジルエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ベンゾオキサゾール樹脂、ビスマレイミド樹脂及びアクリレート樹脂等が挙げられる。
上記樹脂組成物を得るために、溶剤を用いてもよい。該溶剤は特に限定されず、樹脂組成物中に含まれる成分に対して良好な溶解性を示す溶剤が適宜選択されて用いられる。上記溶剤としては、例えばアセトン、メタノール、エタノール、ブタノール、2−プロパノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、2−アセトキシ−1−メトキシプロパン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、N−メチル−ピロリドン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン及び混合物であるナフサ等が挙げられる。上記溶剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記樹脂組成物は、大部分の溶剤を揮発させて用いられることが好ましい。溶剤を揮発させるために、熱による硬化が進行し過ぎない程度に、加熱乾燥すればよい。溶剤を含む樹脂組成物を、例えば90〜200℃で10〜180分間乾燥させることにより、ハンドリング性が良好なBステージフィルムを得ることができる。
上記樹脂組成物をフィルム状に成形する方法としては、例えば、押出機を用いて、樹脂組成物を溶融混練し、押出した後、Tダイ又はサーキュラーダイ等により、フィルム状に成形する押出成形法、樹脂組成物を有機溶剤等の溶剤に溶解又は分散させた後、キャスティングしてフィルム状に成形するキャスティング成形法、並びに従来公知のその他のフィルム成形法等が挙げられる。なかでも、薄型化を進めることができるので、押出成形法又はキャスティング成形法が好ましい。フィルムにはシートが含まれる。
上記樹脂組成物をフィルム状に成形することにより、Bステージフィルムを得ることができる。
上述のような乾燥工程により得ることができる、ハンドリング性が良好なフィルム状の樹脂組成物をBステージフィルムと称する。更に、ハンドリング性をより一層高めるために、完全硬化に至らない範囲で半硬化状態とされたフィルム状の樹脂組成物もBステージフィルムと称する。
上記Bステージフィルムは、半硬化状態にある半硬化物である。半硬化物は、完全に硬化しておらず、硬化がさらに進行され得る。
上記Bステージフィルムの固形分100重量部に対して、上記溶剤の含有量は、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.3重量部以上、好ましくは6重量部以下、より好ましくは3重量部以下である。上記溶剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、Bステージフィルムの表面の粘着性が高くなりすぎず、ハンドリング性を高めることができる。さらに、Bステージフィルムを他の部材に積層した場合に、表面の平坦性を高めることができる。
上記樹脂組成物は、基材と、該基材の一方の表面に積層されたBステージフィルムとを備える積層フィルムを形成するために好適に用いることができる。積層フィルムのBステージフィルムが、上記樹脂組成物により形成される。
上記積層フィルムの上記基材としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム及びポリブチレンテレフタレートフィルムなどのポリエステル樹脂フィルム、ポリエチレンフィルム及びポリプロピレンフィルムなどのオレフィン樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、銅箔及びアルミニウム箔などの金属箔等が挙げられる。上記基材の表面は、必要に応じて、離型処理されていてもよい。
上記エポキシ樹脂材料を回路の絶縁層として用いる場合、エポキシ樹脂材料により形成された層の厚さは、回路を形成する導体層の厚さ以上であることが好ましい。上記エポキシ樹脂材料により形成された層の厚さは、好ましくは5μm以上、好ましくは200μm以下である。
上記樹脂組成物は、基材に含浸され、プリプレグとされてもよい。
上記基材としては、例えば金属、ガラス、カーボン、アラミド、ポリエステル又は芳香族ポリエステル等により形成された織布又は不織布、並びにフッ素系樹脂又はポリエステル系樹脂等により形成された多孔質膜等が挙げられる。
(プリント配線板)
次に、プリント配線板について説明する。
上記プリント配線板は、例えば、上記樹脂組成物により形成されたBステージフィルムを用いて、該Bステージフィルムを加熱加圧成形することにより得られる。
上記Bステージフィルムに対して、片面又は両面に金属箔を積層できる。上記Bステージフィルムと金属箔とを積層する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、平行平板プレス機又はロールラミネータ等の装置を用いて、加熱しながら又は加熱せずに加圧しながら、上記Bステージフィルムを金属箔に積層できる。上記加熱の温度及び上記加圧の圧力は適宜変更することができ、特に限定されない。上記加熱の温度は、好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上、好ましくは220℃以下、より好ましくは180℃以下である。上記加圧の圧力は、好ましくは0.5MPa以上、より好ましくは1MPa以上、好ましくは10MPa以下、より好ましくは6MPa以下である。
(銅張り積層板及び回路基板)
上記エポキシ樹脂材料は、銅張り積層板を得るために好適に用いられる。上記銅張り積層板の一例として、銅箔と、該銅箔の一方の表面に積層されたBステージフィルムとを備える銅張り積層板が挙げられる。この銅張り積層板のBステージフィルムが、本発明に係るエポキシ樹脂材料により形成される。
上記銅張り積層板の上記銅箔の厚さは特に限定されない。上記銅箔の厚さは、1〜50μmの範囲内であることが好ましい。また、エポキシ樹脂材料を硬化させた硬化物層と銅箔との接着強度を高めるために、上記銅箔は微細な凹凸を表面に有することが好ましい。凹凸の形成方法は特に限定されない。上記凹凸の形成方法としては、公知の薬液を用いた処理による形成方法等が挙げられる。
また、本発明に係るエポキシ樹脂材料は、多層基板を得るために好適に用いられる。上記多層基板の一例として、回路基板と、該回路基板の表面上に積層された硬化物層とを備える回路基板が挙げられる。この多層基板の硬化物層が、上記エポキシ樹脂材料を硬化させることにより形成される。上記硬化物層は、回路基板の回路が設けられた表面上に積層されていることが好ましい。上記硬化物層の一部は、上記回路間に埋め込まれていることが好ましい。本発明に係るエポキシ樹脂材料の使用により、上記回路間に上記硬化物層を十分に埋め込ませることができる。
上記多層基板では、上記硬化物層の上記回路基板が積層された表面とは反対側の表面が粗化処理又はデスミア処理されていることが好ましく、粗化処理されていることがより好ましい。
粗化処理方法は、従来公知の粗化処理方法を用いることができ特に限定されない。上記硬化物層の表面は、粗化処理の前に膨潤処理されていてもよい。
また、上記多層基板は、上記硬化物層の粗化処理された表面に積層された銅めっき層をさらに備えることが好ましい。
また、上記多層基板の他の例として、回路基板と、該回路基板の表面上に積層された硬化物層と、該硬化物層の上記回路基板が積層された表面とは反対側の表面に積層された銅箔とを備える回路基板が挙げられる。上記硬化物層及び上記銅箔が、銅箔と該銅箔の一方の表面に積層されたBステージフィルムとを備える銅張り積層板を用いて、上記Bステージフィルムを硬化させることにより形成されていることが好ましい。さらに、上記銅箔はエッチング処理されており、銅回路であることが好ましい。
上記多層基板の他の例として、回路基板と、該回路基板の表面上に積層された複数の硬化物層とを備える回路基板が挙げられる。上記複数層の硬化物層の内の上記回路基板側とは反対の外側の表面に位置する硬化物層が、上記エポキシ樹脂材料を硬化させることにより形成される。上記外側の表面に位置する硬化物層は、回路基板の回路が形成された表面上に積層されていることが好ましい。上記多層基板は、上記エポキシ樹脂材料を硬化させることにより形成されている上記硬化物層の少なくとも一方の表面に積層されている回路をさらに備えることが好ましい。
図1に本発明の一実施形態に係るエポキシ樹脂材料を用いた多層基板を模式的に部分切欠正面断面図で示す。
図1に示す多層基板11では、回路基板12の上面12aに、複数層の硬化物層13〜16が積層されている。複数層の硬化物層のうち、回路基板12側とは反対の外側の表面に位置する硬化物層16以外の硬化物層13〜15には、上面の一部の領域に金属層17が形成されている。金属層17は回路である。すなわち、積層された硬化物層13〜16の各層間に、金属層17がそれぞれ配置されている。下方の金属層17と上方の金属層17とは、図示しないビアホール接続及びスルーホール接続の内の少なくとも一方により互いに接続されている。
多層基板11では、硬化物層13〜16が、本発明に係るエポキシ樹脂材料を硬化させることにより形成されている。本実施形態では、硬化物層13〜16の表面が粗化処理又はデスミア処理されているので、硬化物層13〜16の表面に図示しない微細な孔が形成されている。また、微細な孔の内部に金属層17が至っている。従って、硬化物層13〜16と金属層17との接着強度を高めることができる。また、多層基板11では、金属層17の幅方向寸法(L)と、金属層17が形成されていない部分の幅方向寸法(S)とを小さくすることができる。
(粗化処理及び膨潤処理)
本発明に係るエポキシ樹脂材料は、粗化処理又はデスミア処理される硬化物を得るために用いられることが好ましい。上記硬化物には、更に硬化が可能な予備硬化物も含まれる。
本発明に係るエポキシ樹脂材料を予備硬化させることにより得られた予備硬化物の表面に微細な凹凸を形成するために、予備硬化物は粗化処理されることが好ましい。粗化処理の前に、予備硬化物は膨潤処理されることが好ましい。硬化物は、予備硬化の後、かつ粗化処理される前に、膨潤処理されており、さらに粗化処理の後に硬化されていることが好ましい。ただし、予備硬化物は、必ずしも膨潤処理されなくてもよい。
上記膨潤処理の方法としては、例えば、エチレングリコールなどを主成分とする化合物の水溶液又は有機溶媒分散溶液などにより、予備硬化物を処理する方法が用いられる。具体的には、例えば、上記膨潤処理は、40重量%エチレングリコール水溶液等を用いて、処理温度30〜85℃で1〜20分間、予備硬化物を処理することにより行なわれる。上記膨潤処理の温度は50〜85℃の範囲内であることが好ましい。上記膨潤処理の温度が低すぎると、膨潤処理に長時間を要し、更に硬化物と金属層との粗化接着強度が低くなる傾向がある。
上記粗化処理には、例えば、マンガン化合物、クロム化合物又は過硫酸化合物などの化学酸化剤等が用いられる。これらの化学酸化剤は、水又は有機溶剤が添加された後、水溶液又は有機溶媒分散溶液として用いられる。
上記マンガン化合物としては、過マンガン酸カリウム及び過マンガン酸ナトリウム等が挙げられる。上記クロム化合物としては、重クロム酸カリウム及び無水クロム酸カリウム等が挙げられる。上記過硫酸化合物としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
上記粗化処理の方法は特に限定されない。上記粗化処理の方法として、例えば、30〜90g/L過マンガン酸又は過マンガン酸塩溶液及び30〜90g/L水酸化ナトリウム溶液を用いて、処理温度30〜85℃及び1〜10分間の条件で、1回又は2回、予備硬化物を処理する方法が好適である。上記粗化処理の温度は50〜85℃の範囲内であることが好ましい。
(デスミア処理)
また、本発明に係るエポキシ樹脂材料を予備硬化させることにより得られた予備硬化物又は硬化物に、貫通孔が形成されることがある。上記多層基板などでは、貫通孔として、ビア又はスルーホール等が形成される。例えば、ビアは、CO2レーザー等のレーザーの照射により形成できる。ビアの直径は特に限定されないが、60〜80μm程度である。上記貫通孔の形成により、ビア内の底部には、硬化物層に含まれている樹脂成分に由来する樹脂の残渣であるスミアが形成されることが多い。
上記スミアを除去するために、硬化物層の表面は、デスミア処理されることが好ましい。デスミア処理が粗化処理を兼ねることもある。
上記デスミア処理には、上記粗化処理と同様に、例えば、マンガン化合物、クロム化合物又は過硫酸化合物などの化学酸化剤等が用いられる。これらの化学酸化剤は、水又は有機溶剤が添加された後、水溶液又は有機溶媒分散溶液として用いられる。
上記デスミア処理の方法は特に限定されない。上記デスミア処理の方法として、例えば、30〜90g/L過マンガン酸又は過マンガン酸塩溶液及び30〜90g/L水酸化ナトリウム溶液を用いて、処理温度30〜85℃及び1〜10分間の条件で、1回又は2回、予備硬化物又は硬化物を処理する方法が好適である。上記デスミア処理の温度は50〜85℃の範囲内であることが好ましい。
本発明に係るエポキシ樹脂材料の使用により、デスミア処理された硬化物の表面の表面粗さを十分に小さくすることができる。
以下、実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
実施例及び比較例では、以下に示す材料を用いた。
(エポキシ樹脂)
ビスフェノールS型エポキシ樹脂(DIC社製「EXA−1517」、エポキシ当量230)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(日本化薬社製「RE410S」、エポキシ当量178)
(硬化剤)
シアネートエステル樹脂溶液(シアネートエステル硬化剤、ビスフェノールAジシアネートがトリアジン化され、三量体とされたプレポリマー、ロンザジャパン社製「BA230S−75」、シアネート基当量230、重量平均分子量1000以下、固形分75重量%とメチルエチルケトン25重量%とを含む)
フェノール化合物1(フェノール硬化剤、明和化成社製「MEH7851−4H」、水酸基当量241、重量平均分子量3000以上)
フェノール化合物2溶液(アミノトリアジン骨格を有するフェノール硬化剤、DIC社製「LA3018−50P」、水酸基当量151、重量平均分子量1000以下、固形分50重量%とプロピレングリコールモノメチルエーテル50重量%とを含む)
フェノール化合物3(フェノール硬化剤、明和化成社製「MEH7851−SS」、水酸基当量202、重量平均分子量2000以下)
(硬化促進剤)
イミダゾール化合物(2−フェニル−4−メチルイミダゾール、四国化成社製「2P4MZ」)
(充填剤)
シリカ含有スラリー(アドマテックス社製「SC2050HNF」、平均粒子径0.5μmの溶融シリカ、シリカ100重量部がビニルシラン(アリル基含有トリメトキシシラン)0.5重量部で表面処理されている、固形分70重量%とシクロヘキサノン30重量%とを含む)
なお、硬化剤の重量平均分子量は、下記の測定装置及び測定条件により測定された値である。
〔重量平均分子量(Mw)の測定装置及び測定条件〕
高速液体クロマトグラフシステム(島津製作所社製)
システムコントローラー:SCL−10A VP
送液ユニット:LC−10AD
VPデガッサー:DGU−12A
示差屈折計(RI)検出器:RID−10A
オートインジェクター:SIL−10AD VP
カラムオーブン:CTO−10AS VP
カラム:SHODEX KD803(排除限界分子量70000)×2(直列)
カラム温度:50℃
流量:0.8mL/分
溶離液:ジメチルホルムアミド(DMF;和光純薬工業社製、安定剤を含まない、HPLC用。LiBr(臭化リチウム)10mmol/L含有)
サンプル:0.1質量%
検出器:RI
(実施例1)
シリカ含有スラリー(アドマテックス社製「SC2050HNF」)82.2重量部と、シアネートエステル樹脂溶液(ロンザジャパン社製「BA230S−75」)4.5重量部と、ビスフェノールS型エポキシ樹脂(DIC社製「EXA−1517」)13.1重量部と、イミダゾール化合物(四国化成社製「2P4MZ」)0.2重量部とを混合し、均一な液となるまで常温で攪拌し、樹脂組成物ワニスを得た。
離型処理された透明なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(リンテック社製「PET5011 550」、厚み50μm)を用意した。このPETフィルム上にアプリケーターを用いて、乾燥後の厚みが50μmとなるように、得られた樹脂組成物ワニスを塗工した。次に、100℃のギアオーブン内で150秒乾燥して、縦200mm×横200mm×厚み50μmの樹脂シートの未硬化物とポリエチレンテレフタレートフィルムとの積層フィルムを作製した。次に、積層フィルムからポリエチレンテレフタレートフィルムを剥がし、樹脂シートの未硬化物を180℃のギアオーブン内で80分間加熱して、樹脂シートの一次硬化物を作製した。
(実施例2〜4及び比較例1〜3)
使用した材料の種類及び配合量(重量部)を下記の表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、積層フィルム及び樹脂シートの一次硬化物を作製した。
(評価)
(1)平均線膨張率
得られた樹脂シートの一次硬化物を、190℃で3時間加熱し、更に硬化させ、硬化物Aを得た。得られた硬化物Aを、3mm×25mmの大きさに裁断した。線膨張率計(セイコーインスツルメンツ社製「TMA/SS120C」)を用いて、引張り荷重3.3×10−1N、昇温速度5℃/分の条件で、裁断された硬化物の0〜50℃における平均線膨張率を測定した。
(2)エポキシ樹脂材料の最低溶融粘度
Rheometer装置(TAインスツルメント社製「AR−2000」)を用いて、歪み21.6%及び周波数1Hzの条件で、得られた樹脂シートの未硬化物(Bステージフィルム)の50〜150℃の温度領域での粘度を測定し、粘度が最も低くなる値を最低溶融粘度とした。
(3)ガラス転移温度
得られた樹脂シートの一次硬化物を、190℃で3時間加熱し、更に硬化させ、硬化物Aを得た。DMA(ダイナミックメカニカルアナリシス)装置(SIIナノテクノロジー社製)「EXSTAR6000」を用いて、昇温速度5℃/分及び周波数10Hzの条件で、得られた硬化物Aのガラス転移温度を測定した。
(4)算術平均粗さRa
実施例及び比較例で得られた積層フィルムを、樹脂シートの未硬化物が、ガラスエポキシ基板(FR−4、品番「CS−3665」、利昌工業社製)側となるようにセットした。積層フィルムとガラスエポキシ基板とを、100℃に加熱した平行平板プレス機を用いて、減圧下で0.5MPaで60分間加圧加熱し、樹脂シートの一次硬化物を含む積層体を得た。その後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥がし、ガラスエポキシ基板と予備硬化物との積層体を得た。その後、予備硬化物を、下記の(a)膨潤処理をした後、下記の(b)過マンガン酸塩処理すなわち粗化処理をした。
(a)膨潤処理:
60℃の膨潤液(スウェリングディップセキュリガントP、アトテックジャパン社製)に、上記積層体を入れて、20分間揺動させた。その後、純水で洗浄した。
(b)過マンガン酸塩処理:
75℃の過マンガン酸カリウム(コンセントレートコンパクトCP、アトテックジャパン社製)粗化水溶液に、上記積層体を入れて、20分間揺動させ、ガラスエポキシ基板上に粗化処理された硬化物を得た。得られた硬化物を、23℃の洗浄液(リダクションセキュリガントP、アトテックジャパン社製)により2分間洗浄した後、純粋でさらに洗浄した。
120℃のギアオーブン中で2時間乾燥し、冷却した後、JIS B0601−1994に準拠して、粗化処理された表面の算術平均粗さRaを測定した。
(5)ラミネート性(埋め込み性)
銅張り積層板(厚さ150μmのガラスエポキシ基板と厚さ25μmの銅箔との積層体)を用意した。銅箔をエッチング処理し、L/Sが50μm/50μm及び長さが1cmである銅パターンを26本作製し、凹凸基板を得た。
実施例及び比較例で得られた樹脂シートの未硬化物(厚さ50μm)を凹凸基板の凹凸表面に重ねて、名機製作所製真空加圧式ラミネーター機(型番MVLP−500)を用い、ラミネート圧0.4MPa及びラミネート温度90℃で20秒、更にプレス圧力0.8MPa及びプレス温度90℃で20秒の各条件で、ラミネート及びプレスした。このようにして、凹凸基板上に樹脂シートの未硬化物が積層されている積層体を得た。
得られた積層体において、樹脂シートの未硬化物を180℃のギアオーブン内で80分間加熱して、硬化物Cを得た。
[ラミネート性の評価]
硬化物Cを、各銅パターンの長手方向に直交する方向に切断し、硬化物Cの断面を露出させた。
次に、各銅パターン間の銅パターンが形成されていない部分(凹部)に対応する硬化物C部分の状態を、光学顕微鏡を用いて観察した。銅パターンが形成されていない部分(凹部)に対応する硬化物C部分25箇所中、埋め込みができていない箇所の数T1を計測し、凹凸表面に対する硬化物Cの密着性(埋め込み性)を評価した。
さらに、光学顕微鏡を用いて、銅パターン(凸部)に対応する硬化物C部分25箇所の各厚みを測定した。
ラミネート性を下記の判定基準で判定した。
[ラミネート性の判定基準]
○○:埋め込みができていない箇所の数T1が0かつ最小厚みが42μm以上
○:埋め込みができていない箇所の数T1が0かつ最小厚みが35μm以上42μm未満
×:埋め込みができていない箇所の数T1が1以上又は最小厚みが35μm未満
なお、硬化物Cの埋め込み性及び厚みは、ラミネート後のエポキシ樹脂材料の埋め込み性及び厚みと相関がある。
結果を下記の表1に示す。