JP5302859B2 - 微粉炭焚きボイラシステム - Google Patents
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Description
図3の従来例は、微粉炭焚きの空気燃焼ボイラシステム10を示す構成図である。この空気燃焼ボイラシステム10は、石炭燃料を微粉炭機11で所望の微粉度に粉砕して微粉炭とし、この微粉炭を気流搬送の空気(1次空気)とともに石炭焚きボイラ12へ投入する。
石炭焚きボイラ12で発生した燃焼排ガスは、脱硝装置13、冷却装置14、脱塵装置15及び脱硫装置16を通過する排ガス処理工程を経ることにより、排ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)、チャー等の粉塵及び硫黄酸化物(SOx)等が除去されて煙突17から大気へ放出される。こうして大気放出された燃焼排ガスには、多くの二酸化炭素(CO2)が含まれている。
図4に示す空気燃焼ボイラシステム10Aは、上述した微粉炭焚きの空気燃焼ボイラシステム10に加え、石炭焚きボイラ12から排出される燃焼排ガス(ボイラ排ガス)に含まれる二酸化炭素を回収する二酸化炭素分離装置18を備えている。この二酸化炭素分離装置18は、脱硫装置16の下流に設置されており、空気により、微粉炭を燃焼して排出された燃焼排ガス(ボイラ排ガス)から二酸化炭素だけを分離して回収する装置である。なお、微粉炭を燃焼させて排出される燃焼排ガスの成分について一例を示すと、たとえば窒素が78%,Arが1%,酸素が2〜8%,二酸化炭素が13〜19%となる。
図4に示す空気燃焼ボイラシステム10Aのように、空気燃焼ボイラ排ガスから二酸化炭素だけを分離して回収するものでは、燃焼排ガス中の二酸化炭素濃度が低いことから、二酸化炭素分離装置18で二酸化炭素を分離する際に大きな動力や熱エネルギーを必要とする。なお、燃焼排ガス中の二酸化炭素を分離する手法としては、吸収法、吸着法、膜分離法等が用いられる。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、動力等のランニングコストを低減して効率のよい二酸化炭素の分離・回収が可能となる、すなわち、排出する二酸化炭素量を効率よく低減することができる微粉炭焚きボイラシステムを提供することにある。
本発明の請求項1に係る微粉炭焚きボイラシステムは、微粉炭を燃料として空気で燃焼させる石炭焚きボイラを備え、該石炭焚きボイラから排出された石炭燃焼排ガスを脱硝、冷却、脱塵及び脱硫の排ガス処理工程を経て大気放出する空気燃焼ボイラシステムと、前記空気燃焼ボイラシステムの脱塵工程からチャーを導入し、空気から分離した酸素とチャー燃焼排ガスとの混合ガスにより前記チャーを燃焼させる酸素燃焼ボイラを備え、前記チャー燃焼排ガスが前記酸素燃焼ボイラから排出された後に脱硝、冷却、脱塵及び脱硫の排ガス処理工程を経てから二酸化炭素を回収するとともに、前記排ガス処理工程を経た一部のチャー燃焼排ガスを前記酸素と混合して前記混合ガスとする酸素燃焼ボイラシステムとを具備して構成され、前記石炭焚きボイラに供給される燃焼用空気量が、微粉炭の完全燃焼に必要な理論空気量より少ない値に設定されていることを特徴とするものである。
また、酸素燃焼ボイラシステムにおいては、空気燃焼ボイラシステムで微粉炭の揮発分(主に水素や硫黄分等)のみが燃焼し、かつ、チャーの燃焼に、空気から窒素が除去された酸素と、二酸化炭素が主成分のチャー燃焼排ガスとの混合ガスが用いられるため、硫黄酸化物を形成する硫黄分や窒素酸化物を形成する窒素が系内にほとんど存在しない。従って、チャー燃焼排ガス中に硫黄酸化物や窒素酸化物が含まれることはほとんどなく、これらを除去する脱硝装置や脱硫装置は不要となる。
<第1の実施形態>
図1に示す実施形態において、微粉炭焚きボイラシステムBS1は、微粉炭を燃料とする空気燃焼ボイラシステム(微粉炭焚きの空気燃焼ボイラシステム)10′のプラント1と、この空気燃焼ボイラシステム10′から排出されたチャー(未燃炭素含有灰)を回収して燃料とする酸素燃焼ボイラシステム20Aのプラント2とにより構成される。
この空気燃焼ボイラシステム10′では、石炭焚きボイラ12′に供給される燃焼用空気量が、微粉炭を完全燃焼するための理論空気量よりも低めに、たとえば20〜50%程度の空気供給量に設定される。
すなわち、図3に示す従来例の微粉炭焚き空気燃焼ボイラシステム10では、微粉炭を完全燃焼させるため、必要な理論空気量以上の燃焼用空気が石炭焚きボイラ12に供給されているが、本実施形態の石炭焚きボイラ12′に供給される燃焼用空気量は、主に微粉炭の揮発分である水素(H)、硫黄(S)及び炭素(C)の一部のみを選択的に燃焼させるように、理論空気量よりも低めに設定されている。
石炭焚きボイラ12′から排出された石炭燃焼排ガスは、最初に脱硝装置13に導かれる。この脱硝装置13では、たとえばアンモニア(NH3)を用いて、石炭燃焼排ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)を除去する脱硝が行われる。
脱硝後の石炭燃焼排ガスは、次の排ガス処理工程で冷却装置14に導かれ、所望の温度まで冷却される。
こうして回収されたチャーは、プラント1の脱塵装置15とプラント2の酸素燃焼ボイラ(ボイラ2)12Aとの間を接続するチャー供給ライン30を通り、酸素燃焼ボイラシステム20Aのボイラ燃料として供給される。
こうして、脱硝、冷却、脱塵及び脱硫の排ガス処理工程を経た石炭燃焼排ガスは、窒素酸化物、チャー等の粉塵及び硫黄酸化物等が除去されたクリーンな排ガスとして煙突17から大気へ放出される。また、ここで放出される石炭燃焼排ガスは、プラント1の石炭焚きボイラ12′が、燃焼用空気の供給量を理論空気量より低減し、主に揮発分のみを燃焼させるボイラであるため、空気で微粉炭を完全燃焼する従来のボイラ(図3参照)と比較して、大気へ放出される排ガス中の二酸化炭素量は減少する。
酸素分離装置19で製造した酸素は、脱硫装置16を通って脱硫された酸素燃焼ボイラ12Aから分岐させたチャー燃焼排ガスの一部と、すなわち、酸素の希釈用として導入された再循環用排ガスと混合されることにより、酸素を含んだ混合ガスとなる。この混合ガスは、プラント1から供給されるチャーの燃焼用として、酸素燃焼ボイラ12Aに投入される。
こうして脱硝、冷却、脱塵及び脱硫の排ガス処理工程を経たチャー燃焼排ガスは、一部が再循環用排ガスとして酸素燃焼ボイラ12Aの上流側へ分岐・導入され、残ったチャー燃焼排ガスが二酸化炭素として回収される。
すなわち、この酸素燃焼ボイラシステム20Aでは、二酸化炭素を主成分とする再循環用排ガスと酸素分離装置19で製造した酸素との混合ガスがチャーの燃焼用として酸素燃焼ボイラ12Aに投入され、しかも、燃料のチャー自体が水素(H)や硫黄(S)等の揮発分を除去された炭素(C)が主体であるため、そのチャー燃焼排ガスは主成分が二酸化炭素となる。従って、チャー燃焼排ガスから二酸化炭素を分離回収する必要がなく、二酸化炭素の分離回収に必要だった動力や熱エネルギーの消費を削減することができる。
また、本実施形態の空気燃焼ボイラシステム10′は、従来の微粉炭焚き空気燃焼ボイラシステム10と比較して、燃焼用空気の供給量が微粉炭を完全燃焼させるために必要な理論空気量よりも低めに設定されるので、燃焼用空気の供給量低減により燃焼用空気供給用のファン動力を低減でき、しかも、石炭燃焼排ガス量が減少するので、石炭燃焼排ガス(ボイラ排ガス)による顕熱ロスを低減できる。このようなファン動力・顕熱ロスの低減は、微粉炭焚きボイラシステムBS1のランニングコスト削減に有効である。
しかも、酸素燃焼ボイラシステム20Aで必要な酸素製造工程においても、酸素分離装置19で消費する動力は、固定炭素の燃焼に必要な酸素量を製造すればよいので、図5に示した従来の微粉炭焚きの酸素燃焼ボイラシステム20と比較して、必要酸素量の減少分だけ所要動力を低減できる。このような酸素分離装置19の動力低減も、微粉炭焚きボイラシステムBS1のランニングコスト削減に有効である。
すなわち、プラント1の空気燃焼ボイラシステム10′及びプラント2の酸素燃焼ボイラシステム20Aをともに新設する微粉炭焚きボイラシステムBS1、プラント1の空気燃焼ボイラシステム10′に既設プラントを流用し、プラント2の酸素燃焼ボイラシステム20Aを新設する微粉炭焚きボイラシステムBS1、そして、プラント1の空気燃焼ボイラシステム10′及びプラント2の酸素燃焼ボイラシステム20Aをともに既設プラントの流用とする微粉炭焚きボイラシステムBS1への適用が可能である。
また、たとえばプラント2の酸素燃焼ボイラシステム20Aに既設の微粉炭焚き空気燃焼ボイラシステム10を改造して流用するような場合には、空気から酸素を製造する酸素分離装置19の追設や、脱硫後のチャー燃焼排ガス(二酸化炭素)を回収する設備の追設が必要になる。
続いて、本発明に係る微粉炭焚きボイラシステムの構成例について、第2の実施形態を図2に基づいて説明する。なお、上述した実施形態と同様の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図2に示す実施形態の微粉炭焚きボイラシステムBS2は、微粉炭を燃料とする空気燃焼ボイラシステム(微粉炭焚きの空気燃焼ボイラシステム)10′のプラント1と、この空気燃焼ボイラシステム10′から排出されたチャー(未燃炭素含有灰)を回収して燃料とする酸素燃焼ボイラシステム20Bのプラント2とにより構成される。
すなわち、第1の実施形態においては、脱硝、冷却、脱塵及び脱硫の排ガス処理工程を経たチャー燃焼排ガスから二酸化炭素を回収しているが、本実施形態では、冷却及び脱塵のみを実施する排ガス処理工程となる。従って、酸素燃焼ボイラ12Aの下流側には、チャー燃焼排ガスの排ガス処理を行う冷却装置14及び脱塵装置15が設けられているものの、脱硝装置13及び脱硫装置16の設置がない簡略化したシステムとなっている。
最後に、本発明に係る微粉炭焚きボイラシステムの構成例について、第3の実施形態を図1及び図2に基づいて説明する。
この実施形態は、上述した第1の実施形態及び第2の実施形態で説明した微粉炭焚きボイラシステムBS1,BS2において、プラント1の空気燃焼ボイラシステム10′に設けられている微粉炭機11の運転条件を調整することにより、微粉炭機11で粉砕される微粉炭の微粉度を低下(平均粒径を増加)させて運転するものである。微粉度を低下させる運転条件の調整は、たとえば回転式分級器を備えた微粉炭機11の場合、回転式分給器の回転数を低下させればよい。
具体的には、石炭焚きボイラ12′に供給される燃焼用空気量が、微粉炭を完全燃焼させる理論空気量以上とする場合の微粉度が通常200メッシュパス70〜90%程度であるのに対し、理論空気量の20〜50%程度の燃焼用空気量を供給する場合には、200メッシュパス50%程度の微粉度に低下させることが可能である。
このように、微粉度を低下させた運転は、微粉炭機11の動力を低減した運転が可能になるので、ランニングコストの削減に有効である。
また、上述した本発明の実施形態によれば、燃焼用空気の供給量が微粉炭を完全燃焼させるために必要な理論空気量よりも低めに設定されているので、燃焼用空気の供給低減により燃焼用空気供給用のファン動力を低減でき、しかも、石炭燃焼排ガス量が減少して石炭燃焼排ガス(ボイラ排ガス)による顕熱ロスを低減できるため、粉炭焚きボイラシステムBS1,BS2のランニングコスト削減とともに熱効率のよい運転が可能となる。
さらにまた、微粉度を低下させた微粉炭を石炭焚きボイラ12′で燃焼させる運転は、微粉炭機11の動力を低減した運転が可能になるので、これによってもランニングコストの削減が可能になる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
11 微粉炭機
12,12′ 石炭焚きボイラ
12A 酸素燃焼ボイラ
13 脱硝装置
14 冷却装置(エアヒータ)
15 脱塵装置
16 脱硫装置
17 煙突
19 酸素分離装置
20,20A,20B 酸素燃焼ボイラシステム
30 チャー供給ライン
BS1,BS2 微粉炭焚きボイラシステム
Claims (3)
- 微粉炭を燃料として空気で燃焼させる石炭焚きボイラを備え、該石炭焚きボイラから排出された石炭燃焼排ガスを脱硝、冷却、脱塵及び脱硫の排ガス処理工程を経て大気放出する空気燃焼ボイラシステムと、
前記空気燃焼ボイラシステムの脱塵工程からチャーを導入し、空気から分離した酸素とチャー燃焼排ガスとの混合ガスにより前記チャーを燃焼させる酸素燃焼ボイラを備え、前記チャー燃焼排ガスが前記酸素燃焼ボイラから排出された後に脱硝、冷却、脱塵及び脱硫の排ガス処理工程を経てから二酸化炭素を回収するとともに、前記排ガス処理工程を経た一部のチャー燃焼ガスを前記酸素と混合して前記混合ガスとする酸素燃焼ボイラシステムとを具備して構成され、
前記石炭焚きボイラに供給される燃焼用空気量が、微粉炭の完全燃焼に必要な理論空気量より少ない値に設定されていることを特徴とする微粉炭焚きボイラシステム。 - 微粉炭を燃料として空気で燃焼させる石炭焚きボイラを備え、該石炭焚きボイラから排出された石炭燃焼排ガスを脱硝、冷却、脱塵及び脱硫の排ガス処理工程を経て大気放出する空気燃焼ボイラシステムと、
前記空気燃焼ボイラシステムの脱塵工程からチャーを導入し、空気から分離した酸素とチャー燃焼排ガスとの混合ガスにより前記チャーを燃焼させる酸素燃焼ボイラを備え、前記チャー燃焼排ガスが前記酸素燃焼ボイラから排出された後に冷却及び脱塵の排ガス処理工程を経て二酸化炭素が回収されるとともに、前記排ガス処理工程を経た一部のチャー燃焼ガスを前記酸素と混合して前記混合ガスとする酸素燃焼ボイラシステムとを具備して構成され、
前記石炭焚きボイラに供給される燃焼用空気量が、微粉炭の完全燃焼に必要な理論空気量より少ない値に設定されていることを特徴とする微粉炭焚きボイラシステム。 - 前記石炭焚きボイラに供給する微粉炭の微粉度が、微粉炭を完全燃焼させる理論空気量以上の燃焼空気量を供給する場合と比較して低く設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の微粉炭焚きボイラシステム。
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