以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の吸収性物品の一実施形態としての失禁ライナの斜視図が示されている。また図2には、図1に示す失禁ライナの分解斜視図が示されている。
図1及び図2に示すライナ10は、着用者のショーツ内面における股下部に装着されて、主として尿や経血の吸収に用いられるものである。ライナ10は、長手方向及びそれに直交する幅方向を有する縦長の形状をしている。
ライナ10は、その着用時に着用者の肌側を向く表面シート11と、該表面シート11と対向し、かつショーツ内面側を向く裏面シート12とを有している。表面シート11と裏面シート12とはほぼ同形をしており、いずれも略長円形をなしている。表面シート11及び裏面シート12は、それらの長手方向における中央域が内方へ向けて湾曲したくびれ形状になっている。そして、これらのシート11,12の輪郭が、平面視におけるライナ10の外縁を画成している。ライナ10におけるくびれ部位は、ライナ10における最小幅部になっている。なお、図示していないが、裏面シート12における外面であるショーツ内面を向く面には、ライナ10をショーツ内面に固定するための粘着剤が塗布されている。この粘着剤は、ライナ10の使用時まで剥離シート(図示せず)によって保護されている。
表面シート11と裏面シート12とは、それらの周縁部において当接し、所定の幅でもって互いに接合され、接合部(図示せず)を形成している。また、両シート11,12の間に、シート状の吸収体14が介在配置されている。更に、表面シート11と吸収体14との間に消臭シート13が配され、吸収体14と裏面シート12との間に吸水シート15が配置されている。このように、本実施形態のライナ10においては、表面シート11と裏面シート12との間に、消臭シート13、吸収体14及び吸水シート15という3種類のシート状の部材が介在配置されている。その結果、ライナ10は、それを構成する主要部材がシートからなるので、薄型のものとなる。例えばライナ10は、1500Paの荷重下における厚みが好適には1.5〜5.0mm程度の薄型のものである。
更に、図1に示すように、表面シート11の肌対向面側における左右両側部には、ライナ10の長手方向に延びる一対の帯状の撥水性シートからなる防漏カフ16,16が接合されている。図2に示すように防漏カフ16は、ライナ10の長手方向中央部における幅方向の縦断面視において略L字状をなしている。略L字状をなす防漏カフ16は、表面シート11との接合部16aと、接合部16aと連なり、かつ上方に向けて起立する防漏壁部16bとから構成されている。一対の防漏カフ16は、それらの防漏壁部16bが、ライナ10の幅方向内方側に位置して相対向し、かつ接合部16aがライナ10の幅方向外方側に位置するように配置されている。ライナ10の前端部寄りの位置及び後端部寄りの位置においては、防漏カフ16の防漏壁部16bは、ライナ10の幅方向外方に向けて倒伏されており、接合部16aと接合されている。防漏壁部16bの上端部には、糸ゴム等からなる弾性部材16c(図1参照)が、防漏カフ16の長手方向に沿って伸長状態で配されている。
防漏カフ16を構成する撥水性シートとしては、ライナ10の装着状態において、着用者の体圧を受けても、液の甚だしい透過を阻止し得る程度の撥水性を有する繊維シートが好適に用いられる。そのような繊維シートとしては、疎水性の合成樹脂を原料とする繊維からなる各種不織布が好適に用いられる。
吸収体14は、ライナ10の長手方向と一致する長手方向を有する矩形のものである。本実施形態のライナ10は、この吸収体14に特徴の一つを有するものである。以下、この吸収体14について詳述する。図3(a)には、吸収体14の幅方向の断面図が示されている。吸収体14は、同一の又は異なる2枚の液透過性シート21a,21b間に高吸収性ポリマーの粒子22が多数挟持されてなる構造を有している。吸収体14において高吸収性ポリマーの粒子22は、所定幅をもって筋状に、かつ多列に配されて、高坪量領域を形成している。高吸収性ポリマーの粒子22のこのような配置によって、吸収体14には高吸収性ポリマーの粒子22の高坪量領域である存在領域23と低坪量領域である非存在領域24とが、筋状にかつ交互に形成される。図3(a)においては、三条の存在領域23と四条の非存在領域24とが示されている。なお、本発明において「低坪量領域」とは「高坪量領域」に比べて高吸収性ポリマー坪量が十分に低い領域のことを言い、具体的には高坪量領域に存在する高吸収性ポリマーの坪量の1/10以下、好ましくは1/100以下の坪量である領域である。
高吸収性ポリマーの粒子22の非存在領域24においては、2枚の液透過性シート21a,21bどうしが直接に当接して互いに接合されている。その結果、非存在領域24は、吸収体14において厚みが相対的に薄い領域になっている。一方、高吸収性ポリマーの粒子22の存在領域においては、2枚の液透過性シート21a,21bは高吸収性ポリマーの粒子22を介して離間して非接合状態になっている。その結果、存在領域23は、吸収体14において厚みが相対的に大きな領域になっている。
吸収体14の幅方向において、各存在領域23の幅は同じでも異なっていてもよい。同様に、各非存在領域24の幅も同じでも異なっていてもよい。本実施形態においては、各存在領域23の幅及び各非存在領域幅は、それぞれ略同じとなっている。しかしながら、存在領域23の幅と非存在領域24の幅とを比較すると、存在領域の幅の方が大きくなっている。この理由は、吸収体14に占める存在領域の割合を増やすことで、吸収体14の全幅を液の吸収のために有効活用するためである。この観点から非存在領域24の幅は極力小さいことが好ましい。しかし、幅を小さくしすぎると、液透過性シート21a,21bどうしを接合させることが容易でなくなる。これらの観点から、非存在領域24の幅は、1〜10mm、特に1〜3mmであることが好ましい。一方、存在領域23に関しては、この幅は大きいことが好ましい。しかし、存在領域23の幅を大きくしすぎると、該存在領域23中に高吸収性ポリマーを保持させることが容易でなくなる。これらの観点から、存在領域23の幅は、3〜30mm、特に5〜25mmであることが好ましい。また、一つの存在領域23内に保持される高吸収性ポリマーの量は、高吸収性ポリマーの種類にもよるが、40〜350g/m2範囲で、要求される吸収性能に応じて適切な値を選択すればよい。
先に述べたとおり、非存在領域24においては、2枚の液透過性シート21a,21bの少なくとも一部が直接に当接しており、互いに接合されている。この接合には、例えばホットメルト粘着剤等を用いた接着、熱融着、超音波による接合等を用いることができる。接合の程度は、接合条件を適宜調節することによってコントロール可能である。特に、隣り合う2つの存在領域23間に位置する非存在領域24においては、吸液によって膨潤した高吸収性ポリマーの粒子22の体積増加によって、2枚の液透過性シート21a,21bの接合状態が解除される程度の低接合強度で、該液透過性シート21a,21bどうしが接合されていることが好適である。このような接合強度であると、高吸収性ポリマーの粒子22が吸液・膨潤したときに該液透過性シートどうしが剥がれ易くなり、高吸収性ポリマーの粒子22が膨潤し易いので、素早い吸液が起こり易くなる。また、低接合強度とは、吸液前の乾燥時の接合強度が高くても、吸液後の湿潤時に接合強度が低下する場合も含まれる。いずれの場合も吸液前の乾燥時の接合強度は、10cN以上であることが、吸液前にシートが剥れることを有効に防止でき、吸液時に高吸収性ポリマー粒子が適切な位置に存在しうるので好ましい。なお、吸収体14が有するすべての非存在領域24の接合状態が解除されることは必須ではなく、少なくとも一つの非存在領域24の接合状態が解除されればよい。また、非存在領域24を高吸収性ポリマーを含む低坪量領域として、本実施形態における非存在領域24の代わりに、高吸収性ポリマーが存在しながらも2枚の液透過性シート21a,21bが一部で接合しているような低坪量存在領域とすることで、該低坪量存在領域の高吸収性ポリマーの膨潤により接合が解除し易くなるような形態とすることもできる。
液透過性シート21a,21bの接合強度の測定方法は次のとおりである。測定対象である吸収体14の非存在領域24を横切るように、幅25mmで非存在領域24が完全に含まれ、かつ存在領域23もある程度以上含まれる長さに吸収体14をカットし、これをサンプルとする。その後、存在領域23の2枚の液透過性シートを開いて、非存在領域24を横切る方向となるように、サンプルを引張試験機のチャックに取り付ける。引張速度300m/minで2枚の液透過性シートを引き剥がし、このときの最大応力を液透過性シートの接合強度とする。
吸収体14における液透過性シート21a,21bは同一の種類のものでもよく、あるいは異種のものでもよい。いずれの場合であってもシート21a,21bは、水との接触による寸法変化を実質的に呈しないものが用いられる。例えば10cm×10cmのシートを25℃の水に1分間浸漬させた後の面積の変化率が5%以内である場合には、水との接触による寸法変化を実質的に呈しないと言うことができる。またシート21a,21bは、繊維材料を含む繊維シートから構成されていることが好適である。この繊維シートは、排泄された液を高吸収性ポリマー14cへ導くことが可能な液透過性を有している。水との接触による寸法変化を実質的に呈さず、かつ液透過性を有する繊維シートとしては、例えば紙、不織布、織布などを用いることができる。繊維シートを構成する繊維としては、水との接触による寸法変化を実質的に呈さない親水性繊維を用いることが有利である。そのような親水性繊維としては、例えば木材パルプ、コットン、レーヨン等のセルロース系繊維、あるいは親水化処理した疎水性合成繊維が好適に用いられ、それぞれを単独あるいは混合して用いることができる。また、シート14a,14bの液透過性を損なわない範囲において、これらのシート14a,14bの強度を高めることを目的として、水との接触による寸法変化を実質的に呈さず、かつ熱融着性を有する疎水性合成繊維を少量配合してもよい。
ライナ10を薄型にしてその装着感を高める観点から、ライナ10の構成部材のうち、最も嵩高い部材である吸収体14を薄型とすることが好ましい。具体的には、吸収体14におけるシート21a,21bの厚みを坪量で表した場合、該坪量を10〜50g/m2、特に15〜40g/m2とすることが好ましい。この場合、シート21a,21bの坪量は同一でもよく、あるいは異なっていてもよい。一方、吸収体14における高吸収性ポリマーの粒子22の坪量は、高吸収性ポリマーの種類にもよるが、20〜300g/m2の範囲で吸収体14に要求される吸収性能に応じて適切な値を選択すればよい。また、吸収体14に占める高吸収性ポリマーの粒子22の割合は、可能な限り高くすることが、薄型でかつ吸収容量の高いライナ10を得る観点から好ましい。この観点から、吸収体14に占める高吸収性ポリマーの粒子22の割合は、17〜94重量%、特に70〜90重量%であることが好ましい。
高吸収性ポリマーとしては、当該技術分野において通常用いられているものと同様のものを用いることができる。例えば、ポリアクリル酸ソーダ、(アクリル酸−ビニルアルコール)共重合体、ポリアクリル酸ソーダ架橋体、(デンプン−アクリル酸)グラフト重合体、(イソブチレン−無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物、ポリアクリル酸カリウム、並びにポリアクリル酸セシウム等が挙げられる。高吸収性ポリマーは、自重の20倍以上の水又は生理食塩水を吸収し保持し得る性能を有するものが好ましい。
吸収体14は、例えば一方のシート21aの一面上に高吸収性ポリマーの粒子22を筋状に多列に散布し、更にその上に他方のシート21bを重ね合わせ、両シート21a,21bを、粒子22の非散布領域において筋状に接合することで得られる。接合手段は、先に述べたとおりである。
以上の構成を有する吸収体14を備えたライナ10においては、吸収体14が吸液して膨潤すると、図3(b)に示すように、隣り合う2つの存在領域23の間に位置する非存在領域24におけるシート21a,21bの接合状態が解除されて、高吸収性ポリマーの粒子22が、両シート21a,21bによって画成される1つの大きな空間内に収容されることになる。この場合、シート21a,21bは、水との接触による寸法変化を実質的に呈さないものなので、吸液に起因する高吸収性ポリマーの粒子22の体積の増加分は、吸収体14の厚みの増加に反映される。厚みの増加は吸収体14の幅方向中央域が最も大きく、幅方向側部域に向かうに連れて厚みの増加は小さくなる。その結果、吸収体14はその幅が減少する。この幅の減少によって、吸液しても幅が減少しない吸収体を用いた場合に比較して、ライナ10においては、その周縁部に形成された接合部に加わる応力が低減される。したがって、ライナ10においては、該接合部の幅を狭くしても、該接合部が剥離しづらくなる。このような理由によって、ライナ10においては、吸収体14の幅に対してライナ10の幅を必要以上に広くする必要がなくなる。その結果、ライナ10が有するくびれ形状の利点が十分に発揮されて、ライナ10の装着感が良好になる。
吸液による吸収体14の幅の減少を効果的に発現させる観点から、吸収体14の幅方向中央域における厚みの増加は、吸液前に比べて2倍以上であることが好ましい。また、吸収体14の幅方向側部域における厚みの増加は、吸液前に比べて1.5倍以下であることが好ましい。幅方向側部域における厚みの増加は、吸液後の吸収体14(図3(b)参照)における左右の非存在領域24の内側端部から3mm内側寄りの位置で測定される。
図3(a)に示す構造の吸収体14を採用することには以下に述べる利点もある。すなわち、隣り合う存在領域23の間には非存在領域24が位置し、この非存在領域24は長手方向に延びる凹部になっていることから、排泄された液は、非存在領域24に案内されてライナ10の前後方向に拡散しやすくなる。その結果、吸収体14の全域が液の吸収保持に有効活用される。しかも、非存在領域24は上述のとおり厚みが薄く、かつ高吸収性ポリマーの粒子22が実質的に存在していないことから、該非存在領域24は、排泄された液が下方へ透過するためのチャネルとして機能し、それによって素早い液の透過が達成される。
図4(a)には、吸収体14の別の形態が示されている。同図の吸収体は、吸液前の状態を示している。この吸収体14は、八条の存在領域23及び九条の非存在領域24を有する吸収体において、左右の側縁部から三条目に位置する非存在領域24a,24bを折り曲げ位置として、それよりも幅方向の外方に位置する二条の存在領域23a,23bを、吸収体14の幅方向内側に向けて同方向(本実施形態では下方)に折り曲げて略C字状となしたものである。
図4(a)に示す吸収体14が吸液すると、図4(b)に示すように、二段重ねになっている存在領域23のうち、上側に位置する存在領域23の間に位置する非存在領域24の接合状態が解除される。また、下側に位置する存在領域23aにおいても、2つの存在領域23aに位置する非存在領域24の接合状態が解除される。存在領域23bについても同様である。これらの結果、吸収体14は、吸液前に比べて、吸液後の幅が大きく減少する。この幅の減少は、下側に折り曲げられた存在領域23a,23bが、それに隣接する他の部材(本実施形態においては吸水シート15)と少なくとも吸収体14の端部(24a近傍)が非接合状態になっている場合に特に顕著になる。また、二段重ねになっている存在領域23,23a(及び存在領域23,23b)との対向面の少なくとも折り曲げ部近傍(24a近傍)が非接合状態、あるいは吸液より接合が外れる程度の接合状態になっていることでも、吸液後の吸収体14の幅の減少が顕著となる。なお、吸収体14の端部及び折り曲げ部近傍(24a近傍)とは、高吸収性ポリマー粒子の量(すなわち膨潤による厚み増加量)によって異なるが、折り曲げられた吸収体の幅方向端部から3〜10mm程度の範囲を指す。
図4(a)に示す実施形態の吸収体は、図3(a)に示す実施形態の吸収体との対比で以下に述べる利点も有する。すなわち、図4(a)に示す構造を有する吸収体14においては、その左右の側縁部が、非存在領域24a,24bを折り曲げ位置として折り曲げられて形成されているので、高吸収性ポリマーの粒子22が吸液して膨潤した状態で着用者の体圧が吸収体14に加わっても、2枚の液透過性シート21a,21bが口開きすることがなく、該側縁部からの高吸収性ポリマーの粒子22の脱落が効果的に防止される。また、2枚の液透過性シート21a,21bが口開きしないので、非存在領域24a,24bの幅を極力小さくすることができ、吸収体14のほぼ全幅を吸液のために有効活用することが可能となる。更に、吸収体の側縁部からの高吸収性ポリマーの粒子22の脱落が防止されるので、一つの存在領域23に含まれる高吸収性ポリマーの粒子22を増量することが可能となり、それによって吸液による吸収体14の厚みの増加、すなわち吸収体14の幅の減少が一層顕著になる。しかも、液の吸収性能が一層高まる。
再び図2に戻ると、同図に示すように、吸収体14は、消臭シート13と吸収シート15との間に介在配置されることが好ましい。また同図に示すように、吸収体14を挟む消臭シート13及び吸収シート15は、吸収体14の周縁部の全域から外方へ延出する大きさを有していることが好ましい。つまり、消臭シート13及び吸収シート15は、吸収体14よりも大きな長さ及び幅を有している。吸収体14より大きい消臭シート13と吸収シート15で吸収体14を挟み、両シートの周縁部を接合することで、吸収体14内の高吸収性ポリマー粒子22の脱落をさらに防ぐことができる。消臭シート13と吸収シート15の周縁部の接合は、例えばホットメルト粘着剤等を用いた接着、熱融着、超音波による接合等を用いることができる。
消臭シート13及び吸収シート15はほぼ同形であり、略長円形の形状を有している。また消臭シート13及び吸収シート15は、それらの長手方向における中央域が内方へ向けて若干湾曲したくびれ形状になっている。更に、消臭シート13及び吸収シート15は、先に説明した表面シート11及び裏面シート12と略相似形になっており、かつ表面シート11及び裏面シート12を一回り程度縮小した形状になっている。
消臭シート13は、表面シート上に排泄された液から生じる臭いを抑えるために用いられるものである。消臭シート13は、表面シート上に排泄された液を、該消臭シート13よりも下側に位置する部材である吸収体14や吸収シート15へ導くことが可能な液透過性を有している。この観点から、消臭シート13は、先に説明した吸収体14と同様に繊維シートから構成されていることが好ましい。そのような繊維シートとしては、例えば紙、不織布、織布などを用いることができる。繊維シートを構成する繊維としては、吸収体14と同様に、親水性繊維を用いることが好ましい。また、消臭シート13の液透過性を損なわない範囲において、該消臭シート13の強度を高めることを目的として、熱融着性繊維等の疎水性合成繊維を少量配合してもよい。
消臭シート13には、消臭剤が含まれている。この消臭剤としては、表面シート上に排泄された液から生じる臭いを吸収する作用、中和する作用、又はマスキングする作用を有する剤が用いられる。そのような剤としては疎水性のものが好適である。そのような疎水性の剤として本実施形態において好適に用いられるものは、例えば(イ)活性炭の粒子、(ロ)架橋性ビニルモノマー及びヘテロ芳香環を有するビニルモノマーを含むモノマー成分を共重合して得られ、かつ金属イオンを含有している粒子、(ハ)抗菌性を有する金属を含むカンクリナイト様鉱物の粒子、(ニ)ハイシリカゼオライトの粒子等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。(ロ)の粒子としては、例えば本出願人の先の出願に係る特開2008−062029号公報に記載されているものを用いることができる。(ハ)及び(ニ)の粒子としては、例えば本出願人の先の出願に係る特開2007−044401号公報に記載されているものを用いることができる。これらの消臭剤はそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
消臭シート13は、例えば同一の又は異なる繊維シート間に消臭剤の粒子を保持してなるか、又は単一の繊維シートにおける繊維間に消臭剤の粒子を保持してなるものであり得る。消臭シート13が前者の形態である場合には、先に説明した吸収体14の製造方法と同様の方法によって消臭シート13を製造することができる。消臭シート13が後者の形態である場合には、繊維材料及び消臭剤の粒子を含む水スラリーからなる抄紙原料を調製し、該抄紙原料を用いた湿式抄造によって消臭シート13を製造することができる。後者の場合には、消臭剤は、消臭シート13内に均一分散することになるが、前者の場合には、消臭剤は、均一分散又は所定のパターンでもって分散することになる。
消臭シート13における消臭剤の量は、該消臭シート13の重量に対して1〜15重量%、特に3〜10重量%とすることが、消臭シート13による消臭効果が十分に発現する点、及び疎水性の材料である消臭剤に起因する消臭シート13全体としての疎水化の点から好ましい。また、ライナ10の薄型の観点から、消臭シート13は、その坪量が10〜60g/m2、特に15〜35g/m2であることが好ましい。
上述した消臭シート13の疎水化に関し、該消臭シート13の疎水性の程度と、先に説明した吸収体14及び吸水シート15の疎水性の程度とを対比すると、消臭シート13の疎水性の程度の方が高いことが、吸収体14等に吸収保持された液の表面シート11側への逆戻りを防止する観点から好ましい。これらのシートの疎水性の程度は、クレム吸収高さ(JIS P8141)を尺度として比較することができるところ、本実施形態においては、吸収体14及び吸水シート15はそれらのクレム吸水高さが、消臭シート13のクレム吸水高さよりも大きいものであることが好ましい。なお、消臭シート13のクレム吸水高さよりも大きければ、吸収体14及び吸水シート15のクレム吸水高さの大小関係に特に制限はない。
吸収シート15は、吸収体14を構成する液透過性シート21b(図3参照)として用いることもできる。これにより、製品の構成部材を減少させ、さらに薄くできる利点がある。しかしながら、前述の通り、消臭シート13とともに吸収体14を挟持する吸収シート15は、吸収体14とは別体の部材であることが好ましい。吸収シート15は、液の排泄時に吸収体14で吸収しきれずに、該吸収体14を透過してきた液を一時的にストックするための作用を有するものである。したがって吸収シート15は、吸収体14に要求されるほどの液の吸収保持性能は要求されない。この観点から、吸収シート15としては、吸液性のあるシート材料から構成されており、かつライナ10の薄型・軽量化の観点から、高吸収性ポリマーを含んでいないものが用いられる。また、平面方向への液の拡散性の高いものが用いられる。これらの条件を満たす吸収シートとしては、例えば親水性の繊維材料を含む繊維シートが好適に用いられる。そのような繊維シートとしては、例えば紙、不織布、織布等が挙げられ、特に薄葉紙等の紙が好適に用いられる。特に吸収シート15は、液の一時的なストック性を高める観点から、クレープ加工された紙であることが好ましい。この場合のクレープ率は、この種の材料に用いられている紙のクレープ率よりも高くすることが好ましく、具体的には5〜40%、特に10〜30%とすることが好ましい。クレープ率は、{(吸収シートの伸長状態の長さ/吸収シートの定常状態の長さ)−1}×100によって測定される。伸長状態の長さは、凹凸状のクレープを伸長させて測定し、例えば吸収シートを1分間水に浮かべ伸長させた後の長さを測定して得ることができる。親水性の繊維材料としては例えば、先に説明した吸収体14におけるシート14a,14bを構成する親水性繊維と同様のものが挙げられる。
液の一時的なストックの観点及びライナ10の薄型の観点から、吸収シート15は、その坪量が10〜60g/m2、特に15〜40g/m2であることが好ましい。
表面シート11及び裏面シート12としては、当該技術分野において通常用いられているものと同様のものを特に制限なく用いることができる。具体的には、表面シート12としては液透過性を有するシート材料、例えば各種不織布や穿孔フィルム等を用いることができる。これらの材料は、それ自身が親水性であるか、又は親水性でない場合(つまりそれ自身が疎水性である場合)には、親水化処理を施したものであることが好ましい。裏面シート12としては、液不透過性であるか、又は難透過性であるシート材料、例えば合成樹脂性のフィルムやスパンボンドーメルトブローン−スパンボンド不織布等を用いることができる。裏面シート12は、水蒸気透過性を有していてもよい。
図1に示すように、ライナ10の表面シート11側には、一対の圧縮溝17,17が形成されている。各圧縮溝17は、ライナ10の左右両側部において、ライナ10の縦中心線に向けて内向きに湾曲した曲線をなしている。この曲線はライナ10の長手方向に延びている。また各圧縮溝17は、ライナ10の前方域、中央域及び後方域のうち、少なくとも中央域の全長にわたって形成されている。各圧縮溝17は、少なくとも表面シート11、消臭シート13及び吸収体14を一体的に圧密化して形成されている。その結果、表面シート11の肌当接面側においては、圧縮溝17の部位が、他の部位に比べて陥没した凹部になっている。前記の圧密化は、例えば、圧縮溝17の形状と同形状になっている凸部を有するエンボスロールと、該エンボスロールに対向して配置されたアンビルロールとの間に、表面シート11、消臭シート13及び吸収体14の重ね合わせ体を通し、熱を伴うか又は熱を伴わずにこれらを加圧して圧密化することで達成される。
以上の構成を有するライナ10においては、上述した吸収体14によって奏される有利な効果に加え、以下に述べる有利な効果も奏される。すなわち、ライナ10における消臭シート13及び吸収体14が薄手のものなので、表面シート11上に排泄された液は、これらの部材を透過して、裏面シート12のすぐ上に位置する部材である吸収シート15にまで瞬時に到達する。そして、液は吸収シート15に一旦ストックされる。そして、吸収シート15に一旦ストックされた液は、吸収体14の吸収能力が十分に発揮されるまでの間、吸収シート15の平面方向に広く拡散される。吸収シート15の平面方向に全域にわたって広く拡散された液は、吸収体14の吸収能力が発揮されると、吸収体14によって吸い取られる。この場合、上述のとおり、吸収シート15は、その大きさが吸収体14よりも大きいので、吸収体14の全域において、吸収シート15からの液の吸い上げが生じる。したがって、吸収体14の全域が液の吸収保持のために有効活用されて吸収性能が従来よりも一層向上する。
また、吸収体14に吸収保持された液からは、時間の経過とともに臭いが生じるところ、その臭いは、吸収体14上に配置された消臭シート13によって抑えられる。特に、消臭シート13はその大きさが吸収体14よりも大きいので、吸収体14の全体が、あたかも消臭シート13によって蓋をされた状態になっているので、液から発生する臭いが外部へ放出されることが効果的に防止される。
更に、撥水性シートからなる防漏カフ16の接合部16aと表面シート11との接合部位間の距離を、消臭シート13の幅よりも小さくなすことによっても、液から発生する臭いが外部へ放出されることが効果的に防止される。
しかも、消臭シート13には消臭剤が含まれており、該消臭剤は疎水性のものであるから、該消臭シート13は、その下側に位置する吸収体14や吸収シート15よりも、シート全体としての疎水度が高くなっている(上述したクレム吸水高さ)。その結果、着用者の体圧が加わった場合であっても、吸収体14や吸収シート15に吸収保持されている液が、表面シート11側に逆戻りすることが起こりづらくなり、表面シート11の肌対向面側はドライな状態が保たれる。これによって装着感が一層良好になり、また肌トラブル等も効果的に防止される。
更に、消臭シート13と吸収体14とを接合する圧縮溝17においては、吸収体14よりも消臭シート13の方が、疎水度が高いことに起因して(つまり、消臭シート13よりも吸収体14の方が、親水度が高いことに起因して)、排泄された液は、消臭シート13よりも親水度が高い吸収体14へ素早く移動する。その結果、消臭シート13における液残りが少なくなり、消臭シートからの臭いの放出が効果的に防止される。また、圧縮溝17は、ライナ10の長手方向に延びるものなので、表面シート11上に排泄された液は圧縮溝17に案内されてライナ10の長手方向前端側及び後端側に向けて優先的に拡散するようになる。このことによっても、吸収体14の全域が有効活用されて吸収性能が従来よりも一層向上する。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態のライナ10においては、吸収体14における非存在領域24には高吸収性ポリマーは実質的に存在していなかったが、これに代えて、シート21a,21bが接合可能な範囲において、該領域24に低坪量で高吸収性ポリマーを配置して、ポリマーの低坪量領域となしてもよい。つまり非存在領域24は、低坪量領域の最も極端な場合であると位置づけることができる。
また図3(a)及び図4(a)に示す吸収体14は、左右両側縁に位置する非存在領域24の間に二条以上の非存在領域24を有していたが、これに代えて、左右両側縁に位置する非存在領域24の間に非存在領域(あるいは低坪量領域)24を一条のみ形成してもよい。
また前記実施形態においては、両側部に位置する存在領域23を、幅方向内側に向けて同方向に折り曲げたが、これに代えて、一方の側部における存在領域の折り曲げ方向を上方とし、他方の側部における存在領域の折り曲げ方向を下方としてもよい。
また前記実施形態においては、吸収体14において、各側部に位置する2つの存在領域23を、幅方向内側に向けて同方向に折り曲げたが、これに代えて、折り曲げる存在領域23の数は1つでもよく、あるいは3つ以上でもよい。
また、前記実施形態のライナ10においては、その左右の両側縁から外方に延出する一対のウイング部を設けてもよい。
また、前記実施形態は、本発明を失禁ライナ10に適用したものであるが、本発明は他の吸収性物品、例えばショーツに固定されて使用される吸収性物品である生理用ナプキン、失禁パッド、おりものシート等にも同様に適用できる。