JP5301853B2 - 酸化亜鉛チップバリスタ - Google Patents

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Description

本発明は酸化亜鉛チップバリスタに関し、例えば、雷誘導ノイズや各種電気・電子機器、自動車等で発生する電源ノイズ、急峻パルスノイズ、サージ等を除去し、また、半導体保護素子として使用される酸化亜鉛チップバリスタに関するものである。
近年における電子機器や携帯端末等の急激な高周波化、大容量化に伴い、携帯電話機を始めとする機器の電子回路や電子部品等を、例えばロードダンプサージ、イグニッションサージ、雷サージ、スイッチングサージ等の各種サージやパルス性ノイズ等の異常電圧から保護するため、また、ESD対策として機器の回路保護や動作の安定性を確保し、ノイズ規制へ対応するために酸化亜鉛型の積層チップバリスタが使用されている。特に半導体素子の場合、その駆動電圧が例えば1Vと低圧化の傾向が著しく、これらの半導体を保護する上で、より低圧駆動のバリスタが求められている。
従来より、酸化亜鉛バリスタでは、基本組成としてのZnO粒子の成長を促進する酸化ビスマス(Bi23)や酸化チタン(TiO2)を添加し、また、ZnO粒子成長を抑制する酸化アンチモン(Sb23)が添加されている。さらには、焼結助剤として各種ガラス等が添加される(例えば、特許文献1および特許文献2)。
特許第3313533号公報 特開平8−241803号公報
しかしながら、上述したバリスタの基本添加物は、その添加量の組み合わせにより得られる電気的特性や信頼性が大きく変わる。すなわち、添加される原料の混合比率により焼結時に粒成長がばらつき、また、粒界準位といわれるダブルショットキー障壁のばらつきも発生する。その結果、バリスタの基本特性である電圧印加時の漏れ電流、非直線性を表すα値、制限電圧、さらには大サージ印加時の回路保護能力に大きな差異が現れることになる。
バリスタ焼結体としては、(i)グレイン(ZnOの粒)が均一である、(ii)グレイン(ZnO)間の空隙が少ない、(iii)粒界準位(ダブルショットキー障壁)が形成され、バラツキが少ない、(iv)グレイン(ZnO)の比抵抗が小さい、ことが望ましい。しかし現状では、このような理想的なバリスタを得ることは難しく、バリスタの基本特性すべてに渡って優れたものは得られていない。特に、半導体保護素子ともいえるバリスタによる回路保護技術に関しては、ここ10数年進歩がなく、近年における電子機器等で使用する半導体の駆動電圧が低圧化傾向にあり、その加工線幅(ライン)も例えば45nmになる等、ノイズ等に関して半導体が脆弱になる傾向がより高まっているのに対して、バリスタによる回路保護については、まったく対応ができていないのが現状である。
本発明は、上述した課題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、低電圧駆動回路を確実にノイズ等から保護できる低制限電圧と高インパルス耐量特性を兼ね備えた高性能・超低圧の酸化亜鉛チップバリスタを提供することである。
上記の目的を達成し、上述した課題を解決する一手段として、例えば、以下の構成を備える。すなわち、本発明に係る酸化亜鉛チップバリスタは、酸化亜鉛(ZnO)100mo1%に対し、外掛けで酸化ビスマス(Bi 2 3 )を0.1〜1.5mol%と、酸化アンチモン(Sb 2 3 )を0.01〜2.0mol%と、酸化亜鉛(ZnO)を0.1〜1.0mol%とを含む第1の原料と、酸化亜鉛(ZnO)ホウ酸(H3BO3と二酸化ケイ素(SiO2とを含む第2の原料の各々をあらかじめ熱処理した後に添加し、かつ所定のドナー元素を添加してなる材料によって作製されたことを特徴とする。
例えば、酸化亜鉛(ZnO)100mol%に対し外掛けで酸化ビスマス(Bi23)0.1乃至1.5mol%、酸化アンチモン(Sb23)0.01乃至2.0mol%、酸化コバルト(CoO)と酸化マンガン(MnO2)のうち一種類以上を0.1乃至1.5mol%、酸化クロム(Cr23)0.01乃至2.0mol%、ホウ酸(H3BO3)0.1乃至1.0mol%、二酸化ケイ素(SiO2)0.1乃至1.0mol%、および酸化アルミニウム(A123)10〜1000ppmからなる原料を用意し前記第1の原料は前記用意した原料のうち酸化ビスマス(Bi23)および酸化アンチモン(Sb23)の全量と、外掛けで酸化亜鉛(ZnO)0.1乃至1.0mol%とを含前記第2の原料は前記用意した原料のうちホウ酸(H3BO3)および二酸化ケイ素(SiO2)の全量と、外掛けで酸化亜鉛(ZnO)0.5乃至2.0mol%とを含み、前記第1の原料と前記第2の原料各々を700乃至1000℃で熱処理し、前記熱処理された原料と、前記用意した原料のうち前記第1の原料および第2の原料以外の原料とを加えてグリーンシートを積層した後に切断してグリーンチップを形成し、そのグリーンチップを焼成して外部電極を形成してなることを特徴とする。
例えば、上記熱処理された原料は、さらに、酸化亜鉛(ZnO)100mo1%に対する外掛けで酸化チタン(TiO2)を0.01〜0.5mol%含むことを特徴とする。
また、例えば、上記熱処理された原料は、さらに、酸化亜鉛(ZnO)100mol%に対する外掛けで希土類元素をA23(Aは希土類元素、Bは酸素元素)の形で0.01〜0.5mol%含むことを特徴とする。
本発明によれば、低電圧駆動回路を確実にノイズ等から保護でき、かつESDから機器の回路を保護することができる、半導体の低電圧駆動化に対応可能な酸化亜鉛チップバリスタを提供できる。
本発明に係る実施の形態例を、添付図面等を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態例に係る酸化亜鉛チップバリスタの製造工程を示すフローチャートである。図1のステップS1では、酸化亜鉛チップバリスタ(以下、単にバリスタとも呼ぶ。)の最初の製造工程として、バリスタ素子の原料調合を行う。具体的には、バリスタ素子の材料としてメジアン平均粒径が3μm程度の酸化亜鉛(ZnO)、酸化ビスマス(Bi23)、酸化コバルト(CoO)、酸化マンガン(MnO)を秤量する。単位バリスタ電圧により酸化アンチモン(Sb23)や酸化クロム(Cr23)等の粒成長抑制物質を添加する。また、焼結助剤として、例えば、酸化ケイ素(SiO2)、酸化ホウ素(B23)、酸化ゲルマニウム(GeO2)等のガラスを添加する。
ステップS2では、上記の工程で得られた原料をボールミル等で粉砕し、粒を揃える。続くステップS3において、900℃で熱処理を行い、反応性や粒径を調整し(仮焼き)、ステップS4では、仮焼きした原料をボールミル等により粉砕して粒を揃える。次のステップS5では、スラリーを作製する。すなわち、重合度3000のPVB、フタル酸エステル系可塑剤、ポリカルボン酸系分散剤、PEG#600の離型材、エタノール/トルエン系希釈溶剤を加えてスラリーを作製する。続くステップS7では、ドクターブレードにより成膜し、10〜100μm程度のグリーンシートを作製する。ステップS8において、そのグリーンシート上にPtあるいはPd電極ペーストを印刷してコンデンサパターンを作製し、ホットプレス等で積層する。
ステップS9では、積層体を製品のサイズに合わせて切削し(ダイシング)、ステップS11で、ダイシング後のバリスタ素子を500℃、10時間での脱バインダーを行う。その後、ステップS12において、950〜1300℃でバリスタ素子を焼成し、続くステップS13では、700℃でアニールを行う。そして、ステップS15において、バリスタ素子にAgあるいはAg/Pdで端子電極(外部電極)を形成する。次のステップS16で、Ni層、Sn層の順にメッキを施し、ステップS17では、作製されたバリスタのバリスタ電圧、漏れ電流等の電気的な特性を検測する。
ここで、バリスタの基本特性である、漏れ電流、制限電圧、およびインパルス耐量について詳述する。
(1)漏れ電流
通常、最大許容回路電圧印加時にバリスタに流れる電流を示す。すなわち、バリスタが使用されるときに連続してかかり得る電圧環境下で、どれだけの電流損失が発生するかを見る評価項目であり、漏れ電流は少ないことが望ましい。実際には、より過酷な条件、例えば、バリスタ電圧の0.9倍の電圧印加時に流れる電流で評価を行う。本実施の形態例においても、バリスタ電圧の0.9倍の電圧印加時における漏れ電流によって評価した。なお、漏れ電流を少なく抑えるためには、粒界に形成されるダブルショットキー障壁の均一性や、厚みを厚くすることが重要となる。同時に、粒界の液相晶が得られると高抵抗化し、漏れ電流を少なく抑えることができる。
(2)制限電圧
通常のバリスタ電圧は、1mAの電流が流れたときに示す電圧V1mAであるのに対し、バリスタの制限電圧とは、1A,2A,10A程度の比較的大きな電流が流れたときに示すバリスタ電圧をいう。バリスタは、保護したい部品と並列に接続され、制限電圧は、ESD等の何らかの理由で発生した異常電流に対し、バリスタの特徴である非直線性を利用して回路電圧を低く抑える機能を示す。制限電圧は、その値が低いほど回路電圧、保護部品にかかる負荷を減らすことになる。そこで、制限電圧を低く抑える特性を出現させるためには、焼結体のZnO粒の均一性を上げる必要がある。これにより電界が分散し、粒界により出現する非直線性特性が大きくなり制限電圧が低下する。
(3)インパルス耐量
インパルス耐量とは、雷サージ、イグニッションサージ、ロードダンプサージのような大電流が入ってきたときの耐量を示す。インパルス耐量を上げるには、バリスタの基本構成であるグレインとグレイン・バウンダリの両方で対応する必要がある。グレインには、低抵抗化を図り、突入してきた大電流がグレイン・バウンダリでジュール熱に変わり、その熱を素早くバルク全体へ拡散して1粒界の破壊を防ぐことが望まれる。一方、グレイン・バウンダリは、ダブルショットキー障壁の厚みを厚くして、突入してくる大電流に対して破壊を招かないことが重要である。
特性の優れた酸化亜鉛バリスタを得るためには、上記のメカニズムを考慮した対応が必要となる。本実施の形態例では、このメカニズムを考慮して、以下のように対応した。すなわち、多くの文献等に記載されているように、酸化アンチモンは、比較的低温で四酸化アンチモン(Sb24)となり、ZnOの表面に物理的に吸着して粒成長を阻害する。低温での反応性のみならず、高温ではパイロクロア、スピネルを形成し、同じく粒成長を妨げる。ZnOの粒成長は、900℃付近から始まるため、実際に粒成長をばらつかせ、問題となるのは、パイロクロア、スピネル形成時に粒成長を始めようとするZnOが相互に影響し合うためであると予想される。したがって、ZnOの粒成長とパイロクロア、スピネルの形成が独立に存在すれば、粒成長に影響を及ぼすことなく粒の均一性が得られ、低制限電圧を実現できると予想した。
パイロクロア形成、およびスピネル形成の一般的な反応式は、以下のようになる。
2Sb23+O2 → 2Sb24
(酸化による蒸発・凝縮によりZnO表面に付着)………(1)
40ZnO+30Bi23+30Sb24+15O2
→20Zn2Bi3Sb314
(パイロクロア相形成) ………(2)
2Zn2Bi3Sb314+17ZnO → 3Zn7Sb212+3Bi23
(スピネル形成およびビスマス液相形成) ………(3)
一連のスピネル形成に至るまでに反応に寄与するBi23−Sb23−ZnO系の混合物を用意し、低温で上記(1)の反応が起こらず、その後の反応選択性を得るために熱処理を施した結果、制限電圧の低電圧化が可能となった。また、さらに特性を向上させるため、同じくZnOの粒成長を緩和させ、均一化を図る目的でH3BO3−SiO2−ZnO系の混合物を用意し、中高温で上記(2)と(3)の反応を安定化させるために熱処理を施した結果、制限電圧が大幅に低電圧化した。
上記の組成系に、ドナー元素であるアルミニウム(Al)添加量を最適化することで、インパルス耐量が大幅に向上することも確認できた。また、上記のBi23−Sb23−ZnO系の混合物に、同じくスピネルを形成するTiや粒界形成物質である希土類元素を加え、仮焼添加することで、さらに特性が向上することも確認した。同時に、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化クロムの添加量を最適化することで、高性能な電気的特性が得られた。
以下、本発明の実施の形態例に係る酸化亜鉛チップバリスタについて種々の検討を行った結果を詳細に説明する。最初に現状のチップバリスタの電気的特性について説明する。ここでの試料作製は、図1に示す手順に基づいて行い、焼成温度は1100℃で5時間保持とした。また、製品形状は3216サイズとし、内部電極層数を4層の積層構造で作製した。電極材にはPt100%のぺーストを用いた。グリーンシートの厚みを可変して、低圧バリスタ、中圧バリスタ、高圧バリスタの3種類を作製した。表1は、使用したバリスタ原料配合組成であり、表中の数値は、ZnO100mo1%に対する外掛けmol%である。
Figure 0005301853
表2は、表1に示す組成で、図1の工程に従って作製した試料の電気的特性を示す。表2における数値は平均値であり、σはバラツキを表わしている。また、サンプル数は20である。ここでは、上記の低圧バリスタ、中圧バリスタ、高圧バリスタに加えて、グリーンシートの厚みを薄くした超低圧バリスタの特性評価も行った。表2に示す結果から、現状のチップバリスタの組成やプロセスで得られる電気的特性(実力値)が確認できた。
Figure 0005301853
以下、本発明の実施例について説明する。ここでは、本発明の趣旨が、半導体の低電圧駆動化に伴い超低電圧バリスタによって回路保護や半導体の保護を行うという観点から、高品質の超低電圧バリスタを提供することであるため、以下の実施例は、すべてバリスタ電圧を4.2Vとし、現在、市場に存在する最も低圧の製品で評価を行った。これらを踏まえると、本発明のポイントは、(i)制限電圧を低くする、(ii)ESDやインパルスに対して強いバリスタを作製する、の2点に絞ることができる。
<検討1:Bi23−Sb23−ZnO系の混合物の添加>
表1および表2に示したように、粒成長促進や粒成長抑制効果のあるBi23,Sb23をあらかじめ仮焼しても、制限電圧特性に優れたバリスタが得られるわけではない。上述のように、ZnOの粒成長とBi23−Sb23−ZnO系で起こるパイロクロア、スピネル形成の反応を独立させることでZnOの均一性が得られ、酸化亜鉛チップバリスタの低制限電圧化が図れると予想した。
そこで、表3に示すように、Bi23−Sb23混合物にZnOを添加し、仮焼した後に添加することで、制限電圧がどのように変化するのかを確認した。なお、表3における添加量は、ZnO100mol%に対する外掛けの添加量である。また、Bi/Sb比は、バリスタ電圧を低くしたいときには大きく、高くしたいときには小さくすればよい。この検討1では、Bi/Sb比を1とし、各0.5mol%添加した混合物にZnO添加量を振り、試験を行った。その他の組成は、表1に従う。
表3に示すように本検討の結果、0.1〜1mol%の範囲でBi23−Sb23混合物と一緒にZnOを加え、仮焼き添加することで、大幅に制限電圧特性が改善されることが確認できた。
Figure 0005301853
<検討2:H3BO3−SiO2−ZnO系の混合物の添加>
既に述べたように、ZnOの粒成長を緩和させ、均一化させるためにZnO−H3BO3−SiO2系の熱処理材料を添加することで、低中温でのZnOの均一性が得られ、低制限電圧化が図れると予想した。具体的には、表4に示すようにH3BO3−SiO2混合物にZnO添加し、仮焼後に添加することで、制限電圧がどのように変化するのかを確認した。なお、表4に添加量は、ZnO100mol%に対する外掛けの添加量である。
Figure 0005301853
3BO3/SiO2比は、ZnOガラスのガラス質を多くし、バリスタ電圧を高くしたいときには大きく、低くしたいときには小さくすればよい。この検討2では、H3BO3/SiO2比を1とし、各0.5mo1%添加した混合物にZnO添加量を振り、試験を行った。ここでは、表3に示す検討1に対して、この試験(検討2)を追加した。したがって、表4に示す検討2は、検討1をさらに改善できるかどうかを示している。なお、その他の組成は、表1に従う。この検討2の結果、0.5〜2mol%の範囲でH3BO3−SiO2混合物と一緒にZnOを加え、仮焼きして添加することで、大幅に制限電圧特性が改善されることが確認できた。
<検討3:ドナー元素の添加>
上述したように酸化亜鉛チップバリスタの高インパルス耐量化には、2つの手段がある。その1つが粒界の二重ショットキー障壁の厚みを厚くし、大電流が印加されたときトンネル効果により雪崩式に電子が粒界を飛び越える現象を抑えることであり、他の1つが、ZnOの比抵抗を下げて熱拡散効率を上げることにより、発生したジュール熱を素子全体に素早く拡散させて1粒界の破壊を防ぐことである。
しかし、実際には二重ショットキー障壁の厚みを厚くして、大きな電流に耐えられる粒界を形成しても、発生するジュール熱が大きく、それが1粒界に集中すると、耐量を得ることは難しい。したがって、酸化亜鉛チップバリスタのインパルス耐量を向上させるには、ZnOの比抵抗を下げ、熱拡散効率を向上させることが重要になる。表5は、この検討3の結果であり、ZnOに対してドナー元素となるAl23添加量を振り、図1に示す工程に基づき酸化亜鉛チップバリスタを作製し、8/20μsサージ波形で150Aの電流を印加したときのバリスタ電圧変化率を測定した。また、仮焼き材中のZnO添加量は、0.5mol%固定とした。
なお、表5においてAl23の添加量は、原料中に含まれるAl23の濃度(ppm)で示す。その他の添加物や添加量は、表1に従う。表5に示す検討3の結果、10〜1000ppmの範囲でAl23を添加することによって、酸化亜鉛チップバリスタの高インパルス耐量化が図れることが確認できた。
Figure 0005301853
<検討4:高性能・高信頼性バリスタ検討>
上記の検討1〜3により、超低圧品の低制限電圧化および高インパルス耐量化の手段は確認できた。しかし、バリスタとしての他の特性を度外視しても意味がないことは明らかであるため、その他の添加物、添加量との相互関係を検討し、さらなる高性能バリスタ組成・プロセスの検証を行った。ここでは、組成の検討を以下の項目に分けて評価した。
(i) ZnOとともに仮焼きするBi23−Sb23組成比の検討
(ii) 低制限電圧化を得るための仮焼き温度の検討
(iii)粒界形成 基本添加物の検討(CoO,MnO)
(iv) 信頼性安定化物質の検討(Cr23
(v) ZnOとともに仮焼きするH3BO3−SiO2組成比の検討
(vi) 部分仮焼き材組成の高性能化(1)…酸化チタンの検討(TiO2
(vii)部分仮焼き材組成の高性能化(2)…希土類添加の検討(Y,Sc,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Nb)
(i) <部分仮焼き材組成の検討(Bi23−Sb23組成比の検討)>
部分仮焼き材として、基本組成であるBi23−Sb23の組成比組み合わせを検討した。評価は、バリスタの非直線性という特異な電気的特性であるα値にて行った。このα値の評価基準は、実用性を考慮して0.01〜1mA間でα=20を下限値として評価した。このときの仮焼き材中のZnO添加量は、0.5mo1%固定とした。表6に部分仮焼き材組成の検討結果を示す。表6に示す結果から、ZnO100mol%に対して外掛けでBi23の添加量を0.1〜1.5mol%、Sb23の添加量を0.01〜2.0mo1%とすることが望ましい(表6の網掛け部分を参照)。
Figure 0005301853
(ii) <低制限電圧化を得るための仮焼き温度の検討>
表7は、表6に示す検討によって得られた結果を反映し、Bi23:0.5mol%、Sb23:0.5mol%の添加量で作製した酸化亜鉛チップバリスタの制限電圧比を、仮焼き温度との相関で示す。その他の組成は、表1に従う。この検討の結果、仮焼き温度は、700〜1000℃の範囲(網掛け部分)が望ましいということが確認できた。
Figure 0005301853
(iii) <粒界形成 基本添加物の検討(CoO,MnO)
粒界形成基本添加物として、酸化コバルト(CoO)と酸化マンガン(MnO)の添加量を検討した。上記の評価と同様、α値にて行った。ここでのα値の評価基準は、実用性を考慮して0.01〜1mA間でα=20を下限値として評価した。なお、上記「部分仮焼き材組成の検討」で評価した部分仮焼き原料ZnO:100mol%に対して外掛けで0.5Bi23−0.5Sb23−0.5ZnOを添加した。その他の組成は、表1に従う。表8と表9に検討結果を示す。これらの表8と表9に示す粒界形成基本添加物の検討の結果、コバルト(CoO)とマンガン(MnO)の添加量がそれぞれ0.1〜1.5mol%のとき、α値20以上を達成した(表中の網掛け部分)。
Figure 0005301853
Figure 0005301853
次に、同じ遷移金属であるコバルトとマンガンを組み合わせて添加し、α値の評価を行った。表10に評価結果を示す。その他の組成は、表1に従う。この評価の結果、コバルト(CoO)とマンガン(MnO)の添加量は、1種類以上を合計0.1〜1.5mol%添加することで、α値として20以上が得られた(表中の網掛け部分)。
Figure 0005301853
(iv) <信頼性安定化物質の検討(Cr23)>
信頼性安定化物質として、酸化クロム(Cr23)の添加量を検討した。評価は、サージ電流印加後のバリスタ電圧変化率で行った。このときに印加するサージ電流は、一律150Aとし、良品判定はバリスタ電圧変化率が0%以内と設定した。なお、上記「部分仮焼き材組成の検討」で評価した部分仮焼き原料ZnO:100mol%に対して、外掛けで0.5Bi23−0.5Sb23−0.5ZnO、上記「粒界形成基本添加物の検討」で評価した酸化コバルトZnO:100mo1%に対して外掛けで0.5mol%添加した。その他の組成は、表1に従う。表11は、信頼性安定化物質の検討結果を示す。検討の結果、酸化クロム(Cr23)の添加量を0.01〜2mo1%添加することで、信頼性の高い酸化亜鉛チップバリスタが得られることを確認した(表中の網掛け部分)。
Figure 0005301853
(v) <部分仮焼き材組成の検討(H3BO3−SiO2組成比の検討)>
部分仮焼き材として、基本組成であるH3BO3−SiO2の組成比組み合わせを検討した。ここでの評価は、バリスタの非直線性という特異な電気的特性であるα値にて行った。このα値の評価基準は、実用性を考慮して0.01〜1mA間でα=20を下限値として評価した。仮焼き材中のZnOは、1.0mol%に固定し、その他の組成は表1に従う。表12に評価結果を示す。その結果、ホウ酸(H3BO3)の添加量を0.1〜1.0mol%、二酸化ケイ素(SiO2)の添加量を0.1〜1.0mol%組み合わせて仮焼きを行い、添加することで、非直線性が飛躍的に優れる酸化亜鉛チップバリスタが得られることを確認した(表中の網掛け部分)。
Figure 0005301853
(vi) <部分仮焼き材組成の高性能化(1)…酸化チタンの検討(TiO2)>
上記「部分仮焼き材組成の検討」で評価したように、部分仮焼き原料をZnO:100mo1%に対して、外掛けで(0.1〜1.5)Bi23−(0.01〜2)Sb23−(0.1〜1)ZnOとなるように添加することで、酸化亜鉛チップバリスタの低制限電圧化が可能であり、かつ、α値が20以上の高性能バリスタを得ることが確認できた。また、さらなる改善として、酸化チタンを部分仮焼き材組成に加えることで、酸化亜鉛チップバリスタのサージ耐量、エネルギー耐量の高性能化について検討した。この評価結果として、表13にサージ耐量を、表14にエネルギー耐量をそれぞれ示す。なお、上記(i)〜(v)の評価結果を受けて、ZnO100mo1%に対して、外掛けでCoO:0.5mol%、Cr23:0.3mo1%、H3BO3:0.3mo1%を添加し、部分仮焼き材を検討した。この評価の結果、酸化チタン(TiO2)を0.01〜0.5mol%、仮焼き原料であるBi23−Sb23−ZnOに添加することで、サージ耐量とエネルギー耐量が僅かではあるが向上することが確認できた(表中の網掛け部分)。
Figure 0005301853
Figure 0005301853
(vii) <部分仮焼き材組成の高性能化(2)…希土類添加の検討(Y,Sc,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Nb)
上記「部分仮焼き材組成の検討」で評価したように、部分仮焼き原料をZnO:100mo1%に対して、外掛けで(0.1〜1.5)Bi23−(0.01〜2)Sb23−(0.1〜1)ZnOとなるように添加することで、酸化亜鉛チップバリスタの低制限電圧化が可能であり、かつ、α値が20以上の高性能バリスタを得ることが確認できた。また、さらなる改善として、希土類元素を部分仮焼き材組成に加えることで、サージ耐量とエネルギー耐量の高性能化を検討した。サージ耐量の検討結果を表15に、エネルギー耐量の検討結果を表16にそれぞれ示す。
なお、上記の検討結果を受けて、ZnO100mol%に対して、外掛けでCoO:0.5mol%、Cr23:0.3mo1%、H3BO3:0.3mol%を添加して基本組成とした上で、部分仮焼き材を検討した。その結果、希土類酸化物(A23:Aは希土類元素、Bは酸素元素)を0.01〜0.5mol%、仮焼き原料であるBi23−Sb23−ZnOに添加することで、僅かではあるがサージ耐量、エネルギー耐量が向上することを確認した(網掛け部分)。
Figure 0005301853
Figure 0005301853
以上説明したように、本実施の形態例によれば、ZnOとともに仮焼きするBi23−Sb23組成比や仮焼き温度、粒界形成基本添加物等のバリスタ原料組成・製造条件を選定することにより、現状では市場に存在しない超低圧で、かつ低リーク電流・低制限電圧、高サージ・エネルギー耐量に優れた高性能の酸化亜鉛チップバリスタを得ることができる。その結果、今後益々加速する機器の回路駆動電圧の低圧化に対して、ノイズやESDから確実に回路を保護できる。
本発明の実施の形態例に係る酸化亜鉛チップバリスタの製造工程を示すフローチャートである。

Claims (4)

  1. 酸化亜鉛(ZnO)100mo1%に対し、
    外掛けで酸化ビスマス(Bi 2 3 )を0.1〜1.5mol%と、酸化アンチモン(Sb 2 3 )を0.01〜2.0mol%と、酸化亜鉛(ZnO)を0.1〜1.0mol%とを含む第1の原料と、酸化亜鉛(ZnO)ホウ酸(H3BO3と二酸化ケイ素(SiO2とを含む第2の原料の各々をあらかじめ熱処理した後に添加し、かつ所定のドナー元素を添加してなる材料によって作製されたことを特徴とする酸化亜鉛チップバリスタ。
  2. 酸化亜鉛(ZnO)100mol%に対し
    外掛けで酸化ビスマス(Bi23)0.1乃至1.5mol%、酸化アンチモン(Sb23)0.01乃至2.0mol%、酸化コバルト(CoO)と酸化マンガン(MnO2)のうち一種類以上を0.1乃至1.5mol%、酸化クロム(Cr23)0.01乃至2.0mol%、ホウ酸(H3BO3)0.1乃至1.0mol%、二酸化ケイ素(SiO2)0.1乃至1.0mol%、および酸化アルミニウム(A123)10〜1000ppmからなる原料を用意し
    前記第1の原料は前記用意した原料のうち酸化ビスマス(Bi23)および酸化アンチモン(Sb23)の全量と、外掛けで酸化亜鉛(ZnO)0.1乃至1.0mol%とを含前記第2の原料は前記用意した原料のうちホウ酸(H3BO3)および二酸化ケイ素(SiO2)の全量と、外掛けで酸化亜鉛(ZnO)0.5乃至2.0mol%とを含み、
    前記第1の原料と前記第2の原料各々を700乃至1000℃で熱処理し、
    前記熱処理された原料と、前記用意した原料のうち前記第1の原料および第2の原料以外の原料とを加えてグリーンシートを積層した後に切断してグリーンチップを形成し、そのグリーンチップを焼成して外部電極を形成してなることを特徴とする酸化亜鉛チップバリスタ。
  3. 前記熱処理された原料は、さらに、酸化亜鉛(ZnO)100mo1%に対する外掛けで酸化チタン(TiO2)を0.01乃至0.5mol%含むことを特徴とする請求項1または2に記載の酸化亜鉛チップバリスタ。
  4. 前記熱処理された原料は、さらに、酸化亜鉛(ZnO)100mol%に対する外掛けで希土類元素をA23(Aは希土類元素、Bは酸素元素)の形で0.01乃至0.5mol%含むことを特徴とする請求項1または2に記載の酸化亜鉛チップバリスタ。
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