JP5300996B2 - 半導体レーザ素子 - Google Patents
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Description
また、半導体レーザ素子の実装空間には制限があるため、光学系設計によっては従来の半導体レーザ素子での一般的なTE(Transverse Electric)偏光だけではなく、TM(Transverse Magnetic)偏光を実現する必要が生じる場合もある。たとえば、前記特許文献2には、特許文献2に開示されている熱アシスト磁気記録ヘッドに用いられるレーザダイオードとして、TMモードの偏光を発生するチップであることが好ましいことが開示されている。
この発明の構成では、量子井戸層は、TMモード発振を生じさせるための引っ張り歪みを有しているので、半導体レーザ素子をTMモードで発振させることができる。また、障壁層は圧縮歪みを有しているので、活性層全体の歪みを緩和させることができる。これにより、通電中の結晶劣化が抑制されるので、半導体レーザ素子の信頼性を高めることができる。
前記各障壁層の格子不整合率が0より大きく4.0%以下であることが好ましい。格子不整合率が4.0%より大きい(圧縮歪の大きさが大きい)と、障壁層の結晶成長時に、結晶に割れが生じるおそれがあるからである。
図1は、この発明の一実施形態に係る半導体レーザダイオードの構成を説明するための平面図であり、図2は図1のII-II線に沿う断面図であり、図3は図1のIII-III線に沿う断面図である。
この半導体レーザダイオード70は、基板1と、基板1上に結晶成長によって形成された半導体積層構造2と、基板1の裏面(半導体積層構造2と反対側の表面)に接触するように形成されたn型電極3と、半導体積層構造2の表面に接触するように形成されたp型電極4を備えたファブリぺロー型のものである。
一方、p型半導体層14は、p型ガイド層12上に、第1p型(Alx1Ga(1−x1))0.51In0.49Pクラッド層(0≦x1≦1)17(たとえば250nm〜400nm厚、この例では300nm厚)、p型InGaPエッチングストップ層18(たとえば5nm〜10nm厚、この例では5nm厚)、第2p型(Alx1Ga(1−x1))0.51In0.49Pクラッド層(0≦x1≦1)19(たとえば1000nm〜1500nm厚、この例では1000nm厚)、p型GaAsキャップ層20(たとえば50nm〜100nm厚、この例では100nm厚)およびp型GaAsコンタクト層21(たとえば1000nm〜2000nm厚、この例では1000nm厚)を積層して構成されている。
p型GaAsコンタクト層21は、p型電極4とオーミックコンタクトをとるための低抵抗層である。p型GaAsコンタクト層21は、GaAsにたとえばp型ドーパントとしてのZnをドープすることによって、p型半導体層とされている。
n側ガイド層11は、Alx2Ga(1−x2)As(0≦x2≦1)層(たとえば20nm〜30nm厚、この例では20nm厚)からなり、n型半導体層13上に積層されることにより構成されている。p側ガイド層12は、Alx2Ga(1−x2)As(0≦x2≦1)層(たとえば20nm〜30nm厚、この例では20nm厚)からなり、活性層10上に積層されることにより構成されている。
クラッド層16,17,19およびガイド層11,12のバンドギャップは、Al組成が多くなるほど大きくなる。前述したように、活性層10からキャリアが周囲の層に溢れ出すキャリアオーバーフローを防止するためには、ガイド層11,12とクラッド層16,17,19との間のバンドギャップ差を所定値以上にすることが好ましい。そこで、x1を0.7よりも大きく、x2を0.8以下とすることによって、前記バンドギャップ差を前記所定値以上にすることができる。
活性層10は、この実施形態では、図4に示すように、アンドープのGaAs(1−x3)Px3層(0<x3≦1)からなる量子井戸(well)層221とアンドープの(Alx4Ga(1−x4))(1−y)InyAs層(0<x4≦1,0<y<1)からなる障壁(barrier)層222とを交互に複数周期繰り返し積層して構成された多重量子井戸構造を有している。量子井戸(well)層221の膜厚は、たとえば9nm〜12nm厚に形成されている。各障壁層222の膜厚は、4nmより大きく形成されている。
αm={(Am−D)/D}×100[%] …(1)
n番目の障壁層222の格子不整合率βnは、次式(2)によって表される。
βn={(Bn−D)/D}×100[%] …(2)
活性層10の平均歪量γ[%]は、次式(3)によって定義される。
各障壁層222の格子不整合率は、0.01%以上4.0%以下であることが好ましく、0.5%以上2.0%以下であることがより好ましい。格子不整合率が0.01%より小さい(圧縮歪の大きさが小さい)と、活性層10全体の歪みを緩和させる効果が小さくなり、格子不整合率が4.0%より大きい(圧縮歪の大きさが大きい)と、障壁層222の結晶成長時に、結晶に割れが生じるおそれがあるからである。
また、量子井戸層221の数は、2以上5以下であることが好ましい。量子井戸層221の数が2より少ないと、1つの量子井戸層221の膜厚を大きくする必要があるため、結晶欠陥が発生しやすくなるからである。一方、量子井戸層221の数が5より多いと、界面が多くなるため、結晶欠陥が発生しやすくなるからである。
半導体積層構造2は、リッジストライプ30の長手方向両端における劈開面により形成された一対の端面(劈開面)31,32を有している。この一対の端面31,32は、互いに平行である。こうして、n側ガイド層11、活性層10およびp側ガイド層12によって、前記一対の端面31,32を共振器端面とするファブリペロー共振器が形成されている。すなわち、活性層10で発生した光は、共振器端面31,32の間を往復しながら、誘導放出によって増幅される。そして、増幅された光の一部が、共振器端面31,32からレーザ光として素子外に取り出される。
図1および図2に示すように、共振器の端面部分には、活性層10のバンドギャップを拡大する端面窓構造40が形成されている。この端面窓構造40は、たとえば、共振器の端面部分に亜鉛(Zn)を拡散することによって形成される。
まず、図5に示すように、GaAs基板1上に、有機金属化学気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)によって、n型GaAsバッファ層15、n型(Alx1Ga(1−x1))0.51In0.49Pクラッド層16、n側Alx2Ga(1−x2)Asガイド層11、活性層10、p側Alx2Ga(1−x2)Asガイド層12、第1p型(Alx1Ga(1−x1))0.51In0.49Pクラッド層17、p型InGaPエッチングストップ層18、第2p型(Alx1Ga(1−x1))0.51In0.49Pクラッド層19およびp型GaAsキャップ層20を順に成長させる。なお、活性層10は、GaAs(1−x3)Px3層からなる量子井戸層221と、(Alx4Ga(1−x4))(1−y)InyAs層からなる障壁層222とを交互に複数周期繰り返し成長させることによって形成される。
最後に、p型GaAsコンタクト層21にオーミック接触するp型電極4を形成する。また、GaAs基板1にオーミック接触するn型電極3を形成する。
障壁層222の格子不整合率(圧縮歪量)[%]と偏光比[dB]との関係について説明する。ここで、偏光比は、偏光比=10LOG(TM成分光出力/TE成分光出力)として定義される。障壁層222の格子不整合率(活性層10の平均歪量)が異なる複数の実験サンプルを用いて実験を行った。
a(比較例):量子井戸層221の膜厚が9nm〜12nmで、量子井戸層221の格子不整合率(引っ張り歪量)が−0.9%で、障壁層222の膜厚が4nm〜8nmで、障壁層222の格子不整合率(圧縮歪量)が0%で、活性層10の平均歪量が−0.6%の半導体レーザダイオード
b:量子井戸層221の膜厚が9nm〜12nmで、量子井戸層221の格子不整合率が−0.9%で、障壁層222の膜厚が4nm〜8nmで、障壁層222の格子不整合率が0.8%で、活性層10の平均歪量が−0.4%の半導体レーザダイオード
c:量子井戸層221の膜厚が9nm〜12nmで、量子井戸層221の格子不整合率が−0.9%で、障壁層222の膜厚が4nm〜8nmで、障壁層222の格子不整合率(圧縮歪量)が1.2%で、活性層10の平均歪量が−0.2%の半導体レーザダイオード
サンプルaでは障壁層222の圧縮歪量は0%で活性層10の平均歪量が−0.6%であり、サンプルbでは障壁層222の圧縮歪量は0.8%で活性層10の平均歪量が−0.4%であり、サンプルcでは障壁層222の圧縮歪量は1.2%で活性層10の平均歪量が−0.2%ある。したがって、障壁層222の圧縮歪量はa<b<cとなり、活性層10の平均歪量の絶対値はa>b>cとなる。通電条件は、25°Cで60mWとした。
また、前記各サンプルa,b,cに対する平均故障時間(MTBF:Mean Time Between Failure)を測定した。具体的には、各サンプルa,b,cをそれぞれ200個ずつ用意し、80°C、60mWの通電条件で、600時間の通電試験を行なった。この際、各サンプルの光出力が一定値(60mW)となるように、各サンプルの通電電流(動作電流(Iop))を制御した。
MTBF=(通電時間×投入数)/故障数 …(4)
各サンプルa〜cに対するMTBFの算出結果を表2に示す。
表2から、MTBFは、活性層10の平均歪量の絶対値が小さいほど、大きくなっていることがわかる。つまり、活性層10の平均歪量の絶対値が小さいほど、通電時の結晶劣化の度合いが小さいことがわかる。
図13から、MTBFを大きくするためには、活性層10の平均歪量の絶対値が0.5以下(平均歪量が−0.5以上0.5以下)であることが好ましく、活性層10の平均歪量の絶対値が0.3以下(平均歪量が−0.3以上0.3以下)であることがより好ましいことがわかる。
この発明は、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で種々の設計変更を施すことが可能である。
2 半導体積層構造
3 n型電極
4 p型電極
6 n型AlGaInP電流狭窄層
10 活性層
11 n側Alx2Ga(1−x2)Asガイド層
12 p側Alx2Ga(1−x2)Asガイド層
13 n型半導体層
14 p型半導体層
15 n型GaAsバッファ層
16 n型(Alx1Ga(1−x1))0.51In0.49Pクラッド層
17 第1p型(Alx1Ga(1−x1))0.51In0.49Pクラッド層
18 p型エッチングストップ層
19 第2p型(Alx1Ga(1−x1))0.51In0.49Pクラッド層
20 p型キャップ層
21 p型GaAsコンタクト層
40 端面窓構造
70 半導体レーザダイオード
221 量子井戸層
222 障壁層
Claims (4)
- 熱アシスト記録方式のハードディスク装置に用いられ、TMモードで発振する半導体レーザ素子であって、
GaAsからなる基板と、
前記基板上に形成された半導体積層構造とを含み、
前記半導体積層構造は、
p型クラッド層およびn型クラッド層と、
前記p型クラッド層およびn型クラッド層に挟まれたp側ガイド層およびn側ガイド層と、
前記p側ガイド層およびn側ガイド層に挟まれた活性層とを備え、
前記p型クラッド層およびn型クラッド層は、それぞれ(Al x1 Ga (1−x1) ) 0.51 In 0.49 P層(0≦x1≦1)からなり、
前記p側ガイド層およびn側ガイド層は、それぞれAl x2 Ga (1−x2) As層(0≦x2≦1)からなり、
前記(Al x1 Ga (1−x1) ) 0.51 In 0.49 P層は、x1>0.7を満たす組成を有しており、
前記Al x2 Ga (1−x2) As層は、0.4≦x2≦0.8を満たす組成を有しており、
前記活性層は、
TMモード発振を生じさせるための引っ張り歪みを有する少なくとも2つの量子井戸層と、
隣接する前記量子井戸層に挟まれ、圧縮歪みを有する障壁層とを含み、
前記量子井戸層が、Aly2Ga(1−y2)As(1−x3)Px3層(0<x3<1,0≦y2<1)からなり、
前記障壁層が、AlGaInAs層、(Alx5Ga(1−x5))(1−y1)Iny1P層(0<x5≦1,0.49<y1<1)層またはInx6Ga(1−x6)P層(0.49<x6<1)層からなり、
発振波長が780nm以上830nm以下である、半導体レーザ素子。 - 前記各量子井戸層の格子不整合率が−0.4%以下である、請求項1または2に記載の半導体レーザ素子。
- 前記各障壁層の格子不整合率が0より大きく4.0%以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の半導体レーザ素子。
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