JP5300147B2 - 包接錯体 - Google Patents

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Description

本発明は、包接錯体に関する。
トリフェニルアミンを骨格に有する化合物やポリマーは、正孔輸送性を示すことが知られている。例えば、特許文献1には、トリフェニルアミンの環状化合物を感光層に含有する電子写真感光体が記載されている。また、特許文献2には、トリフェニルアミンを主鎖骨格に有するポリマーを正孔輸送層に含む有機電子デバイスが記載されている。
特開平05−323635号公報 特開2008−098615号公報
本発明の目的は、トリフェニルアミンを骨格に有する環状化合物と電子受容体との包接錯体を提供することにある。
本発明によれば、下記[1]乃至[8]に係る包接錯体が提供される。
[1]下記式(1)で表される構造単位を有する環状化合物からなる電子供与体と、電子受容体とから構成されることを特徴とする包接錯体。
Figure 0005300147
(式(1)中、R、R、R、R、R、R及びRの各々は、独立して水素または置換基を有することがある置換基を示す。nは、5乃至20の整数を示す。a,bは、独立して、各々1乃至4の整数を示す。)
[2]前記式(1)において、Rがn−ブチル基であり、R、R、R、R、R及びRの各々が水素であることを特徴とする[1]に記載の包接錯体。
[3]前記式(1)において、nが5乃至7であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の包接錯体。
[4]前記環状化合物が、環状オリゴ(4−n−ブチルトリフェニルアミン)であることを特徴とする[1]乃至[3]のいずれかに記載の包接錯体。
[5]前記電子受容体は、フラーレン類から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする[1]乃至[4]のいずれかに記載の包接錯体。
[6]前記フラーレン類が、フラーレンC60誘導体、フラーレンC70誘導体から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする[5]に記載の包接錯体。
[7]前記電子受容体は、ポリパラフェニレンであることを特徴とする[1]乃至[4]のいずれかに記載の包接錯体。
[8]前記環状化合物は、自己縮合性モノマーである4−(4’−ブロモフェニル)−4”−ブチルジフェニルアミンをt−ブトキシカリウムの存在下でパラジウム系触媒により炭素−窒素カップリング重合することにより得られることを特徴とする[1]乃至[7]のいずれかに記載の包接錯体。
本発明によれば、トリフェニルアミンを骨格に有する環状化合物と電子受容体との包接錯体が得られる。
4−(4’−ブロモフェニル)−4”−ブチルジフェニルアミンのH−NMR測定チャートである。 4−(4’−ブロモフェニル)−4”−ブチルジフェニルアミンの13H−NMR測定チャートである。 環状オリゴ(4−ブチルトリフェニルアミン)のH−NMR測定チャートである。 環状オリゴ(4−ブチルトリフェニルアミン)の13H−NMR測定チャートである。 環状オリゴ(4−ブチルトリフェニルアミン)とフラーレンC60のトルエン溶液の蛍光スペクトルである。 包接錯体の赤外線(IR)吸収スペクトルである。 PL測定の結果を電子受容体の濃度と(I/I)との関係をグラフに示したものである。 ポリロタキサンの紫外線(UV)吸収スペクトルである。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。
本実施の形態が適用される包接錯体は、下記式(1)で表される構造単位を有する環状化合物からなる電子供与体と、電子受容体とから構成される。
Figure 0005300147
ここで、式(1)中、R、R、R、R、R、R及びRの各々は、独立して水素または置換基を有することがある置換基を示す。nは、5乃至20の整数を示す。a,bは、独立して、各々1乃至4の整数を示す。
置換基としては、炭素数1〜炭素数8のアルキル基、炭素数1〜炭素数8のアルコキシ基等が挙げられる。具体的には、炭素数1〜炭素数8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ペンチル基、オクチル基等が挙げられる。炭素数1〜炭素数8のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
また、置換基R、R、R、R、R、R及びRの各々は、互いに結合して環を形成していてもよい。この場合、環は、同一のトリアリールアミン単位中の置換基の間で形成してもよく、また、異なるトリアリールアミン単位中の置換基同士が環を形成してもよい。例えば、トリアリールアミン単位中のRとそれに隣接する他のトリアリールアミン単位中のRとが環を形成してもよい。
式(1)で表される構造単位としては、上述した中でも、Rがn−ブチル基であり、R、R、R、R、R及びRの各々が水素であることが好ましい。また、nは、5、6または7であることが好ましい。
式(1)で表される構造単位を有する環状化合物の合成方法は特に限定されない。本実施の形態では、例えば、自己縮合性モノマーを合成し、さらに、この自己縮合性モノマーを炭素−窒素カップリング重合することにより環状化合物を合成する方法が挙げられる。
自己縮合性モノマーの例としては、例えば、所定の反応条件下で、下記に示す反応スキームに従い、パラジウム系触媒と塩基性化合物の存在下で、4,4’−ジブロモビフェニルと4−ブチルアニリンとから得られる4−(4’−ブロモフェニル)−4”−ブチルジフェニルアミンが挙げられる。
Figure 0005300147
自己縮合性モノマーの合成反応に使用するパラジウム触媒としては、特に限定されず、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)、ビス(トリシクロヘキシル)パラジウム(0)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジブロモビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロ[1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン]パラジウム(II)、ジクロロ[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム(II)、ジクロロ[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)等が挙げられる。これらの中でも、ジクロロ[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)が好ましい。
パラジウム触媒の使用量は、特に限定されないが、例えば、4,4’−ジブロモビフェニル1モルに対して0.005当量〜0.5当量、好ましくは0.01当量〜0.1当量である。
塩基性化合物としては、特に限定されず、例えば、t−ブトシキナトリウム、t−ブトキシリチウム、t−ブトキシカリウム、メトキシナトリウム、エトキシナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、t−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、n−ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド等が挙げられる。
合成反応は、溶媒中で行うことが好ましい。合成反応に使用する溶媒としては、特に限定されない。例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等の塩素化炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ジエチルベンゼン等の芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジグライム、アニソール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル;γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム等の複素環化合物;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルイミダゾリジノン、ピリジン、ニトロベンゼン等の含窒素化合物;二硫化炭素、ニトロメタン、ジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物が挙げられる。
さらに、上述した自己縮合性モノマーを、例えば、所定の反応条件下で、下記に示す反応スキームに従い、パラジウム系触媒と塩基性化合物の存在下で、炭素−窒素カップリング重合することにより環状化合物を合成する。
Figure 0005300147
炭素−窒素カップリング重合に使用するパラジウム系触媒、塩基性化合物及び溶媒は、自己縮合性モノマーの合成反応と同様のものを使用することができる。
炭素−窒素カップリング重合反応を行う重合温度は、通常、0℃〜100℃、好ましくは20℃〜80℃、より好ましくは20℃〜50℃である。また、重合時間は、通常、1時間〜48時間、好ましくは6時間〜24時間、より好ましくは12時間〜24時間である。
(電子受容体)
本実施の形態で使用する電子受容体としては、例えば、球殻状炭素分子、導電性高分子等が挙げられる。球殻状炭素分子としては、フラーレン類が好ましい。
フラーレン類としては、種々の立体構造を有するカーボンクラスター、例えば、C60、C70、C74、C76、C78、C82、C84、C720、C860等のフラーレン及びフラーレン誘導体等が挙げられる。これらのフラーレン類は、置換基の導入等により修飾されていてもよい。置換基の種類は、特に限定されず、例えば、メチル基、t−ブチル基等のC1−10アルキル基;フェニル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基;ジオキソラン単位、ハロゲン又は酸素原子等が挙げられる。また、金属を内包したフラーレン類としては、例えば、周期表第1A族元素、周期表第2A族元素、ランタノイド族元素(La等)等の金属がドープされたフラーレン類が挙げられる。
導電性高分子としては、例えば、ポリアセチレン系高分子;ポリ(p−フェニレン)系樹脂、ポリ(m−フェニレン)系樹脂、ポリ(p−フェニレンビニレン)等のポリフェニレンビニレン系樹脂;ポリフェニレンスルフィド系樹脂;ポリフェニレンオキシド系樹脂等;ポリピロール、ポリ(3−アルキルチオフェン)等のポリチオフェン系樹脂;ポリフラン系樹脂;ポリセレノフェン系樹脂;ポリテルロフェン系樹脂;ポリアニリン系樹脂、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)等のピロール系樹脂等が挙げられる。
本実施の形態において、電子供与体としての式(1)で表される構造単位を有する環状化合物の構造は、一定の大きさの空洞を有することから、下記に示すように、フラーレン等の電子受容体をゲスト分子として包接し、包接錯体を形成する。本実施の形態では、包接錯体の、環状化合物を構成する式(1)で表される構造単位の数nは、5、6又は7が好ましい。
Figure 0005300147
さらに、電子供与体としての式(1)で表される構造単位を有する環状化合物は、例えば、ポリ(p−パラフェニレン)(PPP)のようなn型高分子半導体と組み合わせて、下記に示すようなポリロタキサンを形成する。
Figure 0005300147
以下に、実施例に基づき本実施の形態をさらに詳細に説明する。尚、本実施の形態は以下の実施例に限定されない。
(1)高速液体クロマトグラフィー(HPLC)
合成反応により得られた生成物をHPLCで測定し、組成分析を行った。
ODS(PEGASIL ODS,ODS−2352)、4.6φ×長さ250mmのカラムを使用した。検出器として日本分光株式会社製UV−2075Plus、ポンプとして日本分光株式会社製PU−2080、デガッサーとして日本分光株式会社製DG−2080−53を使用した。移動相は、クロロホルム:メタノール=1:1の混合溶媒を使用した。1mlのクロロホルム:メタノール=1:1の溶媒に対し、少量の試料(1mg未満)を溶解させ、5mlマイクロシリンジで秤量し、ループインジェクターを用いて測定系に導入した。
(2)核磁気共鳴スペクトル(NMR)
合成反応により得られた生成物の構造評価のため、H−NMR測定と13C−NMR測定を行った。日本電子株式会社製ECX400(測定周波数400MHz、観測周波数H:400MHz,13C:100MHz)を使用した。測定は、試料50mg程度を重クロロホルム(ALDRICH,99.8%,TMS0.03%含有)1mlに溶解し、5mmのNMR管に下から4cm程度になるように入れて調製したものを用いた。モノマーの場合、測定温度は室温、積算回数32回で測定した。オリゴマーの場合は、測定温度40℃、積算回数128以上で測定した。
(3)可視・紫外線吸収スペクトル測定
UV−visスペクトル測定により、最大吸収波長を調べた。日本分光株式会社製のJUSCO V−670 spectrometerを使用した。測定は、環状オリゴマー濃度を1.43×10−7Mに調整して行った。
(実験1)
<環状オリゴ(4−ブチルトリフェニルアミン)の合成>
(1)初めに、以下の手順に従い、自己縮合性モノマーである4−(4’−ブロモフェニル)−4”−ブチルジフェニルアミンを合成した。
マグネチックスターラー、アリーン冷却器、三方コックを備えた100ml二口ナスフラスコに、4,4’−ジブロモビフェニル4.28g(45.2mmol)とt−ブトキシナトリウム5.82g(60.5mmol)と[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(Pd(dppf)Cl)0.351g(0.429mmol)を加え、脱気、窒素置換した。次いで、4−ブチルアニリン6.75ml(45.2mmol)とトルエン(85ml)を加え、12時間加熱還流させた。その後、反応液をトルエンと1NHClと飽和食塩水で分液し、無水MgSOで乾燥後、エバポレーターでトルエンを留去した。続いて、カラム(展開溶媒トルエン:ヘキサン=1:1)と再結晶で精製し、目的物の4−(4’−ブロモフェニル)−4”−ブチルジフェニルアミン(以下、単に「モノマー」と記す場合がある。)を得た(収量6.86g、収率42%)。
図1に、合成した4−(4’−ブロモフェニル)−4”−ブチルジフェニルアミンのH−NMR測定チャートを示す。図1(a)は、モノマーの0.8〜7.8ppmのH−NMR測定チャートである。図1(b)は、モノマーの脂肪族部分(0.8〜2.8ppm)のH−NMR測定チャートである。図1(c)は、モノマーの芳香族部分(7.0〜7.6ppm)のH−NMR測定チャートである。
H−NMR(CDCl) δ:7.49(2H,d),7.40(4H,m),7.07付近(6H,m),5.66(1H,s),2.56(2H,t),1.58(2H,dd),1.37(2H,m),0.93(3H,t)
図2は、合成した4−(4’−ブロモフェニル)−4”−ブチルジフェニルアミンの13H−NMR測定チャートを示す。図2(a)は、モノマーの脂肪族部分(0〜150ppm)の13H−NMR測定チャートである。図2(b)は、モノマーの芳香族部分(115〜145ppm)の13H−NMR測定チャートである。
(2)次に、前述した操作により合成した自己縮合性モノマーである4−(4’−ブロモフェニル)−4”−ブチルジフェニルアミンを用い、以下の手順に従い、炭素−窒素(C−N)カップリング重合により、環状オリゴ(4−ブチルトリフェニルアミン)を合成した。
マグネチックスターラー、アリーン冷却器、三方コックを備えた100ml二口ナスフラスコに、前述した操作により合成したモノマー0.5g(1.31mmol)と、塩基性化合物としてのt−ブトキシナトリウム0.139g(1.44mmol)とパラジウム(II)アセテート5.9mg(2mol%)を加え、脱気窒素置換した。次いで、溶媒としてのトルエンとトリ−t−ブチルフォスフィン25.4μl(8mol%)とを加え反応液を調整した。反応液のモノマー濃度は0.0267/Mである。
次に、反応液を加熱し、24時間加熱還流させた。反応後、トルエンと1NHClと飽和食塩水で分液し、無水MgSOで乾燥させてから、エバポレーターで溶媒を留去し、クロロホルムに溶かし、メタノールに再沈精製して生成物を得た(収量0.286g,収率71.4%)。その後、ソックスレー抽出(溶媒アセトン)を約15時間行った。残査(ソックスレーろ紙に残った生成物)をGPC測定して、オリゴマーが残っている場合は再び再沈精製し、ソックスレー抽出操作を繰り返した。得られたオリゴマーは液体クロマトグラフィー(TLC)にて分析し、線状と環状のオリゴマーの混合物については、カラムクロマトグラフィーにて分離した(展開溶媒トルエン:ヘキサン=2:3)。
得られた生成物は、収率71.4%であり、その中、環状オリゴ(4−ブチルトリフェニルアミン)の収率4%、線状オリゴ(4−ブチルトリフェニルアミン)の収率2.4%であった。
図3に、環状オリゴ(4−ブチルトリフェニルアミン)のH−NMR測定チャートを示す。図3(a)は、0.5〜7.5ppmの範囲の測定チャートである。図3(b)は、芳香族部分(6.7〜7.6ppm)の測定チャートである。
図4に、環状オリゴ(4−ブチルトリフェニルアミン)の13H−NMR測定チャートを示す。図4(a)は、0〜150ppmの範囲の測定チャートである。図4(b)は、芳香族部分(118〜150ppm)の測定チャートである。
図3及び図4の結果から、線状構造の場合に観察される末端炭素に結合した水素に起因する吸収スペクトルと、末端炭素に起因する吸収スペクトルとが観測されないので、生成物が環状構造を有していることが確認された。
得られた環状オリゴ(4−ブチルトリフェニルアミン)は、HPLC測定の結果、5量体、6量体及び7量体の混合物であった。
(実験2〜実験7)
表1に記載した条件(モノマー濃度/M、溶媒、塩基性化合物)で反応液を調整し、それ以外は、前述した実験1と同様な操作に従い、環状オリゴ(4−ブチルトリフェニルアミン)を合成した。実験1の結果と併せて結果を表1に示す。
Figure 0005300147
実験6で得られた環状オリゴ(4−ブチルトリフェニルアミン)は、HPLC測定の結果、5量体:6量体:7量体=65:22:13(重量比)の混合物であった。
(実施例1)
前述した実験6において得られた環状オリゴ(4−ブチルトリフェニルアミン)のトルエン溶液(環状オリゴマー濃度2.27×10−5M)にフラーレンC60のトルエン溶液(フラーレン濃度3.33×10−5M)を添加し、混合溶液を調製した。
次に、この混合溶液について、分光器(日本分光株式会社製JUSCO FP−6500 spectrometer)により蛍光スペクトルを測定した。また、励起波長340nmの光を用い、混合溶液についてPL測定を行った。混合液のPL測定は、表2に示すように、フラーレンC60のトルエン溶液の添加量を段階的に増大させ、各添加量における蛍光強度Iを測定し、フラーレンC60が添加されない場合の蛍光強度Iとの比(I/I)を求めた。結果を表2に示す。
図5に、環状オリゴ(4−ブチルトリフェニルアミン)とフラーレンC60のトルエン溶液の蛍光スペクトルを示す。
図6に、包接錯体の赤外線(IR)吸収スペクトルを示す。図6(a)は、波数400〜4000cm−1の赤外線(IR)吸収スペクトルであり、図6(b)は、波数650〜800cm−1の拡大図である。尚、環状オリゴ(4−ブチルトリフェニルアミン)とフラーレンC60とは、それぞれ、KBr法で測定した。包接錯体は、トルエン溶液をKBr板に塗布し、トルエンを除去した後、測定した。
Figure 0005300147
図5に示す蛍光スペクトルでは、一定濃度の環状オリゴ(4−ブチルトリフェニルアミン)のトルエン溶液に対し、段階的に濃度を変化させたフラーレンC60溶液を加えると、蛍光スペクトルの消光が観察された。これにより、環状オリゴ(4−ブチルトリフェニルアミン)とフラーレンC60の包接錯体が形成されていることが分かる。
また、表2に示す結果から、PL測定によりフラーレンC60溶液を加えることにより(I/I)が増大することが分かる。
図6に示す赤外線(IR)吸収スペクトルから、パラ二置換体芳香族のC−H面外変角振動のピークがシフトしている。これは、環状オリゴマー内にフラーレンC60が包接されたことで、C−Hの動きに影響したと考えられることから、固体状態でも、錯体形成が示唆された。
(実施例2)
実施例1において、環状オリゴ(4−ブチルトリフェニルアミン)の溶媒と、フラーレンC60の溶媒とを、トルエン/アセトン(70:30)混合溶媒に変更し、表3に示すように、フラーレンC60の添加量を段階的に増大させ、それ以外は実施例1と同様な操作により、各添加量における蛍光強度Iを測定し、フラーレンC60が添加されない場合の蛍光強度Iとの比(I/I)を求めた。結果を表3に示す。
Figure 0005300147
(実施例3)
実施例1において、電子受容体をフラーレンC70に変更し、表4に示すように、フラーレンC70の添加量を段階的に増大させ、それ以外は実施例1と同様な操作により、各添加量における蛍光強度Iを測定し、フラーレンC70が添加されない場合の蛍光強度Iとの比(I/I)を求めた。結果を表4に示す。
Figure 0005300147
(比較例1)
実施例1において、環状オリゴ(4−ブチルトリフェニルアミン)をN,N’−diphenyl−N,N’−bis(4−mrthylphenyl)−(1,1’−biphenyl)−4,4’−diamine(TPD)に変更し、表5に示すように、フラーレンC60の添加量を段階的に増大させ、それ以外は実施例1と同様な操作により、各添加量における蛍光強度Iを測定し、フラーレンC60が添加されない場合の蛍光強度Iとの比(I/I)を求めた。結果を表5に示す。
Figure 0005300147
(比較例2)
比較例1において、溶媒を、トルエン/アセトン(70:30)混合溶媒に変更し、表6に示すように、フラーレンC60の添加量を段階的に増大させ、それ以外は比較例1と同様な操作により、各添加量における蛍光強度Iを測定し、フラーレンC60が添加されない場合の蛍光強度Iとの比(I/I)を求めた。結果を表6に示す。
Figure 0005300147
図7は、下記式に基づき、PL測定の結果を電子受容体の濃度と(I/I)との関係をグラフに示したものである。
/I=1+Kτ[電子受容体]
:環状オリゴマー/溶媒のみの蛍光強度
I:蛍光強度
:消光定数
τ:蛍光寿命
図7(a)は、表3の結果に基づく環状オリゴ(4−ブチルトリフェニルアミン)/フラーレンC60のPL測定結果のグラフ(図中の表示:環状オリゴマー)と、表6の結果に基づくTPD/フラーレンC60のPL測定結果のグラフ(図中の表示:TPD)とを示している。
図7(a)に示すように、環状オリゴ(4−ブチルトリフェニルアミン)/フラーレンC60のグラフの勾配は、TPD/フラーレンC60のグラフの勾配より大きいことから、環状オリゴ(4−ブチルトリフェニルアミン)/フラーレンC60から構成された包接錯体の結合が強いことが分かる。
また、図7(b)は、表2の結果に基づく環状オリゴ(4−ブチルトリフェニルアミン)/フラーレンC60のPL測定結果のグラフ(図中の表示:C60)と、表4の結果に基づく環状オリゴ(4−ブチルトリフェニルアミン)/フラーレンC70のPL測定結果のグラフ(図中の表示:C70)とを示している。
図7(b)に示すように、環状オリゴ(4−ブチルトリフェニルアミン)/フラーレンC70のグラフの勾配は、環状オリゴ(4−ブチルトリフェニルアミン)/フラーレンC60のグラフの勾配より大きいことから、フラーレンC70と環状オリゴ(4−ブチルトリフェニルアミン)の結合が、フラーレンC60と環状オリゴ(4−ブチルトリフェニルアミン)の結合より大きいことが分かる。
(実施例4)
実施例1で用いた環状オリゴ(4−ブチルトリフェニルアミン)とポリパラフェニレン(PPP)の混合溶液を超音波処理し、環状オリゴ(4−ブチルトリフェニルアミン)とポリパラフェニレン(PPP)とから構成されたポリロタキサンを調製した。
1.0×10−5mol/Lの環状オリゴマーのTHF溶液0.5mLと、1.0×10−3mol/L(モノマーユニット換算)のポリ(1,4−フェニレン)(分子量1,100程度)のTHF溶液0,0.25,0.5,1.0,1.5mLをそれぞれ混合し、メスフラスコを用い、THFを加えて25mLに調整し、5種類の混合溶液を作製した。環状オリゴマーの濃度は、2.0×10−7mol/Lに固定した。ポリ(1,4−フェニレン)(PPP)の濃度は、それぞれ、0,1.0×10−5,2.0×10−5,4.0×10−5,6.0×10−5mol/Lである。それぞれの溶液について、30分間超音波処理を行った後、UV吸収スペクトルを測定した。
図8は、ポリロタキサンの紫外線(UV)吸収スペクトルを示す。図8中、表示(oligomer)は環状オリゴ(4−ブチルトリフェニルアミン)を示し、表示(PPP)はポリパラフェニレンを示し、表示(PPP+oligomer)はポリロタキサンを示す。図8に示すように、混合溶液では、PPP由来のピークが赤色光側にシフトしていることが分かる。これは、ポリロタキサンを形成することにより、フェニル基の面がそろい、共役が伸びたためと考えられる。また、PPP溶液のUV吸収スペクトルと比べ、混合溶液では400nm以上のブロードな吸収帯が減少しており、ポリロタキサンを形成することによりPPPの凝集が抑制されていることが確認された。
本発明により得られる包接錯体は、正孔輸送部位(環状トリアリールアミン)と、電子輸送部位(フラーレン)がナノサイズで相分離しており、これはバルクへテロ結合という有機薄膜太陽電池に理想的な構造である。このため、光電効率の向上が期待できる。
また、本発明の包接錯体は、環状の錯体が重なってシリンダー構造を構築することが期待できる。シリンダー構造となれば、明確な電荷の輸送パスを構築することができ、帯電防止フィルムや、有機ELに代表される電子デバイスへの応用が可能である。

Claims (8)

  1. 下記式(1)で表される構造単位を有する環状化合物からなる電子供与体と、
    電子受容体と
    から構成されることを特徴とする包接錯体。
    Figure 0005300147
    (式(1)中、R、R、R、R、R、R及びRの各々は、独立して水素または置換基を有することがある置換基を示す。nは、5乃至20の整数を示す。a,bは、独立して、各々1乃至4の整数を示す。)
  2. 前記式(1)において、Rがn−ブチル基であり、R、R、R、R、R及びRの各々が水素であることを特徴とする請求項1に記載の包接錯体。
  3. 前記式(1)において、nが5乃至7であることを特徴とする請求項1又は2に記載の包接錯体。
  4. 前記環状化合物が、環状オリゴ(4−n−ブチルトリフェニルアミン)であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の包接錯体。
  5. 前記電子受容体は、フラーレン類から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の包接錯体。
  6. 前記フラーレン類が、フラーレンC60誘導体、フラーレンC70誘導体から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項5に記載の包接錯体。
  7. 前記電子受容体は、ポリパラフェニレンであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の包接錯体。
  8. 前記環状化合物は、自己縮合性モノマーである4−(4’−ブロモフェニル)−4”−ブチルジフェニルアミンをt−ブトキシカリウムの存在下でパラジウム触媒により炭素−窒素カップリング重合することにより得られることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の包接錯体。
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