JP5299759B2 - 画像形成装置 - Google Patents

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Description

本発明はコロナ帯電器に係わり、特に負コロナを発生するコロナ帯電器を搭載した画像形成装置に関する。
一般に電子写真装置は、一様に帯電された像担持体(以下感光体ともいう)上に画像データにより変調された書込光を照射して、感光体上に静電潜像を形成し、この静電潜像の形成された感光体に現像部によりトナーを供給してトナー画像を感光体上に形成して現像する。画像形成装置はこの感光体上のトナー画像を転写部で転写紙(記録紙、或いは中間転写体)に転写した後、定着部で転写紙上に転写したトナーを加熱・加圧して定着させ、感光体表面に残留したトナーをクリーニング部でクリーニングブレードにより掻き取る等の方法により回収する。以上のような画像形成プロセスが取られる。
ここで被帯電体である感光体を帯電する手段としてコロナ帯電器が用いられる。
コロナ放電は、不均一な電界中で行われる局所的な空気の絶縁破壊によって生じる持続的な放電である。一般には、微小径のワイヤをアルミなどのシールドケース中に張り、そのシールドケースの一部を削除したような構造をしている。その削除された領域からコロナイオンが放出される構成となっている。コロナワイヤに印加する電圧を増加していくと、ワイヤの周囲に局所的な強い電場が形成され、部分的な空気の絶縁破壊が起こり、放電が持続する。これがコロナ放電である。
コロナ放電の放電形態は、印加電圧の極性により大きく左右される。正コロナ放電の場合は、コロナワイヤ面に均一な放電が形成される。負コロナ放電の場合は、ストリーマ放電が点在する形の放電形態となる。正コロナ放電は帯電の均一性がかなり良いが、負コロナでは放電ムラが発生するため、正コロナより劣る。また、放電による発生するオゾンの量は負コロナのほうが正コロナよりも一桁程度多く、環境に対する負荷も大きい。
<コロナ帯電器とその特徴>
(1)コロトロン型コロナ帯電器
コロトロン型コロナ帯電器とそれを用いた帯電法の構成を図1(a)に示す。コロトロン型コロナ帯電器は直径50〜100umのタングステンワイヤを1cm程度離して金属でシールドした構成である。開口面を被帯電体に対向して配置した状態で、コロナワイヤに5〜10kVの高電圧を印加し、これによって発生した正または負イオンを被帯電体表面に移動させて帯電する。図2(a)に示すようにコロトロン型コロナ帯電器は一定量の電荷発生を行うので、被帯電体表面を均一に一定電位に帯電することは必ずしも得意ではない。一定電荷を記録紙に与えることを目的とする転写用の帯電器としては特に有効である。
(2)スコロトロン型コロナ帯電器
スコロトロン型コロナ帯電器は、被帯電体表面の帯電電位のムラを少なくするために考案されたものである。図1(b)に示すようにコロトロンの開口面に数本のワイヤ或いはメッシュをグリッド電極として配置した構成である。このスコロトロン型帯電器の開口面を被帯電体に対向させ、グリッド電極にバイアス電圧を印加する。
スコロトロン型コロナ帯電器の帯電特性を図2(b)に示す。スコロトロン型コロナ帯電器の特徴は帯電時間が長くなってもグリッド電極に印加された電圧によって帯電電位が規制され、表面電位が飽和することである。この飽和値はグリッド印加電圧により制御できる。スコロトロン型コロナ帯電器は、コロトロン型に比べて構造が複雑で帯電効率も劣るが、帯電電位の均一性に優れ、広く使用される。電子写真方式の画像形成装置におけるグリッド電極は帯電グリッドと呼ばれる。
コロナ帯電器で発生する窒素酸化物による被帯電体表面の変質は、異常画像を生じる要因である。特にスコロトロン型コロナ帯電器においては、長期に渡って使用されることでグリッド電極上に蓄積された放電生成物が、像担持体上に降り注ぎ、被帯電体表面の変質を促進するという問題を有しており、放電生成物に起因する、異常画像の抑制に対し解決手段として様々な検討がなされてきた。
特許文献1〜5では、像担持体表面に付着した放電生成物を除去するため、像担持体上にゼオライト等の除去粒子を塗布することで、異常画像の発生を防止している。
しかしながら、一度像担持体表面に付着した放電生成物は容易に脱離することは困難であることから、効果は不十分であった。
また、特許文献6〜7では、帯電装置にエアーを吹き付ける方法により放電生成物を取り除く方法が提案されている。しかしながら、この方法はエアーの吹き付け時には放電生成物の像担持体への付着を抑制する効果を得られるものの、エアーを停止することで抑制ができなくなるため、夜間や休日等、長時間使用しない場合においても、常時エアーを吹き付ける必要があるという点で問題を有していた。
また、特許文献8〜9では帯電部、転写部等のチャージャ付近で発生する放電生成物であるオゾン及びNOxの濃度低下を効率よく行える画像形成装置を提供するため、放電ワイヤに対向する面上に放電生成物を分解するための光触媒物質(酸化チタン等の半導体)を有することで、帯電部等の放電個所付近で発生する放電生成物であるオゾンやNOxを効率よく分解し、その濃度を低下させることを可能にしているが、長期に渡る使用において、放電生成物の分解能力が不十分であることが予想される。
また、特許文献10では、帯電器を加熱することで、帯電器に付着している放電生成物を除去する手段が提案されている。しかしながら高温での加熱が必要であるため、帯電器の加熱を行う際に、隣接している像担持体も加熱されてしまい、像担持体の劣化を引き起こしてしまうという問題を有していた。
また、特許文献11では、帯電器を感光体の下側に配置させ、帯電装置の背面部に吸着、触媒作用を有するコロナ帯電装置を用いることで、コロナ生成物の感光体への付着を抑制する方法が提案されている。この方法では、感光体停止時において放電生成物に起因した異常画像の抑制効果を得られる点で有効であるが、帯電グリッド上に付着した放電生成物の一部は、感光体側にも吸着されるため、完全には抑制することができず、特に長期に渡って帯電器を使用し、帯電グリッド上に放電生成物が蓄積した際には、像担持体の劣化を引き起こしてしまうという問題を有していた。
特開2002−268488号公報 特開2003−005603号公報 特開2003−029587号公報 特開2003−029593号公報 特開2003−076237号公報 特開2004−109538号公報 特開2004−287316号公報 特開平11−282318号公報 特開2001−075338号公報 特開2001−312122号公報 特開2003−091143号公報
本発明は以上の事情に鑑み、放電により発生する放電生成物量に起因する被帯電体の汚染を抑制することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
本発明者は前述の課題を解決すべく鋭意検討した結果、帯電グリッドを有するスコロトロン型の放電型コロナ帯電器を用いた画像形成装置において、ゼオライトと導電剤とバインダ樹脂を含有する膜を有する帯電グリッドを像担持体に対して接近する方向及び離隔する方向に移動可能とすることにより、コロナ帯電器から発生する放電生成物に起因する電子写真感光体の変質を防ぎ、帯電器直下濃度ムラや像流れの発生の抑制が可能となり、電子写真装置の信頼性が飛躍的に向上することを見出し本発明に到達した。
即ち、本発明は以下に記載する画像形成装置である。
(1)少なくともコロナ放電電極と帯電グリッドとを有するコロナ帯電器、像担持体、像露光手段、現像手段、転写又は分離手段、像担持体クリーニング手段を有する画像形成装置であって、帯電グリッドが表面にゼオライト、導電剤、バインダ樹脂を含有する膜を有しており、帯電グリッドを像担持体に対して接近する方向及び離隔する方向に移動させるための帯電グリッド移動手段を有し、帯電グリッドが、コロナ帯電器未使用時に像担持体に近接する方向に移動するようにしたことを特徴とする画像形成装置。
)前記帯電グリッドが複数重ねて配置されていることを特徴とする前記(1)に記載の画像形成装置。
)前記複数重ねて配置された帯電グリッドが、コロナ帯電器未使用時には各々が間隔を空けて配置されるように平行移動することを特徴とする前記()記載の画像形成装置。
)前記帯電グリッド移動手段が帯電グリッドをグリッド面に平行な方向に移動させる機構を更に備えており、前記複数重ねて配置された帯電グリッドが、コロナ帯電器未使用時には、互いの開口部を遮蔽するように移動することを特徴とする前記(3)に記載の画像形成装置。
)前記ゼオライトが、Y型の結晶形を有することを特徴とする前記(1)〜()のいずれか一項に記載の画像形成装置。
)前記像担持体が、導電性支持体上に少なくとも電荷発生層、電荷輸送層、架橋表面保護層を有することを特徴とする前記(1)〜()のいずれか一項に記載の画像形成装置。
)前記架橋表面保護層が少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物と、電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物との反応物を含有することを特徴とする前記()記載の画像形成装置。
)前記(1)〜()のいずれか一項に記載の画像形成装置に用いるプロセスカートリッジであって、帯電グリッドを像担持体に対して接近する方向及び離隔する方向に移動させるための帯電グリッド移動手段を有するコロナ帯電器、像担持体を有し、像露光手段、現像手段、転写または分離手段、像担持体クリーニング手段の少なくとも何れか2つ以上を組み合わせて造られ、画像形成装置本体に脱着可能に設置されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。
被帯電体の表面電位の制御が容易な帯電グリッドを有するスコロトロン型の放電型コロナ帯電器を用いた画像形成装置において、ゼオライトと導電剤とバインダ樹脂を含有する膜を有する帯電グリッドを移動可能とすることで、コロナ帯電器内に蓄積されている放電生成物が効率的に除去でき、感光体等の被帯電体の変質を抑制することで安定した画像を維持することができる。
[放電生成物が引き起こす問題]
(コロナ帯電器直下濃度ムラ)
コロナ帯電器から発生する放電生成物により起こる問題としてはまず長時間放電後の放置によるコロナ帯電器直下濃度ムラがある。これは作像動作中の放電時に発生し、コロナ帯電器の内壁に付着した放電生成物が、装置が停止している間に徐々に被帯電体を汚染し、コロナ帯電器直下部とそれ以外の部分での表面電位に差が生じ、結果として画像濃度ムラが発生するという問題である。この問題は20%RH程度の低湿環境下でより顕著に発生し、常温常湿環境下に置かれることで次第に回復する。被帯電体表面が放電生成物と可逆的に反応し、静電容量が増大または抵抗が低下しているために電位差が生じることが確認されている。いずれの感光体においても発生が確認されているが、特に保護層として表面に架橋性の硬化膜を設けた感光体では、最表面が高分子樹脂膜を主体に形成される電荷輸送層に比べ、膜のガス透過性が高く、放電生成物による内部への浸透が大きい。そのため、濃度ムラの発生が顕著であるという問題を有していた。
図4(a)はコロナ帯電器直下濃度ムラが生じた場合の画像の様子を示す図であり、図4(b)は該画像に対応する感光体表面電位を示す図である。
(コロナ帯電器直下の問題)
機外に排出する放電生成物を削減するには排出までの経路にフィルター等に担持させた形態で効果を発揮するが、放電生成物により最も汚染されるのはコロナ帯電器直下にある被帯電体であり、コロナ帯電器と被帯電体間は安定した帯電が行われるために1〜2mm程度の一定間隔を設けて固定されていることが多い。そのため放電生成物による被帯電体の汚染を抑制するためには、前述のようにコロナ帯電器に付着している放電生成物を加熱手段やエアー等で除去する方法や感光体に付着した放電生成物を後から除去する方法が提案されているが、それぞれ課題や効果が不十分であるなど、問題を有していた。
従って、本発明では放電生成物が感光体停止時に付着することを防ぐため、ゼオライトを含有した膜を有する帯電グリッドを移動可能とし、(1)休止時は作像時よりも感光体近傍に配置する、(2)複数枚を間隔を空けて表面積を大きくした状態で配置する、(3)複数枚各々の開口部を遮蔽するように配置する、ことにより帯電器に溜まっている放電生成物の感光体側への移動を抑制している。
図3は本発明の画像形成装置の構成例を示す模式図である。コロナ放電電極と帯電グリッドを有するコロナ帯電器101により像担持体100に(±)600〜1400Vが帯電される。電荷の付与(荷電)が行われた後、画像露光系102により潜像形成が行われる。アナログ複写機の場合、露光ランプで照射された原稿像がミラーにより逆像の形で感光体に可視光投影され結像されるが、デジタル複写機の場合にはCCD(電荷結合素子)で読み取られた原稿像は波長400〜780nmのLDやLEDのデジタル信号に変換されて、感光体上に結像される。従って、アナログとデジタルの波長域は異なる。結像によって感光層では電荷分離が行われ、感光体に潜像形成が行われる。
原稿に応じた潜像形成が行われた像担持体100は、現像装置103で現像剤により現像が行われ、原稿像は顕像化(トナー像)される。次に、感光体上のトナー像は転写装置104に電圧を印加することによりコピー用紙109に転写される。転写で印加する電圧は感光体に流れる電流が一定となるよう定電流制御となっている。一方、像担持体100は転写後、クリーニング装置105(クリーニングブラシ106及び弾性ゴムクリーニングブレード107で構成)でトナー像が清掃され清浄化される。クリーニング後の感光体にはトナー像を形成されたあとの潜像(原稿像)が多少なりとも保持されているため、消去し均一化するために除電装置(一般に赤色光が使用される)108で除電された後、次の複写プロセスが繰り返される。
表面にゼオライト、導電剤、バインダ樹脂を含有する膜を有している帯電グリッドを用いることにより、放電生成物をゼオライトに吸着させることができる。膜は帯電グリッド両面に設けるのが放電生成物除去効果が高く好ましいが、どちらか一方に存在していても良い。また、どちらか一方の場合は感光体側に存在するのが好ましい。この時、帯電グリッドが像担持体に近いほどその効果が大きくなる。しかし、帯電グリッドが像担持体に近すぎると帯電が不均一になる。そこで、帯電器に帯電グリッド移動手段を設け、図5に示すようにコロナ帯電器使用時(作像動作時)は像担持体と離れていて、コロナ帯電未使用時(作像休止時)は像担持体に近づくように帯電グリッドを移動させることにより、帯電均一性と放電生成物の除去の両立が可能となる。
帯電グリッドの移動は、帯電器に帯電グリッドが固定されている場合には、帯電器を移動させることによって行うことができ、また、帯電グリッドが帯電器に対して相対移動可能である場合には帯電グリッドのみを移動させることによって行うことができる。
図6は帯電グリッドを移動させる手段の一例を示すものである。
図6において、帯電グリッドは吊下げ手段である鋼線によって支持されており、鋼線を適宜の巻上装置によって巻き上げることによって帯電グリッドが感光体に対して離隔する方向に移動し、鋼線を巻き下ろすことによって帯電グリッドが感光体に対して接近する方向に移動することが可能となっている。
図6(a)は作像動作時に帯電グリッドを感光体に対して離隔する方向に移動させた状態を示し、この状態にあることで、ゼオライトが放電生成物を吸着する効果が大きくなる。
また、図6(b)は作像休止時に帯電グリッドを感光体に対して接近する方向に移動させた状態を示し、この状態にあることで、均一な帯電が可能となる。作像動作時に離隔させる間隔としては1〜2mm程度とし、作像休止時に近接させる間隔としては0(接触状態)〜0.5mmが好ましい。
また、帯電グリッドは複数重ねて配置されていることが好ましい。図7に示すように、コロナ帯電器使用時(作像動作時)には、複数の帯電グリッドが間隔を詰めて重ねて配置され、帯電が終了した際に、複数重ねられていた帯電グリッドの最も感光体側に近い物を感光体に近接させ、他の帯電グリッドも互いに間隔を空けるように並行移動させることが好ましく、更に図8に示すようにお互いの開口部を遮るように配置されることがより好ましい。このような構造とすることにより、帯電器内に蓄積されている放電生成物は帯電器直下の感光体上に付着することなく、また付着したとしても各々のグリッドに保持されているゼオライトにより吸着される。一枚の帯電グリッドのみでは吸着できる表面積が小さく、効果が薄いが、複数のグリッドを間隔を空けて配置することで表面積を大きくし、吸着能力を上げることが可能となる。また、各々のグリッドの開口部を塞ぐように配置することによるシャッター効果で放電生成物の感光体への移動をより抑制することができる。更に感光体近傍に吸着物質を配置することでも感光体の変質をより防ぐことができる。
グリッドの枚数はグリッド網目の幅と開口部の関係から最適な数が求められ、開口部の幅をd、グリッド網目の幅をwとすると、枚数nはn>d/wとなるような枚数が好ましい。また、作像休止時の各グリッドの間隔としては吸着効率の高い0.1〜0.5mmとすることが望ましい。
上記、画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンタ内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形態でそれら装置内に組み込まれ、着脱自在としたものであってもよい。
画像形成装置用プロセスカートリッジとは、帯電グリッドの駆動手段を有するコロナ帯電器、像担持体を内蔵し、他に現像装置、転写手段、像担持体のクリーニング手段、除電手段の少なくとも一つを具備し、画像形成装置本体に着脱可能とした装置(部品)である。
[コロナ帯電器の帯電グリッド]
<帯電グリッド基材>
コロナ帯電器の制御電極である帯電グリッドの基材としては従来使用されているものを用いることができる。帯電グリッドの材質としては、電極として機能するため導電体である金属が用いられる。電極としての機能としては金属であるアルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属のほとんどが使用できるが、帯電器はコロナ放電により発生するオゾンやNOx等に曝露されるため、耐蝕性の高い金属が好ましく、クロムやニッケルを含んだステンレス等が用いられている。形状としてはコロナ放電で発生した電荷を感光体上へ移動させ、かつ制御電極としての機能を有する必要性から金属薄板にパンチング、エッチング等により開口部を設けたもの、または金属ワイヤを並べたものが通常用いられる。
<帯電グリッド塗工膜について>
[ゼオライトについて]
(ゼオライト)
本発明では放電生成物除去にゼオライト粉体を利用している。ゼオライトは水晶のような結晶で、主にアルミニウムとケイ素から構成されている。結晶は非常に小さく、目視では形や大きさを見ることはできない。拡大して見ると、細孔と呼ばれる孔が多く存在することが確認できる。この独自の構造を持つゼオライトは、今まで自然界に40種類以上発見されている。
吸着・分解機能に代表されるゼオライトの特徴をさらに活かすため、工業的に作られたものを合成ゼオライトと呼ぶ。合成ゼオライトは、能力が高く天然ゼオライトにはない種類のものが多数存在するが、コストが高いことが欠点である。
第3のゼオライトとして登場したのが人工ゼオライトである。石炭灰などの廃棄物と考えられていた物質を処理することで、地球と人類に有益なゼオライトに変える。しかも低コストであるため、現在、大きな注目を集めている材料である。
・吸着機能
ゼオライトは様々なものを吸着する働きがあり、そのメカニズムは脱臭剤や乾燥剤と類似している。この機能を活かすことで、有害物質の吸着や悪臭の除去が可能である。
・陽イオン交換機能
人工ゼオライトは天然ゼオライトの約2〜3倍という高い陽イオン交換機能を持っており、この機能を活かすことで、酸性を中和する土壌改良や汚水・排水中のアンモニウムイオンの除去などが可能である。
・触媒機能
ゼオライトには触媒としての機能があり、この機能を利用して、窒素酸化物(NOx)の分解等が研究されている。
本発明に用いられるゼオライトの種類は問わないが、粒子の大きさとしては、粉体の塗布性と除去性が優れており、更に吸着されたゼオライト粉体の除去性能が高いことから、10μm以下の粒子径のゼオライト粉体が特に望ましい。
またゼオライトは結晶形と陽イオンの種類により細孔の大きさが変化するため吸着できる分子が異なる。そのため目的物質により結晶形と陽イオン種を選択すると効果的な除去が可能である。結晶形にはA型・X型・Y型・L型・モルデナイト型・フェリエライト型・ZSM−5型・ベータ型などがあり、陽イオン種にはカリウム・ナトリウム・カルシウム・アンモニウム・水素などがある。また、ゼオライトを構成するアルミニウムとケイ素の比率により吸着能や触媒能は変化し、最適な比率とすることで目的物質の除去が効率的に行うことができる。これらの各種ゼオライトのなかで、Y型は特に優れた吸着能力を示すことから、特に望ましい。
(バインダ樹脂)
ゼオライトを帯電グリッドに保持する目的でバインダ樹脂を用いる。バインダ樹脂は天然樹脂、合成樹脂を問わず使用でき、合成樹脂の例では、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。塗工膜は放電に対する耐久性とバインダ樹脂での密着性が求められるが、ゼオライト表面を覆うことによる放電生成物除去効果の阻害が起こらない範囲のバインダ樹脂比が望ましい。そのため、熱による重合反応で網目構造を形成する熱硬化性樹脂が少ないバインダ樹脂比で密着性が良いため好ましい。また、場合により2種類のバインダ樹脂を用いることもできる。
バインダ樹脂がゼオライトを覆ってしまうことによる放電生成物除去機能の低下が起きないとされるバインダ比は通常10wt%程度とされていたが、評価によりバインダ樹脂比が30wt%付近でも放電生成物除去機能は低下しておらず、密着性との両立が可能であることが確認されている。
(導電剤)
ワイヤ又は金属板の加工品からなる帯電グリッド基材は本来導電性を有するが、ゼオライトとバインダ樹脂に覆われるため電気抵抗が大きくなり、表面電位制御の役割を果たさない。そのため導電性を付与させる目的で、導電剤をバインダ樹脂中に分散させている。
ここで導電剤にはグラファイト、ニッケル、銅、銀等の金属微粒子の類やアンチモンドープ酸化スズ(ATO)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化スズ、アンチモン酸亜鉛等の金属酸化物の類や活性炭といった導電性の粒子を用いることができる。帯電グリッドは使用中常に放電下に置かれるため、用いる材料は放電に対する耐久性が求められ、グラファイトやニッケル等の金属、および酸化スズ、アンチモン酸亜鉛のような非ドーピング型金属酸化物が経時使用および環境変動に対して安定しており好ましい。また、導電剤は含有率が少ないほど、他の機能である膜の密着性や放電生成物除去機能を阻害しないため、粒子自体の導電性は高く、粒径は小さいほうが好ましい。本発明では粒径0.01mm〜15mmの範囲の導電性微粒子を使用した。また導電性を示すバインダ樹脂も導電剤として用いることができる。場合により2種類の導電剤を用いることもできる。
<帯電グリッドへの塗工法>
塗工液はまずバインダ樹脂を溶媒に対して比率5〜10wt%程度となるように作成し、攪拌している中にゼオライト粒子および導電剤を加えることにより作成することができる。固形分中のゼオライト/導電剤/バインダ樹脂の質量比は5/3/2とするのが放電生成物除去効果と帯電の安定性のバランスが取れており望ましい。スプレー塗工の際には塗工液固形分濃度は30wt%以下とすることが好ましい。分散媒の種類はバインダが溶解することと導電剤が凝集しないことが主な要件であり、要件を満たす分散媒は2−ブタノンであった。
作成した液を帯電グリッドへ塗工する方法としては、ディッピング方式、ローラ塗工、電気泳動電着法等があるが、最も塗工ムラの少ないスプレー方式が好ましい。例えば、帯電グリッドを長軸方向両端からテンションを張り直径30mmの円筒状の基盤の長手方向に設置し、円筒を周方向に170rpmの速度で回転させているところを水平方向にスプレーを10mm/sec.の速度で走査させることにより塗工を行うことができる。両面を塗工するために3mm程度基盤から浮かせて帯電グリッドを設置する。スプレー塗工後乾燥機によって130℃で30分加熱し、乾燥することで膜を固定する。
塗工は表裏を片面ずつ行ない、片面の塗工が済み10分放置させた後反対面を塗工する。放電生成物除去機能の膜厚依存性は少ないが、膜厚が厚いと帯電が安定しないため10〜30μmとするのが好ましい。
また、帯電グリッドの基材がワイヤである場合には、ワイヤの周囲に均一な塗膜を形成する。
前記では導電剤を含む塗膜形成材料を用いて塗膜を形成したが、バインダ樹脂とゼオライトからなる塗膜形成材料を用いて塗膜を形成した後に導電剤を後から塗布するか打ち込むことによって塗膜を形成しても良い。
[感光体の構成]
次に、電子写真感光体の部分について図面に基づいて説明する。
図9は、本発明に用いる電子写真感光体を表わす断面図である。図9(a)は、導電性支持体(31)上に、中間層(33)、電荷発生機能を有する電荷発生層(35)と、電荷輸送物機能を有する電荷輸送層(37)が積層された積層構造の感光体であり、図9(b)は、さらに電荷輸送層上に保護層(39)が積層された感光体である。
<導電性支持体について>
導電性支持体(31)としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらを押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理を施した管などを使用することができる。また、特公昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体(31)として用いることができる。
この他、上記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものについても、導電性支持体(31)として用いることができる。
この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、また、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などが挙げられる。また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂が挙げられる。このような導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
さらに、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、導電性支持体(31)として良好に用いることができる。
<中間層について>
導電性支持体(31)上から感光層への電荷注入の防止や、干渉縞防止の目的のために設けることができる中間層(33)の構成は、結着樹脂や結着樹脂中に粒子を分散したものが用いられ、結着樹脂としてはポリビニルアルコール、ニトロセルロース、ポリアミド、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂、ポリウレタン、アルキッド−メラミン樹脂などの熱硬化性樹脂などを利用することができる。中間層に分散させる粒子としては酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、シリカ及びそれらの表面処理品が用いられ、酸化チタンが分散性、電気的特性においてより好ましく、ルチル型とアナターゼ型いずれのものも用いることが可能である。
中間層を形成するには、例えば上述の結着樹脂を有機溶剤中に溶解し、その溶液中に上述の粒子をボールミル、サンドミル等の手段で分散し、支持体上に塗布、乾燥すれば良い。中間層の厚みは10μm以下、好ましくは0.1〜6μmである。
<感光層について>
(電荷発生層)
電荷発生層(35)は、電荷発生機能を有する電荷発生物質を主成分とする層で、必要に応じてバインダ樹脂を併用することもできる。電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。
無機系材料には、結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物や、アモルファス・シリコン等が挙げられる。アモルファス・シリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子等をドープしたものが良好に用いられる。
一方、有機系材料としては、公知の材料を用いることができる。例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
電荷発生層(35)に必要に応じて用いられるバインダ樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドなどが挙げられる。これらのバインダ樹脂は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。また、電荷発生層のバインダ樹脂として上述のバインダ樹脂の他に、電荷輸送機能を有する高分子電荷輸送物質、例えば、アリールアミン骨格やベンジジン骨格やヒドラゾン骨格やカルバゾール骨格やスチルベン骨格やピラゾリン骨格等を有するポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリシロキサン、アクリル樹脂等の高分子材料やポリシラン骨格を有する高分子材料等を用いることができる。
また、電荷発生層(35)には低分子電荷輸送物質を含有させることができる。電荷発生層(35)に併用できる低分子電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。
電子輸送物質としては、たとえばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ジフェノキノン誘導体などの電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
正孔輸送物質としては、以下に表わされる電子供与性物質が挙げられ、良好に用いられる。正孔輸送物質としては、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等、その他公知の材料が挙げられる。これらの正孔輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
電荷発生層(35)を形成する方法には、真空薄膜作製法や溶液分散系からのキャスティング法等が挙げられる。
前者の方法には、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法等が用いられ、上述した無機系材料、有機系材料が良好に形成できる。
また、後述のキャスティング法によって電荷発生層を設けるには、上述した無機系もしくは有機系電荷発生物質を必要ならばバインダ樹脂と共にテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アニソール、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより、形成できる。また、必要に応じて、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のレベリング剤を添加することができる。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行うことができる。
以上のようにして設けられる電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.05〜2μmである。
(電荷輸送層)
電荷輸送層(37)は電荷輸送機能を有する層で、電荷輸送機能を有する電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを電荷発生層(35)上に塗布、乾燥することにより形成させる。
電荷輸送物質としては、前記電荷発生層(35)で記載した電子輸送物質、正孔輸送物質及び高分子電荷輸送物質を用いることができる。
結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。
電荷輸送物質の量は結着樹脂100質量部に対し、20〜300質量部、好ましくは40〜150質量部が適当である。但し、高分子電荷輸送物質を用いる場合は、単独でも結着樹脂との併用も可能である。
電荷輸送層の塗工に用いられる溶媒としては前記電荷発生層と同様なものが使用できるが、電荷輸送物質及び結着樹脂を良好に溶解するものが適している。これらの溶剤は単独で使用しても2種以上混合して使用しても良い。また、電荷輸送層(37)の形成には電荷発生層(35)と同様な塗工法が可能である。
また、必要により可塑剤、レベリング剤を添加することもできる。
電荷輸送層に併用できる可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、結着樹脂100質量部に対して0〜30質量部程度が適当である。
電荷輸送層に併用できるレベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量は、結着樹脂100質量部に対して0〜1質量部程度が適当である。
電荷輸送層の膜厚は、5〜50μm程度が適当であり、好ましくは10〜30μm程度が適当である。
(保護層)
本発明で使用できる架橋表面保護層としては、少なくとも重合性化合物を重合することにより形成されることが望ましい。機械的耐久性の観点から重合性官能基の数は分子内に3つ以上有している重合性化合物が好ましく用いられる。つまり3官能以上の重合性化合物を重合することで3次元の網目構造が発達し、架橋密度が非常に高い高硬度且つ高弾性な表面層が得られ、かつ均一で平滑性も高く、高い耐摩耗性、耐傷性が達成される。この様に感光体表面の架橋密度すなわち単位体積あたりの架橋結合数を増加させることが重要であるが、重合反応において瞬時に多数の結合を形成させるため体積収縮による内部応力が発生する。この内部応力は架橋型保護層の膜厚が厚くなるほど増加するため架橋表面保護層全層を硬化させると、クラックや膜剥がれが発生しやすくなる。この現象は初期的に現れなくても、電子写真プロセス上で繰り返し使用され帯電、現像、転写、クリーニングのハザード及び熱変動の影響を受けることにより、経時で発生しやすくなることもある。
この問題を解決する方法としては、(1)架橋層及び架橋構造に高分子成分を導入する、(2)1官能及び2官能のラジカル重合性モノマーを多量に用いる、(3)柔軟性基を有する多官能モノマーを用いる、などの硬化樹脂層を柔らかくする方向性が挙げられるが、いずれも架橋層の架橋密度が希薄となり、飛躍的な耐摩耗性が達成されない。これに対し、本発明の感光体は、電荷輸送層上に3次元の網目構造が発達した架橋密度の高い架橋表面保護層を好ましくは1μm以上、15μm以下の膜厚で設けることで、上記のクラックや膜剥がれが発生せず、且つ非常に高い耐摩耗性が達成される。かかる架橋表面保護層の膜厚を2μm以上、10μm以下の膜厚にすることにより、さらに上記問題に対する余裕度が向上することに加え、更なる耐摩耗性向上に繋がる高架橋密度化の材料選択が可能となる。
本発明の感光体がクラックや膜剥がれを抑制できる理由としては、架橋表面保護層を薄膜化できるため内部応力が大きくならないこと、下層に感光層もしくは電荷輸送層を有するため架橋表面保護層の内部応力を緩和できることなどによる。このため架橋表面保護層に高分子材料を多量に含有させる必要がなく、この時生ずる、高分子材料と重合性組成物の反応より生じた不相溶が原因となる傷やトナーフィルミングも起こりにくい。さらに、一般的には架橋表面保護層全層にわたる厚膜をエネルギー照射により重合する場合、酸化防止剤のエネルギー吸収のために膜内部へのエネルギー透過が制限され、重合反応が十分に進行しないことがあったり、また酸化防止剤が重合反応で生じるラジカルを捕捉したり、重合開始反応を抑制するといった重合を抑制する現象が起こることがあるが、本発明の架橋表面保護層においては重合終了後に酸化防止剤を注入することにより、エネルギー照射による重合阻害や酸化防止剤の劣化が全くなく、内部まで均一に硬化反応が進行し、表面と同様に内部でも高い耐摩耗性が維持され、安定した電気特性を長期間の間維持することが可能となる。また、本発明の架橋表面保護層の形成においては、重合性化合物に加え、電荷輸送性化合物(重合性官能基の有無は問わないが、機械的耐久性の観点からは重合性官能基を有するものの方が好ましく使用できる)を含有することも可能である。重合性官能基を有する電荷輸送性化合物としては硬化樹脂構造の歪みや、架橋表面保護層の内部応力の観点から官能基数が少ない方が好ましく、1官能の電荷輸送性化合物が良好に用いることが出来る。
次に、本発明の架橋表面保護層塗布液の構成材料について説明する。
本発明に用いられる重合性化合物のうち、電荷輸送性構造を有しない重合性化合物としては、例えばトリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどの正孔輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環などの電子輸送構造を有しておらず、且つ重合性官能基を有するモノマーを指す。この重合性官能基とは、炭素−炭素2重結合を有し、重合可能な基であれば何れでもよい。これら重合性官能基としては、例えば、下記に示す1−置換エチレン官能基、1,1−置換エチレン官能基等が挙げられる。
(1)1−置換エチレン官能基としては、例えば以下の式で表される官能基が挙げられる。
CH2=CH−X1− ・・・・式10
(ただし、式10中、X1は、置換基を有していてもよいフェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基、−CO−基、−COO−基、−CON(R10)−基(R10は、水素、メチル基、エチル基等のアルキル基、ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を表す。)、または−S−基を表す。)
これらの官能基を具体的に例示すると、ビニル基、スチリル基、2−メチル−1,3−ブタジエニル基、ビニルカルボニル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミド基、ビニルチオエーテル基等が挙げられる。
(2)1,1−置換エチレン官能基としては、例えば以下の式で表される官能基が挙げられる。
CH2=C(Y)−X2− ・・・・式11
(ただし、式11中、Yは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基あるいはエトキシ基等のアルコキシ基、−COOR11基(R11は、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基等のアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル、フェネチル基等のアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基、または−CONR1213(R12およびR13は、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基等のアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル基、ナフチルメチル基、あるいはフェネチル基等のアラルキル基、または置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基を表し、互いに同一または異なっていてもよい。)、また、X2は上記式10のX1と同一の置換基及び単結合、アルキレン基を表す。ただし、Y、X2の少なくとも何れか一方がオキシカルボニル基、シアノ基、アルケニレン基、及び芳香族環である。)
これらの官能基を具体的に例示すると、α−塩化アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、α−シアノエチレン基、α−シアノアクリロイルオキシ基、α−シアノフェニレン基、メタクリロイルアミノ基等が挙げられる。
なお、これらX、X、Yについての置換基にさらに置換される置換基としては、例えばハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
これらの重合性官能基の中では、特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用であり、アクリロイルオキシ基を有する化合物は、例えば水酸基がその分子中にある化合物とアクリル酸(塩)、アクリル酸ハライド、アクリル酸エステルを用い、エステル反応あるいはエステル交換反応させることにより得ることができる。また、メタクリロイルオキシ基を有する化合物も同様にして得ることができる。また、重合性官能基を2個以上有する単量体中の重合性官能基は、同一でも異なっても良い。
電荷輸送性構造を有しない重合性化合物としては、以下のものが例示されるが、これらの化合物に限定されるものではない。
例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、セチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、スチレンモノマー、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ビスフェノールA−EO変性ジアクリレート、ビスフェノールF−EO変性ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンアルキレン変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシ変性(以後EO変性)トリアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシ変性(以後PO変性)トリアクリレート、トリメチロールプロパンカプロラクトン変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンアルキレン変性トリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、グリセロールエピクロロヒドリン変性(以後ECH変性)トリアクリレート、グリセロールEO変性トリアクリレート、グリセロールPO変性トリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性ヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、リン酸EO変性トリアクリレート、2,2,5,5,−テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレートなどが挙げられ、これらは単独又は2種類以上を併用しても差し支えない。
また、本発明に用いられる重合性化合物のうち、電荷輸送性構造を有しない重合性化合物としては、架橋表面保護層中に緻密な架橋結合を形成するために、該重合性化合物中の官能基数に対する分子量の割合(分子量/官能基数)は250以下が望ましい。また、この割合が250より大きい場合、架橋表面保護層は柔らかく耐摩耗性が幾分低下する傾向が出てくるため、上記例示した化合物等中、EO、PO、カプロラクトン等の変性基を有する化合物においては、極端に長い変性基を有するものを単独で使用することは好ましくはない。また、架橋表面保護層に用いられる電荷輸送性構造を有しない重合性化合物の成分割合は、架橋表面保護層全量に対し20質量%以上、好ましくは30質量%以上である。該重合性化合物成分が20質量%未満では架橋表面保護層の3次元架橋結合密度が少なく、従来の熱可塑性バインダー樹脂を用いた場合に比べ飛躍的な耐摩耗性向上が望めない傾向がある。また、80質量%を超えると電荷輸送性化合物の含有量が低下し、電気特性の劣化が生じる傾向がある。使用されるプロセスによって要求される電気特性や耐摩耗性が異なり、それに伴い本感光体の架橋表面保護層の膜厚も異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると30質量%以上が最も好ましい。
本発明の架橋表面保護層に用いられる電荷輸送性化合物には重合性官能基を有しないもの及び有するものいずれも良好に用いることができる。また電気特性的には光エネルギー照射時には電荷輸送性化合物は含まないことが好まれるが、さらなら機械的耐久性の向上等の高機能化を目的としては、重合性官能基を有する電荷輸送性化合物も同時に光硬化してもよい。重合性官能基を有しない電荷輸送性化合物としては電荷輸送層の部分で記載した電荷輸送材料が良好に用いられる。また重合性官能基を有するものとしては従来から知られているもの(特開2005−107401、特開2006−011014、特開2006−154796)が良好に用いられるが、例えばトリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどの正孔輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環などの電子輸送構造を有しており、且つ重合性官能基を有する化合物を指す。この重合性官能基としては、先の電荷輸送性構造を有しない重合性化合物で示したものが挙げられ、特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用である。また、電荷輸送性構造としてはトリアリールアミン構造が高い効果を有し、中でも下記一般式(1)又は(2)の構造で示される化合物を用いた場合、感度、残留電位等の電気的特性が良好に持続される。

{式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR7(R7は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基)、ハロゲン化カルボニル基若しくはCONR89(R8及びR9は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい)を表わし、Ar1、Ar2は置換もしくは無置換のアリーレン基を表わし、同一であっても異なってもよい。Ar3、Ar4は置換もしくは無置換のアリール基を表わし、同一であっても異なってもよい。Xは単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表わす。Zは置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル2価基、アルキレンオキシカルボニル2価基を表わす。m、nは0〜3の整数を表わす。}
以下に、一般式(1)、(2)の具体例を示す。
前記一般式(1)、(2)において、R1の置換基中、アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基が、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等がそれぞれ挙げられ、これらは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等により置換されていても良い。
1の置換基のうち、特に好ましいものは水素原子、メチル基である。
Ar3、Ar4は置換もしくは無置換のアリール基を表わし、本発明においては該アリール基としては縮合多環式炭化水素基、非縮合環式炭化水素基及び複素環基が含まれる。
該縮合多環式炭化水素基としては、好ましくは環を形成する炭素数が18個以下のもの、例えば、ペンタニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、as−インダセニル基、s−インダセニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレル基、ピレニル基、クリセニル基、及びナフタセニル基等が挙げられる。
該非縮合環式炭化水素基としては、ベンゼン、ジフェニルエーテル、ポリエチレンジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル及びジフェニルスルホン等の単環式炭化水素化合物の1価基、あるいはビフェニル、ポリフェニル、ジフェニルアルカン、ジフェニルアルケン、ジフェニルアルキン、トリフェニルメタン、ジスチリルベンゼン、1,1−ジフェニルシクロアルカン、ポリフェニルアルカン、及びポリフェニルアルケン等の非縮合多環式炭化水素化合物の1価基、あるいは9,9−ジフェニルフルオレン等の環集合炭化水素化合物の1価基が挙げられる。
複素環基としては、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、オキサジアゾール、及びチアジアゾール等の1価基が挙げられる。
また、前記Ar3、Ar4で表わされるアリール基は例えば以下に示すような置換基を有してもよい。
(1)ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基等。
(2)アルキル基、好ましくは、C1〜C12とりわけC1〜C8、さらに好ましくはC1〜C4の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、これらのアルキル基にはさらにフッ素原子、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基又はハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基もしくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を有していてもよい。具体的にはメチル基、エチル基、n−ブチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−プロピル基、トリフルオロメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−フェニルベンジル基等が挙げられる。
(3)アルコキシ基(−OR2)であり、R2は(2)で定義したアルキル基を表わす。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、ベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
(4)アリールオキシ基であり、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基が挙げられる。これは、C1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基またはハロゲン原子を置換基として含有してもよい。具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基等が挙げられる。
(5)アルキルメルカプト基またはアリールメルカプト基であり、具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基等が挙げられる。
(6)
(式中、R3及びR4は各々独立に水素原子、前記(2)で定義したアルキル基、またはアリール基を表わす。アリール基としては、例えばフェニル基、ビフェニル基又はナフチル基が挙げられ、これらはC1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基またはハロゲン原子を置換基として含有してもよい。R3及びR4は共同で環を形成してもよい)
具体的には、アミノ基、ジエチルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジ(トリール)アミノ基、ジベンジルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ピロリジノ基等が挙げられる。
(7)メチレンジオキシ基、又はメチレンジチオ基等のアルキレンジオキシ基又はアルキレンジチオ基等が挙げられる。
(8)置換又は無置換のスチリル基、置換又は無置換のβ−フェニルスチリル基、ジフェニルアミノフェニル基、ジトリルアミノフェニル基等。
前記Ar1、Ar2で表わされるアリーレン基としては、前記Ar3、Ar4で表されるアリール基から誘導される2価基である。
前記Xは単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表わす。
置換もしくは無置換のアルキレン基としては、C1〜C12、好ましくはC1〜C8、さらに好ましくはC1〜C4の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、これらのアルキレン基にはさらにフッ素原子、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基又はハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基もしくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を有していてもよい。具体的にはメチレン基、エチレン基、n−ブチレン基、i−プロピレン基、t−ブチレン基、s−ブチレン基、n−プロピレン基、トリフルオロメチレン基、2−ヒドロキシエチレン基、2−エトキシエチレン基、2−シアノエチレン基、2−メトキシエチレン基、ベンジリデン基、フェニルエチレン基、4−クロロフェニルエチレン基、4−メチルフェニルエチレン基、4−ビフェニルエチレン基等が挙げられる。
置換もしくは無置換のシクロアルキレン基としては、C5〜C7の環状アルキレン基であり、これらの環状アルキレン基にはフッ素原子、水酸基、C1〜C4のアルキル基、C1〜C4のアルコキシ基を有していても良い。具体的にはシクロヘキシリデン基、シクロへキシレン基、3,3−ジメチルシクロヘキシリデン基等が挙げられる。
置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基としては、エチレンオキシ、プロピレンオキシ、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコールを表わし、アルキレンエーテル基アルキレン基はヒドロキシル基、メチル基、エチル基等の置換基を有してもよい。
ビニレン基は、
で表わされ、R5は水素、アルキル基(前記(2)で定義されるアルキル基と同じ)、アリール基(前記Ar3、Ar4で表わされるアリール基と同じ)、aは1または2、bは1〜3を表わす。
前記Zは置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル2価基、アルキレンオキシカルボニル2価基を表わす。
置換もしくは無置換のアルキレン基としては、前記Xのアルキレン基と同様なものが挙げられる。
置換もしくは無置換のアルキレンエーテル2価基としては、前記Xのアルキレンエーテル2価基が挙げられる。
アルキレンオキシカルボニル2価基としては、カプロラクトン2価変性基が挙げられる。
また、本発明の電荷輸送性構造を有する重合性化合物として更に好ましくは、下記一般式(3)の構造の化合物が挙げられる。
(式中、o、p、qはそれぞれ0又は1の整数、Raは水素原子、メチル基を表わし、Rb、Rcは水素原子以外の置換基で炭素数1〜6のアルキル基を表わし、複数の場合は異なっても良い。s、tは0〜3の整数を表わす。Zaは単結合、メチレン基、エチレン基、
を表わす。)
上記一般式で表わされる化合物としては、Rb、Rcの置換基として、特にメチル基、エチル基である化合物が好ましい。
本発明で用いる上記一般式(1)及び(2)特に(3)の重合性官能基を有する電荷輸送性化合物は、炭素−炭素間の二重結合が両側に開放されて重合するため、末端構造とはならず、連鎖重合体中に組み込まれ、電荷輸送性構造を有しない重合性化合物との重合で架橋形成された重合体中では、高分子の主鎖中に存在し、かつ主鎖−主鎖間の架橋鎖中に存在(この架橋鎖には1つの高分子と他の高分子間の分子間架橋鎖と1つの高分子内で折り畳まれた状態の主鎖のある部位と主鎖中でこれから離れた位置に重合したモノマー由来の他の部位とが架橋される分子内架橋鎖とがある)するが、主鎖中に存在する場合であってもまた架橋鎖中に存在する場合であっても、鎖部分から懸下するトリアリールアミン構造は、窒素原子から放射状方向に配置する少なくとも3つのアリール基を有し、バルキーであるが、鎖部分に直接結合しておらず鎖部分からカルボニル基等を介して懸下しているため立体的位置取りに融通性ある状態で固定されているので、これらトリアリールアミン構造は重合体中で相互に程よく隣接する空間配置が可能であるため、分子内の構造的歪みが少なく、また、感光体の表面層とされた場合に、電荷輸送経路の断絶を比較的免れた分子内構造をとりうるものと推測される。
また本発明においては下記一般式(4)で示した特定のアクリル酸エステル化合物も重合性官能基を有する電荷輸送性化合物として良好に用いることができる。
Ar5は置換又は無置換の芳香族炭化水素骨格からなる一価基または二価基を表す。芳香族炭化水素としては、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、ビフェニル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン等が挙げられる。
置換基としては、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、ベンジル基、ハロゲン原子が挙げられる。また、上記アルキル基、アルコキシ基は、さらにハロゲン原子、フェニル基を置換基として有していても良い。
Ar6は、少なくとも1個の3級アミノ基を有する芳香族炭化水素骨格からなる一価基または二価基もしくは少なくとも1個の3級アミノ基を有する複素環式化合物骨格からなる一価基または二価基を表すが、ここで、3級アミノ基を有する芳香族炭化水素骨格とは下記一般式(A)で表される。
(式中、R13、R14はアシル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表す。Ar7はアリール基を表す。wは1〜3の整数を表す。)
13、R14のアシル基としてはアセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
13、R14の置換もしくは無置換のアルキル基はAr5の置換基で述べたアルキル基と同様である。
13、R14の置換もしくは無置換のアリール基は、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ピレニル基、フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基に加えて下記一般式(B)で表される基を挙げることができる。
[式中、Bは −O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−及び以下の2価基から選ばれる。
(ここで、R21は、水素原子、Ar5の置換基で定義された置換もしくは無置換のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、R13で定義された置換もしくは無置換のアリール基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基を表し、R22は、水素原子、Ar5の置換基で定義された置換もしくは無置換のアルキル基、R13で定義された置換もしくは無置換のアリール基を表し、iは1〜12の整数、jは1〜3の整数を表す。)]
21のアルコキシ基の具体例としてはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−シアノエトキシ基、ベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
21のハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
21のアミノ基としては、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジベンジルアミノ基、4−メチルベンジル基等が挙げられる。
Ar7のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ピレニル基、フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基を挙げることができる。
Ar7、R13、R14は、Ar5で定義されたアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子を置換基として有していても良い。
また、3級アミノ基を有する複素環式化合物骨格としては、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、ジオキサゾール、インドール、イソインドール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイソキサジン、カルバゾール、フェノキサジン等のアミン構造を有する複素環化合物が挙げられる。これらは、Ar5で定義されたアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子を置換基として有していても良い。
1、B2はアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基又はビニル基を有するアルキル基、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基又はビニル基を有するアルコキシ基を表す。アルキル基、アルコキシ基は、Ar5で述べたものが同様に適用される。これら、B1とB2は、両方存在しても良いし、どちらか一方のみが存在してもよい。
一般式(4)のアクリル酸エステル化合物においてより好ましい構造として前記一般式(5)の化合物を挙げることができる。
式中、R8、R9は、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子を表し、Ar7、Ar8は、置換もしくは無置換のアリール基またはアリーレン基、置換又は無置換のベンジル基を表す。アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子は前記Ar5で述べたものが同様に適用される。
アリール基は、R13、R14で定義されたアリール基と同様である。アリーレン基は、そのアリール基から誘導される二価基である。
1〜B4は、一般式(4)におけるB1、B2と同様である。uは0〜5の整数、vは0〜4の整数を表す。
特定のアクリル酸エステル化合物は次のような特徴を有する。スチルベン型共役構造を有した三級アミン化合物であり、発達した共役系を有している。こういった共役系の発達した電荷輸送性化合物を用いることで、架橋層界面部分での電荷注入性が非常に良好となり、さらに架橋結合間に固定化された場合でも分子間相互作用が阻害されにくく、電荷移動度に関しても良好な特性を有する。また、重合性の高いアクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基を分子中に有しており、重合時に速やかにゲル化するとともに過度な架橋歪を生じない。分子中のスチルベン構造部の二重結合が部分的に重合に参加し、しかもアクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基よりも重合性が低いために架橋反応に時間差が生じることで歪みを最大に大きくする事が無く、しかも分子中の二重結合を使用する為に分子量当りの架橋反応数を上げることが出来る為に、架橋密度を高めることができ、耐摩耗性のさらなる向上が実現可能となった。また、この二重結合は、架橋条件により重合度を調整することができ、容易に最適架橋膜を作製できる。この様な重合への架橋参加は、アクリル酸エステル化合物の特異的な特徴であり、前述したようなα−フェニルスチルベン型の構造では起こらない。
以上のことから、一般式(4)特に一般式(5)に示した重合性官能基を有する電荷輸送性化合物を用いることで良好な電気特性を維持しつつ、且つ、クラック等の発生を起さずに架橋密度の極めて高い膜を形成することができ、それにより感光体の諸特性を満足し、且つシリカ微粒子等が感光体に刺さることを防止し、白斑点等の画像欠陥を減らすことができる。
以下に本発明において用いられる電荷輸送性構造を有する重合性化合物の具体例を示すが、これらの構造の化合物に限定されるものではない。
また、本発明に用いられる重合性官能基を有する電荷輸送性化合物は、架橋表面保護層の電荷輸送性能を付与するために重要で、この成分は架橋表面保護層全量に対し80質量%以下、好ましくは70質量%以下になるように塗工液成分の含有量を調整する。この成分が80質量%を超えると電荷輸送構造を有しない重合性化合物の含有量が低下し、架橋結合密度の低下を招き高い耐摩耗性が発揮されない。使用されるプロセスによって要求される電気特性や耐摩耗性が異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると70質量%以下の範囲が最も好ましい。
本発明の感光体を構成する架橋表面保護層は、塗工時の粘度調整、架橋表面保護層の応力緩和、低表面エネルギー化や摩擦係数低減などの機能付与の目的で機能性モノマー及び重合性オリゴマーを併用することができる。これらの機能性モノマー及び重合性オリゴマーとしては公知のものが利用できる。機能性モノマーとしては、例えば、オクタフルオロペンチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、2−パーフルオロイソノニルエチルアクリレートなどのフッ素原子を置換したもの、特公平5−60503号公報、特公平6−45770号公報記載のシロキサン繰り返し単位:20〜70のアクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、メタクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、アクリロイルポリジメチルシロキサンプロピル、アクリロイルポリジメチルシロキサンブチル、ジアクリロイルポリジメチルシロキサンジエチルなどのポリシロキサン基を有するビニルモノマー、アクリレート及びメタクリレートが挙げられる。重合性オリゴマーとしては、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系オリゴマーが挙げられる。
但し、官能基数の低い1官能及び2官能の機能性重合性モノマーや重合性オリゴマーを多量に含有させると架橋表面保護層の3次元架橋結合密度が実質的に低下し、耐摩耗性の低下を招く。このためこれらの含有量は架橋表面保護層全量に対して50質量%以下、好ましくは30質量%以下である。
また、本発明の架橋表面保護層は必要に応じて重合時の反応効率向上を目的として架橋表面保護層塗布液中に重合開始剤を含有させても良い。重合開始剤としては従来から知られている熱重合開始剤および光重合開始剤が良好に使用できる。
熱重合開始剤としては、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(パーオキシベンゾイル)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルベルオキサイド、t−ブチルヒドロベルオキサイド、クメンヒドロベルオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシ)プロパンなどの過酸化物系開始剤、アゾビスイソブチルニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸などのアゾ系開始剤が挙げられる。
光重合開始剤としては、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、などのアセトフェノン系またはケタール系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、などのベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼン、などのベンゾフェノン系光重合開始剤、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、などのチオキサントン系光重合開始剤、その他の光重合開始剤としては、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物、が挙げられる。また、光重合促進効果を有するものを単独または上記光重合開始剤と併用して用いることもできる。例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、などが挙げられる。
これらの重合開始剤は1種又は2種以上を混合して用いてもよい。重合開始剤の含有量は、重合性を有する総含有物100質量部に対し、0.5〜40質量部、好ましくは1〜20質量部である。
更に、本発明の架橋表面保護層形成用塗工液は必要に応じて各種可塑剤(応力緩和や接着性向上の目的)、レベリング剤、重合性を有しない低分子電荷輸送物質などの添加剤が含有できる。これらの添加剤は公知のものが使用可能であり、可塑剤としてはジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂に使用されているものが利用可能で、その使用量は塗工液の総固形分に対し20質量%以下、好ましくは10質量%以下に抑えられる。また、レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが利用でき、その使用量は塗工液の総固形分に対し3質量%以下が適当である。
本発明の架橋表面保護層の塗工液は重合性化合物が液体である場合、これに他の成分を溶解して塗布することも可能であるが、必要に応じて溶媒により希釈して塗布される。このとき用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテルなどのエーテル系、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテートなどのセロソルブ系などが挙げられる。これらの溶媒は単独または2種以上を混合して用いてもよい。溶媒による希釈率は組成物の溶解性、塗工法、目的とする膜厚により変わり、任意である。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行うことができる。
本発明においては、架橋表面保護層の塗工液を塗布後、外部からエネルギーを与え重合させ、架橋表面保護層を形成するものであるが、このとき用いられる外部エネルギーとしては熱、光、放射線がある。熱のエネルギーを加える方法としては、空気、窒素などの気体、蒸気、あるいは各種熱媒体、赤外線、電磁波を用い塗工表面側あるいは支持体側から加熱することによって行なわれる。加熱温度は80℃以上、170℃以下が好ましく、80℃未満では反応速度が遅く、完全に反応が終了しない。170℃より高温では反応が不均一に進行し架橋表面保護層中に大きな歪みが発生する。重合反応を均一に進めるために、50℃未満の比較的低温で加熱後、更に100℃以上に加温し反応を完結させる方法も有効である。光エネルギーとしては主に紫外光に発光波長をもつ高圧水銀灯やメタルハライドランプなどのUV照射光源が利用できるが、重合性含有物や光重合開始剤の吸収波長に合わせ可視光光源の選択も可能である。照射光量は50mW/cm以上、好ましくは500mW/cm以上、より好ましくは1000mW/cm以上である。1000mW/cmより強い照射光を用いることで重合反応の進行速度が大幅に速くなり、より均一な架橋表面保護層を形成することが可能となる。放射線のエネルギーとしては電子線を用いるものが挙げられる。これらのエネルギーの中で、反応速度制御の容易さ、装置の簡便さから熱と光のエネルギーを用いたものが有用である。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、感光体作製例中において使用する「部」は、すべて質量部を表わす。
<感光体作製例>
φ100mmのアルミニウムシリンダー上に、下記組成の中間層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布、乾燥することにより、3.5μmの中間層、0.2μmの電荷発生層、22μmの電荷輸送層を形成した。
〔中間層用塗工液〕
アルキド樹脂 6部
(ベッコゾール1307−60−EL、大日本インキ化学工業製)
メラミン樹脂 4部
(スーパーベッカミン G−821−60、大日本インキ化学工業製)
酸化チタン 40部
(CR−EL、石原産業社製)
メチルエチルケトン 50部
〔電荷発生層用塗工液〕
Y型チタニルフタロシアニン 6部
シリコーン樹脂溶液 70部
(KR5240、15%キシレン−ブタノール溶液:信越化学社製)
2−ブタノン 200部
〔電荷輸送層用塗工液〕
電荷輸送物質(下記構造式A) 20部
ビスフェノールZ型ポリカーボネート 30部
(ユーピロンZ300:三菱ガス化学社製)
1,2−ジクロロエタン 200部
続いて、電荷輸送層上に下記組成の架橋表面保護層用塗工液をスプレー塗工し、20分自然乾燥した後、メタルハライドランプ:160W/cm、照射距離:120mm、照射強度:500mW/cm、照射時間:60秒の条件で光照射を行ない塗布膜を硬化させた。更に130℃で20分乾燥を加え5.2μmの架橋表面保護層を設け感光体を作製した。
〔架橋表面保護層用塗工液〕
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性化合物 10部
トリメチロールプロパントリアクリレート
(KAYARAD TMPTA、日本化薬製)
分子量:296、官能基数:3官能、分子量/官能基数=99
電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(下記構造式B) 10部
光重合開始剤 1部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
テトラヒドロフラン 100部
[実施例1]
<帯電グリッドの作製>
帯電グリッド用の基材としては、厚さ0.1mm、長さ285mm、幅40mmのSUS304製板を用い、開口部長さ250mm、幅36mm部分に0.1mmの格子を45度の角度で0.5mm間隔で配したものを用いた。
下記の帯電グリッド用塗工液を用い、上記基材を長軸方向両端からテンションを張り直径30mmの円筒状の基盤の長手方向に設置し、円筒を周方向に170rpmの速度で回転させているところを水平方向にスプレーを10mm/sec.の速度で走査させることにより塗工を行った。両面を塗工するために3mm程度基盤から浮かせて基材を設置した。スプレー塗工後乾燥機によって130℃で30分加熱し、乾燥することで膜を固定した。
塗工は表裏を片面ずつ行ない、片面の塗工が済み10分放置させた後反対面を塗工した。塗工膜厚は30μmとした。
〔帯電グリッド用塗工液〕
以下に示す材料を用いて塗工液を作成した。ゼオライト/導電剤/バインダ樹脂の質量比は5/3/2とし、液の固形分濃度は30wt%となるよう調整した。
ゼオライト :水素イオン含有β型ゼオライト(980HOA 東ソー製)
導電剤 :アンチモン酸亜鉛(セルナックス CX-Z210IP日産化学工業製)
バインダ樹脂:アルキド樹脂(ベッコゾール 1307-60-EL 大日本インキ化学工業製)
メラミン樹脂(スーパーベッカミン G-821-60 大日本インキ化学工
業製) (アルキド樹脂/メラミン樹脂=3/2 質量比)
分散媒 :2−ブタノン
10℃15%RH環境下に置いた、上記ゼオライトと導電剤とバインダ樹脂を含有する膜を有する帯電グリッドを1枚と、前記感光体を用いたプロセスカートリッジを有するimagio Neo 1050proを改造し、画像形成終了後に帯電グリッド保持部を移動させることで、帯電グリッドを感光体に近接させる機構を設けた。
帯電グリッドは保持部を感光体に対しての距離が可変となるようにし、作像時はワイヤ側にグリッドを持ち上げることで感光体から1mm離れて配置されている状態とし、作像休止時はテンションを緩めることで感光体との間隔を0.3mm程度空けるようにした。
この画像形成装置を用いて繰返し画像形成を行うことでコロナ帯電器を24時間放電させ、その後画像形成終了後に15時間放置した。その後、中間調(ハーフトーン)画像出力によりコロナ帯電器直下の濃度ムラの発生有無を確認した。濃度ムラ評価は初期と300,000枚通紙後に実施した。
◎・・・コロナ帯電器直下濃度ムラ発生せず
○・・・コロナ帯電器直下濃度ムラが僅かに発生するが、許容レベル
●・・・コロナ帯電器直下濃度ムラが発生するが、許容レベル
×・・・コロナ帯電器直下濃度ムラがくっきり発生し、許容できないレベル
[実施例2]
作像動作時は実施例1で作製した帯電グリッドを3枚密接に重ね合わせるように感光体から1mm離れて配置し、画像形成終了後に最も感光体に近い側のグリッドを実施例1と同様に感光体との間隔が0.3mm程度となるように感光体近傍に移動させ、残りの2枚を各々が1mmの間隔が空くように移動させる機構を設けた以外は実施例1と同様に評価を実施した。
グリッドの移動には実施例1と同様の機構を用い、休止時の各々のグリッドの位置は引張りテンションをあらかじめ調節しておくことで決めた。
[実施例3]
作像動作時は実施例1で作製した帯電グリッドを3枚密接に重ね合わせるように感光体から1mm離れて配置し、画像形成終了後に最も感光体に近い側のグリッドを実施例1と同様に感光体との間隔が0.3mm程度となるように感光体近傍に移動させ、残りの2枚を各々が1mmの間隔を空け、開口部が他のグリッドの電極で遮蔽されるように移動させる機構を設けた以外は実施例1と同様に評価を実施した。
グリッドの移動は実施例2と同様の機構を用い、遮蔽するための面方向の移動はあらかじめテンションをかける方向と力を調節しておくことで決めた。
[実施例4]
ゼオライトとしてベータ型ゼオライト(HSZ−940NHA 東ソー製)を用いた以外は実施例3と同様に評価を実施した。
[実施例5]
ゼオライトとしてZSM−5型ゼオライト(HSZ−840NHA 東ソー製)を用いた以外は実施例3と同様に評価を実施した。
[実施例6]
ゼオライトとしてモルデナイト型ゼオライト(HSZ−690HOA 東ソー製)を用いた以外は実施例3と同様に評価を実施した。
[実施例7]
ゼオライトとしてフェリエライト型ゼオライト(HSZ−720KOA 東ソー製)を用いた以外は実施例3と同様に評価を実施した。
[実施例8]
ゼオライトとしてZSM−5型ゼオライト(HSZ−840NHA 東ソー製)を用い、感光体の架橋表面保護層用塗工液として、以下のものを用いた以外は実施例3と同様にして、評価を実施した。
〔架橋表面保護層用塗工液〕
3官能アクリル樹脂(日本化薬製、KAYARAD TMPTA): 5部
5.5官能アクリル樹脂(日本化薬製、KAYARAD DPHA): 5部
電荷輸送性構造を有する重合性化合物(前記構造式B): 10部
重合開始剤(東京化成製、2,4‐ジエチルチオキサントン): 1部
テトラヒドロフラン:50部
[実施例9]
ゼオライトとしてZSM−5型ゼオライト(HSZ−840NHA 東ソー製)を用い、感光体に架橋型表面保護層を設けないものを用いた以外は実施例31と同様にして、評価を実施した。
[比較例1]
実施例1において、帯電グリッドが作像時も作像休止時も感光体から1mm離れて配され、移動しない以外は実施例1と同様にして、評価を実施した。
[比較例2]
帯電グリッドとして、ゼオライトと導電剤とバインダ樹脂を含有する塗工液を塗工しない帯電グリッドを用いた以外は比較例1と同様にして、評価を行った。
[比較例3]
帯電グリッドとして、ゼオライトと導電剤とバインダ樹脂を含有する塗工液を塗工しない帯電グリッドを用い、帯電グリッドを移動しない以外は実施例7と同様にして、評価を行った。
[比較例4]
帯電グリッドとして、ゼオライトと導電剤とバインダ樹脂を含有する塗工液を塗工しない帯電グリッドを用い帯電グリッドを移動しない以外は実施例8と同様にして、評価を行った。
実施例及び比較例における評価結果を表2に示す。
上記結果から、ゼオライトと導電剤とバインダを保持した帯電グリッドを作像終了後、感光体に近接させることにより、濃度ムラの抑制が可能となり、更に複数のグリッドを間隔を空けて配置することで効果の持続時間の向上が確認できる。また、グリッドの開口部を他のグリッドの電極で塞ぐことで更に効果が得られている。Y型の結晶形からなるゼオライトを用いた際に良好な結果が得られた。また濃度ムラが発生しやすい架橋保護層を設けた場合においても、本発明により濃度ムラの抑制することができることが確認できる。
本発明の画像形成装置は、帯電器から発生する放電生成物に起因する被帯電体の変質を抑制し、安定した画像を維持することができる。
コロトロン型コロナ帯電器及びスコロトロン型コロナ帯電器の構成を示す模式図である。 コロトロン型コロナ帯電器及びスコロトロン型コロナ帯電器の帯電特性を示す図である 本発明の画像形成装置の構成例を示す図である。 コロナ帯電器直下濃度ムラを示す図である。 作像動作時と作像休止時の帯電グリッドの位置を示す図である。 帯電グリッド駆動機構を説明する図である。 帯電グリッドを3枚用いた際の作像動作時と作像休止時の位置を示す図である。 帯電グリッドを3枚用い、グリッド開口部を遮蔽した場合を示す図である。 本発明に用いる電子写真感光体の層構成を示す断面図である。
符号の説明
31 導電性支持体
33 中間層
35 電荷発生層
37 電荷輸送層
39 保護層
100 感光体
101 帯電装置
102 画像露光系
103 現像装置
104 転写装置
105 クリーニング装置
106 クリーニングブラシ
107 弾性ゴムクリーニングブレード
108 除電装置
109 コピー用紙

Claims (8)

  1. 少なくともコロナ放電電極と帯電グリッドとを有するコロナ帯電器、像担持体、像露光手段、現像手段、転写又は分離手段、像担持体クリーニング手段を有する画像形成装置であって、帯電グリッドが表面にゼオライト、導電剤、バインダ樹脂を含有する膜を有しており、帯電グリッドを像担持体に対して接近する方向及び離隔する方向に移動させるための帯電グリッド移動手段を有し、帯電グリッドが、コロナ帯電器未使用時に像担持体に近接する方向に移動するようにしたことを特徴とする画像形成装置。
  2. 前記帯電グリッドが複数重ねて配置されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
  3. 前記複数重ねて配置された帯電グリッドが、コロナ帯電器未使用時には各々が間隔を空けて配置されるように平行移動することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
  4. 前記帯電グリッド移動手段が帯電グリッドをグリッド面に平行な方向に移動させる機構を更に備えており、前記複数重ねて配置された帯電グリッドが、コロナ帯電器未使用時には、互いの開口部を遮蔽するように移動することを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
  5. 前記ゼオライトが、Y型の結晶形を有することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の画像形成装置。
  6. 前記像担持体が、導電性支持体上に少なくとも電荷発生層、電荷輸送層、架橋表面保護層を有することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の画像形成装置。
  7. 前記架橋表面保護層が少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物と、電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物との反応物を含有することを特徴とする請求項記載の画像形成装置。
  8. 請求項1〜のいずれかに記載の画像形成装置に用いるプロセスカートリッジであって、帯電グリッドを像担持体に対して接近する方向及び離隔する方向に移動させるための帯電グリッド移動手段を有するコロナ帯電器、像担持体を有し、像露光手段、現像手段、転写または分離手段、像担持体クリーニング手段の少なくとも何れか2つ以上を組み合わせて造られ、画像形成装置本体に脱着可能に設置されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。
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