JP5299061B2 - 近赤外イメージセンサ - Google Patents

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Description

本発明は、近赤外域の信号光を対象とした近赤外イメージセンサに関するものである。
近赤外域の波長域1.7μm程度またはそれより長波長の波長2〜3μm程度に対応するバンドギャップエネルギを持つ化合物半導体として、III−V族化合物半導体が注目され、研究開発が進行している。たとえばInP上に、(InGaAs/GaAsSb)をペアとするタイプIIの多重量子井戸構造の受光層を有する受光素子が提案されている(非特許文献1)。また、波長2.5μm程度まで受光感度を持つ化合物半導体として単層のGaInNAsの提案もなされている(特許文献1)。
しかしながら、上記の受光素子によって近赤外センサを構成しても、鮮明な画像を得ることができない。その大きな理由の一つに、受光素子における暗電流が大きいことをあげることができる。従来技術では、光入力がない場合と光入力がある場合の差分を交互に測定し、測定値を保持することで、画像を得ている。ノイズの大きな一要因である暗電流が大きいと、光入力がないとき光入力レベルはほとんど暗電流で占められ、また光入力があっても、その入力レベルが小さい場合には、画像を得るための各画素の出力(電流または電圧)は、暗電流起因の出力中に埋もれてしまい、鮮明な画像を得ることはできない。
上記の暗電流を含むノイズの問題を克服するために、近赤外光等を用いて乳房炎の有無を診断するのに、光チョッパを用いる装置の開示がなされている(特許文献2)。また、暗信号を常に測定しながら信号のノイズを低減した医用光度計の提案がなされている(特許文献3)。また、リファレンス信号との差分をとり、SN比を向上させたセンサ信号処理方法の提案もなされている(特許文献4)。これら信号処理方法によって、それぞれの装置においてSN比の向上を得ることができる。
特開平9−219563号公報 WO01/075420号 特開2002−318190号公報 特開2006−234693号公報
R.Sidhu,N.Duan, J.C.Campbell, A.L.Holmes, "A Long-Wavelength Photodiode on InP Using Lattice-Matched GaInAs-GaAsSb Type-II Quantum Wells", IEEE Photonics Technology Letters, Vol.17, No.12(2005), pp.2715-2717
しかしながら、上記の受光素子では暗電流をゼロにすることはできない。このため、光チョッパを用いても光量が少ない場合、SN比が低下して鮮明な画像を得ることができない。さらに、暗信号を常に測定して差分をとる方法、およびリファレンス信号との差分をとる方法においては、変調機能を付加すると、別体の専用部品が必要になり、装置の小型化に反し、かつ部品点数増大により経済性を劣化させる。さらに、光学系の最適化も必要となる。
本発明は、暗電流があっても高いSN比の信号もしくは鮮明な画像を得ることができる、小型化された近赤外イメージセンサを提供することを目的とする。
本発明の近赤外イメージセンサは、波長1.2μm以上の近赤外光のイメージセンサである。InP基板上に形成され、近赤外光を受光する受光層を有する、1つまたは複数の受光素子と、受光素子よりも近赤外光の入射側に位置する変調部と、受光素子の電気信号を処理する信号処理部とを備える。その受光層のバンドギャップ波長が、1.2μm以上3μm以下であり、変調部は、シリコンを主成分とする微小電気機械システム(MEMS:Micro Electro Mechanical System)で形成されて、1つまたは複数の受光素子をカバーして、該受光素子と一体化しており、そして信号処理部は、受光素子の信号を読み出す信号読み出し回路、および当該受光素子からの信号を検出する信号検出部を有しており、1つまたは複数の受光素子が、不純物元素の選択拡散によって形成した、マスク被覆された非選択の周縁部を有する個別の不純物領域を有し、個別の不純物領域の先端がpn接合であり、受光層が多重量子井戸構造により形成され、受光素子が、受光層に接して選択拡散の不純物導入面側に、不純物の濃度分布を調整するための拡散濃度分布調整層を有することを特徴とする。
上記の構成により、入力光に対して変調をかけるので、暗電流が大きくても変調がかからない暗電流の成分を除去してSN比を向上させることができる。また、変調部は、シリコンのMEMSで形成されるので、波長1.2μm以上で透明であり、かつ受光素子をカバーするように積層構造で一体化されるので、小型化され、かつ光学系のメンテナンスコストを削減することができる。変調部の積層構造による一体化には、フリップチップボンドによって変調部の端子を、受光素子の端子、および/または、配置が前提とされる信号読み取り回路(マルチプレクサ)の端子に、接合することで実現することができる。複数の受光素子は、アレイ化されているのが普通であるが、1次元アレイの場合は、分光プリズムや回折格子と組み合わせて、同時に複数波長の検出ができる。また、対象物を動かせば、2次元的に検出することが可能である。2次元アレイの場合は、2次元的に一瞬で検出ができる。分光プリズムと組み合わせて、また対象物を動かせば、同時に複数波長の検出が2次元的にできる。ここで、シリコンが波長1.2μm以上の光に透明であるとは、波長1.2μm以上の光の透過率が50%以上あることをいう。
1つまたは複数の受光素子は、不純物元素の選択拡散によって形成した、マスク被覆された非選択の周縁部を有する個別の不純物領域を有し、前記個別の不純物領域の先端がpn接合である構成をとることで、隣接する受光素子間のクロストークを低減し、信号のSN比を高めることができる。また、暗電流を低くすることができ、暗電流の信号電流への交差的な影響を低くすることができる。本発明の近赤外イメージセンサは、暗電流があっても所定レベル以上のSN比を得ることができるが、暗電流を低くすることで、さらにノイズの低い良質の信号を得ることができる。また、表面側に受光素子電極(画素電極)を設けた場合、電極と不純物導入面との接触抵抗を小さくすることができる。
また、上記の受光層が多重量子井戸構造により形成され、受光素子が、受光層に接して選択拡散の不純物導入面側に、不純物の濃度分布を調整するための拡散濃度分布調整層を有することで、多重量子井戸構造と拡散濃度分布調整層との組み合わせにより、電極との界面抵抗を低減してオーミック接触を可能にするとともに、量子井戸構造の結晶性を損なわずに量子井戸構造の本来の作用を行わせることができるので、波長が長い範囲にまで安定した受光感度を拡大することができる。
変調部を、シリコン基板と、該シリコン基板上に設けた、シリコン製MEMSとによって形成することができる。これによって、シリコン基板に駆動のための電極や回路を設けることができ、小型化しながらMEMSによって変調をかけることが容易になる。また、シリコンは波長1.2μm以上の近赤外光に透明であることは、上述のように、入射光を劣化させない上で有効である。
信号処理部は、受光素子に生じる出力を、信号読み出し回路で読み出して、信号検出部でロックイン検出することができる。これによって、信号読み出し回路と信号検出部とを一体化して、近赤外イメージセンサを小型することができる。信号読み出し回路には、CMOSやCCDを用いることができる。なお、信号処理部は、シリコン基板上に1チップで形成することができるので、波長1.2μm以上の光を実質的に劣化させないので、この近赤外イメージセンサのどの位置に配置してもよい。通常は、画素電極と読み出し電極との導電接続とを簡単な構造で実現するために、InP基板裏面を入射面として、エピタキシャル層表面側を実装面として、受光素子の入射側と反対側に配置される。
受光層における不純物濃度を5e16cm−3以下とすることができる。これによって、量子井戸構造の結晶性を損なわずに、受光のために必要なpn接合を確実に形成することができる。
上記の拡散濃度分布調整層のバンドギャップエネルギをInPよりも小さくすることができる。これによって、拡散濃度分布調整層の電気抵抗を比較的小さくすることができる。
多重量子井戸構造が、(InGaAs/GaAsSb)をペアとするタイプIIの多重量子井戸構造であり、不純物元素が亜鉛(Zn)であり、拡散濃度分布調整層がInGaAsで形成されることができる。これによって、長波長側の上限3μmまで確実に受光できる受光層を、既存のMBE法等によって得ることができる。また、取り扱いが容易な、p型不純物のZnを用いて、p型領域を形成して先端にpn接合を形成することができる。またZnの選択拡散の導入面に接触抵抗の小さい画素電極を設けることができる。さらに、InGaAsで拡散濃度分布調整層を形成することで、受光層の多重量子井戸に格子整合しながら電気抵抗の低いものを形成することができる。
InP基板、受光層、および拡散濃度分布調整層、の格子定数をaとして、接する層との格子定数との差をΔaijとして、前記InP基板、受光層および拡散濃度分布調整層の格子整合度である(Δaij/a)が0.002以下であるようにできる。ここで、InP基板、受光層、拡散濃度分布調整層に対して、iまたはj=1〜3を割り当てる。受光層が多重量子井戸構造の場合は、ペアのそれぞれについて、上記の格子整合度を満たすこととする。上記の格子整合度の条件を満たすことで、格子欠陥密度を減らし、かつ各層の界面における平坦性を良好なものにすることができる。この優れた結晶性を得ることで、暗電流を低減することがでる。
上記の近赤外イメージセンサは、食品検査装置、医用カメラ、または監視装置として用いられることができる。これによって、波長1μm〜3μmに吸収スペクトルのピークを持つ、生体形成物質について、有益で、かつ高感度の情報を得ることができる。この情報は、食品について鮮度、品質等、医用について病変箇所の有無、構成成分の異常等を感知させてくれる。また、監視装置については、夜間に光源なしで、宇宙光により、ヒトの侵入を検知することができる。
本発明の近赤外イメージセンサによれば、暗電流があっても高いSN比の信号もしくは鮮明な画像を得ることができ、しかも小型化することができる。
本発明の実施の形態1における近赤外イメージセンサを示す断面図である。 図1の近赤外イメージセンサにおける変調部を示す図である。 図1の近赤外イメージセンサにおけるロックイン検出を説明するための図である。 本発明の実施の形態1の近赤外イメージセンサの変形例を示し、(a)は図2と異なる変調部の斜視図、(b)は(a)のIVB−IVB線に沿う断面図である。 本発明の実施の形態2における近赤外イメージセンサを示す断面図である。 図5の受光素子におけるp型不純物の濃度分布を示す図である。 図5の近赤外イメージセンサ(撮像装置)の平面図である。 CMOSの信号処理を説明するための図である。 フォトダイオードからの蓄積電荷量を電圧変換し、増幅する回路を説明する図である。 図5の近赤外イメージセンサを組み込んだデジタルカメラの信号処理を説明するための図である。 本発明の実施の形態3における近赤外イメージセンサを用いた生体成分検出装置を示す図である。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における近赤外イメージセンサ100を示す図である。近赤外イメージセンサ100は、受光素子10と、それよりも入射側に位置する変調部50と、受光素子10の入射側と反対側に位置する信号読み出し回路を含む信号処理部70とによって構成される。
(受光素子)
InP基板1上にバンドギャップ波長1.8μm〜3μmの受光層3が形成され、画素Pごとに第1導電型不純物の選択拡散による第1導電型領域6が形成されている。画素Pに含まれる第1導電型領域6の受光層3側の先端界面15には、pn接合、pi接合もしくはni接合が形成される。その接合に逆バイアス電圧が印加され、受光層3側に空乏層を形成し、その空乏層において、入射光(信号光)を光電変換する。第1導電型領域6は、第1導電型不純物を窓層5の表面から選択拡散することで形成される。画素電極を構成する第1導電型電極11は、第1導電型領域6の窓層側の表面にオーミック接触するように形成される。また、InP基板1もしくは受光層3またはバッファ層2のいずれかの部分は第2導電型とされており、その第2導電型領域は接地電位とされ、図示しない第2導電側電極とオーミック接触される。InP基板1は、受光対象の波長域の光を実質的に透過するので、エピタキシャル表面側実装して、InP基板1の裏面を入射面とすることができる。
(信号処理部)
InP基板1上に形成された受光素子10の下方(入力光入射面と反対側)には、信号読み出し回路を含む信号処理部70が配置される。信号読み出し回路の読み出し電極71には、第1導電側電極11が、画素ごとに導電接続され、また図示しない接地電極には、受光素子10の共通の接地電極または第2導電側電極が導電接続される。信号読み出し回路には、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)、CCD(Charge Coupled Device)などを用いるのがよい。画素Pでは、所定時間、受光されて光電荷が生じ、この光電荷は各画素に蓄積される。蓄積された光電荷は、信号読み出し回路によって電流として読み取られるが、信号読み出し回路の種類に応じて、電流のまま処理する(CCD)か、または各画素で電圧に変換・増幅する(CMOS)か、所定段階までは電気信号の種類を異にする。いずれの場合も信号読み出し回路からは電圧で出力される。CMOSにおける画素からの出力の処理方法については、実施の形態2において詳しく説明する。受光素子10と信号読み出し回路の電極同士の導電接続は、図1では明示していないが、Inバンプ、異方性導電フィルムなどにより行うのがよい。
(変調部)
変調部50は、シリコンを主成分とするMEMSで構成されて、入射光を制御された一定の振動数で変調できるものであれば何でもよい。図2は、MEMSによって形成したカンチレバー型の変調装置である。この変調装置50は、シリコン基板51上に形成されており、シリコン製の可動部55または梁が、支持部52に片側端を固定支持されている。梁55は下部電極53からの振動電圧または振動電場によって周期的に力を受けて振動する。シリコン基板51と梁55との隙間dは、たとえば1/2波長または1波長とする。梁が振動しない場合には、入射光は、シリコン基板表面で部分的に反射して、共鳴が生じて隙間dに定在波を形成するので、透過光または受光素子10に到達する入射光は少なくなる。下部電極53に振動電圧を印可して梁55を振動させると、隙間dでの共鳴条件が破れて透過光が多くなる。
変調部50は、図1に示すように、はんだバンプまたはエポキシ系接着剤などの固定部19により受光素子に固定する。図示はしないが、下部電極53に印可する振動電圧などの制御は、シリコン基板51に形成された駆動回路により行われ、信号処理部70のロックイン検出部に変調駆動に関する情報は送信される。
図3は、入射光に対して変調部50で変調をかけた段階の、入射光による照度、暗電流起因の電流(電荷)、ならびに、変調光および暗電流による光電荷の蓄積、電圧変換、そして増幅した後の合成電圧信号を示す模式図である。図1を参照して、合成電圧信号は、信号処理部70のロックイン検出部に送られてロックイン検出される。暗電流は、InP基板1、受光層3および画素Pのエピタキシャル積層体の光電変換部に起因するので、変調部50によって変調を受けず、リップル(脈動)はあるが、ほぼ一定の電流(電荷)すなわち電圧を生じる。暗電流に限定されず、変調を受けない雑音は、ロックイン検出により、直流成分として除かれる。このため、入射光に起因する信号を精度よく選択してS/N比の高い信号を得ることができる。
ロックイン検出部においては、周波数解析により合成信号から直流成分を除去することは容易に行うことができるので、入力光信号と、暗電流または雑音とが相互作用して同じ周波数に含まれる場合は小さいとして、周波数解析をすることにより、雑音起因の周波数成分を除去することができる。たとえば1つの受光素子の近赤外イメージセンサの場合、読み出し周期の周波数は200kHz程度とすることができる。ロックイン検出のための変調光の変調周波数を同じ周波数とすることで、合成信号の直流成分を読むことで、ノイズ成分を除いて、信号のみを読むことができる。また、投入する光の強度に応じて暗電流(雑音)が比例的増大する場合にも、変調信号は任意の波形とすることができ、そのパターンは既知なので、合成信号から多くの雑音成分を除去することができる。この結果、ロックイン検出において合成信号を周波数解析することにより、入射光に起因するS/N比の高い信号を得ることができる。
図1に示す、信号読み出し回路を含む信号処理部70に、ロックイン検出部が含まれるように回路構成することができる。信号読み出し回路は、通常、シリコン基板上に形成されており、ここにロックイン検出部を作り込むことは容易である。この結果、近赤外イメージセンサ100を小型化することが容易となる。
また、上述したように、シリコン基板51およびシリコン製の梁55は、ともに波長1.2μm以上の光の透過率が50%以上なので、信号の強度レベルを大幅に低下させることなく変調をかけることができる。近赤外光は、シリコンは透過しても、金属でできている、配線、下部電極、はんだバンプなどを透過しない。しかし、変調部50は、金属部分ですべて覆われているわけでなく、変調部50の一部の領域にのみ影響が及ぶだけなので、上述の、「変調した入射光→暗電流を含む合成電圧信号の形成→ロックイン検出」のスキームに変更は生じない。
(実施の形態1の変形例)
図4は、実施の形態1において変調部50のMEMS片持ち梁55による変調装置の代わりに、MEMS櫛形シャッタを用いた変形例を示す図である。(a)は斜視図であり、(b)はIVB−IVB線に沿う断面図である。この変調部50では、櫛の歯の一方の下部電極53はシリコン基板51上に設けられ、上側の可動部55または他方の櫛の歯55は、ポリシリコンで形成され、アルミニウムの電極が蒸着されて、支持柱57に支持されて浮いている。下部電極53に振動電圧を印可すると、上側の櫛の歯55は水平方向に力を受けて、水平に振動する。これによって、振動的に開閉するシャッタを構成することができ、入射光に対してオンオフの変調をかけることができる。
(実施の形態2)
図5は本発明の実施の形態2における近赤外イメージセンサ100の一部を示す図である。対象波長域は近赤外域であり、InP基板1を用い、受光層3には、サブバンドを含めたバンドギャップ波長が1.8μm以上3μm以下に適合する、InGaAsとGaAsSbとの多重量子井戸構造を用いている。InP基板1の上に次の構成のIII−V族半導体積層構造(エピタキシャルウエハ)を有する。
(InP基板1/InPバッファ層2/InGaAsとGaAsSbとの多重量子井戸構造の受光層3/InGaAs拡散濃度分布調整層4/InP窓層5)
InP窓層5から多重量子井戸構造の受光層3にまで届くように位置するp型領域6は、SiN膜の選択拡散マスクパターン36の開口部から、p型不純物のZnが選択拡散されることで形成される。上記SiN膜の選択拡散マスクパターン36を用いてp型不純物を拡散することによって、画素Pごとに周縁部の内側に、p型領域6を、そしてその結果pn接合を形成することができる。選択拡散においてマスク被覆された非選択の周縁部より内側に、平面的に周囲限定してp型不純物を拡散導入するので、上記のpn接合は1つの受光素子の場合は受光素子の端面に露出せず、複数の受光素子の場合は隣接する受光素子と隔絶される。この結果、光電流のリークやクロストークは抑制される。
p型領域6にはAuZnによるp側電極11が、またInPバッファ層2にはAuGeNiのn側電極12が、それぞれオーミック接触するように設けられている。n側電極12は、すべての画素に共通しており、接地電極であり、CMOS70aの接地電極72とInバンプ(図示せず)により導電接続されている。また画素電極を構成するp側電極11は、CMOS70aの読み出し電極71と導電接続されている。InP基板1の裏面(入射面)には、またSiONの反射防止膜35を設けている。反射防止膜35は省略してもよい。
多重量子井戸構造の受光層3には、上記のp型領域6の境界フロントに対応する位置にpn接合(またはpi接合)15が形成され、上記のp側電極11およびn側電極12間に逆バイアス電圧を印加することにより、n型不純物濃度が低い側(n型不純物バックグラウンド)により広く空乏層を生じる。多重量子井戸構造の受光層3におけるバックグラウンドは、n型不純物濃度(キャリア濃度)で5×1015/cm程度またはそれ以下である。そして、pn接合の位置15は、多重量子井戸の受光層3のバックグラウンド(n型キャリア濃度)と、p型不純物のZnの濃度プロファイルとの交点で決まる。すなわち図6に示す位置となる。拡散濃度分布調整層4内では、InP窓層5の表面5aから選択拡散されたp型不純物の濃度が、InP窓層側における高濃度領域から受光層側にかけて急峻に低下している。このため、受光層3内では、Zn濃度は5×1016/cm以下の不純物濃度を容易に実現することができる。
本発明が対象とする受光素子10は、近赤外域からその長波長側に受光感度を有することを追求するので、窓層には、受光層3のバンドギャップエネルギより大きいバンドギャップエネルギの材料を用いるのが好ましい。このため、窓層には、通常、受光層よりもバンドギャップエネルギが大きく、格子整合の良い材料であるInPが用いられる。InPとほぼ同じバンドギャップエネルギを有するInAlAsを用いてもよい。
多重量子井戸構造は、選択拡散で不純物を高濃度に導入した場合、その結晶構造が破壊されるため、選択拡散による不純物導入を低く抑える必要がある。通常、上記の拡散導入するp型不純物の濃度を5×1016/cm以下とする必要がある。受光層の不純物濃度を5×1016/cm以下とする理由を以下に詳しく説明する。p型不純物(Zn)の選択拡散の深さが深くなるなどして受光層3内におけるZn濃度が1×1017cm−3を超えると、超えた高濃度部分では量子井戸層を構成するInGaAsとGaAsSbの原子が相互に入り乱れ超格子構造が破壊される。破壊された部分の結晶品質は低下し、暗電流が増加するなど素子特性を劣化させる。ここで、Zn濃度は通常はSIMS分析法(Secondary Ion Mass Spectroscopy:二次イオン質量分析法)で測定するが、1017cm−3台あるいは1016cm−3台の濃度の分析は難しく、比較的大きな測定誤差が発生する。上記の詳細説明は、Zn濃度について倍または半分の精度での議論であるが、それはこの測定精度のあらさからきている。したがって、たとえば5×1016/cmと、6×1016/cmとの相違を議論するのは、測定精度上、難しく、またそれほど大きな意味がない。上記の低いp型不純物の濃度を、実生産上、再現性よく安定して得るために、InGaAsによる拡散濃度分布調整層4を、受光層3の上に設ける。この拡散濃度分布調整層4において、受光層側の厚み範囲が、上記のような低い不純物濃度になると、その低い不純物濃度の範囲の電気伝導性は低下し、または電気抵抗は増大する。拡散濃度分布調整層4における低不純物濃度範囲の電気伝導性が低下すると、応答性が低下して、たとえば良好な動画を得ることができない。しかしながら、InP相当のバンドギャップエネルギより小さいバンドギャップエネルギの材料、具体的には1.34eV未満のバンドギャップエネルギを持つIII−V族半導体材料によって拡散濃度分布調整層を形成した場合には、不純物濃度が低くても、電気伝導性は非常に大幅には低下しない。上記拡散濃度分布調整層の要件を満たすIII−V族半導体材料として、たとえばInGaAsを挙げることができる。
拡散濃度分布調整層にバンドギャップエネルギの狭い材料を用いると、不純物濃度が低くても電気抵抗の増加を抑制することができる。逆バイアス電圧印加等に対する応答速度は、容量および電気抵抗によるCR時定数で決まると考えられるので、電気抵抗Rの増大を、上記のように抑制することにより応答速度を短くすることができる。
本実施の形態では、多重量子井戸構造をタイプIIとする。タイプIの量子井戸構造では、バンドギャップエネルギの小さい半導体層を、バンドギャップエネルギの大きい半導体層で挟みながら、近赤外域に受光感度を持たせる受光素子の場合、小さいバンドギャップエネルギの半導体層のバンドギャップにより受光感度の波長上限(カットオフ波長)が定まる。すなわち、光による電子または正孔の遷移は、小さいバンドギャップエネルギの半導体層内で行われる(直接遷移)。この場合、カットオフ波長をより長波長域まで拡大する材料は、III−V族化合物半導体内で、非常に限定される。これに対して、タイプIIの量子井戸構造では、フェルミエネルギを共通にして異なる2種の半導体層が交互に積層されたとき、第1の半導体の伝導帯と、第2の半導体の価電子帯とのエネルギ差が、受光感度の波長上限(カットオフ波長)を決める。すなわち、光による電子または正孔の遷移は、第2の半導体の価電子帯と、第1の半導体の伝導帯との間で行われる(間接遷移)。このため、第2の半導体の価電子帯のエネルギを、第1の半導体の価電子帯より高くし、かつ第1の半導体の伝導帯のエネルギを、第2の半導体の伝導帯のエネルギより低くすることにより、1つの半導体内の直接遷移による場合よりも、受光感度の長波長化を実現しやすい。
次に、図5に示す受光素子10の製造方法について説明する。n型InP基板1上に、2μm厚みのInPバッファ層2またはInGaAsバッファ層2を成膜する。次いで、(InGaAs/GaAsSb)の多重量子井戸構造の受光層3を形成する。単位量子井戸構造を形成するInGaAs層、GaAsSb層の厚みはそれぞれ5nmであり、ペア数(単位量子井戸の繰り返し数)は300である。次いで、受光層3の上に、Zn拡散導入の際の拡散濃度分布調整層4として、厚み1μmのInGaAs層をエピタキシャル成長し、次いで、最後に厚み1μmのInP窓層5をエピタキシャル成長する。上記の受光層3および拡散濃度分布調整層4は、ともにMBE(Molecular Beam Epitaxy)法によってエピタキシャル成長するのがよい。また、InP窓層5は、MBE法でエピタキシャル成長してもよいし、拡散濃度調整層4を成長させた後、MBE装置から取り出して、MOVPE(Metal Organic Vapor Phase Epitaxy)法によってエピタキシャル成長してもよい。さらに全てのエピタキシャル成長をMOVPE法で行ってもよい。
InPバッファ層2またはInGaAsバッファ層2は、ノンドープでもよいし、Siなどn型ドーパントを1×1017/cm程度ドーピングしてもよい。InGaAs/GaAsSbの多重量子井戸構造の受光層3、InGaAsの拡散濃度分布調整層4、およびInP窓層5は、ノンドープが望ましいが、Siなどn型ドーパントを極微量(たとえば2×1015/cm程度)ドーピングしてもよい。また、InP基板1とバッファ層2との間に、n型ドーパントを1×1018/cm程度ドープしたn側電極を形成するための高濃度のn側電極形成層を挿入してもよい。また、InP基板1は、Feドープの半絶縁性InP基板であってもよい。この場合は、その半絶縁性InP基板1とバッファ層2との間に、n型ドーパントを1×1018/cm程度ドープしたn側電極形成層を挿入する。バッファ層2をn側電極形成層としてもよい。
次いで、InP窓層5の表面5aに形成したSiN選択拡散マスクパターン36を用いて、その開口部からZnを選択拡散して(InGaAs/GaAsSb)多重量子井戸構造の受光層3内に届くようにp型領域6を形成する。p型領域6のフロント先端部がpn接合15を形成する。このとき、Zn濃度が1×1018/cm程度以上の高濃度領域は、InGaAs拡散濃度分布調整層4内に限定されるようにする。すなわち、上記高濃度不純物分布は、InP窓層5の表面5aから深さ方向に、InGaAs拡散濃度分布調整層4内にまで連続し、さらに拡散濃度分布調整層4内のより深い位置で5×1016/cm以下に低下する(図6参照)。そして、pn接合15の近傍におけるZn濃度分布は、傾斜型接合を示すような分布になっている。
受光素子10の一次元または二次元配列、すなわち図5に示す受光素子アレイは、素子分離用のメサエッチングをすることなくZnの選択拡散(受光素子の周縁部の内側になるように平面的に周囲限定した拡散)によって、隣り合う受光素子どうし分離する。すなわち、Zn選択拡散領域6が1つの受光素子10の主要部となり、1つの画素Pを形成するが、Znが拡散していない領域が、各画素を分離する。このため、メサエッチングに付随する結晶の損傷などを受けることがなく、暗電流を抑制することができる。
図7は、図5の近赤外イメージセンサ100の受光素子10を光入射側から見た平面図である。図5は、図7におけるV−V線に沿う断面図(変調部50およびCMOS70aを含んでいる)である。図5において、SiNの選択拡散マスクパターン36は、その上に形成された保護膜のSiON膜37とともにそのまま残されている。画素Pまたはセンサ単位は、図7に示すように、縦横25μmピッチで、横20mm、縦16mmにわたって設けられ、合計640×512=327,680個が配列される。この画素配列は例示であって、製品仕様によって変えられることはいうまでもない。
エピタキシャル層の各p型領域6と電気的に接続されるp部電極11と、共通のInP基板1に直接に位置するn型バッファ層2に設けられるn部電極12とは、ともに、信号処理部に含まれるCMOS70aに、はんだバンプなどの接合バンプ33により接続される。p部電極11にはAuZnを用い、またn部電極12にはAuGeNiを用い、それぞれオーミック接触を確保するように形成する。上記のAuZn系金属の他に、p部電極にはTiPt系金属を用いてもよい。上記の構造において、マトリックス状に配列された画素Pまたはフォトダイオードは、各受光素子の受光部の光電流発生部となる。
変調部50には、実施の形態1の図2のMEMS片持ち梁による共鳴変調装置でもよいし、図4に示したMEMS櫛形シャッタによる変調装置でもよい。どちらの変調装置も、シリコン基板上に設けたシリコンを主成分とする微小電気機械システムなので、波長1μm以上の近赤外光に対して透明であり、かつ、応答速度が高い。さらに、シリコン基板51上に、MEMSの駆動制御部を容易に設けることができるので、この変調部70を受光素子10にはんだバンプまたはエポキシ系接着剤で固定することで、近赤外イメージセンサ100を小型化することができる。
入射光は、InP基板1の裏面に形成したAR膜35を通して導入され、p型領域6と受光層3との界面であるpi接合またはpn接合から張り出す空乏層の中で受光される。空乏層を形成するための逆バイアス電圧は、上記のn側電極12とp側電極11との間に印加される。空乏層は容量として作用し、光電変換された電荷を蓄積する。光電変換で受光部に発生した正孔−電子対のうち、正孔はp型領域6から信号電荷としてp側電極11を経由してCMOS70の読み出し電極71に読み取られ、パルス駆動の走査によって全画素部について、順次、上記の読み出しが行われてゆく。
次に、近赤外イメージセンサのロックイン検出について説明する。動画の場合、1秒間に30フレームをスキャンするので、1フレームあたり33msの時間がかかる。たとえば320×256画素(ピクセル)の8万画素の撮像装置に適用した場合、1画素あたりの時間は0.4μsとなり、2.5MHzの周波数で読み出すことになる。ロックイン検出では、2.5MHzの変調周波数で参照光(変調光)を照射して、合成光を生成する。合成光に狭帯域のローパスフィルタをかけて、直流成分を取り出すことによってノイズを除去し、信号光のみを読むことができる。ロックインの参照信号のクロックは、通常レベルの200kHzから特別用途用の5MHz程度まであるので、上記のロックイン検出は容易に実現することができる。また、別の例として、64×64画素の撮像装置の場合について説明する。この撮像装置では、130kHzの読み出し周波数になる。したがって、通常レベルのロックイン装置を用いて、ロックイン検出を行うことができる。上記したいずれの例においても、上記ロックイン検出の結果、受光素子ごとに信号のS/N比を向上させることができる。また、フレーム周期と参照信号を同期させる場合は、画像解析の高速処理の要求度にもよるが、30Hz〜200Hzの変調周波数とするのがよい。
図8は、一般的なCMOS70aにおける信号処理方法を説明する図である。また図9は図8におけるスイッチ部S1,S2を含むA部拡大図であり、各画素(フォトダイオード)Pにおいて発生する正孔量を電圧に変換し、増幅する機構を説明する図である。図8において、マトリックス状に配列された画素部のフォトダイオードPの中から、まず、水平ラインを選択するYアドレス回路からのスイッチング信号によって、水平ラインが選択され、次いで、Xアドレス回路によってその中の1つのフォトダイオードが選択される。そして、当該1つのフォトダイオードPから、上述のように所定時間、蓄積された電荷が出力信号ラインに読み出される。フォトダイオードPは、走査順序にしたがって、1つずつ選択されてゆく。
CMOSは、フォトダイオードPからの信号電荷を、フォトダイオードP毎に信号電圧に変換し、増幅して、その信号電圧を、順次、読み出して電気信号を得る。この中には暗電流も含まれる。この信号電圧は、図3に示すように、入射光が変調をかけられた変調光による光電荷(変調された光電荷)と、暗電流の電荷との合計を電圧変換して、増幅したものである。すなわち暗電流も含んだ変調をかけられた合成電圧信号である。通常のCMOSは、光電変換で生じた電子−正孔対のうち電子が、電流−電圧変換部へ送られるが、図5の撮像装置では、正孔を読み出すので、適宜、変更を加える必要があるが、そのような変更を行ったあとの構成の一例を図9に示す。CMOSでは、各画素部での電圧増幅の際にMOSトランジスタのスレッシュホールドレベルのばらつきによって黒レベルが異なり、ノイズとなる。異なる黒レベルに対応する電圧を、図8におけるCDS(Corelated Double Sampling)回路により一定にクランプして、信号レベルとの差をとることによりMOSトランジスタのスレッシュホールドレベルの差による影響をなくすことができる。
信号処理部にCMOSを用いた場合の特徴は次のとおりである。(1)低消費電力を実現できる。(2)ランダムアクセスが可能である。すなわち各画素部のフォトダイオード10pから信号を順次読み出すだけでなく、ランダムに各フォトダイオードの信号を読み出すことができる。(3)単電源、単一のクロックで動作させることができる。このため、フォトダイオードPが形成されるエピタキシャル積層体10とCMOS70との配線数が最小となり、放射ノイズの点で有利になる。(4)信号電荷の読み出し走査の駆動部などの信号処理部などを含む制御回路部全体をワンチップで構成することができる。
図10は、本実施の形態の近赤外イメージセンサ100を組み込んだデジタルカメラの信号処理プロセスを示す図である。図10において、本実施の形態の近赤外イメージセンサ100は、受光素子10に入射される近赤外光に変調をかける変調部50と、受光層3を含む受光素子10と、受光素子10の各画素(フォトダイオード)Pからの信号を読み出して信号処理する、CMOSを含む信号処理部70と、を備える。信号処理部70は、シリコンなどの半導体基板に形成されるので、図10におけるCDS/AGC(Automatic Gain Control)やロックイン検出を行う検出部など、信号読み出し回路以降のプロセス回路も、同じシリコン基板に容易に形成することができる。CMOSを含む信号処理部70が形成されるシリコン基板は安価であり、またシリコン基板を用いる処理は、豊富な実績があり、処理装置も充実しているので、経済的に大量生産するのに適している。
図10において、CDS回路により所定の雑音を除去された信号はAGC回路に入力される。AGC回路ではアンプのゲインがマイクロコンピュータ(CPU:Central Processing Unit)によって制御され、A/Dコンバータに必要な信号の強度レベルを、絞り駆動機構などと連動して得るようにする。検出部は、AGC回路の前に配置してもよい。検出部では、ロックイン検出を行い、CDS回路等では対応できない暗電流に起因するノイズなどが大きく、入力光信号が小さい場合に、変調をかけることで、変調がかからない暗電流との合成信号を形成した後、S/N比の高い信号を得ることができる。すなわち変調しない場合、暗電流が大きく、電気信号が微弱でありノイズに埋もれているとき(低S/N比のとき)、変調をかけてロックイン検出で周波数解析を行うことで、高いS/N比の入力光に起因する信号を検出することができる。
図10に示す近赤外イメージセンサ100において、上述のように、CDS/AGC回路、検出部、A/Dコンバータ等は、CMOSを含む信号処理部70が形成されたシリコン基板に、一緒に形成されることができる。CMOSが、検出部を含めて上記回路部を含んでいるとみることもできる。
変調部50は、シリコン基板51を介在させてInP基板1上に形成されたフォトダイオード配列10に向けて入射する近赤外光に変調をかける。シリコンは、近赤外域の光の吸収率は小さく、近赤外光を透過する。シリコン基板1を含むMEMSは薄いものであり、このため、変調部50/受光素子10/信号処理部70を備える近赤外イメージセンサ100を、コンパクトな構成で実現することが可能となる。また近赤外イメージセンサ100を用いた測定機器に応じて制御回路を信号処理部70が形成されるシリコン基板に形成することで、測定装置を小型化し、またその制御回路をその測定装置に合わせて融通性の高いものにしておけば、わずかの改変または改変なしでその測定装置に用いることができる。
(実施の形態2の変形例)
図5に示すフォトダイオードPは、正孔を読み出す導電型構造を例示している。すなわち、p型領域6から正孔を、CMOS70の読み出し電極71に読み出す導電型構造となっている。しかし、図5における各部分の導電型を逆にして、電子をCMOS70の読み出し電極71に読み出す導電型構造にすることができる。また、本発明の実施の形態では、信号処理部にCMOSを用いた装置を例示したが、CMOSの代わりに、CCDを用いてもよい。
(実施の形態3)
図11は、本発明の実施の形態3における近赤外イメージセンサ100を示す図である。近赤外イメージセンサ100は、生体成分検出装置に組み込まれて用いられる。筐体67の一部に生体装入溝67aを設けて、その生体装入溝67aに装入された生体の透過光を用いて血糖値を検出する点に特徴がある。装入される生体部位は、肩から先、たとえば腕や掌を想定して、これらのうちの最大サイズの生体装入溝67aとすることができる。特別に耳たぶを専門にした生体装入溝67aであってもよい。
近赤外光の経路は、つぎのとおりである。
光源63→集光レンズ87→反射鏡66→集光レンズ87→照射用光ファイバ81→検出部位→受光端部82a→押圧調整アクチュエータ82b→情報搭載光ファイバ82→集光レンズ87→回折格子91→近赤外イメージセンサ100→表示部85(図11参照)
近赤外イメージセンサ100内の受光素子アレイ10の画素の位置は、回折格子91によって波長に応じて回折された光の波長に対応している。すなわち、連続する受光素子アレイは、回折された連続する波長の光の強度を、所定波長ピッチに分けて受光する。回折格子91に変えて分光プリズムを用いることもできる。このような受光素子アレイは波長に応じて回折される方向に沿って配列された1次元アレイの受光素子で十分であるが、2次元アレイを用いてもよい。2次元アレイの場合は、位置合わせを一方向に沿って厳密にしなくてもよいので装置構成が容易である。
図11において、掌で手刀をつくったときの小指の下方は、骨を介在させずに光を通すことができるので、血糖値の測定には有効である。上記の生体装入溝67aは、とくに上記の小指下方の掌部に対象を絞る必要はなく、上記押圧調整アクチュエータ82bなどによって、位置合わせを行うことができる。これによって、患者が自身で、簡単に、精度よく、血糖値を測定することが可能となる。
近赤外イメージセンサ100内の受光素子アレイが、近赤外域の長波長域まで受光可能であり、測定精度を向上させることができる。
光源は、ハロゲンランプ等を用いるのがよいが、この生体成分検出装置の場合、光源には、発熱の小さいコンティニューム光源やLEDを用いることが好ましい。
上記において、本発明の実施の形態および実施例について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態および実施例は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
本発明の近赤外イメージセンサによれば、光電変換部由来のノイズレベルが高い場合、または暗電流が高い場合、簡単でコンパクトな、かつ波長1μm以上の近赤外光に透明な変調部によって入射光に変調をかけることで、S/N比の高い信号を検出することができる。このため、コンパクトな装置で鮮明な画像、高感度の検出を行うことができる。
1 InP基板、2 n型バッファ層、3 受光層、4 拡散濃度分布調整層、5 窓層、5a 窓層の表面、6 p型領域(第1導電型領域)、10 受光素子(受光素子アレイ)、11 p側電極、12 n側電極(共通の接地電極)、15 pn接合、19 固定部(バンプ、接着剤)、35 AR膜、36 選択拡散マスクパターン、37 SiON膜、50 変調部、51 シリコン基板、52 支持部、53 下部電極、55 可動部(梁、櫛歯)、57 支持柱、63 光源、66 反射鏡、70 信号処理部、70a CMOS(信号読み出し回路)、71 読み出し電極、72 接地電極、81 照射用光ファイバ、82 情報搭載光ファイバ、82a 受光端部、82b 押圧調整アクチュエータ、85 表示部、87 集光レンズ、91 回折格子、100 近赤外イメージセンサ、P 画素(フォトダイオード)、S1,S2 スイッチ。

Claims (8)

  1. 波長1.2μm以上の近赤外光のイメージセンサであって、
    InP基板上に形成され、前記近赤外光を受光する受光層を有する、1つまたは複数の受光素子と、
    前記受光素子よりも前記近赤外光の入射側に位置する変調部と、
    前記受光素子の電気信号を処理する信号処理部とを備え、
    前記受光層のバンドギャップ波長が、1.2μm以上3μm以下であり、
    前記変調部は、シリコンを主成分とする微小電気機械システム(MEMS:Micro Electro Mechanical System)で形成され、前記1つまたは複数の受光素子をカバーして、該受光素子と一体化しており、
    前記信号処理部は、前記受光素子の信号を読み出す信号読み出し回路、および当該受光素子からの信号を検出する信号検出部を有しており、
    前記1つまたは複数の受光素子が、不純物元素の選択拡散によって形成した、マスク被覆された非選択の周縁部を有する個別の不純物領域を有し、前記個別の不純物領域の先端がpn接合であり、
    前記受光層が多重量子井戸構造により形成され、前記受光素子が、前記受光層に接して前記選択拡散の不純物導入面側に、不純物の濃度分布を調整するための拡散濃度分布調整層を有することを特徴とする、近赤外イメージセンサ。
  2. 前記変調部が、シリコン基板と、該シリコン基板上に設けた、シリコン製MEMSとによって形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の近赤外イメージセンサ。
  3. 前記信号処理部は、前記受光素子に生じる出力を、前記信号読み出し回路で読み出して、前記信号検出部でロックイン検出することを特徴とする、請求項1または2に記載の近赤外イメージセンサ。受光素子。
  4. 前記受光層における不純物濃度が5e16cm−3以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の近赤外イメージセンサ。
  5. 前記拡散濃度分布調整層のバンドギャップエネルギがInPよりも小さいことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の近赤外イメージセンサ。
  6. 前記多重量子井戸構造が、(InGaAs/GaAsSb)をペアとするタイプIIの多重量子井戸構造であり、前記不純物元素が亜鉛(Zn)であり、前記拡散濃度分布調整層がInGaAsで形成されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の近赤外イメージセンサ。
  7. 前記InP基板、受光層、および拡散濃度分布調整層、の格子定数をaiとして、接する層との格子定数との差をΔaijとして、前記InP基板、受光層および拡散濃度分布調整層の格子整合度である(Δaij/ai)が0.002以下であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の近赤外イメージセンサ。
  8. 食品検査装置、生体検査装置、医用カメラ、または監視装置として用いられることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の近赤外イメージセンサ。
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